博多の4寸の帯の帯合わせ

第三千七百五十九回目は、博多の4寸の帯の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、ちょっと珍しい茶色の格子の小千谷縮を合わせてみました。帯が模様部分の地が茶色で、紗部分が白というのを生かして、同系色の帯合わせにしてみたのですが、真夏の茶色は大人の資格がある人だけが着こなせる色ですよね。

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写真2番目は、有松絞の浴衣と合わせてみました。有松独特の技法によって染められるものですが、制作したのは藤井絞で、有松の下請けで作っています。これじつは、豆絞りの本当の姿です。現代の豆絞りの手ぬぐいは捺染のドット模様ですが、それでは「絞り」ではありません。しかしながら、1粒ずつ縫い絞りをしていたのでは美術品にはなっても手ぬぐいにはなりません。折りたたんで圧力をかける絞りで、豆のような粒状を模様を作ったんですね。

この浴衣のばあい、豆絞りの技法で作っていると思われますが、粒が長いですね。これをもっと丸くした本物の豆絞りの手ぬぐいも有松ではつくっているらしいです。手ぬぐいとしては高いと思いますが、興味のある方は探してみてください。

ここでは、藍と茶の配色はじつは美しいということを証明するため合わせてみました。

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写真3番目は、雪花絞の浴衣を合わせてみました。雪花絞は本来有松の技法であり、これも藤井絞が有松に発注して作ったものです。これは色合わせではなく、柄合わせです。

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写真4番目は、三勝の浴衣を合わせてみました。三勝ではこんなタイプのデザインの浴衣も作っています。シンプルな縞に正反対の唐草模様です。

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写真5番目は、藤井絞の浴衣を合わせてみました。絞りによるグラフィックデザインのような浴衣です。直線のグラフィックVS曲線の伝統的な唐草模様です。
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[ 2017/05/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

博多の4寸の帯

第三千七百五十八回目の作品として、博多の4寸の帯を紹介します。

先日から浴衣などカジュアルに使う帯として西陣の宮岸織物の麻の「七尾の帯」を紹介していますが、浴衣の帯と言えば、普通は西陣ではなく博多ですよね。今日は主流の浴衣帯として博多の4寸の帯を紹介します。基本の献上や独鈷ではなく、模様が付いたものです。

織っているのは二口という織屋で、幅は4寸ではなく4.3寸と表記されています。今の使いやすいサイズであることをちゃんとアピールしているようです。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。沖縄の絣を模したデザインです。沖縄の絣は絵絣とは言わず模様単位と言ったりします。生活用品や自然現象など人が目にするあらゆるものを抽象的な模様にしていて、その数は数百あるとされています。天才デザイナーが創ったのではなく、人々が数百年使って徐々に数が増え、洗練されていったのだと思います。それを模様の単位として複数合わせて絣や花織の意匠になっているのですが、ここではそれを拝借しているわけです。。

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写真2番目は、模様部分に近接してみました。西陣の帯は、絵緯糸といって模様表現のためだけの緯糸があり、それを使って模様表現をすることが多いですが、この写真を見ると博多の帯では経糸を使って模様表現をしていることが分かります。西陣の帯は模様表現に緯糸を使うからお太鼓柄というのがあるわけですが、博多の帯のばあいは経糸で模様表現をするので、全体につながるのが合理的なんですね。

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写真3番目は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。

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写真4番目は、模様と地の紗の部分を拡大してみました。模様部分が経糸であること共に、紗の部分がよくわかるように撮ってみました。模様部分と紗の部分が半々ぐらいで、模様表現と涼しさを両立しているという帯なのです。

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写真5番目は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。模様の色がグラデーションになって奥深い表現になっています。経糸で模様表現をしているので、このようなグラデーションがつくれるのです。西陣のように絵緯糸であれば模様の途中で糸を換えなくてはならず不合理です。織物の組織とデザインは密接に関係があるわけですね。

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写真6番目は、上の帯の色違いです。

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写真3番目は、紗の部分がよくわかるように近接してみました。紗の部分は経糸の間隔が変えてあり、それも織物の意匠になっています。
[ 2017/05/27 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

七野の麻の名古屋帯(8寸)

第三千七百五十七回目の作品として、七野の麻の名古屋帯(8寸)を紹介します。

昨日紹介した宮岸織物(1393)は8寸の麻の名古屋帯も織っています。縞も織っていますが、今日紹介するのは具象的な模様の帯です。帯合わせもしていますが、ふだん4寸の帯を合わせる浴衣に8寸の帯を合わせると、ややフォーマル方向になります。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は拡大です。地は昨日と同じ平織ですが、模様部分は絵緯糸で表現されています。絵緯糸には細い抑え糸が使われています。表示は「麻100%ただし抑え糸を除く」とありますが、これがその麻でない抑え糸ですね。

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写真3番目は、近江ちぢみと合わせてみました。

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写真4番目は、別の柄を近江ちぢみと合わせてみました。

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写真5番目は、絹紅梅と合わせてみました。絹紅梅あるいは綿紅梅は、細い糸の間に経緯ともに一定間隔で太い糸を混ぜて織った生地で、両者の高低差から生地が肌にぴったりつかず涼しいというものです。生地に高低差があるので「勾配」で、それを江戸っ子らしい駄洒落で「紅梅」といったものです。江戸時代の文というのはかな表記が多く、どちらも「こうはい」ですから、駄洒落が思いつきやすかったのでしょう。

「絹紅梅」というのは、生地の素材と織の組織について言っているだけで、加工については言っていません。つまり加工は自由で、浴衣のようなカジュアルにすることもありますし、縮緬にするような多色の小紋にすることもあります。付下げや訪問着に染めることもできるでしょうね。この例では、藍染で浴衣のようにしています。

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写真6番目は、初山一之助の長板藍染の浴衣と合わせてみました。浴衣の模様がこまかくてごちゃごちゃしているので、帯の模様は余白が多いものにしてみました。
[ 2017/05/26 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

七野の麻の半幅(4寸)の帯

第三千七百五十六回目の作品として、七野の麻の半幅(4寸)の帯を紹介します。

七野の帯というのは、麻の浴衣用のカジュアルな帯ですが、織っているのは宮岸織物という西陣の織屋さんです。証紙番号は1393です。4寸も8寸もあり、無地も縞も柄物(絵緯糸で表現している)もありますが、今日紹介するのは4寸で、博多帯にもありがちな1本独鈷という意匠ですね。

色はいろいろあるようですが、紹介するのは青だけです。浴衣の基本色は紺なので、この帯で同系色濃淡を作ってみます。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。

