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藤井絞の辻が花の名古屋帯

第二千四百六十四回目の作品として、藤井絞の辻が花の名古屋帯を紹介します。

先日のコメントで、以前のブログの方が暖かみがあって好き、というのをいただいたので、この数日検討しておりました。まず「暖かみ」というのは地色だと思います。当社は初めてホームページ本体をつくって以来、ベージュの地色を使っていましたが、以前はそれが引き継げなかったのです。

もともとベージュの地色を決めたのは、かつて任天堂の研究所にいて、うちの子も買った大ヒット商品「ポケモンスナップ」のデザインも担当していたプロのデザイナーさんです。やっぱりさすがなんですね。今回、他の人のアドバイスも容れ、回りの色を変えてみました。

もう1つは全体の見通しで、fc2では写真を大きくしたので、多摩ケーブルのときのように全体をコンパクトにまとめることができなくなっていたのです。学生のレポートと同じで、詳細に報告することも大事ですが、相手にとって見やすくコンパクトにまとめることも大事ですね。というわけで今回はサムネイルを使ってみました。クリックしていただければ大きくなります。

さて今日の作品ですが、実在する辻が花裂をほぼ再現して帯の意匠としたものです。現代では、多くの作家が辻が花をテーマにした作品を創っていますが、その多くは、絞った部分を染液に浸けないで、筆で着彩していると思われます。しかし藤井絞の辻が花は、絞り専業の工房らしく、絞った後にちゃんと染液に浸けて染めています。見る立場になればどちらでも同じかもしれませんが、つくる立場になれば、両者の難易度の違いは大きいです。

たとえば、この作品の場合は、斜め取りの中に藤の花が入っていて、それぞれ別の色に染まっています。絞ってから筆で着彩するならなんでもできますが、染液に浸けて染めるとなると、斜め取りの色と藤の花の色とどちらが先なんだろう、と基本のことでも不思議なものです。(同系色の濃淡なら2度染めているんだろうと思いますよね。)
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お太鼓です

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腹文です。


斜め取りの中は、菊の花と藤の花、外の描き絵は葵です。ほぼ同じ辻が花裂があるので、再現ものということになります。ただし、斜め取り部分は、本歌は桶絞りですが、藤井絞は帽子絞ですので、ちょっと簡略化していますね。

帽子絞は生地を絞るときに芯を入れて上から竹の皮でカバーするのですが、現在ではフィルムを使います。竹の皮は竹の円周を越える幅はカバーできないので、広い面積は桶絞りを使ったのですが、フィルムなら面積は自由なので、現在はどんな広さでも帽子絞だけでできてしまうのです。

現在でも、桶絞りの職人さんはわずかにいますが、その技法は一見不合理で、竹の皮は面積に制約があったということに気付かないと、その存在の意義はよくわかりませんね。

完成した作品を見ると、室町時代と同じ桶絞りでも、フィルムを使った帽子絞でも、じつは筆で着彩していて絞りでさえないものでも、外見上は変わりません。伝統工芸という視点では、技法の継承は大事なので、なるべく本来の絞りが良いと思いますが、芸術作品という視点では、結果的に芸術性の高いものだけが良いので、途中の技法はどうでもいいように思います。
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お太鼓の近接で、描き絵がメインの部分です。

しかしその一方で、絶対にごまかしのきかないものがあります。それは描き絵の部分です。これだけは上手い下手がはっきり出ますものね。この作品は、写真3番目の葵を見ても、写真4番目の菊の花を見ても、線を気持ちよく引いていながら正確で、こういう状態を「筆に迷いがない」というのだなあと感心してしまいます。

有名な辻が花作家で、実は絞っていないという人は何人もいますが、でも彼らはみんな描き絵は上手いです。作家というものは、絞りができなくてもいいのですが、絵が下手ではだめ、ということですね。


IMG_4867.jpg
お太鼓の近接で、絞りと描き絵の両方がバランスよくつかわれた部分です。

IMG_4870.jpg
腹文の近接です
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[ 2013/08/31 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

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