大羊居の付下げ「薬師遺宝」の帯合わせ

第三千五百五十一回目は、大羊居の付下げ「薬師遺宝」の帯合わせです。

昨日は意味を合わせるように、正倉院テーマで合わせましたが、今日は正倉院御物にこだわらずエキゾチックなテーマで合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「陶楽騎馬文」を合わせてみました。ペルシアやシリアで出土するイスラム陶器です。出土品の多くは銀化していますが、ここでは鮮やかな色で再現されています。イスラム陶器に興味がある方は、「加藤卓男」で検索してみた方が綺麗なのを見られます。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。帯屋捨松が得意なペルシア風の意匠です。青地というのは、合わせるのが難しそうですが、焦げ茶色に対しても綺麗に合っているように見えます。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。青では個性が強すぎると思う人のために穏健な帯合わせとしてグレーを合わせてみました。

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写真4番目は、織悦の袋帯「ペルシア巻花蔓」を合わせてみました。今回の着物は、大羊居らしい華やかなものですが、地色も焦げ茶色ですし、付下げで余白も多いので、幅広い年齢で着られる着物と思っています。そこで年輩者が着ることを想定し、ペルシア風の意匠でも細かい模様を合わせてみました。

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写真5番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟楽園」を合わせてみました。これも年輩者が着ることを想定し、ペルシア風の意匠でも細かい模様を合わせたものです。こちらの方が色は地味ですが、お馬さんなどがいて、かわいいおばあさんになれる帯合わせと思っています。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の金彩の名古屋帯を合わせてみました。先日紹介した倉部さんの帯です。コリント様式の柱の装飾を思わせるアカンサス模様です。名古屋帯ですが、豪華な印象なので、大羊居に拮抗してくれるように思います。
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[ 2016/10/31 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「薬師遺宝」の帯合わせ

第三千五百五十回目は、大羊居の付下げ「薬師遺宝」の帯合わせです。

薬師寺がテーマの着物ですから、帯のテーマも正倉院御物や法隆寺裂など同時代のものにしてみました。意味で合わせる帯合わせですね。

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いちばん上の写真は、紫絋の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈・・・」となっていますが、挟纈、刺繍などいろいろな正倉院裂に取材しています。鳥は挟纈にありがちなデザインですね。聖武天皇が使用したものということでテーマ的にはフォーマルでありながら、デザインには軟らかさもあり、使い勝手の良い帯だと思います。いろも金地なので、着物が何色になっても合いますしね。

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写真2番目は、織悦の袋帯「東大寺花文」を合わせてみました。正倉院裂の唐花文を改変なく織り出したものですが、クローズアップしすぎて、本来の副文がメインに、主文は近づきすぎて1/3と2/3しか見えないという非常事態になっています。改変しない代わりクローズアップの仕方が個性になっているんですね。普通の帯の意匠ならば、主文と副文を素直に並べるか、主文にクローズアップして、1つの華文にするかどちらかでしょう。

タイトルで、「正倉院唐花文」というべきところ、わざわざ「東大寺花文」と、持って回ったような言い方をしているのは、意匠登録に備えたものでしょう。一般名では登録できないですから。西陣の帯でズレたタイトルがついているのはみんなそういう理由です。

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写真3番目は、大西勇の袋帯「象樹木文」を合わせてみました。正倉院御物の臈纈の屏風に取材したものです。象と樹木が縦に並んだもので、ほぼそのまま意匠化しています。正倉院の裂は、織物は現代人の目で見ても精緻ですが、臈纈は現代人の目で見ると稚拙な印象です。この帯は、その稚拙な雰囲気を精緻な織りで再現しています。

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写真4番目は、紋屋井関の袋帯「正倉院象唐草文」を合わせてみました。正倉院御物の銀平脱の合子をテーマにしたものです。聖武天皇の碁石入れで、象さんチームと鸚哥さんチームがあるのですが、それがならべてある意匠です。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「木画狩猟文錦」を合わせてみました。正倉院御物の語源の琵琶の撥が当たる部分のデザインに取材した意匠です。元の素材は木の象嵌(木に違う種類の木を嵌め込んで絵にしたもの)で、それがタイトルの「木画」の意味です。

後ろを向いて騎射している人がいますが、鐙の無い時代にこんなことができるのは、パルチアに従属した遊牧民やハンニバルに従属したヌミディアの騎兵ぐらいでしょう。いずれもローマの天敵ですが、ササン朝ペルシアのデザインが唐経由で奈良まで来ているんですね。このデザインは日本人に愛され近世まで繰り返し描かれますが、「韃靼人狩猟図」と変わっています。

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写真6番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。法隆寺が所蔵する幡「法隆寺小幡」の「幡手」と言われる長く伸びた部分に使われている裂です。これも意図的にズレたタイトルが付けられています。
[ 2016/10/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「薬師遺宝」の続き

第三千五百四十九回目は、大羊居の付下げ「薬師遺宝」の続きです。

今日は後ろ姿の模様に近接してみます。

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いちばん上の写真は、後姿の近接です。形は出土した瓦片に見えますが、鸚哥の模様の瓦片というのは知らないので、違うかもしれません。

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写真2番目は、さらに近接です。薬師寺の時代である白鳳・天平時代の鸚哥のモチーフは、正倉院御物の螺鈿や銀平脱にあります。古寺で出土する瓦片と正倉院御物のエキゾチックなモチーフを合わせているのでしょう。

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写真3番目は裏側です。重厚なあしらい刺繍がよくわかります。

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写真4番目は背中心を挟んだもう片方の身頃の模様です。白揚げでぬめっとした宝相華文で、この作品の雰囲気を決定している部分です。これが細密な友禅模様だったら野暮いし、鳳凰や鸚哥が引き立たないでしょうね。
[ 2016/10/29 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「薬師遺宝」

第三千五百四十八回目は、大羊居の付下げ「薬師遺宝」の続きです。

今日は前姿の模様に近接してみます。

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いちばん上の写真は、マエミとオクミの縫い目辺りにある模様の近接です。この着物は模様のベースは宝相華文で、その上にアイキャッチポイントになる3つの模様が載っています。その1つで、いちばんメインになる模様ですね。正倉院御物にある銀平脱や螺鈿の鳳凰文様に似ていますが、薬師寺のどこにあるのかはわかりません。鳳凰が3本脚になっていますが、生地の合わせが悪いためで、八咫烏ではありません。

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写真2番目は、上の模様にさらに近接してみました。重厚なあしらい刺繍がしてあります。鳳凰が重厚な刺繍で覆われているのは当然ですが、辛子色の背景部分にも刺繍がしてあります。辛子色の部分は背景なのではなく、重要な作品の部分で刺繍で質感を補強しているのでしょう。

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写真3番目は、オクミの模様です。宝相華文はここでは、ぬめっとした曲線になっています。多くは白揚げです。大羊居が鮮やかな多彩でありながら、江戸好みの粋でもあり得るのは、白揚げ部分を上手く混ぜているからでしょう。

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写真4番目は、マエミとオクミの縫い目辺りにある模様のうち、上にある模様の近接です。これは薬師寺などの古寺で出土する瓦片ではないかと思います。あしらい刺繍も豊かで多彩な表現になっています。

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写真5番目は、マエミの模様です。宝相華文の一部ですが、存在感のある花が加えられています。色は抑制的ですねえ。
[ 2016/10/28 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

