龍村のシェル型のパーティーバッグ

第三千六百十一回目の作品として、龍村のシェル型のパーティーバッグを紹介します。

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いちばん上の写真は、「咸陽宮鱗文」を使ったバッグです。咸陽宮は秦の始皇帝の宮殿です。その後、川の対岸にもっと大きな宮殿を造り、それが阿房宮です。この鱗文はじつは中国の古代とは全く関係なく、その咸陽宮を描いた絵が永青文庫(細川家伝来の美術品を所蔵する)にあって、その表装に使われている裂ということです。

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写真2番目は、「咸陽宮鱗文」を使ったバッグの色違いです。

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写真3番目は、「早雲寺文台裂」を使ったバッグです。早雲寺とは箱根湯本にある北条早雲の菩提寺で、そこが所蔵する文台に貼ってある裂(名物裂)だそうです。元々は連歌師の宗祇の持ち物とか。

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写真4番目は、「早雲寺文台裂」を使ったバッグの色違いです。

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写真5番目は、「咸陽宮鱗文」を使ったバッグをモデルさんに持ってもらいました。年末なので、モデルさんに来てもらいました。

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写真6番目は、「早雲寺文台裂」を使ったバッグをモデルさんに持ってもらいました。

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写真7番目は、モデルさんにバッグの使い勝手を試してもらいました。
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[ 2016/12/31 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

織りだけで模様を表現した女児のお宮参りの着物

第三千六百十回目の作品として、織りだけで模様を表現した女児のお宮参りの着物を紹介します。

お宮参りの着物は、掛け着、熨斗目、お祝い着などいろいろな呼び方をします。掛け着というのは、着ないで掛けるだけだからですね。構造上の特徴は、背縫いが無く背中が1枚の布で出来ていることです。それが普通の着物との最大の違いで、そのために改造しても3歳の七五三までしか使えません。男児の場合は七五三は5歳なので、もう流用はできないわけです。

もう1つの特徴は、たいていおばあちゃんが抱いて、その上に掛けるので、背中が模様の中心になることです。普通の着物は前姿(マエミ+オクミ)が模様の中心になるので、そこが意匠上の大きな違いになります。

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いちばん上の写真は全体です。珍しい織だけで模様を表現したお宮参りの着物です。織というのは、地方の伝統的な紬でもないかぎり、現代では機械で織るわけですから、一定のロットがあります。一方で、少子化でお宮参りの着物も数が売れなくなっていますから、このような織りのお宮参りの着物というのは、企画しにくくなっているはずです。

このような作品を見ると、織りの技術はコンピュータがあるから何でもできるでしょうが、よく企画したなあと感心してしまいます。

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写真2番目は、裾の方の近接です。たとえば、鶴の模様を地紋にした白生地を織って、花嫁の色打掛の下地にしたり、お宮参りの着物を作ったり、ということはできますが、この着物は絵羽になっているために、サイズも模様の位置も決まっていて、お宮参りの着物以外に流用できません。

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写真3番目は、上の方の近接です。徐々に空のかなたに消えていく様子を表現しています。

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写真4番目は、もっと近接です。鶴の模様のパターンは、生地を金糸で埋めるもの、輪郭だけを金糸で表現するもの、陰影をつけるように翼の上面の光の当たる部分だけを金糸で埋めるものの3種類ですね。鶴の向きや大きさはさまざまで、1つの形を繰り返しているわけではありません。ちゃんと絵羽として設計されています。

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写真5番目は、もっともっと近接です。縫い目もちゃんとつながっています。完全にこの作品のために設計されているようです。採算が合うのか、他人事ながら心配になってしまいます。それとも最初、よほど高く売ったのでしょうか。

着る時は、背中に大きめの金糸の1つ紋を入れると良いですね。

千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせ

第三千六百九回目は、千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせです。

今日は染めの帯で合わせてみます。着物は友禅ですが、あまり絵画性も高くないので、絵画性の高い友禅の帯を合わせても、模様どうしが競争するようなことにはならないと思います。

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いちばん上の写真は、野口の友禅の染め帯を合わせてみました。実際に制作したのは岡本等さんです。岡本等さんはかなり前に亡くなっているので、作品を見ることは稀ですが、お洒落で華やかなイメージの強い野口らしさを創った重要な作家です。

正倉院御物をテーマにした作品で、着物の丸に対して水平方向の直線ですし、金彩も使って華やかなので、着物との相性はすごく良いです。

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写真2番目は、大羊居の染め帯「象のいる天国」を合わせてみました。正倉院御物はササン朝由来のものもあってエキゾチックですから、こんな帯も合うと思います。焦げ茶と青の配色は冒険ですが、成功するとかっこいいです。

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写真3番目は、大羊居の染め帯「更紗の苑」を合わせてみました。これのエキゾチックで合わせてみました。

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写真4番目は、ヤマト染芸の染め帯「孔雀更紗」を合わせてみました。ヤマト染芸は、東京友禅の工房です。大彦や千ぐさの影響を強く受けた作品でエキゾチックな雰囲気です。着物の模様が意匠的で抑制された表現なので、帯には具象的な温かみのある絵を持ってくるのもいいと思います。

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写真5番目は、大松(大彦の本家)の塩瀬の袋帯「鸚哥に花の丸」を合わせてみました。丸紋を重ねるところは賛否両論かもしれませんね。

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写真5番目は、北秀の塩瀬の袋帯を合わせてみました。上の帯合わせは賛否両論のきわどいものだったので、こちらは鉄板の帯合わせにしてみました。丸紋に対する水平の直線、多色に対する金彩、そしてどちらも同じ程度の装飾性です。
[ 2016/12/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせ

第三千六百八回目は、千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせです。

今回の着物は正倉院模様がテーマなので、帯も正倉院御物をテーマにして、意味的な統一感を持たせてみました。

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いちばん上の写真は、紫絋の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈」ですが、刺繍、挟纈など正倉院の染色品をいろいろ含んで、創作的にコラージュしています。

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写真2番目は、大西勇の袋帯「正倉院象文」を合わせてみました。正倉院御物である臈纈屏風に取材したものです。正倉院の染織品は、織物は精緻ですが、臈纈は素朴なタッチでそれが面白いです。この帯は織物ですが、臈纈の素朴な輪郭線を再現しています。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「木画狩猟錦」を合わせてみました。正倉院御物である「紫檀木画琵琶」の撥が当たる部分の意匠に取材したものです。正倉院御物の琵琶はいくつかあり、「五弦の琵琶」がいちばん有名なので、私も時々勘違いしてしまうのですが、これは別の琵琶、先日紹介したヴィトンのバッグそっくりの模様が有る琵琶もまた違う琵琶です。

「五弦の琵琶」の撥が当たる部分は、駱駝に胡人が乗っている絵の螺鈿で、それもまた龍村の帯の意匠になっています。またそれぞれの琵琶の裏側の模様も、すべて正倉院の華文として帯の意匠になっていますから紛らわしいですね。

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写真4番目は、龍村の光波帯「花鳥梅花文錦」を合わせてみました。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「獅噛太子」を合わせてみました。正確には正倉院御物ではなく、法隆寺裂である「太子間道」に取材したものです。獅噛の顔に見えるようにアレンジしたのは龍村です。

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写真6番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。正確には正倉院御物ではなく、法隆寺裂である「蜀江小幡」に使われている裂です。本歌は赤い裂ですが、着やすい色に変換してあります。

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写真3番目は、龍村の光波帯「太子菱繋菱文」を合わせてみました。ちょっと見ただけではわかりませんが、じつは上の写真と同じ「蜀江小幡」に取材したものです。アレンジが違うとかなり違って見えるものですね。
[ 2016/12/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせ

