東京友禅と刺繍はの名古屋帯「御所解模様」

第三千七百九十二回目の作品として、東京友禅と刺繍はの名古屋帯「御所解模様」を紹介します。

江戸時代後期に流行った白揚げの友禅に刺繍を合わせた小袖を「御所解模様」といいます。「御所解模様」あるいは「江戸解模様」という名称は、近代になって古着商がネーミングしたもので、制作された当時はこのような名称はありません。「御所解模様」というと公家の着物を連想し「江戸解模様」というと武家の着物を連想しますが、ともに古着商のイメージによるもので、じつはいずれも武家の着物です。また「解」というのは解き洗い張りした着物という意味です。

この様式の小袖は大変流行ったようで多くの作例があります。芸術というのは、創造的でなければ意味がありませんが、流行というのは他人と同じものを着ることに意義を感じることですから、類型的な作品が多くつくられたのでしょう。様式の特徴は、友禅は白揚げのみで彩色はせず、色は刺繍が担当する、部分的に型疋田を使う、ということです。写真7,8番目の参考図版をご覧ください。

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いちばん上の写真はお太鼓です。現代の着物では、いわゆる御所解風の作品は多くありますが、たいていは草花文と流水(または波)の組み合わせというパターンを真似るだけで、適当に友禅で彩色しています。しかし、この帯は江戸後期に流行った武家の小袖の様式を真面目に再現し、友禅は白揚げのみ、色は刺繍の担当という約束事を厳守しています。また疋田については、型疋田ではなく堰出の疋田にしています。江戸時代のものも描き疋田かもしれませんね。

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写真2番目は、腹文の全体です。折って見えなくなってしまうところに刺繍をするのは流石にもったいないので、刺繍は片側だけですね。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。菊の花は繍切りという、生地の目に関係なく地を埋める技法です。これも江戸時代後期の様式に忠実です。葉の葉脈に描き絵を併用しているのも古作に忠実です。菊の葉の繍い方も古作の様式にありますね。

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写真4番目は、お太鼓の近接です。今この説明を読んでいる方が考えていることは、ぎおん齋藤とどう違うの、ということではないでしょうか。ぎおん齋藤の御所解の帯というのは、世界文化社の「きものSalon」やブログの「きものカンタービレ」にも時々登場するので、着物好きの間では有名で、そのためにこのような帯を見ると、ぎおん齋藤風だなあと思ってしまう方も多いんじゃないでしょうか。

じつは私は雑誌やブログに載っている小さい写真でしか見たことが無くて、実際どの程度の加工をしているのかよくわからないのですが、江戸時代後期の武家の小袖の様式である、友禅は彩色せず白揚げで、色は刺繍が担当、疋田併用という約束事をちゃんと守っている、そこらの御所解訪問着とは違う真面目なものだということはわかります。

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写真5番目は、お太鼓の近接です。刺繍で表現された籠みたいなものは蛇籠といって洪水を防ぐ防災施設です。江戸時代の人はそれを美しいものと考えて模様に取り入れたんですね。

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写真6番目は、腹文の近接です。

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写真7番目は参考図版です。

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写真8番目は参考図版です。
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[ 2017/06/30 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

ミキモトの帯留の続き

第三千七百九十一回目は、ミキモトの帯留の続きです。

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いちばん上の写真は、帯留の近接です。デザイン上、使用している真珠は小さいですが、ミキモトの記念作品に使われている真珠ですからよく見てください。背景は鼈甲でその背後にはプラチナがあって、両者が合わさって金のように見せているのですが、背景のプラチナの透かし模様は前面の模様とは一致していなくて、秋草のような模様が影のように表現されて、それが遠近感が生んでいます。

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写真2番目は、細見華岳の綴の名古屋帯「光彩」に合わせてみました。伝統工芸展に良く出品されていたパターンですよね。

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写真3番目は、細見華岳の綴の名古屋帯「光彩」に合わせてみました。これも伝統工芸展に良く出品されていたパターンですよね。箱書きによると、上の作品と同じタイトルがついていました。伝統工芸展に出したもの以外は意外に適当?

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写真4番目は、細見華岳の綴の名古屋帯「孔雀文」に合わせてみました。文化庁買上げの代表作「友愛」は六通ですが、これはそのお太鼓柄バージョンです。「友愛」というタイトルは、日中友好行事に参加した際、北京の動物園で見た孔雀をテーマにしたからとのことです。一般にも販売可能であったお太鼓柄バージョンは、本来のタイトルがついていました。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「槇に流水」を合わせてみました。槇はダンマル描きの上に金彩をしています。これは腹文なのでないですが、お太鼓には金糸の刺繍もあります。流れは腹文にはありませんが暈しによる表現、画面にある点々は砂で、ここだけが糊糸目友禅です。

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写真6番目は、花也の名古屋帯「霞取りに羊歯」を合わせてみました。霞は赤茶色のきつい色の友禅で描かれていて、その上に金加工をして色を和らげています。羊歯は輪郭がくっきりしているので、縁蓋を切っているようですね。これは腹文ですが、お太鼓には金糸の刺繍もされていて、立体感もあります。中井淳夫さんのような作風ですから、もともと中井さんの下職を使った作品でしょう。

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写真7番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。お太鼓には高惣語を示すモチーフが描かれていますが、腹文は金描きの若松です。

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写真8番目は京正の名古屋帯「波」を合わせてみました。実際に制作したのは安田です。古典的な図案で、扇面が波に流れていく「扇面流し」というのがあります。着物の意匠にも昔からありますが、帯と帯留で再現してみました。

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写真8番目は京正の名古屋帯「瑞葉」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。模様の輪郭はくっきりして端正です。おそらく縁蓋を使って加工されているのでしょう。一方、模様の内側は金から銀へ境目なく自在に変わっているんですね。どうやって加工しているのかなと思ってしまいますが、それが中井さんですね。
[ 2017/06/29 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

ミキモトの帯留

第三千七百九十回目の作品として、ミキモトの帯留を紹介します。

2008年に御木本幸吉生誕150年記念として販売された帯留です。カタログによると当時の販売価格は3,675,000円だったそうです。今回の帯留は借り物で、本来の持ち主がいらっしゃいます。商品情報は、また別の方から頂きました。

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いちばん上の写真は全体です。ダイヤは0.66ct、地はプラチナイリジュウム、小さいとはいえミキモトの真珠(顕微鏡で見たらピンクでした)が付いています。下地の金色に見えるところは金ではなく鼈甲です。透明感の強い極上の鼈甲の背後がプラチナなので金色に見えるのです。


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写真2番目は、斜めから撮ってみました。

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写真3番目は、啓(ひらく)の袋帯を合わせてみました。当店のものではなく帯留の持ち主が所有する帯ですが、最近人気らしいです。偶然ですが、美しいキモノ2015年冬号で、昨日まで紹介していた藤井絞の桶絞りの訪問着に合わせています。

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写真4番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。とりあえず背景役としてシンプルな帯を選んでみました。扇面が流水に流れていくという図案は昔からありますから再現してみました。

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写真5番目は、池口の「佐波理つづれ」シリーズの1本を合わせてみました。「御簾」をテーマにしたもので、極初期のものです。

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写真6番目は、華陽の袋帯を合わせてみました。地が綴組織、模様は絵緯糸によるシリーズです。地が金糸の帯に合わせると、帯留の金色に見える鼈甲部分が透けているように錯覚して面白いんじゃないかと思います。

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写真7番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。これまでは帯留が豪華なので背景はシンプルに、と思って合わせていましたが、今度は豪華を競ってみます。

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写真8番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。昔からある波と扇面の組み合わせの再現です。

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写真7番目は、龍村の袋帯「彩華鹿鳥錦」を合わせてみました。あえて豪華な帯留が帯の模様に紛れるようにしてみました。この帯については、後日改めて紹介します。

明日は染め帯や綴に合わせてみます。
[ 2017/06/28 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせ

第三千七百八十九回目は、藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせです。

今日でこの着物の帯合わせは最後にします。最後は使い残し画像です。

染織の技法というのは、糸目友禅、刺繍あるいは箔のように強い存在感が有ってくっきりするものと、無線友禅の濡れ描き、ぼかしあるいは絞りのように輪郭線が曖昧で柔らかい雰囲気のものとがあります。染色作品の多くは、糸目友禅の模様の背景にぼかしを入れるように、輪郭がくっきりするものと輪郭が曖昧で柔らかいものとを組み合わせて作ります。