大羊居の付下げ「薬師遺宝」

第三千五百四十七回目の作品として、大羊居の付下げ「薬師遺宝」を紹介します。

「薬師遺宝」と題された付下げです。タイトルからすると、薬師寺に由来する意匠でしょうから、観光ガイドなどで探してみました。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は、後姿です。

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写真3番目は胸です。

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写真4番目は袖です。

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写真5番目は、もう片方の袖です。

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写真6番目は、参考図版です。金堂内部の写真で、観光ガイドで探してみました。

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写真7番目は、参考図版です。金堂裳階化粧裏板宝相華文といいます。
[ 2016/10/27 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

中井淳夫の付け下げ「ニリンソウ」

第三千五百四十六回目の作品として、中井淳夫の付下げ「ニリンソウ」を紹介します。

先日、倉部さんの金彩の帯合わせでニリンソウの付下げを使ったときに、ニリンソウは毒草と紹介しましたが、それは間違いという指摘がありました。正しくは、ニリンソウ自体は薬草なのですが、花のない時期のニリンソウはトリカブトとよく似ていて、間違えてトリカブトを食べて死んでしまう人がいた、ということだそうです。

ニリンソウは春に白い花が咲き、トリカブトは秋に青い花が咲きます。花が咲いている時期なら間違えないのですが、葉が似ているために花のない時期は間違えやすいのだそうです。間違いを糺すついでに、この付下げも紹介しますね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。気持ちが良いほどの巨大なニリンソウ3本です。地色はピンクベージュで、わりと年輩にも対応しつつ、春の空気の色でもありますね。

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写真2番目は、後姿のニリンソウです。背中心のマエミから遠い側の身頃に1本だけ描かれています。背中心にぴったり付くぐらいの位置です。背中心のマエミに近い側は無地なので、後姿はこの1本だけです。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。

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写真5番目は、もう片袖です。

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写真6番目は、マエミの近接です。

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写真7番目は、花に近接してみました。花の芯は金糸の刺繍ですが、本金糸を使っていて、裏側から見ると金糸の裏側が和紙です。中井さんの金糸の刺繍はたいてい本金糸を使っているので、本金でないものがあれば、それは中井さんの手を離れた後に別人によって付け加えられた可能性が高いですね。

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写真8番目は、葉に近接してみました。ダンマルで描かれています。ダンマルの語源は、地名のダマールで、その地から輸入された樹液(ゴム)のことです。そのゴムを揮発で溶いて筆で描く技法です。蝋に近い性質を持っていて、加熱しないですむ分、蝋より使いやすいです。しかし、使いやすい素材はより高い絵画的芸術性が求められるので、蝋より簡単とは言えません。

蝋と同様に半防染効果(薄く塗ると半分ぐらい防染され地色と白の中間色になる、厚く塗ると完全に防染され白くなる)があるので、それを利用して写生的な表現をすることができます。この葉の表現が良い例ですね。
[ 2016/10/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百四十五回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は付下げを合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げ「果実」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。帯は箔だけで、友禅を使っていないので、着物は絵画性の高い友禅らしい友禅にしてみました。

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写真2番目は、一の橋の付下げ「横段楽器」を合わせてみました。写真で見える笛の色がワイン色と金の組み合わせで、偶然ですが帯と一緒です。このような細部が帯合わせの決定打になることがありますね。

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写真3番目は、花也の付下げ「貝桶と紐」を合わせてみました。地色は利久としているが、このような黄緑色系って今は人気がありますね。以前ならピンクを着ていた人たちが、こんな色に替えてみると新鮮な感じがします。ワインとの補色的な組み合わせもいいんじゃないでしょうか。

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写真4番目は、一の橋の付下げ「蹴鞠と柳」を合わせてみました。紫のグラデーションが美しい作品です。紫+グラデーションという組み合わせは、昨日の野口の着尺にもありましたが、神秘的な感じがする視覚効果があるようです。特にこの作品は、霞、風に揺れる柳、貴族の雅な遊び道具である蹴鞠もそろって、全体が夢の中のような雰囲気になっています。

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写真5番目は、花也の付下げ「笛袋」を合わせてみました。笛はなく笛袋だけで、笛袋は取り方としての役割もあって中にシダが描かれています。茶とワインの組み合わせは、ちゃんと着こなせば大人っぽい雰囲気の有る配色ですね。
[ 2016/10/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百四十四回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

今日は染めの着尺に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、藤井絞の着尺を合わせてみました。飛び柄の絞の着尺ですが、絞りの模様の形が、固まる形ではなく広がる形なので、模様の面積が広く感じます。お得な感じですね。

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写真2番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。楓模様を全体に配した着尺で、飛び柄でありながら面積を大きく見せかけた上の着尺とは、全然価格が違います。絞りのような手仕事は、仕事量が大きくなれば正直にコストが増えるので、飛び柄の方が安いわけですが、模様の配置でコスパ良く作ることもできるわけです。

ところで、この着尺は楓を絞っているのではなく、楓以外の場所を絞っているんですよ。眺めているとわかってきますね。

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写真3番目は、野口の絞の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは森健持さんです。格子模様ですが、その格子が絞りでできているというところに驚きがある作品です。絞るという行為を想像するとわかるのですが、手で摘まむときに花のような丸い形は自然にできますが、直線がいちばん難しいですよね。ただし絞った後に筆で着彩し、染液には浸けていないでしょう。それは難度が高すぎるので。

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写真4番目は、岡重の着尺を合わせてみました。輪郭だけに型を使った手挿しの着尺です。笹舟というテーマで、モチーフとしては単衣が良いですね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。紬地で、笹を市松に配した着尺です。

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写真6番目は、野口の着尺を合わせてみました。干菓子をテーマに横段に模様を配したものです。横段の境界がグラデーションになっていて、無地部分が色気を感じる紫なので、女性的な雰囲気です。
[ 2016/10/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百四十三回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

名古屋帯でありながら豪華な金彩ですから、フォーマルにもカジュアルにも使えるとも言えるし、フォーマルにもカジュアルにも使いづらいとも言える帯です。この帯に限らず、そういうものは世間にいくらでもあるものですが、どちらもダメ、と考えるタイプの人よりも、どちらも良いと考えるタイプの人の方が、社会的に成功する確率は高いでしょう。

今回の帯も紬から付下げまで広く合わせてみます。今日は紬から。

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いちばん上の写真は、久米島紬の格子柄を合わせてみました。ワインの帯に対し泥染めの焦げ茶色の組み合わせです。このような模様は本土では「格子」ですが、沖縄では「グバン」といいますね。碁盤の意味です。

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写真2番目は、与那国花織を合わせてみました。花織というのは、地の糸が変化して紋織を構成するものですが、地の糸が多色であれば、紋織の部分と地の部分とでグラデーション効果を発揮します。それを最大限利用したのが、読谷花織の美の原理ですね。

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写真3番目は、山口良子の首里織を合わせてみました。福木で発色した鮮やかな黄色の着物です。草木染というのは滋味な色で、それが価値があるというイメージがありますが、本来はこういうキンキンするほど鮮やかな色も出してこそ成功なんだと思います。この作品は、地の糸が変化して紋織を構成する花織と、別の色糸(この作品では藤色)を差し入れる浮織を併用しています。

