大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百五十八回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

今回の付下げは、「季節の美しい瞬間を写す」ということで作品として完結しているため、帯で意味や季節を足そうとすると蛇足になりがちです。昨日はそれでも意味や季節を求めて帯合わせをしましたが、今日は意味も季節もを求めない帯合わせをします。意味も季節も求めない帯合わせとは、有職文様、名物裂文様、間道や格子、華文(たとえば正倉院の唐花文様)のような帯を合わせることだと思います。

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いちばん上の写真は、喜多川俵二の有職文様の名古屋帯「鳥襷丸文」を合わせてみました。日本の文様の起源にはいくつかあって、もっとも古いものとしては縄文時代の渦巻文様などがあるのでしょうが、着物や帯の意匠としてよく使われるのは正倉院文様が最初ですね。

次が平安時代に創られて鎌倉時代に体系化された有職文様、中世以降中国などから輸入された名物裂の文様、花鳥風月といった日本的な情緒を織り込んだ唐織の文様、室町時代の辻が花に始まり江戸時代を通して進化し続けた小袖文様、近代になって日本の模様に取り入れられるアールヌーボーなどです。

ここで紹介する「鳥襷丸文」は有職文様に属しますが、平安貴族の衣裳は古代は使われていた絞りやロウケツは衰退し織物だけになってしまったので、有職文様というのは織物の特徴である繰り返し文様が多いです。鳥襷丸文も鳥襷部分を共有しながら華文が続いていくようなパターンですね。

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写真2番目は、織悦の袋帯「菊枝文」を合わせてみました。菊枝文様と亀甲文様が重なっているように見える意匠になっていますが、これも有職織物の1つである「二陪織物」です。喜多川俵二が得意としてよく織っていますが、ここではあえて織悦を使ってみました。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「寄せん裂」を合わせてみました。「角倉金襴」「笹蔓金襴」「牡丹唐草」など名物裂として有名な裂を集めています。このように名物裂を切りばめした作品は昔から作られていますが、これはそれを意匠とした1つの織物です。

龍村裂にも名物裂がいろいろ出ていて、そのハギレを集めて別の人が縫い合わせて龍村の帯とかバッグとか言って売っているのもありますが、これは始めから1つの作品です。

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写真4番目は、喜多川俵二の名物裂文様の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。名物裂の中で最も数も多くもっとも有名な牡丹唐草です。「牡丹だから春」なんていう発想ではなく、様式の決まった名物裂文様の代表として用いるのが良いですね。

牡丹の花は大きいのも、この作品のように小さいのもあります。また牡丹を菊に替えたり桜に替えたりしたのもあります。元は中国からの輸入ですが国産も多くあります。

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写真5番目は、龍村の袋帯「清香間道」を合わせてみました。間道もまた中世以降名物裂として輸入されたものの1つです。また近世初頭に東インド会社経由で輸入されたインド産の木綿の縞もあり、それを模して江戸中期以降に川越などで織られた唐桟もあります。意匠としては同じようですが、その模様の起源から間道と呼んだり縞と呼んだりします。

これは名物裂の1つとして伝わる間道をベースに、ちょっと創作要素を加えて織られています。ただ販売チャネルの問題で、高島屋や三越で販売するものと重ならないように「清香」という起源がわからないようなタイトルにしているようです。

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写真6番目は、喜多川俵二の名物裂文様の名古屋帯「厚板格子」を合わせてみました。「厚板」というのは、中国から輸入される際に厚板に巻かれていたことからその名があります。だから名物裂の一種ですね。このような格子のパターンは歌舞伎役者の衣裳にもありますが、喜多川俵二さんがあえて「厚板」とタイトルを付けているので、名物裂と見てほしいということでしょうか。
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[ 2016/04/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

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