歴史的に見れば、室町後期の辻が花は、絞りと墨の線という柔らかい組み合わせで、戦国大名という権力側の衣装なのに儚い雰囲気ですが、その後に現れる近世の肩裾模様や慶長縫箔は、刺繍と箔という存在感のあるものどうしの組み合わせで、その戦国大名を滅ぼした側の衣装だと妙に納得してしまいます。

今回の桶絞りの訪問着は、全体に絞りをしているだけで、刺繍も疋田も加えてありませんから、剛柔のバランスを考えない柔らかい要素だけの着物です。漫才でいえばボケだけですね。このような着物は存在感のある帯を合わせてバランスを取るのが普通です。しかしあえてバランスを取らず、同じような雰囲気の帯を合わせて、自分を優しい人であるように演出する場合もあります。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「ちとせ間道」を合わせてみました。柔らかい一方の訪問着のバランスを取るため濃い色の感度を合わせ、くっきりさせてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「騎馬陶楽文」を合わせてみました。存在感ありすぎの帯を合わせ、着物の雰囲気をぶち壊してみました。

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写真3番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。本歌はコプトの綴で、個性の強い意匠ですが、帯に使われている色は、地は金(黄色の代り)、模様は青とグレー、葉としてわずかな緑ということで、色についてはすごく配慮してみました。

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写真4番目は、じゅらくの袋帯「帝王紫」シリーズの極初期の1本を合わせてみました。吉岡常雄監修として始まった「帝王紫シリーズ」ですが、これは吉岡常雄存命中のものですし、図案も本人によるものです。この着物のグレー部分は紫に見えるようなので、色の共通性も考えて合わせてみました。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「双鳥繍華文」を合わせてみました。模様を表現する絵緯糸についてはラメ糸を多用して強い表現になっています。その一方で、模様は細かく地の白い余白部分が多いので、帯と着物の関係についてはコントラストが強い組み合わせですが、抑制された感じです。

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写真6番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。いろんな意味でバランスの良い帯合わせではないでしょうか。1本と言われたらこれですかね。
[ 2017/06/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせ

第三千七百八十八回目は、藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせです。

帯合わせをするときの帯と着物との関係は、同じような色や明るさの帯で馴染ませるか、反対の色や明暗の違う帯を合わせてくっきりさせるかどちらかです。グラデーションを選ぶか、コントラストを選ぶかということですね。2通りの美があっていいわけですが、昨日までわりと着物と帯に共通性を求めたので、今日はコントラストを付けてメリハリのある例を試してみようと思います。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「有朋文」を合わせてみました。鳥獣戯画をテーマにしたもので、ウサギと蛙が友達という意味で「有朋」なのでしょう。着物の意匠にはストーリー性も具象性もありませんから、物語性十分の動物の模様は良い帯合わせだと思います。地色は辛子色ですが、染色では表現しにくい織物ならではの色の重さがあって、黄色は同系色でも異質性からくるメリハリを感じます。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。着物の色には水色も使ってあり、帯の青とは同系っぽくはありますが、織物ならではの色の重さのためメリハリを感じます。

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写真3番目は、大西勇の袋帯「正倉院象文」を合わせてみました。正倉院御物である臈纈屏風に取材したものです。紫は着物の色にありませんが、グレーがなんとなく紫に見えるような気がすることもあります。メリハリのある象1頭で。

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写真4番目は、紫絋の袋帯「ウィリアムモリスシリーズ」の1本を合わせてみました。着物には黄緑もあるので、葉の緑は同系色でもありますが、強い陽濃淡の差でコントラストを感じます。

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写真5番目は、北秀の塩瀬の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。大松は大彦・大羊居の本家筋にあたります。帯は黒の地色ですが、中の模様の鸚哥のいる花の丸文は大松らしい鮮やかながら透明な大松らしい多色で、着物の色との共通性もあります。

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写真6番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。これまでと反対に着物と帯がメリハリなくグラデーションに見えるような例を試してみました。
[ 2017/06/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせ

第三千七百八十七回目は、藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせです。

今回の桶絞りの訪問着は、黄色、水色、黄緑、グレーの明るい4つの色で出来ています。色は均等と思いますが、「美しいキモノ2015年冬号」の表紙の賀来千香子さんを見ると、実際に着たときは黄色が目立つように感じます。

今日は、この訪問着に使われている4つの色のそれぞれに合わせた色の袋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、グレー代表として、龍村の袋帯「印度煌花文」を合わせてみました。4色のうち、いちばん地味な色はグレーですから、帯の色を合わせる時はグレーを合わせることにより、綺麗すぎる色を抑え年齢幅を広くできます。

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写真2番目は、グレー代表として、北秀の塩瀬地に金糸の刺繍と箔の袋帯を合わせてみました。無彩色のグレーに金色だけの加工で、都会っぽい洗練された雰囲気です。近世初期の小袖は、桶絞りに箔と刺繍を組み合わせていますから、この組み合わせは着物と帯の両方を使って、小袖と同じにしたわけです。

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写真3番目は、水色代表として、おび弘の袋帯を合わせてみました。これは綺麗な色の組み合わせです。

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写真4番目は、黄緑代表として、織悦の袋帯「金更紗蔓花」を合わせてみました。黄緑代表というのはあまりありませんが、なんとか探してみました。

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写真5番目は、黄色代表として、北村武資の袋帯「七宝連珠文」を合わせてみました。明るい辛子色の地です。

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写真6番目は、黄色代表として金地も含めて、華陽の綴地の袋帯を合わせてみました。金地でも経糸に白い糸、緯糸に金糸を使ったものは明るい金色になって黄色代表役が務まるように思います。
[ 2017/06/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせ

第三千七百八十六回目は、藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせです。

今回の訪問着は透明感のある爽やかな色の作品です。染液に浸ける絞りの工程を考えれば、ミスをして染め直したりすればそのたびに色は濁っていくわけで、透明感のある爽やかな色ということは技術の高さを示すことでもあります。一方、帯で「透明感のある爽やかな色」を持つ作品と言えば織悦ですから、今日は爽やかどうし、織悦で帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶華文」を合わせてみました。平家納経をテーマにした帯で、色は明るい銀地です。

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写真2番目は、織悦の袋帯「柴垣秋草文尽し」を合わせてみました。琳派の秋草模様ですが、白い地色の上に濁りのない色で秋草文を織り出したものです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「枝栗繍文」を合わせてみました。タイトルに「繍」の文字があることから、本歌は刺繍作品とわかります。刺繍作品を織物に写しているわけで、織物でありながら、織物の意匠の特徴であるパターンよりも刺繍の意匠の特徴である自由を感じます。背景は金地です。

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写真4番目は、織悦の袋帯「枝菊吉向地文」を合わせてみました。地の亀甲と模様の枝菊とが二重に重なっているように見える二陪織物の様式です。喜多川俵二の有職織物でおなじみですね。地色は経が青、緯が金で玉虫のように見えます。

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写真5番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟楽園」を合わせてみました。地味な茶色の地色に細かい模様で、年輩者向きのように思えますが、よく見るとかわいい動物がいて若い人向きにも思えます。かわいいおばあちゃんにも。

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写真6番目は、織悦の袋帯「インド華文更紗」を合わせてみました。地色が桜色で、着物の染分けに無い色ですが、大きな更紗模様の色は着物の4色と共通の色を含んでいます。
[ 2017/06/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着

第三千七百八十五回目の作品として、藤井絞の桶絞りの訪問着を紹介します。

美しいキモノの2015年冬号の表紙に使われた着物です。その表紙は知的所有権の問題がありますからここでお見せすることはできませんが、「美しいキモノ 2015冬」で検索していただくと、ハースト婦人画報社のホームぺージかアマゾンで見られます。

全体が桶絞りで作られた着物です。桶絞りという技法は、生地の染めたくない部分を桶に入れ、染めたい部分を桶から出した状態で蓋をして縄で縛って圧力をかけ、染液に浸けるという方法です。たかが染分けをするためだけに、なぜそんなまだるっこしいことをしなければならないのかと思いますが、それはいろんな技法がある現代人の感覚で、室町時代の人にとっては、桶を使うというのは合理的な技法だったのです。

