千切屋治兵衛の絽の付下げの帯合わせ

第三千六百七十回目は、千切屋治兵衛の絽の付下げの帯合わせです。

今日は龍村の絽の名古屋帯を合わせてみました。昨日と同じく、植物文の着物に対し帯で植物文を重ねても良いか、合わせて考えてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の絽の名古屋帯「かすみびし」を合わせてみました。花菱文をつないだ文様で、水面に映って揺らいでいるような意匠になっています。花菱文は家紋そのものですから、それを隙間なく並べたら雰囲気が硬くなってしまいます。揺らいだ意匠にすることで、絵が軟らかくなったり、絵に動きが生じたりという効果があるのでしょう。

私としてはそれに加えて、水を連想させる効果があるように思います。着物の意匠が水辺の植物であれば、良い組み合わせになりますね。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「風矢羽」を合わせてみました。矢というモチーフは、鏃が付いていれば殺生につながり茶事に使いにくかったりするので、この絵のように鏃のない表現をするのが普通です。矢羽の前後が擦れていて、風を感じる表現になっています。涼しさを狙っていますね。

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写真3番目は、龍村の絽の名古屋帯「風矢羽」を合わせてみました。上の色違いです。さりげなく合わせるばあいとコントラストを付けてくっきりさせるばあいですね。これは好き好きで。

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写真4番目は、龍村の絽の名古屋帯「清山文」を合わせてみました。伝統文様における遠山文のアレンジです。夏の朝の清澄な空気を感じる作品です。「朝の清澄な」と感じることができるのは、色に透明感があるからでしょう。やっぱり色は濁っちゃダメですよね。優れた作品は色が濁ってないもので、例えばルオーだって、黒でないところは意外に色が濁ってないです。

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写真5番目は、龍村の絽の名古屋帯「彩波」を合わせてみました。「いろは」と読みます。植物文を避け水の文様を合わせてみました。

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写真6番目は、龍村の絽の名古屋帯「涼流文」を合わせてみました。上の例と同じく水の文様を合わせていますが、こちらは具象的で睡蓮の葉のような植物文もあります。まあ許容範囲でしょうか。

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写真7番目は、龍村の絽の名古屋帯「夏蒐文」を合わせてみました。植物文を合わせてみました。着物と帯で模様が重ならないように、写生的な着物の植物に対し、帯の植物は丸めて意匠としたものを合わせてみました。どうしても植物文から逃れられないときは、写生的と意匠的で分けるという手もありますね。

植物の種類としては、藤と朝顔と萩で春から秋まで長いですが、これは絽の着物のモチーフとして藤が間違っているのでしょうがないですね。朝顔は季語で言えば秋ですね。
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[ 2017/02/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の付下げの細部と帯合わせ

第三千六百六十九回目は、千切屋治兵衛の絽の付下げの細部と帯合わせです。

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いちばん上の写真は、マエミの上の方の藤の花です。この作品には白い糸目の線はありませんが、模様どうしが重なるところを見ると、じつは見えない糸目の線で防染されていることがわかります。中井さんのセンスでは、この作品は模様の色と地色は調和すべきで、白い線で分断されるのは無粋だと思ったのでしょうね。

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写真2番目は、マエミの下の方の藤の花です。蔓の回転を見ると、ちゃんと日本画の修業をした下絵師が描いているんだなあと思います。

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写真3番目は、後姿の藤の花です。この作品はあまり濃淡や陰影が付けられていません。葉を見ると微妙に濃淡があるかなあという程度ですね。しかしそれでも奥行きは感じます。デッサンが完全ならば陰影は付けなくても遠近感はおのずと生まれるのでしょうね。

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写真4番目は、マエミの藤の花の近接です。藤の花も陰影などついていないですが、平面ではなく丸くなっていると感じます。

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写真5番目は、龍村の絽の袋帯を合わせてみました。草花模様の着物の帯合わせをするときに、植物文の帯を合わせて良いものでしょうか。本来であれば、植物文どうしを重ねたくはないものですが、実際には帯も着物も植物文が多いですから避けられないことがあります。この帯のような器物模様は貴重ですね。色も同系濃淡でまとまり、とても都会的な帯合わせに見えます。

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写真6番目は、龍村の絽の袋帯を合わせてみました。縁起の良い若松文です。植物文どうしを合わせていますが、なるべく関係のないようなものを合わせてみました。流水文でもあると思えば、まあ許されるでしょうか。
[ 2017/02/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の付下げ(実際の制作は中井淳夫さん)

第三千六百六十八回目の作品として、千切屋治兵衛の絽の付下げを紹介します。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

7,8月に着る絽の生地でありながら、5月に咲く藤の花が描かれているという困った作品です。おそらく藤間流の人が注文したのがキャンセルになって、当店に流れ着いたのだと思います。藤間流の集まりだと季節に関係なく藤の模様の着物を着ることもあり得ますものね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。藤というのは蔓植物ですから曲線模様です。一方藤には棚が付きもので棚を描かなければ絵として成り立ちませんが、棚は直線模様です。曲線模様の蔓だけなら模様を流麗につなげていくことができますが、直線模様の棚があると上手くつながりません。そのような目で、この絵を見ると棚を上手く途中で消して、自然につないでいることがわかります。さすが中井さんの図案なんですね。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。植物によって蔓の巻き方は違いますが、中井さんの図案の蔓は、ほんとに日本画みたいですね。

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写真4番目はもう片方の袖です。

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写真5番目は胸です。
[ 2017/02/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせ

第三千六百六十七回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせです。

今日は龍村の光波帯を合わせてみました。帯合わせと共に龍村の光波帯の紹介もしたいと思います。とても使い勝手が良いものですから。光波帯は、仕立て上がりの名古屋帯で、価格的には龍村の帯の中でいちばんリーズナブルという位置づけです。しかしその一方で、安売りは出にくいのではないでしょうか。ネットショップでの扱いは多くないですし、あったとしても定価販売が多いように思います。

シリーズには、上代裂(正倉院裂と法隆寺裂、ごくわずかに唐招提寺裂)、名物裂、毎年干支にちなんで発売される「干支の経錦」があります。外国のモチーフの多くは「干支の経錦」です。

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いちばん上の写真は、龍村の光波帯「円文百虎朱雀錦」を合わせてみました。これは上代裂で、本歌は法隆寺に伝来する蜀江小幡に使われている裂です。

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写真2番目は、龍村の光波帯「コプト甲冑異文」を合わせてみました。円や矩形のデザインはコプト裂に取材していますが、真ん中の甲冑を着た戦士のデザインは近代のドイツのものだそうです。その妙な組み合わせが「異文」の意味のようです。

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写真3番目は、龍村の光波帯「糸屋輪宝手」を合わせてみました。名物裂として、加賀の前田家に伝来する「糸屋輪宝裂」に取材したものです。「糸屋」の意味は元の持ち主が糸屋だったということらしいです。

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写真4番目は、龍村の光波帯「遠州七宝」を合わせてみました。小堀遠州が所蔵していたという「遠州緞子」に取材したものです。基本の光波帯は経錦(経糸だけが浮沈して模様を表現する)ですが、これはそれに加えて絵緯糸による模様表現(金糸部分)も加えているため、ちょっと高いです。

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写真5番目は、龍村の光波帯「有翼牛文様錦」を合わせてみました。アッシリアの彫刻に取材したものです。ルーブル美術館で見ることができる5本脚(どの角度から見ても4本脚に見えるように5本脚がある)の有翼牛です。有翼牛というのは、ギルガメシュ叙事詩に登場しますよね。干支の経錦として、丑年に発売されたものです。
[ 2017/02/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせ

第三千六百六十六回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、東京でつくられる堰出しの疋田と刺繍の帯を合わせてみました。堰出しの疋田とは、1粒ずつ糊筒で糊を置いて防染する疋田です。熟練した職人による精緻な仕事ですが、型疋田に比べれば微妙な揺らぎがあるはず。堰出しの疋田と刺繍を合わせたこのようなスタイルは、かつて千代田染繍により超高級黒留袖として制作されていました。それをダイジェスト風にまとめて帯にしたのがこの作品です。

制作しているのは千代田染繍ゆかりの人かもしれませんが、だれかわかりません。刺繍というのは設備が要らずアパートの一室でもできるので、結婚して工房を辞めた主婦などが内職で作っているんじゃないかと思います。その元締めになっている問屋は他の業者に参入させないため実際に制作している人を秘密にしているんじゃないでしょうか。

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写真2番目は、藤井絞の絞と更紗の帯を合わせてみました。絞により半分に染め分けられ(直線を絞るというのは難しいですね)、友禅で更紗が描かれていますが、主要な花のいくつかは絞りによる表現です。

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写真3番目は、秀雅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。大きな楓を取り方にして中に海浜模様を入れてあります。ちいさな1枚の葉の中に大きな風景を入れてこそ意匠ですよね、大きなものの中に小さなものがあればただの自然ですから。

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写真4番目は、加賀友禅作家、村上堅正さんによる名古屋帯を合わせてみました。茶屋染の意匠の一部を上手く切り取って帯のお太鼓にしたものです。

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写真5番目は、加賀友禅作家、中町博志さんによる名古屋帯「砕」を合わせてみました。着物の模様が色紙で四角い形なので、帯の模様とシンクロさせて遊んでみました。
[ 2017/02/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせ

第三千六百六十五回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の小紋の帯合わせです。

飛柄の小紋に対する帯合わせは、袋帯でも名古屋帯でも、織りの帯でも染めの帯でも大丈夫です。しかし実際に合うかどうかは個別に判断する必要があります。今日は西陣の織の帯で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「印度耀華文」を合わせてみました。龍村の袋帯と言えば、引き箔をたくさん使ったフォーマルを思い浮かべがちですが、これは袋帯でありながらカジュアルにも使えるシリーズです。龍村の新作発表会には、国別にテーマを決めるばあいがあり、これはインドの時に発表されたものです。

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写真2番目は、洛風林の袋帯「名物小枝文」を合わせてみました。小付けの唐草文と宝尽くしを合わせた意匠ですが、名物裂の「大黒屋金襴」をほぼ写したものです。本歌は黒地に金糸ですから、色は全く違いますし雰囲気も違います。青は絹糸ですが、茶に見える模様は暗赤色のポリエステルのフィルムです。全然違う素材の組み合わせで不自然化と思うのですが、人間の目で見ると自然なタッチに見えてしまって不思議です。

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写真3番目は、河合康幸の袋帯を合わせてみました。松葉と松ぼっくりの組み合わせです。「松」というテーマは植物文の中でも格式ばった感じがしますが、松ぼっくりの形のとぼけた雰囲気のおかげで、カジュアルにも使える気がします。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「双鳥繍華文」を合わせてみました。上の3つの組み合わせは、小紋に対し袋帯だったので、袋帯の意匠は比較的カジュアルな雰囲気のものを選びました。ここから下は名古屋帯で、本来の小紋の相手なので、雰囲気に関係なく合わせていきます。

タイトルに「繍」の文字があるので、本歌は刺繍作品ということがわかります。本歌が刺繍と思えば、織りらしいパターンが無く自由なデザインであることが納得できます。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「麗葉果」を合わせてみました。「麗葉果」はおそらくグアバの意味でしょう。南洋の植物を中国語で言うとこんな文字になるのではないかと思います。台湾が産地ですし。写実というより、水墨画で描いたようなタッチで、それを引き箔を多用して西陣らしい豪華なタッチに変えています。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。法隆寺に伝来する蜀江小幡に使われている裂に取材しています。本歌は赤い裂ですがモダンな色に替えています。
[ 2017/02/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の小紋

第三千六百六十四回目の作品として、千切屋治兵衛の飛び柄の小紋を紹介します。実際に制作したのは大和さんです。

技法は手挿しです。輪郭だけが型で、中の色は手で染められています。糸目型または型糸目ということもあります。地色は茄子紺です。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目以後は、飛び柄を1つづつ撮ってみました。模様は5種類で、それが色違いになって繰り返します。

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写真7番目は、6番目の色違いです。5種類の模様それぞれが、繰り返すたびに色違いになっています。

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千六百六十三回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯を合わせてみます。近年は付下げや余白の多い訪問着に対し、西陣の袋帯でなく染めの帯を合わせる方がお洒落という人がいるからです。その理由は、西陣織より染の方がお洒落というわけではなく、本来超高級品である有名ブランドの西陣の帯でもネットショップで気軽に買えることがくなったので、さらに他人が持っていないものを求める心があるのでしょう。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の塩瀬地の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。描かれているのは尾形乾山の陶器の筥です。お太鼓は蓋に描かれている絵で、その蓋の裏には芒が描かれているのですが、それは腹文になっています。

中井さんの意匠は、金と茶色だけで描かれていますから、着物に対しては完全に同系色になり、色数を増やさない帯合わせになっています。一方模様は、着物はガチっと構成された文様になっているのに対し、帯は伸び伸びしているので反対です。模様のパターンは反対、色のパターンは同系という組み合わせです。

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写真2番目は、花也の名古屋帯「刺繍華文」を合わせてみました。華文の形をゴム糊の防染で白抜き状態にし、後染彩色と光沢のある漆糸の刺繍で、繊細なグラデーションを作っています。なぜいつもの糊糸目の友禅にしていないかと言えば、より精密なグラデーションを作るためじゃないですか。

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写真3番目は、一の橋の名古屋帯「桜枝丸紋」を合わせてみました。帯の地色は灰桜、丸紋はベタ箔、桜の花は胡粉仕上げです。桜は完全な白でピンクではないですが、それでも桜の色気を感じるのは地色の灰桜がピンク要素を担っているからです。白と金の明快な色彩が装飾的な雰囲気を高めています。それに着物の焦げ茶と金を加えれば、計算したように完璧な装飾芸術ですね。

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写真4番目は、花也の名古屋帯「霞取り色紙に琳派模様」を合わせてみました。霞取りの中に波があり、その中に色紙があり、それもまた取り方になっていて、中に琳派にありがちな川辺の模様が描いてあります。模様が入れ子構造になっているのです。川辺模様は、水は琳派の流水模様で楓と槇が生えていて蛇籠もありますね。蛇籠は洪水を防ぐための防災施設ですが、それを美しいと感じ模様にしていたんですね。

花也の作品のなかでも中井淳夫さんの系列の職人差を使って作った作品です。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「霞に羊歯文」を合わせてみました。赤に近い彩色で霞を描き、金彩で色を抑えて茶色に見せています。さらに金描きでシダを描き、一部を金糸で刺繍しています。友禅と箔と刺繍の重厚な作品で、職人さんの系列で言えば中井淳夫系ですね。

