龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせ

第三千七百二十五回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせです。

今日は思い切りカジュアルに合わせてみます。普通は龍村の帯はこんな風に使わないかもしれないですね。帯合わせにおいてフォーマルとカジュアルとでギャップのあるものを合わせると、バランスが悪いとも言えますが、着て行ける場が広くなるとも言えます。どちらになるか、色やデザインを上手く合わせればなにもかも上手く行くものです。

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いちばん上の写真は、ポーラを合わせてみました。ポーラは、poralの意味で、ウールのうち撚りの強い梳毛糸 (そもうし)で平織りにした織物を言います。さらさらとした手触りで通気性がある夏物のウールです。梳毛糸というのは、長くて良く揃った羊毛を紡績工程でよくくしけずって繊維を直線状に引伸ばしたものです。

日本語の「ポーラ」というのは、おそらく商標登録されたネーミングで、その会社はすでに生産を中止しているのではないかと思います。今もポーラの相当する着物はいくつかのメーカーから出ている」ようですが、サマーウールの仲間として別の商品名になっています。「サマーウール」という言葉が一般語なのか、誰かの商標であったのかその辺はわかりません。

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写真2番目は、ポーラを合わせてみました。ここで紹介しているポーラは、商標を持つメーカーのポーラです。昨年、高梨という問屋で掘り出し物としてまとめて買ったので、本来のメーカーは生産中止していると知った次第です。そのようなものは、早く処分すべき無用なものと考える人と、確保しておかないともう見られない希少なもの考える人がいます。無用なものと考える人から買い、希少なものと考える人に売るのが商人の仕事ですよね。

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写真3番目は、小千谷縮を合わせてみました。ラミーで織られたお洒落な夏の着物です。無地、縞、格子、経絣、経緯絣が有って、値段も段階になっています。これは縞のようですが、縞が途切れているのでその場所を防染しているわけですから経絣ですね。

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写真4番目は、小千谷縮を合わせてみました。これは白、淡いベージュ、ベージュの3色の麻の糸を使った格子です。経緯の糸を、白×白、淡いベージュ×淡いベージュ、淡いベージュ×ベージュ、ベージュ×ベージュと組み合わせることで4つの色の面ができます。写真で見える4つの面がそれですが、それを意匠にしているわけです。織物を意匠を考えることは図形の問題を解くような感jですね。

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写真5番目は、近江ちぢみを合わせてみました。小千谷縮と同じラミーで織られた夏のカジュアルです。織っているのは、愛荘町にあって近江上布の織元である川口織物です。小千谷縮より少し安いですね。どちらが良いかと言えば、お洒落なカジュアルですからデザインで選べば良いと思います。

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写真6番目は、奥順の「結城手織ウール紬」を合わせてみました。奥順というのは、結城紬のいちばん有名な織元ですが、かつてウールを織っていたことがあったとは、相当着物に詳しい人でも知らなかったのではないでしょうか。小幅で経緯の絣を合わせた織物ですから、そんなものを機械で大量生産したとは考えにくく、本当にウールを手織りしたんだと思います。文化財の結城を織らせることができない初心者の織り手を使ったのか、当時の状況はわかりませんが、ウールの結城紬があると言ったらオーパーツですよね。

[ 2017/04/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせ

第三千七百二十四回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。フォーマル方向の使い方ですね。

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いちばん上の写真は、野口の絽ちりめん地の付下げ「芦」に合わせてみました。流水の中に芦の葉が揺れるというテーマです。芦の葉が、紫、紺、辛子い色、緑という野口のテーマカラーともいうべき色で染められています。この色の組み合わせは野口作品でよく当時するので、この配色を見ると野口だなとわかります。色とデザインだけで、商標を見なくてもどこの商品かわかる、というように自社のアイデンティティを持つというのは、現代のマークティングが教えるところです。野口はテーマカラーを持っている数少ない着物メーカーですね。

配色の特徴は朱が入っていないことです。朱が入っていると若向きになって年輩者が着られなくなってしまいます。朱を使わないことで、年輩者向きでありながら華やかな着物が作れるのです。

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写真2番目は、野口の紗の付下げ「柴垣秋草文」に合わせてみました。花の種類を見ると、菊・萩などわりと秋に偏っているので、夏後半のイメージでしょうか。たいていの人は夏のフォーマルなんて、買うとしても1枚だと思います。そのばあいは波の文様にしておけばずっと着られます。植物文のばあいは、後半に合わせた方が良いでしょう。秋草というのはなんとなく生えている感じで、夏前半でもそれほど気にならないものです。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「撫子」に合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。墨で自然体で描かれたような大きな葉がありますが、葉の交わるところを見ると、ちゃんと糸目の痕跡があります。無意識で描かれているように見えるのは演出で、じつは綿密に計算して糸目で輪郭を取ってあるのです。

撫子の花は細い金糸で名人技のようなあしらいを入れていますし、夏後半の、ちょっとだけ初秋を思わせる風が吹くかなあという空気を感じる情緒的な作品に見えて、小細工満載な中井さんらしい作品です。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「芦」に合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。着物全身を水面に見立てて、ところどころ芦が顔を出しているといった意匠です。波の表現はダンマルを使って水の透明感を演出しています。

