2017 09123456789101112131415161718192021222324252627282930312017 11

一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせ

第三千五百二回目は、一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。「織りの着物に染めの帯、染の着物に織の帯」なんていいますが、今回は染めの着物に染めの帯の組み合わせですね。私は、染だろうが織りだろうがかまいませんが、染めどうしを合わせるのが難しいのは、質感が同じになってしまうということのほかに、お互いが意味や物語性を持っているためにそれが重複したり反発してしまいがちということもあるでしょう。

染めの中でも手描きの友禅の着物というのは、生地の縫い目を越えて模様がつながりますから、着物全体で1つの意味がある意匠になります。そのため意匠が意味や物語性を持ちやすくなり、染め帯の意味や物語と衝突する危険が高いです。意味の無い模様なら良いのか、とも思いますが、意味の無い模様、すなわち幾何学模様というのは、反復しているものが多いので、手描きよりも型染にふさわしいですね。

IMG_29991.jpg
いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げ「薫炉」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。友禅どうしが重ならないように、刺繍の作品を合わせています。「薫炉」は、かすかな匂いを楽しむために秋草を入れたもの。季節はどちらも秋です。同じ金糸でありながら、植物である秋草と金属である蓋の質感の違いを繍い分けているのが見事。

IMG_30041.jpg
写真2番目は、千切屋治兵衛の付下げ「文箱」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。文箱の模様は桐で、日本政府の家紋でもある模様ですから、縁起が良いだけで季節はありません。季節の無い組み合わせにしてみました。

IMG_30031.jpg
写真3番目は、野口の付下げ「琳派秋草」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。倉部さんは、千切屋治兵衛、野口、一の橋で扱っています。同じ人が作っていながら、経由する問屋によって、作品の雰囲気が違うんですよ。帯の模様と同じ芒がメインで、模様のテーマがつながるような帯合わせにしてみました。

倉部さんによる帯合わせを3通り試しました。季節を合わせて植物が違う組み合わせ、季節が関係の無い組み合わせ、季節も植物も合う組み合わせの3通りです。

IMG_30021.jpg
写真4番目は、千切屋治兵衛の付下げ「大楓」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。中井恭三さんの息子で淳夫さんの甥にあたります。楓だけの単純なモチーフで、淡い色と大きな形を組み合わせ意匠です。私は大好きな作品で、着物のデザインがみんなこんなパターンで、そればかり数十人集まったら見てみたいです。

IMG_30011.jpg
写真5番目は、千切屋治兵衛の付下げ「山帰来」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。山帰来は植物図鑑ではサルトリイバラの名で載っていることが多いです。晩秋にできる赤い実が冬になっても付いているので、クリスマスのリースに使われますね。

藤岡さんの糊糸目は、乳白色で柔らかいタッチなので、人の手の温かみを感じます。糊糸目には、毛筆の飛白のように擦れているものや、繊細で神経質なものもあります。糊糸目とゴム糸目の違いについて、糊糸目は温かみがある、なんて書いてある本もありますが、それは間違いで、ゴム糸目は常に綺麗であるのに対し、糊糸目は作者の個性が出やすいということなのです。

スポンサーサイト
[ 2016/09/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://shirokiyagofukuten.blog.fc2.com/tb.php/1133-44240428