第三千六百七回目は、千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の帯合わせです。

今日は龍村の間道で合わせてみます。着物の模様は丸ですから帯は直線にすれば互いに補完し合ってバランスが良いと思います。また今回の着物は、正倉院という格の高いテーマですが、あっさりとした表現で軽さもあります。間道の帯も、名物裂と思えば格が高いですが、縞と思えば粋です。どちらも似た立場でもあるんですね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。「手」というのは、完全な再現ではないという意味です。「海老殻間道」の本歌はけっこうきつい配色で、この帯は上品に変換されています。青系と茶系が両方並んでいるところが個性ですね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「彩香間道」を合わせてみました。龍村の間道は、じつはすべて名物裂にある間道を参考にしていて、必ず似たものがあります。しかし、この作品のように本歌をたどることができないオリジナルのネーミングをしたものと、本歌を彷彿とさせるようなタイトルを付けたものとがあります。その差はおそらく、すでに高島屋や三越の専用商品として発売されているものがあって、それが名物裂にちなむタイトルがついている時に、それと重ならないように微妙に色の並び方を変え、ネーミングもオリジナルなものにするのだと思います。マーケティング用語でいえば販売チャネル政策ですね。

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写真3番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。「彩香」「清風」「郁芳」「ちとせ」のような、綺麗だけど具体的な意味がないタイトルは、本来は名物裂の間道由来のものながら、その名物裂にちなむタイトルはすでに百貨店専用品として使用しているため、やむなく付けているタイトルです。

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写真4番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。着物の地色が焦げ茶色なので、紺系の帯は合わないのではないかと思われましたが、けっこう合っています。それどころか、着物に関しても色に関しても上級者の感じさえします。

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写真5番目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」を合わせてみました。上で成功したので、また紺系を合わせてみました。

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写真6番目は、龍村の光波帯「日野間道手」を合わせてみました。「光波帯」は仕立て上がり名古屋帯のことです。「光波」とは初代平蔵の雅号で、俳句が得意だったので俳号でもあるようです。そのため龍村の一族では「光」の付く雅号を持つ人が多く、「光翔」、「光峯」などがいます。帯端のロゴで見たことがある方もいらっしゃるのでは②でしょうか。

日野間道は、高島屋専用の「平蔵」ブランドと、光波帯のシリーズとにあります。値段は相当違いますけど。
[ 2016/12/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の細部

第三千六百六回目は、千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際に制作したのは藤岡さん)の細部です。

模様の数は、前姿に3個、後姿に2個、胸に1個、袖に2個、もう片方の袖に1個の計9個です。模様はここに紹介する5種類で、重複しているものもあります。

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いちばん上の写真は、オクミにある模様です。ヴィトンのバッグの模様に似ていることで有名な正倉院の琵琶の裏側の模様です。興味のある方は、参考にご覧ください。
https://matome.naver.jp/odai/2144051938410987301

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写真2番目は、後姿の背中心に有る模様です。

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写真3番目は、マエミの下の方にある模様です。

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写真4番目は、マエミの下の方にある模様です。これは袖の模様と共通です。

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写真5番目は、後姿の模様です。これは袖の模様と共通です。

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写真6番目は、野口の付下げで参考図版です。糸目に色糊を使った例で、通常の友禅と併用して作品を華やかにしています。よく見ると模様内部の挿し色と色糊の色は同系色の濃淡の関係になっています。それによって華やかにしつつ上品なんですね。

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写真7番目は、かつて近藤伝で仕入れた訪問着で、参考図版です。糸目に色糊を使った例で、通常の友禅と併用して作品を地味にしています。友禅作品というのは、たいてい琳派などの元絵を写しているわけですが、元絵は当然糸目の線はありません。琳派の雰囲気をそのまま再現しようと思えば糸目の白い輪郭線は邪魔になります。そこで、着物の地色と同系色の色糊を使うことで糸目を見えにくくするという方法があります。

この2つの作例は、いずれも通常の友禅作品に色糊を併用したものです。しかし今回の作品は色糊を主役にし、それだけで作品としたということで斬新でもあります。
[ 2016/12/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」(実際の制作は藤岡さん)

第三千六百五回目は、千切屋治兵衛の付下げ「丸取正倉院模様」を紹介します。実際に制作したのは藤岡さんです。

手描き友禅の技法の一種である色糊(写し糊)を使った作品です。色糊(写し糊)は、明治時代に広瀬治助(屋号は備後屋)が発明した技法です。それは型友禅を染めるための必須の技法で、そのおかげで千總が百貨店を通して中間層に多色の着物を売りまくり日本を代表するメーカーになりました。

近代になると全国に鉄道が敷設され、各地に地方中心都市が生まれました。そこに三越や高島屋が支店を作り、新たに生まれた中間層に着物を売りました。すべての中間層に行き渡るためには手描き友禅は生産が間に合わず、多色の友禅を型染する必要があったのです。

友禅の糊というのは、染める技法ではなく染めないための技法です。糊を置くことで防染して模様の形を白抜き状態にするのが目的です。御所解模様の小袖をみると、模様は白抜きで、色糸の刺繍で色を加えています。また多色の友禅のばあいは、模様を描いたところに糊を被せて地染めを影響させないようにしています。

色糊というのは、友禅の糊に染料を混ぜるものです。染料を混ぜた糊を生地に置き、その後、糊を洗い流すと染料だけが生地に定着するのです。混ぜるだけのことのようですが、化学染料でないとできないので、江戸時代にはできなかったのです。また従来の糊は染めないためのものですが、色糊は染めるための糊ですから、発想の大転換と言えます。

江戸時代にも型染はありましたが、いちいち藍甕に浸けて加熱などするものですから、多色は染められなかったのです。この色糊の発明により、連続して多色を染め一度に水洗できるようになったのでした。しかし、色糊は型友禅に使われるだけでなく、手描き友禅にも使われます。糊で防染するのではなく染めることができるので、写生的な風景を描いたりするのに便利です。またこの作品のように、糸目糊に染料を入れることで輪郭線を多色に出来るのです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は、もう片方の袖です。

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写真5番目は胸です。
[ 2016/12/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせ

第三千六百四回目は、一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせです。

今日は染め帯で帯合わせをしています。染め帯は友禅染が多く、絵画性・物語性が高いですから、着物に不足している物語的な展開を帯で補完してみます。

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いちばん上の写真は、野口の縮緬地の名古屋帯を合わせてみました。御所解模様を写したもので、格の高い雰囲気の模様ですから、名古屋帯でもフォーマル度が高いですね。葉の葉脈は糸目友禅、牡丹の花の輪郭は墨描きですが、これは江戸時代の小袖の様式を忠実に再現したものです。

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写真2番目は、花也の塩瀬の名古屋帯「斜線椿」を合わせてみました。友禅を使っていない着物に対し、帯で友禅染を補完しているわけですが、同時に、花の無い着物に対し帯で花を足しています。

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写真3番目は、花也の塩瀬の名古屋帯「湊取り琳派梅松」を合わせてみました。先日も使いましたが、今日もまた使ってしまいました。名古屋帯としては存在感が有りすぎる重い友禅ですが、意外に使いやすいです。

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写真4番目は、羽田登喜男の名古屋帯「鴛鴦」を合わせてみました。かつてすごく流行った羽田登喜男の鴛鴦の帯です。価値あるもののはずですが、昔売りすぎたためか、今ネットで中古が売られているのが目につきます。後期のものは、鴛鴦に花もついていたりしてサービスが良いですが、これは人間国宝になってすぐのものなのでシンプルです。

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写真5番目は、木村雨山の塩瀬の名古屋帯「立山連峰」を合わせてみました。胡粉を多用し油絵風のタッチにした作品です。普通の木村雨山の作品は加賀友禅ですが、日展に出品した衝立などのインテリアには、このようなタッチのものがあります。胡粉を多用すると生地が硬くなって着物には向かないですが、これはお太鼓柄の帯なので大丈夫なのでしょう。