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写真5番目は、花也の紋紗の付下げ「色紙取り波に草花文」に合わせてみました。市松模様に見える紋紗の生地の地紋を生かすように、色紙取りをした意匠です。色紙取りの中味は、初夏~初秋の草花と伝統的な波文が合わせてあります。糊糸目の美しい線がたくさん見られて、お金を出した甲斐が有った、と思わせる作品です。商品には「ありがたみ」ということも大事なんです。中井さんはそういうことはあまり気にしなかったのですが。
[ 2017/04/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせ

第三千七百二十三回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせです。

今日は染めの着尺(小紋)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。紋紗の生地(平織部分と紗部分が模様配置になっている生地、この作品では市松)の一部を手挿し加工してポップな模様を付けたものです。紗の部分は隙間が多くて染めても色が乗らないですから、平織の部分を加工しています。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。絹紅梅の生地(細い糸と太い糸で格子状に織ったもの)に型染で格子状の模様を付け、さらに暈しで市松模様を染めたもの。生地の組織と型染と暈しで、3重の四角い模様が重なっているという視覚的な面白さを狙った作品です。絹紅梅は、細い糸が絹で太い糸が木綿であるのが本来だと思いますが、これは全部絹です。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。夏の絽や紗の着物には涼し気な模様を付けるべきと思いますが、これは重厚な小袖風の模様を絽の生地に付けたものです。波の模様は有りますが、涼しさという点ではあまり期待できません。しかし、夏のシーズンでもフォーマルっぽい小紋が必要な時もあるでしょう。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。小千谷製の夏の生地を使っています。白地に茶色の更紗模様ですが、爽やかさもありますね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。絽の生地で市松取りで、型絵染風の模様が付いています。白地にグレーの濃淡という無彩色だけの組み合わせで、夏の小紋の基本みたいな雰囲気です。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。疋田繋ぎといわれる、型疋田を1粒か2粒ずつ繋げて縞状にした模様です。水色地で、模様の一部に補色関係にある小豆色を使っています。
[ 2017/04/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせ

第三千七百二十二回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせです。

龍村の名古屋帯は、「龍村」世いうブランドのフォーマルなイメージから付下げに使うこともありますし、名古屋帯ということで紬に使うこともあります。

この作品についていえば、夏の楽しい行事である花火がテーマということで、正倉院や有職文様に比べてカジュアルと言えますから紬に使えます。一方、花火は豪華な金銀糸使いであり、フォーマルということで付下げにも使えます。今回は両方試してみますが、まずは夏の織物からです。

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いちばん上の写真は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。大島紬の織元として有名な東郷織物が制作している夏大島です。大島紬と言えば、マルキなどの言葉で表される精巧な締め絣が価値があるわけですが、これは絣を伴わない格子ですから、意外に安価です。これは黒の着物に黒の帯を合わせた例で、お洒落というのは、絣が細かいから高いという話でもないですよね。

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写真2番目は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。これも大島紬としては安価な格子の大島です。真夏の茶色、あるいは小豆色というのは、大人の着こなしですよね。黒と茶色の組み合わせは鉄板です。

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写真3番目は、夏琉球を合わせてみました。表示は「夏琉球」ですが、壁糸で織られているという意味で壁上布と言われることもあります。沖縄の織物は高価なイメージがありますが、手織りの織物として比較的リーズナブルです。着やすさやホンモノ感も含めて良い織物ですよね。

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写真4番目は、首里織の作家、伊藤峯子さんの花倉織を合わせてみました。首里の織物というのは、琉球王家の官服でもあり、日本本土の地方の織物である紬や絣の仲間にしてしまうのは意味が違うのかもしれませんね。そういう点では龍村はちょうど良いかもしれません。

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写真5番目は、林宗平の越後上布を合わせてみました。宮古上布、芭蕉布とともに日本でいちばん高価な織物です。
[ 2017/04/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「花音」の細部で

第三千七百二十一回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の細部です。

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いちばん上の写真は、金の花火と銀の花火の近接です。

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写真2番目は、金の花火をルーペで撮ってみました。

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写真3番目は、もっと拡大してみました。金の花火は、ベージュの絹糸の中に細い撚り金糸を混ぜて表現してありました。絹糸が持つ自然の光沢に金糸で輝きを補充している感じです。他に平銀糸も併用してあります。また、金の花火には、地味な色の糸も併用してあって、奥行きが表現されていますが、その地味な色の糸は地と同じような色でありながら、光沢だけで見えています。

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写真4番目は、銀の花火をルーペで撮ってみました。こちらはグレーの絹糸の中に細い撚り銀糸が混ぜてあります。また平銀糸も併用されています。奥行表現的な地味な糸は使ってありません。

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写真5番目は、背後から光を当てて地の組織を撮ってみました。3本絽であることがよくわかります。3本絽は絽の中でいちばん隙間率が高いはずですが、龍村のばあいは緯糸が太く撚った糸であるためか、あまり隙間があるように感じないんですけどね。
[ 2017/04/20 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)