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大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百六十回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

今日は綴の名古屋帯を合わせてみます。綴というのは、織りで絵画的な表現する際にとりあえず人間が思いつく技法であったようで、古代から世界各地にあります。中国には漢代からありますし、エジプトのコプト織やプレインカ文明の1つチャンカイの織物も綴です。

綴とは綴組織で織られた織物をいいますが、模様部分も綴組織である爪掻綴と、地は綴組織でも模様部分は絵緯糸で表現している紋織の綴があり、両者は裏に渡り糸があるかどうかで見分けます。紋織の綴は河村織物や廃業した華陽や坂下など西陣の有名織屋によって織られ、爪掻綴は綴の専業メーカーによって織られるのが普通です。本物の証明である西陣のラベルは、紋織の綴は他の西陣の同じ同じ金色、爪掻き綴は紫色です。

爪掻綴には、日本製か外国製かという問題があります。数十年前は韓国、その後はずっと中国ですね。手間がかかる技法であることが価値を生むわけですが、それは同時に人件費の安い国で作って儲けようという発想を生んでしまったのです。2割か3割安いということなら問題ないのですが、値段が10分の1だったりすると綴そのものに対する憧れもなくなってしまいます。

日本製と中国製の見分けは、基本的には日本製は腹文の模様が片側しかないことです。また模様は日本製の方が気が利かないことが多いですね。理由はいちばん下まで読むとわかります。

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いちばん上の写真は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。細見華岳は問屋を通して普通に販売するものは、花や鴛鴦など具象的な模様もありましたが、伝統工芸展に出品していた作品はだいたいこんな抽象柄でした。懐かしい方も多いのでは。

綴組織というのは、絵画的な表現をするときに色が変わるところで緯糸はつながらず組織に断裂が生じるのが欠点です。そのため縦方向に真っ直ぐ色が変わるような模様は織れないのです。この帯はメインの稲妻のような模様の他に、全体に波型の模様が有りますが、この波の部分で緯糸がつながっているのです。一見、デザインと見せてじつは織物の基本構造を支えている仕掛けなのです。

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写真2番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。十字に見える花部分の縦の線は断裂が生じそうに見えますが、色が変わっている花部分の緯糸の半分はじつは地色で、その糸は地とつながっているのです。そのために花の色は地色に対して補色であっても調和があり、また断裂を防いでいるのです。市松のような地模様は、緯糸が経糸を包むように織る際に、1本を包むところと2本をまとめて包むところがあり、その差で生じているようです。

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写真3番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。これも伝統工芸展らしい意匠だと思います。緯糸に銀糸を織り込んでいます。

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写真4番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。これは細見華岳の代表作で文科省買上げとなり、現在シルク博物館が収蔵している「友愛」をもう1度織ってもらったものです。中国の動物園で見た孔雀をテーマにしたものであり、「友愛」というタイトルは中国との友好を願ったものです。

本歌は六通ですが、お太鼓柄なら織ってもいいよ、ということでした。今だったらいくらかかるのか恐くて、人間国宝に代表作をもう1度織ってくれなんてお願いはできませんが、昔の私は度胸が良かったのです。若い時は、金なんかまた稼げばよい、って思うものですよね。

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写真5番目は、清原織物の綴の名古屋帯を合わせてみました。滋賀県に工房がある綴専業のメーカーです。綴の工房というのは現在は郊外だが元は御室というのが多いようです。御室というのは、綴の産地からオムロンの根拠地に変わり、今はそれもないようですね。

全体に金糸が織り込んであり、鳥の種類も鳳凰ですから、割りとフォーマルに使えそうです。色紙は斜めに配してありますが、綴の組織の特性からまっすぐにはできないわけですね。

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写真6番目は、清原織物の綴の名古屋帯を合わせてみました。なんとなく水平に広がる景色だと思いませんか。これも縦方向に断裂を生じないための工夫です。絵画として魅力的なものを考えつつ、同時に組織の宿命である縦方向の断裂を防ぐデザインを発想することができているかというのも優れた綴の条件の1つです。

明綴は、精緻な絵画的表現をして素晴らしかったですが、陽に透かして見ると穴だらけで織物としては弱いんだろうなあと思いました。帯をして運動する人はいないし、フォーマルなら年に一回ぐらいしかしないから問題にはならなかったでしょうが。
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[ 2016/04/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

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