現代の辻が花に使われる絞の代表的な技法は帽子絞です。生地の絞りたい部分を摘まんで芯を入れ、それをビニール(フィルム)で包んで防染して染液に浸けます。室町時代も同じですが、プラスティックフィルムのようなものはありませんから、竹の皮あるいは油紙を使いました。竹の皮は竹の円周を超える大きさのものはありませんし、油紙というのも心もとないですから、小さい面積しか防染できませんでした。

大きい面積を染分けるにはどうしたらいいか、そこで登場するのが桶なのです。まだるっこしく感じますがプラスティックフィルムが無い地代はそれが唯一の方法なのです。現在では大きいプラスティックフィルムで包めばいいのですが、じつはそれが問題で、巨大な帽子絞でも染分けできてしまうために、一見同じに見えてもホンモノの桶絞りとニセモノの桶絞りが生じてしまったのです。現在、京都で桶絞りをしている工房は1軒か2軒ではないでしょうか。これはその数少ないホンモノです。

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いちばん上の写真は全体です。着物の意匠と思えば、使われている技法は絞りだけですし、パターンを繰り返すシンプルなものに感じます。しかし桶絞りの工程を考えると、どうやって桶の中に入れる部分と出す部分を選択したのか、複雑怪奇な気がします。

色は爽やかですから、染め重ねることはしていないのです。つまり一色は1回で決めなければいけないんですね。おそらく水色を染める時は水色以外の部分を桶に入れて水色の染液に浸け、黄色を染める時は黄色以外の部分を桶に入れて黄色の染液に浸るということを、色数だけ繰り返したんだと思います。

染分けの内部は花の模様が白抜きになっていますが、これは小さい面積の絞ですから帽子絞りです。桶絞りをしつつ、入れ子的に帽子絞りもしているんですね。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。友禅のばあいは、中井淳夫さんのような重厚な色が良い場合もありますが、絞りは失敗して何度も絞り直していればいやでも重厚になってしまいます。色が爽やかであるということは、1度で鮮やかに決めているという技の凄さを表しているわけです。

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写真3番目は、前姿~脇縫い~後姿です。現在は染分けの技法はいろいろあるわけですが、その中で特に面倒な絞りを選ぶ理由は何でしょうか。私は輪郭線が軟らかくグラデーション効果があることだと思います。特にこの作品は全身染分けで、グラデーションの見せ場だらけです。

普通の桶絞りは、刺繍や箔を併用することが多いです。絞りがグラデーション担当で、その他の技法がコントラスト担当でバランスが取れるのです。しかしこの作品はグラデーションだけで柔らかい一方ですから、漫才でいえばボケだけですね。そのことで着る人を優しく見せますし、コントラスト役を帯に任せているとも言えます。そこのところは帯合わせで改めて論じたいと思います。

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写真4番目は後姿です。中央の縫い目は背中心です。

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写真5番目は背中心辺りから下前です。
[ 2017/06/23 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせ

第三千七百八十四回目は、金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせです。

昨日は、帯に絵画性が無いことから着物で絵画性を補うという発想で帯合わせをしました。今日は、帯に絵画性が無いのは作者の意図と解釈し、その意図を貫徹させてあげるため、着物も無地と縞と格子にして、全身無地系にしてみました。無地系という言葉を呉服業界に認知させたのは森田空美さんということが有名になりすぎて、無地っぽいコーディネートをしていると森田空美風と言われますよね。

私は無地系の良いところは、とりあえず着ている人を頭が良さそうに見せるところだと思います。悪いところは、失敗ということが無いので誰でも真似できてしまい、またかと思われるところですね。

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いちばん上の写真は、齋藤頴さんの館山唐桟を合わせてみました。白黒の帯に、さらに無彩色のグレーの縞を合わせて、模様だけでなく色さえ無くして無地系を貫徹してみました。

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写真2番目は、林宗平の塩沢紬の藍の縞を合わせてみました。白黒の帯に紺色の着物の組み合わせです。

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写真3番目は、牛首紬の無地を合わせてみました。グレーの無地の牛首ですが、グレーの色にちょっと甘みがあって、それが微妙な色気になっています。無地系の持つ知的なイメージを維持しつつ女性的な色気も出そうと思うと、色の微妙な部分で勝負することになるんじゃないんでしょうか。

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写真4番目は、久米島紬の細かい格子を合わせてみました。泥染の微妙に焦げ茶味のある黒に細かい格子です。

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写真5番目は、白鷹紬を合わせてみました。白鷹町を産地とする織物で、経産省の伝産マークの区分では「置賜郡の紬」に含まれます。塩沢にお召である本塩沢と真綿である塩沢紬があるように、白鷹町には白鷹お召と白鷹紬があります。これは手紡ぎ真綿糸を使った手織りの紬です。

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写真6番目は、久米島紬の縞を合わせてみました。今日でいちばん上手な帯合わせになりました。そう思いませんか。
[ 2017/06/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせ

第三千七百八十三回目は、金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせです。

今回の帯は市松模様だけで絵画的な要素が無いですから、絵画的な絣を合わせることでバランスを取るのが良いと思います。しかしながら、模様のない帯を織った人は、模様が無いことが美しいと思ったのかもしれませんから、着物も模様のないものを合わせて、帯を織った人の意図を貫徹させてあげても良いです。

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いちばん上の写真は、重要無形文化財の結城紬を合わせてみました。百亀甲の総柄です。

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写真2番目は、六条雪山紬(本当は塩沢紬)を合わせてみました。先日、悪い例として使った六条雪山紬を普通に使ってみました。

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写真3番目は、弓浜絣を合わせてみました。弓浜絣は民芸的な雰囲気が特長ですから、物語性のあるデザインが好きです。

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写真4番目は、弓浜絣を合わせてみました。普通の木綿の絵絣は紺地ですが、これは色を反転させたもので、グレー地で模様が紺です。帯が黒白の無彩色ですから、着物をグレー地にすることで、無彩色モノトーンをつくって、色だけは無地系着物の思想を取り入れてみました。

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写真5番目は、林宗平の塩沢紬を合わせてみました。現在は息子さんの代ですが、林宗平さんの時代は「古代紬」というブランドでした。有栖川龍文を並べたもので、しつこいぐらい模様が有りますが、帯は模様が無くバランスが良いのではないでしょうか。

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写真6番目は、ジャワ更紗の着尺を合わせてみました。かつてインドネシアとの貿易不均衡を是正するため日商岩井が企画したチャンチンによる紬の着物です。日本から紬の白生地を輸出し、現地でチャンチンを使う作家が加工し日本に輸入したものです。こんなことで貿易不均衡が解消するとは思いませんが、何か努力しようとする態度を示す必要があったのでしょう。
[ 2017/06/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」

第三千七百八十二回目の作品として、金谷の八寸の名古屋帯「市松」を紹介します。

今日は、先日まで紹介していた金谷の八寸の名古屋帯の違う模様です。八寸の帯と九寸の帯の違いですが、どちらも名古屋帯で身に付ける時の幅は八寸です。八寸の帯は縁の部分をかがりますが、九寸の帯は芯を入れて仕立てます。仕立てる時の縫いしろが1寸というわけです。

両者の違いは、八寸の帯はカジュアル感が強く、たいていのばあい紬の着物にあわせるのに対し、九寸の帯は多少フォーマル感が有って紬の他小紋にも合わせることが多いということです。素材は、八寸の帯は芯が無くても形が崩れないように太い糸が使われた厚手の生地であるのに対し、九寸の帯は芯を入れるので生地は自由です。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。市松模様で六通になっていますから、お太鼓も腹文も同じ市松です。腹文としては半分に折りますから見えるところは市松ではないですね。

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写真2番目は、少し近接してみました。経緯ともに白糸と黒糸があって、白×白、白×黒、黒×白、白×白の4通りの場が生じ、市松になっているのです。白×黒と黒×白は同じではなく、経糸が黒の方が黒く見えるようです。なぜそうなるか解明するために下の写真で拡大してみました。

