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野口の絽の付下げ「更紗」の帯合わせ

第四千四百四十五回目は、野口の絽の付下げ「更紗」の帯合わせです。

今日は織りの帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の夏の袋帯「花葉」を合わせてみました。花が重なる組み合わせになってしまいましたが、雰囲気が違うから許されるかなあ。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」を合わせてみました。花音とは花火の意味ですね。白井進さんの命名なんでしょう。

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写真3番目は、龍村の絽の名古屋帯「風矢羽」を合わせてみました。

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写真4番目は、龍村の絽の名古屋帯「かすみびし」を合わせてみました。

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写真5番目は、龍村の絽の名古屋帯「彩波」を合わせてみました。「いろは」と読みます。「彩」というわりに色のない作品に見えますが、白く見える波はじつは淡い色が付いています。イメージとしてはごく稀な現象である彩雲だと思います。

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写真6番目は、龍村の絽綴の名古屋帯「花雲文」を合わせてみました。

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写真7番目は、龍村の絽綴の名古屋帯「遥映垣」を合わせてみました。花の模様を合わせる相手として、雲でも垣でもいいのですが、雲だと雄大な景色の一部のように見えますし、垣だと庭先に見えるものですね。
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[ 2019/04/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「更紗」の細部

第四千四百四十四回目は、野口の絽の付下げ「更紗」の細部です。

4月24日にさらっと紹介した野口の絽の付下げ「更紗」の細部です。24日に前姿(マエミ+オクミ)と後姿とメインの見どころだけ紹介しましたので、今日は残りの部分を紹介します。

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いちばん上の写真は袖です。青と辛子色を基調とした作品です。青と黄色の配色は国旗にもけっこうあって、スウェーデン、ウクライナ、ボスニアヘルツェゴビナ、カザフスタン、アルゼンチン、ウルグアイ、パラオ、ナウルなど多いです。人類に愛される配色なンですね。

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写真2番目は、もう片方の袖です。この付下げは模様の大きさは小付けですが、模様の量は意外に多く、結果として模様面積は大きいのです。訪問着的な作り方なんですね。袖の模様も訪問着的でけっこう多いです。

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写真3番目は胸です。通常の京友禅は、胸の模様はあっさりとしていて、あしらい(刺繍)などしませんが、この作品ではポイントになる花にかなり重い刺繍をしています。

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写真4番目は、胸にある更紗の花の近接です。刺繍の重さがわかるようにできるだけ近づいてみました。

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写真5番目は、マエミにある更紗の花を斜めから撮ってみました。刺繍の立体感が伝わるように撮ってみました。

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写真6番目は、胸にある更紗の花を斜めから撮ってみました。
[ 2019/04/29 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせ

第四千四百四十三回目は、野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯を合わせてみます。


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いちばん上の写真は、花也の紋紗の名古屋帯「色紙取り撫子と流水」を合わせてみました。着物には絵画性が少ないので、帯は具象画的なものにして絵画性を補完しました。

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写真2番目は、花也の絽縮緬の名古屋帯「半円取り笹に柳」を合わせてみました。いきなり黒地どうでしょうか。淡い地色に黒を合わせるようなコントラストが強い帯合わせが好きな人もいますが、海苔巻きみたいにも見えますよね。

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写真3番目は、花也の紋紗の名古屋帯「葡萄」を合わせてみました。葡萄と言えば紫のイメージですが、これはマスカットみたいな色の葡萄です。白茶の地色に対し、黄緑が爽やかです。

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写真4番目は、花也の紋紗の名古屋帯「変わり繡波文」を合わせてみました。着物も帯も横段(水平方向の模様)でありながら、一方は直線、もう一方は曲線という組み合わせにしてみました。

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写真5番目は、花也の紋紗の名古屋帯「丸取波に千鳥」を合わせてみました。着物の横段直線に対し、帯は丸基調という対照的な形で汗てみました。

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写真6番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。描き絵の割合が多い前期の様式です。描き絵というのは、やり直しがきかないという点で難易度の高い技法です。

この帯は六通です。六通の染め帯は見えない場所に絵が描いてあるわけで、見えない場所にお金を払っていると思うと損した気になるのですが、お太鼓を見ると額に収まらない伸び伸びした感じがあります。お太鼓模様の帯は、最初からお太鼓を意識して中に収めようとして描くためか、絵が小さくまとまっている感じがすることがあります。

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写真7番目は、野口の夏の名古屋帯「朝顔」を合わせてみました。透け率の大きい立て絽の生地を使った作品で、かなり原色で模様が描かれているのですが、生地が透けているため見た目ちょうど良くなっています。

着物の模様は直線中に唐草模様が入っていて、格の高さを感じますが、帯は気ままに描いているようで、カジュアル感があります。そのバランスの悪さを感じますか。悪い例として載せてみました。

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写真8番目は、花也の紋紗の名古屋帯「短冊取り草花」を合わせてみました。着物が横段模様であるのに対し、帯は縞状で、体の上で経緯が交差するようになる帯合わせです。やはり落ち着かない感じがしますね。横段どうしで太さが違う、という組み合わせの方が良いですよね。
[ 2019/04/28 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせ

第四千四百四十二回目は、野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせです。

今日は龍村の夏の名古屋帯を合わせてみます。絽の名古屋帯と絽綴の名古屋帯です。

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いちばん上の写真は、龍村の絽の名古屋帯「秋涼文」を合わせてみました。着物の意匠が絵画的ではないので、思い切り絵画的なテーマの帯を合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「夏蒐文」を合わせてみました。絵画的な帯を合わせるとともに、着物の横段に対して、帯は丸、という対照的な組み合わせを意識してみました。

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写真3番目は、龍村の絽の名古屋帯「天の川」を合わせてみました。シンプルで幾何学的な模様でありながら、七夕を連想させる物語性のある帯です。欠点は、七夕を連想させるので夏前半になってしまうことですね。仙台のように8月に七夕をする地域もあるので、そんなに短くはないですが。

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写真4番目は、龍村の絽綴の名古屋帯「光浪文」を合わせてみました。初代平蔵以来の意匠で、復刻とも言えます。最初の発表時は、この帯を詠った与謝野晶子の短歌が付いていました。

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写真5番目は、龍村の絽綴の名古屋帯「花流水」を合わせてみました。

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写真6番目は、龍村の絽綴の名古屋帯「彩葉楓」を合わせてみました。「いろはかえで」と読みます。
[ 2019/04/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせ

第四千四百四十一回目は、野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の帯合わせです。

今回のような絵画的ではない意匠の着物に対する帯合わせは、絵画的なものが合わせられるので便利です。呉服店や展示会で帯を買うと考えると、単体で絵画的に鑑賞できるものを買いがちです。横段や幾何学模様よりも、花や鳥がいる方が見て楽しいし、買ったときの満足感も大きいですから。家に持って帰って着物に合わせて初めて良さがわかる帯よりも、その場で目を楽しませてくれる方が良いですものね。

しかしながら、着物というのはたいてい花の模様が付いているものですから、花どうしが重なってしまうということはよくあります。気持ち良く帯が選べるという点で、今回のような具象画でない着物はありがたいんですね。