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写真2番目は拡大です。基本の平織で、拡大するほどのこともないと思いましたが、ついしてしまいました。

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写真3番目は、雪花絞りの浴衣と合わせてみました。藤井絞のものです。雪花絞りは明治時代に有松で考案された折りたたんで圧力をかける絞りです。縫い絞りに比べれば簡単なので量産がきく技法として開発されました。藤井絞は有松に外注して染めています。

有松のブランドで販売される雪花絞との違いは、有松ブランドが木綿であるのに対し、藤井絞は麻が半分入っている生地を使っていることです。それで少し涼しいということでしょうが、私はそれより麻が入っているために生地に光沢があるのが気に入っています。雪花絞のデザインで光沢があると、江戸切子みたいな雰囲気が出て綺麗なのです。

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写真4番目は、初山一之助の藍の長板染の浴衣を合わせてみました。浴衣は時代によって変遷しています。江戸時代以来の浴衣は、1反ずつ型で糊を置いて防染し、藍甕に浸けて染めていました。これがいちばん純粋なホンモノですね。大正時代になると注染が発明され、一度に数十枚染められるようになりました。この技法が発明された時は、安物用の量産技法だったのでしょうが、現在はインクジェットが発明されてしまっため、この注染がホンモノとして尊重されるようになってしまいました。

初山一之助の浴衣は、一番ホンモノの藍の長板染ですが、最近は残念ながらやってないみたいですね。今後ホンモノを買おうと思うと、30万円ぐらいする人間国宝の松原さんと、10万円ぐらいする竺仙しかないのではないでしょうか。

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写真5番目は、三勝の注染の浴衣を合わせてみました。

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写真6番目は、藤井絞の浴衣を合わせてみました。これも折りたたんで圧力をかける絞りで、折りたたんだ痕跡が線になって残っています。本来の絞の模様である丸と相まって、グラフィック的な意匠になっていますが、折りたたんだ痕跡の線は、当初から意図的なものだったかよくわかりません。

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写真7番目は、三勝の浴衣を合わせてみました。帯の色とほとんど同色に見えて面白いので載せてみました。
[ 2017/05/25 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

野口の振袖の帯合わせ

第三千七百五十五回目は、野口の振袖の帯合わせです。

今日は色を基準に考えて帯合わせをしてみました。

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いちばん上の写真は、河合康幸の袋帯を合わせてみました。能衣装写しの唐織の帯です。着物と同系色の紫地であることで選んでみました。振袖のような帯合わせは華やかに盛り上げるもので、同系色ですっきりまとめるというのはしないものです。今回はあえてやってみましたが、けっこう受け入れられるのではないかと思っています。

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写真2番目は、しょうざんの袋帯を合わせてみました。徳田義三の図案によるもので、徳田義三ブランドで売ったシリーズの1本です。「しょうざん」というのは、かつて西陣製の高級ウールである「しょうざんウール」がヒットとし、その後は「しょうざん生紬」というヒット作があります。「生紬」という語は、じつはしょうざんの商標にすぎませんが、一般語である玉紬より知られています。それだけ「しょうざん生紬」がヒットしたということです。

しょうざんは、レジャーランドや結婚式場を始め、呉服業界から不動産業などのビジネスに軸足を移していきました。また帯の分野においては中国生産の先駆者の1人でもあり、なんとなく一生懸命ものつくりをする人というよりは、ビジネス上手のイメージがあります。しかしこの徳田義三シリーズはデザインだけでなく素材も技法も凝っていて大まじめに作ったものです。

今回は紫色地ということで選んでいます。

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写真3番目は、じゅらくの「帝王紫」シリーズの極初期の1本を合わせてみました。まだ吉岡常雄さんが存命中で本人のデザインによる作品です。これ自体は手織りのとても凝ったものですが、今の「帝王紫」の現状はネットで検索するとわかります。

「じゅらく」と「しょうざん」は、ブランドとしては似たイメージがあります。しょうざんにおける徳田義三は、じゅらくにおける山鹿清華と吉岡常雄ではないでしょうか。どちらも人気作家を取り込んだブランド戦略だったと思います。かつての日本車におけるジウジアーロデザインみたいなものでしょう。ジウジアーロを看板にするのは今は中国車や韓国車がやっていますよね。

貝紫を使ったというのが売りですから、紫がとても美しい作品です。同系色チャレンジで選んでみました。

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写真4番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。鳴子をテーマにしたもので、「帯屋捨松」のロゴが無い手織りバージョンです。今日手織りバージョンはすべて中国製のようですが、これは昔のもので日本製です。紫を効き色として使っていて、その印象が強いので選んでみました。

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写真5番目は、洛風林の袋帯を合わせてみました。実際に織っているのは帯屋捨松で、当時は洛風林同人だったんですね。洛風林同人のリストにも木村さんの名前がありました。亀甲が並ぶ単純な意匠ですが配色がすごく上手く、さすが洛風林ですね。紫はないですが、模様の色には良く反応しています。

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写真6番目は、服部の「こはく錦」シリーズの当時の最高級クラスの1本「24kオリエント錦」を合わせてみました。この振袖はしぼの大きい縮緬地を使っていて、深い発色が特長ですが、その反対の金属的な輝きを持つ24kの引き箔の帯との取り合わせにしてみました。

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写真7番目は、紫紘の袋帯を合わせてみました。地の経糸が朱色の絹糸なのに対し、全体に絵緯糸として金糸が織り込んであります。そのために全体が朱色に光っているんですね。これは振袖専用か、20代向きの帯だったのでしょう。現代の感覚だと紫ならピンクを合わせたくなるものですが、朱色を合わせるとアンティークっぽい雰囲気になります。目が慣れてくると、これじゃないと着物じゃない、と思えてくるぐらい良いんですよね。
[ 2017/05/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の振袖の帯合わせ

第三千七百五十四回目は、野口の振袖の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「東大寺花文」を合わせてみました。主文と副文から成る上代の唐華文の基本パターンに取材したものです。ただ副文にクローズアップにしているところに個性があります。大きくて単純な文様が繰り返す、という美しさもありますね。

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写真2番目は、織悦の袋帯「桐桜大紋桃山」を合わせてみました。近世初期の刺繍小袖の文様に取材したものです。帯の幅からはみ出しそうな大きな意匠で、これが歴史ドラマでいうと、信長・秀吉・家康が出る桃山小袖のイメージですね。