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写真4番目は、読谷花織を合わせてみました。紫地の読谷花織で、ワインと紫という似ているけど違う色の組み合わせを試してみました。反対色でもない同系色とも言えない、こういう意味のはっきりしない色の組み合わせで成功すると、自分が達人になった気がするものです。

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写真5番目は、大城織物工場の琉球絣(南風原の紬)を合わせてみました。大城カメさんの孫の哲(さとし)さんの時代のものです。

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写真6番目は、黄八丈を合わせてみました。黄色と鳶色の細かい格子です。
[ 2016/10/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百四十二回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩更紗」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

倉部さんの金彩の名古屋帯シリーズの3本目です。地色はワインで、3本の中ではいちばん個性的です。色としては綺麗ですが、帯合わせを含めた使い勝手は気になります。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は、お太鼓の近接です。模様のいちばん下の部分ですね。

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写真3番目は、もっと近接です。すみません上下反対になってしまっています。

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写真4番目は腹文です。

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写真5番目は、腹文の片側です。

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写真6番目は、腹文のもう片側です。
[ 2016/10/22 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百四十一回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」の帯合わせです。実際に制作したのは倉部さんです。

今日は付下げを合わせてみました。

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いちばん上の写真は、大羊居の付下げ「花唐草」を合わせてみました。着物も帯も、曲線に草花模様が重なってしまっているように見えますが、それぞれのタイトルを見れば「更紗」と「唐草」で違うことがわかります。しかし実際に着物の模様としてみると、どちらか分らないこともありますし、西陣の帯では意匠登録のテクニックなのか、わざと間違えてタイトルを付けているものもありますね。

迷う時は、それぞれ発祥した地域や時代、伝播の経路を調べて分類します。日本であれば、古代の正倉院にあるのは唐草、中世以降の名物裂にあるのも唐草、近世に東インド会社経由で輸入されるのが更紗です。しかし曲線を求める人間の心は同じで、それが繰り返し現れてくるだけかもしれませんね。

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写真2番目は、花也の付下げ「竹林」を合わせてみました。竹は白揚げだけで描かれていますが、竹の節が色糸で刺繍してあり、それがアイキャッチポイントになっています。竹には葉も何もなく、実質的には幾何学模様という要素もありますよね。モダンな発想のように思いますが、同じような発想の作品が江戸時代の小袖にもあります。

帯との組み合わせで言えば、帯は蔓植物で曲線、着物は丈で直線、という対比にしてあります。

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写真3番目は、花也の付下げ「雪輪取り柳と桜」を合わせてみました。取り方を使った意匠というのは、それぞれが独立した模様に見えてしまって、飛び柄の小紋と同じに見えてしまうことがありますが、それを防ぐために、取り方の外部に取り方どうしを有機的につなげるような模様を加えることがあります。この作品に付いてはその役割を霞が果たしています。雪輪が丸いので霞は直線にしてありますね。帯も霞付なので、霞で関連付けてみました。

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写真4番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは岡本等さんです。岡本等さんは残念ながら40代で亡くなった作家ですが、かつてはフォーマルにおける野口のスタイルを決定づけるほど影響力がありました。京友禅と言えば効き色に朱色を使うイメージがありますが、それを一切やめて紫、ピンク、黄緑でモダンな雰囲気にしたんですね。

そんな着物は今ではどこにでもあるわけですが、岡本等さんの作風は、それでも京友禅の雅を感じることができたのです。それは歴史があるのにモダンでお洒落という野口のイメージにぴったりだったと思います。

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写真5番目は、中井淳夫さんの付下げ「ニリンソウ」を合わせてみました。ニリンソウは可憐で毒のある春の花です。小さな花ですがここでは大きく描かれているので、最初はなんだかわかりませんでした。でも春の空気をすごく感じることができるところ、すなわち空気感も描いているところは、さすが中井さんです。
[ 2016/10/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百四十回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」の帯合わせです。実際に制作したのは倉部さんです。

今日は染めの着尺(小紋)に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、野口の手挿しの着尺を合わせてみました。実際に制作したのは岡重です。技法は手挿し、すなわち輪郭のみ型で、彩色は手描きです。裏から見ても染料がしっかり浸透していて手描きと変わりません。手描きと違うところは、同じ模様の色違いを複数の人が着ていることだけですね。

手挿しの着尺は、普通の型小紋より色が深く、存在感がありますが、手間がかかるので当然高級品です。しかし、見込み段階で8枚~12枚の型を彫り、売れなかったら損失になる通常の型小紋に対し、手挿しの着尺は、初期投資である型は輪郭用に1枚しか使わず、手描き工程は売れ行きを見て逐次製作すればいいため、売れ残りのリスクを避けることができます。何が売れるかわからない時代には、かえって向いているかもしれません。

この着尺は、花を散らした綺麗な模様で、個性の強い今回の帯には合わないと思いましたが、意外と違和感はない気がします。

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写真2番目は、花也の着尺を合わせてみました。「頭ずり」と言われる技法で、地紋のある生地の上を固形の蝋で擦り、地紋の頂点だけを防染して白く浮かび上がらせるという技法です。この着尺は、さらに地色も無地ではなく蝋たたきも併用しています。このような幾何学模様や抽象模様は合わせやすいですよね。

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写真3番目は、栗山吉三郎の着尺を合わせてみました。栗山紅型といわれる沖縄と京都の文化が融合した着尺です。先代である創始者は、柳宗悦の民芸運動に触発されて始めたもので、本土の紅型としてはもっとも古いものではないかと思います。本来高級品なのですが、ネットで安く売ってることもありますね。

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写真4番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。帯の「霞付」を意識して、雀を合わせてみました。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。更紗の模様なので、帯との関係では、更紗に更紗を重ねたことになりますが、帯の余白と遺法の違いのおかげか、あまり違和感はありません。
[ 2016/10/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百三十九回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」の帯合わせです。実際に制作したのは倉部さんです。

先日紹介した倉部さんの帯の仲間です。先日の帯は、付下げにも染の着尺(小紋)にも合わせましたから、今回も同じように合わせてみます。今日は紬から。

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いちばん上の写真は、菱一のオリジナル紬「つるばみ紬」を合わせてみました。織っているのは小千谷の織屋で、「つるばみ紬同人」という組織になっているようです。経糸が玉糸、緯糸が真綿の手織りの紬です。紫の濃淡の市松ですが、単純な市松ではなく絣のズレが見どころです。

少し昔は、問屋というのは織りの産地で商品を仕入れるのではなく、自分で発注してオリジナルの紬を作って売るのが普通でした。自分のブランドにすることで価格競争を避けていたのです。しかしその場合、売れ残りのリスクも負わなければなりません。今はそういう甲斐性のある問屋は少なくなり、菱一の他には室町の加納などいくつかしかないんじゃないでしょうか。

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写真2番目は、結城小倉の結城紬です。重要無形文化財の要件を満たすものではないですが、真綿の手触りはとても良いです。

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写真3番目は、小千谷の大新織物のシルクアタカスを使った紬を合わせてみました。アタカスというのは、ヨナグニサンと同じまたは近縁の巨大な蛾です。インドネシアでは産業振興として、「シルクアタカス」というブランドでアタカスの野蚕から絹糸を取って世界に販売していますが、これは日本の小千谷紬への応用例です。

