千總の振袖の細部

第三千二百七十二回目は、千總の振袖の細部です。

着物というのは、日本人が昔から着てきたものと錯覚しがちですが、近世以前に小袖を着ていた人は人口の1%ぐらいじゃないかと思いますし、近代になって千總が型友禅を開発して三越で売っても、一握りのお金持ちしか買えなかったでしょう。

成人式にみんなが振袖を着るようになったのは、美智子さまのご成婚以後の昭和30年代より後でしょう。その時代に振袖のデザインを確立したのは千總です。百貨店の店頭に並んだ千總の振袖のデザインが、現在まで続く振袖のデザインの基本になったのだと思います。

日ごろ普通の着物を使っているメーカーが、たまたま高級な振袖をつくると肩に力が入って、これでもか、って感じになってしまうものですが、ずっと昔からこんな振袖をつくってきた千總は、高級品でも手慣れた感じで作っています。そこがこの作品のいちばん良いところではないでしょうか。

今日はさらに細部を見てみます。

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いちばん上の写真は、そこそこ主要な場所にある牡丹の花です。立体感を強調する刺繍がしてあります。普通の友禅の着物の刺繍はマエミが中心ですが、この作品ではあちこちが刺繍で盛り上げてあります。単に豪華にするというよりも、立体感を演出する必要があるということですね。

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写真2番目は、水色の牡丹の花で、刺繍でオレンジと金の縁取りが付いています。モダンなセンスで、私が好きな場所です。

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写真3番目は、花の丸の次の主役である大きな葉です。切箔のデザインの摺箔で装飾されています。切箔というのは、平家納経にも使われている古い技法で、生地に糊を縫っておいて、四角く切った金箔を撒くものです。近年では、四角い形も型で表現して摺箔にする場合が多いです。

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写真4番目は、摺箔の葉と型疋田の葉です。準主役の大きな葉は、豪華であるが平面的な摺箔や型疋田による表現をしています。主役の花の丸は刺繍による立体的な表現ですから、役割分担になっていて、両者で立体と平面の奥行表現になっているのです。

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写真5番目は、添え物の植物文です。花の丸模様は求心力の強い模様で、各模様が独立しがちですが、それを有機的につないでいるのが流水です。その流水だけでは足りないと思ったのか、枝花模様が添えられています。

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[ 2016/01/21 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

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