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写真6番目は、花也の塩瀬の名古屋帯「丸華文」を合わせてみました。ゴム糸目で防染して白抜きの華文を描き、そこに樹脂系顔料で彩色し、さらにその顔料と同色の漆糸で面を覆うように刺繍しています。いつもの糊糸目友禅ではなく、変則的な技法を使っているのはグラデーションを完璧に描くためでしょう。

着物にも帯にも友禅を使わず、着物も帯も絵画性・物語性が高くない帯合わせです。着物に足りないものを帯で補完するという発想ではなく、着物の傾向を帯でさらに強める帯合わせも有ります。
[ 2016/12/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせ

第三千六百三回目は、一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせです。

昨日は織悦で合わせましたが、今日は自由に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。私がもしこの着物を着るなら、何も考えず龍村の間道を合わせてしまうでしょう。何も考えず合わせたとしても、着物の達人に見えるのが長所、そんなことばかりしていると帯合わせの工夫をしなくなってしまうのが短所です。

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写真2番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。やはり龍村の間道を合わせていますが、上よりさらに色数が絞られて、粋な感じが増しています。

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写真3番目は、河合美術の袋帯「能寿立枠八方華文」を合わせてみました。先日紹介した、7万円の万能帯を合わせてみました。ぴったり合って、100万円でも7万円でも効果は変わらない気がします。それだけ意匠が上手とも言えるし、西陣も苦労してるなあ、とも言えますね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。柳は水辺に生えるものですが、それは昨日の「光琳水」にこそふさわしく、こんな荒波が渦巻く大洋ではないですよね。しかし江戸時代の有名な小袖に、杜若と海の激しい波頭を合わせたものがあり、龍村の名古屋帯の意匠にもなっているので、私もちょっと試してみました。

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写真5番目は、大西勇の袋帯「春秋薫花文」を合わせてみました。振袖にも使える多色の派手な帯ですが、模様の草花模様が意外に小さいことに着目し、同じく多色の柳の葉の大きさにもシンクロするのではないかと思い、合わせてみました。

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写真6番目は、帯屋捨松の袋帯「ヴィクトリア花文」を合わせてみました。風に揺れる風情とは正反対のエキゾチックなテーマを合わせてみました。柳の葉は意外に多色ですから、こんな華やかな帯も意外に使えるのではないかと・・・
[ 2016/12/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせ

第三千六百二回目は、一の橋の付下げ「金霞に柳」の帯合わせです。

今日は織悦の袋帯と合わせてみました。上品で洗練されている作品ですから、西陣でいちばん上品で洗練されていると思われる帯のブランドを合わせてみました。ただし上品とか洗練とか、そういうことだけが芸術の条件ではないですよね。下品で粗野でも芸術的ということはありますから。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「厳島彩絵鳥蝶花文」を合わせてみました。まず模様の意味を考えてみて、柳の相手に鳥を選んで花鳥にしてみました。土佐光起の屏風のように燕ならなお良いのですが、うちには今、燕の在庫はありませんでした。

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写真2番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。これも模様の意味を考えたもので、柳は水辺に生えているものですから、水をテーマに合わせてみました。

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写真3番目は、織悦の袋帯「扇子霞文」を合わせてみました。これも模様の意味を考えていて、着物の模様に霞があるので、霞をつなげて、霞を背景に柳と扇子があるように見せてみました。

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写真4番目は、織悦の袋帯「彩悦錦枝菊吉甲(亀甲)地紋」を合わせてみました。「彩悦錦」とは織悦の帯のうち、唐織のように絵緯糸を浮かしたシリーズに付けられた名前です。

ここでは模様の意味や季節を考えない帯合わせをしてみました。意味や季節を考えないで良い帯合わせとは、正倉院模様、有職文様あるいは名物裂のように格式のある伝統文様をテーマにした帯を合わせることです。このばあいは柳に菊の模様を合わせたわけではなく、有職織物である二陪織物を合わせたつもりです。

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写真5番目は、織悦の袋帯「織悦錦料紙文山川能宣集」を合わせてみました。これも意味や季節にとらわれない帯合わせで、王朝文化の道長取り文様を合わせています。

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写真6番目は、織悦の袋帯「ペルシア巻花蔓」を合わせてみました。意味や季節にとらわれない帯合わせという考え方を一歩進めて、エキゾチックなテーマを合わせてみました。
[ 2016/12/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金霞に柳」の細部(実際の制作は倉部さん)

第三千六百一回目は、一の橋の付下げ「金霞に柳」の細部です。実際に制作したのは倉部さんです。

今日は細部です。今回の作品は、柳という1つのテーマで物語的に展開していくことはありません。土佐光起の屏風のように柳に燕や水の流れを加えたりすれば、絵に動きも出ますし、物語性も加わりますが、そういう要素は避けシンプルに徹しています。作品自体が美しいので、余計な要素は要らないのでしょう。芸人さんだといつも何かしゃべらないとギャラがもらえませんが、美人の女優さんならいるだけでギャラがもらえますものね。

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いちばん上の写真は、前姿の上の方にある柳の近接です。マエミとオクミの縫い目にあります。柳の枝の揺らぎと霞のグラデーションが連動して、風が吹いているように感じます。シンプルな図案に見えますが、必要最低限の所作で、空気の動きも表現しているわけです。

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写真2番目は、前姿の上の方にある柳にさらに近接してみました。濃い地の背景に自然に反する装飾的な葉の色のために、舞台の背景のようにも見えます。

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写真3番目は、マエミの下の方にある柳です。

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写真4番目は、後姿にある柳です。背中心の縫い目にあります。

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写真5番目は裏側です。金描きは友禅と違って裏に透らないので、裏から見ると刺繍だけが見えます。この写真を見ると、いつものバラエティに富んだ技法を使っている倉部さんと違って、1つの技法だけで刺繍されていることがわかります。もちろん技法は単純でも1つ1つはとても精緻で上品です。

倉部さんの作品である以上、精緻で上品なのは当然ですから、この作品の意義は配色の上手さですね。

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写真6番目は、「きものSalon」に掲載されている写真風に斜めから撮ってみました。
[ 2016/12/21 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金霞に柳」(実際の制作は倉部さん)

第三千六百回目の作品として、一の橋の付下げ「金霞に柳」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

「きものSalon16-17秋冬号」の082ページで特集されている作品です。刺繍について書かれている記事で、職人さんである角谷義和という方が紹介されていて、この作品を制作している途中の写真も掲載されています。記事の内容では、角谷さんが一の橋から依頼されて仕事をしているように書かれていますが、実際には倉部さんを通して仕事をしています。

伝統工芸について書いた本では、問屋(メーカーを兼ねている)と職人だけが存在するような書き方をしていて、悉皆屋の存在が無いことにされているのが普通です。悉皆屋というシステムを理解できず、製造段階にありながら実際に手を動かさない人を搾取者のように思っているのでしょうね。しかし着物の良し悪しを決めるのは悉皆屋です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2016/12/20 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせ

第三千五百九十九回目は、河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせです。

今日も振袖に合わせてみました。付下げや訪問着にも合わせてみようと思いましたが、わざわざ合わせなくても合うことはわかっていますので、今回は意外性のある振袖だけにします。

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いちばん上の写真は、岡重の手描きの振袖に合わせてみました。岡重がかつて作って手描き友禅の振袖です。基本のモチーフは古典でありながら、モダンなタッチに変換しています。

また模様自体がとても大きく、余白を大胆にとっています。それによってモダンな雰囲気になるとともに、手描きの手間を減らし価格を下げてもいるのです。全体を埋めるように手描きで模様を描いたら数百万円になってしまいますから。それは、手挿しと手描きの見分けのポイントでもあって、全体の面積を埋めるように模様が有って100万円以下であれば、手描きに見えてもそれは手挿しです。