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写真3番目は拡大です。経糸の方が表面に露出している面積が大きいので、経糸が黒の方が黒く見え、経糸が白の方が白く見えるようです。
[ 2017/06/20 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「捻じり梅」の帯合わせ

第三千七百八十一回目は、金谷の八寸の名古屋帯「捻じり梅」の帯合わせです。

昨日は、帯の意匠が具象ということで着物は具象を避けましたが、今日はあえて模様を重ねてみようと思います。

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いちばん上の写真は、「六条雪山紬」を合わせてみました。いくらなんでもこれはないだろうという帯合わせをしてみました。梅まつりに「梅の女王」として招待されたときの帯合わせに良いと思います。「六条雪山紬」の正体は塩沢紬です。「六条雪山紬」は高峰秀子と松山善三のコンビで制作された映画のタイトルです。塩沢紬の織元をモデルにした映画で、当時、ホンモノの塩沢の織元が凝らば商品を制作したようです。

映画のコラボというとミーハーなイメージですが、真綿で手織りのとても良い紬です。意匠的には女優さんの色香が感じられるものなので、意識して作ったんでしょうね。

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写真2番目は、弓浜絣を合わせてみました。弓浜絣は、山陰の絵絣の伝統的な産地ですが、布団地のような厚手で、絣は緯絣だけの平明な表現ですが、その代わり絵画性が高いです。ようするに民芸のイメージを絵にかいたようなものですね。

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写真3番目は、小川内龍夫さんの久留米絣を合わせてみました。重要無形文化財の要件を満たす久留米絣です。経緯の絣ですが、経緯絣の部分が真っ白になるのに対し、緯絣部分が地色との中間色になるのを利用して、色に濃淡のある奥行きのある表現にしたものです。細密な表現をするため糸は細く、薄手でさらっとしています。このようなものは民芸というより伝統工芸展に入選するためのコンペティション的ですね。

絣の模様が幾何学模様的なので、模様が重なる感じはないかなと。

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写真4番目は、「木曽紬」を合わせてみました。昔の仕入れでたまたま在庫としてあるものです。伝産マークのある信州紬には木曽紬というのは無いので、十日町のものなんじゃないかと思います。真綿で手織りの良い紬なんですけどね。

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写真5番目は、大城広四郎の琉球絣を合わせてみました。南風原の工房です。

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写真6番目は、塩沢紬を合わせてみました。経緯絣の真綿の紬です。緑色と紺色の組み合わせが面白いので選んでみました。
[ 2017/06/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「捻じり梅」の帯合わせ

第三千七百八十回目は、金谷の八寸の名古屋帯「捻じり梅」の帯合わせです。

シンプルですが具象的な模様ですから、着物は具象を避けて、縞や格子や幾何絣だけにしてみました。

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いちばん上の写真は、牛首紬の鰹縞を合わせてみました。紺の帯に紺のグラデーションという組み合わせにしてみました。

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写真2番目は、大城永光の琉球絣を合わせてみました。縞と幾何絣(沖縄独特の模様単位による絣)から成る意匠で、「綾の中」と言われるタイプですね。

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写真3番目は、大城織物工場の琉球絣を合わせてみました。大城織物工場は大城カメさんの工房です。大城広四郎も含めて、大城という姓は多いですからわかりにくいですが、みんな別の工房です。格子(沖縄では碁盤の意味でグバンという)と幾何絣(沖縄独特の模様単位による絣)から成る意匠で、「手縞」と言われるタイプですね。

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写真4番目は、齋藤頴さんの館山の唐桟を合わせてみました。江戸時代後期から川越を中心に関東各地で織られ始めた木綿の縞である唐桟です。舘山で齋藤さんの初代が初めてのは明治の初期ですが、手織りりで現在まで継続している唯一のものです。他の地域の唐桟は、滅びたものもありますし、機械織りで続いてきて近年手織りで復活したものしたものもあります。手織りで復活したケースはたいてい女性が担い手になっています。

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写真5番目は、「三代目清次」という作家による十日町の紬を合わせてみました。手紡ぎ真綿の糸を草木染し手織りしたということです。実際に手で触ってみると感触がよく、嘘ではないと思うのですが、いきなり「三代目」といわれるとEXILEの仲間みたいで、よくわからないところがあります。こちらの方が先なんですけどね。

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写真6番目は、黒八丈を合わせてみました。紺の帯に対して黒黄色の着物で異質の世界ですが、わりといいかなと思っています。なにより帯の存在感が黄八丈に負けていないのが良いですね。
[ 2017/06/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯

第三千七百七十九回目の作品として、金谷の八寸の名古屋帯を紹介します。

金谷は、まこと織物の分家です。まこと織物は「まことのすくい」と「まことのよろけ」の商標で知られています。

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いちばん上の写真はお太鼓です。捻じり梅を大きく半分、という意匠です。八寸名古屋帯は紬に合わせるものですが、その紬が絣であること考えると、配色も含めてこういうデザインはピッタリ嵌るんじゃないかと思います。

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写真2番目は腹文です。赤はお太鼓だけ、という見識ですね。

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写真3番目はお太鼓の近接です。

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写真4番目はお太鼓の拡大です。

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写真5番目は過去に仕入れた金谷の八寸の名古屋帯です。ずっと昔、紹介したことがりますが、まだ在庫でありますねえ。私はこのデザインも好きですが、2つ並べると金谷の作風がわかってきます。
[ 2017/06/17 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯の帯合わせ

第三千七百七十八回目は、東京刺繍の帯の帯合わせです。

今日は紬を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、秋山真和さんの「綾の手紬」の縞を合わせてみました。かつて菱一が別織していた縞です。別織あるいは別染というのは問屋やメーカーが、作家や産地に対し、オリジナル商品として発注するものを言います。「綾の手紬」ブランドは、草木染で手織りの高級品ですが、菱一の別織バージョンは縞だったので、作家の意志で織った凝った絣の作品よりリーズナブルでした。

この作品は色が赤系ということで菱一でも売れ残っていて、私が安く買ったものです。オリジナル商品というのは、発注した会社が全部引き取らないといけないのでそういうこともあるのでしょう。今回は着物と帯を赤黒の関係で使ってみました。

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写真2番目は、山下八百子さんの黄八丈を合わせてみました。黒と黄色の関係を作ってみました。手刺繍で高そうだけれども、模様は遊びっぽいという帯は、人気作家の高そうな紬に合わせるには良いと思います。

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写真3番目は、読谷花織を合わせてみました。黒に黒という関係を作ってみました。

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写真4番目は、真栄城興茂さんの琉球美絣を合わせてみました。手織りの木綿地で色は琉球藍と福木です。福木は黄色いので、藍と重ね染めすると緑になります。青と黄色と緑の絣ができるわけですね。

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写真5番目は、大城永光さんの琉球絣を合わせてみました。南風原の工房ですが、沖縄の伝統の絣や花織を織っていますが、さっぱりとして実際に着やすい作風です。
[ 2017/06/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯の帯合わせ

第三千七百七十七回目は、東京刺繍の帯の帯合わせです。

今日は付下げを合わせてみます。

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いちばん上の写真は、一の橋の付下げを合わせてみました。紬地の付下げです。エキゾチックを狙って更紗を合わせてみました。

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写真2番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは米沢新之助さんです。イラストのようなタッチの作品を多く残した作家さんです。存命ですが日本にはいないようですね。

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写真3番目は、野口の付下げを合わせてみました。色紙取りで、中の模様は唐華文です。国籍不明で使いやすいのではないでしょうか。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。紬地の付下げで、ダンマル描きで洒脱な絵が描いてありますが、陶画を写したものということです。茶陶かなあとも思いますが、近藤悠三の弟子でとても仲良くしている方がいたので、その流れかもしれません。

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写真5番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは岡本等さんです。昭和の終わりごろのフォーマル全盛の時代、野口が小紋だけではなくフォーマルでもお洒落だ、というイメージを確立するのに大いに貢献した岡本等さんの作品です。うちでも大人気で、私も見れば仕入れていたのですが、もうこれがほとんど最後です。

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写真6番目は、野口の手挿しの訪問着を合わせてみました。輪郭だけは型、彩色は手で行っている作品です。このようなものを手挿しの訪問着といい、模様が多い割に安価なのが特長です。短所は色違いを着ている人が複数いることですが、大量に作るのではなく、1年に2枚程度を数年にわたって作り続けるというやり方をするので、すれ違うことはまずないでしょう。

