一の橋の付下げ「松竹梅」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百二十回目の作品として、一の橋の付下げ「松竹梅」を紹介します。実際に制作したのは、倉部さんです。

刺繍と箔と少々の彩色により松竹梅を描いた付下げです。地色がとても綺麗な色なのですが、写真では上手く写せませんでした。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。松竹梅のうち、松は縁蓋を使って描かれた大きな松の枝です。梅に対して取り方的な役割をしています。一方、竹ですが、定型的な形の笹としてチラホラある程度です。結局、松と竹は、四季に着られるというための言い訳みたいなもので、実際には梅の付下げですね。そう考えると、この爽やかな地色も梅にふさわしい早春のイメージだということになりますね。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
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[ 2016/09/30 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせ

第三千五百十九回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせです。

今日は紬に合わせてみます。着付けの本では、金が使ってある帯は紬に合わせてはいけない、なんて書いてあるものがあるらしいですが、それは邪悪な思想なので騙されてはいけません。

紬と言っても、作家モノで何十万円もするものが「普段着」ともとても言えず、あえてカテゴリーを決めれば「お洒落着」みたいなものですね。お洒落着に帯合わせのルールを求めるなら、それは「お洒落な帯しか合わせてはいけない」ということになるでしょう。けっこう厳しいですが、この倉部さんなら、高価な紬に対してちゃんと役割を果たしてくれそうです。

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いちばん上の写真は、郡上紬を合わせてみました。良心的な価格の店やネットショップでも48万円ぐらいする紬です。値段が高い理由は、外見は格子であっても、手紡ぎ、手織り、草木染という、着物好きがホンモノと認定する条件を全て備えた紬だからですね。そのようなものは素朴な良さを持っているはずですが、実物はとても都会的で洗練されています。

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写真2番目は、秋山真和さんの「綾の手紬」を合わせてみました。19世紀に沖縄で織られたものとして実在する作品の写しです。色は鮮やかな茶色ですが、たぶん元作品の織られた直後の色を再現しているんでしょうね。

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写真3番目は、真栄城興茂さんの琉球美絣を合わせてみました。大正年間に創始された、多分沖縄初の作家モノではないでしょうか。沖縄の織物は長い伝統を持つものですから、大正年間創始といわれると、新しい織物と勘違いしてしまいますが、沖縄は明治末に地租改正があって、はじめて織物を自由に売ることができるようになったわけですから、大正ということは、自分の意思で織られたもっとも古い織物ということになるのです。

藍の濃淡が美しい木綿の織物ですが、この作品は福木による黄色も併用していて、藍と重ねて染めることで緑色も発色しています。

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写真4番目は、ゆうの木染めの結城紬と合わせてみました。結城という地名は、「ゆうの木」という木が語源ということですが、それにちなんで、ゆうの木で染めた糸で織った結城紬です。産地の織元である小倉さんの企画だったと思います。織り方は、重要無形文化財の要件を満たすものではありません。最近紹介する機会が無かったので、使ってみました。

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写真5番目は、舘山の唐桟を合わせてみました。近世の始めに東インド会社経由で、インドの木綿が高級品として輸入されたのですが、江戸時代後期になると川越を中心に国産の木綿の縞が織られるようになりました。舘山の唐桟はその流れをくむもので、創始されたのは明治の始めですが、川唐の影響を受けた他の産地がすべて機械化されてしまったために、この唐桟がもっとも伝統的にホンモノということになって人気があります。

本来であれば、木綿の縞に金彩の倉部さんは合わせないですが、実際の写真を見れば、着物に作家モノとしての貫禄があって、金彩でもおかしくないですよね。

さて木綿の縞ですが、当社のある青梅も川越唐桟の影響を受けて木綿の縞を織った産地の1つです。現状は、わずかですが織物工場として伝統が引き継がれています。もちろん機械織りですが。その一方で、美大を出た女性作家が藍染で手織りの木綿の縞を織り、青梅縞を名乗る動きもあり、そんな感じで伝統というのはつながっていくのかなと思います。
[ 2016/09/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせ

第三千五百十八回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせです。

今日は染めの着尺(小紋)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。手描きのロウケツの格子です。このように型を使わず、手彩色されたものを、小紋といわず加工着尺ということがあります。もともとコストがかかるものですから、今は世間であまり見なかったり、異常に高かったりしますね。

帯合わせは非常にしやすいです。ロウケツの独特の軟らかいタッチなので、織物とも違うし友禅とも違うからでしょうね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。黒地に多色の吹寄せの模様です。「着物の柄」と言われてとりあえず思いつくような、誰にでも愛される模様です。一方、帯は金彩のパルメット模様なんていうマニアックなテーマですから、普通は合わせないと思います。でもまあ、何とかなる感じでしょうか。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。綺麗な黄緑色の更紗模様です。着物も帯も更紗どうしという帯合わせは、あまり頭が良さそうな感じはしませんが、これはエキゾチックで曲線という点では同じでも、建築装飾のパルメット模様なので大丈夫かなあというところ。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。手描きのロウケツ風のタッチの大きな花模様です。もちろん「手描きのロウケツ」風なだけで、普通の京型友禅です。浴衣にありそうな模様でもあるので、野口の重厚な着尺の作品群の中にあって、少しカジュアルな雰囲気もあります。

帯と着物の関係でいえば、日本の浴衣と石造のコリント様式の柱ということで、全くの異世界どうしです。???な帯合わせですが、今日はいちばん上の写真以外、普通やらないことをしています。こういうの無茶ぶりっていうんですよね。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。余白のない総柄の大きな葡萄の模様です。絵画的で呉服屋の店頭に飾るととてもきれいですが、実際に着て帯合わせを考えると難しい着物です。葡萄の模様からディオニゾスを連想し、コリント様式の柱を思い浮かべれば、少しは関係があるでしょうか。
[ 2016/09/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせ

第三千五百十七回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」の帯合わせです。

名古屋帯ですが、豪華な金彩な帯ですから、今日は付下げに合わせています。あっさりした附下に染め帯という帯合わせは、日舞のグループなど着物をふだんに着る人の間では結構多いとか。

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いちばん上の写真は、大羊居の付下げ「菱取り花文」を合わせてみました。前姿はチューリップ、後姿にはコスモスがありますが、模様は全て菱取りの中に入っています。地色は綺麗なレモン色です。

パルメット模様は、元は植物ですがあくまで建築装飾ですから、無機物で意味も季節もなく、着物を合わせる時は比較的相手を選ばなくて良いと思います。ただコリント様式が始まりで、西洋的なものですから、着物の意匠を和風にするか洋風にするか考える必要がありますね。この例では着物も帯もエキゾチックなテーマで統一してみました。

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写真2番目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」を合わせてみました。サンテチエンヌはリボンの産地として有名なフランスの市です。この作品は、サンテチエンヌのリボンのデザインを刺繍にしたものですが、実際にサンテチエンヌではどんなリボンを作っているのかと検索してみたら、犬のリードを売っているサイトにたどり着きました。