日本で野蚕といえば、信州の有明地区の天蚕が伝統的な産地として知られていて、とても高価なイメージがありますが、シルクアタカスは世界的な商品なので、あまり高くないですね。

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写真4番目は、大城広四郎の南風原の紬(琉球絣)を合わせてみました。沖縄県で産する平織の絣のことを「琉球絣」と呼ぶことになっていて、琉球絣の90%は南風原町で織られているそうです。南風原には有名ないくつか工房がありますが、大城姓が多いので、どこまでが親戚かどこから他人かよくわかりません。

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写真5番目は、田中キヨ子の久留米絣「古代物語」を合わせてみました。重要無形文化財の赤いラベルがあるもので、糸の藍染は森山虎雄さんです。四角いデザインですが、手括りの絣らしく少しずつ形が違っているのが良いですね。それも作家の適度な演出で、同じだったら機械織りに見えちゃうんでしょうね。
[ 2016/10/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百三十八回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩霞付更紗」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

倉部さんの縁蓋による金彩作品です。タイトルの「霞付」は「かすみづけ」と読みます。霞の形に模様が付けてあるという意味ですね。小さい模様が付けてある意匠のばあいは、「小付(こづけ)」なんていいますがそれと同じです。一方、「××取り」というのは、模様を散らさないで、「取り方」と言われる雪輪や扇面などの形の中に押し込めたものです。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は、お太鼓の近接です。

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写真3番目は、さらに近接です。金彩の厚みで色の違いが生じ、明暗や遠近感が生まれています。

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写真4番目は、少しずれたところの近接です。縁蓋は、プラスティックのシートをカッターで切って防染する技法ですが、近接ではくっきりしているのがよくわかります。一方、蔓、葉脈あるいは花の輪郭は金描きです。こちらは縁蓋とは対照的に手描き感が有り、作品に温かみを与えています。

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写真5番目は、腹文の全体です。着る時は折るので、どちらかを出すことになります。

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写真6番目は、腹文の片側です。

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写真7番目は、腹文のもう片側です。
[ 2016/10/18 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「六角筥」の帯合わせ

第三千五百三十七回目は、花也の付下げ「六角筥」の帯合わせです。

今日は染めの帯を合わせてみました。付下げの模様の主要部分は刺繍ですし、模様にも友禅にありがちな物語的な展開が無いので、友禅などの染めの帯も使えます。世間の風潮からすると、付下げに染めの帯という組み合わせも、お洒落の感度の高い人中心に広がってきているようですし。 

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の塩瀬地に友禅の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは、中井淳夫さんです。乾山の陶筥の意匠をほぼ写したものです。

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写真2番目は、野口の縮緬地に友禅の名古屋帯を合わせてみました。江戸時代の御所解模様の小袖の植物文の部分を写したものです。菱取りに花菱文部分も元作品にあります。御所解模様の写しには、意匠だけ安易に写したものが多いですが、この作品は、糸目の上に墨描きを加えるなどオリジナルの雰囲気をなるべく再現した真面目なものです。

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写真3番目は、木下冬彦の塩瀬地に友禅の袋帯を合わせてみました。熊谷好博子の弟子の東京友禅の作家です。弟子を使って量産することがない寡作の作家なので、作品のすべてがレベルの高いものです。

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写真4番目は、木下冬彦の塩瀬地に友禅の袋帯を合わせてみました。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の塩瀬地に友禅の名古屋帯「松重ね」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。乾山の陶絵を写したものです。

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写真6番目は、京正の塩瀬の名古屋帯「瑞葉」を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。縁蓋を使った端正な金銀彩です。

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写真7番目は、花也の塩瀬の名古屋帯「琳派流水模様」を合わせてみました。霞の中に琳派の波、その中に色紙があって、さらにその中に流水と楓と蛇籠という琳派が好む風景が描かれています。入れ子構造になった重厚な友禅です。
[ 2016/10/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「六角筥」の帯合わせ

第三千五百三十六回目は、花也の付下げ「六角筥」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。濁りのない鮮やかな多色の帯を合わせてみました。この帯は振袖専用のようにも思えますが、付下げや訪問着に合わせて長く使えるようです。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯「能衣装立沸花文」を合わせてみました。近世の唐織の能衣装に取材したものです。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯「鳴子」を合わせてみました。鳴子の1つ1つに亀甲、七宝、青海波という伝統文様が入っています。鳴子というのは収穫を守るもので、季節としては秋ということになりますし、農業的なテーマですが、捨松独特の色のおかげか都会的に見えます。

ショッキングピンクのような鮮やかなのにかすれて見える色は、銀色のポリエステルフィルムの上にショッキングピンクや黄緑のような鮮やかな色をドット状に置いているのです。そんなもの売ってないので、自分の工房で作っているんでしょうね。

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写真4番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。名物裂の有栖川錦のうちの龍文をテーマにしたものです。龍というのは、中国の皇帝みたいで尊大なモチーフですが、ここではユーモラスですね。そのおかげで帯の使い道が広くなっています。

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写真5番目は、洛風林の袋帯「亀甲文」を合わせてみました。実際に織ったのは帯屋捨松です。少し昔は帯屋捨松も洛風林同人でした。もっと昔は北村武資も洛風林同人だったことがあるんですよ。この帯は、単純な伝統文様の繰り返しですが、洛風林が企画して帯屋捨松が織ると、単純でも退屈でもないですね。本金の引き箔を多用した高級品でもあります。

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写真6番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。すっきり行きます。
[ 2016/10/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「六角筥」の帯合わせ

第三千五百三十五回目は、花也の付下げ「六角筥」の帯合わせです。

今回の付下げは、模様の質と量でいえば堂々たる訪問着ですが、描かれているのは六角筥というワンテーマで、描く角度も大きささえ変わらず最後まで繰り返しています。帯合わせについては、着物が単調だからこそ変化に富んだものにしようという考えもありますが、着物に合わせてワンテーマのものにしようという考えもあります。

私はどちらかというとワンテーマ派です。着物がワンテーマなら帯もワンテーマにして、統一感を出したいと思います。

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いちばん上の写真は、坂下織物の「御門綴」シリーズの1本を合わせてみました。坂下織物は、高級な手織りの帯の織屋として知られていましたが廃業しました。10年以上だと思います。「御門綴」シリーズは地だけが綴組織で模様は絵緯糸で表現されている帯で、西陣手織協会の「手織りの証」が付いています。

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写真2番目は、紫絋の袋帯「松重ね」を合わせてみました。上の写真と同じく、松だけのワンテーマの帯を合わせてみました。

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写真3番目は、帯屋捨松の手織りの袋帯「牡丹唐草」を合わせてみました。名物裂でもっとも有名な「牡丹唐草金襴」を意匠的にはほぼそのまま帯にしたものです。その代わり地は凝っていて、全体が引き箔になっており、さらに白とピンクのグラデーションになっています。

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写真4番目は、池口定男の袋帯「佐波理つづれ」シリーズの極初期の作品「御簾」を合わせてみました。間道にみえますが、垂れの部分に風で翻る御簾の裾があります。ちゃんと帯として締めると、垂れで御簾と分るようになっています。

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写真5番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。おび広は、現在の池口のブランドで、証紙番号は607で佐波理つづれと同じです。モダンなデザインに見えますが、全体は本金の引き箔で織られており、伝統的な西陣の高級帯地です。
[ 2016/10/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「六角筥」の細部