配色はさすが野口でとても上手です。デザインについてもみんなに愛される感じです。複数制作を前提するものは、失敗すると損が大きいですからちゃんと市場を考えて推敲していますから。
[ 2017/06/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯の帯合わせ

第三千七百七十六回目は、東京刺繍の帯の帯合わせです。

今回の帯は洒落モノでカジュアルというのが基本だと思いますが、私はいつものように、紬~フォーマルまで使ってしまいます。今日は染めの着尺に合わせます。刺繍の帯の良いところは、絵画的な模様の着尺を合わせられるところです。友禅の帯だと絵画の上に絵画を重ねることになってしまいますから。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。帯のテーマがヨーロッパの街の縁日と大道芸人というエキゾチックなものですから、着物のテーマはとりあえず更紗にしてみました。単色濃淡の植物模様で使いやすい着尺です。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。多色の縞更紗で全く余白が無い意匠なので、友禅でも型染でも模様のある帯は使いにくいです。今回の帯は刺繍の模様の周りに十分な余白があり、着物の模様と帯の模様が分離できるので見た目自然です。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。多色の縞更紗で全く余白のない意匠です。上と違うところは、型染(あるいはシルクスクリーン)で細密な表現をしているところですね。好き好きですが、どちらも帯合わせは難しいです。今回のような刺繍の帯は、模様自体は重厚ながら余白があるわけですが、そういう帯は便利ですね。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。葡萄の蔓がテーマですが、大きい模様でしかも総柄という、作品としてはとても面白いが、帯合わせは難しいという着物です。模様は重厚でも余白があるという刺繍帯の特長が生きる着物ですね。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。楓の枝をテーマにした着尺ですが、1つの模様が一巡するのが2mほどある(型の長さが2mもあるということ)ため、着てしまうとなかなか模様が繰り返しませんから、訪問着のような雰囲気になります。帯としてはそこそこの重厚さも必要なので、このような手間のかかった帯が良いのではないでしょうか。

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写真6番目は、野口の着尺を合わせてみました。多色の楽しげな雰囲気の着尺です。帯のテーマが縁日と大道芸人なら、着物も明るく楽しいものが合うはず、ということで選んでみました。

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写真7番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。雀を絞った着尺です。あらかじめ表現したい具象的なデザインがあって、そこに向けて絞り方を工夫しているわけですから、辻が花の流れをくむものです。その反対は有松のようにいろんな絞り方を工夫して、結果として思いがけない模様が現れるのを喜ぶ絞ですね。

縫い締め絞りは、生地を摘まんで防染するのが普通ですが、このように模様の色が地色より濃いものは、模様を絞っているのではなく模様以外を絞っているのですし、模様の周りにさらに濃い輪郭部分があるのも絞り方の工夫ですから、極めて難度の高いものです。

私は絞りの着物を仕入れる時に、絞り方の難度の高そうなものを仕入れるようにしています。真似されにくいですから値崩れしませんものね。たまたまセンスが良くても、ただ生地を摘まんでできるものは誰でも出来そうですから。
[ 2017/06/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯の続き

第三千七百七十五回目は、東京刺繍の帯の続きです。

個別の模様の近接の続きです。このような作品の魅力は、個別の模様ですから、今日は細かいところを見てください。

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いちばん上の写真は、お太鼓にある個別の模様の近接です。車輪がついている大型の楽器です。撥を持っているので太鼓なのでしょうか。ヨーロッパの街の縁日の風景だと思いますが、そのような意匠では、音が出る楽器を持った人を含めると、見た人が音を感じるようになります。

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写真2番目は、お太鼓にある個別の模様の近接です。子供も欠かせない要素ですね。子育てを経験した人は感情移入しやすいのでは。

模様の表現ですが、どの模様も色糸を使って面を埋める刺繍をしつつ、金糸のまつい繍で細部の線表現をしています。面を埋める刺繍はすべて地の目に沿っていますが、生地が垂れない配慮でしょうか。面を埋めることでボリュームを感じさせるのと、線表現で細密さを感じさせるという対照的な2つの技法で、絵として魅力にあるものにしているのです。

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写真3番目は、お太鼓にある個別の模様の近接です。ガス灯で、梯子はガスに点火するためのものでしょう。芸能人のヘタウマなえのような表現ですが、これが温かみを生んでいます。

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写真4番目は、腹文にある個別の模様の近接です。コンバーチブルの自動車でしょうか。これだけは線表現が多いですね。

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写真5番目は、腹文にある個別の模様の近接です。自動演奏の機械でしょうか。この模様は綿を埋める表現が多いです。線表現が多い自動車の隣にあるので、この2つでバランスをとっているんじゃないかと思います。なんでも一生懸命たくさん仕事をすればよい、という発想だととても高いものになってしまいます。一生懸命やるところ、少し休むところ、緩急自在っていうのも刺繍作家のセンスですね。

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写真6番目は、腹文にある個別の模様の近接です。私はこれがなんだかわからないんですよ。

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写真7番目は、お太鼓の模様の裏側です。
[ 2017/06/13 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯

第三千七百七十四目は、東京刺繍の帯を紹介します。

今回はメーカー名やブランド名はありません。実際の制作は東京のどこかで行われていて、それを問屋さんが集めて、主に他の問屋さんに販売しています。そのような問屋を仲間問屋と言います。東京にも知られている刺繍工房はありますが、そういう工房を退職したり卒業したりした人が、自宅で内職として制作することもありますから、誰がつくっているのかわからないのです。

刺繍の工房で働いている人は女性が多いですから、結婚や妊娠を契機に辞めて、子育てが終わった後に自宅で始めるというケースが多いのではないでしょうか。工房は経ず問屋と直接契約し、問屋は制作者の氏名は明かさないのです。それが分ったら小売屋やユーザーが直接仕事を頼んでしまい、問屋が成り立ちませんから。

そのようなことができるのが、刺繍という技法の特徴なのです。友禅であれば水洗とか蒸しとか一定の設備が要りますし、大量に残った染料を捨てるばあいは工業地域あるいは準工業地域でなければなりません。地染めをするには長さ12mの作業場が無いとムラになってしまいますしね。その点、刺繍は突き詰めれば針だけですから。場所も要らない、元手も要らない、仲間も要らない、自分の技術とセンスだけなのです。

というわけで、この作品も誰がつくっているのか全然わかりません。ただ分かっていることは、元締めになっている問屋が東京にいて、京都の問屋にも貸し出していることです。京都の問屋、例えば野口でこんな作品を見たら、刺繍の本場の京都には面白いものがあるなんて思ってしまいますが、じつは東京だったということもあるわけです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。縁日に移動サーカスが来たような楽しい雰囲気です。ヨーロッパのお祭りだと移動式の回転木馬が来たり、大道芸人が来たりしますよね、そんな情景でしょうか。

個人で創作している人にとって、いちばん難しいことは魅力のある図案を手に入れることだと思います。技術は工房で鍛えているので、多少歳を取ったって劣化することはないでしょう。デザインも自分が感動したものをそのまま表現すれば良いものができるでしょう。しかし業として日々制作していくときに、毎回、人を喜ばせる図案を思いつき続けることができるでしょうか。

野口や洛風林のようなセンスが売りの会社は、展示会では毎回、みんなの期待を裏切らないデザインを発表し続けます。それはデザインを生み出す組織を持っているか、複数のプロのデザイナーと契約していて、デザインについてしっかりお金を払っているからだと思います。個人はそれができません。お風呂で思いつけばタダですが、毎回思いつくとは限りませんから。

今回の作品はとても楽しい雰囲気で私は大好きですが、こういうのって、じつは何十本の中から選んでいるんですよね。この仲間で、前回良いなと思ったのは、いろんな種類の鳥、その前は香水瓶です。じつは1年に1回も出会ってないのです。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目から下は、個別の模様に近接してみました。

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写真4番目はお太鼓にある個別の模様です。汽車です。

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写真5番目はお太鼓にある個別の模様です。飛行機ですね。

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写真6番目もお太鼓にある個別の模様です。気球で飛んでいる人でしょうか、大道芸人でしょうか。
[ 2017/06/12 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千ぐさの色留袖の続き

