第三千四百七十三回目は、千切屋治兵衛の着尺「どんぐり」の帯合わせです。
今日は染め帯で合わせてみました。
いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、糊糸目です。開きかけの窓を思わせる取り方のなかに、笹とフクロウです。ドングリが落ちているブナの森には、フクロウもいるだろうという合わせ方です。
腹文は、やはり四角い取り方の中に笹とフクロウの羽根が描かれています。
写真2番目は、花也の名古屋帯「槇に流水」を合わせてみました。槇は、ダンマル描きの上に一部金加工、さらに一部を金糸で刺繍をしています。ダンマル描きだけ、+金加工、+金刺繍、と段階を付けることで遠近感を出しています。砂子は白いので、ダンマルではなく友禅の糊による防染でしょうか。
槇からドングリが落ちるわけではないですが、木の模様の下に実の模様が有ると、木から落ちたという意味かと錯覚しますね。
写真3番目は、藤井絞の名古屋帯「六葉花」を合わせてみました。6枚の花弁の花は家紋や瓦の模様としては有名ですが、実際には珍しいようで、私はこの植物の本当の名前がわかりません。ハナニラも花弁は6枚ですが、木の花じゃないですしね。
絞りの技法としては、浸けない邪道の絞りです。絞りというのは絞った後に染液に浸けるのが本当ですが、絞った後に筆で着彩するだけの絞りもあります。有名な個人作家のものは、じつはたいていこのような絞りで、藤井絞にいるような本当の絞り職人からすれば邪道なのですが、この作品では邪道をしています。結果は、ホンモノの職人がニセモノを作ると、さらに上手くなる、ということでした。
ホンモノの浸ける絞りは、技術的に制約があるので色数やデザインにも制約があるのです。浸けないで済めばデザインの制約が少ないので、思い通りの色数やデザインができるということです。
写真4番目は、藤井絞の名古屋帯を合わせてみました。お太鼓部分を縦に半分に染め分けていますがその境界線は縫締絞りを思わせる凹凸があります。絞りによる染分けは、その実際の工程を考えると、直線というのは花のような丸い形より難しいわけですね。そのために絞りの痕跡である凹凸がありがたいわけですね。
更紗部分は友禅や金線も併用していますが、主要な花のいくつかは絞りなんですよ。
写真5番目は、花也の名古屋帯を合わせてみました。着物の模様が、華やかさ無い堅い実だけなので、帯で思い切り華やかな多色の花にしてみました。
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