花也では、サンテチエンヌリボンというテーマで数点制作していますが、これは雪輪という純和風な模様と合わせています。

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写真3番目は、花也の付下げ「変わり縫い一方付け羊歯」を合わせてみました。花也では、シダ文が一方付けの地紋にしてある無地を販売していたのですが、今回その一部を防染して白揚げの付下げとしました。さらに要所に刺繍をしてあります。図案としては、裾から真っ直ぐなシダ文が伸びてきて、帯を突き抜けて胸までつながっています。通常のマエミやオクミのほか、突き抜けた胸の部分にも刺繍があります。

シダ文といっても、本物の植物の形跡はあまりなく建築装飾みたいな直線模様になっているので、パルメット模様の帯とは合っているかも。なお、一方付けの地紋というのは、指定された箇所で裁つと地紋が全て上を向くようになっているものを言います。

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写真4番目は、花也の付下げ「八重葎」を合わせてみました。葎というのは、人が住まなくなった屋敷の門などに絡みつく雑草で、家が寂れたことの象徴みたいなしょぼい草花です。それがなぜわざわざフォーマル着物の模様になっているかというと、源氏物語の帚木の「雨の夜の品定め」のところで言及されるからです。

この付下げは、八重葎を直線に意匠化して斜めに配しています。源氏物語にちなむテーマというよりも幾何学模様みたいですね。

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写真5番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは。当時野口の専属の作家だった岡本等さんです。友禅という技法は、本来、多彩で絵画的なものであるべきなんだなあと実感するような作風ですね。ゴム糸目のすっきりくっきりな輪郭線と、朱色を排したモダンな配色が特長です。

帯は色もなく、形も無機的な建築様式ですから、着物で多彩な植物模様を足してバランスを取っています。植物は洋花でエキゾチックで統一しています。
[ 2016/09/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」(実際の制作は倉部さん)

第三千五百十六回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「金彩華文唐草」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

金彩の加工にはいくつかの技法があり、糊筒に糊と金粉を入れて手描きする場合もありますし、型を使った摺箔や、縁蓋を使った印金もあります。それぞれ特徴がありますが、この作品は縁蓋を使っていて、精緻でくっきりしています。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。地色は紫紺で、模様は建築様式でいうアカンサス装飾ですね。かつて付下げとして制作されたこともありますが、今回は名古屋帯として制作されています。

型を使った摺箔であれば、型は使い回されるためいつも同じ大きさです。付下げに使った方をそのまま名古屋帯に使うのは、大きさが違って不都合かもしれません。縁蓋のばあいは、生地にプラスティックシートを置き、カッターで切って模様の輪郭を作るのですが、シートは使い捨てなので、いろんな大きさを作ることができます。

もちろん使い回せる型よりも、一回ごとに高度な技で切らなければならない縁蓋の方がコストが高いです。金彩模様が繰り返す飛び柄小紋なら型による摺箔の方が合理的ですし、繰り返さない訪問着や帯のお太鼓の模様なら縁蓋による印金の方が合理的ですね。

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写真2番目は、お太鼓の模様の近接です。金彩の色は画一ではなく、金の厚みを変えることで色や輝度の違いを生んでいます。いちばん薄く金を置いたところは、地色の紫紺が透けて銀色に見えます。その色と輝度の違いによって、平面の模様が立体的に見えるわけです。

元作品である建築様式のアカンサス模様は、コリント様式の柱の柱頭の装飾ですが、建築物の一部ですし彫刻ですから立体です。その雰囲気を写すには平面ではダメなんですね。金の厚みによって色の変化を作り、元作品に近くしているのです。

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写真3番目は、さらに近接です。縁蓋による作品というのは本来精緻なものですが、実物を見ると意外と絵が歪んでいてハンドペイントの雰囲気です。これは、縁蓋によって描いた模様の輪郭を、その後で糊と金粉を入れた糊筒で手描きしているからです。輝度の高い輪郭の無い部分を見ると、くっきりして精緻で、本来の縁蓋のタッチです。糊筒で手描きをした部分がハンドペイントタッチになっているんですね。

金の色の濃淡による奥行きと、精緻な美しさと人の手の温かみの両方の混在とが、この作品の魅力でそれが倉部さんの様式です。

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写真4番目は、腹文の全体です。お太鼓の模様のダイジェストで、建築装飾の一部ですね。

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写真5番目は、腹文の片側です。

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写真6番目は、腹文のもう一方の片側です。

最後に「印金」と「摺箔」の違いですが、金箔の厚みの違いです。中国から名物裂として輸入された金彩加工の裂は、仏具などが多く金箔の厚い印金で豪華な雰囲気でした。日本で近世初期に慶長縫箔小袖としてつくられた金彩加工の裂は、人間が着て自然に動けるように金箔を薄くしていますが、それが摺箔です。金が薄い分、材料代は安いでしょうが、ミクロ単位で金を薄くするということで技術的には高度なのではないでしょうか。

現代の着物業界では、型によるものを摺箔、縁蓋によるものを印金と言っています。もちろん現代の業界の慣例による便宜的な分類で、名物裂がプラスティックを使っていたわけではありません。
[ 2016/09/26 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせ

第三千五百十五回目は、龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。今回の帯は腹文は横線だけですから、付下げの前姿の模様とお太鼓の千鳥が並ぶことはありません。実際に着物と帯を身に付けて振り向いた時の残像で成り立つ絵ですね。

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いちばん上の写真は、花也の絽の付下げ「波」を合わせてみました。着物と帯を両方使って「波と千鳥」を作ってみました。千鳥の模様というのは、本来波とセットのもので、この帯のように千鳥だけというのはむしろ珍しいです。龍村の図案家は、わざと未完成な図案を作って、着る人に波の着物を合わせる喜びを残しておいてくれたんじゃないでしょうか。

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写真2番目は、野口の紗の付下げ「菊」を合わせてみました。葉が主役になる枝菊で、江戸時代の小袖にある意匠に取材しています。白茶の地色に、まるで効き色のように唐突な青を持ってくる配色は野口のセンスだと思います。全然下品ではないですよね、むしろ目に心地良い刺激ではないでしょうか。

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写真3番目は、野口の紗の付下げ「垣に菊萩」を合わせてみました。地味な地色に大きな模様を付けた、若向きではないが華やかな付下げです。このような雰囲気は野口が得意ですよね。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「雪輪」を合わせてみました。雪輪が真夏の着物に使われるのは江戸時代からの伝統ですね。雪輪取りの中味は、竹も見えますが、それ以外は萩や撫子や鉄線など初夏から初秋の植物が多いです。地色は小豆色で、暑い日の小豆色は大人の着こなしですよね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「棒霞」を合わせてみました。帯の意匠は千鳥以外は横線ですから、着物の模様をその横線に合わせ、形を増やさない帯合わせをしてみました。「引き算の美」なんてことを言う人がいて、色数を増やさない着こなしが都会的、という考え方がありますが、ここでは色数だけでなく形の数も増やさない帯合わせにしてみました。