第三千七百七十三目は、千ぐさの色留袖の続きです。

今回修理した色留袖は、江戸時代後期に流行した蔓模様小袖に想を得たものです。世界的にアールヌーヴォーが流行る100年近く前、なぜか日本に曲線の植物模様が流行しました。最初は蔓植物を選んで模様にしたのかもしれませんが、やがて菊とか楓とか杜若のような蔓ではありえない植物まで蔓のような曲線で表現するようになりました。曲線の植物模様が雪持ちになっている例もあり、この作品はそれを写したと思われますが、鴛鴦を加え、雪が止んだ朝の池の景色にしたのは創作です。

雪に金加工がしてあって、部分的に金色に光っています。雪に朝日が当たってキラキラ光っているからで雪はすでに止んでいることがわかります。葉に乗った雪も水分を多く含んでもう溶けかかっています。その雪の形もちゃんと写生されていますね。鴛鴦は5羽です。本歌の小袖では植物の背景は地染めだけですが、水鳥がいることで背景は水面ということに変わっています。

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いちばん上の写真は、オクミの鳥です。重厚なあしらいをしていて前姿のアイキャッチポイントになっています。よく見ると縫い目の近くが少し地色が濃い痕跡が残っています。友禅というのは蒸して発色するわけですから、直すときは別の色で直していて、蒸してから色が一致するわけです。しかし完璧な予想はできないので、多少うっすらわかるところがあるのではないかと思います。今後は、仕立てた後に、縫い目近辺を中心に色刷毛という方法で直します。直すというより調整という感じですが、それで完全に直るでしょう。

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写真2番目はマエミの鳥です。色が地味なメスの方が前を泳いでいるようですし、表情が生き生きしているように見えます。

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写真3番目は後姿ですが、背中心の手前側ですね。今回の修復では、全体が縫い目の奥のやけていなかった本来の色に戻りました。鳥の周辺は私が思っていたよりくっきりしていて、私が知ったつもりでいたものより綺麗でした。

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写真4番目も後姿ですが、背中心を越えた向こう側です。あしらいもなくメスで色も地味ですが、溌溂としていて、私にはこの鳥がいちばん魅力的に見えます。この作品ではオスは全て不活発、メスは全て生き生きしています。この着物を選ぶのは女性ですから、作者は女性に配慮しているんじゃないでしょうか。その辺も図案のテクニックかもしれませんね。

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写真5番目は、マエミの模様の重心がある部分です。唐突に菊が現れたりしてけっこう不自然ですが、これは本歌である小袖を忠実に写したものです。変だなんて思わないで、江戸時代の人の感性をそのまま受け入れればいいと思います。

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写真6番目は参考図版で、元になった蔓模様小袖です。今回この色留袖は、袖に金描きで加工して訪問着化する予定です。袖にどのような模様を付けるかと考える時、袖に模様がある元の小袖を復活させればいいわけで、その通りにはできないですが、参考にはなるわけです。私は、この小袖の中ほどから生えている蔓の束を小さくして、袖の裾から生やしたら良いように思います。
[ 2017/06/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

修繕が完了した千ぐさの色留袖

第三千七百七十二回目は、千ぐさの色留袖を紹介します。

かつて北秀で仕入れたものです。後に販売するにあたって絵羽を解いたところ、見えていた部分と縫い目の奥で陽に当たらなかっところの色の差が激しく、かなりヤバい商品をつかまされていたことを知りました。写真で見てわかるとおり、絵画的にはとても魅力的な作品です。しかしその一方、雪持ちということで季節限定ですから売りにくいです。そのためあちこちの展示会で貸し出され、どこでも客寄せに壇上に飾られてライトを当てられたのでしょう。

返品するか、北秀の責任で直させればよいのですが、そのときすでに北秀は破産していて文句を言う相手もいませんでした。今回、この難度の高い仕事を引き受けてくれたのは千切屋治兵衛の野村さんですが、けっこうお金もかかりました。模様部分全部を縁蓋で防染して染め直したのです。今回めでたく新装なりましたので、ぜひ見てください。今日は裾模様一周です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は、マエミ~脇縫い辺りです。

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写真3番目は、後姿です。中央の縫い目が背中心です。

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写真4番目は、身頃~下前です。
[ 2017/06/10 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

振袖に合わせることを想定した半衿の続き

第三千七百七十一回目は、振袖に合わせることを想定した半衿の続きです。

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いちばん上の写真は、赤地に白と金の模様の刺繍の半衿です。真っ赤な地色で、使い道も難しいと思われますが、朱色の疋田の振袖に対しては、濃淡同系として使えます。

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写真2番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。

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写真3番目は、白地に多色の模様の刺繍の半衿です。几帳に梅と桜というテーマです。東京の問屋で半衿を仕入れようと思うと、着物に上品に合うように淡い色調のものが多いです。そのためこういう色調のものを見ると新鮮な感じがします。

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写真4番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。

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写真5番目は、白地に淡いピンクと白と金の模様の刺繍の半衿です。白地に淡いピンクという組み合わせの半衿は、若い人向きの半衿としてよくあるものです。上品でかわいくて失敗の無いものですが、朱系の振袖に対しどうでしょか。

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写真6番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。同じ赤系でも朱系とピンク系は方向が違うように思いますが、こうして合わせてみると違和感を感じるほどではないと思います。実際にはこの間に重ね衿が入ります。それをどうするかですね。

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写真7番目は、ペパーミント風の地に白と金の模様の刺繍の半衿です。巨大な松竹梅です。半衿に限らず、私はこういうデザインが好きです。

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写真8番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。朱色とペパーミント、なかなか綺麗です。重ね衿悩みますね。

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写真9番目は、茶色の地に複数色の模様の刺繍の半衿です。貝桶など器物模様と植物文を合わせたものです。茶色と言うのが振袖に合うか不安ですね。

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写真10番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。ちょっとアンティークっぽい雰囲気も出て意外と面白いです。着物の衿と半衿だけで独自の個性的な世界を作ってしまっているため、重ね衿は悩みますけどね。

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写真11番目は、ピンク色の地にピンクの濃淡の模様の刺繍の半衿です。七宝文と桜を組み合わせたようで、図案としてはとても良いです。

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写真12番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。古典的な朱色とピンクが調和できるか問題ですが、重ね衿で何とかならないでしょうか。

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写真13番目は白地に白と水色の模様の刺繍の半衿です。桜は水色、よく見ると鳥がいます。

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写真14番目は、実際の使用状況を想定し、振袖の衿の部分に合わせてみました。
[ 2017/06/09 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

振袖に合わせることを想定した半衿

第三千七百七十回目は、振袖に合わせることを想定した半衿です。

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いちばん上の写真は今回ベースに使う振袖です。京正が制作したもので、実際の制作は安田です。安田様式のものや、安田の元職人が制作したというものは時々ありますが、安田本人がつくった振袖というのは滅多に見ないです。

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写真2番目は、地が白で刺繍糸は白と金です。フォーマルの基本である白と金です。半衿の素材は、生地も刺繍糸も化繊、生地が正絹で刺繍糸が化繊、生地も刺繍糸も正絹、という組み合わせがあります。生地が交織というのもありますが、表示を見ると「絹3%、化繊97%」なんていうこともあるので、意味が有るかわかりません。

両者の違いですが、正絹のばあい時間が経つと象牙色になるのに対し、化繊のばあいいつまでも白いです。これについてはどちらが良いかわかりません。また汚れて洗うばあい正絹の方がお金がかかります。一般的に半衿は、現在は正絹か化繊かというよりも機能性で選ぶ場合が多いです。

また刺繍については、現在は自分で注文しない限り手刺繍というのはありません。高いものでもミシンと思って良いでしょう。少し昔、中国で手刺繍をするという企画があって、うちにも若干在庫がありますが、野暮な手刺繍よりセンンスの良いミシン刺繍の方が良いと思います。ファッションですから。

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写真3番目は、振袖の衿の部分に重ねてみました。実際には途中に重ね衿(伊達衿)が入るでしょう。白と金のみの半衿の良いところは、重ね衿が何色になっても大丈夫なところです。半衿は長襦袢に縫い付けるのですが、現在の、特に振袖のばあいユーザー自身が縫い付けることはないので、仕立て段階で縫い付けます。そのため購入時に決めておかないといけないのです。

