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千切屋治兵衛の振袖の細部

第三千五百十回目は、千切屋治兵衛の振袖の細部です。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

今日は、袖や肩など帯より上の模様を個別に撮ってみました。帯より下の模様と同じく、籠に見立てた市女笠に1種類ずつ花を飾っている(一部に添え物の萩がある)という意匠です。花の種類は多様で変化を感じますが、そのならべ方は1つのパターンの繰り返しなので、変化のある美と繰り返しのシンプルな美という相反する美を両方感じられるようになっています。

色についてみると、世間には、日光の陽明門のように色の有る美と姫路城の白壁のように色の無い美があるわけですが、中井の模様を今日のように連続してみていると、花の色は自然の多様な色を無視して、朱系、辛子色系、白系の3系統しかありません。白い壁とグレーの瓦しかない姫路城のように色数が限定された美の仲間ですね。

しかしながら、朱系、辛子色系、白系のそれぞれの系統の中では、複数の濃淡色が使われており、変化のある多色の美もあるのです。つまり、色は多様でありながら整理されているため、色についても形と同じく、変化と繰り返し、豪華とシンプルという相反する価値が両立しているんですね。

学校でも会社でも理想的な組織というものは、組織全体には規律がありながら、個々の構成員には個性(創造性)があるというものです。中井さんという人は、色や形についての優れた経営者のように思います。自身の人生についてはそうでもなかったようですが。

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[ 2016/09/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)