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写真6番目は、一の橋の名古屋帯「薬玉」を合わせてみました。西陣の袋帯に負けない重厚な友禅作品です。友禅というのは豪華にしようとすると成金的な野暮に陥る危険がありますが、この作品は豪華でも洗練されています。制作したのは中井淳夫さんの元社員で、一の橋の中核的な下職です。中井さんの作風を継ぐ人の1人ですね。
[ 2017/02/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千六百六十二回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は、今回の付下げを①の模様の面積の少ない地味な訪問着と解釈して、年輩者向きと思われる帯を合わせてみます。年輩になれば地味な着物を着るのが普通なわけですが、真面目な友禅や刺繍であるほど純粋な手加工ですから、模様面積が小さくなるほど安くなるものです。しかし、今まで頑張って仕事をしてきて、なんで娘や嫁より安いのを着なくちゃいけないの、という方もいらっしゃるでしょう。そういう方には模様面積は小さくても密度の濃い倉部さんはピッタリでもありますね。

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いちばん上の写真は、北尾の袋帯「錦繍本願寺道長文」を合わせてみました。北尾はすでに廃業していますが、かつて「北尾のつづれ」と言われたシリーズの1本です。地が綴組織で、模様は絵緯糸で表現してあります。

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写真2番目は、織悦の袋帯「シャム印金段文」を合わせてみました。段文は、織悦の袋帯の中でいちばんリーズナブルな価格のシリーズです。明るい綺麗な色もありますが、暗い色のシリーズを合わせてみました。着物も帯も横段でシンクロ風にしてみました。

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写真3番目は、池口平八の袋帯「琵琶湖」を合わせてみました。地味な帯というよりも、印象派の理論を地で行くような織り方をして本当の水面のように見える効果を狙った作品です。まあでも世間では地味と言われてしまうかなということで、合わせてみました。

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写真4番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟楽園」を合わせてみました。茶系の地色で細かい模様ですから、年輩者向けということになりますが、よく見るとかわいいお馬さんもいて、かわいいおばあさんになれる帯です。

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写真5番目は、織悦の袋帯「ペルシア巻花蔓」を合わせてみました。地色は「タバコ茶」とのこと。細かいペルシア模様です。

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写真6番目は、花也の名古屋帯「流れに槇」を合わせてみました。染め帯を合わせてみました。色数も少なく年輩対応ですが、じつはいろんな技法を使った凝った作品です。砂粒は友禅の糊置き、槇の下地はダンマル描き、箔、金描き、金糸の刺繍、ぼかしです。
[ 2017/02/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千六百六十一回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は、今回の付下げを②の模様や技法に個性がある趣味的な訪問着と解釈して、個性のある帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「騎馬陶楽文」を合わせてみました。着物の模様が水平の直線なので、帯の模様は対照的な丸紋にしてみました。昨日紹介した華文も同じ発想の組み合わせですが、こちらは個性派にしてみました。本歌は皿ですから丸形の模様になりますね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。着物が水平の取り方なので、帯も横段模様にしてシンクロさせてみました。

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写真3番目は、龍村の袋帯「瑞鳥遊園錦」を合わせてみました。「瑞鳥」は「瑞兆」の駄洒落で、これだけで「瑞兆をもたらす鳥→縁語の良い鳥」という意味だと分かります。本来であれば鳳凰なのでしょうが、ここではチュニジアにあるローマ時代のモザイクの鳥です。

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写真4番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。平家納経をテーマにした帯ですが、厳島神社といえば「錦秋安藝の宮島」というフレーズが思い浮かびます。「錦秀」というタイトルは、厳島神社→平家納経を導き出すための駄洒落ですね。一方、「遺芳」も遺宝の駄洒落。スポーツ新聞の見出しみたいですよね。

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写真5番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。本歌が特定できないのですが、模様の輪郭に綴特有のカクカクがあるのでコプト織に取材したものでしょう。

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写真6番目は、大西勇の袋帯「正倉院合子の文」を合わせてみました。昨日紹介した紋屋井関の「正倉院象唐草文」と本歌は同じですが、あちらは高級なフォーマルに、こちらは個性派に分類してみました。

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写真7番目は、帯屋捨松の袋帯「豊公花鳥文」を合わせてみました。タイトルに「豊公」と付くのは、豊臣秀吉が着たという陣羽織に取材したという意味です。陣羽織に加工されたという南蛮渡りのペルシア絨毯はいくつかあるようで、龍村の帯にもありますね。
[ 2017/02/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千六百六十回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今回の倉部さんの付下げは、フォーマル着物の中でどういう位置づけだと思いますか。①模様の面積の少ない地味な訪問着、②模様や技法に個性がある趣味的な訪問着、③贅沢な技法を使った高価で格のある訪問着、こうして挙げてみるとどれも当てはまるように思いますが、正反対の解釈もあって不思議なものです。では本当はどうなのかと言えば、帯の合わせ方でどれでもできるんじゃないでしょうか。

今日は、③の贅沢な技法を使った高価で格のある訪問着と解釈して、結婚式などに行くことを念頭にフォーマルな帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、坂下織物の袋帯「御門綴」シリーズの1本「有職鳳花栄文」を合わせてみました。坂下織物はすでに廃業していますが、「坂下のつづれ」と呼ばれ西陣では高級品として知られていました。、織物の組織としては、地が綴組織で模様は絵緯糸です。

意匠は、中国を代表する錦で、古代から明代まで織りつづけられた蜀江錦をベースに鳳凰などを加えています。西陣の帯のタイトルは内容とぴったり合わないことがありますが、間違えているわけではなく商標登録との絡みですね。

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写真2番目は、坂下織物の袋帯「天平華文」を合わせてみました。正倉院御物にある複数の文様をコラージュして意匠にしています。もとの模様のいくつかは染織に限りません。上手にコラージュしているので、コラージュだと気が付かないぐらいです。

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写真3番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。海の波を西陣の織の技法で表現したものです。写実でもあり品格のある意匠でもあります。タイトルには「音」という文字もありますが、たしかに音が聞こえるような臨場感のある表現だと思います。

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写真4番目は、服部織物の袋帯「こはく錦」シリーズの当時の高級ランク品「24kオリエント更紗」を合わせてみました。今ではあまり見られないぐらい細く裁断された本金の引き箔で織られています。当時の最高級品ですよね。更紗ではなくて唐花文ではないか、なんて思うこともありますが、「オリエント更紗」という1つの言葉で商標登録されているのでしょう。

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写真5番目は、紋屋井関の「御寮織」シリーズの1本「正倉院象唐草文」を合わせてみました。聖武天皇の碁石入れ「銀平脱の合子」をテーマにしたものです。碁石入れですから白黒2種類必要で、象さんチームと鸚哥さんチームがあるのですが、その2種類を並べた意匠です。

銀平脱という技法自体は中国に有りますが、正倉院のものは日本で制作されたものでしょう。象と鸚哥でエキゾチックシリーズにするなんて、古代人は現代の帯屋捨松や洛風林ぐらいのデザインの知識が有ったんじゃないかと思います。

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写真6番目は、梅垣織物の「蒔絵花鳥文」を合わせてみました。梅垣織物というのは、かつては「きしや好み」の一角として銀座きしやのウィンドウのもっとも良い場所に飾られていたブランドです。これはそのもっとも高級なラインで、昭和50年代からの20年間で18本織られたことがわかっています。細く裁断された本金の引き箔で織られた地は、もう織物のようではなくて本物の蒔絵のようにぬめっとしています。