100万円以下でホンモノの手描きであれば、この振袖のように余白部分が多いはずです。余白を多くとって、絵が寂しくなるか、華やかさを維持できるか、それは図案家の才能次第ですね。実際に人が羽織ってみないとわからないですから、絵が上手いだけではなく、着物の意匠として勉強していないとわかりません。

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写真2番目は、岡重の手描きの振袖に合わせてみました。上と同シリーズの1枚です。

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写真3番目は、岡重の手挿しの振袖に合わせてみました。手挿しの着尺(小紋)のうち、わりと大きい模様のものを、通常の1,3倍の長さ(3丈→4丈)に染め、振袖にしてみました。模様はつながりません。成人式の時は、ちょっと地味と思うかもしれませんが、25歳ぐらいになって、友達の結婚式に行くときは、おしゃれなパーティー着になります。

また、袖を着ると、元の小紋に戻るので、40歳ぐらいまで着られます。

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写真4番目は、手描きとおそらく手挿しも併用されている振袖に合わせてみました。普通の問屋で仕入れたものなので、誰がつくったのかわかりませんが、京都の悉皆屋さんが真面目につくったものです。技法は基本は手描きですが、一部に手挿しを併用するようなこともあるかもしれません。

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写真5番目は、大羊居の振袖に合わせてみました。7万円という値段を付けた帯ですが、2桁ちがう高級品の帯でも合っています。そのこと自体すごいことだと思いますが、意匠は古典でありふれていても、配色の上手さとか、西陣の老舗としての河合美術のセンスのおかげでしょう。

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写真6番目は、野口の振袖に合わせてみました。江戸時代後期に流行った瀧模様の小袖に取材した振袖です。模様自体はほぼ小袖のパターンを踏襲していますが、色が鮮やかでモダンな雰囲気になっています。黒地に対し、滝の青のグラデーション、赤の桜楓のコントラストが、古典らしい雰囲気を吹き飛ばしていて痛快です。
[ 2016/12/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせ

第三千五百九十八回目は、河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせです。

今日も振袖に合わせてみました。たまに振袖の問い合わせもありますので、機会があるときに、在庫の振袖も披露しておきたいと思います。絞りの振袖を中心に集めてあります。

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いちばん上の写真は、藤井絞の振袖を合わせてみました。絞りの産地でいちばん有名なのは、有松(愛知県)ですが、藤井絞は京都の絞りです。有松の絞りは全体が疋田で埋められているようなものが多いですが、京都の絞りは絞り自体の面積は少なく余白がある意匠が多いです。

そのかわり1つ1つの絞りが辻が花的に形を表現しています。また京友禅の職人と一緒の産地にいるということで、色も京友禅的ですね。梅だけにテーマを絞ったこの作品もそうですが、意匠も優れています。どちらかというと手間を積み重ねるというよりは、頭を使った感じです。そのことが優れている点は、外国に外注することも意義が少なく、今も京都市内で作られているということです。

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写真2番目は、竹田庄九郎の振袖を合わせてみました。百貨店などでも売られている標準的なものです。木綿の糸で4巻きされていると言われます。有松絞の創始者の名を取った「竹田庄九郎」というブランドは、竹田嘉兵衛という有松を代表する会社のブランドです。「藤娘きぬたや」というのも有名ですが、それも有松のブランドです。

多色で全体を絞りで埋めた振袖は、最近は福原愛さんが着ていましたよね。あれは藤娘きぬたや製だそうです。

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写真3番目は、竹田庄九郎の振袖を合わせてみました。本疋田といわれるもので、中心のポチが小さく立体的なのが特徴ですが、絹糸で多数巻きされているからです。普通のものより値段がかなり高く、単色が多いですね。

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写真4番目は、佐藤昭人の阿波藍を使った絞りの振袖を合わせてみました。藍のすくもを作ったのは阿波藍の佐藤昭人さん、絞りが竹田庄九郎、染は阿波の矢野工場と思います。藍染の600年展という展覧会で、イメージ作品として中央に展示されていたものです。意匠は、孔雀が1羽だけです。

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写真5番目は、松井青々の振袖を合わせてみました。バブル時代に大人気だった松井青々のバブル時代の文化を代表するような作品です。全体は桶絞りで、友禅と箔も加えたもの。バブル時代というと成金的な作品のように思うかもしれませんが、実物は豪華で上品です。どの文化に属するものでも、頂点にあるものは上品なものですね。
[ 2016/12/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせ

第三千五百九十七回目は、河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯合わせです。

今日は振袖に合わせてみました。細かい模様なので、振袖に合わせるというのは意外だと思います。振袖用の帯というのは、もっと大きい模様で、色も派手かそうでなければ全面金色ですから。しかし、振袖の着付けの仕方というのは、たいてい着付け師が変わり結びのようなものをしたがって、模様なんてほとんど見えないんですよね。色さえ振袖と合っていて上品ならばいいのではないでしょうか。今回は白地に金の光沢がある地なので、上品な振袖ならばたいていは合うと思います。

本来模様が細かくて振袖以外の着物に合うものですから、成人式が終わった後も70歳ぐらいまで使えて合理的です。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の振袖に合わせてみました。手挿(糸目型ともいい、輪郭のみ型で、染は手描きによる。手描きと全く変わらないが、色違いが複数つくられるため、日本のどこかで同じものの色違いを着ている人がいる。)によるもので、一定量が継続的につくられる標準品です。

作品は、全体が石畳模様(市松模様)で、中の模様は琳派のモチーフを並べてあります。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の振袖に合わせてみました。手挿によるもので、一定量が継続的につくられる標準品です。作品は、慶長時代の小袖に取材したもので、本歌は総刺繍の重い作品ですが、ここでは友禅になっています。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の振袖に合わせてみました。手挿によるもので、一定量が継続的につくられる標準品です。作品は琳派の草花文様に取材していて、昔、鈴乃屋の本店が上野にあった時代、本店の上客向けに企画されたものではないかと思います。何かの事情で一般の専門店向きに流れたのでしょう。札に「鈴乃屋本部」とメモ書きがあったので。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の振袖に合わせてみました。手挿によるもので、一定量が継続的につくられる標準品です。作品は、全体が石畳模様(市松模様)で、中の模様は鴛鴦です。背景が市松でないバージョンもあったので、はじめは鴛鴦だけで作られ、のちに背景を市松にしたバリエーションがつくられたのだと思います。手挿しというのは、そういうバリエーション進化があるのです。

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写真5番目は、千總の振袖に合わせてみました。手描きの高級品です。百貨店で180万円+消費税で販売されるバージョン。千總は百貨店で販売されることが多いので、参考上代が明示されています。外商が持って歩く場合、交渉次第でもっと安くなるのでしょうか?大きなお世話ですね。当社の販売価格は書けません。

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写真6番目は、千總の振袖に合わせてみました。手描きの高級品です。百貨店で150万円+消費税で販売されるバージョン。千總は百貨店で販売されることが多いので、参考上代が明示されています。外商が持って歩く場合、交渉次第でもっと安くなるのでしょうか?大きなお世話ですね。当社の販売価格は書けません。

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写真7番目は、千總の振袖に合わせてみました。手挿によるもので、一定量が継続的につくられる標準品です。百貨店で78万円+消費税で販売されるバージョン。千總は百貨店で販売されることが多いので、参考上代が明示されています。外商が持って歩く場合、交渉次第でもっと安くなるのでしょうか?大きなお世話ですね。当社の販売価格は書けません。
[ 2016/12/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」