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写真6番目は、野口の紗の付下げ「塩釜」を合わせてみました。江戸時代の小袖以来の模様ですが、このような模様は海景の自然描写ではなく、王朝的な文芸テーマです。浜に見える桶や薪、臺のようなものは海水から塩を作る製造工程を表すもので、須磨や明石の塩づくりの風景は、多くの歌枕になっています。有名なのは、百人一首の藤原定家の歌「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身も焦がれつつ」ですね。

帯の千鳥については、同じく百人一首に「淡路島わたる千鳥の鳴く声に いくよ寝覚めぬ須磨の関守」がありますね。つまり、源氏物語にも登場する須磨明石を舞台に、百人一首の2つの歌を帯合わせにしてみたというところです。
[ 2016/09/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせ

第三千五百十四回目は、龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせです。

今日は染めの着尺(小紋)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、川村久太郎の絽の小紋を合わせてみました。メダカが泳ぐのを上から見ているような意匠です。もちろん、どこにもメダカとは書いてないですし、メダカが絶対しないような直線並び+交差をしていますが。魚と鳥の組み合わせということになりますね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんで、一方付けの小紋になっています。楓が重なっているだけのようですが、肩山では模様の上下が気が付かないうちに切り替わるという作品です。

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写真3番目は、野口の紋紗の着尺を合わせてみました。紗と平織を組み合わせて市松模様になっている紋紗です。その市松模様の一部を利用して3色の軟らかいタッチの四角い模様を入れています。生地の組織と彩色を連携させた作例です。

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写真4番目は、野口の絽の着尺を合わせてみました。上の作品はポップな雰囲気ですが、これは正反対で、江戸時代の小袖に登場するモチーフを型染で配したものです。同じ小紋でも、模様の雰囲気でフォーマル傾向になり、着る場もフォーマルな場に行けるようになります。

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写真5番目は、紗の着尺を合わせてみました。芒の穂を型染で染めたものです。地色は洗練されているものの地味ですし、模様も芒で枯れた感じ、また模様の色も地色の濃淡なので、年輩向きの感じですが、そのかわり模様自体は大きいのです。着物を買う時は、長く着られるように年齢幅の広いものを買いたいものですが、年齢幅の広いものを作るテクニックは、色が地味なら模様は大きく、色が派手なら模様は小さく、ということはあります。

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写真6番目は、広瀬雄望さんの絽の江戸小紋を合わせてみました。千鳥の模様の江戸小紋です。夏物の江戸小紋として、波と千鳥という意匠は江戸っぽくてかっこいいし、使い勝手も良さそうですが、千鳥の帯と合わせるということはまさかないでしょうね。
[ 2016/09/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせ

第三千五百十三回目は、龍村の絽の名古屋帯「ちどり」の帯合わせです。

今日は紬に合わせてみます。金銀糸の使用もわずかですし、千鳥というテーマは鳳凰と違って格調高くありませんから、ちょうど良いと思います。

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いちばん上の写真は、首里織の作家、伊藤峯子さんの花倉織をあわせてみました。首里の織物は、もともと王家の官服ですから西陣織と同じということになりますが、着物の分類としては結城紬などと同じく地方の高級な織物のページに載っていますね。そんな矛盾した事情を踏まえ、龍村というフォーマル専門のイメージのブランドありながら紬に合う帯、という矛盾した存在の帯を合わせてみました。

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写真2番目は、林宗平の越後上布を合わせてみました。第30回の伝統工芸展に出品された作品です。越後上布の高級品は、手績みの糸で精緻な絣を合わせるものですが、これはコンクール用に制作されたものだからか、わりと創作的です。一見縞に見えるタテの線は、よく見ると途中途切れていてじつは経絣、模様の有栖川鹿文は緯絣です。

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写真3番目は、真栄城きく江さんの琉球美絣を合わせてみました。いつもの木綿ではなく駒上布の作品です。紗ではないですが、さらっとした織物で、単衣時期に着たら気持ちが良さそうです。

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写真4番目は、夏結城を合わせてみました。夏結城というのは越後の織物で結城の産地とは関係がありません。なぜそんなことができたのか、結城の産地から反発されなかったのか、なんらかの話し合いがあったのか、よくわかりません。ただ、最近まで結城には単衣に向く縮はあっても、盛夏用の夏物はありませんでしたから、市場的な損害はなかったということでしょうか。

しかし最近は、産地において、手紬、手括り、地機による手織り、の要件を備えた盛夏用の織物が制作されています。もしそれが「夏結城」として商標登録が認められたら、越後の「夏結城」はなくなったかもしれませんが、「夏結城は結城紬の夏物にすぎない」という理由で認められなかったそうです。

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写真5番目は、夏琉球(琉球壁上布)を合わせてみました。壁糸(検索するとわかります)を使ったシャリっとする手触りの織物です。絣は手括りで手織りというホンモノの伝統工芸品ながら、値段はリーズナブルというとても良い着物です。夏のカジュアルな織物はとりあえずこれで良いと思います。

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写真6番目は、松枝玉記の久留米絣を合わせてみました。龍村の夏物は、絽でありながら重厚感もあるので、単衣の着物に合わせて使うのも良いです。木綿の高級着物は、正絹の胴裏と裾回しを付けて袷にすることもできますが、単衣にすることも多いですね。木綿らしく水洗いできるということで。ついでに言えば、胴裏と裾回しの木綿を使うことはできません。重くて肩が凝ってしまうんですよね。

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写真7番目は、永江明夫の薩摩絣に合わせてみました。薩摩絣というのは、江戸時代までは沖縄の絣(今でいう琉球絣)のことを言ったそうです。すべて薩摩藩経由で流通したわけですから。現在の薩摩絣は、大島紬の織元である東郷織物で織られており、大島紬の技術で木綿を織ったものです。大島紬の木綿バージョンという感じですね。この作品は、大島紬で言うと9マルキに相当するものです。
[ 2016/09/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「ちどり」

第三千五百十二回目の作品は、龍村の絽の名古屋帯「ちどり」を紹介します。

龍村の夏用の名古屋帯で、「ちどり」というすごくわかりやすい名前が付いていますが、意匠もシンプルでわかりやすいです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。涼し気な色、速い空気の流れを感じさせる横段の模様、千鳥だけというシンプルなモチーフ、という作品です。夏にふさわしく涼しげで、多様な帯合わせが出来そうなシンプルな意匠だと思います。

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写真2番目は腹文です。前姿には主役の千鳥がいませんねえ。名古屋帯ですが、龍村はブランド的にフォーマル方向のイメージなので、付下げや軽い訪問着まで使えます。付下げや訪問着は、模様の中心が前姿に有るので、帯の前姿には具象的な模様が無い方が帯合わせの範囲が広くなるんですね。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。8羽の千鳥が描かれていますが、2-3-3のグループになっています。さらに3羽のグループは三角形になっています。さらにさらに言えば、2つの三角形は、三角定規でセットになっている2つの三角形と同じ組み合わせになていませんか。ダビンチの最後の晩餐もキリストの弟子たちが3人ずつグループになっていますが、群像画を描くときの構図のテクニックですね。