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いちばん上の写真は、織悦の紗の袋帯「菊流水」を合わせてみました。単体で絵画的に鑑賞できる花模様の帯を合わせてみました。織悦の色は多色でも透明感があります。

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写真2番目は、岩井一男(1799)の夏の袋帯を合わせてみました。花の種類は多いですが色数は抑えられ、絵画的な喜びはそれほどでもありません。作り手にしてみれば、着物に合わせるという帯の用途を考えたバランスなんでしょうね。

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写真3番目は、龍村の夏の袋帯「水衣若松文」を合わせてみました。これは存在を主張する帯で、大羊居辺りに合いそうですね。

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写真4番目は、紫紘の袋帯「撫子文」を合わせてみました。

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写真5番目は、織悦の夏の袋帯「露芒」を合わせてみました。芒というテーマは、具象画的であっても、あまり差障りなく花模様の着物に合わせられるものです。脇役専門の俳優の方が、いろんなドラマに出られるということでしょう。

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写真6番目は、橋本テル(602)の夏の袋帯「芳玉」を合わせてみました。

絵画的でないものどうしの組み合わせです。絵画的なものどうしの組み合わせは野暮になりがちです。同じものどうしを合わせるならば、絵画的でないものどうしの組み合わせの方がましですね。ずうずうしい人どうしの組み合わせは喧嘩になりますが、控えめな人どうしの組み合わせは事件は起きませんものね。

着物は横段模様ですが、帯も横段にしてみました。色数を抑えるというのは都会的なセンスの基本ですが、それならば模様の形の種類を抑えるという考え方もあって良いと思います。

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写真7番目は、織屋は忘れてしまいましたが、「万華鏡」というタイトルの夏の袋帯を合わせてみました。華文に見える文様が有職文様のように並んでいるので、フォーマル感があるのですが、タイトルを見ると「万華鏡」とのことで、じつは自由なデザインということなんですね。

これも絵画的でないものどうしの組み合わせですが、横段直線の着物に対し、丸の模様の帯ということで、形を対照的にしてみました。
[ 2019/04/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の細部

第四千四百四十回目は、野口の絽の付下げ「市松シケ模様」の細部です。

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いちばん上の写真は、昨日紹介できなかった袖です。

袖の模様は3個で、そのうち1個に刺繍があります。もう片袖にも3個の模様がありますが、そちらには刺繍はありません。この作品は、模様自体は単純な繰り返しですが、その代わり刺繡比率が高く、前姿については、4個の模様のうち3個、後姿については3個の模様のうち1個、胸の模様は1個のうち1個に刺繍があります。、

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写真2番目は、マエミの模様の近接です。四角い模様の上下の枠に唐草模様があるのですが、金彩模様が途中から自然に金糸の刺繍に変わって行くようになっています。全部金糸の刺繍にした方が豪華ですが、一部を軽いタッチの金描きにした方が洗練された感じがするのではないでしょうか。

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写真3番目は、さらに近接してみました。技法はまつい繍です。ノの字をずらしていく繍い方で、曲線の表現に向いています。金駒で刺繍するより柔らかい感じでしょうか。

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写真4番目は、斜めから撮ってみました。刺繍の特長の1つは立体感ですが、立体感を感じられるように斜めから撮ってみました。

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写真5番目は、さらに近接して斜めから撮ってみました。この距離になると生地の組織もよくわかります。3本絽ですね。
[ 2019/04/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ「市松シケ模様」「更紗」

第四千四百三十九回目は、野口の絽の付下げ「市松シケ模様」「更紗」を紹介します。

今日は新しく紹介するものです。本来であれば、細部もちゃんと紹介し、帯合わせをお見せしたいところですが、今回はとりあえず急いで見たい、という要請があるので、2反まとめて紹介します。夏物は、今夏ご使用ならもうテキパキ仕立てないといけませんものね。明日以後、それぞれの絽の付下げの細部や帯合わせをお見せします。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は、後姿です。

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写真3番目は、いちばん見どころで、マエミの近接です。模様自体は単純な繰り返しですが、そのかわり前姿も後姿も袖も刺繍が多めです。

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写真4番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。もう1反紹介する付下げは、わりと小付けの更紗模様です。小付けの代わり模様の量は多めです。

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写真5番目は、後姿です。

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写真6番目は、いちばん見どころで、マエミの近接です。集中して刺繡がしてあります。胸の部分にも更紗の花があるのですが、そこも集中した刺繍があります。後日お見せします。
[ 2019/04/24 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の絽の付下げ

第四千四百三十八回目は、野口の絽の付下げを紹介します。

今日も昨日のリクエストの続きで、絽縮緬と絽の付下げを紹介します。絽縮緬は、普通の絽に比べて着る期間が少し長く、6月と9月も着られることになっています。実際には、現在の習慣では絽も紗も6月ごろ着てしまっていますけどね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。水辺の芦ですので、初夏でも初秋でも大丈夫だと思います。野口らしい華やかな雰囲気ですが、朱系の色が使ってないんですよね。そこが野口の上手いところで、年輩者が着られる華やかな着物、という難しい問題を解決しています。

朱系の色の代わりに使っているのは、紫、辛子色、黄緑の濃淡2色、紺の組み合わせで、これが今に至るまで野口のレギュラーカラーになっています。色だけ見て、野口だ、と分るようなイメージカラーを持つことはすごいことです。一流企業のブランド戦略と同じですよね。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は、マエミの近接です。絽縮緬がよくわかるように撮ってみました。あまり隙間率は高くないです。

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写真5番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。踊るような流水と薊の流麗な曲線が相まって、リズミカルなふんいきです。地色はモダンなペパーミントで、それによく合う紫の組み合わせです。

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写真6番目は後姿です。

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写真7番目は袖です。

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写真8番目は、マエミの近接です。地の組織がわかるように撮ってみました。一応絽としましたが、実際は、絽と紗が組み合わさったような組織です。
[ 2019/04/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の紗の付下げ

第四千四百三十七回目は、野口の紗の付下げを紹介します。

今日も昨日のリクエストの続きで、白地(アイボリー)の紗の付下げを紹介します。昨日は黒地でしたが、今日は白地です。白地と言ってもアイボリーですね。同じ年に作られた同じシリーズで、自由に写生しているように見えて実は小袖に取材しています。ただ色については野口の個性が出ています。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

綺麗な曲線が心地良いですが、あれっ、菊って蔓植物ではないですよねえ。これは江戸時代後期に流行った蔓草模様を写したものなのです。蔓草模様は、最初は蔓植物をテーマにしたのでしょうが、そのうち菖蒲、桜など絶対に蔓植物でない植物も蔓で表現するようになりました。なぜそうしたのか、それは当時の人が曲線は美しいと気がついたからでしょう。アールヌーヴォーに数十年先立ちます。

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写真2番目は後姿です。菊の葉がメインで、おまけのように花が付いています。花と葉と主役を逆転させているのは斬新でもあります。これも蔓草模様の特徴ですね。曲線を主役にすると、自然にそうなったんでしょうね。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は、マエミの近接です。地色の白と菊の葉の青の配色がこの作品の見どころですよね。考えてみれば、新幹線の色です。