第三千五百三十四回目は、花也の付下げ「六角筥」の細部です。

今日はそれぞれの筥を1つずつ撮ってみました。実際に撮ってフォルダに集めてみると、みんな同じようで、どれがどれだかわからなくなり、ブログに載せる時は、重複していないか何度も見直す必要がありました。やはり神殿の列柱や神社の杉並木のように、同じ模様が繰り返す美しさを狙った作品なのだと思います。

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いちばん上の写真は、マエミにある筥の近接です。筥のベースは友禅による彩色、蓋の模様は金彩、それ以外の模様はすべて刺繍です。洗練された雰囲気は、透明感のある色からきているのだろうと思います。

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写真2番目は、後姿で背中心の縫い目の上の筥の近接です。

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写真3番目は、マエミとオクミの縫い目の上の筥の近接です。

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写真4番目は、さらに筥に近接してみました。筥の輪郭の刺繍は、完全に囲わないで途中で止めています。陽の当るところと当たらないところ、というような論理的な区別ではないようです。完全に囲ってしまうと模様が縮こまってしまうのかもしれませんね。

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写真5番目は、さらに筥に近接してみました。

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写真6番目は、背中心の縫い目の上の筥を斜めから撮ってみました。
[ 2016/10/14 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「六角筥」

第三千五百三十三回目の作品として、花也の付下げ「六角筥」を紹介します。

六角筥のベースになる形に友禅、筥の上面に箔、それ以外のすべての模様は刺繍ということで、刺繍メインの作品です。模様は、六角筥が並ぶだけで、物語的に展開していくことはありません。変化のある美しさではなく、神殿の列柱のように繰り返す美しさを狙った作品ですね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。模様の大きさは意外に大きいし、大きいのが4つもあるので華やかですね。ここ30年ほど小付け模様優勢の時代が続きましたので、そろそろ大きい模様の時代が来るのではないかと思って、当店は大きな模様を増やしています。

筥は立体で描かれていますが、小袖や袱紗の模様として登場する文箱や六角形の貝桶は、もっと見下ろす角度で描かれているように思います。この作品は伝統的な意匠に比べて、対象が視線と同じ高さで描かれているのが、ちょっと近代的な感じにつながっているのではないでしょうか。

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写真2番目は後姿です。後姿は筥3つです。配置は禅寺の庭の石の配置みたいですね。

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写真3番目は袖です。今回の作品は、梅や桜のようなわかりやすい花模様を避けています。ポケモンGOでコイルが現れたみたいな模様は一体なんだろうと考えていましたが、どうも鹿児島寿蔵の人形にある模様から取ったようですね。

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写真4番目は、もう片方の袖です。

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写真5番目は胸です。
[ 2016/10/13 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

民芸ポーラ絣の帯合わせ

第三千五百三十二回目は、民芸ポーラ絣の帯合わせです。

今日は、ポーラ絣に染めの名古屋帯を合わせてみます。友禅は絵画性が高いですから、ウール素材のポーラ絣に絵画性が加わって普段着からお洒落着に変わります。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の友禅の絽の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。芒があるので夏後半にふさわしい帯です。余白が多くシンプルな図案に思いますが、三日月に風鈴が掛けてあるなど、イラスト的な遊びもあります。着物の模様もシンプルな縞ですが、帯もシンプルでバランスは良さそうですし、ベージュと水色の配色も良いです。

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写真2番目は、野口の友禅の絽の名古屋帯を合わせてみました。炬燵のように見えるのは、平安時代に和歌で詠まれた製塩風景の塩釜です。江戸時代に制作された小袖には、文芸をテーマにしたものがありますが、これは源氏物語の須磨・明石や、百人一首の定家の「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに・・・」などに取材した小袖の模様の一部を帯のお太鼓の模様にしたものです。

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写真3番目は、花也の友禅の紗と平織が半々の名古屋帯を合わせてみました。縞状に紗と平織が半々になっているオリジナルの生地に友禅で染めたものです。縞も模様と思えば、紋紗の仲間ですね。模様はマンガで刀を振り回したときの表現みたいですが、霞です。着物の絣模様が構成的なので、それを壊すような模様を合わせてみました。

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写真4番目は、花也の友禅の紗と平織が半々の名古屋帯を合わせてみました。家紋にもある「千鳥に波の丸」を意匠にしたものです。

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写真5番目は、千切屋治兵衛のパイナップル生地に友禅または筒描きの名古屋帯を合わせてみました。民芸の型染のように見えますが、じつは模様が正確に繰り返していないので、手描きしたもののようです。糊筒で糸目を描いていますが、友禅と言うより素朴な筒描きのタッチを目指しているように見えます。繊細な友禅に比べるとカジュアル感が有ります。

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写真6番目は、野口の麻のカジュアルな手描きの縞の名古屋帯を合わせてみました。このような作品は型染でも手描きでもできますが、おそらく手描きではないかと思います。これは普段着的に着る例です。
[ 2016/10/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

民芸ポーラ絣の帯合わせ

第三千五百三十一回目は、民芸ポーラ絣の帯合わせです。

今日は、ポーラ絣に龍村の絽の名古屋帯を合わせてみます。ウール素材のポーラ絣を最大限フォーマル系の扱いにしたものです。

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いちばん上の写真は、龍村の絽の名古屋帯「彩波」を合わせてみました。「彩波」は「いろは」と読みます。今どきの女の子の名前でありそうですね。「いろ」というほど色がない作品ですが、これは「彩雲(さいうん)」のイメージではないでしょうか。北海道県立美術館にある岩橋英遠の絵の方が知られていますが、私は1度だけ本物の彩雲を見たことがあります。

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写真2番目は、龍村の絽の名古屋帯「秋涼」を合わせてみました。立秋より後に締める帯ですね。黒地に水色の組み合わせです。タテ縞と経絣という幾何的な模様に着物に対し、思い切り絵画的な帯の組み合わせです。

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写真3番目は、龍村の絽の名古屋帯「かすみびし」を合わせてみました。わりとしつこく絣が並ぶ着物に、同じような密度の模様の帯を合わせて対抗させてみました。

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写真4番目は、龍村の絽の名古屋帯「夏蒐文」を合わせてみました。朝顔は季語で言うと秋ですから、これも立秋以後が似合う帯ですね。秋とは言っても夏に見られる植物を並べて「夏の名残を蒐集する」という意味のタイトルでしょう。龍村の帯のタイトルは教養がないとわからないものがありますが、同社顧問で京都の文化人としても知られる白井進さんによるものです。

着物の四角い絣に、帯の丸い模様の組み合わせです。

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写真5番目は、龍村の絽の名古屋帯「清山文」を合わせてみました。遠山に霞の模様が透明で多彩な色で表現されています。生成り色のポーラに対しては異質感がありますが、華やかさとフォーマル感を与える荒療治でもありますね。

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写真6番目は、龍村の絽の名古屋帯「ちどり」を合わせてみました。龍村の絽の名古屋帯の中でも、わりと紬に合わせるタイプですから、すんなり合いますね。
[ 2016/10/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

民芸ポーラ絣の帯合わせ

第三千五百三十回目は、民芸ポーラ絣の帯合わせです。

今回のポーラはウール素材ということで、正絹の着物よりもカジュアルということになるでしょう。しかし浴衣よりはフォーマルなわけですから、その間の中間的なところにあることになります。そういう着物は合わせる帯によって着物としての格を上下させることができます。

