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千ぐさの訪問着(北秀の商品)

第二千八百四十七回目の作品として、千ぐさの訪問着を紹介します。北秀の商品として製作されたものです。

北秀といえば東京でもっとも高級な友禅の取り扱い、しかもセンスの良いということで知られた問屋です。千ぐさはその北秀が扱っていた工房の1つです。北秀はこの作品を製作してしばらくして破産しましたが、千ぐさも最近残念ながら最近廃業してしまいました。工房は都内ですから土地は高いですし、廃業して悠悠自適みたいですね。

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いちばん上の写真は全体です。千ぐさの作品の中でもおそらくもっとも本格的な作品でしょう。模様面積が広くて重厚な作風ですが、同時にいつもの洗練も残しています。重厚と洗練が両立できるというのは珍しいです。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。謎の多い意匠だと思います。幹や太い枝の曲がり方や表皮の描き方を見ると、木の種類は桜のようです。しかし、細い枝は曲線を描いて更紗に見えます。花や葉を見ると、桜も更紗もどちらも混じっているようです。

桜と更紗といえば、和風とエキゾチックということで全く異質なものが混じったようで気味が悪いですが、そのような意匠の源流を求めると、江戸時代後期の蔓草模様に行き当たります。曲線模様といえば、誰でもとりあえずアールヌーヴォーが思い浮かぶでしょうが、その数十年前に日本で曲線模様が流行していました。はじめは小袖の模様として蔓植物を好んで描いていたのですが、やがて梅や桜など蔓植物でないものまで蔓のような曲線で描いた意匠が現れました。さらに直線の代表であるようなアヤメや燕子花まで蔓植物として描くようになります。

もう植物の種類などどうでもよく、単なる曲線嗜好なんですね。不合理なものがまかり通るということは、すなわち流行ということだと思います。アールヌーヴォーより早いというのが意義深いですね。

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写真3番目は近接です。この作品でただ1羽いる鳥です。ここが模様のメインということになるでしょうか。ただし鳥自体は小さいですから、作者の意図としては、メイン柄に注目してほしいわけではなく、模様を全体として楽しんで欲しいということでしょう。更紗模様の味わい方に似ているように思うので、やはり更紗なのでしょうか。

江戸時代の小袖にある立木模様という図案は、インドの生命の木の翻案であるということなので、桜が更紗になるのもつながりがあるのかもしれません。そういうデザインの伝搬の歴史を無意識に、あるいは意識的になぞった作品なのかもしれませんね。

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写真4番目は近接です。謎は桜=更紗だけではありません。更紗の間にある、このカクカク模様も謎です。カクカクしたエアのような模様はやはり更紗のパターンとしてあるものだと思います。ではこのカクカクした鹿と鳥は何? 誰でも連想するのは有栖川錦ですよね。なぜここに、という気もします。意味があるのか、思いつきなのか、わからないですねえ。しかしまあ、あまり直線的に解釈できる作人というのも、ただの絵解きみたいで底が浅い感じがします、これぐらいエントロピーが高い方が良いのかも。
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[ 2014/09/19 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

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