第三千五百九十六回目の作品として、河合美術の袋帯「能寿蜀江天平華文」と「能寿新立枠(立涌)八方華文」を紹介します。

白地で細かい模様のフォーマルとして使いやすい袋帯です。それぞれタイトルを見ると、一方は「蜀江」とあるので古代から明まで織られ続け、中国の文化を代表するような蜀江錦、もう一方は「立枠(立涌)」とあるので海から水蒸気が沸く雄大な景色を模様にした日本オリジナルの有職文様だとわかります。それぞれの文化を代表する意匠をベースにして、華文を加えてシリーズとしてつくられた帯でしょう。おそらく2種類だけでなく、いろんな国を代表する文様を加えて複数つくられたのでしょう。

このような格調高い意匠の使いやすいフォーマル帯で、河合美術織物という一流メーカーの帯であれば、かつては30万円ぐらいするのが普通だったでしょう。しかし私は、先日この2本の帯を予想外に安く買いました。それで喜んでいたら、これと同じものが「京都きもの市場」で75,600円で売られているのを見て、がっかりしてしまいました。

西陣の帯の商売というのは、ネットが始まってから難しくなりました。良い帯だと思って仕入れても、家に帰って検索してみるとじつはネットで安く売られていた、なんてことの繰り返しです。しかし、私が困っている以上に西陣の織屋も困っているでしょうね。この帯に関しては、私はしかたがないので税込み7万円で売ろうと思っています。損はしないです、まあ普通にしか儲からないというところです。

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いちばん上の写真は、「能寿蜀江天平華文」の帯の幅を写真の幅として撮ったものです。白地で光沢のある生地で、色はピンク、紫、黄緑、水色、朱がありますから、どんな着物の色にも合います。多色ですが色は淡く上品ですよね。色はかわいいですが模様は細かいので、若い人から年輩まで使えます。使い勝手という意味では最高の帯だと思います。

欠点としては、みんなに合いすぎて個性がないところでしょうか。こういう帯は着物が好きな人ではなく、着物は好きでないが、世間で批判されないで長く使える帯を1本だけ買いたい、という人に向いています。値段も7万円ならちょうど良いです。

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写真2番目は、「能寿蜀江天平華文」の近接です。こうしてみると、蜀江錦のパターンですよね。「天平華文」というタイトルもついているので、中の華文は正倉院文様なのでしょう。「能寿」の意味は分かりませんが、能衣装のイメージでしょうか。たしかに能衣装にもこういう裂は使われています。

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写真3番目は、「能寿蜀江天平華文」の拡大です。白地でありながら全体に光沢があるのは、絵緯糸として全体に平金糸が通っているからです。凝った作り方をしていて、決して安物ではないのです。

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写真4番目は、「能寿新立枠(立涌)八方華文」の帯の幅を写真の幅として撮ったものです。配色や全体のイメージは上の帯と一緒です。使い勝手もターゲットとする顧客も同じですね。

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写真5番目は、「能寿新立枠(立涌)八方華文」の近接です。こうしてみると伝統的な立沸文です。中の模様は「八方華文」というタイトル通り、八陵華文です。この帯のタイトルも「能寿」とありますが、能衣装にもこういう裂は使われています。

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写真6番目は、「能寿新立枠(立涌)八方華文」の拡大です。こちらも全体に平金糸が使われ、手抜きの帯ではありません。こういうのが高く売れれば西陣も栄えるのでしょうが、ネットでの価格競争に巻き込まれて気の毒です。
[ 2016/12/16 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせ

第三千五百九十五回目は、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせです。

今日は染めの帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、東京の刺繍と堰出しの疋田の帯を合わせてみました。堰出しの疋田とは、絞りの疋田でも描き疋田でも型疋田でもなく、糊筒で1粒ずつ糊を置いていく疋田です。職人さんはみな巧みですから、疋田の列が乱れるようなことはありませんが、1粒ずつ置くことで微妙な揺らぎがあれば、それが手仕事の味わいということになるでしょう。実際には見えるほど揺らぐことはないですが。

刺繍と堰出しの疋田を合わせるのは、かつての千代田染繍の黒留袖の様式を思わせますが、今回の作品は黒留袖のミニチュアのような意匠です。着物は友禅なので、友禅以外の技法の帯を合わせるとともに、付下げに合わせるために名古屋帯ながら模様もフォーマルなものを選んでみました。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の友禅と型疋田の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。春の模様の着物に雪の模様の帯を合わせることで、季節をちょっと戻し早春のコーディネートにしてみました。着物は友禅で絵画性が高いですから、帯は絵画性の低いものを選んでみました。

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写真3番目は、花也の友禅と箔と刺繍の名古屋帯を合わせてみました。中井淳夫さんの作風を引き継ぐもので、実際に作業をした職人さんも同じでしょう。茶色く見える霞部分は、友禅できつい赤茶色に染められていて、その上を箔で覆って色を抑えています。さらのその上に縁蓋でシダを描き、さらに金糸の刺繍を加えています。着物は友禅ですから、帯は箔と金糸の刺繍という金色で合わせてみました。

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写真4番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。これも中井淳夫さんの作風を引き継ぐもので、実際に作業をした職人さんも同じでしょう。千切屋治兵衛の友禅と型疋田の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。友禅に友禅を重ねる帯合わせですし、さらに桜に梅を重ねるということで、けっこう無茶をしています。それでもそれほど違和感がないならば、それは中井さんの甥と中井さんの職人さんのおかげですから、やはり中井さんのおかげですね。。

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写真5番目は、野口の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは橋村重彦さんです。橋村さんはかつて中井淳夫さんの彩色担当ですから、これも中井を引き継ぐ作風です。絵画性の高い友禅の着物に、さらに絵画性の高い友禅の帯を合わせるという強引な帯合わせです。
[ 2016/12/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせ

第三千五百九十四回目は、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせです。

今日は龍村の名古屋帯で合わせてみました。昨日のルールと同じで、季節が違ったり重ねすぎたりしないものを選んでみました。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「双鳥繍華文」を合わせてみました。着物が草花文なので、鳥を合わせ花鳥をつくってみました。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「よせこぎれ」を合わせてみました。名物裂を貼り混ぜた屏風などは昔からありますが、それを模したものです。もちろんこの作品は1つの織物で、複数の裂を貼り混ぜたものではありません。世間では龍村裂のバッグなどと言って、≫複数の龍村の裂を本当に貼り混ぜたものもありますね。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「木画狩猟文」を合わせてみました。正倉院にある五弦の琵琶の撥が当たるところは、木の象嵌になっています。その部分の模様に取材したものです。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「芳彩」を合わせてみました。パステルカラーのポリエシテルフィルムで織られたもので、文様自体は伝統的なものですが、モダンな雰囲気になっています。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「投壺矢」を合わせてみました。弓矢は殺生に使われる道具なので、茶事などでは嫌われることもあると思います。これは投壺矢という壺に矢を投げ入れるダーツのようなゲームに使われる矢で、それをタイトルにも明示することで、殺生に関係ないということを示しています。

着物の意匠に弓矢を描くときは、鏃を描かなかったり、「破魔矢」「鏑矢」などとタイトルを付けて、殺生とは関係ないよ、と示すことが多いです。それも図案のテクニックですね。
[ 2016/12/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせ

第三千五百九十三回目は、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の帯合わせです。

今回のように季節をテーマにした作品の帯合わせは、意外に難しいところが有ります。紅葉のように明らかに秋のテーマの帯を合わせたら、春と秋が同居して季節が矛盾してしまいます。同じ話をしているのに最初と最後で趣旨が反対になっているボケた人みたいですよね。

帯の意匠も春のテーマに統一すれば良さそうですが、そうすると今度はしつこくなって、同じことを2度ずつ言うボケた人みたいになってしまいます。どちらも上手くいかない、ではどうすればいいかと言えば、関係ないものを合わせるしかありません。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「彩香間道」を合わせてみました。季節に関係ないものの筆頭と言えば、間道でしょう。色の組み合わせで、暖色・寒色ぐらいの違いはありますから、赤みのある間道を選んでみました。