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写真5番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。若楓をテーマにした作品で、本歌の小袖もあります。初夏にも着られますし、なにげに初秋にも着られるんじゃないでしょうか。

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写真6番目は、後姿です。後姿で楓はつながらず、背中心辺りから別の枝が出ています。楓の枝は曲線ではないので、流麗につながって行くということはないからかなあ。

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写真7番目は袖です。よく見るとミントグリーンみたいなモダンな色がさりげなく使われています。そのおかげで作品がモダンな雰囲気になっています、こういう配慮が野口っぽいですね。

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写真8番目は、マエミの近接です。菊は、葉が巻いて裏返しになるところなどけっこう写生志向ですが、楓では葉の途中が疋田に切り替わるなどけっこう装飾的なのです。同じシリーズに見えて、本歌が違うとかなり違いがあるものなのです。
[ 2019/04/22 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の紗の付下げ(読者からのリクエスト)

第四千四百三十六回目は、野口の紗の付下げを紹介します。

先日の紋紗の夏帯の帯合わせに使ったところ、もう1度見たいというリクエストがあったためです。以前紹介したことがありますが、何年も前なので、探してもらうより掲載し直しました。

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いちばん上の写真は、野口の黒地の紗の付下げ「海浜模様」の前姿(マエミ+オクミ)です。海の中に松島があるという小袖にもある伝統的な意匠です。実際にある海浜模様ではありますが、島には古代の製塩所である藻塩を焼く設備が描かれています。須磨や明石、あるいは淡路島のまつほの浦の藻塩を焼く風景は、多くの歌に詠まれて歌枕になっていますから、単なる自然の景色ではなく文芸テーマでもあります。

百人一首では、「来ぬ人をまつほの浦の夕凪に焼くや藻塩の身も焦がれつつ」ですよね。

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写真2番目は後姿です。帯より下の裾模様については海中に島が3つですが、島というより州浜のように描かれています。波と雲は線描きですが、波だけでなく雲も描くことで、視点がすごく高いところにあることになって、雄大な風景のようになります。

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写真3番目は、マエミの模様の近接です。

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写真4番目は、松の近接です。連綿と描き続けられたこの意匠ですが、野口の個性が発揮された部分は、青と辛子色の松だと思います。この配色がなければ、平凡な小袖写しにすぎなかったでしょう。

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写真5番目は、藻塩を焼く光景を意匠化した部分です。道具だけで表現するのも、この意匠の伝統です。

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写真6番目は、野口の黒地の紗の付下げ「垣と花」の前姿(マエミ+オクミ)です。垣とともに描かれているのは、菊、萩、女郎花ですから、どちらかと言うと初秋で、夏後半のイメージですね。しかしながら、夏前半のイメージである紫陽花、百合、鷺草、河骨は、実際には7月に入ると終わってしまうので、後半の花の方が実際には使いやすいでしょう。

季節は先取りということで、間違えるなら前倒しで間違えた方が良いです。

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写真7番目は後姿です。けっこうリズミカルに並んでいます。草がそよぐのは当たり前ですが、直線の垣が傾くことで、リズムが増幅されるんですね。ただの草花模様ではなく、垣が描いてある理由で、垣の上手い使い方です。

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写真8番目は袖です。菊の花の一部とともに、垣もまた疋田になっています。着物の意匠というのは、装飾と写生の中間にあります。この作品は菊の葉の色変わりのグラデーションが綺麗で写生のように思わせますが、このような疋田を使うことでぐっと装飾の方に引き戻しているわけです。装飾と写生の両府の要素が併存して揺れているわけですね、それがこの作品の魅力ではないかと思います。

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写真9番目は、マエミの近接です。野口らしい華やかな雰囲気ですが、それは模様の大きさにあります。小付けが主流である今の基準からすると少し大きいですよね。これからは大きい時代が来ますよ。
[ 2019/04/21 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の染めの着尺「竹筆縞」の帯合わせ

四千四百三十五回目は、野口の染めの着尺「竹筆縞」の帯合わせです。

今日は友禅の染め帯と合わせてみました。本来であれば、織りの帯とも合わせてみたいところですが、写真を撮る前に売れてしまいましたので、今回はこれで終わりです。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の名古屋帯「柘榴と桑」を合わせてみました。糊糸目による写生的な作品です。実際に制作したのは藤岡さんです。桑の実を着物の模様にするというのはあまり意識していなかったのですが、考えてみれば絹の元ということですね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「梟」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。梟というワイルドなテーマをあつかいながら京友禅の雅な雰囲気を保つため、取り方の中に閉じ込めています。見る人は鳥獣とリアルに接するのではなく、窓越しで見るような感覚になるわけです。ドラマで言えば、生々し過ぎる場面を回想シーンにするような感じで、取り方の使い方の1つですね。腹文は羽根です。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「鼠の大黒」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。江戸時代には鼠が来るということは富裕の証拠ということで、縁起物として鼠と米俵、鼠と大黒様のような絵が描かれました。鼠の顔は面相筆で描いています。友禅の職人ではなく、そこだけ面相筆を使える人(例えば人形師)に頼んでいるんですよ。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「楓」を合わせてみました。実際に制作したのは野村さんです。くっきり黒地いかがでしょうか。生地は玉紬で、本来であれば結城紬などに合わせるべき帯でしょうね。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「市松取り笹と桜」を合わせてみました。桜は花弁のみ、つまり散った桜で、着用期間はやや長く今でもかろうじて大丈夫です。

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写真6番目は、花也の名古屋帯「輪繋ぎ」を合わせてみました。着物の模様の線に対して、丸を合わせてみました。

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写真7番目は、秀雅で仕入れた蝋染の名古屋帯を合わせてみました。本蝋(パラフィン)を使ったもので、友禅に比べて不器用な感じが味わいです。蝋染というのは、蝋を溶かして液体にして描き、冷えて固まって防染効果を発揮するわけですが、皆川月華の時代はパラフィン蝋の融点が高く火傷しながら描いたそうです。今は融点の低い蝋もあるそうで、染色材料の店で選べるらしいですね。

ちなみに蝋とは英語でいえばワックスですが、そういう物質があるわけではなく、油脂のうち常温で固体のものを言います。気化すると燃焼するので、染色材料としてよりも蝋燭として使いますよね。古代においては蜜蝋で、近世以前は動物の脂肪、植物の油分(木蝋)が照明として使われました。近代では石油から作られパラフィンと言います。

正倉院の臈纈は聖武天皇がハチミツを食べていたので蜜蝋を使っているのですが、その後ハチミツを食べる日本人はいなかったので、臈纈は絶えました。復活するのはパラフィンが手に入るようになった大正時代です。
[ 2019/04/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の染めの着尺「竹筆縞」の帯合わせ

