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千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百十六回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

金彩の加工にはいくつかの技法があり、糊筒に糊と金粉を入れて手描きする場合もありますし、型を使った摺箔や、縁蓋を使った印金もあります。それぞれ特徴がありますが、この作品は縁蓋を使っていて、精緻でくっきりしています。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。地色は紫紺で、模様は建築様式でいうアカンサス装飾ですね。かつて付下げとして制作されたこともありますが、今回は名古屋帯として制作されています。

型を使った摺箔であれば、型は使い回されるためいつも同じ大きさです。付下げに使った方をそのまま名古屋帯に使うのは、大きさが違って不都合かもしれません。縁蓋のばあいは、生地にプラスティックシートを置き、カッターで切って模様の輪郭を作るのですが、シートは使い捨てなので、いろんな大きさを作ることができます。

もちろん使い回せる型よりも、一回ごとに高度な技で切らなければならない縁蓋の方がコストが高いです。金彩模様が繰り返す飛び柄小紋なら型による摺箔の方が合理的ですし、繰り返さない訪問着や帯のお太鼓の模様なら縁蓋による印金の方が合理的ですね。

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写真2番目は、お太鼓の模様の近接です。金彩の色は画一ではなく、金の厚みを変えることで色や輝度の違いを生んでいます。いちばん薄く金を置いたところは、地色の紫紺が透けて銀色に見えます。その色と輝度の違いによって、平面の模様が立体的に見えるわけです。

元作品である建築様式のアカンサス模様は、コリント様式の柱の柱頭の装飾ですが、建築物の一部ですし彫刻ですから立体です。その雰囲気を写すには平面ではダメなんですね。金の厚みによって色の変化を作り、元作品に近くしているのです。

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写真3番目は、さらに近接です。縁蓋による作品というのは本来精緻なものですが、実物を見ると意外と絵が歪んでいてハンドペイントの雰囲気です。これは、縁蓋によって描いた模様の輪郭を、その後で糊と金粉を入れた糊筒で手描きしているからです。輝度の高い輪郭の無い部分を見ると、くっきりして精緻で、本来の縁蓋のタッチです。糊筒で手描きをした部分がハンドペイントタッチになっているんですね。

金の色の濃淡による奥行きと、精緻な美しさと人の手の温かみの両方の混在とが、この作品の魅力でそれが倉部さんの様式です。

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写真4番目は、腹文の全体です。お太鼓の模様のダイジェストで、建築装飾の一部ですね。

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写真5番目は、腹文の片側です。

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写真6番目は、腹文のもう一方の片側です。

最後に「印金」と「摺箔」の違いですが、金箔の厚みの違いです。中国から名物裂として輸入された金彩加工の裂は、仏具などが多く金箔の厚い印金で豪華な雰囲気でした。日本で近世初期に慶長縫箔小袖としてつくられた金彩加工の裂は、人間が着て自然に動けるように金箔を薄くしていますが、それが摺箔です。金が薄い分、材料代は安いでしょうが、ミクロ単位で金を薄くするということで技術的には高度なのではないでしょうか。

現代の着物業界では、型によるものを摺箔、縁蓋によるものを印金と言っています。もちろん現代の業界の慣例による便宜的な分類で、名物裂がプラスティックを使っていたわけではありません。
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[ 2016/09/26 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

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