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写真2番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。「杉本泰子」と織り手の名前も入ったスペシャルな1本です。季節に関係ないものとして間道の次に斜線を選んでみました。シンプルに見えますが、引き箔はホンモノで、西陣の伝統そのもののような帯です。

「おび弘」というのは、あの池口さんのブランドで、証紙番号も佐波理つづれと同じです。

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写真3番目は、北村武資の袋帯「七宝連珠文」を合わせてみました。人間国宝北村武資の作品で、作品はいつも上代裂、名物裂、有職織物にちなんだものですから、季節ものではありません。連珠文は、模様の周りを珠の模様で囲ったもので、古代にユーラシア各地(スペイン~奈良まで)に見られるものです。

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写真4番目は、紋屋井関の袋帯「御寮織」シリーズの1本「正倉院象唐草文」を合わせてみました。正倉院にある聖武天皇が使った碁石入れをテーマのしたものです。碁石入れは白黒用に2個あるわけですが、それが象と鸚哥になっているという、すごくお洒落なものです。正倉院文様というのは、季節もなく便利ですね。

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写真5番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。波の模様もまた季節が無いですよね。

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写真6番目は、織悦の袋帯「遠山桜楓文」を合わせてみました。今までは季節のあるものを避けてきましたが、今回は春秋両方の季節のあるものを合わせてみました。
[ 2016/12/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の細部

第三千五百九十二回目は、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の細部です。

今日は桜以外の植物に近接してみました。いずれの植物も本当の写生ではなく、琳派の花鳥画などに取材して、その様式を踏襲しています。現実の今の日本人が、着物の模様として親しみを感じるのは、本物の自然描写ではなく、琳派や四条派程度のリアリティではないでしょうか。

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いちばん上の写真は、ツクシとスミレとカラスノエンドウが見えます。

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写真2番目は、スミレとフキです。フキはふきのとうが描いてないので、ちょっとわかりにくいです。

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写真3番目は、タンポポとスギナです。

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写真4番目は、フキとスミレとスギナ(ツクシ)とワラビが見えます。

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写真5番目は、カラスノエンドウがよくわかるところを撮ってみました。くるっと回った先端から蔓植物だとわかります。私もここを判断材料にしました。
[ 2016/12/12 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の細部

第三千五百九十一回目は、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)の細部です。

今日は桜に近接してみました。桜の木はいずれも立派な大木と思いますが、そのわりに花ばかりが大きくて不自然です。江戸時代のの小袖の意匠として描かれた桜には、このような不自然な比率のものがあり、その様式をそのまま踏襲しているものと思います。

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いちばん上の写真は、前姿の上の方にある桜を近接で撮ってみました。マエミとオクミとの縫い目にかかっています。幹を見ると年を経た老木のような描き方をしているだけに、草花のような比率の花の不自然さが目立ちます。巧みに育てられた盆栽みたいですよね。

自然の本当の姿より過去の様式を重視する粉本主義的な姿勢で描くことで、画面が写生ではなく装飾になりますね。その一方で、他の植物が写生的に描かれていたりすると、写生と装飾が混じって、現実なのか夢なのかわからない独特の世界になります。江戸時代の友禅師も、この作品の作者(中井亮さん)も、あえてそれを狙っているんだと思います。見るものとしては、承知して騙されればいいのではないでしょうか。

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写真2番目は、上の写真の桜の花の部分に近接してみました。上の写真ではみ出してしまった部分です。

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写真3番目は、前姿の下の方にある桜を近接で撮ってみました。マエミにあります。

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写真4番目は、後姿の桜に近接してみました。

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写真5番目は、袖の桜に近接してみました。
[ 2016/12/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「春草木」(実際の制作は中井亮さん)

第三千五百九十回目として、千切屋治兵衛の付下げ「春草木」を紹介します。実際に制作したのは、中井亮さんです。

当店が付下げや訪問着を仕入れる時の基準は、モノが良いこと(手描きの友禅であること、絵として上手いこと、洗練されていること)が全てですが、結果として秋の模様ばかりが溜まってしまっています。秋のテーマの方が優れた作品がが生まれやすいのでしょうか。

春の作品で絵としてすごいなあと思うのは、たいてい梅か桜の単一のテーマのもので、なんとなく春に咲く複数の植物を描いたもので、すごく上手いというものは印象にない気がします。アンナカレーニナの冒頭には、「幸福な家庭はどこも同じだが不幸な家庭なそれぞれである」とあり、不幸な家庭でないと小説の題材にならないようですが、自然の描写でも、盛っていく春よりも落ちていく秋の方が芸術作品の素材になりやすいのでしょうか。

今日は、中井淳夫さんの甥にあたる亮さんの、複数の春の植物をテーマにしつつ、本格的な鑑賞に堪えるという珍しい作品です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖の片方です。

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写真4番目は胸です。京友禅の付下げとしては珍しく胸の模様にも刺繍(あしらい)があります。模様が縫い目を越えて衿に届くかどうかですが、桜の枝は縫い目を越えませんが、スギナが縫い目を越えて生えています。
[ 2016/12/10 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

高野松山の堆朱の帯留の帯合わせ

第三千五百八十九回目は、高野松山の堆朱の帯留の帯合わせです。

ずっと続けていたいところですが、そろそろ終わりにしてまた呉服屋さんに戻らないといけませんね。今日は使い残し画像です。

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いちばん上の写真は、花也の名古屋帯「湊取りに琳派松梅」に合わせてみました。ここで見えるのは観世水で、「湊取りに琳派松梅」というタイトルからは想像できませんが、お太鼓と腹文の片方が「湊取りに琳派松梅」で、もう片方はあっさりと水模様で、選べるようになっています。

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写真2番目は、花也の名古屋帯「霞取り羊歯文」に合わせてみました。赤茶色のきつい色の友禅で霞が描かれ、その上に箔が置かれ色がやわらげられています。金箔は本来は画面を派手にするために使われるものですが、ここでは画面を地味にするのに使われています。さらにその金の上にさらに金描きでシダが描かれています。羊歯がくっきりしているのは縁蓋を使っているからです。このような複雑な技法は中井淳夫さん由来のものですね。

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写真3番目は、花也の名古屋帯「梅松文」に合わせてみました。ダンマル描きで梅と松が描かれ、その上に縁蓋を使って金箔がされています。ダンマル描きというのは写生的に使われることが多いのですが、金箔と合わせて装飾的に見せる使い方もあるのです。これも中井淳夫さん由来の技法ですね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「枝栗繍文」を合わせてみました。地の金糸の引き箔を生かしてみました。

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写真5番目は、龍村の絽綴「楓」を合わせてみました。帯留が無いと散る紅葉に見えますが、魚の帯留を置くことで、水に浮く紅葉に見えます。

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写真6番目は、秋山真和さんの浮織の袋帯を合わせてみました。紋織部分が地の色に対してグラデーションを形成しているので、花織に見えますが、作者の悪戯でじつは浮織なのです。作家というのは、こういう悪戯をすることがありますね。
[ 2016/12/09 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

高野松山の堆朱の帯留の帯合わせ

第三千五百八十八回目は、高野松山の堆朱の帯留の帯合わせです。

今日は西陣の帯や綴の帯に合わせてみます。昨日は各地の紬絣に合わせるという企画だったので、今日な京都の織の文化に合わせる企画です。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「遠山桜楓」を合わせてみました。桜の部分は本金の引き箔、楓の部分は漆(本漆かラッカーかはわからない)の引き箔になっています。桜の金が暗く見えるのは、緯糸である平金糸に対し、経糸が黒い絹糸で、両者が交って平均の色に見えているからで、沈金に見せているわけなんですね。