四千四百三十四回目は、野口の染めの着尺「竹筆縞」の帯合わせです。

今日は帯合わせを通して藤井絞を紹介したいと思います。今の絞りの大きな産地には、竹田庄九郎や藤娘きぬたやのある有松(名古屋)と藤井絞や寺田絞のある京都があります。

どちらの産地も伝統的にたくさんの技法があり、重なるものの多いですが、現在の有松らしい技法は、着物全体で何万粒もある疋田絞や、解いてみてわかる偶発的な絞り、それに雪花絞のような折りたたんで圧力を掛ける絞りです。京都らしい絞りというのは辻が花系の絞りです。解いてみて面白いデザインが偶発的に生まれるというのではなく、最初から具象的なデザインを意図し、それを目指して絞り方を工夫していくという絞りです。藤井絞は雪花絞でも有名ですが、有松に下請けに出しています。

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いちばん上の写真は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。描き絵の割合が多い前期の様式です。地の色よりも模様の色が濃い絞りです。このような絞りを本来の染液に浸ける絞りで作る場合、全体を防染して模様だけを露出する状態で浸けることになります。難度の高い技法です。

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写真2番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。描き絵の割合が多い前期の様式です。

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写真3番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。複数の技法を組み合わせたもので、疋田絞りや帽子絞りは普通にある技法ですが、直線や鋭角を絞りで表現するのは難しいです。

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写真4番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。帽子絞りで丸く絞っただけのシンプルな意匠ですが、正確に近い丸に絞るのも難しそうです。本当に正確なら型みたいで味気ないですが、職人の手技として完璧でありつつ人間としての限界で微妙に歪むところが工芸として美しいところですね。

染液に浸けて染める本来の絞りであるということを思えば、地色に対して濃い模様の絞りや系統の違う色の絞りを混在させるのは難しいです。複数回防染して浸け直しているんでしょうね。

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写真5番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。帽子絞りで四角く絞ったものです。普通に生地を摘まめば丸くなってしまいますから、調節して四角くしています。地の部分は白生地で模様は黒ですが、染液に浸けて染めるばあいどのようにしているのでしょうか。

模様以外の場所を全部絞って防染して黒い染液に浸けると方法と、最初に黒い染液で無地で染めてしまって、その後に絞って抜染液に浸ける方法があります。後者も浸け染には違いないわけですね。

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写真6番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。絞りと友禅の更紗を組み合わせたものです。友禅の更紗部分も主要な花は絞りによる表現です。絞りによる直線の表現というのは、生地を摘まんで防染する縫締絞と思えば、どうやって摘まむのか難しいですよね。

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写真7番目も、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。絞りと友禅の更紗を組み合わせたものです。
[ 2019/04/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の染めの着尺「竹筆縞」

第四千四百三十三回目は、野口の染めの着尺「竹筆縞」を紹介します。

反物の端のラベルにあるとおり、竹筆により手描きの縞です。かすれやよろけが存在意義ですね。このような縞は、手描きによるものと手描きに見えるデザインを採用した型によるものとがあります。友禅であれば;手描きと型の違いは価値が大きく違い、型はニセモノにすぎませんが、縞のばあい、手で描くのも感性のもので上手いか下手かどちらがいいのかよくわかりませんし、型をきちんと合わせる方が長い修業が必要かもしれず、どちらが良いとも言えないと思います。でも見分ける方法はあります。

今回の作品は、仕入れてからここで紹介するまで時間が経ってしまったので、もう販売済みになってしまいました。宣伝する合理性は無いのですが、せっかく写真を撮ったので掲載させてもらいました。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。縞の途中で、竹筆に染料を付け直したとみられる部分があります。その位置がバラバラなので、筆による手描きと分ります。型であれば、その濃淡が変わる位置もまた繰り返すはずですから。

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写真3番目は、もっと近接です。

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写真4番目は、生地の凹凸と染の濃淡の関係がわかるように、斜めから撮ってみました。生地の凹凸の凹の部分で竹筆と生地の接触が弱くなって色が淡くなり、凸の部分で竹筆と生地の接触が強くなって色が濃くなるようです。それによって竹筆の特徴がよく出るわけで、それを計算して生地を選んでいるのだと思います。

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写真5番目は、生地の端を撮ってみました。ラベルから、技法が型でなく竹筆の手描きであること、地色が白でなく玉子色であることが分かります。でももっと見ていただきたいのは、縞のスタート位置が不揃いなことです。それは型でなく手描きだということの証拠になりますね。型であれば、このような不揃いのスタートラインの型紙を繰り返したら、縞がつながらないですものね。

当店の新しい売り場

第四千四百三十二回目は、当店の新しい売り場の紹介です。今日は宣伝です。

昭和の初めごろに祖父が離れを作ったのですが、戦争中は疎開者を住まわせなければならなくなり、それで意欲がそがれたのか戦後は建物だけ他人に売ってしまいました。ずっと底地権だけ持った状態だったのですが、昨年住人がいなくなりその相続人から家を買い戻しました。

母親の近い将来の介護スペースにするつもりだったのですが、借地人が意外にも昭和初期の様式を維持してくれていたので、建設時の状態を復活させてみました。使い道も無いのですが、とりあえず店の一部に使おうと思っています。以前から本来の店は商品を置きすぎて物置き状態になっていましたし。

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いちばん上の写真は玄関スペースです。掛かっている絵は大田聴雨です。絵も建物と時代を合わせました。

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写真2番目は、かつての神棚です。玄関を入ってすぐ作り付けの神棚が有りました。母家に神棚があるので必要なかったと思いますが、祖父の時代の人は家を建てると必ず神棚を作ったんですね。神さまというのは、厄介な上司でもあるので、神さまは復活せず兎様を飾りました。三浦竹泉のもので2個買って一対にしました。轆轤で作っているので同じではないのです。

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写真3番目は、玄関スペースから見た次の間です。玄関ホールが2間続く設計です。

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写真4番目は、次の間から振り返って玄関スペースを見たところです。私の生活感覚では、玄関スペースが2間続くというのは使い道がわかりません。ここにテーブルとか置いてご飯を食べていたら貧乏くさいので、たぶん空けておくのが正しい使い方なんだろうと思います。小さくても無駄スペースがあると妾宅っぽい感じで良いですが、この家は後妻のために作ったもので妾宅ではないです。

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写真5番目は、メインの和室です。廊下の向かいにある黒い戸は、前の住人が建て増しした部分。今回、土蔵の戸のように見えるスライドドアを付けて隔離し、プライベートスペースにしました。

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写真6番目もメインの和室です。天井が高く、欄間がいっぱい付いています。今回は慎重に欄間を保護しました。屏風は今尾景年下絵の刺繍です。

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写真7番目は廊下です。漆喰に囲まれた白と焦げ茶だけのスペースは綺麗です。突き当りの造作の用途は不明。

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写真8番目も廊下です。

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写真9番目は、床の間脇の欄間です。白い部分は修復箇所。

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写真10番目は床の間です。掛け軸は菊池啓月の「熊野(ゆや〉」、ちょうど花見の時期なので掛けてみました。飾ってあるのは三浦竹軒の万歴赤絵写しです。
[ 2019/04/17 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

