第三千六百六十九回目は、千切屋治兵衛の絽の付下げの細部と帯合わせです。

いちばん上の写真は、マエミの上の方の藤の花です。この作品には白い糸目の線はありませんが、模様どうしが重なるところを見ると、じつは見えない糸目の線で防染されていることがわかります。中井さんのセンスでは、この作品は模様の色と地色は調和すべきで、白い線で分断されるのは無粋だと思ったのでしょうね。

写真2番目は、マエミの下の方の藤の花です。蔓の回転を見ると、ちゃんと日本画の修業をした下絵師が描いているんだなあと思います。

写真3番目は、後姿の藤の花です。この作品はあまり濃淡や陰影が付けられていません。葉を見ると微妙に濃淡があるかなあという程度ですね。しかしそれでも奥行きは感じます。デッサンが完全ならば陰影は付けなくても遠近感はおのずと生まれるのでしょうね。

写真4番目は、マエミの藤の花の近接です。藤の花も陰影などついていないですが、平面ではなく丸くなっていると感じます。

写真5番目は、龍村の絽の袋帯を合わせてみました。草花模様の着物の帯合わせをするときに、植物文の帯を合わせて良いものでしょうか。本来であれば、植物文どうしを重ねたくはないものですが、実際には帯も着物も植物文が多いですから避けられないことがあります。この帯のような器物模様は貴重ですね。色も同系濃淡でまとまり、とても都会的な帯合わせに見えます。

写真6番目は、龍村の絽の袋帯を合わせてみました。縁起の良い若松文です。植物文どうしを合わせていますが、なるべく関係のないようなものを合わせてみました。流水文でもあると思えば、まあ許されるでしょうか。
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