一方の平漆糸の楓は螺鈿に見えることを狙っていますから、この帯のテーマは沈金螺鈿を織物で再現するということです。その上に本物の堆朱を乗せてみたということでだまし絵的な効果を狙っています。

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写真2番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。尾形光琳の「紅白梅図」の中央を流れる水のパターンだけを帯の意匠にしたものです。梅の模様の訪問着に合わせれば「紅白梅図」がつくれますし、桜の訪問着に合わせれば「桜に流水」がつくれますから、レゴのパーツのように使いこなせば楽しい帯です。

織悦は全通なので、腹文の模様は横倒しになってしまいます。普段は気にならないですが、魚を合わせようと思うと残念ですね。

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写真3番目は、梅垣織物の袋帯「蒔絵花鳥文」を合わせてみました。梅垣の最高級バージョンの1本です。蒔絵作品を織物で再現した作品ですが、その上にホンモノの蒔絵を置くというだまし絵的な合わせ方をしてみました。

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写真4番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。細見華岳の作品は、伝統工芸展に出品する幾何学的な模様の作品と、一般の問屋を通して販売するやや具象的なテーマの作品がありました。私が初めて細見華岳を知ったのは伝統工芸展でですから、仕入れる時はいつも伝統工芸展風のを買っていました。以下3通り試していますが、この帯留は、いかにも公募展の監・審査委員が好きそうなモダンな抽象柄にも合うことがわかりました。 

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写真5番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。

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写真6番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。
[ 2016/12/08 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

高野松山の堆朱の帯留の帯合わせ

第三千五百八十七回目は、高野松山の堆朱の帯留の帯合わせです。

今日は各地の紬絣の伝統工芸品の帯に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、ルバース吟子さんの首里織の帯を合わせてみました。糸が浮くタイプの首里織の帯には、花織と浮織(浮織も通常は花織と称され綜絖花織と手花織がある)とそれらの併用とがあります。ルバース吟子さんは全部のタイプを作っています。これは浮織(綜絖花織)ですね。

浮織の成否は配色が全てですね。地色と糸が浮いた模様の部分がくっきりしたコントラストを作るか、反対に優雅なグラデーションをつくるかです。この作品はコントラストとグラデーションが両立しているように見えます。

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写真2番目は、深石美穂さんの川平織の帯を合わせてみました。深石美穂さんは東京の美大の出身ですが、沖縄にある技法をほとんどマスターしてしまった方なので、川平織には本来ならメインにすべき複雑な技法が箸休めのように使われていたりします。この作品は、幾何学の問題を解くようなデザインで、理数系の人しか織れないような絣ですが、その一方で、添え物みたいな形で花織も加えられています。

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写真3番目は、深石美穂さんの川平織の帯を合わせてみました。格子のように見えますが、じつは格子の一部が美しいグラデーションを伴って消えていて、じつは足の長い絣だったという凝った作品です。

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写真4番目は、喜如嘉の芭蕉布の帯に合わせてみました。数日前、みなさんが最初にこの帯留をご覧になったとき、まさか芭蕉布に合わせるとは思わなかったのではないですか。じつはこの帯留は万能です。ただし優れた作品限定です。才能のある方ならだれでもどうぞ、という条件でパートナーを探している王女さまなんですね。

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写真5番目は、新垣幸子さんの八重山上布の帯に合わせてみました。経糸は麻、緯糸は苧麻の帯です。黄色は福木ですが、緑は福木で染めた上に藍染を重ねて作った色です。緑の部分の絣足に微妙に黄色が見えます。藍染とちょっとずらして種明かしをしているんですね。作家は見る人の心をくすぐる配慮をしますね。

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写真6番目は、丹波布の帯を合わせてみました。丹波布は木綿ですが、一部に絹が使ってあります。素朴な織物のように見せながら、じつは色は都会的なんですよね。
[ 2016/12/07 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

高野松山の堆朱の帯留の帯合わせ

第三千五百八十六回目は、高野松山の堆朱の帯留の帯合わせです。
塗りの帯留は、夏帯に使ってはいけないのでしょうか。たしかに夏は水晶の帯留などが涼しげに見えて良いですが、塗りではダメを言う決まりはないと思います。それなら試してみようというのが今日のテーマです。夏帯は流水の意匠が多いですから、魚の帯留が使えないのはもったいないですし。

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いちばん上の写真は、龍村の絽の名古屋帯「涼流文」を合わせてみました。睡蓮の池に魚が泳ぐというテーマの作品です。風景の中にはめこむように合わせてみました。意味を合わせる帯合わせということでは、これ以上のことはできないでしょう。乾坤一擲みたいな帯合わせです。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「彩波」を合わせてみました。「彩波」は「いろは」と読みます。彩が付くわりには、黒地で単彩の波です。よく見ると微妙に金や水色の糸が使われています。珍しい気象現象として彩雲というのがあり、とても美しいものとされていますが、それを波に置き換えたように思います。

タテに見える線は、渡り糸が絽の透き間から見えているもの、腹文で渡り糸の向きと絽の透き間の向きが一致してしまうもので、お太鼓ではこういうことはありません。組織の宿命ですね。

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写真3番目は、龍村の絽綴の名古屋帯を合わせてみました。絽綴は本来、きわめて趣味性が高い高級品ですが、安い中国製が氾濫しイメージが悪くなっていましたが、龍村が日本製のホンモノを制作してくれました。この作品は水に流れる葉がテーマで、青が効果的に使われています。水流に魚が加わったイメージです。

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写真4番目は、花也の絽縮緬の名古屋帯「半円取り柳」を合わせてみました。普通の絽よりも前後に着る時期が長い絽縮緬を使っています。柳は水辺に生えるものですが、この作品では水は描かれていません。魚で水辺を暗示してみました。

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写真5番目は、花也の変わり織の絽の名古屋帯「波」を合わせてみました。抽象的にも見える波が友禅と刺繍で描かれた帯です。黒地ということで選んでみました。

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写真6番目は、野口の絽の名古屋帯「塩釜」を合わせてみました。塩釜は古代の製塩風景で、須磨明石などで多く行われていたため、歌枕としてしばしば登場します。百人一首の藤原定家の歌が有名ですね。江戸時代後期に文芸テーマの小袖が流行りましたが、この帯はその実在の小袖の意匠をほぼ写して帯にしたものです。

帯留の双魚が海水魚は淡水魚かわかりませんが、海の関連と、それとなにより見る人の教養を試すような文芸テーマの格の高い雰囲気に合わせてみました。
[ 2016/12/06 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

高野松山の堆朱の帯留と帯との合わせ方

第三千五百八十五回目は、高野松山の堆朱の帯留と帯との合わせ方です。

蒔絵の人間国宝、高野松山の堆朱の帯留です。蒔絵の人間国宝と言えば、松田権六、大場松魚、音丸耕堂などが有名ですが、高野松山は有名なわりに実物を見たことがある人は少ないのではないかと思います。私も95年にフランスと共同で行われ三越で展示されたた人間国宝展で1度見ただけです。それは熊本県出身であることもあり細川家がスポンサーになっていたので、生活のために作ることが無かったから元々寡作なためです。

そういうわけで、実物を持っている人がいると聞いた時、少々びっくりしたのですが、実際に手にすると素晴らしいです。写真で見ただけでも端正なのはすぐわかると思いますが、実物はそれに加えて華麗という印象です。端正と華麗というのは相反する性質のようですが、本物は両立しているものですね。今日は借り物なので欲しがらないでください。

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いちばん上の写真は、正面から見たところです。まさに端正にして華麗ですね。気品とか優雅とか存在感がある、とか誉め言葉が次々に出て来てしまう。

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写真2番目は、斜めから見たところです。側面の繊細で多層な漆も見てください。手前の魚は尾が微妙に跳ねているように見えます。

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写真3番目は裏側です。留金は18金、落款も良いです。骨董の鑑定サイトではないので、写真は載せていませんが、共箱です。