有職文様の紋紗の袋帯の帯合わせ

第四千四百三十一回目は、有職文様の紋紗の袋帯の帯合わせです。

今日は絵羽物を合わせてみます。夏の帯は、厳密に季節を言えば、絽と紗は7月と8月、7,8月に加え6月と9月にも着ようと思えば絽綴でないといけません。もっと厳密に言えば、絽綴は6月と9月に着られるかわり、8月のいちばん暑い2週間ぐらいは着られないというルールもありました。今はあまり言いませんが。

今回は、紋紗の帯ですが、現実の暑さを考慮し6月や9月にも着てもいいだろうということで、単衣の訪問着にも合わせてみました。今の呉服業界は、とにかくみんなに着てもらいたいということで、ルールはなるべく緩く、と考えています。私も宗教の戒律みたいなのは気味が悪いと思っています。

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いちばん上の写真は、秀雅の絽の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは安田です。

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写真2番目は、北秀の絽の色留袖を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。鄭和の大遠征のころは中国の大航海時代で、寧波などが港町として栄えました。そんなテーマの作品です。

絽の色留袖など着る機会がないので、いずれ訪問着に改造したいと思っています。この作品のばあい、地色が水色で海が紺です。同系色濃淡の関係ですから染重なることができそうです。そのばあい糸目が白ではなく水色になってしまいますが、たいていの人は気がつかないのではないでしょうか。それで寂しければ、刺繍で草など加えておけばいいと思います。

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写真3番目は、北秀の単衣用の訪問着「百合と流水」を合わせてみました。実際に制作したのはにしきやです。刺繍や箔は、金を使うべきところを全て銀にして涼しさを演出しています。

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写真4番目は、大羊居の単衣用の訪問着「夏日涼風」を合わせてみました。描かれているのは、麦(6月)と薊(6月~9月)ですから、6月の単衣にも9月の単衣にも対応できます。

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写真5番目は、大羊居の単衣用の訪問着「花薫る」を合わせてみました。白のアーチが大胆に思えますが、着てしまえばメインのアーチの中央は帯とおはしょりで隠れるわけだし、実際は普通ではないでしょうか。

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写真6番目は、大羊居の単衣用の訪問着「色襲ね」を合わせてみました。タイトル通り、色がテーマなんだと思います。
[ 2019/04/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

有職文様の紋紗の袋帯の帯合わせ

第四千四百三十回目は、有職文様の紋紗の袋帯の帯合わせです。

絽と紗の付下げを合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「有職柳」を合わせてみました。実際に制作したのは市川和幸さんです。有職どうしの組み合わせということで、色目が同じような感じです。一方模様の形は、規則正しく並ぶ帯の模様に対し、流れるような柳で対照的です。絵は色と形から成りますが、色が同じなら形は反対、というのが組み合わせの基本ですね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「鏡裏文」を合わせてみました。実際に制作したのは市川和幸さんです。近世以前の鏡は、機能的にはイマイチですが、その代わり裏面に装飾がされていて美術工芸品として嫁入り道具などとして使われました。有職文様の帯とは相性が良いんじゃないでしょうか。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「菖蒲」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。ダンマル描きを併用した糸目のない表現です。洒脱に描いているようですが、中井さんらしく凝ったことをしています。菖蒲とは言うものの葉だけなので、芦にも見え初秋でも大丈夫応そうです。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「取り方線模様」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。複数の直線と弧の組み合わせで、その交わりからできる面に波の模様があります。その部分の面積を求めよ、とか言われそうな意匠です。

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写真5番目は、野口の紗の付下げ「海浜風景」を合わせてみました。波と松島ですが、松島には藻塩を焼く設備が描かれています。古代の製塩風景で、須磨明石など多くの歌に詠まれてきた歌枕ですから、風景ではなく文芸テーマということになりますね。歌を詠む平安貴族を思い浮かべれば有職文様とつながってきますね。

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写真6番目は、野口の紗の付下げ「垣の花」を合わせてみました。大きめの図案です。私の予想では、今までは小付けの時代、将来は大きい模様の時代です。もともと小付けの時代の前は模様は大きかったですから、循環していくはずなんです。
[ 2019/04/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

有職文様の紋紗の袋帯(佐々木染織(2219)

第四千四百二十九回目は、有職文様の紋紗の袋帯を紹介します。実際に織ったのは佐々木染織(2219)です。

昨日は紗の袋帯を紹介しましたが、まだ紹介していないのが1本あったので追加です。すごく高級品というわけでもないですし、この織屋さん自体は時々ネットでも見るものですが、使い勝手はすごく良いと思います。このような意匠は誰からも嫌われませんし、色も有職の配色で、地味とか派手とか言うものでもありません。

昨日、お電話をいただいておりますが、これもついでにご覧ください。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。よく見ると文様は2種類です。色は六色ですね。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は、別の色の模様に近接してみました。

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写真4番目は、地紋が見えるように斜めから撮ってみました。よく見ると、有職文様である立涌紋が浮かび上がり、紋紗であることが分かります。

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写真5番目は、裏に青い紙を挟んで地紋をよくわかるようにしてみました。

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写真6番目は、紋紗というのがどういう構造になっているのかわかるように拡大してみました。
[ 2019/04/14 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

紗の袋帯というテーマ

第四千四百二十八回目は、紗の袋帯というテーマです。

今日は新しい商品の紹介ではなく、リクエスト記事です。添付ファイルで写真を送れないお客さまには、ブログでお見せすることもあります。申し訳ないですが、みなさまもお付き合いください。

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いちばん上の写真は、紫紘の紗の袋帯「撫子」のお太鼓です。

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写真2番目は、紫紘の紗の袋帯「撫子」の腹文です。

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写真3番目は、紫紘の紗の袋帯「琳派菊文」のお太鼓です。

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写真4番目は、紫紘の紗の袋帯「琳派菊文」の腹文です。

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写真5番目は、紫紘の地の組織を紗であることがわかるように撮ってみました。緯糸が撚り銀糸になっています。そのためどちらの帯も地が透けつつ光るんですね。

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写真6番目は、織悦の紗の袋帯「菊に流水」です。

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写真7番目は、織悦の紗の袋帯「菊に流水」を組織を紗であることがわかるように撮ってみました。わかりやすいように裏に青い紙を敷いてあります。西陣の帯の模様表現は、模様表現のためだけの緯糸によって行われており、それを絵緯糸(えぬきいと)といいます。絵緯糸は模様表現の役割を終えた後は、裏に回って渡り糸になります。

ところが紗の生地は透けているので、裏に回ったはずの糸が見えてしまいます。これは舞台にたとえると、出番の終わった役者が楽屋で休んでいるところが客席から見えてしまっているわけで困ったことです。この帯ではそれを欠点と思わず積極邸に利用して、帯全体が輝いて見えるような風情にしています。これは紗の帯だけにできる表現手段なんですね。

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写真8番目は、織悦の紗の袋帯「芒」です。

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写真9番目は、織悦の紗の袋帯「芒」を組織を紗であることがわかるように撮ってみました。裏に回ったはずの金糸が見えていて、生地に光沢をプラスするのに貢献しています。

