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桜特集

第二千六百六十一回目は桜特集です。

東京は来週にも桜が咲くとのことですので、今日から何日か桜特集にしたいと思います。桜をテーマにした着物や帯は、絵としてはきれいですし作品としても魅力的なものが多いのですが、季節限定ということで、見るだけなら良いが自分のものにするのは躊躇するという方が多いですね。

商店街を歩く人にとっては、桜の開花に合わせて呉服店のウィンドウにも桜の着物が飾ってあって欲しいでしょうね。しかし呉服店が遅くとも2月ぐらいまでに売ってしまっておかなければ、人が桜の時期に桜の着物を着ることはできないはず。呉服店で桜の時期に桜があるとすればそれは売れ残りとも言えますね。

今日テーマにする帯は、昨年11月23日(二千五百四十七回)で紹介した織悦の垂れ桜の袋帯です。絵緯糸が唐織のように浮いて模様表現をする組織で、このような織り方の帯を織悦では「彩悦錦」とネーミングしています。

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いちばん上の写真は、中井淳夫の黒地の華やかな訪問着に合わせてみました。桜=華やかという発想の帯合わせです。写真で見るかぎり、このような合わせ方は桜というモチーフの扱いの王道だと思います。

この中井の作品は、近世の花の丸の小袖に取材したもので、オリジナルは総刺繍であったものを友禅に変更しています。もう1つの変更点はオリジナルに無い鈍い銀箔の花の丸を加えたことです。多彩で美しい花の丸に対し影のように寄り添う無機的な感触の花の丸を加えることで、おおらかな古典作品から陰影を含む近代作品に生まれ変わっています。芥川龍之介が今昔物語を近代小説に変換したのと似た技法だと思います。


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写真2番目は、花也の付下げ「和本」を合わせてみました。単一モチーフだけを繰り返し並べた意匠です。模様の面積だけ見れば実質訪問着ですね。

やはり桜=華やかという発想の帯合わせです。桜だけを題材にした着物や帯を合わせる時の難しさは、季節限定というだけでなく、桜という花が日本人にとって特別すぎて、他の植物を合わせることができないことです。桜の帯に梅や燕子花の着物を合わせれば、感動は増すどころか減殺されてしまいます。実際の花見でもそうですが、桜はセットで鑑賞する花ではないんですね。

桜の純粋な美を守ろうと思えば、帯合わせの相手は「桜に流水」ということで、波や流水ぐらいしかなくなってしまいます。そうであれば、これはもう帯合わせという文化の敗退ですね。今回は桜の純粋性を守りつつ、何かをプラスできないかということで「和本」を選んでみました。

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写真3番目は、一の橋の「花筏」を合わせてみました。「花筏」は日本の代表のような古典柄ですから、桜=古典という発想の帯合わせです。金地の帯に対し黒地の着物ということで、強いメリハリを演出してみました。古典というテーマで合わせるならば、個性的にしなくてはただの通俗になってしまいますものね。

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写真4番目は、花也の地味な訪問着を合わせてみました。彩色のほとんどない白揚げで、しかも裾の低い位置だけに模様があるという江戸時代後期から明治の前期にかけて流行った小袖の様式を踏襲したものです。

江戸時代後期という友禅の技術も縫箔の技術も円熟していたであろう時代に、なぜ色彩も模様面積も最小限にしたような小袖が流行ったのか不思議ですね。一般には武家の好みとか江戸の粋で説明されますが、江戸後期というのは文化が爛熟した時代ですが、洗練がきわまると人はこういうものを美と感じるのかもしれません。

帯は金地に多彩な桜の花を織り込んだ華やかなものですが、これにあえて地味な訪問着を合わせたパターンで、桜+地味でどうだ、という発想の帯合わせです。
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[ 2014/03/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

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