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写真3番目は、織悦の袋帯「流水紅葉」を合わせてみました。「龍田川」とも呼ばれる意匠です。大きくて単純な模様の繰り返しで、小細工しなくても美しいものは作れるんじゃないかという気がしてくる帯ですね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「印度華文更紗」を合わせてみました。帯の地色は「桜色」と表示されています。優しすぎるピンクで意外な色合わせですが、濃い紫にこんな色をあわせるもありかと思います。

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写真5番目は、龍村の袋帯「招福三友錦」を合わせてみました。模様が大きく縁起の良いモチーフの組み合わせなので、振袖に使いやすいですが、色が淡く上品なので訪問着用としても併用できそうです。そういうのは経済的ですね。

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写真6番目は、龍村の袋帯「瑞鳥遊園錦」を合わせてみました。チュニジアに多く残るローマ時代のモザイクの床や壁のモザイクに取材したものです。チュニジアに多く残るのは、カルタゴ占領後にローマの軍団が集団で入植して計画的に都市を作ったからです。銀色地に赤と緑と黄色と葡萄の紫で模様を織り出していて、あらゆる着物に合わないような帯ですが、ひょっとするとこういうのが芸術というのかなあという気にさせる帯です。

龍村は現在のこの帯を織り継いでいるのですが、今は色がもっと着物に合いそうなものに変わっています。やはり一作目は、純粋な芸術だったんでしょうか。
[ 2017/05/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の振袖の続き

第三千七百五十三回目は、野口の振袖の続きです。

今日は袖の写真を撮ってみました。2つの袖の内外で、写真は4通りです。また個別の模様に2か所近接してみました。

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いちばん上の写真は袖です。振袖で長いので、全部は撮れていません。

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写真2番目も袖の一部です。

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写真3番目も袖の一部です。

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写真4番目も袖の一部です。

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写真5番目は個別の模様の近接です。

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写真6番目は個別の模様の近接です。

野口の振袖

第三千七百五十二回目の作品として、野口の振袖を紹介します。

今年の野口の振袖は、黒地の花の丸、青緑地の楽器、、と紹介してきましたが、今日は3枚目の紫地の宝尽くしです。楽器は器物模様でしたが、今回の宝尽くしは器物模様というよりも、宝尽くしが模様の容器の役目を果たし、中に友禅の意匠にありがちな植物文や割り付け文が入っているという取り方模様でもあります。

前の2枚の振袖の意匠は、花の丸でも楽器でも、独立したモチーフがならべてあるパターンでした。このようなパターンではモチーフが1つで完結しているので、レゴのように組み立ててデザインします。その一方、着物全体が1つの絵としてつながっている意匠もあり、これは最初から全体としてデザインしなければなりません。自分でデザインを考える時は、レゴタイプはけっこう簡単なのです。並べ替えて何種類もできますしね。

今回の振袖はどうでしょうか。モチーフだけ見るとレゴパターンです。ところがどのモチーフにも紐が付いていて、それが隣のもーふに絡まって、あたかも1つの意味のある絵のような有機的なつながりを持っているのです。組み換え可能なレゴでありながら、立派な構造物に見せるデザインのテクニックですね。

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いちばん上の写真は全体です。紐のおかげで全体で1つの絵に見えませんか。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は脇縫い辺りです。

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写真4番目は後姿です。

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写真5番目は下前です。

龍村のミニボストン

第三千七百五十一回目の作品として、龍村のミニボストンを紹介します。

28cm×15cm×14cmのボストン型バッグです。

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いちばん上の写真は、「円文白虎朱雀錦」を使ったミニボストンです。バッグに使っている部分は白虎だけで朱雀は見えません。

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写真2番目は、角度を変えて撮ってみました。

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写真3番目は、モデルさんに持ってもらいました。

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写真4番目は、「天平狩猟文錦」を使ったミニボストンです。龍村裂の狩猟文には法隆寺の「獅子狩文錦」とこの正倉院の「天平狩猟文錦」の2種類があります。本歌はどちらも連珠文の中には4組の騎兵が織り出されていますが、「獅子狩文錦」は1組に省略されています。

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写真5番目は、角度を変えて撮ってみました。辛子色で本来派手な色ですが、裂部分も単色ですし、上の赤バージョンのあるおかげで大人しく見えます。

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写真6番目は、モデルさんに持ってもらいました。ポプちゃんは今回自然にバッグが持てなかったのでお休みです。
[ 2017/05/20 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせ

第三千七百五十回目は、橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせです。

今日は写真の使い残しで、小紋や紬を合わせてみます。金糸も使った袋帯ですから紬は難しいでしょうか。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。帯は段文で、水平方向のしっかりした構造を持った意匠です。着物は長方形を並べた意匠で、やはりしっかりした構造を持っているので、安定感を感じる帯合わせになりますね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。段文の帯に対し、縦縞の着物の組み合わせです。タテとヨコで合わせて十字ですが、こういう組み合わせは良いのか悪いのか、まあいいのかなあというところですかねえ。

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写真3番目は、野口の絽の小紋を合わせてみました。段文の帯に対し、縦長の短冊模様の着物を合わせてみました。今回の3種類の帯合わせは、曲線や斜線を避けてタテヨコだけで構成してみました。

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写真4番目は、花倉織の着尺を合わせてみました。織物の着尺の帯合わせですが、カジュアルに分類される地方の紬は、金銀糸使いの西陣の袋帯に合うかというテーマです。とりあえず、首里の花倉織を合わせてみましたが、首里織は琉球王家の官服で、地方の紬ではありませんから、理屈ではフォーマルでいいはずですね。

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写真5番目は、芭蕉布の着尺を合わせてみました。芭蕉布もまた琉球王家の方が着られていたのでOKと言えるかどうか、ちょっと苦しい言い訳でしょうか。でもベージュの織物は、色が合って、なんとなく自然に見えますね。
[ 2017/05/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせ

第三千七百四十九回目は、橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせです。

今日は染の着尺(小紋)と合わせてみます。

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いちばん上の写真は、広瀬雄望さんの絽の江戸小紋を合わせてみました。波に千鳥の模様です。江戸小紋というのは汎用性が高く、使い勝手の良い着物です。帯も使い勝手が良いですから、便利どうしの組み合わせです。夏物として一式そろえておき、何を着て良いかわからないときに着たら良いのではないでしょうか。

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写真2番目は、単彩の飛び柄の芒の小紋を合わせてみました。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の一方付け小紋を合わせてみました。指定された箇所で裁つと模様が一定方向を向くようになっています。