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写真7番目は、紫紘の袋帯「天平臈纈文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈」とありますが、実際には天平の三纈のすべてや刺繍など正倉院にある染織作品のいろんなものからコラージュしています。全体が横段模様なので、着物の意匠とシンクロして収まりが良いと思います。
[ 2017/02/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の細部

第三千六百五十九回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の細部です。

今日は後姿の3つの模様の細部です。

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いちばん上の写真は、後姿の上の模様です。緯糸に沿って地を埋めるように繍っている部分と一目置く菅繍で繍っている部分があります。地を埋めた部分は完全に金色ですが、菅繍部分は一目置くために金色と地色が混じって暗い金色に見えます。その明暗の差によって模様に遠近感が生じています。

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写真2番目は、後姿の上の模様に近接して、刺繍の立体性がわかりやすいように斜めから撮っています。

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写真3番目は、後姿の波の模様です。宗達の松島図を簡略化したような意匠です。このような絵画的なテーマは刺繍より描き絵の方が表現しやすいのではないでしょうか。

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写真4番目は、後姿の途中で切り替わる模様を斜めから撮ってみました。半分は有職文様である立湧文、もう半分は霞と流水と桜です。パターン的な文様部分は刺繍で絵画的な部分は金描きです。やはりテーマと技法で相性があるんですね。

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写真5番目は、マエミのメインの模様の裏側です。模様は金糸の刺繍と金描きが混じっていますが、金描きも上手いので、どこまでが刺繍でどこからが金描きか判別しにくくなっています。裏から見るとしっかり判別できますね。

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写真6番目は、マエミの下の方の模様の裏側です。比較してみてください。金糸の刺繍と金描きが判別できます。意外に金描き部分もあるとわかります。金描きの方がコストが安いわけですから、両者を判別不能にして、金描き比率を高めることができれば、コストを抑えられるわけです。そのために必要なのは優れたデザインです。

私は自分で注文して作るときは、どういうデザインにしたら金描きと金糸の刺繍を判別不能にできるか、そんなことばかり考えているんですよ。豪華なのに意外と安い、という商品は売れますから。

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写真7番目は、袖の模様の裏側です。この作品を取り上げた最初の日の記事に、この部分の表側の写真があります。ぜひ比較してみてください。
[ 2017/02/17 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の細部

第三千六百五十八回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)の細部です。

今日は前姿の3つの模様の細部です。

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いちばん上の写真は、前姿の上の模様のオクミ部分です。緯糸に沿って地を埋めるように繍っている部分と一目置く菅繍で繍っている部分があります。地を埋めた部分は完全に金色ですが、菅繍部分は一目置くために金色と地色が混じって暗い金色に見えます。その明暗の差によって模様に遠近感が生じています。

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写真2番目は、前姿の上の模様のマエミ部分です。刺繍の立体性がわかりやすいように斜めから撮っています。

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写真3番目は、前姿の真ん中の模様のオクミ部分です。

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写真4番目は、前姿の真ん中の模様のマエミ部分です。斜めから撮ると刺繍の立体性が明らかにありますから、模様はじつは刺繍だけでなく金描きが混じっているのがわかりますね。

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写真5番目は、前姿の真ん中の模様のマエミ部分です。刺繍の立体性がわかりやすいように斜めから撮っていますが、地を埋める刺繍部分と、一目置く菅繍部分と、金描き部分がよくわかります。3者が混じることで立体感が生じているんですね。
[ 2017/02/16 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実際の制作は倉部さん)

第三千六百五十七回目の作品として、千切屋治兵衛の付下げを紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

京友禅の制作では当たり前ですが、倉部さんも自分でコツコツ刺繍をしているわけではありません。倉部さんでも実際に刺繍をしている職人さんは複数いて、それぞれ作風というか、得意パターンがあります。今日紹介する細い金糸(もちろん本金糸)による細密な模様は、もっとも難度が高く、もっとも高価なものです。

私も倉部さんの作品系列の中でいちばん好きですが、高いし数もないですしね、1年に1点買えれば幸運というところです。前回紹介したのは2015年1月1日(二千九百五十一回)ですね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。模様は3か所です。

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写真2番目は後姿です。模様は3か所ですが、いちばん左の模様は前姿の右下の模様から続いています。

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写真3番目は袖です。袖の模様は片袖だけです。

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写真4番目は胸です。明日は細部です。
[ 2017/02/15 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせ

第三千六百五十六回目は、奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせです。

今日は普通の帯(秋~冬~春)のうち、なんとなく涼しげに見える帯を単衣用として合わせてみます。今回と前回の単衣用の帯合わせは、①絽綴のように着付けの教科書においても6月と9月に使うことが適切なもの、②本来の真綿の紬よりも薄手の玉紬、③本来であれば7,8月に使う夏帯のうち、龍村の絽の袋帯と名古屋帯のようになんとなく厚手のもの、④本来は秋~冬~春に締める帯のうち、比較的薄手で意匠もなんとなく涼し気のもの(たとえば唐織はダメ)、を基準にしています。

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いちばん上の写真は、秋山真和さんの花織の袋帯を合わせてみました。花織の仲間には、花織と絽織を併用した花絽織(首里織としては花倉織)があって、それは夏物ですが、花織自体は普通の帯(秋~冬~春)です。この帯は薄手ですし、「沖縄の海のような」と言いたくなるぐらいの青のグラデーションが綺麗なので、涼し気ということで単衣用としてみました。

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写真2番目は、ルバース吟子さんの浮織の名古屋帯を合わせてみました。浮織というのは、生地を構成する糸とは別の糸を差し入れて紋織をつくる織物で、その反対は生地を構成する糸が変化して紋織になる花織です。しかし紛らわしいことに、「浮織」というのは技法の名称にすぎず、産地の商標としては浮織も花織も「花織」なのです。たとえば読谷花織は技法的には浮織で、首里花織は技法的にも花織です。

浮織には、手で糸を差し入れる「手花織」と綜絖で糸を差し入れる「綜絖花織」とがあります。違いは裏を見るとわかります。綜絖花織は水平に渡り糸がつながっていますが、手花織は模様で糸がつながっていません。両者の使い分けは、横方向に連続するデザインのばあいは綜絖花織が向いており、模様が塊になっていて連続していないばあいは手花織が向いています。この作品のばあいは併用していますが、それがどこかデザインで分かりますよね。

今回は色が涼し気という理由だけで採用しています。

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写真3番目は、青戸柚美江さんの「出雲織」の名古屋帯「白絣」を合わせてみました。格子が交わるところが絣になっています。手織りの木綿で、夏物とは全く言えませんが、デザインがすっきり、色が涼し気という理由だけで採用しています。

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写真4番目は、藤井絞の絞の名古屋帯を合わせてみました。複数の絞の技法を併用した作品です。縫い締め絞りという技法からすれば、直線や鋭角を綺麗に表現するのはすごいと思います。寒色系だけの色の組み合わせが涼し気という理由だけで採用しています。

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写真5番目は、藤井絞の絞の名古屋帯を合わせてみました。綺麗な直線を縫い絞りで表現するのは難しそうですね。これもさわやかな色合わせを理由にして選んでみました。

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写真6番目は、藤井絞の紬地の絞の名古屋帯を合わせてみました。戦国時代をテーマにした時代劇を見ると、丸や菱のシンプルなデザインの旗差物を使っていますが、現在まで残る小笠原家の三階菱の旗差物は辻が花の技法で染められています。この作品はそのような旗差し物をイメージした帯です。シンプルな図案ですが、縫締絞りで、本当に染液に浸ける絞りで、このようなデザインを表現するのはすごい職人技です。縁と直線が近づく部分なんてどういう絞り方をしてるんだろうな、なんて思います。