今日は、沖縄織物の夏帯を合わせてみます。値段は高いしお洒落だが、フォーマルではないというところです。

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いちばん上の写真は、新垣幸子さんの八重山上布を合わせてみました。ポーラ絣の四角い絣と新垣さんの四角い石畳風の模様をシンクロさせてみました。模様というのは、帯と着物で同じものを合わせてはしつこくておかしいですが、反対にわざとシンクロさせてみるという合わせ方もありますね。

ポーラ絣に少し青が入っているので、帯も青で、色もシンクロしていることになりますね。

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写真2番目は、新垣幸子さんの八重山上布を合わせてみました。これも、ポーラ絣の四角い絣と新垣さんの四角い石畳風の模様をシンクロさせてみました。

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写真3番目は、伝統的な意匠で、伝統的な染料である藍とグールの八重山上布を合わせてみました。普通の八重山上布と比べると、新垣幸子さんは創作的だとわかりますね。

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写真4番目は、新垣玲子さんの宮古上布を合わせてみました。

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写真5番目は、喜如嘉の芭蕉布を合わせてみました。宮古上布とか芭蕉布というのは、すごく高いというイメージですが、そういうのをウールの着物に合わせてしまうと、お金の上下なんか意識してないわよ、という感じでかっこいいですよね。ここでは、世間的な価値より黒とベージュの配色を重視しています。

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写真6番目は、伊藤峯子の花倉織を合わせてみました。もともとは琉球王家の官服である首里の織物に属する花倉織ですから、パートナーとして沖縄風の絣のポーラ絣を選んでみました。
[ 2016/10/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

民芸ポーラ絣の近接と拡大

第三千五百二十九回目は、民芸ポーラ絣の近接と拡大です。

ポーラと呼ばれる織物については、昭和に生まれた新しい民芸としてうちでも売っていましたが、ポーラという名称の元であるporal(ポーラル)あるいは、その素材である撚りの強い梳毛糸 (そもうし)について、私はほとんどなじみがなかったので、今回ちゃんと顕微鏡で見てみました。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。淡い水色の経緯の絣模様です。今回仕入れたものには、経緯の絣と縞と経絣だけのものがあります。理論上は経緯の絣の方がはるかに手間がかかって、圧倒的に高価なのですが、今回は同じ値段でした。

但し、経緯の絣の方が反物の幅が狭く、縞または経絣だけの方が反物の幅が広いです。処分されるときは一括で処分されたものでしょうが、織られた年代はかなり違い、経緯絣の方がずっと古いのでしょう。おそらくかつては手間のかかる経緯絣が織られていたのが、近年、縞と経絣だけになって、その後生産中止になる、という歴史だったのだと思います。

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写真2番目は近接です。一部赤が入った経緯の絣です。

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写真3番目は拡大です。わかりやすいように背景に赤い布を敷いてみました。捺染の絣ですが、なんと、絣の足がグラデーションになっています。高級な手括り防染の絣みたいです。こういうところに作り手の姿勢が現れます。彼らがただのカジュアルではなく、高価な民芸作品と同じような姿勢で作っていたという証拠です。

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写真4番目は、さらに拡大です。かなり撚りがかかっています。撚りの強い梳毛糸 (そもうし)ということでしょうか。かなり光沢がありますが、これが絹35%でしょうか。

もう1反、観察してみますね。

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写真5番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。縞と経絣の組み合わせです。色は白の他に2色です。

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写真6番目は近接です。絣足は適度にずれて良い感じです。昔の矢代仁の西陣お増しの見本帳にありそうな意匠です。

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写真7番目は拡大です。縞部分です。

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写真8番目は、さらに拡大です。
[ 2016/10/09 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

民芸ポーラ絣

第三千五百二十八回目の作品として、民芸ポーラ絣を紹介します。

呉服業界でいうポーラというのは、poral(ポーラル)のことで、撚りの強い梳毛糸 (そもうし) で平織りにした毛織物です。さらさらとした手触りで通気性があるので、夏服地用です。

梳毛糸 (そもうし) というのは、じつは私もよくわからなかったのですが、ネットで検索してみると、比較的長い、そろった上質の羊毛を、紡績工程でよくくしけずって繊維を直線状に引伸ばすとともに、各繊維を平行に配列してから、撚りをかけて糸としたものだそうです。普通のウールの糸に比べると、表面がなめらかで毛羽立ちが少ないんだと思います。後日、顕微鏡で撮った写真をお見せします。

民芸ポーラ絣は、かつて夏のウールの着物として織られていたもので、ウール65%、絹35%です。数年前に製造中止になっていて、今は希少な存在です。(ポーラの商標ではない、同じような品質のサマーウールを織っているメーカーはあるようです。) 私は、高梨という問屋のはんぱ市でまとめ買いしました。高梨というのは、野口や一の橋のような尊敬されている問屋でもないですし、取引して名誉なこともないですが、実質はすごい問屋で掘り出し物がありますね。

以前、あちこちの問屋の在庫処分市で、博多帯を仕入れたことがあるのですが、同じような値段で他社のものが全て下のランクの銀や緑の商標だったのに、高梨だけは全て最上級の金の商標で、以来信用するようになりました。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。縞も格子も絣もありますが、これは経絣です。ラベルに赤いマジックで無残な印が付けられ、ヘスター・プリンの緋文字みたいですが、これは元のメーカーが製造を止め、在庫をまとめて処分した際に、それ以前に定価で買ってくれた顧客に迷惑をかけないように付けた烙印ではないかと思います。

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写真2番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。墨色地の絣です。

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写真3番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。白地で沖縄にあるような絣の意匠です。

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写真4番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。縞です。

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写真5番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。これはすでに売れているものですが、これを買われた方が、自由が丘シェソワで洋服にしました。
http://www.chezsoi-h.com/made-to-order/
今日も直接リンクできなくてすみません。ぜひさがしてみてください。元が着物であったというのはもう全く分かりません。おしゃれな夏のウールのワンピースです。
[ 2016/10/08 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

近江ちぢみ

第三千五百二十七回目の作品として、近江ちぢみを紹介します。

近江ちぢみは、滋賀県の愛荘町にある川口織物が織っている麻50%、綿50%の織物です。愛荘町というのは、合併を繰り返してできた名前で、もともとは近江上布の産地の秦川村です。「秦」という文字があると帰化人を連想させ、古代から織物の里だったのだろうと思わせますね。

川口織物は、愛荘町に「手おりの里 金剛苑」というのを運営しています。ホームページを見ると、近江上布の歴史や現在がよくわかります。近江上布は高価なものですが、近江ちぢみは機械織りで、近江上布のリーズナブル版という位置づけだと思います。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。モダンな明るい色ですよね。

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写真3番目は拡大です。麻と木綿が50%ずつということです。

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写真4番目は、別の作品を、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。現在は縞と格子だけのようです。

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写真5番目は、別の作品を、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。値段的にリーズナブルなので(ネットショップでも売っているので、検索してみてください。当社でもほぼネットショップと同じ値段で販売しています。)

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写真6番目は、別の作品を、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。これはすでに売れているものですが、これを買われた方が、自由が丘シェソワで洋服にしました。
http://www.chezsoi-h.com/made-to-order/
で見られます。私がFC2ブログのフォーマットをよく理解していないようで、リンクにならないので、ご面倒ですが、このURLをコピーして貼ってみてください。

