千切屋治兵衛の着尺(倉部さん)の帯合わせ

第三千三百三十三回目は、千切屋治兵衛の着尺(倉部さん)の帯合わせです。

今日は、倉部さんの着尺に染め帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、北秀の塩瀬地の袋帯を合わせてみました。金加工と金銀糸の刺繍だけで模様を表現しています。着物の模様も金銀だけですから、色数を増やさない帯合わせといえますね。千切屋治兵衛としては、色数を増やしたくなくて、倉部さんに頼んで金銀のみの加工にしたのかもしれないですから、その制作者の意図を大事にしてみました。

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写真2番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯「パリオペラ座の屋根」を合わせてみました。金箔と絞りを合わせることで、友禅が発明される以前の絞りと箔の小袖のような意味合いを狙ってみました。オペラ座の赤い色が着物の色と似て、多少の統一感もあるかなと思います。

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写真3番目は、ヤマト染芸の友禅の名古屋帯「孔雀更紗」を合わせてみました。ヤマト染芸は東京友禅の工房です。お父さんは銀座きしやで下絵師をしていたと聞いたことがあります。(本人から聞いたわけではない。)現代では下絵師は友禅の制作工程の一部として京都にいますが、昔は着る人が誂え注文をしたので、きしやはどの名店はその場で注文に答えられるように下絵師が雇ってあったのですね。店の一角で下絵師と顧客が直接話し合ったのでしょう、顧客にとっては着るより楽しい一時だったのではないでしょうか、着物文化は着るだけではなかったのです。

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写真4番目は、秀雅で仕入れた江戸刺繍の名古屋帯を合わせてみました。北秀の下職には千代田染繍という工房がありましたが、秀雅もそれを引き継いで江戸刺繍の作品を制作していました。刺繍というのは大規模な設備が要らないので、東京でもけっこう作家がいるようです。

私は子供のころ、コップに入った水に光が当たるところを水彩画で上手に描きたいと思ったものですが、この作品はそれを刺繍で実践しているんですね。

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写真5番目は、倉部さんの染め帯「木の葉」を合わせてみました。倉部さんが野口の商品として制作したものです。友禅ではなく、樹脂系の顔料(今はアクリル絵の具が万能の時代ですね。)と金箔を使っています。着物と帯を同じ作家で合わせるのは芸が無いですが、素材も作風も違うのでチャレンジしてみました。伝統工芸なのにアクリル絵の具で描いてあるなんて思うとがっかりしますが、どんな素材を使っても上手い人が描くと上手いという例ですね。

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写真6番目は、花也の白揚げと刺繍の名古屋帯「繍箔華文」を合わせてみました。華文の形に防染して地染をし、白揚げ状態を作り、そこにグラデーションになるように微妙に色を挿し、さらに挿した色と同色の刺繍をしたものです。白い部分にも一部白い糸で刺繍をしています。白揚げも挿し色も刺繍も、すべてはグラデーション表現をしたいということのためだけ、言ってみればすべての技法も手間もグラデーションに奉仕しているんですね。

着物の模様も帯の模様も太い線で模様を表現しているので、意味が統一されているように見えます。しかし、着物の模様は更紗で近世に輸入されたもの、帯の模様は華文で正倉院時代ですから、歴史は全く違うことになります。でも統一されているように見えるということは、帯合わせに大事なのは意味より形ということですね。
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[ 2016/03/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

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