花也の付下げ「貝桶」の細部

第三千三百七十七回目は、花也の付下げ「貝桶」の細部です。

実質的には堂々たる訪問着であるこの着物は、貝桶が前姿に3個、後姿に2個、袖に各1個ずつ、胸に1個描いてあります。それぞれの貝桶の大きさは、現代の着物の標準的な大きさからすれば、かなり大きいと思います。ここ30年ほどは、意匠の傾向としては小付けの時代ですからね。各模様は独立した器物文様なので、周りに大げさに紐を這わせて1つの模様に見えるようにしています。

それぞれの貝桶は中に植物文と割り付け文が入っていて、取り方の役割をしているので、重加飾の取り方+取り方外部のあっさりした模様(紐)の組み合わせとも言え、典型的な安田様式でもありますね。

今日は、前姿と後姿の貝桶5個の細部を紹介します。

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いちばん上の写真は、マエミの上の方の貝桶です。貝桶の榧(かや)の模様と割り付け文は、貝桶の六角形の角度に関係なく平面に描かれています。これは貝桶を描いた江戸時代の袱紗の有名な作品の様式に倣ったものです。それと同時に、これが模様のある貝桶を写生したものではなく、貝桶形の取り方の中の模様ということでもありますね。

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写真2番目は、オクミの貝桶です。紐には朱と白があって、前姿は朱が2本、白が1本、後姿は1本ずつですね。

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写真3番目は、マエミの下の方の貝桶です。

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写真4番目は、後姿の背中心右側の貝桶です。

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写真5番目は、後姿の背中心左側の貝桶です。

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写真6番目は、マエミの上の貝桶のさらに近接です。線描きの葉の表現はかすれはありません。精緻な糊糸目ですが、ちょっと柔らかい感じなので温かみがあります。花也の下職の糊糸目職人には、神経質な糸目を置く人や、毛筆のようなカスレをわざと作る人もいるので、糊糸目は防染するという機能だけではなく、それ自体が個性で作品なのです。
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[ 2016/05/09 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

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