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写真10番目は、今河織物(101)の紗の袋帯「若人の歌」です。若人云々というのは、若松の意味ですね。

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写真11番目は、今河織物(101)の紗の袋帯の近接です。この写真で見ると地が絽のようにも見えるので、さらに近接してみました。下の写真です。

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写真12番目は、今河織物(101)の紗の袋帯の地の組織です。基本は紗の組織ですが、引き箔の糸が1本ずつ隙間を開けて絵緯糸として挿入してあるのです。引き箔は、完全な金糸ではなく金箔が散らしてあり、この金箔の割合が抑えめの光沢になっているようです。

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写真13番目は、岩井一男(1799)の紗の袋帯です。

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写真14番目は、地の紗の組織がわかるように近接してみました。この帯も織悦の紗と同じように、模様表現の役目を終えて裏に回った絵緯糸の金糸が隙間から見えています。本来邪魔ものですが、その効果を積極的に使っているようです。

ところで、絽と紗の組織の違いについて、このブログの読者は存知でしょうが、写真でちゃんと撮ってみます。

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写真15番目は、龍村の絽の組織です。紗の組織は、糸が1本ずつすべて離れて隙間がありますが、絽は3本、5本あるいは7本ごとに隙間があります。隙間の作り方は、隙間を作ろうと思う段で経糸を2本ずつ捩ることで、緯糸を離して隙間を作るというものです。

それぞれ3本絽、5本絽、7本絽といいますが、3本に1つ隙間がある3本絽がいちばん隙間率が多く涼しげなわけです。写真で見ると龍村は3本絽なので隙間率が多いはずですが、実際にはあまり涼しげではありません。やはり糸の太さも関係があるのでしょうね。

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写真16番目は、龍村の絽の袋帯「花葉」です。絽の帯なのですが、他の龍村と違い紗のような手触りです。それはなぜかということで近接してみました。それが下の写真です。

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写真17番目は地の組織がわかるように撮ってみました。明らかに隙間が多いですね。
[ 2019/04/13 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

野口の絞りの着尺の帯合わせ

第四千四百二十七回目は、野口の絞りの着尺の帯合わせです。

ターコイズブルーが美しい作品なので、今日も帯合わせでターコイズブルーを生かしてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の光波帯「吉祥狗子文」を合わせてみました。中村芳中の狗の絵です。戌年に発売された時は2色ありましたが、これは紺の方です。

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写真2番目は、龍村の光波帯「獅噛太子」を合わせてみました。太子間道に取材したものです。

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写真3番目は、龍村の光波帯「遠州七宝」を合わせてみました。遠州緞子に取材したものです。

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写真4番目は、龍村の光波帯「コプト花杯文」を合わせてみました。

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写真5番目は、大羊居の名古屋帯「象のいる楽園」を合わせてみました。

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写真6番目は、加賀友禅作家、百貫華峰の名古屋帯を合わせてみました。

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写真7番目は、加賀友禅作家、中町博志の名古屋帯「野蒜」を合わせてみました。

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写真8番目は、玉那覇有公の紅型の九寸の名古屋帯を合わせてみました

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写真9番目は、玉那覇有公の紅型の九寸の名古屋帯を合わせてみました
[ 2019/04/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絞りの着尺の帯合わせ

第四千四百二十六回目は、野口の絞りの着尺の帯合わせです。

ターコイズブルーが美しい作品なので、帯合わせではとにかくターコイズブルーを生かすということだけを考えました。ターコイズブルーぴったりの帯というのはあまりないですから、青から緑の間の帯にしました。すれ違う人みんなに青が印象に残るようにするというのが目標です。

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いちばん上の写真は、紫紘の袋帯「新瑠璃鈿十二稜鏡文」を合わせてみました。正倉院御物の「瑠璃鈿十二稜鏡文」に取材した帯です。

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写真2番目は、河合康幸(河合美術の弟)の袋帯を合わせてみました。松をテーマにするとフォーマルな印象になって小紋には合わせづらいですが、松ぼっくりと松葉をテーマにすることで少し柔らかくなりますね。地色は青みの強い緑です。

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写真3番目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」を合わせてみました。私のお気に入りでよく使ってしまう帯です。

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写真4番目は、洛風林の袋帯「名物小枝文」を合わせてみました。タイトルの「名物」がヒントで、本歌は大黒屋金襴だとわかります。本歌とは色が全く変えてあって、青が効き色のモダンな配色になっています。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「竹屋町兎文」を合わせてみました。「竹屋町裂」というのは紗の生地に平金糸を織り込んだ名物裂で、「竹屋町」という名前の由来はわかりませんが、京都市内の町名ともいわれます。「竹屋町裂」は織物ですが、それを真似た刺繡もあって「竹屋町刺繡」といわれます。現在は紗の生地でないのも竹屋町ということがあって、これもそうですね。

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写真6番目は、たまたまターコイズブルー帯締があったので置いてみました。渡敬のものですね。青い帯がない場合は小物で演出しても同じだと思います。
[ 2019/04/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絞りの着尺

第四千四百二十五回目は、野口の絞りの着尺を紹介します。

今日紹介する小紋は、ダイレクトメールに載せてからこのブログに載せるまでの間に売れてしまいました。せっかく写真を撮ったので掲載します。野口は健在なので再注文もできますが、私は赤札市で仕入れた値段を元に値入しているので、定価で仕入れると違ってしまうと思います。

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いちばん上の写真は全体です。仮絵羽の状態で売られていました。

小紋は仮絵羽にする必要はありませんが、それが仮絵羽にされている理由は、まず模様配置が特殊で裁ち方が難しい場合です。衿も含めて全体が市松文様になるように設計されているばあい、その意図が仕立屋さんまで伝わらない恐れがあるので、販売前に仮絵羽にしてしまうことがありますね。

もう1つは展示会で展示されたばあいです。色が綺麗だったり、絵画的に面白いものは、展示会で見やすいところに展示されることがあります。作品に魅力があるということですが、ライトを当てられてやけている場合がありますね。これは柄合わせいついては、前姿になるべく多く柄を持ってきたいが、同時に肩や胸など顔の周りにも確実の柄を持ってきたい、衿にも1つ欲しいなんて考えると気を使うことになりますが、絵羽にしなければいけないほど難しいということはないので、こちらでしょうね。

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写真2番目は、一部を撮ってみました。模様の密度はこれぐらいということです。この作品の存在の意義は、なんと言ってもこのターコイズブルーですよね。この青がなければ、こんな絞り小紋は藤井絞に行って買った方が良いです。

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写真3番目は、模様を近接で撮ってみました。花芯に当たる部分は金描きでした。ターコイズブルーと金の配色が綺麗なのは、金の台を付けたトルコ石のイメージだからだと思います。

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写真4番目は、斜めから撮ってみました。絞りなので生地の凹凸を撮ってみました。
[ 2019/04/10 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