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写真4番目は、野口の絽の小紋を合わせてみました。夏物というのは涼し気な模様を付けるものですが、これは江戸時代の小袖の模様を付けています。元が小袖なので、普通の小紋よりフォーマル感が有ります。

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写真5番目は、野口の紋紗の小紋を合わせてみました。紋紗で市松模様になっていて、一部が手挿しで加工してあります。
[ 2017/05/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせ

第三千七百四十八回目は、橋本テルの紗の袋帯「芳玉」の帯合わせです。

金銀糸を織り込んだ袋帯ですからフォーマル用になります。今回は付下げと染の着尺(小紋)と合わせてみます。紬については、無理かもしれませんが、反面教師的な意味で合わせてみるかもしれません。まず今日は付下げからです。

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いちばん上の写真は、花也の絽の付下げ「松皮菱取りに羊歯文」を合わせてみました。無彩色の地色に糊糸目の乳白色、一部に金彩と金糸の刺繍から成っており、この帯はピッタリですね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「衽付萩」を合わせてみました。実際に制作したのは市川さんです。「衽付」というのは、模様のメインがマエミではなくオクミに偏っているという意味です。自然と模様は縦長で、すらっとして人がすらっと着る着物になっています。

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写真3番目は、野口の紗の付下げ「青楓」を合わせてみました。紅い楓は秋、緑の楓は春のモチーフです。緑の楓は「青楓」で、源氏物語だと「胡蝶」の前半でちらっとその言葉が出てきます。そのために青楓の図案が源氏物語に関係があることもあります。この作品では赤い楓はないですが、半分ぐらい黄色い楓が少しあったりします。そのおかげで夏の期間を前半も後半も乗り切る着物になっています。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「鏡裏文」を合わせてみました。実際に制作したのは市川さんです。近世以前の鏡は、今のようにくっきり顔は写りません。そのかわり裏面は美術的な装飾がなされていて、顔を写すという機能だけでなく美術品と考えられて嫁入り道具などに含まれていました。私は子供のころ、歴史の図鑑で三角縁神獣鏡など見たときに、どこが鏡なんだろうと思ったものですが、博物館では裏側を飾っていたんですね。鏡の裏の装飾は、そのまま着物の模様にも使われています。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「棒霞」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。霞を単純な横線で表した図案で「棒霞」とか「線霞」とか言われます。つまらない図案と言ったらそれまでですが、それでも作品がつまらなくないのは、配色が上手であること、手描きの自然な揺らぎがあること、そして糊糸目の軟らかい輪郭をもっているからでしょう。

またこの作品は糊糸目友禅ですが、白い糸目の線は隠してあります。霞というのは空気の流れや湿度によって生じるもので、ぼやっとしています。それに対し白い輪郭線が有っては雰囲気が出ないということで、わざわざ隠しているのです。


[ 2017/05/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

橋本テルの紗の袋帯「芳玉」

第三千七百四十七回目の作品として、橋本テルの紗の袋帯「芳玉」を紹介します。

夏の着物を着る時期は、7月と8月の2か月だけですが、具象画である植物文様を選ぶと、前半の百合や鷺草と後半の撫子や萩とで植物の種類が変わり、2通り揃えないといけないことになりかねず、とても割が悪いです。対処法としては、1つは迷ったら後半に合わせること、もう1つは夏を通して着られる波や千鳥を買うことです。

今日紹介する西陣の証紙番号602の橋本テルの紗の袋帯は、さらに合理的で、段文に「芳玉」と名付けられた丸い模様が並んでいるだけですから、いつでも大丈夫です。しかも地色は白で、模様は金糸と銀糸だけですから、着物がどんな色でも対応できます。とりあえず夏の帯を1本買わなくちゃ、という人にちょうど良い帯ですが、けっこうお洒落で馬鹿になりません。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。白い地に、平金糸が織り込まれた金の段と平銀糸が織り込まれた銀の段があります。金の段には撚金糸で丸い模様が織り込まれています。銀の段には撚銀糸で丸い模様が織り込まれています。

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写真2番目は近接です。丸い模様には立体的なものとそうでもないものがあり、変化を生んでいます。単調な繰り返しになるのを避ける工夫です。

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写真3番目はもっと近接です。

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写真4番目は金の段のいちばん立体的に見える丸い模様の拡大です。地の平金糸に対し模様は撚金糸であるため、立体的に見えるのです。撚金糸は金糸ですが、写真に撮ると銀に見えます。もともと平金糸に比べ白っぽい金色ではあるのですが。

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写真5番目は銀の段の拡大です。丸い模様は撚銀糸かと思いましたが違いました。じつは白い絹糸でその両縁が細い撚金糸でサポートされていたんですね。立体感を感じないのはこのような形状になっているからでした。糸を操ることでいろんな視覚効果を生むのは西陣の基本技のようです。

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写真6番目は、品質表示ラベルです。日本製なんですね、立派なことです。
[ 2017/05/16 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村のパーティー用のバッグ

第三千七百四十六回目の作品として、龍村のパーティー用のバッグを紹介します。

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いちばん上の写真は、シェル型のパーティーバッグです。使われている裂は「葡萄唐草文錦」です。葡萄唐草文は、ギリシアから奈良までユーラシア大陸に広く伝搬した古代の文様です。正倉院にも多くあります。シェル型バッグは以前にも紹介しましたが、こちらは留金が装飾的です。

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写真2番目は、チャツポンが使い勝手を試してくれています。

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写真3番目は、モデルさんに持ってもらいました。

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写真4番目は、ビーズが付いたパーティーバッグです。使われている裂は「咸陽宮鱗文」です。

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写真5番目は、チャツポンが使い勝手を試してくれています。

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写真6番目は、モデルさんに持ってもらいました。
[ 2017/05/15 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村のパーティー用のバッグ

第三千七百四十五回目の作品として、龍村のパーティー用のバッグを紹介します。

大きさは18cm×14cm×5cmで、フォーマル用のパーティーバッグです。

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いちばん上の写真は、「咸陽宮鱗文」の裂を使ったパーティーバッグです。咸陽宮というのは秦の始皇帝の宮殿です。そんな紀元前の裂が残っているはずがないと思われるでしょうが、細川家由来の品を保管する永青文庫が所蔵している元時代の絵画の表装に使われている裂で、その絵画は咸陽宮の情景を題材にしているということなのです。

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写真2番目は、色違いです。

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写真3番目は、底のフレームがある部分を中心に近接で撮ってみました。今回のバッグは金属のフレームが付いていて、型崩れしなくていいですが、ちょっと重いです。

