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野口の紗の付下げ

第二千六百五十回目の作品として、野口の紗の付下げを紹介します。

菊をテーマにした夏の付下げです。先日紹介した青楓と同じシリーズとしてつくられたものでしょう。地色は乳白色、染めていない生成りの色ですね。

IMG_7261.jpg
いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)、

IMG_7264.jpg
写真2番目は後姿、

IMG_7267.jpg
写真3番目は袖、

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写真4番目は参考図版です。

葉を見ると形は菊の葉ですし、花を見ると小さいながら形は菊の花なので、菊を描いた付下げだとわかりますが、全体の形はおかしいですよね。菊は蔓植物ではないのに、蔓のような曲線を描いています。

これは自然の菊を写生したものではなく、江戸後期に流行った蔓草模様の小袖を踏襲した意匠でしょう。江戸後期の小袖に蔓草模様に呼ばれる枝を曲線的に表現した一群の作品があります。蔦のように本来の蔓植物をテーマにしたものだけなら理解ができますが、その中には絶対に蔓植物ではない、というものも含まれるので不思議なのです。

写真3番目がその作例ですが、これはなんと燕子花です。燕子花といえば直線だからこそ美しく、絵師が燕子花をテーマにする時はその直線のきりっとした美しさを強調するものでしょう。それを何と自然の美に逆らって曲線で描いているのです。

他にも楓など、絶対蔓植物ではありえない植物を蔓として描いた作例が多く有りますが、当然菊もあります。彼らは自然の美に敬意を表するよりも曲線という形が好きで、曲線を描くために植物を利用しているだけなので、植物の種類や自然の形などどうでも良かったのでしょうね。

「直線は無限に大きい円の弧にすぎない」と言ったのはボルヘスでしたっけ。曲線愛好は美術史にしばしば現れます。いちばん有名なのはアールヌーヴォーですが、江戸の蔓草模様はそれに数十年先行します。
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[ 2014/03/08 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

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