2017 07123456789101112131415161718192021222324252627282930312017 09

千ぐさの色留袖の続き

第三千七百七十三目は、千ぐさの色留袖の続きです。

今回修理した色留袖は、江戸時代後期に流行した蔓模様小袖に想を得たものです。世界的にアールヌーヴォーが流行る100年近く前、なぜか日本に曲線の植物模様が流行しました。最初は蔓植物を選んで模様にしたのかもしれませんが、やがて菊とか楓とか杜若のような蔓ではありえない植物まで蔓のような曲線で表現するようになりました。曲線の植物模様が雪持ちになっている例もあり、この作品はそれを写したと思われますが、鴛鴦を加え、雪が止んだ朝の池の景色にしたのは創作です。

雪に金加工がしてあって、部分的に金色に光っています。雪に朝日が当たってキラキラ光っているからで雪はすでに止んでいることがわかります。葉に乗った雪も水分を多く含んでもう溶けかかっています。その雪の形もちゃんと写生されていますね。鴛鴦は5羽です。本歌の小袖では植物の背景は地染めだけですが、水鳥がいることで背景は水面ということに変わっています。

IMG_06062.jpg
いちばん上の写真は、オクミの鳥です。重厚なあしらいをしていて前姿のアイキャッチポイントになっています。よく見ると縫い目の近くが少し地色が濃い痕跡が残っています。友禅というのは蒸して発色するわけですから、直すときは別の色で直していて、蒸してから色が一致するわけです。しかし完璧な予想はできないので、多少うっすらわかるところがあるのではないかと思います。今後は、仕立てた後に、縫い目近辺を中心に色刷毛という方法で直します。直すというより調整という感じですが、それで完全に直るでしょう。

IMG_05982.jpg
写真2番目はマエミの鳥です。色が地味なメスの方が前を泳いでいるようですし、表情が生き生きしているように見えます。

IMG_06002.jpg
写真3番目は後姿ですが、背中心の手前側ですね。今回の修復では、全体が縫い目の奥のやけていなかった本来の色に戻りました。鳥の周辺は私が思っていたよりくっきりしていて、私が知ったつもりでいたものより綺麗でした。

IMG_06092.jpg
写真4番目も後姿ですが、背中心を越えた向こう側です。あしらいもなくメスで色も地味ですが、溌溂としていて、私にはこの鳥がいちばん魅力的に見えます。この作品ではオスは全て不活発、メスは全て生き生きしています。この着物を選ぶのは女性ですから、作者は女性に配慮しているんじゃないでしょうか。その辺も図案のテクニックかもしれませんね。

IMG_05992.jpg
写真5番目は、マエミの模様の重心がある部分です。唐突に菊が現れたりしてけっこう不自然ですが、これは本歌である小袖を忠実に写したものです。変だなんて思わないで、江戸時代の人の感性をそのまま受け入れればいいと思います。

img-21222.jpg
写真6番目は参考図版で、元になった蔓模様小袖です。今回この色留袖は、袖に金描きで加工して訪問着化する予定です。袖にどのような模様を付けるかと考える時、袖に模様がある元の小袖を復活させればいいわけで、その通りにはできないですが、参考にはなるわけです。私は、この小袖の中ほどから生えている蔓の束を小さくして、袖の裾から生やしたら良いように思います。
スポンサーサイト
[ 2017/06/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://shirokiyagofukuten.blog.fc2.com/tb.php/1407-f3042b26