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写真4番目は、お太鼓のもっと近接です。三角定規の長い方(90度-60度-30度)の三角形のグループです。鳥や動物の群れのような絵を見る時に、いつの間にか感情移入して自分はどの鳥かなあなんて思ってしまう時があります。1羽だけ慣れている鳥があると、自分はそれじゃないか、なんて気がしてきませんか。鑑賞者をそんな気持ちに追い込めば、絵としては大成功ですね。

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写真5番目も、お太鼓のもっと近接です。三角定規の普通の方(90度-45度-45度)の三角形のグループです。空気の流れを表す白い(淡い空色)緯糸は、完全につながっているところと一部途切れているところが有ります。途切れているところは、流れていく空気の粒のように見えるんですね。跳んでいく千鳥のスピード感の表現になっています。シンプルな組織で、米の細かい表現をしているんですね。

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写真6番目は、地の絽の組織がわかるところまで近接してみました。龍村の夏物は、けっこう地が厚くて立派だけど盛夏は暑いかな、という気がしてしまいます。しかし、組織をよく見ると、緯糸3本につき1つの透き間があって、ちゃんとした3本絽なんですね。

千鳥は絵緯糸で表現されていますから糸が浮いて立体感が有ります。空気の流れを表す白い(淡い空色)線もまた、絵緯糸による表現だとわかります。だから部分的に表に出さないことも自由で、空気の粒の表現が可能だったんですね。、

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写真7番目は品質表示です。絹が95%ということで、あまり金銀糸が使われていないので、紬にも使いやすいとわかります。ポリエステル3%は銀糸、レーヨン2%はその芯糸です。芯糸が相応にあるということは銀糸は平銀糸ではなく撚銀糸として使われていることがわかります。

その銀糸はどこに使われているのでしょうか。じつは千鳥の翼で、そのことからこの千鳥がただの自然の情景ではなく、誰でも知っている懐かしい歌の歌詞にちなんだものだと気づくんですね。「濡れた翼の銀の色」です。
[ 2016/09/22 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の振袖の細部(実際の制作は中井淳夫)

第三千五百十一回目は、千切屋治兵衛の振袖の細部です。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

振袖には用はない、と思われている方には、ここ数日、お付き合いいただいて申し訳ありません。私はこれが着物の中で最良の作品なのではないかと思っているので、しつこく個別の模様を紹介しています。今日は最後にしますが、後姿と帯合わせを撮ってみました。

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いちばん上の写真は、この振袖を取り上げた最初の日に掲載した後姿の模様です。

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写真2番目は、牡丹模様の近接です。花束の中心に近い4つが金駒刺繍してあります。花の芯に近い花弁は2重の金駒、外側は1重の金駒にすることで奥行を演出しています。金駒刺繍は、牡丹の花弁の複雑な凹凸の形を正確になぞっています。留め糸の間隔が狭いからできることでしょう。

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写真3番目は、籠に見立てた市女笠部分の近接です。手間を惜しまない重厚な表現です。自分が注文した着物にこんな刺繍がしてあったら、いったいいくら取られるのかとドキドキすると思います。

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写真4番目は、前姿の下の方にある紐の近接です。こういうところも手抜きなく、作画の線を完全に刺繍しています。点々部分は、相良刺繍ですが、金糸の相良刺繍というのは珍しいです。

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写真5番目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。中井のセンスと龍村のセンスで、色の系統がずいぶん違いますが、豪華モノどうし勝負させてみるという帯合わせも有りますね。

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写真6番目は、龍村の袋帯「楽園瑞鳥錦」を合わせてみました。チュニジアなどに多く残るローマのモザイクに取材したこの帯は、あらゆる着物に合わないですが、中井さんなら何とかしてくれるかな、というところ。花と鳥の組み合わせになりますし。

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写真7番目は、織悦の袋帯「東大寺花文」を合わせてみました。東大寺花文、すなわち正倉院御物の唐華文ですね。西陣の作品にはよくあるのですが、意匠登録を意識して一般名と差別化するネーミングがしてあるのでしょうか。色の系統も合いますし、大きくてシンプルな形も合いますね。

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写真8番目は、洛風林の袋帯を合わせてみました。模様は着物で堪能しているので、帯はシンプルな亀甲文で。色の系統も合っています。
[ 2016/09/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の振袖の細部

第三千五百十回目は、千切屋治兵衛の振袖の細部です。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

今日は、袖や肩など帯より上の模様を個別に撮ってみました。帯より下の模様と同じく、籠に見立てた市女笠に1種類ずつ花を飾っている(一部に添え物の萩がある)という意匠です。花の種類は多様で変化を感じますが、そのならべ方は1つのパターンの繰り返しなので、変化のある美と繰り返しのシンプルな美という相反する美を両方感じられるようになっています。

色についてみると、世間には、日光の陽明門のように色の有る美と姫路城の白壁のように色の無い美があるわけですが、中井の模様を今日のように連続してみていると、花の色は自然の多様な色を無視して、朱系、辛子色系、白系の3系統しかありません。白い壁とグレーの瓦しかない姫路城のように色数が限定された美の仲間ですね。

しかしながら、朱系、辛子色系、白系のそれぞれの系統の中では、複数の濃淡色が使われており、変化のある多色の美もあるのです。つまり、色は多様でありながら整理されているため、色についても形と同じく、変化と繰り返し、豪華とシンプルという相反する価値が両立しているんですね。

学校でも会社でも理想的な組織というものは、組織全体には規律がありながら、個々の構成員には個性(創造性)があるというものです。中井さんという人は、色や形についての優れた経営者のように思います。自身の人生についてはそうでもなかったようですが。

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[ 2016/09/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の振袖の細部(実際の制作は中井淳夫)

第三千五百九回目は、千切屋治兵衛の振袖の細部です。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

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いちばん上の写真は、マエミの上の方の模様の近接です。前姿は、菊、梅、椿の3種類ですが、上が菊ですね。

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写真2番目は、菊にさらに近接して金駒刺繍の細部を撮ってみました。手間を惜しまない刺繍です。今こんな刺繍を注文したら、いくら散られるだろうかと不安を感じるでしょうね。

金駒刺繍を見る時は、まず金糸の色を見て、本金糸かポリエステル糸か判断します。わからないときは、裏を見てほつれている部分を探してチェックします。次に留め糸の間隔を見ます。作品によってけっこう間隔が違うものです。間隔が広いものは、早く安くできるわけですが、形が歪みがちになるのです。中井さんの金駒刺繍は歪みが無く奇麗ですが、留め糸の間隔が狭いからということもあります。

以上の見方は手刺繍による場合で、それ以外にミシンもありますし、別の裂に刺繍をしてそれをアップリケしたものもあります。複数の職人やミシンがそれぞれ刺繍をして、それを最後にアップリケすれば、豪華な振袖が合理的につくれますから。