野口の長襦袢地「タロットカード」

第四千四百二十四回目は、野口の長襦袢地「タロットカード」を紹介します。

最古のデッキといわれるマルセイユ版に取材しています。大アルカナから教皇、皇帝、太陽、月、魔術師、小アルカナからソードの騎士、ワンドの2、ペンタクルの4です。

縁起の良くないカードを身に着けるのは嫌ですが、タロットは占いで出る位置に正位置と逆位置があって、基本的には反対の意味になるのですが、単純に反対になるときと、同じ意味ながら良い面と悪い面を表現したりするようになっています。どちらになるのかは仕立ててみないとわからないですよね。 ついでながら、タワーのカードは正位置も逆位置も悪い意味が多いのですが、ここでは避けられています。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ってみました。模様の間隔はだいたいこんな感じです。

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写真2番目は、魔術師とペンタクルの4です。

魔術師は、正位置では、起源・創造・自信・技術などの意味を持ち、逆位置では、混迷・消極性・優柔不断などの意味があります。

ペンタクルの4は、正位置では、コレクター・現実的視点などの意味を持ち、逆位置では、発展性がない・保守的などの意味があります。

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写真3番目は、ワンドの2です。

ワンドの2は、正位置では、気持ちが先走る・過去に未来へのヒントがある・現状に満足できない、逆位置では、高すぎる理想・悲観的になるなどの意味があります。

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写真4番目は、太陽とソードの騎士です。

太陽は、正位置では、成功・希望・誕生などの意味を持ち、逆位置では、不調・落胆・過失による失敗などの意味があります。

ソードの騎士は、正位置では、最短距離による達成・旅行好き・目先にとらわれるなどの意味を持ち、逆位置では、冷血・冷静さに欠けるなどの意味があります。

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写真5番目は、月です。

月は、正位置では、幻惑・不安定な精神・現実逃避などの意味を持ち、逆位置では、運勢の好転・迷いの解消などの意味があります。

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写真6番目は、皇帝と教皇です。

皇帝は、正位置では、支配・安定・統率力などの意味を持ち、逆位置では、不遜・未熟・横暴などの意味があります。

教皇は、正位置では、慈悲・形式の重視・規律の順守などの意味を持ち、逆位置では、独創的・新しい思想・年長者の反対などの意味があります。

野口の付下げ「エジプト」の帯合わせ

第四千四百二十三回目は、野口の付下げ「エジプト」の帯合わせです。

今日はまず正倉院文様の帯を合わせてみます。正倉院文様は日本のいちばん古い古典であるとともに、外来のデザインが多いのでエキゾチック要素もあります。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「天平翔舞錦」を合わせてみました。

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写真2番目は、紫紘の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈」ですが、挟纈や刺繍など正倉院の染織品の多くを含んでいます。

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写真3番目は、紫紘の袋帯「新瑠璃鈿十二稜鏡文」を合わせてみました。正倉院を3点合わせましたが、どれも相性が良いようです。

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写真4番目は、織屋は忘れてしまいましたが、「茜おり」というシリーズの「麻の葉七宝文」というタイトルの袋帯を合わせてみました。麻の葉と七宝という古典文様の組み合わせです。

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写真5番目は、織屋は忘れてしまいましたが、「茜おり」というシリーズの「花菱亀甲」「麻の葉七宝文」というタイトルの袋帯を合わせてみました。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。

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写真7番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「色紙重ね」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。重ねた色紙がピラミッドか砂漠の砂丘のつながりにみえれば成功。
[ 2019/04/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ「エジプト」の帯合わせ

第四千四百二十二回目は、野口の付下げ「エジプト」の帯合わせです。

今回の着物に合わせる帯は、東地中海諸国や中東辺りの装飾に取材した意匠しか合わないのでしょうか。今日はまず間道に合わせてみます。間道は日本の美術史の中にあるものであり、中世以後舶載された外国のものでもありますね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「常磐間道」を合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「東雲間道」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。「間道」の名前が付いていますが、中世以後舶載された名物裂ではなく、古代の繧繝です。正確には法隆寺が所蔵する蜀江小幡に使われている「繧繝山形文」です。法隆寺裂は正倉院裂より古く、おそらく舶載ですよね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「異邦しま文」を合わせてみました。インドから東インド会社経由で輸入されたモールをアレンジしたものです。制作地はインドということで、エキゾチックの仲間です。

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写真5番目は、滋賀喜の袋帯「鎧飾り」を合わせてみました。鎧をテーマにした帯は龍村の「威毛錦」が有名ですが、同じように鎧に取材しながら全く違いますね。日本の鎧というより、西洋の宝飾みたいです。この時代の滋賀喜の手織りの袋帯は織り手の個人名が織り込んであるんですよ。

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写真6番目は、龍村の名古屋帯「双鳥繍文」を合わせてみました。「繍文」とあるので、本歌が刺繍作品であることが分かりますが、それ以上はわかりません。鳥の種類がエキゾチックですよね。
[ 2019/04/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ「エジプト」の帯合わせ

第四千四百二十一回目は、野口の付下げ「エジプト」の帯合わせです。

今回のようにテーマがはっきりしすぎている着物に対する帯合わせは、たまたまそのテーマを意識して帯を買っていた方は良いですが、そうでない方は悩みますよね。普通に考えれば、エキゾチックどうしの組み合わせが無難だと思います。帯屋捨松などでは中東辺りのデザインに取材したものが多くありますので、基本はその辺で良いんじゃないでしょうか。ネットではけっこう安く出ていますよね。

エジプトどうしで合わせる必要はありません。むしろ少しずらした方が良いぐらいです。その際注意することは、その地域の文化をイメージした抽象的な装飾デザインが良いということですね。その地域の人物や風景を具象的に描いたものは模様どうしが重なりすぎて反発すると思います。

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いちばん上の写真は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴのあるバージョンです。本歌はわからないですが、なんとなく中東辺り起源のデザインです。エジプトどうしというようにピッタリさせないほうが良い場合もあります。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴのあるバージョンです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「インド華文更紗」を合わせてみました。

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写真4番目は、織悦の袋帯「金更紗蔓花」を合わせてみました。

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写真5番目は、紫紘の袋帯「アカンサス」を合わせてみました。アカンサスは地中海沿岸に分布しギリシアの国花でもあります。ギリシアの建築装飾の1つでも有りますね。なんとなく合っているように見えてテーマにする地域を微妙にずらす例です。

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写真6番目は、じゅらくの「帝王紫」シリーズの袋帯の1本を合わせてみました。極初期のもので、まだ吉岡常雄さんが健在で下絵も常雄さんのデザインに基づいています。エジプトは葡萄の産地ではなく小麦の産地です。ピラミッドの労働者が飲んでいたとされるのはワインではなくビールですものね。テーマにする地域を微妙にずらす例です。

クレオパトラを真珠をワインビネガーに溶かして飲んだので、ワインは地中海世界で交易していたんですね。
[ 2019/04/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ「エジプト」の細部

第四千四百二十回目は、野口の付下げ「エジプト」の細部です。

今日は作品中に使われているかわいい動物をピックアップしてみました。エジプトの壁画は様式が決まっていて人物はみな横顔で同じ表情をしています。それが美術史的に価値があって美しいことになっているわけですが、物語性を増すためにはちょっとマイナスでしょうか。そういうときはかわいい動物をなるべく取り入れて絵画的な面白みを狙うという手もありますね。

