第三千二百十九回目は、龍村の名古屋帯「バティック」の続きです。
今日はそれぞれのモチーフに近接してみました。いちばん上の写真から3番目までは、お太鼓のそれぞれの動植物の近接です。




写真4番目は、参考図版として、岡重のスカーフを近接で撮ってみました。インドネシアのバティック作家がチャンティンを使って模様の輪郭を防染し、それを京都で友禅作家が染めたものです。模様は伝統的なバティック、色は伝統的な京友禅になっています。
今回の龍村の作品は、蝋染めである作品を西陣の織物に翻案したものです。本来、蝋染めで染めるのに適したデザインを、あえて織で表現しているため、軟らかい蝋の輪郭線ががっちりして立体的な織の輪郭線に変わるなどして、雰囲気が変わっています。外国文学を翻訳するような感覚ではないかと思います。
龍村の作品を見ると、モチーフの周りに桜の花が散っているように見えます。桜と思えば、龍村が創作で付け加えたように思いますが、じつはバティックの伝統的な様式として、元絵に7個の点で表現された花のような模様があり、割りと忠実に写しているということがわかります。
チャンティンの蝋と友禅の糊置きは、防染して染めるという点で似ていますが、友禅の糸目は輪郭を取り、堤防の役割に徹することが多いのに対し、チャンティンは堤防の役割だけなく、自由な作画に参加することが多いですね。

写真5番目は、お太鼓の模様の上下の額縁のような役割をする部分です。同色で分かりにくいですが、お太鼓の他の模様と同じく、絵緯糸による表現です。
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