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写真3番目は、前姿の上から2番目の梅の近接です。場所はオクミです。梅の花の形は、同じ形の繰り返しです。美には、自然の風景のような変化のある美しさと、神殿の列柱のような繰り返しの美しさがありますが、この作品の中には相反する2種類の美が自在に含まれているんです。

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写真4番目は、梅にさらに近接してみました。金駒刺繍は、一重と二重があってメリハリがついています。

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写真5番目は、マエミの下の方の椿の近接です。あしらい刺繍は、市女笠の籠の中央の花ではなく左端に集まっています。籠の花の絵としては端ですが、人が着た場合は前姿に寄った方にあり、着物としては中央なのです。

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写真6番目は、椿のさらに近接です。こうして見ると、金駒刺繍で作画自体をしている感じですね。花弁の凹凸ある輪郭線を正確にたどっています。
[ 2016/09/19 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の振袖(実際の制作は中井淳夫)

第三千五百八回目の作品は、千切屋治兵衛の振袖を紹介します。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

中井淳夫さんが亡くなってもう数年になりますから、この作品もかなり年数が経っていると思いますが、千切屋治兵衛によって大事に保管されてきたので状態は良いです。市女笠を籠に見立てて花を飾ったという意匠ですが、小袖にあるアイディアですね。生地はは雲の地紋で、千切屋治兵衛が振袖用の生地として、昭和50年代から平成になっても使っていたものです。

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いちばん上の写真は全体です。豪華、上品、洗練、そんな誉め言葉を考えると、どれでも当てはまってしまう作品ですね。豪華なのは、惜しげもなく施された金駒刺繍を見れば、まったく疑いようがありません。しかし、豪華でありながら、すっきりもしているんですよね。

なぜ豪華なのにすっきりしていられるのか、おそらく模様がたくさんあってもちゃんと整理できているからだと思います。花の種類は、牡丹、梅、菊、椿あるいは橘と多様ですが、1つの市女笠の籠に必ず1種類で、全体は多様でも部分はシンプルなのです。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。菊と梅と椿です。アイキャッチポイントとなるマエミの菊の花は、執拗に金駒の刺繍で埋められています。

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写真3番目は、後姿です。牡丹ですが、ここだけ例外的に萩も加えられ2種類になっていますね。牡丹の花弁の輪郭だけでなく、市女笠の輪郭も重厚に金駒刺繍で埋められて、花より存在感があるぐらいです。

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写真4番目は、下前辺りです。この花のほとんどは、着ると見えなくなってしまうんです。惜しい気がしますねえ。

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写真5番目は、袖の模様の一部です。豪華でありながらシンプルだということがよくわかる部分です。色数はどうでしょうか。楓の色は同系色のグループでもそれぞれ諧調が異なって、印象より色数は多いように思います。しかし、よく調和しているためか、すっきり感じますねえ。

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写真6番目は、袖付け辺りです。方から袖にかけての上半身の模様です。ここでも重厚な金駒刺繍が見られます。

明日はさらに近接して、細部を紹介します。
[ 2016/09/18 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「槇」の帯合わせ

第三千五百七回目は、花也の付下げ「槇」の帯合わせです。

今日は名古屋帯を合わせてみます。普通はこのような訪問着格の着物には袋帯しか使いませんが、あえて試してみます。そのためにフォーマル度の高い意匠のみ選びます。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「木画狩猟錦」を合わせてみました。木画とは木に違う種類の木を嵌め込んだ象嵌によって作画した作品のことです。この意匠は、正倉院御物の五弦の琵琶の撥が当たる部分の模様を写したものです。正倉院御物は聖武天皇が使ったものですから、フォーマル度は高いだろうということで選んでみました。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「印金牡丹文」を合わせてみました。龍村と言われて、誰もが最初にイメージする作品です。平蔵ブランドの丸帯にふさわしいものですが、何を勘違いしたか名古屋帯で作ってしまったことがあったんですね。丸帯と同じくちゃんと本金を使っているんですよ、今は見ないので作ってないみたいです。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「ほかけ」を合わせてみました。出帆の意味ですから、入学式卒業式、会社の創業パーティーなどにふさわしいです。あっさりしていますが、意味が深くて、使いみちがありますね。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「桐花文」を合わせてみました。桐文は日本政府の家紋で、外務省にも付いています。また、財務省のキャリア官僚がテレビに映ったとき、自分の荷物を桐文の付いた風呂敷に包んで持っていました。ああいうのが国から支給されているんだなあと思いました。なのでフォーマル度が高いです。

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写真5番目は、喜多川俵二の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。名物裂を代表する意匠、牡丹唐草です。いろんなバリエーションがありこれは牡丹が小さいのですね。上の龍村の「印金牡丹文」も牡丹唐草ですから、牡丹の大きさで印象がすごく違います。

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写真6番目は、喜多川俵二の名古屋帯「厚板格子」を合わせてみました。厚板は、名物裂の名称の1つで、中国から舶載されるときに厚板に巻かれていたので、この名があると言われています。能衣装に使われている裂でも「厚板」とつくものが結構ありますね。それらすべてが舶載とも思えないので、構成の人が適当にイメージで分類したのかも。

この格子については、具体的にどの舶載作品に取材したのかよくわかりません。むしろ江戸時代の歌舞伎衣装にこのパターンがありますよね。そのせいか粋にも感じてしまう、粋な中国人がいたのかなあ。
[ 2016/09/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「槇」の帯合わせ

先日、saeさまからコメントをいただいた、地色が均一でなかったら、という件で、地色がぼかしだったらどんなか探してみました。少し昔に紹介した槇と流水をテーマにした染め帯です。

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この作品では、槇が倉部さんのように金描きになっていますが、地がぼかしになるとこんな感じです。砂もあります、やはり着物の制作者は1つの発想で、複数の作品を創りだしているんですね。

第三千五百六回目は、花也の付下げ「槇」の帯合わせです。

今回の作品は、豪華より洗練を感じる作品ですが、描かれているテーマは、木の中で最も格が高い槇木ですから、織悦のような洗練された帯と合わせて都会的な着こなしにするか、坂下のような重厚な帯と合わせて格の高い着こなしにするか、両方対応できると思います。

昨日は、槇というテーマに着目してフォーマル度の強い袋帯を合わせました。今日は白揚げの単一テーマの豪華というより洗練された着物と解釈して、織悦や洛風林のお洒落な袋帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。上の参考写真では、槇と流水を合わせていますが、これは帯と着物の両方で、槇と流水を作りだしていることになります。着物が宗達、帯が光琳で、琳派でまとまる頭の良い人がしそうな帯合わせです。

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写真2番目は、織悦の袋帯「彩悦錦枝菊亀甲地文」を合わせてみました。「彩悦錦」は織悦の唐織のように糸が浮いたシリーズのこと。亀甲地と枝菊文が重なったように見えるのは、有職織物の1つ二陪織物の様式。有職織物ですから、公家がらみでフォーマル度は高いですが、王朝文化というのは極度に洗練されているためか、威圧するところがなくあくまで優雅ですね。