模様が片身代わりになっていて、洋服になったらどうなるのかと思いましたが、上手に処理してます。着物を洋服に改造しているわけですが、元が着物だということは分らないですね。
[ 2016/10/07 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

藤井絞の浴衣

第三千五百二十六回目の作品として、藤井絞の浴衣を紹介します。

当社の浴衣の仕入れは、毎年夏の終わりか秋の始めです。各社とも百貨店に商品を貸しているのですが、シーズンが終わると返品されます。返品された商品は翌年まで持ち越しても良いのですが、職人さんを抱えているメーカーとしては、値引きしてもその年のうちに在庫を処分し、翌年職人さんたちに気持ち良く仕事を出した方が良いのです。そうでないと職人さんの仕事がだんだん減って事業が先細りになってしまいますものね。

今日紹介するのは、そのようにして仕入れた浴衣です。模様が進歩するわけでもないので、来年も販売します。、

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いちばん上の写真は、藤井絞の絞りの浴衣です。小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。普通の木綿の生地よりも光沢があって色が綺麗に見える気がします。

これは京都の工房で絞って染められたもので、生地の折りたたみ方を工夫することで、幾何学模様を浮かび上がらせています。最初に面白いデザインを考えて、それを目指して防染の仕方を工夫していくわけですから、辻が花的な発想ですね。

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写真2番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。やはり京都の工房で絞って染められたもので、生地の折りたたみ方を工夫することで、幾何学模様を浮かび上がらせています。丸のデザインの周りに濃い色の枠の模様が見えますが、これは折りたたんだ時の染料の溜まりの痕跡でしょう。技術的に現れてしまうのでしょうが、デザインに取り込んでいます。

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写真3番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。やはり京都の工房で絞って染められたもので、生地の折りたたみ方を工夫することで、幾何学模様を浮かび上がらせています。全く染めていない白地も含めて4色ですが、どう折ったらできるのか素人には全く分かりません。以前、滝川クリステルさんがコマーシャルで着ていたものです。

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写真4番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。これは有松のメーカーに外注して染めたものです。じつは豆絞りの手ぬぐいと同じ技法で染められています。伝統的な手ぬぐいのデザインである豆絞りというのは、今普通に売っているものはプリントですが、本物は有松の板締め絞りなのです。

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写真5番目は、上の作品の近接です。近くに寄ってみると、豆ということがわかりますね。本物の豆絞りの手ぬぐいというのも結構稀少なんですよ。

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写真6番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。これは有松のメーカーの外注して染めたものです。これは嵐絞りと言われるものと、もう1つ何かの技法を使った作品です。明治以降、有松ではさまざまな技法が考案され、たくさんの特許や実用新案が認められています。

その中には、絞りの技法に関するものもありますし、絞りに使う器具の対するものもありますし、絞りの意匠に対するものもあって、よくわからない状態になっています。例えばこの作品についても、私はとりあえず嵐絞りと書きましたが、竜巻絞りではないかと思った方もいるでしょう。技法が違っても出来上がりの意匠は同じ、または技法が同じでも生地のちょっとした巻き方の違いで意匠が違う、ということもあって、私は以前ホームページで分類しようとして断念したことがあるのです。

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写真7番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも小千谷製の麻と綿がほぼ半々の生地を使っています。これは有松のメーカーの外注して染めたものです。これは最近の人気の雪花絞りですね。板締め絞の1つですが、器具で締め付けて絞ります。

江戸切子のように見えて美しいです。作っているのは全て有松ですが、有松のメーカーが直接販売する木綿製よりも、麻が混じった藤井絞経由の方が光沢があって、より江戸切子っぽく見えますね。

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写真8番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これは私が昨年お客さまに販売したものです。その方が、自由が丘シェソワというお店で洋服にしました。着物でも絵羽にするのは難しいのですが、なんと応用編なのに模様が合っているんですね。
http://www.chezsoi-h.com/made-to-order/

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写真8番目は、藤井絞の絞りの浴衣です。これも自由が丘シェソワのホームページにあります。
[ 2016/10/06 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「松竹梅」の帯合わせ(実際の制作は倉部さん)

第三千五百二十五回目は、一の橋の付下げ「松竹梅」の帯合わせです。

今日は友禅の染め帯を合わせてみます。倉部さんの付下げは、刺繍と箔とわずかなアクリル彩色ですし、物語的な展開もないですから、友禅の帯を合わせることも可能です。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の友禅と型疋田の名古屋帯を合わせてみました。袋帯でも、雪輪を合わせて冬~春の変わり目を表現し、初釜にふさわしいコーディネートをしてみましたが、それを染め帯でもやってみました。友禅の本来の役割である絵画性・物語性を増す、という趣旨ではないですが、見たところ穏当な帯合わせですね。

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写真2番目は、花也の友禅の名古屋帯「硯」を合わせてみました。硯という着物に無かったモチーフを加えて、着物と帯から成る画面を新展開させてみました。ドラマに例えれば、視聴率のテコ入れのため新キャラ投入というところですね。硯は蒔絵で、笹と羊歯が描かれているという設定ですが、同時に硯は取り方で中に笹と羊歯が入っているとも言えます。

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写真3番目は、加賀友禅作家、百貫華峰の名古屋帯を合わせてみました。友禅という技法の長所は、絵画性と物語性だ、というのを地で行くような帯です。百貫華峰は、日展に連続入選し、加賀友禅界でももっとも人気がある作家の1人です。帯のお太鼓というのは、日展画家が描く絵と思えば小品ですが、存在感ありますよね。

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写真4番目は、大羊居の友禅の名古屋帯「楽園」を合わせてみました。大羊居らしい帯だけ単体で鑑賞可能な作品です。松竹梅の世界とは全く関係ないインドの王女さまみたいな乗りですが、自分で創った世界を自分で壊してみるのも、たまには気持ちいいですよ。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「湊取り琳派梅松」を合わせてみました。着物に有る松竹梅のうち、梅と松をモチーフにした帯です。大羊居の帯合わせとは逆に、模様を増やさない帯合わせです。無地系のコーディネートというのがありますが、なるべく模様の種類を抑えるという意味で、無地系信仰に近い帯合わせです。

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写真6番目は、花也の名古屋帯「松笹文」を合わせてみました。着物に有る松竹梅のうち、笹と松をモチーフにした帯です。大羊居の帯合わせとは逆に、模様を増やさない帯合わせです。上と同じく無地系信仰に近い帯合わせです。
[ 2016/10/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「松竹梅」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせです。

第三千五百二十四回目は、一の橋の付下げ「松竹梅」の帯合わせです。

今日は昨日の続きで、着て行く場や季節を考えて、いろんなタイプの袋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「彩籠目」を合わせてみました。伝統的な文様である籠目を、色だけ工夫して形としては小細工しないでならべたものです。籠目の意味は収穫物を入れる籠でしょうが、収穫は春も秋もありますし、季節もなく使い勝手は良いですね。

