第四千百八回目は、花也の付下げ「白揚げ取り方四季花」の細部です。
いちばん上の写真は、後姿の背中心辺りの近接です。ガーデニングでいうグランドカバーみたいに羊歯が生えていて、その上に四季の花が咲いている風情です。羊歯の描き方は、糊筒を葉の先端においてそこから内側に向かって力を抜くように描いています。糊筒の痕跡を作品の一部として残しているのです、毛筆のタッチのような発想ですね。
それに対し、その上に重なって見えるように描かれた四季花は、友禅の本来の糸目の置き方できちんと描かれています。1つの画面でありながら、作家の人柄が変わったように2つの様式がある不思議な感じがこの作品の見せ場なんでしょうね。
友禅の糸目というのは、「描く」と言わず「置く」といます。もともと糊筒を毛筆のように飛白が生じるような使い方をすることは想定されていないと思います。昔の小袖でもないですし、現代の京友禅の誰かが発想したんじゃないかと思います。それを積極的に取り入れたのが花也で、いろんな実験をした、これもその一つですね。
写真2番目は、オクミ辺りの近接です。楓と羊歯が重なるところです。
写真3番目は、マエミとオクミの縫い目辺りの近接です。萩と羊歯が重なるところです。
写真4番目は、後姿の近接です。菊と羊歯が重なるところです。
写真5番目は、胸の模様の近接です。橘と羊歯が重なるところです。
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