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写真4番目は、チャツポンが使い勝手を確かめてくれています。フレームがついているおかげで、マチが有って中は結構広いです。

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写真5番目は、実際の使用状況をモデルさんを使って再現してみました。
[ 2017/05/14 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせ

第三千七百四十四回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせです。

今日は使い残し画像です。今回の付下げの帯合わせは試行錯誤的な状況で、結果的に50通り以上してしまいました。あまりにも画像の使い残しが多いので、そのうち多少マシなものを見てください。

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いちばん上の写真は、紫紘の袋帯「ウィリアムモリスシリーズ」の1本を合わせてみました。モリスも曲線模様で、ブルボン朝時代にマルセイユに上陸した更紗の延長上にあるように見えます。その葉の1枚を大きくした図案ですが、更紗の一部を拡大したように見えます。

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写真2番目は、じゅらくの袋帯「帝王紫」シリーズの1本を合わせてみました。吉岡常雄が再現した貝紫をテーマにしたシリーズの極初期のものです。このシリーズは現在まで続いていますが、本人が存命中の極初期はこんな感じだったんです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「秋草柴垣文」を合わせてみました。意味的には全くつながらない関係ですが、なんとなく色が合うので選んでみました。織悦の色が持つ透明感のおかげですね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文」を合わせてみました。鳥を合わせて花鳥を作ってみました。

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写真5番目は、龍村名古屋帯「双鳥花文」を合わせてみました。鳥を合わせて花鳥を作ってみました。曲線模様どうしです。

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写真6番目は、龍村名古屋帯「瑞典星陵文」を合わせてみました。曲線模様と直線模様、そして両方エキゾチックという組み合わせです。
[ 2017/05/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせ

第三千七百四十三回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせです。

今日は染め帯を使って帯合わせをしてみます。染め帯はたいてい友禅ですから絵画性が高いのが特徴になります。着物もたいてい友禅で絵画性が高いですから、絵画と絵画が重複してしつこくなります。人間でも芸術でもしつこいというのは野暮につながりますから要注意です。

通常、友禅の染め帯を合わせることができる付下げは、模様が少ないあっさりした作品、たとえば刺繍や箔主体のものです。今回の付下げは鬼門の友禅ですから結果はどうでしょうか。

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いちばん上の写真は、大羊居の名古屋帯「楽園」を合わせてみました。更紗に更紗を合わせるのは禁忌ですが、模様にすぎない更紗を飛び越えるエキゾチック性を持つ象を合わせてみました。毒を猛毒で制する感じです。地色が青で同系色濃淡の関係を作れるので、かなりいい感じだと思っています。

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写真2番目は、大羊居の名古屋帯「更紗の苑」を合わせてみました。更紗というのは模様のパターンですが、その一部を抜き出して単体の模様にすると、訪問着や帯のお太鼓にふさわしい絵画的な意匠になります。この帯合わせでは、着物の更紗の模様が子分たちで、帯の模様がラスボス(ゲームの最終画面に出るボスキャラ)に見えますね。

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写真3番目は、大羊居の名古屋帯「舞踏会」を合わせてみました。大彦の訪問着で「舞踏会」と題して複数のシャンデリアを描いたものがあります。これはそのダイジェストのように見えます。シャンデリアと更紗は、西欧とインドで産地は違いますが、ともにエキゾチックという共通点があります。この程度の共通性と相違性が、帯と着物の関係でちょうど良い距離ではないでしょうか。

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写真4番目は、北秀の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。大彦や大羊居の本家筋にあたる工房です。着物の更紗に帯で鸚哥を合わせて、エキゾチックな花鳥を作ってみました。模様の重複と言ったらもうそのものですが、着物は単彩、帯は多彩であることが救いです。

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写真5番目は、北秀の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは東京の箔と刺繍の工房でした。着物の友禅に対し、帯は箔と刺繍に逃げていて、これが染物同士の帯合わせの基本ですね。着物の青に対し帯は金ですが、青と金の組み合わせはトルコ石に金の台座を付ける配色で見慣れているものですね。
[ 2017/05/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせ

第三千七百四十二回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせです。

今日は単衣に仕立てたと想定して帯合わせをしてみます。今回の付下げは、青系濃淡の単彩でとても涼しげに見えるので、単衣用の着物としても使えます。単衣の着物に合わせる帯は単衣の帯ということならわかりやすいですが、そういうものでもありません。構造上、綴の帯は単衣状態になっていますが、初夏と初秋に締めるために単衣になっているわけではありません。

西陣の袋帯では、少し昔、大西勇(88)が構造上も使い道も単衣の帯を作ったことがあり、それは作品的にも素晴らしいものでしたが、高価でしたし継続的に織っているわけでもありません(ネット上で古着として見たら買うべきだと思いますけどね)。4寸の博多の帯には裏地のあるものと裏地のない単衣とが有りますが、この単衣はほぼ浴衣専用です。

というわけで、通常単衣の着物に合わせる帯は、普通の帯のうち薄手で涼しげに見えるものか、夏の絽や紗の帯のうち比較的厚手で盛夏に使うにはためらわれるようなもの、ということになります。着る人の感性に任せられる部分が多いということですが、そういうとかえって難しいですよね。

常に通用するルールはありませんが、多少のヒントはあります。たとえば普通の帯については、唐織は糸が浮いているために厚手に見えがちですよね。絽の帯については龍村は厚手で盛夏には暑そうですよね。綴は3シーズン使えますが、単衣時期に使うと特にかっこいいと言われますよね。

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いちばん上の写真は、紫絋の袋帯「菖蒲」を合わせてみました。今日も明日も東京は最高気温29度ということで、袷を着るのは辛そうです。人間の体の要求にしたがえばゴールデンウィークからは単衣ではないでしょうか。菖蒲や藤や紫陽花の着物や帯をこの時期に身に付けるのは最高に気持ちが良いと思います。季節限定過ぎて買うときは躊躇してしまいますけどね。

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写真2番目は、洛風林の袋帯「印度七宝」を合わせてみました。色が爽やかで涼し気という理由だけで選んでいます。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。これも色が爽やかで涼し気という理由だけで選んでいます。

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写真4番目は、龍村の絽の名古屋帯「かすみびし」を合わせてみました。ここから下の3枚は夏帯を合わせる例です。配色の良さで選んでいますが、写真で見ても龍村の絽はしっかりしていて、本来の時期である夏でなくても大丈夫と思います。

