千切屋治兵衛の着尺(実際の制作は倉部さん)

第三千三百三十回目の作品として、千切屋治兵衛の着尺を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

色も模様も金銀のみの加工も唐突で、どういう着方をして良いかわからない作品です。ただ長さは12mですから「着尺」とだけは言えますね。着物にするか長羽織にするかコートにするか、作品を紹介する中で試していきたいと思います。

模様の加工の仕方は、摺箔または印金です。
摺箔も印金も、金箔を使って生地に加工するものです。両者の違いは、印金というのは中国から輸入された名物裂で、主に仏具など着物以外のものであるため、金箔が厚いのです。摺箔は日本で小袖に加飾するために開発された技法で、着物としてきたときに人間の体の動きに自然に沿う必要があるため、金箔が薄いのです。

金箔が厚い方が金をたくさん使ってあるわけで、印金の方が価値があるとも言えますが、生地と完全に慣れ合うほど薄い金箔をつくるのは技術的に難しいから、摺箔の方が価値があるとも言えますね。

現代の着物になされる摺箔と印金の分類は、定義はともかく実践では、型でなされるか縁蓋でなされるかによって分けられるようです。型でなされる摺箔は着物に多用されていますね。縁蓋というのはプラスティックのシートで、生地に当ててからカッターで切って加工します。

型は繰り返し使えますが、縁蓋は一回ごとですから、繰り返しの模様には型が有利、絵羽の着物の意匠のように1回だけの模様には縁蓋が有利ということになります。また紙である型よりもプラスティックをカッターで切る縁蓋の方が輪郭線がくっきりします。

この作品はどちらでしょうか。じつは迷っているのです。見た目は金箔が厚手ですし、輪郭線がくっきりしているので、縁蓋で加工された印金に見えます。しかし模様が繰り返しており、これを全て使い捨ての縁蓋で加工したらとんでもない金額になってしまうと思うのです。摺箔でも精度の高い仕事をして、プラスティックのシートを使ったと勘違いするようなくっきり線を演出したのかもしれません。人を迷わせるのもまた、倉部さんの技術力ということでしょう。


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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は、金の更紗模様の近接です。

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写真3番目は、銀の更紗模様の近接です。
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[ 2016/03/19 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

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