一方伊達衿は、帯揚げや帯締めと色を関連させることが多いですが、仕立て工程に関係が無いので、着付けの前日でも大丈夫です。迷うのであれば、半衿は白金にしておいて、重ね衿はギリギリまで迷うという手もあります。

もう1つ、白金の良いところは将来黒留袖にも使えるところです。もちろん地色がどうであっても訪問着にも使えます。

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写真4番目は、地が白で刺繍糸は白と金です。


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写真5番目は、振袖の衿の部分に重ねてみました。実際には途中に重ね衿が入るでしょう。

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写真6番目は、地が白で刺繍糸は白と金です。

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写真7番目は、振袖の衿の部分に重ねてみました。実際には途中に重ね衿が入るでしょう。

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写真8番目は、地が白で刺繍糸も白だけです。金糸を使わない白だけという手もありますね。もちろん白だけでも将来黒留袖にも使えるところです。地色がどうであっても訪問着にも使えます。

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写真9番目は、振袖の衿の部分に重ねてみました。実際には途中に重ね衿が入るでしょう。

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写真10番目は、地が白で刺繍糸も白だけです。

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写真11番目は、振袖の衿の部分に重ねてみました。実際には途中に重ね衿が入るでしょう。

明日は、色の有る半衿を使ってみます。
[ 2017/06/08 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の「筑波紬」の帯合わせ

第三千七百六十九回目は、奥順の「筑波紬」の帯合わせです。

今日も昨日の続きで、絵画的に鑑賞できそうな染め帯で合わせてみました。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。縁蓋を使った繊細な金銀箔で倉部さんの作品みたいですが、糊糸目の友禅が特長の藤岡さんの作品です。どこが違うかですが、葉の間に見える薄茶の部分が友禅なのです。

倉部さんのばあいは刺繍と箔が本業なので、どうしても必要な時以外友禅は使わないのですが、藤岡さんのばあい友禅が本業なので、箔の作品でも下地に友禅をしているのです。大部分は見えなくなってしまい無駄にも思えるのですが、その作者の成り立ちが反映しているのでしょう。また糊糸目友禅が専業のような藤岡さんは、じつは縁蓋を使った高度な箔加工も結構上手いということがわかります。

作品の意匠の意味ですが、楓(八つ手に見えますが)を組み合わせて梅の花に見せるというもので、春秋対応なのです。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは野村さんです。糊糸目の友禅と型疋田を併用したもので、生地は紬地、地色は黒です。シンプルで大きなモチーフが黒地を背景にし、しかもモチーフ自体も無彩色であれば、粋の見本みたいになって人を選びますよね。

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写真3番目は、藤井絞の紬地の名古屋帯「六葉花」を合わせてみました。絞りの技法で具象画を描く辻が花の様式の作品です。図案は創作で、辻が花が幻と言われず現代まで続いていたらこうなっていただろうという趣旨のものだと思います。ただし、この作品は、絞った後に染液に浸けず筆で着彩しています。

藤井絞は、本来、染液に浸ける本物の絞をしていることが売りですが、その本物の職人が染液に浸けないニセモノを作ると、もっと上手くなるという例ですね。

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写真4番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。この着物を仕立てる人はたいていは単衣で仕立てるでしょう。それを考えて夏帯を合わせてみました。これは辻が花のかなり本歌に近い写しです。

ちゃんと染液に浸ける絞りで、地ではなく模様が染まっている絞りは、全体をフィルムで覆い模様部分だけを露出した状態で染液に浸けるもので、その時は棒状になっていて、初めて見る人は着物を染めているとは思わないかもしれません。それを色の数だけ繰り返すわけです。絞りというのは浸けるか浸けないかで、難度も手間も全然違うのです。

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写真5番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。これも室町時代にある本歌に近い写しで、ちゃんと染液に浸けています。生紬地で単衣に良いですね。

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写真6番目は、藤井絞の神坂雪佳の名古屋帯「金魚玉」を合わせてみました。神坂雪佳は、画家としては琳派に属し戦前に下絵集を発表していますが、それは芸艸堂という出版社から発売されていて今も売っています。今の人気のきっかけは、フランスのブランドが冊子の表紙に取り上げたからで、そのときは神坂雪佳の作品を所持している一の橋に取材に来たそうです。

これは最近特に人気の図案ですが、各社、友禅で制作する中、藤井絞は絞りで制作しました。ただし染液には浸けていません。さすがに無理なんでしょうか。生地は生紬で単衣向きですね。
[ 2017/06/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の「筑波紬」の帯合わせ

第三千七百六十八回目は、奥順の「筑波紬」の帯合わせです。

今回のような、本当に価値があるのか、それとも心情的な価値しかないのか分らない着物については、本当に価値のある帯を合わせるのが良いですね。さらに単体で絵画として鑑賞できる帯が良いです。

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いちばん上の写真は、大羊居の名古屋帯「八つ手」を合わせてみました。価値が曖昧な着物に対して、価値があることがはっきりわかる、しかも単体で絵画として鑑賞可能な帯を合わせるということであれば、大羊居がいちばん適任だと思います。、


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写真2番目は、大羊居の名古屋帯「楽園」を合わせてみました。あらゆる着物に合わせにくそうな、真っ青な地色の帯ですが、意外と紺の紬には合うんですね。伝統的な紬は藍染がいちばん多いわけですから、使い道は多いわけです。

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写真3番目は、大羊居の名古屋帯「更紗の苑」を合わせてみました。

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写真4番目は、花也の名古屋帯「市松取り草花文」を合わせてみました。花也の特長はなんといっても本物の糊糸目ですが、それが際立つのは線描きです。普通の糸目は染料の防波堤としての機能を持つわけですが、線描きは純粋な絵画です。ただ正確なだけでなく、線の勢いとかおおらかであるとか、伸び伸びしているとか、そんな批評もされてしまうことになります。

この作品はその線描きを多用したものです。こんな線描きメインのデザインの帯や着物を見たら、線が心地良いかぜひ鑑賞してみてください。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「斜線椿文」を合わせてみました。これも線描きを多用した作品ですが、上の作品とは糸目糊置きの職人が違います。上の作品はかすれるギリギリの細さで神経質なところもありますが、こちらはあまり細さにはこだわらずおおらかな感じですね。

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写真6番目は、花也の名古屋帯「アールヌーヴォー亀甲と変わり刺繍文」を合わせてみました。「アールヌーヴォー亀甲」というものがアールヌーヴォーの本場の歴史にあるわけではありません。戦前の下絵集に載っているデザインなのです。昔の図案家は、ヨーロッパから輸入された美術書のモノクロの写真を見て、外国ではこんなのがあるのかと一生けん命考えたんでしょうね。

刺繍は京繍の変わり繍です。ちょっと立体感があって面白いですが、なにより配色が上手です。こういうよろけた線のデザインは、着崩れてもばれないで便利なんですよ。真っ直ぐな横線だとちょっと斜めになっても気になるものです。
[ 2017/06/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順がかつて織っていたらしい「筑波紬」

第三千七百六十七回目の作品としては、奥順がかつて織っていたらしい「筑波紬」を紹介します。

「らしい」というのは、現役で売っているのを見たことは無くて、前回の高梨の「はんぱ市」で偶然見つけたにすぎないからです。奥順というのは結城紬の産地のいちばん有名な織元ですが、かつては以前紹介した「手織ウール紬」や、この木綿と絹の絣など、今はとても採算の合いそうもないものを作っていたんですね。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ってみました。デザインには時代を感じてしまいます。でも今の着物好きな人は、そもそも時代の感覚が無いかも。

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写真2番目は近接してみました。

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写真3番目はラベルです。こんな綺麗なわけがないので、新しいものに貼りかえられているようです。奥順の印があるので、奥順自身によって貼りかえられたんでしょうね。偽造するほど価値があるものではないですし。

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写真4番目は拡大です。経緯の絣です。手織りしたんでしょうね。

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写真5番目は拡大です。
[ 2017/06/05 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせ

