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野口の紗のコート地

第二千六百八十四回目の作品として、野口の紗のコート地を紹介します。

コート地というタイトルにしましたが、12mの生地なので着物にもなります。紗の生地で文様を織り出しそれに刺繍を加えたものです。こういう作品はセンス次第ですが、織で柳を表現し刺繍で燕を加えており、さすが野口で着物好きが好みそうなポイントをわかっていますね。実際にこのシリーズはよく売れているそうです。

柳と燕という組み合わせは、土佐光起に有名な作品があってやまと絵の伝統的モチーフですが、琳派でも現代の着物の意匠でも採用されているので、どこかで見たことがあると感じられると思います。しかし、柳が織であるのに対し飛び回る燕だけを刺繍で表現することで躍動感や立体感が生じています。

友禅というのは、純粋な芸術である絵画の堕落バージョンあるいは通俗バージョンになりがちですが、織と刺繍を併用して重層的な表現をするというのは、絵画にはできず染織だけができることです。私はそれだけでも意義あることと思うので、こういう作品は大好きです。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は刺繍がある部分の近接、

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写真3番目はもっと近接、

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写真4番目は刺繍部分の拡大です。

この作品のように模様を織り出した紗の生地というのは紋紗と言って、夏物としては昔からあるありふれたものです。夏の長襦袢で流水や楓を織り出したものがよくありますね。こういうものは意匠やアイディア次第で高級品にもありふれたものにもなります。流水と楓の例でも、流水が紋紗で楓が刺繍で、その配色が上手ければ表地として魅力的だと思います。

この作品のばあい、柳は縞の中に納まっていますが、その縞がよろけて見えます。じつは縞は真っ直ぐなのですが柳がS状なので縞自体がよろけて見えるんですね。柳というのは風になびくもので、それが「柳に風」のたとえにも使われますし、土佐光起の元絵の柳も大いに風になびいています。

縞のコートはすっきりしていてかっこいいですが、粋すぎると感じる人もいます。S状の柳は本来は風になびく表現ですが、縞のコートが粋すぎると感じるのを緩和してもいるんですね。図案家というのはよく考えているものです。刺繍の燕のデザインは土佐光起に準じていますね。




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