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千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の続き

第二千四百九十六回目の作品は、千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の続きです。

「遠山」というタイトルですが、ここに描かれた遠山は、稜線を描く伝統的な様式ではなく、樹木を描いた写生的な表現で、霞が無ければ遠山というより、うちの近所の小学校の裏山の風景によく似ています。

このような写生的な表現は、糊筒を使って糸目という輪郭線を描かなければならない友禅よりも、絵画のようにかけるダンマル描きの方が向いています。

ダンマル描きは、蝋染と同じように、厚く置くと完全に防染効果を発揮しますが、薄く置くと防染効果が不十分で、中途半端に染料が浸透してしまうという性質があります。そのような性質を半防染効果といいますが、それを積極的に利用して、絵画に濃淡をつけ、明暗や遠近を表現し、写生的な絵画のようにするのです。

akaikasumi5.jpg
いちばん上の写真は前姿~後姿の途中、横辺りです。

akaikasumi6.jpg
写真2番目は近接です。

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写真3番目はもっと近接です。

この作品の遠山部分は、さらに適度な彩色を加えることで、染ではなく紙に描いた絵のようにしていますね。、中井さんの下職のダンマル描き担当の職人さんは画家としてもとても上手いのですが、この作品にもそれが発揮されていると思います。

もっとも、そのような表現は、着物の柄としては好き嫌いがあって、糸目のある基本の友禅の方が好きという人も多いでしょう。もともと好き嫌いがあるのが中井さんですね。

ただの写生で収まらないのが、土佐派や狩野派にあったような装飾的な霞です。ただ土佐派も狩野派もやらなかったことは、赤の色ですね。昨日、「犬夜叉」と書いたら、「結界」と言った人がいましたが、なるほど、着物の柄に不似合いな写生表現を封じ込めるための結界かもしれません。

この赤い霞の線は、くっきりした強い表現ですが、じつはこれもダンマル描きによるものです。技法は使いようで、写生表現だけではなく伝統的な表現もできるのです。

伝統的な霞なら伝統的な友禅の方が適しているように思いますが、糸目の白い輪郭線があると邪魔なので、ダンマル描きにしたのでしょう。墨のような濃い地色と強い赤が隣接して独特な情緒を演出しているのですから、その間に白い線が介入しては台無しですね。




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[ 2013/10/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

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