連続文様である籠目を1つ独立させたのが「籠目文」でカゴメの商標でもありますよね。籠目文というのは、イスラエルの国旗でもある六芒星であるために、ユダヤと日本が関係があるとか、「かごめかごめ」の童謡はヘブライ語だとか書いている本もありますね。ユダヤ系の人は日本の籠目文を知らないでしょうから、こんな帯を見たらびっくりするかも。カゴメの商標については、Wikipediaに説明があります。野菜を扱うなら洋野菜が良いとアドバイスしてくれたのが陸軍時代の上官で、それに感謝して陸軍の星マーク(五芒星)を商標にしようとしたら認められなかったので、六芒星にしたら籠目という意味で認められたというんですね。

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写真2番目は、池口平八の袋帯「琵琶湖」を合わせてみました。絵緯糸(模様を表現するための緯糸)で琵琶湖の水面を表現した作品です。見る角度で光の当たり方が違い、離れると本当の水面のように見えることを狙った織物です。日本には波の形を表す多くの優れた文様がありますが、そのような波の形ではなく、モネの水面の描き方のような感じですから、印象派の原理を織りで再現したのだと思います。

着物のテーマが早春の梅でも四季共通の縁起物である松竹梅でも関係なく使える帯です。


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写真3番目は、洛風林の袋帯「宝飾華文」を合わせてみました。日本にもありますが起源はユーラシアのどこかで、和風ともエキゾチックとも思える華文をテーマにしているもので、着物のテーマが早春の梅でも四季共通の縁起物である松竹梅でも関係なく使える帯です。

帯に季節が無いのですから、季節は着物次第です。春に着る時は梅ということにして、秋に着る時は松竹梅ということにすればいいと思います。

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写真4番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。帯の意匠に季節を表すものはありませんが、平家納経に取材しており、厳島神社→錦秋安藝の宮島なんて連想が進みますから、なんとなく秋のイメージがあります。季節をわけがわからないようにすることで、季節に関係なく着ることを想定しています。

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写真5番目は、織悦の袋帯「遠山桜楓」を合わせてみました。着物は「寿三友」と言われる「松竹梅」ですが、帯は「桜楓」という別の慣用的な組み合わせの意匠です。1つのコーディネートに異なる2つの原理が存在しているんですね。人は他人の着物を見ると、季節はどうか、なんてチェックしたくなるものですが、チェック不能にしてしまう帯合わせです。

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写真6番目は、織悦の袋帯「枝菊吉甲地文」を合わせてみました。織悦には、いつもの糸が浮かないタイプの他に、唐織のように緯糸が浮いて模様を表現するタイプがあり、「彩悦錦」とネーミングされています。枝菊文様と亀甲文が重層的に見える二陪(ふたえ)織物で、有職織物の1つです。これは織悦ですが、この分野では人間国宝の喜多川平朗と俵二の方が有名ですね。

有職文様の知識のある人にとっては、四季に関係のない格式の高い帯ということになりますし、そうでない人にとっては、菊だから秋ということになるでしょう。見る人のレベルや解釈で意味が変わるんですね。梅なら早春、松竹梅なら四季、という解釈次第の今回の付下げに合わせて世間を混乱させれば、着る人の都合で着られるんじゃないでしょうか。
[ 2016/10/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「松竹梅」(実際の制作は倉部さん)の帯合わせ

第三千五百二十三回目は、一の橋の付下げ「松竹梅」の帯合わせです。

今日は袋帯を合わせてみます。フォーマルな付下げですから、基本の帯合わせは西陣の袋帯です。松竹梅という格式のあるテーマで、フォーマルな場にふさわしい着物と解釈して、正倉院文様などの格式の高い意匠の帯を合わせるか、早春にふさわしいお洒落な梅の着物と解釈して、季節モノや洒落もの系の帯を合わせるか、2通りの帯合わせができると思います。

ただ、その2通りというのは完全に分かれているものとは限らず、意味的にはフォーマルな模様であっても、色がお洒落、とか両方兼ねるような帯合わせもできますね。そしてそういうのが頭の良さそうな帯合わせということになるんじゃないでしょうか。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「雪輪くくり入」を合わせてみました。季節モノの梅の模様と考えて、雪輪を合わせてみました。雪と梅の組み合わせで、冬から春に替わるころ、初釜にちょうどいい帯合わせです。

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写真2番目は、織悦の袋帯「東大寺花文」を合わせてみました。「東大寺花文」とは正倉院御物の華文という意味です。聖武天皇の所用の品ということで、フォーマル柄として合わせてみました。縁起の良い松竹梅と皇室に関わる模様ということで季節は関係がなく、10月か11月の結婚式に呼ばれてもいいと思います。

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写真3番目は、紫絋の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。タイトルには「臈纈・・・」とありますが、臈纈にかぎらず刺繍や挟纈も含む正倉院御物の染織品から自由にチョイスして意匠にしています。歴史的な意味では格が高い模様ですが、模様のタッチが軟らかいために堅苦しい雰囲気がありません。

タイトルが「臈纈・・・」であるのは、実際の元絵の技法に関わらず作品のタッチが軟らかくて臈纈っぽいからでしょうね。そのために意味はフォーマルながら、雰囲気は洒落モノっぽいところもあります。

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写真4番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。間道は名物裂として輸入されたものですから格の高いものですが、一方で縞として粋と感じる人もいます。その辺は見る人に自由に解釈してもらうということで、フォーマルでも洒落着でも幅広く使えると思います。

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写真5番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。上の例は、紺とベージュで身が引き締まるような早春の雰囲気があります。こちらは黄緑で春爛漫の雰囲気がありますね。

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写真6番目は、織悦の袋帯「料紙文山川能宣集」を合わせてみました。道長取りというのは平安貴族を思わせ、松竹梅の着物にふさわしいフォーマル方向の組み合わせと言えます。

その一方で、和歌を書く料紙ということで、紀貫之の「人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける」を連想すれば、早春の梅の着物にふさわしい帯合わせということになりますね。
[ 2016/10/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「松竹梅」の細部(実際の制作は倉部さん)

第三千五百二十二回目は、一の橋の付下げ「松竹梅」の細部です。実際に制作したのは倉部さんです。

昨日から模様の細部を見ていますが、刺繍があるのも梅の花だけですし、松竹梅と言いながら作者の関心は梅だけにあるようです。であれば、模様を梅だけにしてもらった方が、着物としてお洒落ですよね。無理やり松と笹を加えて松竹梅としたことで、季節のお洒落着ではなく、公の場にもふさわしい格の高い着物になってしまっています。

しかしながら、11月に親戚の結婚式に呼ばれてしまうということはあるものです。そういうときに、ああ良かった、ということになるんでしょうね。夫婦2人で住んでいるマンションでも、親戚が来て泊まれる部屋があれば便利ということもあるし、2シーターのスポーツカーでも後ろに「+2」と言われる小さい席がついているのもあります。誰でも常に自分のスタイル通りに生きているわけではないので、最低限の妥協をした商品というのがあるんだと思います。

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いちばん上の写真は、前姿のオクミの模様です。

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写真2番目は、その近接です。

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写真3番目は、後姿のメインの模様です。梅の枝の向きが変わったぐらいで、前姿と変化はありません。後姿に鶯が現れたりすれば、時間の流れを感じ、物語として展開していくわけですが、これは変化しないことを美とする作品なんですね。

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写真4番目は、その近接です。

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写真5番目は、後姿の2番目に大きい模様です。後姿は、上の模様とこの模様が背中心の左右にあります。
[ 2016/10/02 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)