花也の付下げ「千鳥」の帯合わせ

三千九十四回目は、花也の付下げ「千鳥」の帯合わせです。

今回紹介している付下げは、元々「波に千鳥」だった付下げの波を外して作ったわけですが、そのような着物の帯合わせのテクニックとしては、帯合わせを通して原初の姿に戻すというやり方があります。ドラマやゲームのストーリーとしては、未知のものを得るために旅に出るというのもありますが、それと同じぐらい、失われたものを取り戻すために旅に出るという設定もありますね。

着物が趣味という人は、たいてい子供の時に母親が着ていて、それを見ていたという場合が多いです。結局、大人になってから子供の時に持っていたものを取り戻そうとしているのかもしれませんね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。波の帯を合わせて、「波に千鳥」に戻してみました。でもちょっと波が激しすぎ。向かい風に飛ぶにしても千鳥の試練が大きすぎですね。この帯は、龍村の袋帯の中でも高い方の、織りこまれた糸の種類がそのまま迫力になるような帯なのです。

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写真2番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。このぐらいの波の方が千鳥とのバランスは良いようです。でも「光琳水」すなわち「紅白梅図」の中央の水の流れは、川の流れを表したもので、海ではありませんね。残念!

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「芦映錦」を合わせてみました。芦が水面に映っている情景を意匠化したものです。上下する波の光っているところが金糸で表現してあります。金糸部分は波の光の表現で節ではないのですが、なんとなく「難波潟 みじかき芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや」を連想してしまいますよね。「潟」だから、千鳥のいる環境であることは確かです。

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写真4番目は、京正の名古屋帯を合わせてみました。制作したのは安田です。京正というのは、中井や安田の名品を、コストを惜しまず、自分勝手なアレンジをせず、ちゃんと世の中に伝えた会社だと思います。これはすごく昔に仕入れた作品ですが、自分の教材として無理に売らずに保管しておきました。工芸とはこうあるべきでしょう。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「バルト海遊文」を合わせてみました。海というテーマをバルト海まで拡張してみました。古典の枠の中で考える必要はないという発想ですね。
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[ 2015/05/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

参りました。

京正の名古屋帯、確かに唸ってしまいますね。
こういう仕事をしている人(していた人?過去形ですか?)がいることに
何か希望が見えますね。ご自分の教材という事は
売り物ではないのでしょうか?
このぐらいの物になると使用して楽しむより
確かに眺めて楽しんでしまうかもしれませんね。
[ 2015/05/26 19:52 ] [ 編集 ]

普通に売っています

普通に売っているんですよ。文中にある「無理に売らずに」というのは、安売りまではしていないということです。これ以外のものを結構安売りしているからいけないんでしょうね。しかし実際のところ、こういう糊糸目だけを鑑賞するような帯が、大羊居や中町博志と同じような値段だと買いにくいですよね。
[ 2015/05/27 17:38 ] [ 編集 ]

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