長きにわたって軍事に重きを置かなかった平安時代の生んだ文化の極みでしょうね。もしジンギスカンがもう少し早く生まれていて、平安時代に蒙古襲来が有ったらほんとにヤバかったと思います。

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写真3番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶華文」を合わせてみました。タイトルに「厳島」とあるのは、平家納経に取材した意匠という意味です。鳥がゆったり飛んでいます。人に獲られることを想定していないようですが、この世ではなく来世を飛んでいるんでしょう。清盛の時代ですから、平安時代の文化が極まったときの作品ですよね。

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写真4番目は、洛風林の袋帯「印度七宝文」を合わせてみました。白地に淡いピンクと紫、洗練の極みのような雰囲気です。模様の形は、ぬめっとしているので、さらっとした色とのギャップが面白いです。

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写真5番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。間道類も試してみました。
[ 2016/09/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

花也の付下げ「槇」の帯合わせ

第三千五百五回目は、花也の付下げ「槇」の帯合わせです。

今回の作品は、藤色というちょっと色気のある地色に、ほぼ白揚げだけで単一のモチーフが描いてあり、豪華より洗練を感じる作品です。しかし、テーマの槇は「真木」が語源で、木の中で最も格が高い木ですから、それがテーマである以上、格の高いフォーマル着物なのか、とも思います。

今回の帯合わせは、まず槇の付下げを格の高いフォーマル着物と解釈して、フォーマル度の強い袋帯を合わせてみます。次に豪華より洗練を感じる着物と解釈して、織悦や洛風林のお洒落な袋帯を合わせてみます。今日はフォーマル感を感じる方の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、大庭の袋帯「扇子尽し」を合わせてみました。大庭というブランドは、バブル時代ごろすごくもてはやされて100万円を超える値段で展示会で売られていました。その後ネットショップで安く売られるようになり、最近はまたそこそこ値段が回復しているようです。

これは古い時代の西陣手織協会の「手織の証」が付いているものですが、全体は自然な絹の織物のように見えて、じつは全体が本金の引き箔になっているという豪華で真面目な帯です。扇子だからフォーマルだろうという程度の発想による選択です。

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写真2番目は、坂下織物の袋帯「御門綴」シリーズの1本、「天平華文」を合わせてみました。正倉院御物のいろいろなモチーフを少しずつコラージュして創った意匠です。全然違う作品のパーツが同じ画面に混じっているのですが、元作品を知らなければ気が付かないでしょう。図案家の手によって上手にコラージュしてあるからだと思います。正倉院御物は聖武天皇が使ったものだからフォーマルだろうという発想で。

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写真3番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。名物裂である有栖川錦の龍の部分に取材したものです。龍だからフォーマルだろうという発想ですが、実際の作品はユーモラスでもあってお洒落ですね。

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写真4番目は、北尾の袋帯「錦繍本願寺道長文」を合わせてみました。地の組織は綴で、模様は絵緯糸で表現されています。道長取りは、料紙に加工される模様で王朝文化を連想させますからフォーマルだろうという発想です。実際には色数を抑えた都会的な雰囲気ですから、フォーマルだからではなく、洗練されたどうしで着物と合っているのかもしれません。

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写真5番目は、梅垣織物の袋帯「蒔絵花鳥文」を合わせてみました。蒔絵作品を帯の意匠として写したものです。金色の地は、細く裁断された引き箔の糸で織られていますが、とても細いために織物でなく漆であるようにしっとり見えるという作品です。
[ 2016/09/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「槇」の細部と参考図版

第三千五百四回目は、花也の付下げ「槇」の細部と参考図版です。

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いちばん上の写真は、元絵の俵屋宗達の「槇檜図屏風」(部分)です。この左右に広い余白があります。今回の花也の付下げは、この作品をわりとそのまま写していることがわかります。この宗達の屏風が無ければ生まれなかったことだけは確かです。

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写真2番目は、マエミの近接です。

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写真3番目は、斜めから近接で撮ってみました。同じ形の葉を持つ枝が重なる様子を、色を使わないで描いているので、絵としては平面的でメリハリの無いものになってしまいそうなテーマです。元絵の屏風も墨の色だけですから同じ状況にあります。

それに対し、友禅の防染だけの枝葉と金彩で括った枝葉を描くことで、遠近感を生じさせ絵が平板にならないようにしています。これは、俵屋宗達が墨の濃淡でやっていることですね。花也作品は、さらに一部の葉の元辺りに最小限の彩色をして、さらにその一部を金糸で刺繍して光らせていますから、メリハリが生じて、平板な感じも退屈な感じも、複雑な枝の絡みで視線が混乱することもはほぼありません。しかしそれもまた、宗達が墨の色の無限の諧調で実現していることですね。

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写真4番目も、斜めからの近接です。

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写真5番目は、同じ宗達の屏風に取材した倉部さんの「槇」です。前姿(マエミ+オクミ)ですが、槇は3本でほぼ同じ構図です。

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写真6番目は、倉部さんの「槇」を近接で斜めから撮ってみました。宗達が墨の色の濃淡で表現したことを、倉部さんは金の濃淡で表現しています。本歌と比べてみると、毛筆で墨で描くよりはるかに扱いにくい金彩加工で、宗達の雰囲気に迫っており、倉部さん上手いなあと感心してしまいます。金彩でこのぐらい描ければ宗達の下職であっても務まったのではないでしょうか。
[ 2016/09/14 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

花也の付下げ「槇」

第三千五百三回目の作品として、花也の付下げ「槇」を紹介します。

石川県立美術館に所蔵されている俵屋宗達の「槇檜図屏風」に取材した作品です。元絵は下地が金砂子で、六曲屏風の中央によったところに槇が描かれていて、左右が広く余白になっているという、当時どころか現代に有っても斬新は構図の作品です。

この作品は、ストレートに槇だけを描いていますが、着物の意匠としては、他の植物と合わせたり、取り方の背景にしたり、小さくして色紙取りの中に入れたり、着物や帯の模様としてよく利用されているので、どこかで見たデザインかもしれません。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。当店で扱う花也の着物の地色としては珍しい、ちょっと色気もある藤色の地色です。槇は白揚げで描かれていて、奥行表現のためにわずかに色が挿してあります。元絵の槇は墨色だけの単色で、墨の濃淡で奥行を感じる作品ですから、元絵の作風を引き継いでいるとも言えますね。

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写真2番目は後姿です。庭石を配するときのような構図です。縦長の槇だけを配するため、余白が多く生じてしまうので、友禅の糊で砂粒を描いて、余白を処理しています。この砂のおかげで、槇どうしが有機的につながっているんですね。

この砂が無いと複数の槇が勝手に生えているように見えてしまい、1つの絵にならないのでしょうが、元の宗達の絵を見ると、余白を埋めるような小細工をせず、余白は余白のままで放置しています。余白を余白のまま放置して、それで良い作品をつくれたら花也さんの才能が宗達と同じということになってしまうわけですから、まあこれでしょうがないんですね。