シンプル、白地→涼し気、という発想で。
[ 2017/02/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせ

第三千六百五十五回目は、奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせです。

今日は玉紬の生地を使った染め帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、藤井絞の辻が花写しの帯を合わせてみました。実在する室町時代の辻が花裂をかなり忠実に写したものです。鶺鴒を描いたものですが、描き絵部分がとても上手に描けています。上手な描き絵というのはじつはとても稀少です。友禅の糊置きは失敗したら洗い流せばいいですが、墨描きは失敗できません。消せる墨では洗濯したら消えてしまいますから。

辻が花の人気作家として知られている人は何人かいますが、絞りのレベルはさまざまです。あまり難度の高い絞はしない人もいますし、絞った後に染液に浸けない人もいます。しかし人気のある人はみんな描き絵については例外なく名人ですよ。

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写真2番目は、藤井絞の辻が花写しの帯を合わせてみました。「瑞泉寺裂」と呼ばれる辻が花裂で、松皮菱の形が鋭角部分まできれいに再現されています。瑞泉寺というのは、秀次の家族が全員殺された地である「畜生塚」の跡地に供養のために建てられた寺です。この裂は江戸時代になってから寺に納められたものということで、怨念は籠っていないのでご安心ください。

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写真3番目は、藤井絞の辻が花写しの帯を合わせてみました。これも実在する辻が花裂の写しです。

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写真4番目は、藤井絞の辻が花写しの帯を合わせてみました。これも実在する辻が花裂の写しです。描き絵を伴わず、絞りだけで具象的なデザインを表現する後期の様式を再現しています。これは本来通り染液に浸ける絞りをしています。

染液に浸ける工程では、染料を重ねすぎると濁った色になってしまうので、無駄な回数は浸けられません。図形の問題のつもりで頭を使って絞り方を工夫し、1回で決めないといけなんですね。この図案の場合、鳥と波が離れているか近いかだけで難度が違うみたいです。

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写真5番目は、藤井絞の辻が花様式の帯を合わせてみました。これは神坂雪佳の「金魚玉」という絵に取材したものです。絞りを使って具象的な絵を表現しているのでから辻が花の流れをくむものですが、これは染液に浸けていません。絞った後に筆で着彩しているんですね。

これを見て言えることは、染液に浸ける絞ができる人は、筆で着彩する絞をすると、さらに上手くなるということです。現実の辻が花作家はほとんどすべて染液には浸けていないんですよ。しかしニセモノとも言えません。室町時代の人も染液に浸けていなかったかもしれないので。当時は最新ファッションですから、伝統を守るとか関係ないわけですよね。

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写真6番目は、加賀友禅作家、高平良隆さんの素描きの名古屋帯を合わせてみました。高平良隆さんは、常に6,7人しかいない加賀友禅技術保存会の正会員すなわち石川県無形文化財の作家です。加賀友禅作家というのは、最初から友禅をやりたかったわけではなく、本当は画家になりたくて、結果として友禅作家になったというのが普通の道ではないでしょうか。これは高平さんが、本業ではなく絵として描いたものを帯にしたものです。
[ 2017/02/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせです

第三千六百五十四回目は、奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさない)の帯合わせです。

今回の結城紬の無地は、先日(1月28日)紹介したペパーミントグリーンの無地より薄手でですが、前回紹介した縮織りというわけではないので、単衣でも袷でも着られます。今日は、単衣で着ることを想定し、絽綴の名古屋帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の絽綴「彩葉楓(いろはかえで)」を合わせてみました。龍村の絽綴は地が綴組織で模様は絵緯糸ですから、裏に渡り糸が有ります。



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写真2番目は、龍村の絽綴「涼映文」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の絽綴「花流水」を合わせてみました。

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写真4番目は、龍村の絽綴「光浪文」を合わせてみました。初代平蔵の作品の復刻で、初代平蔵により発表された時は、与謝野晶子の短歌が添えられていました。1つの帯ごとに当時の有名歌人が1首ずつ歌を添えるという企画の展示会だったそうです。金銀糸を使用しているためフォーマル用と感じるかもしれませんが、初代平蔵としては浪に陽光が反射して、飛沫が光として飛ぶところを表現したいだけだったのだろうと思います。

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写真5番目は、河村織物の絽綴「燕」を合わせてみました。河村織物の絽綴も地が綴組織で模様は絵緯糸ですから、裏に渡り糸が有ります。

ほとんど無彩色でいろんなポーズの燕だけのシンプルな意匠です。夏物の小紋や付下げと合わせる時は、その着物にはたいてい花など植物文が付いているわけですから、帯には植物文などがない方が合わせやすいです。
[ 2017/02/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の結城紬の無地(重要無形文化財の要件を満たさないもの)

第三千六百五十三回目の作品として、奥順の結城紬の無地を紹介します。重要無形文化財の要件を満たさないものです。

前回と1月28日(三千六百三十九回)にも重要無形文化財でない奥順の結城紬の無地を紹介しているので、これで3反目になります。貼られているラベルは3反とも同じですが、前回のは縮織りで拡大してみると緯糸が縮んでジグザグになっているのですぐわかります。用途も単衣用ということで違いますし。

しかしながら、1月28日(三千六百三十九回)の結城紬と今回の結城紬は、ラベルが同じだけでなく拡大写真を見てもそれほど差はわかりません。しかし実際の風合いは、1月28日の結城紬は真綿の風合いで地厚なのに対し、今回の結城紬はもう少し地が薄い印象です。着る時は単衣に対応できるかどうかですから、用途を考えれば大違いです。

紬と言われるものには、経緯の糸とも真綿糸、経糸だけ玉糸で緯糸が真綿糸、経緯の糸とも玉糸、経糸が絹糸で緯糸が玉糸、あるいは大島紬のように経緯糸とも絹糸という区別があります。それらは顕微鏡で見るとわかります。しかし、真綿どうしでも撚り方の強弱が違ったりする程度のものは、なかなか顕微鏡で見ただけではわかりません。見ると同時に触ってみてわかるんですね。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接で撮ったものです。見た感じでは生地の表面に凹凸があり、ざらっとしたカジュアルの風合いが予想されます。

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写真3番目は拡大です。じつは経緯で糸の色が違います。肉眼で見るきはこの平均の色で見えているのです。

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写真4番目はさらに拡大です。ぜひ、1月28日、2月7日の記事の拡大写真と比べてみてください。

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写真5番目は、茨城県の証紙と奥順の札です。

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写真6番目は、反物の裏の端に貼ってあるラベルです。「難なし」???ギャクのようなラベル。私は「スピード違反をしていません」とわざわざ警察に言いに行く感じですねえ。
[ 2017/02/11 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせ

第三千六百五十二回目は、奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせです。

今日は夏帯の帯を単衣の着物に対する帯として使用する例です。

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いちばん上の写真は、龍村の絽の名古屋帯「彩波(いろは)」を合わせてみました。黒地に水の波紋です。「彩」というタイトルのわりに色が抑えられている印象ですが、「彩雲」という気象現象を水に置き換えたイメージではないでしょうか。波紋の白い部分には、金糸や微妙な色糸が加えられており、ちょうど彩雲ぐらいの輝きがあります。

