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千切屋治兵衛の着尺「花菱入霞」の帯合わせ

第三千五百五十八回目は、千切屋治兵衛の着尺「花菱入霞」の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の名古屋帯を合わせてみました。帯の生地は地紋が市松になっていますが、その地紋を生かすように友禅の線描きで市松模様が描かれ、さらに四季の植物が入れられています。線描きは、それ自体が芸術性を伴う絵画ですから、防染のための輪郭線にすぎない通常の糸目より難度が高いです。

防染のための糸目は、染料を堰き止めるダムですから、擦れたらそこから染料が滲んで絵になりません。なにより正確で擦れないことが大事です。しかし線描きは、それ自体が絵画として鑑賞されてしまうものですから、正確であればいいというものではなく、ときには擦れて美しいということもあります。「芸術性」が絡むところが、線描きの難しいところです。

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写真2番目は、花也の名古屋帯を合わせてみました。糊糸目友禅による作品ですが、糊筒から絞り出す糊を手でコントロールして羊歯の葉の形を描いたものです。これも線描きの一種で、さらに応用編ですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際の制作したのは藤岡さんです。楓をテーマにしているように見えますが、全体の形としては梅の花になっていて、春秋対応になっています。

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写真4番目は、藤井絞の辻が花の帯を合わせてみました。玉紬(本来はしょうざんの商標にすぎない「生紬」という言葉の方が有名ですね。)の生地で、袷でも単衣でも使えます。絞りと共に描き絵も多用していて、前期の辻が花の様式を写しています。

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写真5番目は、大羊居の名古屋帯「更紗の苑」を合わせてみました。作品として圧倒的な存在感のある大羊居の帯です。こういうのを買う人は、何かの着物に合わせるために買うのではなく、独立した作品として惚れ込んで買うんでしょうね。

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写真6番目は、藤井絞の辻が花の帯を合わせてみました。神坂雪佳の金魚玉という作品を写したものです。絞り方をコントロールして具象的な形を表現しているわけですから、辻が花に属する作品です。

ただし、写真4番目の作品のように、絞った後に染液に浸けているのではなく、絞った状態で筆で着彩しています。じつは現代の辻が花作家は、伝統工芸展に入選している有名作家も含めてそういう簡易な技法をしているのですが、もしかしたら室町時代の作者もそうしていたかもしれないですね。

藤井絞は、ふだんは理論通りちゃんと染液に浸けていますが、このように簡易な作り方をするとさらに上手くなるということがわかりました。
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[ 2016/11/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)