千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)

第三千七百三十二回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

能の演目である「高砂」をテーマにした作品です。高砂のストーリーはこんな感じです。阿蘇神社の神主が京に上る途中の播磨の国高砂の浦で、松の根元を掃き清める老夫婦に出会います。二人は、この松は高砂の松といい、摂津の国住吉にある住の江の松と合わせて「相生の松」と呼ばれていると語ります。さらにこの二人は高砂と住吉の相生の松の化身であると告げるというものです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。相生の松の化身である2人は省略され、持っている道具だけで象徴的にあらわされています。その道具は色紙取りで表現されていますが、色紙は夫婦なので2枚です。上の青い色紙は2人がいる高砂の浦の景色ですから、下の茶色い色紙は住吉の景色なのでしょう。今2人は高砂に居るので、こちらは留守なのでしょうか。

能のストーリーでは、神主は老夫婦の後を追って舟を出し、高砂の浦から住吉へ向かいます。住吉の岸では住吉明神が姿を現し、真って長寿を寿ぎます。下に有って見えない色紙には、住吉明神が描かれるのかもしれませんね。

色紙の外には2本の松が描かれていて、これが高砂の松と住吉の松だろうと見当が付きますが、能の内容と違うところは化身の姿が老夫婦なのに松が若松であることです。まああんまり細かいこと言わないで、というところでしょうか。

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写真2番目は腹文です。金描きによる霞と松です。意味のあるお太鼓の模様に対し、さらっと流す感じです。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。この作品は色紙の青がすごく綺麗なのですが、近接してみるとそれほど鮮やかな青ではないです。外の茶と中の金に挟まれているという配色の妙で、美しい青に見えているのです。

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写真4番目は、腹文の近接です。

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写真5番目は参考図版です。安藤広重による双福の作品で、数十年前の図録に有ったもので、解説によると広重が晩年に逗留した天童市に伝来したとあります。これが高砂の基本の図像で、省略された元の人物はこんな感じだったんですね。
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[ 2017/05/01 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)