さて本題の帯との合わせです。私の帯合わせのルールは1つ。作品に敬意があるときは、作者の意図を重視してそれに逆らいません。このばあい黒と金ですから、帯もその延長線上にあるような箔の作品と合わせます。ついでながら作品に敬意が無く、単に道具と考えている時は、正反対の多彩な友禅を合わせ作者の意図を補完したりします。

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いちばん上の写真は、花也の名古屋帯「槇と流水」に合わせています。点々は砂の意味です。作者の意図に逆らわないよう、金彩の濃淡の帯に合わせています。

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写真2番目は、花也の名古屋帯「霞取りに波、琳派風景模様」に合わせてみました。たびたび帯合わせで使っている霞→波→色紙取り→琳派の川の風景模様の順に入れ子構造になった意匠の帯の腹文です。黒と金という配色を守りました。波の模様にして意味もつなげました。

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写真3番目は、上と同じ帯の腹文の反対側の模様です。この帯の腹文は、着る人によって「霞と波」と「琳派の流れのある風景模様」とで選べるようになっています。蛇籠もあって、まさに川の風景模様ですが、魚で意味をつなげています。

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写真4番目は、京正の名古屋帯「瑞葉」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。中井さんの箔なら多少は高野松山の金に対抗できるでしょうか。

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写真5番目は、京正の名古屋帯「霞に波」を合わせてみました。実際に制作したのは安田です。波だけの作品ですが、安田の糊糸目の技術を見せつけています。
[ 2016/12/05 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせ

第三千五百八十四回目は、花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせです。

今日は、秋の単衣の着物として着ることを想定し、夏後半から初秋に合う夏の帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の夏の袋帯「」を合わせてみました。鍋島の皿をテーマにしたもので、縁の模様を重ねるように配した意匠です。龍村の夏の帯は、組織としては絽ですが、かなり厚手の印象で、単衣の時期でちょうどいいぐらいの感じです。夏の帯は、夏の前半と後半で花の種類が全く変わったりして厄介ですが、器物模様は便利ですね。

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写真2番目は、今河織物の紗の袋帯「若人の詩」を合わせてみました。タイトルからすれば、描かれているのは若松だとわかります。チラッと見て芒と勘違いしてくれると秋単衣にちょうど良いですね。この程度のはっきりしない色と模様は使いやすいのですが。

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写真3番目は、紗の袋帯を合わせてみました。これも何となく使える夏の帯です。

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写真4目は、紫紘の紗の袋帯「琳派秋草文」を合わせてみました。絵画的にも美しい高級感もある帯ですが、この着物に対して、朱色がちょっと不調和かな、という感じがします。その一方で、この程度の波乱は会った方が良いのかもという気も。

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写真5番目は、龍村の絽の名古屋帯「秋涼」を合わせてみました。着物の意匠では準主役である芒が、帯では主役になるという組み合わせを考えてみました。
[ 2016/12/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせ

第三千五百八十三回目は、花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯で合わせてみます。付下げや訪問着には西陣の袋帯が普通ですが、近年、付下げや軽い訪問着に対して、染の帯を合わせることも増えています。昔は「染の着物に織の帯」なんていったものですが、なぜ染に染めを重ねるのが悪いのかと言えば、同質すぎる感じでしょう。それに気を付けて帯合わせをしてみたいと思います。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。友禅と型疋田を併用しています。友禅という技法は絵画性が高いですから、染めの着物に染めの帯を合わせると絵に絵を重ねることになります。その2つの絵が同じテーマなら、同じことを2度ずつ言うしつこい人みたいになってしまいますし、2つの絵が違いすぎるテーマなら、会うたびに反対のことを言う信用できない人みたいになってしまいます。

この帯合わせは、帯が友禅とは言えシンプルな雪輪で、絵画性そのものから逃げています。

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写真2番目は、秀雅で仕入れた堰出しの疋田と江戸刺繍の名古屋帯を合わせてみました。堰出しの疋田とは友禅の糊を1粒ずつ置く疋田です。手描きとはいえ職人さんの完璧な仕事で乱れはないですが、型に比べて微妙な揺らぎがあるのが魅力です。それに江戸刺繍を合わせるのは、かつての千代田染繍の作風で、北秀が健在のころはそのような黒留袖が200~300万円で売っていました。

今はそんなものを買う人も作る人もないですが、そのダイジェスト版が名古屋帯としてよみがえっています。上の雪輪の帯が上手く合ったので、少しだけ絵画性を加えてみました。刺繍によるものなので、本当に少しだけですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の塩瀬の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。尾形乾山の陶筥に取材しています。金泥と友禅によるもので、こんなものを作れるのは中井さんだけ、と思える作品です。

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写真4番目は、一の橋の名古屋帯を合わせてみました。金の部分は箔、銀の部分は雲母です。後ろにいる動物は角が無いために馬に見えてしまい、馬鹿の帯みたいですが、これはすべて鹿で宗達の下絵をそのまま写しています。馬に見えるのも宗達の責任です。

楓に鹿という定番の組み合わせにしてみました。絵も友禅ではないのでシンプルで、絵に絵を重ねるまでには至っていません。

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写真5番目は、大羊居の名古屋帯を合わせてみました。今日初めて堂々と友禅と友禅を重ねてみました。打たれるとわかっても直球を投げる投手の気持ちです。みなさんも帯合わせをするときに、一か八かやってみる、という経験があるのではないでしょうか。今回は大羊居のパワーでなんとか・・・というところですね。

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写真6番目は、一の橋の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは安田です。月と兎と芒という定番すぎるテーマです。月は滲んでいて、雨が近いのか、しっとりした秋の夜です。シンプルなのに色気を感じるのはそのためでしょうか。
[ 2016/12/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせ

第三千五百八十二回目は、花也の付下げ「市松取り秋草文」の帯合わせです。

描かれているのは、楓と萩ですから秋のテーマですが、生地の感触から単衣でも使えそうですから、帯は夏帯と普通の帯と両方考えることができます。また基本は西陣の袋帯ですが、重めの友禅の名古屋帯も試してみます。今日はまず基本の袋帯です。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。着物が秋のテーマだから、帯も秋のテーマで合わせるべきか、それともテーマをずらした方が良いのか、まず考えます。秋にするとテーマを絞りすぎる気がしますから。この帯合わせは、テーマは関係ないように見えますが、なんとなく色で寄り添っています。

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写真2番目は、織悦の袋帯「流水紅葉」を合わせてみました。ずばり秋のテーマを合わせてみました。しかも着物にも登場する楓です。テーマを絞りすぎると言えば、まさにその状態ですが、ぴったり時期が合いみんながそんな気分でいる時なら称賛されるかもしれません。

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写真3番目は、織悦の袋帯「枝栗繍紋」を合わせてみました。秋のテーマですが、楓と萩を避けてみました。私はこの帯が大好きですが、余り使い道がないので、今日は使ってみました。

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写真4番目は、織悦の袋帯「柴垣秋草文尽」を合わせてみました。秋のテーマながら、着物にはない花を足しています。花也の着物は、すっきり大人の着物が多いので、ちょっとかわいらしさも足してみました。

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写真5番目は、かのう幸の袋帯を合わせてみました。近世の唐織の胴服の意匠を再現して帯にしたものです。その胴服もこんな大胆な市松模様になっているのです。(佐野川市松が生まれる前の胴服ですから石畳模様というべきですね。)市松をシンクロさせてみました。

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写真6番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。帯屋捨松のエキゾチックな蔓文様を合わせてみました。帯屋捨松の国籍も季節も関係ない帯は、エキゾチックでありながら、更紗や唐草と思えば日本の意匠の歴史の一部ですし、着物が和モノでも洋花でも使いやすいです。この程度の帯合わせが穏当かも。
[ 2016/12/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)