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千切屋治兵衛の型染の着尺「雪輪割り付け」の帯合わせ

四千百八十九回目は、千切屋治兵衛の型染の着尺「雪輪割り付け」の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯で合わせてみました。

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いちばん上の写真は、花也の名古屋帯「斜取り椿」を合わせてみました。糊糸目で普通の友禅染と線描きを組み合わせたもの。糊置きは、綺麗に置けば機能を達する通常の模様よりも、線描きの方が難度が高いです。線の表情そのものが芸術ですから。

雪輪に春の花の組み合わせで、暦ではもう春なのにちょっと寒いぐらいの時期に着てみたら爽やかかな、と思います。

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写真2番目は、花也の名古屋帯「斜目扇慶長」を合わせてみました。描かれているものは扇子であるとともに、扇子の形をした取り方でもあって、中に割り付け文や四季花模様が入っています。まさに安田の様式なんですね。

扇子をテーマにするとフォーマルな雰囲気になりますね。モチーフから生まれる雰囲気は、積極的に着る場に利用すると良いと思います。

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写真3番目は、花也の名古屋帯「硯に羊歯文」を合わせてみました。描かれているものは硯であるとともに、硯の形をした取り方でもあって、中に羊歯文と笹文が入っています。まさに安田の様式です。羊歯文と笹文は通常の友禅と線描きの併用です。いちばん上の作品と2番目の作品を混ぜたようなものですね。

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写真4番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯を合わせてみました。絞りと友禅の更紗を組み合わせたものです。縦に直線に色分けしてありますが、縫い締め絞りで直線を絞るというのはプロの技です。普通は生地を摘まんで絞れば形としては丸くなりますものね。更紗部分は友禅ですが、一部の花は絞りという凝ったことをしています。

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写真5番目は、藤井絞の絞りの名古屋帯「うさぎ」を合わせてみました。絞りで意図的に具象的な模様を表現しているので辻が花の仲間です。雪輪の着物に対し、うさぎを合わせることで、雪原を奔る雪うさぎみたいなイメージにしてみました。

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写真6番目は、加賀友禅作家、中町博志の名古屋帯「野蒜」を合わせてみました。花の下に見えるのはむかごです。植物というのは、種子、球根、胞子などで増えますが、むかごという手段もあるんですね。複数の植物がむかごを形成しますが、その中で食用になるのが、八百屋で買えるむかごです。

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写真7番目は、羽田登喜男の名古屋帯「水仙」を合わせてみました。中町博志も羽田登喜男も加賀で最高の名匠ですが、ちょうど似たような形の植物文ですので、比較してみてください。私が文化庁の役人で、この2点が並んでいたら中町博志の方を人間国宝にしますけどね。

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写真8番目は、秀雅の名古屋帯「楓取り海浜模様」を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。このブログを継続して読んでくれている方は、着物のデザインの中で取り方というものの意義の大きさに気付いてくれていることと思います。

これはもっとも成功している例で、吹けば飛ぶような1枚の葉の中に世界が入っているんですね。いちばん小さいものの中にいちばん大きいものが入っているというアンバランスも面白いですが、何百年変わらないと思われる風景もじつは吹けば飛ぶようなものなのか、とも思えてきます。津波があったら漁村の風景なんて変わってしまいますしね。

私が好きなところは、松の梢が楓の鳥かたらはみ出しているところかな。これだけでずいぶん風通しが良くなるし、気持ちも楽になります。作品によっては千鳥がはみ出して飛んでいくものもありますね。
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[ 2018/08/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)