第三千七百六十六回目は、花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせです。

今日は付下げを合わせてみました。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「鏡裏文」を合わせてみました。実際に制作したのは市川さんです。着物でも帯でも模様といえば植物文が多いですが、花というのは常に他と競おうとするものだし、控えめな葉にも季節など属性があって、2つ重ねるのに差障りがあることがあります。そんなとき、器物模様というのは便利なので、持っていて良かったということがありますね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは村田さんです。村田さんというのは、北川の高い訪問着などもつくっていたようです。北川といえば最近自己破産しましたが、ネットで安く出るでしょうか。着尺とか持っている人はショックでしょうが、そういう時は買い増すチャンスと思うと良いと思います。

京友禅というのは、現在は千總でも野口でもメーカーと言われるものはじつは全て外注で制作していて、それを受けるのが悉皆屋(染匠などともいう)です。悉皆屋も生産設備を持っているわけではなく、下請けの職人に分業させています。作品の出来を決めるのはメーカーでも職人でもなく、悉皆屋だと思います。実際に作業をする職人ではないの?と思われるかもしれませんが、そこはクラッシクを聴くときに、音を出すオーケストラの各楽員ではなく、音を出さない指揮者で選ぶのと一緒です。メーカーは実際に制作している悉皆屋は教えてくれませんけどね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「有職柳」を合わせてみました。実際に制作したのは市川さんです。私が千切屋治兵衛を通して扱っていた市川さんは和幸さんというのですが、今は息子さんの代でブログで作品を見ることもでき、私も時々見ています。これは息子さんのですが、余白が結構有ってモダンでもありますよね。

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写真4番目は、野口の紗の付下げを合わせてみました。松と島のある海景を描いた模様は、よく見ると製塩のための設備や道具が描かれていて、たいてい古代の製塩風景です。須磨明石、まつほの浦などは歌枕だったり、源氏に登場したりして、風景模様というより文芸模様でもありますね。

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写真5番目は、花也の絽紬の付下げを合わせてみました。松皮菱取りに榧が入っています。帯は色紙取りですが、紋織生地は紬のような糸で絽の組織になっています。
[ 2017/06/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせ

第三千七百六十五回目は、花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせです。

今日は染めの着尺(小紋)を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、広瀬雄望さんの絽の江戸小紋を合わせてみました。水のモチーフが重なりますが、一方は江戸小紋の単色で小さなパターンですから気になりません。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。焦げ茶色地で、縞のように見えますが疋田が1粒ずつ繋がった「疋田繋ぎ」という意匠です。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。柴垣をテーマにしたもので、華やかさのない意匠ですが、帯の意匠に花を迎えるときは良く合う気配りの模様ですね。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。一方付けといわれる小紋で、仕立ての際、指定されたところで裁つと全ての模様が上を向くようになっています。普通は唐子模様とか楼閣模様の用に逆向きになるとおかしい模様に使われますが、なぜか上下どちらででもいい楓に使われています。

型自体は昔に作られたものなのですが、模様の上下の向きが切り替わるところが、見てもわからないぐらいにいつの間にか変わるので、すごい意匠力があったんだなあと思います。

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写真5番目は、野口の紗の小紋を合わせてみました。水を表す渦巻と(写真では見えません)と金魚が洒脱なタッチで描いてあります。実際に着ると、下着の長襦袢によってはモアレが生じ、水の波紋のような模様も浮いて来るのではないでしょうか。
[ 2017/06/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせ

第三千七百六十四回目は、花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の帯合わせです。

名古屋帯ですし、テーマも季節の花で本来さりげないものですから、基本は小紋や紬に合わせる帯だと思います。しかし友禅は重厚ですし、存在感もありますから、フォーマル方向で付下げぐらいは使えるように思います。また、帯の生地が特殊な紋織で、完全な夏物ともいえない夏物らしい感じであるため、夏物としても単衣用としても使えるでしょう。

今日は、紬を合わせてみました。盛夏を意識した夏物と初秋を意識した単衣を合わせています。

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いちばん上の写真は、伊藤峯子さんの花倉織を合わせてみました。呉服屋さんでは各地の織物として紬と混ぜて売っていますが、歴史的には琉球王家の官服ですから本当はフォーマルですよね。帯合わせをするときは、龍村の名古屋帯とか、少しフォーマルな雰囲気の帯を合わせてあげると良いと思います。

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写真2番目は、芭蕉布を合わせてみました。これは喜如嘉の芭蕉布の証紙がないのですが、顕微鏡で見ると確かに芭蕉布という今のところよくわからない着物です。ベージュと水色の配色はとてもきれいです。

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写真3番目は、南雲織物の夏塩沢を合わせてみました。塩沢で織られる織物は、真綿で冬に着る塩沢紬と、お召で単衣として着る本塩沢と、さらにそれを紗に織った盛夏用の夏塩沢とがあります。これはその盛夏用です。

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写真4番目は、林織物の本塩沢を合わせてみました。今回の帯を単衣用として使う例です。

現在は林宗平工房と名乗っている林織物ですが、これは林宗平の息子さんの正機さんの時代のものです。裂取りの意匠で緯絣で多色を入れたものです。白地に一定の間隔で綺麗な色を入れることで、人の目には上品な淡い色に見えるという仕掛けになっています。

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写真5番目は、奥順の結城縮を合わせてみました。今回の帯を単衣用として使う例です。

昭和30年までは結城の産地では縮が主力でした。しかし平織だけが重要無形文化財の指定を受けたため、その後は平織ばかりが織られるようになり、縮みは日陰者扱いでした。近年、国の重要無形文化財が外れ、組合が自由に証紙を貼るようになると縮みも平等に扱われるようになりました。それが文化財が外れたことの唯一のメリットではないでしょうか。

この縮みは奥順の「はたおり娘」のシリーズで重要無形文化財に相当するものではないですが、お洒落な着物として見直されて良かったです。

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写真6番目は、山下八百子さんの黄八丈を合わせてみました。本塩沢や結城縮は単衣専用の着物ですが、これは普通の冬に着る生地です。黄色と水色の配色を試してみました。
[ 2017/06/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の細部

第三千七百六十三回目は、花也の夏の名古屋帯「流水に色紙取り撫子」の細部です。

今回の作品は、個性のある変わり織の生地に友禅染を重ねたものですから、今日は両者の関係をテーマにしてみたいと思います。

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いちばん上の写真は、腹文の片側です。花のある側で、たいていの方はこちらを表に出すでしょう。着物の意匠は、モチーフは同じであっても、それを全体に散らす場合と一か所に集中させる場合があります。集中させる場合はその模様よりもむしろ模様のない部分が重要です。模様が集中する着物は余白の多い着物になるわけで、模様面積を抑制して着ている人間を主役にする着物とも言えるからです。

模様を集中させる装置が取り方で、この帯ではメインのお太鼓が色紙取り、サブの腹文が散らす模様と両方見せてくれています。帯ということで、元々面積が小さいから効果は限定的ですが。

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写真2番目は、腹文の片側です。お太鼓の模様を見ると、生地の紋織は横段で、水平の流水模様と馴染んでいます。しかし帯の構造上、お太鼓で横段だった紋織のパターンは、腹文では縦縞になってしまいます。それで水平であるべき流水との間で辻褄が合わなくなるんですね。これはどうしようもないですね。

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写真3番目は、生地を拡大してみました。紋織部分は2種類ですが、これは一見、沖縄の花織みたいに見えるところです。ちゃんと見ると違いますね。表裏完全に同じです。

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写真4番目は、生地を拡大してみました。3本ずつ束ねて紗のように織っているのがわかります。束どうしの間には隙間が空いているので、やはり紗で夏の生地だとわかります。しかしこうしてみると、絹地というより顕微鏡で見る微生物か、侵略してくるインベーダーのように見えますね。

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写真5番目は、生地を拡大してみました。紋織と友禅の模様が重なる部分です。今回の作品は3本束ねた紗の上には模様が無く、花織のように見える紋織の上には友禅模様が有ります。生地に凹凸があって立体的な紋織の上に友禅の模様を乗せると、絵に陰影が付いているような錯覚が生じることがあります。

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写真6番目は、生地を拡大してみました。紋織の上に箔を置くとどうなるか撮ってみました。案外しっかり被さっていますね。凹凸のために光の反射に差が出て、面白い視覚効果を上げています。
[ 2017/06/01 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)