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写真5番目は、今河織物(証紙番号101)の紗の袋帯「若人の詩」を合わせてみました。タイトルから想像できる通り若松です。盛夏の帯に、お正月っぽい若松ってどう?とも思うのですが、芒みたいにも見えます。なんとなく見過ごすことができる模様ということでしょうか。私は夏帯ということで、芒だと思いこんで仕入れてきたんですよ。

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写真6番目は、龍村の絽の袋帯「古伊万里扇」を合わせてみました。鍋島の皿をテーマにした帯で、皿の縁の模様を重ねた意匠です。更紗の模様と器物文様である鍋島の皿とは全く関係がないように思いますが、よく見ると、どちらも弧のような取り方の中に藍色の植物文を含む模様が入っていて、パターンがよく似ています。意外にも重複していたんですね。

龍村の袋帯は絽ですが、相当厚手で盛夏は気がひけます。なぜ龍村の帯が厚手かと言えば、重厚な表現をしたいために糸が多くなって隙間率が少なくなるからでしょう。模様は重複しつつも、染の軽快感と織の重厚感の差のおかげで、意外に違和感がない気がします。
[ 2017/05/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせ

第三千七百四十一回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせです。

昨日は迷宮感覚を緩和すべくすっきりした意匠や直線模様を合わせてみました。今日は逆にもっと迷宮の奥に沈み込むような帯合わせをしてみます。そのためには更紗の帯を合わせてしまえば簡単だとも思いますが、更紗の着物の欠点は更紗の帯が使えないことですね。同じ模様を重ねるのもまた迷宮的かと思いますが、しつこいのは野暮につながり、迷宮はお洒落な文学のテーマであって野暮ではないはずです。

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いちばん上の写真は、大西勇の袋帯「正倉院象文」を合わせてみました。商標登録への配慮かズレたタイトルが付いていますが、正倉院御物の銀平脱の合子を図案化したものです。ホンモノと同じく象と鸚哥2種類あります。迷宮の真ん中にはミノタウロスがいるべきですが、牛の帯はなかなか無いので象に来てもらいました。

更紗の着物に合わせる帯は、エキゾチズムの匂いで更紗を飛び越えて、更紗の国の動物である象や鸚哥、更紗の国の風物である南国の人の生活や建物を選んだ方が良い場合があります。更紗の世界にさらにどっぷりつかりつつ、模様自体は重ならない帯合わせです。

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写真2番目は、紋屋井関の袋帯「御寮織」シリーズの1本「象唐草文」を合わせてみました。これも商標登録への配慮かズレたタイトルが付いていますが、上とおなじ正倉院御物の銀平脱の合子を図案化したものです。ホンモノと同じく象と鸚哥2種類ありますが、モチーフの使い方は図案家によって全然違うものですね。

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写真3番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。正倉院御物の臈纈屏風に取材したものです。古代の蝋染めは蜜蝋により防染したものでした。聖武天皇は蜂蜜も食べたそうですが、その後の日本人は蜂蜜は食べなかったので、大正時代まで日本に蝋染めはありません。この作品は、本歌の古代の蝋染の素朴な絵を再現するデザインになっています。

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写真4番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。本歌は、周囲の植物文の形からおそらくコプト裂だと思います。動物も植物も輪郭がカクカクしたデザインですが、元絵が古代の素朴な綴であった名残です。

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写真5番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。迷宮にありがちなモチーフということで選んでみました。

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写真6番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟文」を合わせてみました。更紗は、厳密な意味の更紗に限らず、唐草文やペルシア文様も同じに見えてしまいます。これは更紗に更紗を重ねる愚に近いですが、意外に違和感はない?i、
[ 2017/05/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせ

第三千七百四十回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の帯合わせです。

迷宮感覚の着物に対し合わせる帯ということですが、複雑な曲線模様を選んでいっしょに迷宮に入ってしまうか、迷宮から脱出すべくシンプルな直線模様を選ぶかでしょう。今回はシンプルな模様を選んで迷宮感覚を緩和しようと思います。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯を合わせてみました。織悦の袋帯としていちばんベースになる段文です。段文の中の金糸の模様は、「モール」や「シャム印金」など種類があります。段文は直線模様ということで選んでみました。

帯の色は多色で着物とは違いますが、おそらく明度や彩度が着物の地色が近いからか、色が馴染んでいる印象があります。

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写真2番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。直線模様の代表として間道を選んでみました。色は紺とベージュで、着物の地色と同系に見えるようにしてみましたが、この配色は意外と綺麗です。鉄道マニアは「スカ色」って言いますよね、横須賀線の色という意味です。

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写真3番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。地色は水色で着物と同系色を狙っています。着物が他色を排し青系に徹しているのですから、帯でその努力を無にしたら申し訳ないですものね。模様は斜線でシンプルですが、よく見ると直線ではなく、大きく弧を描いているように見えます。

それが模様の雰囲気の優しさにもつながっていますし、着物の濃厚な更紗に対し、シンプルで反対ながら、大きな弧のおかげで少し寄り添うことになっています。類似要素と対照要素の両方を含むと深く合うものですね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「彩籠目文」を合わせてみました。単一のパターンの直線模様ということで選んでみました。

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写真5番目は、織悦の袋帯「若松彩文」を合わせてみました。若杉という日本で縁起の良い文様とインド発の更紗には何の関係もないですが、地色が同系濃淡で模様がシンプルなためか、合わせてみると意外に合います。

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写真6番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。周りに余白が有って、1つの大きなモチーフがポンとついているような意匠は合いそうな気がします。迷宮感覚は、見る時にどこに焦点を合わせて良いかわからないからそのような感覚が生じるのではないか、と考えて、焦点がピッタリ合う帯を選んでみました。
[ 2017/05/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の細部

第三千七百三十九回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の細部です。

今日は迷宮感覚を味わっていただくように細部を近接で撮ってみました。

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いちばん上の写真は細部の近接です。更紗模様の背景に斑点の模様が有りますが、これが単なる更紗を越えた濃厚な感覚を生んでいるのだと思います。技法としてはダンマル描きで、蝋染特有の半防染という特質を生かしているために、くっきりした友禅と共存できているとともに、遠近関係が成り立ち絵に奥行きが生じているのです。

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写真2番目は細部の近接です。一部の花や葉の輪郭は、友禅の白い糸目ではなく青い輪郭線になっています。これは仕上げ段階で糸目の上から筆で描かれたもので、技法で言えば辻がなどにつかわれる「描き絵」です。

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写真3番目は細部の近接で、斜めから撮ってみました。一部の輪郭線は銀彩になっています。普通の友禅であれば金彩にするところですが、青系に合わせるため銀彩になっています。そのため涼し気な感じも生じ、単衣で着られそうです。