龍村の絽はわりと地厚なしっかりした生地ですから、単衣の時期にも使っても大丈夫そうです。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「秋涼」を合わせてみました。夏物である絽の組織で秋のイメージの萩、タイトルの「秋」ですから、お盆過ぎの8月に季節の先取り的に着るのでしょう。しかし、9月にはみ出して単衣に合わせても良いと思います。

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写真3番目は、浅野(152)の絽綴の名古屋帯を合わせてみました。絽綴も夏帯としては少し期間が長いとされています。絽綴というのは、本来は季節限定のおしゃれの頂点のような帯のカテゴリーでしたが、安価な中国製の乱入で混乱してしまいました。これはちゃんとして日本製です。

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写真4番目は、浅野(152)の絽綴の名古屋帯「海の輝き」を合わせてみました。

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写真5番目は、花也の絽縮緬の名古屋帯「半円取り笹に柳」を合わせてみました。絽縮緬は、普通の絽よりも着用時期が長くて、6月と9月も着て良いことになっています。そのかわり盛夏の2週間ぐらいは着るべきでないとされていましたが、今は着て良いことにしている本が多いですね。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の絽の名古屋帯「芒に風鈴」を合わせてみました。晩夏的なモチーフです。絽は教科書的な本では7月と8月のものですが、9月前半も30度ぐらいになりますし、秋的なモチーフならば単衣で使っちゃってもいいのではないでしょうか。
[ 2017/02/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせ

第三千六百五十一回目は、奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせです。

今日は普通の帯(秋~冬~春に締められる帯)のうち薄手で涼しげなものを、単衣の着物に対する帯として使用する例です。

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いちばん上の写真は、深石美穂さんの川平織の帯を合わせてみました。生繭を使用した帯で、しっとりした手触りがあります。薄手で強靭でしなやかな感じです。一見格子のようですが、よく見るといくつかの場所で格子が消えています。つまり絣なんですね。

絣と言ってもこの作品のように微妙に消えるぐらいであれば、配色が上手ければ格子でも絣でもたいして変わらないように思えてしまいます。しかし制作者からすれば、格子と絣では手間が全然違います。そんな微妙なことにすごく手間をかけているんですね。

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写真2番目は、深石美穂さんの川平織の帯を合わせてみました。生繭を使用した帯で、しっとりした手触りがあります。大胆でおおらかとしか言えないような大きい絣です。このような意匠は、琉球王家の官服の注文見本である御絵図帳にあり、南国沖縄の美点であるおおらかなデザインと理解されていますから、伝統に忠実とも言えるんですね。

絣が交わる部分は花織が加えられています。凝ったものですが、これは創作だと思います。

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写真3番目は、深石美穂さんの川平織の帯を合わせてみました。生繭を使用した帯で、しっとりした手触りがあります。経絣の夜幾何学模様です。心の中で模様をタテにずらしていくとすべての模様が重なるでしょう。もともと経絣は経糸をずらして作られているものだからです。それ以外に黄色い縞が有りますが、なんとこの黄色い線は縞ではなくロートン織なのです。びっくりしますねえ。

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写真4番目は、丹波市の名古屋帯を合わせてみました。木綿の帯ですが一部に絹を使用しています。ちょっとざっくりした風合いがあって、風が通り抜けそうな感じもします。

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写真5番目は、秋山真和さんの浮織の袋帯を合わせてみました。紋織部分と緯糸でつながる部分がグラデーションになっていて、明らかに花織の特徴を備えています。しかし裏を見ると渡り糸が有って、じつは地の組織とは別の色糸を差し入れた浮織なんですね。作家は嘘をつきます。ユーザーをだまして喜んでいる感じです。ミステリー作家が、思わぬ人を犯人にして読者をあっと言わせるのと同じだと思います。

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写真6番目は、野口の染めの名古屋帯を合わせてみました。薄手ですがしっかりした紋織の生地をぼかし染めした帯です。凹凸の大きい紋織なので、染料の含みに違いが出ます。そのためにグラデーション効果が最大限に発揮され、ぼかしの長さも長くなっています。無彩色であることも単衣用には有利ですね。
[ 2017/02/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせ

第三千六百五十回目は、奥順の「結城紬縮織り」の帯合わせです。

今日は、単衣の紬に合わせる帯というテーマです。単衣の着物には単衣の帯を合わせるのか、なんて考えると迷路に入ってしまいます。裏地のない帯が単衣の帯と思ってしまうと、爪掻き綴の名古屋帯やカジュアルな八寸の名古屋帯が単衣の帯ということになってしまいますが、そういう帯は構造上そうなっているだけで、6月と9月に使えという意味で単衣にしているわけではありません。

以前、本当に単衣の時期に締める単衣の帯(裏地が無い)というのがあって、それは大西勇(88)による袋帯でした。裏地が無いということは芯を入れることができないわけですから、芯が無くてもお太鼓が綺麗に作れるしっかりした生地で、美しい意匠とそれを達成するための複雑な組織を持ちながら、裏に渡り糸が無い(裏地が無いので渡り糸が露出していたらまずい)という稀有な作品でした。当然、値段も安くなかったですが、その凄さに気付く人も多く、複数仕入れたのにすぐ売り切れてしまいました。そのため残念ながらお見せできません。

単衣の帯と言ってもそんな特殊なものを買う必要はありません。現実の話として、単衣の着物に合わせる帯は、イメージ的に涼しげな帯で良いのです。ちょっと考えてみると、

①普通の西陣の帯のうち生地が薄手で色やデザインが涼しげなもの(糸が浮いて厚手に見える唐織はダメ)、あるいは綴

②夏帯のうちの盛夏では暑苦しく見える程度に隙間が少ないもの(龍村の絽の帯はいずれも隙間率が低く重々しく感じます)、

③紬系であれば玉紬(生紬、絹芭蕉などという商標の方が有名)、の3つがそれに相当するんじゃないかと思います。

今日は玉紬地の名古屋帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。生地は玉紬です。冬に締めても良いのですが、単衣用としてもちょうど良いですね。描き絵部分が多く、絞りの補助としてだけでなく独立した絵画部分としても描いています。前期の室町時代の様式を引き継ぐものですね。

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写真2番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。生地は玉紬です。この作品は六通なので仕事量が多い分、値段は高めになります。実際に締めてしまうと六通でもお太鼓でも表面に出る部分は同じです。六通の場合、体形を気にせず締められるというメリットはありますが、それ以外にコスパに見合うことがあるでしょうか。

六通の帯の存在価値を認める人は、お太鼓柄はお太鼓という画面に模様を押し込めて窮屈そうに見えるが、画面の外に模様が続いていく六通の柄は伸び伸びと見える、といいますね。本当はどうか、この写真と上の写真で比較してみてください。

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写真3番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。生地は玉紬です。室町時代には存在する、絞りが無くて描き絵だけの辻が花を写したものです。

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写真4番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。生地は玉紬ですが、上で紹介したすべての作品より夏っぽい風合いです。描き絵部分も多いですが、絞りによる表現が精緻になり後期の様式です。蔦の葉の形もかなり具象的に絞っていますし、菱文の鋭角もくっきりしています。

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写真5番目は、藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。生地は玉紬ですが、平織と紗の部分が交互に縞状になっています。夏物としても使えますが、平織と紗の平均で単衣用とも言えますね。糊糸目友禅による模様は千鳥と波を丸文にしたものです。

