千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせ

第三千四百九十六回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせです。

今回の着物は、荘重な雰囲気ですから、豪華な訪問着としてフォーマルな場で着るのがふさわしいように思います。しかしながら、鹿の元絵は、宗達の下絵(本画の前の練習という意味ではなく光悦が歌を書く料紙に下地として描く絵)ですから、琳派の洒脱な雰囲気なのです。つまり倉部さんの存在感のある仕事と、金描きの若松のために、洒脱から荘厳へと変換されてしまったことになります。私は、神秘的な感じさえして春日曼荼羅を連想してしまいますから。

帯合わせをする場合には、格式高い帯を合わせることで、フォーマルの場でエースをねらうのが良いと思いますが、その反対に洒脱な帯を合わせて、元絵の宗達の洒脱な下絵に戻せないでしょうか。とりあえず今日は、フォーマル度の強い帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、梅垣織物の袋帯「名宝格天文」を合わせてみました。地が綴組織で、模様は絵緯糸で表現しています。極めて細い糸を使っていて、重厚な雰囲気のわりに軽くてしなやかです。良い時代の西陣の織物ですね。格天井のデザインは、堅牢な枠の中に模様が収まっているので、堅く見えフォーマル感があります。

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写真2番目は、坂下織物の袋帯を合わせてみました。古代から明代まで漢民族にもっとも愛された蜀江錦の意匠です。ガチっとした構成を持つ織物で、いかにも皇帝のいる中国らしいパターンです。格の高いデザインと言えばこれが最高でしょう。反対に日本らしい織物の意匠というのは花鳥風月の世界ですね。花鳥文や秋草文の左右非対称のパターンを思い浮かべてみれば違いが分かります。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯「立沸花文」を合わせてみました。唐織による織物で、近世の能衣装に取材したものです。立沸は、海から水蒸気が上がる光景でじつは雄大なテーマなんですね。平安貴族に由来する有職文様に属します。花文は、梅、椿、牡丹などが描かれており左右非対称の日本的な四季花の世界ですから、唐織というのは、名前とは逆に日本的な織物です。

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写真4番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。織物の技術で出来る限りの精度で写実的に波を表現したものです。格の高い意匠というのではなく、歴史も意味もない写実的な織物ですが、圧倒的な存在感で格が高いような気がしてしまいます。

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写真5番目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。倉部さんの作品は、金糸を主体とした色の無い世界ですが、多色の帯を合わせて思い切り色を足してみました。
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[ 2016/09/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

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