東京刺繍の帯

第三千七百七十四目は、東京刺繍の帯を紹介します。

今回はメーカー名やブランド名はありません。実際の制作は東京のどこかで行われていて、それを問屋さんが集めて、主に他の問屋さんに販売しています。そのような問屋を仲間問屋と言います。東京にも知られている刺繍工房はありますが、そういう工房を退職したり卒業したりした人が、自宅で内職として制作することもありますから、誰がつくっているのかわからないのです。

刺繍の工房で働いている人は女性が多いですから、結婚や妊娠を契機に辞めて、子育てが終わった後に自宅で始めるというケースが多いのではないでしょうか。工房は経ず問屋と直接契約し、問屋は制作者の氏名は明かさないのです。それが分ったら小売屋やユーザーが直接仕事を頼んでしまい、問屋が成り立ちませんから。

そのようなことができるのが、刺繍という技法の特徴なのです。友禅であれば水洗とか蒸しとか一定の設備が要りますし、大量に残った染料を捨てるばあいは工業地域あるいは準工業地域でなければなりません。地染めをするには長さ12mの作業場が無いとムラになってしまいますしね。その点、刺繍は突き詰めれば針だけですから。場所も要らない、元手も要らない、仲間も要らない、自分の技術とセンスだけなのです。

というわけで、この作品も誰がつくっているのか全然わかりません。ただ分かっていることは、元締めになっている問屋が東京にいて、京都の問屋にも貸し出していることです。京都の問屋、例えば野口でこんな作品を見たら、刺繍の本場の京都には面白いものがあるなんて思ってしまいますが、じつは東京だったということもあるわけです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。縁日に移動サーカスが来たような楽しい雰囲気です。ヨーロッパのお祭りだと移動式の回転木馬が来たり、大道芸人が来たりしますよね、そんな情景でしょうか。

個人で創作している人にとって、いちばん難しいことは魅力のある図案を手に入れることだと思います。技術は工房で鍛えているので、多少歳を取ったって劣化することはないでしょう。デザインも自分が感動したものをそのまま表現すれば良いものができるでしょう。しかし業として日々制作していくときに、毎回、人を喜ばせる図案を思いつき続けることができるでしょうか。

野口や洛風林のようなセンスが売りの会社は、展示会では毎回、みんなの期待を裏切らないデザインを発表し続けます。それはデザインを生み出す組織を持っているか、複数のプロのデザイナーと契約していて、デザインについてしっかりお金を払っているからだと思います。個人はそれができません。お風呂で思いつけばタダですが、毎回思いつくとは限りませんから。

今回の作品はとても楽しい雰囲気で私は大好きですが、こういうのって、じつは何十本の中から選んでいるんですよね。この仲間で、前回良いなと思ったのは、いろんな種類の鳥、その前は香水瓶です。じつは1年に1回も出会ってないのです。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目から下は、個別の模様に近接してみました。

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写真4番目はお太鼓にある個別の模様です。汽車です。

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写真5番目はお太鼓にある個別の模様です。飛行機ですね。

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写真6番目もお太鼓にある個別の模様です。気球で飛んでいる人でしょうか、大道芸人でしょうか。
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[ 2017/06/12 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

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