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いちばん上の写真は、袖にある船の舳に止まっている鳥です。ナイル河にいる鳥ですね。

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写真2番目は、袖にある船の舳辺りの水面と水面下です。水面に潜っている櫂も先端まで描かれていますし、水面の水鳥も水面下の魚も並んで描かれています。写生と思えば変ですが、元々の壁画の表現なのでしょう。

この着物の模様はどのパーツもみな別の壁画から取られたコラージュなので、絵のつながりは論理的ではないのですが、コラージュの仕方が上手であれば、見る人の目が騙されて勝手に物語を作ってしまうんですね。コラージュの仕方が下手だと、違和感を感じるんだと思います。

この絵で言えば、下手に水面など描いて辻褄を合わせようとすれば、他のパーツとのつながりが悪くなるでしょうね。作画は古代人に任せ、現代の作家がいじらず並べればいいんだと思います。

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写真3番目は、前姿にある船のうち船尾に止まっている鳥です。場所としてはオクミです。

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写真4番目は、前姿にある船の舳です。船首の飾りと水面下の魚です。

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写真5番目は、マエミにいる女性が抱いている鳥です。今夜のおかずでしょうか、神殿に捧げるのでしょうか、ペットでかわいがっているということだと良いですね。どうせこんな模様はファンタジーですから、優しい方で解釈すれば良いと思います。

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写真6番目は、マエミの上の方にある模様です。元は壁画の意味を解説する象形文字なのでしょうが、ここでは模様として使われています。象形文字は絵画的なのでそのまま模様になって便利です。

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写真7番目は、星の表現です。この星もまた元の壁画に有るものでしょうが、その装飾的価値を認め、着物の意匠の中に大げさに取り込んだのは作者の知恵ですね。
[ 2019/04/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ「エジプト」

第四千四百十九回目は、野口の付下げ「エジプト」を紹介します。

エジプトの2次元的芸術は、古王国時代は地上施設のレリーフが中心ですが、新王国時代になると地下墳墓の彩色された壁画が中心になります。今回の作品は多色の壁画あるいはパピルスの彩色絵画に取材したものですが、元の意味に関係なく自由に並べて、物語風に見せています。

この付下げについては、セールのダイレクトメールの「おまけに着く読み物」に載っているものです。これから他の作品もだんだんに載せていきます。当店は顧客名簿のようなものはないので、受信トレイにあるメールに対して適当に返信しています。私はお得意さまのはずなのにメールが来ないという方もいらっしゃると思います。ご希望の方はメールでお知らせください。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後ろ姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は、もう片方の袖です。

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写真5番目は胸です。

壁画やパピルスでは、絵画の背後(上部)に象形文字が書かれていて絵画の意味を説明しているわけですが、この作品では絵画の中に取り込んで意匠の一部にしています。絵画そのものである象形文字というのはこういう時に便利で、友禅の意匠でよく使われる取り方みたいに見えますよね。
[ 2019/04/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

ライトアップされたしだれ桜

4月2日の夜、ライトアップされたしだれ桜を見に行ってきました。


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いちばん上の写真は、2本の桜が見えるように境内から撮ってみました。年上の木が手前、若い木が奥です。

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写真2番目は、境内の反対側から2本の桜が見えるように境内から撮ってみました。若い木が手前、年上の木が奥です。

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写真3番目は、若い方の木です。

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写真4番目は、若い方の木を反対側から撮ってみました。

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写真5番目は、しだれた枝の近接です。水色の玉は遠くに見える街の灯りです。
[ 2019/04/04 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

菱一の染めの着尺(飛び柄の小紋)をコートまたは羽織として使うと想定

第四千四百十八回目は、菱一の染めの着尺(飛び柄の小紋)をコートまたは羽織として使ってみます。

今日は付下げに合わせてみました。今回の着尺をコートとして使うばあい、訪問着などフォーマルの上に着ることもありえます。そこで付下げと合わせてみました。実際には、長いコートを着ている時は訪問着の模様は見えず、パーティー会場に入る前にコートは脱いでしまうのですから、そもそも合わせる必要はないのかもしれませんね。

付下げに長羽織を合わせるかということですが、合わせてはいけないという決まりはないし、成り行きでそうなってしまうということもあると思います。そのままパーティー会場に入ると、せっかくの付下げの模様の一部だけ披露することになってしまいますね。羽織はパーティー会場に入れるということは、脱いでもいいわけですから、着物の模様でも羽織の模様でも披露したい方を披露したらいいと思います。

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いちばん上の写真は、大羊居の付下げ「紅葉の庭」を合わせてみました。付下げの上に長羽織を着ると想定した場合、見える模様は前姿の縦長くと裾部分です。その部分だけが隙間から覗くように見えるんですね。そうであるならば、その限定された面積は思い切りインパクトがあった方が良い、ということで大羊居を中心に合わせてみました。

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写真2番目は、大羊居の付下げ「松竹梅紅葉」を合わせてみました。

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写真3番目は、大羊居の付下げ「此の君」を合わせてみました。

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写真4番目は、大羊居の付下げ「菱取り華文」を合わせてみました。

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写真5番目は、花也の付下げ「和本」合わせてみました。

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写真6番目は、野口の付下げ「秋草図」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。

菱一の染めの着尺(飛び柄の小紋)をコートまたは羽織として使うと想定

第四千四百十七回目は、菱一の染めの着尺(飛び柄の小紋)をコートまたは羽織として使ってみました。

今日は、紬に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、芝崎重一さんの手紡ぎ木綿(海島綿)の着尺「藍地棒縞」を合わせてみました。

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写真2番目は、深石美穂さんの川平織を合わせてみました。経縞に見えるところは、じつは単純な縞ではなくロートン織で、それに御絵図帳っぽい大きな絣を合わせているのですがグラデーション表現なども多用しているという、難度の高い技法を組み合わせた、深石さんらしい凝ったものです。

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写真3番目は、青戸柚美江さんの出雲織「昔絣」を合わせてみました。

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写真4番目は、青戸柚美江さんの出雲織「雪おこし」を合わせてみました。

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写真5番目は、青戸柚美江さんの出雲織「豆腐繋ぎ」を合わせてみました。

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写真6番目は、かつての重要無形文化財の要件を満たさない結城紬を合わせてみました。小倉さんのものです。要件を満たす結城紬は要件通りですが、要件を満たさないものは品質はいろいろです。買うときは織元がわかるラベル等を見つけて検索してみたら良いと思います。

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写真7番目は、インドネシアのシルクアタカスの糸を使った紬を合わせてみました。実際に織ったのは小千谷の大新織物で、経糸は屋蚕、緯糸が野蚕であるシルクアタカス100%です。シルクアタカスは日本では天然記念物であるヨナグニサンと同じ種類です。抜け殻を利用しているということなので、個体数を減らすことはないんですね。

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写真8番目は、田中比呂司さんの久留米絣を合わせてみました。