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写真6番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。生地は上と同じで、平織と紗の部分が交互に縞状になっています。糊糸目友禅による模様は短冊取りで、描かれているのは初夏~初秋までの草花です。
[ 2017/02/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

奥順の結城縮

第三千六百四十九回目の作品として、奥順の「結城紬縮織り」を紹介します。

結城紬は、昭和30年に重要無形文化財に指定される前は縮織の方が生産が多かったのですが、重要無形文化財の指定の対象が平織だけだったため、その後は平織の生産ばかりが増えました。再び縮織が注目されるようになったのは近年のことです。

縮織についても重要無形文化財に相当するものとそうでないものがあり、国が指定している間は、茶色い証紙が貼られる対象は平織だけでしたが、現在は組合だけで自由にできるため縮織についても本来の要件を満たしていればグレーの証紙を貼ることができます。

今日紹介するものは、グレーの証紙が貼れるようなものではないですし、検査自体していない「訳あり品」です。しかし有名ブランドがちゃんと保証する「訳あり品」ですし(それってエラいのか?)、値段もそれなりで単衣で着ればお洒落です。これは高梨という問屋で仕入れたものですが、こういうのがあるから高梨って好きなんですよね。良いものはお金を出しさえすればどこでも買えるのですから。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。経緯の絣がぶつかる、絣織物の基本のデザインです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目はもっと近接です。このぐらい近接すると、生地の風合いがわかります。単衣で着ると気持ちよさそうですね。

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写真4番目は拡大です。下の説明文と合わせてみていただけると縮織の構造がよくわかります。緯糸に着目すると、反対向きに強く撚られた強撚糸が交互に打ち込まれ、それによって緯糸がジグザグになり生地が縮んでいる感じの風合いになっているのだろうと想像できます。

青い糸は絣糸です。黒く見える絣ですが、拡大してLEDを当てると青く見えるんですね。絣糸は強撚糸ではないようです。縮織りというのは、すべての緯糸が強撚糸というわけではないようです。

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写真5番目は、反物の端に貼られたラベルで「結城紬の縮織り」について説明しています。もしこれが完全な欠陥品であれば、会社の名前が付いたらベルなど貼らないはず。これは「訳あり品」といいながら会社の名前を付けて流通するに値する商品なのです。私も安心して仕入れましたし、お客さまも安心して買っていただいて大丈夫ですから、コスパで選んでほしいというところです。

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写真6番目は奥順による注意です。「全体的にタテスジ」とあります。○に一が奥順のマークです。真綿や玉糸の織物は生地に凹凸や独特の感触が有るから良いのであって、ツルツルな風合いであったなら、逆に機械織りの安物だろうと思えてしまいます。もとがツルツルの織物であれば、「タテスジ」と言われてすぐわかりますが、もともと凹凸があるのが良しとされる織物では、良いスジと悪いスジの差がわかりません。

おそらく検査所の基準があるのでしょう。これは「検査なし」とあるので、どうせダメだからということで検査所に出さずに、訳あり品として高梨に出されたんでしょうね。
[ 2017/02/07 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

女児のお宮参りの着物

第三千六百四十八回目の作品として、女児のお宮参りの着物を紹介します。

日本の着物のいちばんの特徴は背縫いがあることですが、お宮参りの着物だけは背縫いがありません。背中が小さいので1枚の布で足りてしまうからです。そのために3歳の七五三までは流用できますが、それ以後は使えないのです。

そもそもなぜ日本の着物には背縫いがあるのか、それは日本の反物の幅が世界標準の半分だからです。世界の服地の大部分は背中を覆うことができる幅を基準に織られてきましたが、日本だけは伝統的にその半分なんですね。日本の反物の幅を並幅または小幅といい、世界標準の幅を広幅と言います。最近は男物用の幅の広い反物生地を広幅ということが多いですが、そういう言い方は世界の染織史を知らない言い方だと思います。

「輸出羽二重」というのがありますが、それは輸出用に世界標準の幅で織られた生地という意味です。胴裏に使うばあいは半分に切ります。洋服地の木綿の縞や格子を着物に流用して「ふだん着物」を自作している人がいますが、そのばあいは背中部分は生地をわざと切ってまた縫ってつなげることになるわけです。無駄なようですがそうしないと日本の着物の定義から外れてしまうということなんだと思います。

今日紹介するお宮参りの着物は、なんと背縫いがあります。七五三兼用の着物というわけです。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は背縫いの部分です。紋を入れる辺りか、その少し下辺りです。普通には存在しないお宮参りの着物の背縫いです。この部分に模様が無くて空間が開いているばあいは金糸で縫い紋を入れる必要があります。この作品は量感のある模様が付いているので必要ないでしょう。一般的に男児用は紋を入れないとバランスが悪いようになっていますが、女児用は紋を入れなくてもバランスが取れるようになっています。

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写真3番目は背縫いの部分です。裾の方ですね。暈しが微妙にずれているところが背縫いです。

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写真4番目は袖です。さて、今これを読んでくれているみなさんは、この友禅模様が手描きなのか、型なのか、糸目型なのか気になるところだと思います。じつは私はよくわかりません。仕立て上がっていて裏が見られないということもありますが、それ以上に、お宮参りの着物というのは普通の友禅工房ではなく、専業メーカーが作っているようで制作の状況が私にはわからないからです。

一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせ

第三千六百四十七回目は、一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせです。

今日は染めの帯を合わせてみます。着物は友禅ですから、友禅どうしを重ねることになりますが、友禅とは言っても定型の華文の変奏にすぎず、それほど絵画性は高くないですから、模様を重ねるしつこさには陥らないと思います。

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いちばん上の写真は、花也の名古屋帯「刺繍華文」を合わせてみました。大きい華文1つの帯を合わせることにより、ラスボスのように見せてみました。華文の形をゴム糊で防染して白抜き状態をつくり、後彩色と刺繍でグラデーションに仕上げたものです。刺繍は太く撚った漆糸を使っていて光沢があります。

白地→後彩色→光沢のある刺繍で段階的な表現をすることでグラデーションを作っているんですね。作品のテーマは、本当は華文などどうでもよく、とにかくグラデーションを綺麗に見せるということだと思います。

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写真2番目は、大松の友禅の袋帯を合わせてみました。鸚哥系の鳥2羽に更紗を合わせたエキゾチックなテーマですが、日本の伝統的な様式である花の丸文様の意匠にしてあります。素材は外国、構成は日本ですから、和魂洋才ということですね。色もデザインも大松の良いところがそのまま表現された作品だと思います。

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写真3番目は、北秀の塩瀬地の袋帯を合わせてみました。東京の工房による箔と刺繍の作品です。着物の華文に対し、水平に広がる意匠を合わせてみました。全体の意匠としては水平ですから対照的ですが、個別の模様としては丸紋も含まれており、対照と同調のバランスが良いです。

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写真4番目は、一の橋の塩瀬地の名古屋帯「薬玉」を合わせてみました。帯の模様は、着物の華文の丸い形と一見同調しているような丸い形ですが、さらに見ると和様で異質な薬玉だった、という趣旨の帯合わせです。遠くから見た人は、丸文どうしで同調した帯合わせと思うわけですが、近づいてくると騙されたと気づく仕掛けです。

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写真5番目は、京正の名古屋「瑞葉」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。箔で表現された唐草模様ですが、金から銀へ自然に色が変わっていくところもあり、金箔なのか金泥なのか分からない中井さんらしい高度な技巧の作品です。輪郭は縁蓋を切っていてくっきりしています。曲線は丸紋がほどけたようでもあり、華文と相性が良さそうです。