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写真4番目は細部の近接です。着物雑誌の写真のように生地にしわを寄せて撮ってみました。

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写真5番目は細部の近接です。マエミ辺りで、花弁に銀糸のあしらいがあります。

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写真6番目はほぼ同じ場所の比較です。比較のために多色作品のほぼ同じ場所の写真を掲載してみました。こちらは熱帯雨林に紛れ込んだような雰囲気です。

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写真7番目は細部の近接です。

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写真8番目は同じ場所の比較です。チラッと見ただけでは、同じ図案だということは気が付かないのではないでしょうか。
[ 2017/05/08 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」の続き

第三千七百三十八回目は、花也の付下げ「道長取り更紗模様」の続きです。

昨日は帯より下の模様の繋がりを追求してみましたが、今日は袖や胸など胸より上の模様を撮ってみました。反物状態の付下げの柄合わせができなくては呉服屋さん失格ですが、じつは今回ちょっと迷いました。普通の付下げ(実質は訪問着)の模様は起承転結あるいはメリハリがあるものですが、この付下げのばあいどこも雰囲気が同じで、写真を撮っても後で見るとそれがどこの写真だかわからないんですね。富士の樹海で迷ったような気分でした。

この作品を見た時の眩暈がするような迷路感覚は、単に模様が混みあっているというだけでなく、迷宮のような世界を形成しているからだとわかりました。文学でもデザインでも迷宮好きという人はいるもので、今日は各部、明日は細部を紹介しますが、ボルヘスでも読むような気持ちで見ていただければありがたいです。

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いちばん上の写真は袖です。

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写真2番目は衿です。

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写真3番目は胸で、上の衿の写真から繋がります。

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写真4番目は、もう片方の袖です。

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写真5番目は参考図版です。すでに販売済ですが、今回の作品の元になった多色の作品です。後姿部分ですが、多色にありがちなケバい感じはなく、あくまで上品です。迷宮度は増していますね。
[ 2017/05/07 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「道長取り更紗模様」

第三千七百三十七回目の作品として、花也の付下げ「道長取り更紗模様」を紹介します。

濃厚な更紗模様を道長取りしたものです。以前、多色の作品として紹介したことがありますが、今回は青系の単色としてつくられました。

なぜ更紗が濃厚に見えるのか、それは友禅、ダンマル、銀彩、描き絵、刺繍と京友禅にある技法が思いつくものはほとんど使ってあるからです。手間のかかるものなので、このような様式の作品を制作していた悉皆屋さんは一社だけでしたが、廃業することになりこれが最後の作品になりそうです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。道長取りは、帯より下では2段になっています。模様面積はかなり広いです。

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写真2番目は、上の写真の続きで脇縫辺りです。

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写真3番目は、上の写真の続きで背中心辺りです。背中心を越えた辺りで、下の段は裾に到着して終わります。

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写真4番目は、上の写真の続きで下前になります。下前に至って上の段の模様も裾に到着し、模様が終わります。
[ 2017/05/06 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千七百三十六回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は染めの着尺(小紋)と合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の小紋を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。源氏香を模様にした型染の小紋です。テーマも上品で季節もなく使い勝手の良い小紋だと思います。

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写真2番目は、花也の手描きの小紋を合わせてみました。小紋には、色数だけ型を必要とする型染(シルクスクリーンもあり)、手挿し(輪郭だけ型)、手描きがあります。後者になるほど手間がかかって高級ということになるのですが、前者ほど初期費用が高く枚数が売れない場合のリスクが大きいとも言えます。

型で染めるものよりも手で染めているものの方が、色が深くて発色が美しいですが、より美しいものを求めるという理由だけでなく、何枚売れるかという予測で技法を選ぶこともあります。最近は、1つの模様がたくさん売れるということはないので、少しの枚数でも採算がとれる手挿しが増えているように思います。

花也さんは手描きの京友禅のメーカーですから、自社の通常の下職を使って小紋を作ると手描きになります。

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写真3番目は、野口の小紋を合わせてみました。短冊模様の小紋で、短冊の中の模様は金描きです。短冊模様自体は珍しいものではありませんが、野口らしいモダンな配色になっています。野口の色はモダンですが、京友禅の色の延長でもあって雅ですよね。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の手描きの小紋を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。単彩でシンプルながら動きのあるデザインの乱菊です。

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写真5番目は、一の橋で仕入れた小紋を合わせてみました。一の橋の型染というのは無いので、誰が作ったかは知りませんが、一の橋が取り扱ったものです。短冊模様ですが、短冊がすごく大きく訪問着のようにも見えるという意匠です。

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写真6番目は、藤井絞の小紋を合わせてみました。楓模様の総柄の絞の着尺です。よく見ると楓を絞っているのではなく、楓の間のある空間を絞っていることが分かります。その空間の形を見ると、全てが不規則な多角形です。1つ1つの空間について、その都度違う絞り方をしている、すなわち辻が花の技術で全部の面積を絞っているわけで、模様の位置が決まっている訪問着よりも労作です。
[ 2017/05/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千七百三十五回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は付下げと合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の付下げ「八重葎」を合わせてみました。八重葎は手入れをしない庭の門などにまとわりつくイメージで、着物の模様に向かない気もします。しかし、源氏物語の「帚木」の前半「雨の夜の品定め」の中に登場します。地色が少し青みのある濃色なので、帯の青と関連付けてみました。

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写真2番目は、花也の付下げ「横棒」を合わせてみました。一見すると笛に見えるのですが、よく見るとただの横棒です。見る人の9割ぐらいは笛と勘違いするでしょうね。笛と思いたい人は笛と思わせておけばいいし、万が一、笛が都合が悪い場が有ればそうでないと言えば良いわけですから、本当の笛より便利な模様かもしれません。地色は濃紫ですが少し青みがあり、それがこれを選んだ理由です。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げ「雪輪にぼかし波」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。箔ぼかしを多用した作品で、その効果で幽玄な雰囲気があります。波の形は、水に関するいろんな文様が揃っています。「高砂」は海辺の話ですし、海に漕ぎ出すシーンもありますから意味的にもつながりそうです。やや青みのあるチャコールグレーの地色です。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の付下げ「酒器」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。収穫をテーマにした作品で稲穂と萩が描かれています。酒器は人間が飲むものでなく、神さまに捧げるものでしょう。地色は年輩者でも着られるほどの、ピンクに見えないぐらい淡いピンクですが、帯の地味な茶との組み合わせがすごく良いです。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の付下げ「松」を合わせてみました。糊糸目による白揚げ、線描きによる作品で、松だけを描いています。帯の松が、高砂のテーマ通りなら枝のくねった老松であるところが、実際にあっさりと若松が描かれているので、着物でその違いを修正すべく立派な松の木を選んでみました。

