藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯の細部

第三千二百八十二回目は、藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯の細部です。

絞りの技法にはホンモノもニセモノもありますが、ホンモノとニセモノの2つがあるわけではなく、純粋なホンモノから純粋なニセモノまで段階的になっています。

純粋なホンモノというのは、室町時代の技法と全く同じという意味ですが、小さな絞りについては生地を摘まんで竹の皮で包んで防染して染液に浸けます。竹の皮の面積は竹の円周を超えないわけですが、それを超える面積を絞るばあいには桶絞りをします。桶絞りは、生地の防染したい場所だけ桶に挟んで染液に浸けます。現代人から見れば、わざわざ桶など持ちだすところは不合理ですが、当時としては他に方法が無く合理的だったのです。泰三の振袖の大きな面積の絞りは桶絞りで染められています。

その次にホンモノといえる絞りは、生地を摘まんでビニール(プラスチックのフィルム)で包んで防染して染液に浸けるものです。絞って染液に浸けるという点でホンモノですが、室町時代に無いプラスティックのフィルムを使うという点でニセモノになるわけですね。藤井絞はこのような技法で作られています。プラスティックのフィルムは大きさに制約が無いので桶絞りは必要はなく、そのため現在桶絞りをできる工房は京都に一社しかなくなってしまいました。

その次にホンモノといえる絞りは、生地を摘まんで筆で着彩するものです。絞る段階まではホンモノですが、染液に浸けないという点でニセモノです。染液に浸けるということは、防染に少しでもゆるみがあれば染料が浸入して台無しになるのですから、いちばん難しいところであり、それが無ければ作業は簡単になります。しかし同時に、絞り方に制約がなくなり創作の自由度が増し、作品の芸術性が高くなるということもあります。そのため個人の辻が花作家には向いていて、現在、伝統工芸展の常連の入選者である小倉健亮の弟子たちはこの技法で染めています。

純粋にニセモノといえるのは、絞らないものです。絞りの形に型染をした後、生地に圧力をかけて凹凸を演出するものなどですね。エアブラシを使うばあいもあります。見分ける方法としては、糸で縫い締めした時の針の穴が無いことですね。

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藤井絞は、染液に浸ける絞りを行い、それを同社のアイデンティティにしていますが、この作品と先日の金魚玉にかぎり、筆で着彩する技法を併用しています。葉を見ると、2度絞って2度目は筆で着彩しているように見えますね。

ここで言えることは、ホンモノができる作家はニセモノを作るとなお上手くなるということですね。

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[ 2016/01/31 ] 絞り | TB(0) | CM(4)

絞りの見分け方

なるほど~、勉強になります!
よろしければ、いつか「今日の1点」で小紋、加工着尺を見るポイントを教えていただけませんか。
10代向きのきれいな小紋を探しているのですが、なかなかみつからず困っております。
貴店の小紋を拝見できれば、うれしいです。
私の娘時代にはすでに少なくなっていたのですが。
[ 2016/02/01 13:10 ] [ 編集 ]

野口の着尺が良いのではないですか

小紋、着尺あるいは加工着尺についても技法の上下はあります。しかし多色の型染の着尺というのは近代になって始まったものですから、近世以前から続くホンモノというのは、単色の単純なものしかないということになるでしょうね。江戸小紋についても、写し糊が発明された近代以後のものですし。
ほとんどが近代以後のものであれば、「技法の上下」とはなにを基準にするのかということになりますが、それは量産性の度合だと思います。量産ができないものほど上、量産ができるものほど下と定義すれば、手描き>手挿し>伝統的な型染>シルクスクリーン>インクジェットの順になるでしょう。
ただし、お洒落着である小紋については、技法云々よりセンスの方がずっと大事でしょうね。若い人向きの綺麗な小紋ということなら、野口の着尺が決定版でしょう。岡重は岡重のブランドで売っている場合も野口ブランドで売っている場合もありますが、なぜか野口経由のほうがセンスが良いように見えますね。値段が予算に合わないばあいは、30代ぐらいまで着られるのを選び、耐用年数を伸ばすと良いでしょう。
[ 2016/02/01 19:29 ] [ 編集 ]