ただ現在の屏風の状態は、金砂子が劣化して剥がれ砂粒のようにも見えます。花也さんはその劣化部分を砂粒に置き換えたのかもしれませんね。

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写真3番目は袖です。両袖とも2本ずつ描いてありますから、けっこう豪華な訪問着風です。

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写真4番目は胸です。胸も2本あって、しかも縫い目を越えて衿につながっていますから、訪問着と言ってもいいでしょう。

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写真5番目は、マエミの近接です。あしらいは金糸だけです。色挿しをしたわずかな部分に重ねるように刺繍しています。

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写真6番目は、後姿の近接です。
[ 2016/09/13 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせ

第三千五百二回目は、一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。「織りの着物に染めの帯、染の着物に織の帯」なんていいますが、今回は染めの着物に染めの帯の組み合わせですね。私は、染だろうが織りだろうがかまいませんが、染めどうしを合わせるのが難しいのは、質感が同じになってしまうということのほかに、お互いが意味や物語性を持っているためにそれが重複したり反発してしまいがちということもあるでしょう。

染めの中でも手描きの友禅の着物というのは、生地の縫い目を越えて模様がつながりますから、着物全体で1つの意味がある意匠になります。そのため意匠が意味や物語性を持ちやすくなり、染め帯の意味や物語と衝突する危険が高いです。意味の無い模様なら良いのか、とも思いますが、意味の無い模様、すなわち幾何学模様というのは、反復しているものが多いので、手描きよりも型染にふさわしいですね。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げ「薫炉」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。友禅どうしが重ならないように、刺繍の作品を合わせています。「薫炉」は、かすかな匂いを楽しむために秋草を入れたもの。季節はどちらも秋です。同じ金糸でありながら、植物である秋草と金属である蓋の質感の違いを繍い分けているのが見事。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の付下げ「文箱」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。文箱の模様は桐で、日本政府の家紋でもある模様ですから、縁起が良いだけで季節はありません。季節の無い組み合わせにしてみました。

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写真3番目は、野口の付下げ「琳派秋草」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。倉部さんは、千切屋治兵衛、野口、一の橋で扱っています。同じ人が作っていながら、経由する問屋によって、作品の雰囲気が違うんですよ。帯の模様と同じ芒がメインで、模様のテーマがつながるような帯合わせにしてみました。

倉部さんによる帯合わせを3通り試しました。季節を合わせて植物が違う組み合わせ、季節が関係の無い組み合わせ、季節も植物も合う組み合わせの3通りです。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の付下げ「大楓」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。中井恭三さんの息子で淳夫さんの甥にあたります。楓だけの単純なモチーフで、淡い色と大きな形を組み合わせ意匠です。私は大好きな作品で、着物のデザインがみんなこんなパターンで、そればかり数十人集まったら見てみたいです。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の付下げ「山帰来」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。山帰来は植物図鑑ではサルトリイバラの名で載っていることが多いです。晩秋にできる赤い実が冬になっても付いているので、クリスマスのリースに使われますね。

藤岡さんの糊糸目は、乳白色で柔らかいタッチなので、人の手の温かみを感じます。糊糸目には、毛筆の飛白のように擦れているものや、繊細で神経質なものもあります。糊糸目とゴム糸目の違いについて、糊糸目は温かみがある、なんて書いてある本もありますが、それは間違いで、ゴム糸目は常に綺麗であるのに対し、糊糸目は作者の個性が出やすいということなのです。

[ 2016/09/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせ

第三千五百一回目は、一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせです。

今日は小紋(染めの着尺)に合わせてみます。染の着物というのは、織りの着物に対して、絵画性が高い(具象的な模様が表現しやすい、さらに物語性のある模様も作りやすい)ので、選択肢も多くなりますし、失敗の確率も多くなります。帯はうさぎで、動物がテーマですから、着物には動物は居ない方が良いということは考えますよね。

また帯は秋のテーマですから、着物のテーマが春では矛盾しますから、秋に揃えるか、季節に関係の無いテーマにする必要がありそうです。秋に揃えるばあい、芒や月などテーマが重なりすぎるとよくないですが、唐突に違うものを持ってくるのもテーマが散らばりすぎて、せっかくの帯のインパクトがぼやけてしまうかとも思います。その辺まで考慮して帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは長沢さんです。源氏香は、上品で文化的で季節もない便利なテーマですね。うさぎの帯に対しても、有能な背景役を務めてくれています。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。飛び柄の短冊模様で、短冊の中は金描きの幾何学模様です。模様自体は、個性はあるものの、意味も薄く季節もなく、ただ配色だけは焦げ茶色の帯にきれいに合っています。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。飛び柄の短冊のようですが、こちらは横長です。取り方の中は七宝繋ぎ、割り付け文、型疋田です。これも上と一緒で、個性はあるものの、意味も薄く季節もなく、ただ配色だけは焦げ茶色の帯にきれいに合っています。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。全体に広がる模様ですが、模様が大きく、したがって余白も大きくなっています。テーマは楓ですから、帯と合う秋ですね。個性のある作品で、帯のうさぎと競合しそうですが、それでもうさぎが勝っているから大丈夫かなあと言うところ。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。縮緬地で銀杏を型友禅と型疋田で表現したものです。季節を合わせつつ、モチーフとなる植物を変えています。全身の模様だったらどうかと思いますが、飛び柄なのでいいのではないでしょうか。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは大和さんです。紬地で琳派の楓をテーマにしたものです。季節を合わせつつ、モチーフとなる植物を変える、上と同じパターンです。
[ 2016/09/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせ

第三千五百回目は、一の橋の名古屋帯「月と兎」の帯合わせです。

紬や小紋に合わせるばあいが多いと思いますが、私は付下げにも合わせてしまおうと思っています。とりあえず今日は、紬から。

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いちばん上の写真は、山下八百子の黄八丈に合わせてみました。帯の焦げ茶に対し、黄八丈の黄色や鳶色はよく合います。安田の高い帯に合わせる紬ということで、高い作家モノにしてみました。

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写真2番目は、郡上紬に合わせてみました。郡上紬というのは、ネットの最低価格でも48万円ぐらいするけっこう高いものです。なぜ高いかというと、紬好きの考えるホンモノ基準(手紡ぎ真綿、草木染、手織り、絣については手括りの防染)のすべてを満たす紬だからです。そして、この写真で見るとわかるように、伝統を守る地方の紬でありながらセンスは都会的なのも特長です。

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写真3番目は、大城織物工場の琉球絣「三代継承紬」に合わせてみました。「三代」とは、カメ、清栄、哲のことです。少し前に大城織物工場のスペシャルバージョンが制作された際、それに付けられたネーミングです。どこがスペシャルかというと、経糸、緯糸共に手紡ぎの真綿糸を使っているのです。普通の紬織物は、経糸は玉糸を使い、緯糸だけに真綿糸を使っていることが多いです。その方が絣が合いやすいからです。