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写真6番目は、花也の付下げ「松に波」を合わせてみました。白揚げの作品で、波と砂と松と多少の四季花が描かれています。「高砂」は相生から住吉の海辺の話ですから、海の景色で。
[ 2017/05/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千七百三十四回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

「高砂」というのは能の演目というよりも、結婚式の時におじいさんが歌うイメージで、そのために結婚式専用のように誤解されてしまいます。さすがに最近の結婚式ではそういうことはないですが、時代劇の結婚式のシーンでは必ず、合図のように背景に「高砂やあ~この浦船に帆を上げてえ~」と流れていますね。今日は紬と合わせてみることで、結婚式専用でないことを示してみました。

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いちばん上の写真は、小岩井工房の上田紬を合わせてみました。手織り・草木染の紬ですが、配色や雰囲気に都会的なところが有るのが特長だと思います。池内淳子さんなど女優さんたち御用達としても知られていて、商品は問屋や小売屋を通さず直接個人に販売しています。信州旅行を兼ねて購入する方が多いのではないでしょうか。

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写真2番目は、郡上紬を合わせてみました。手紡ぎ糸、手織り・草木染の紬で、けっこう高いものです。良心的な店でも50万円ぐらい。郡上紬も配色や雰囲気に都会的なところが有りますね。

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写真3番目は、大城広四郎の琉球絣を合わせてみました。南風原町の工房です。現在は大城広四郎の息子の代になっていて、「大城広四郎工房」となっています。

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写真4番目は、秋山真和さんの「綾の手紬」を合わせてみました。「綾の手紬」は秋山さんのブランドで、宮崎県綾町で制作しています。この作品は輝くような発色の藍染の糸を使った花織です。

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写真5番目は、佐藤トシさんの南部紬を合わせてみました。胡桃と藍で染めた糸で織った縞です。岩泉町で手織り・草木染で制作していた作家ですが、現在は制作していないのではないでしょうか。

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写真6番目は、大城哲(さとし)さんの琉球絣を合わせてみました。大城広四郎と同じ南風原町に工房があります。大城カメ→清栄→哲と続いていて、大城カメが有名だったんですね。
[ 2017/05/03 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の続き

第三千七百三十三回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の続きです。

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いちばん上の写真は、お太鼓の近接でメインの模様です。細かいところにかなり近接した画像です。金描きで写生的な表現をしています。塩瀬の生地の目と比較していただくととても細密なことがわかります。この職人さんの技術は凄いですね。

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写真2番目は、お太鼓の近接で色紙の重なる部分です。色紙の輪郭線は、端正というよりも意外と手描き感のある温かみのある線です。青い色紙には、振り金砂子(箔の切り屑を細かくして竹筒に入れ、オトシ刷毛で揉み落として砂子状に撒くもの)またはオトシぼかし(金網を使って霧状に金粉を撒く方法、現在はエアブラシも多いのではないか?)という技法が多用されています。一方、茶の色紙には切箔といわれる、いろいろな形に切った箔を撒く技法が使われています。

今ここで、「切箔」「振り金砂子」「オトシぼかし」という3つの金箔の技法を紹介しましたが、これらは大きさの違いで、たいていは併用されることが多いです。箔を貼るときは模様の形に切って不要な部分が生じますが、それを細かくして切箔として使い、さらに細かくして金砂子として使い、さらに細かくしてオトシぼかしとして使うのでしょう。たいていすべて併用して1つの作品になっているものです。

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写真3番目は腹文の近接です。書道で文字がかすれた部分を飛白といいますが、この作品では金描きの松の枝で意識的に飛白表現をしています。「高砂」では、図像学的には老松であるべきですが、この作品では若松になっています。実際に作品を見ると、この部分は老松の曲がりくねった枝を描くよりは、若松の方がお洒落ではないかと感じます。あまり「高砂」のテーマに忠実すぎると結婚式専用みたいになってしまいますしね。

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写真4番目は、お太鼓の裏側です。金描きは裏に透けないので、友禅部分だけが見えます。金描きをする前の工程ではこんな感じだったんですね。

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写真5番目は、色紙の青を生かした帯合わせをしてみました。合わせた着物は松枝哲哉さんの久留米絣です。藍が明るいのが特徴で、色に共通性が有るので選んでみました。
[ 2017/05/02 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)

第三千七百三十二回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

能の演目である「高砂」をテーマにした作品です。高砂のストーリーはこんな感じです。阿蘇神社の神主が京に上る途中の播磨の国高砂の浦で、松の根元を掃き清める老夫婦に出会います。二人は、この松は高砂の松といい、摂津の国住吉にある住の江の松と合わせて「相生の松」と呼ばれていると語ります。さらにこの二人は高砂と住吉の相生の松の化身であると告げるというものです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。相生の松の化身である2人は省略され、持っている道具だけで象徴的にあらわされています。その道具は色紙取りで表現されていますが、色紙は夫婦なので2枚です。上の青い色紙は2人がいる高砂の浦の景色ですから、下の茶色い色紙は住吉の景色なのでしょう。今2人は高砂に居るので、こちらは留守なのでしょうか。

能のストーリーでは、神主は老夫婦の後を追って舟を出し、高砂の浦から住吉へ向かいます。住吉の岸では住吉明神が姿を現し、真って長寿を寿ぎます。下に有って見えない色紙には、住吉明神が描かれるのかもしれませんね。

色紙の外には2本の松が描かれていて、これが高砂の松と住吉の松だろうと見当が付きますが、能の内容と違うところは化身の姿が老夫婦なのに松が若松であることです。まああんまり細かいこと言わないで、というところでしょうか。

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写真2番目は腹文です。金描きによる霞と松です。意味のあるお太鼓の模様に対し、さらっと流す感じです。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。この作品は色紙の青がすごく綺麗なのですが、近接してみるとそれほど鮮やかな青ではないです。外の茶と中の金に挟まれているという配色の妙で、美しい青に見えているのです。

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写真4番目は、腹文の近接です。

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写真5番目は参考図版です。安藤広重による双福の作品で、数十年前の図録に有ったもので、解説によると広重が晩年に逗留した天童市に伝来したとあります。これが高砂の基本の図像で、省略された元の人物はこんな感じだったんですね。
[ 2017/05/01 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)