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写真6番目は、大羊居の友禅の名古屋帯「楽園」を合わせてみました。大彦の名作「象のいる天国」のダイジェストのような作品です。ユーラシアに普遍的に存在する華文に対し、エキゾチックというか国籍不明の模様の帯を合わせています。でも注目してほしいのは焦げ茶に原色の青という配色。

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写真7番目は、ヤマト染芸の友禅の名古屋帯を合わせてみました。ヤマト染芸は外山さんという方の工房ですが、東京にあって、ちゃんと糊の糸目を使っています。孔雀の緑と金がとても綺麗で、孔雀石がほんとに孔雀になったような感じです。小林古径もこういう配色で孔雀を描いていますよね。
http://blog.livedoor.jp/live0715/archives/2014-03.html
で見られます。
[ 2017/02/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせ

第三千六百四十六回目は、一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせです。

今日も袋帯を合わせています。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。華文というほぼユーラシア共通のモチーフに対し、西域というエキゾチックなテーマを合わせてみました。着物の丸い模様に帯は段文ということで対照的になるように意識しています。

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写真2番目は、龍村の袋帯「瑞鳥遊園錦」を合わせてみました。チュニジアなどに多く残るローマ時代のモザイクに取材したものです。銀地に原色の鳥という、妙に芸術的?な表現により着物に合わせるのが難しくなっている帯ですが、けっこう合っていると思いませんか。

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写真3番目は、織悦の袋帯「厳島彩絵花鳥蝶文」を合わせてみました。タイトルの「厳島」の文字から平家納経に取材したものだとわかります。中世と近世の武家の文化ではなく、王朝貴族の文化だからか、鳥の飛び方もおおらかでゆったりしているように見えます。あるいは、お経の装飾ということで、これは極楽の風景ですから、鳥は猛禽類に捕食される心配がなくゆったり飛んでいるんでしょうか。

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写真4番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟楽園文」を合わせてみました。地色と模様の大きさは年輩者向きですが、お馬さんが居たりしてとてもかわいい意匠でもあります。年輩者がかわいくちゃいけないということはありませんし、「かわいい」から入っていけば若い人も使えます。「地味」と「かわいい」のような一見矛盾した要素が含まれている作品は用途が広く使い勝手が良いですね。

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写真5番目は、山鹿清華の袋帯を合わせてみました。山鹿清華の作品は本人により「手織錦」とネーミングされています。本人の作品は日展出品のために創られた大型作品が多く数は少ないです。これはじゅらくの商品として制作されたライセンス商品です。でも本人作と同じ技法でレベルも高いです。もともと西陣というのは自分で織ってないですから。

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写真6番目は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。着物の丸い模様に帯は直線である間道ということで対照的になるように意識しています。

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写真7番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。間道は万能ですよね。
[ 2017/02/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせ

第三千六百四十五回目は、一の橋の付下げ「截金華文」の帯合わせです。

今日は袋帯を合わせています。着物の金彩の華文の雰囲気に似た意匠の帯を選んでみました。

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いちばん上の写真は、服部織物の「こはく錦」シリーズの「24kオリエント更紗」を合わせてみました。かなり昔のもので、今では滅多に見られない極細の本金引き箔を全面的に使っています。小さい華文が散っている着物の上に大きい華文1つの帯が乗っていると、テレビゲームのラスボスみたいに見えます。

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写真2番目は、洛風林の袋帯「飾宝華文」を合わせてみました。これもラスボス関係を狙ったものです。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。全体が引き箔のもので、引き箔を使った帯は全部絹の帯に比べて軽いので長時間締めると楽だと思います。意匠は帯屋捨松らしいペルシア模様ですね。着物の地色の焦げ茶に対して、帯は綺麗な青です。この配色は一見冒険ですが意外に合いますね。

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写真4番目は、坂下織物の袋帯「御門綴」シリーズの1本です。正倉院の複数の御物をコラージュして創った意匠です。上手く出来ているので本物の古典模様のようで、元のそれぞれの作品を知らないとコラージュだと気が付かないほどです。中心は華文なのでラスボス関係を狙っています。坂下織物は十数年前に廃業しており、今はさすがに見ることはありません。高級品専門で、「御門綴」シリーズは地は綴組織、模様は絵緯糸によるもので、裏には渡り糸が有ります。

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写真5番目は、龍村の袋帯「騎馬陶楽文」を合わせてみました。華文ではないですが、丸い形を重ねてみました。イラン・イラクあるいはシリアで出土するイスラム陶器の皿に取材したものです。実際の出土品の多くは銀化していますが、龍村のセンスで鮮やかな色によみがえっています。

かわいい女の子が馬に乗っているように見えますが、こんな意匠のイスラム陶器は加藤卓男のラスター彩や青釉の再現作品にによくありますね。
[ 2017/02/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「截金華文」の細部

第三千六百四十四回目は、一の橋の付下げ「截金華文」の細部です。

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いちばん上の写真は、各部の近接です。主要3か所の華文はあしらい刺繍があります。3か所とも外延を刺繍するのではなく、芯を刺繍しています。

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写真2番目は、各部の近接です。

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写真3番目は、各部の近接です。

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写真4番目は、各部の近接です。

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写真5番目は、各部の近接です。斜めから撮ってみました。芯の部分の刺繍の立体感がよくわかります。外延ではなく芯を立体化することで、模様が盛り上がるような感じに見せているのではないでしょうか。

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写真6番目は、各部の近接です。これも斜めからです。

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写真7番目は、各部の近接です。裏側から撮ってみました。金彩は裏に透らないので、友禅だけが見えています。意外にハンドペイント的な歪みがあって、そのために端正なだけでなく温かみもあるのです。最初に友禅でこういう状態を描いて、その上に金彩をして、さらに金糸の刺繍をして完成するわけです。
[ 2017/02/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「截金華文」

第三千六百四十三回目の作品として、一の橋の付下げ「截金華文」を紹介します。

三千三百八十三回(2016年5月15日)で紹介した一の橋の絵羽コートと同じ発想で、派生型として制作された付下げです。絵羽コートと違うところは、絵羽コートでは模様の大きさがすべて同じでしたが、付下げでは大小のメリハリがついています。といっても絵羽コートバージョンより模様が小さくなった箇所はないので、主要部分の模様が大きくなって訪問着的な体裁を整えたということです。

さて「截金(きりかね)」というタイトルですが、截金とは、金箔を細い線に切り、仏像・仏画に貼り付けて文様を表す技法です。日本の工芸の中でももっとも難度が高いもので、仏像の鑑定などするときは、金線模様が本来の截金か安易な金泥かということで室町より前かどうか鑑定の材料にすることもあります。最近、染織分野でも截金作家が制作したものもあるようですが、この作品の金線は截金のイメージということで、普通の金彩です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。前姿に模様は5つです。

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写真2番目は後姿です。後姿に模様は3つです。

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写真3番目は片袖です。もう片袖も同じような模様配置になっています。各袖に模様は2つです。

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写真4番目は胸です。胸に模様が2つあるのは豪華な訪問着みたいですが、そのかわり大きいバージョンではありません。

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写真5番目は各部の模様の近接です。

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写真6番目は各部の模様の近接です。

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写真7番目は各部の模様の近接です。この作品の意義は細部に有りますから、今日と明日、細部の近接を紹介します。
[ 2017/02/01 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)