着物業界に望むこと

返信ありがとうございます。野口の小紋拝見しにうかがいたいです。大人のおしゃれ小紋のイメージがあり、良く見てませんでした。私は岡重の重たい感じも若い子に合う感じがいたします。色が派手なところも。しかし地色がちょっと難しい。

あくまで私の希望ですが、一般的な母なので他にも需要があるに違いないと思っていることがあります。
10代前半の娘に良質な可愛い小紋を着せたいということです。可愛いというのは、若いからこそ映える派手な色柄という意味で、用途は正月、十三参り、観劇、家族のお祝いの席など(着用は年2回くらいでしょう)。でも四つ身の着物が着られなくなる頃に作って、長く着られます。卒業式の袴下でもいいかもしれません(紋付きが望ましいとは思いますが)。
また背が高いと標準の着尺では、袖丈をあまりとれませんが、せめて60センチ、できれば76センチ(二尺)の袖丈にしたい。逆にそれ以上の長さはいりません。
予算20万円くらいで手挿友禅や型染めでしたら上等ですね。

という気持ちでいくつかみて回ったけれど、百貨店では千總の小紋くらいでしょうか。でもなんかちょっとちがうなあ、これは30歳の着物というかんじでした。志ま亀の得意分野?でも染めがちょっと平板な感じがして。いえ、別にブランドにはこだわっていないのです。

レンタル業では、二尺袖と称して小学校と大学の卒業式の袴下の着物(ポリ)として人気のようです。でも自前のお気に入りの着物を着せたいのでパス。

ネット通販で調べるとこの若向き小紋、地味に売れてる形跡があります。みんなお店になくて通販で探してるのでしょうか。

着物業界が、子どものための本物の着物として、本腰をいれて作って売ればいいのにと思わずにいられません。十三参りで(大)振袖売りたがるより、良質なお出かけ着をつくるほうが後に続くのでは。

買うものないから、母の振袖とかレンタルにいっちゃうんではないでしょうか。やたら絵羽推奨の着物雑誌も罪が深いなあとおもいます。
長くなって失礼しました。


[ 2016/02/02 07:37 ] [ 編集 ]

二尺袖はお金しだいですね

普通の反物は3丈で、袖は1尺3寸ぐらいを想定しています  実際には1尺5寸ぐらいまで取れることもありますが、身長の高い若い女の子まで対応しようとすると、1尺3寸と思っていた方が確実です
つまり2尺の袖の着物を作ろうと思うと、(2尺-1尺3寸)×4=2尺8寸、約3尺増やす必要があるんですね  反物で言えば3丈3尺です
一方、生地屋さんでは3丈と4丈を織っています  4丈というのは振袖用または着物と共の裾回し付です  着物の需要が増えていて増産している時代なら、3丈3尺という生地もすぐ製品化するでしょうが、減産が続く現在では製品のバリエーションを増やすとは思えません
染屋さんが別注すればいいのですが、ロットが多分最低30反で、それを売り切る自信があればできるでしょうね   大手チェーンが企画して全部引き取るといえばできるでしょうが、そうでなければやらないと思います
着物というのは、小幅を基準にしてできていますが、そういう文化を持つのは、日本と台湾の高砂族だけだそうです  世界基準は広幅(90cm)なんですね 化繊のばあいは、90cmで大量に織り、それを適当に切って着物用にしますから、どんなことでもできるわけです
まあでも知恵も使いようで、3丈と4丈で同じ模様の着尺を染めて、3.5丈ずつ2人に売れば、比較的無駄がなく2尺の袖の着物が作れますね  値段としては15%増しでしょうか  
ただし、もう1つ問題があります  2尺の袖の長襦袢も作らないと着られないんですよね  長襦袢でも全く同じようにするか、振袖用を無駄に使うしかありませんね  その長襦袢は、その着物専用になってしまいますが
さて当社の対応ですが、当社はいろんな問屋の赤札市を利用して値段を下げています  だからあるものを買っていただく場合は安くできるのですが、注文されるとそれだけ定価になってしまうのです  それでかまわなければ、たいていのことはできますよ
[ 2016/02/02 19:20 ] [ 編集 ]

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