経緯共に手紡ぎ真綿糸を使った作品は、他の伝統産地にもありますが、たいてい厚手のものが多いですが、これは触ったときにホンモノの真綿の温かみがありながら、糸自体は細いので精緻な絣が織られています。いまどき人気の細マッチョなんですね。

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写真4番目は、創作的な久米島紬に合わせてみました。久米島伝統の草木染と泥染の各色を横段模様に織り、一部にトゥイグアーと呼ばれる鳥に由来する模様単位を配したもので、染料も技法も伝統なのですが、意匠の再構成により創作的になっているという作品です。伝統産地における創作とはこのようなものだと思います。

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写真5番目は、大城永光の花絽織に合わせてみました。組織としては花倉織と同じもので、かつては花倉織と呼ばれていましたが、現在は花倉織は首里の織物の伝統であるとして、他の産地で織られたものには「花倉織」という名称は使えなくなりました。そのため「花絽織」と呼ばれます。花織と絽織を併用したものですから、適正でわかりやすい名称だと思います。

絽の組織がありますから、沖縄はともかく本土では夏に着る着物ですが、9月の単衣時期に着ると想定して帯合わせをしてみました。
[ 2016/09/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の名古屋帯「月と兎」の続き(実際の制作は安田)

第三千四百九十九回目は、一の橋の名古屋帯「月と兎」の続きです。実際に制作したのは安田です。

今日は腹文を紹介します。

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いちばん上の写真は、腹文の全体です。実際に身に付ける時は片側が表に出ます。お太鼓はうさぎと芒と月が描かれているわけですが、それに対して腹文は、片側がうさぎと芒、もう一方の片側が月と芒になっています。お太鼓の模様を因数分解して、2つの腹文の模様を作った感じです。

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写真2番目は、腹文の片側です。跳ぶように走るうさぎのポーズもまた、繰り返し描かれてきたものですね。

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写真3番目は、腹文のもう片側です。この月もぼかしに糸目の線を重ねた表現になっています。月というのはその夜の湿度によって、くっきり見える時とぼやけて見える時があります。前者を表現したい時は糸目でくっきり防染するでしょうし、後者を表現したい時は暈しにするべきでしょう。

これは秋の夜ですから、月は煌々と照るべきですが、理屈通りになりませんね。暈しもくっきりの糸目もあるということは、どちらともとれる曖昧な性格ということ、うさぎの心模様でしょうか。
[ 2016/09/09 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の名古屋帯「月と兎」(実際に制作したのは安田)

第三千四百九十八回目の作品として、一の橋の名古屋帯「月と兎」を紹介します。実際に制作したのは安田です。

安田というのは、京都の千切屋治兵衛、一の橋、京正、そして東京の北秀が扱っていた京友禅の最高峰で、精緻でありながら温かみもある糊糸目と神技のような描き疋田が特長でした。図案としては、安田様式ともいうべきもので、雪輪や色紙などの取り方の中に模様を詰め込んで友禅と刺繍と箔で重加飾し、取り方の外は松葉や波を白揚げであっさり描くというものでした。

取り方内部は豪華な江戸前期の小袖の精神を引き継ぎ、取り方外部は粋な江戸後期の小袖の精神を引き継いだとも言え、1枚で小袖の歴史を説明するような様式です。取り方を用いることで、豪華と粋を両立させるという難題を解決しているんですね。しかしながらそこに安田の欠点もあって、とにかく真似されやすいのです。レベルの高いものから低いものまで安田っぽい着物はたくさんあって、京都だけでなく十日町でも作られています。それは安田の責任ではないのですが、類似品が多いために、技術は高いが個性の無い着物と誤解されてしまうのです。

北秀が破産する97年までは、銀座のきしやに行けばホンモノの安田を見る機会もありましたが、それ以後は一の橋と京正が扱っているだけでしたから、呉服業者でも見る機会はほとんどなかったと思います。ネットで「安田」を検索すると安田っぽい着物が見られますが、それは他人の安田です。当社には昔の在庫があるのでホームぺージで写真は見られます。

さて今日紹介する安田は、その息子さんの作品です。私は親より才能があるんじゃないかと思っています。安田本人でありながら安田様式ではないんですね。才能がありすぎて親の様式を引き継ぐ必要もないのでしょう。

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いちばん上の写真はお太鼓です。月を見ながら芒の原でうさぎが跳ねる、というもので、元絵は琳派ですが、その後、何千回も描き写されて手垢が付きまくったテーマです。しかしこの作品は、詩情ともいうべきものがありますよね。絵も上手いし糊糸目も綺麗ですが、そこまでなら花也でもできる、これはそれ以上のもので、じゃあそれは何かと言われたら「詩情」としか言いようがないです。

作品でいちばん大事なものは詩情で、なぜかと言われたらそれは真似できないからです。真似しやすいという元の安田の欠点を、息子さんがあっさり解決しちゃっているんですね。

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写真2番目は、兎に近接してみました。ポーズは琳派の元絵を踏襲していますが、かわいいし上品です、真似ができるかと言ったらできないです。

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写真3番目は、もっと近接してみました。こういう顔を見ると、無垢な子供のようにも見えます。さらに、憂いとか憧憬とか、自分の中にある思いをつい投影しがちになります。悲しいことがあったときに見たら、一緒に悲しんでいるようにも見えます。成功するキャラクターというのは、そういうものですね。

ホストやホステスで、それほど美男美女でもないのに客にたくさん貢がせてしまうことができる人というのは、キャラクターに曖昧なところが有って、客が自分の勝手な思いを投影しやすい人なんだと思います。すごい美男美女でないほうがいろんな解釈が可能だから、いろんな人に投影してもらえるんじゃないかと思います。

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写真4番目は、月に近接してみました。驚くべきことに、月は暈しで表現されながら、その外側に糊糸目の線があるのです。安易な作品なら糸目で書くはずですし、普通に高度な作品でもぼかしの表現で満足してしまうはず。どうしてこのような表現を思いついたのか、どうしてそれが魅力的に見えるのか、私には一生できないことだけは確か。

明日は腹文の細部です。
[ 2016/09/08 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせ

第三千四百九十七回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせです。

いちばん最近の「美しいキモノ」に「付下げ活用術」という特集があって、「がんばりすぎないお洒落が今の気分!」と書いてあります。実際に今は、周囲を威圧するような堂々たる訪問着より、余白の多い付下げの方が便利がられる時代かもしれません。今回の着物は、強烈な存在感を持ちつつ同時に都会的な洗練もあるという優れものではありますが、さりげなくは着られませんね。

今日は着物のルールを外れない程度に、カジュアル方向に見える帯合わせを考えてみました。元絵は洒脱な琳派の鹿ですから、洒脱な雰囲気に戻れればいいですね。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「柴垣秋草文尽し」を合わせてみました。元絵の琳派の洒脱さを取り戻すには、帯を洒脱な琳派にすればよい、という単純な発想です。

織悦の帯は洗練された雰囲気が特長ですが、その洗練がどこから来るのかと考えると、意匠に小細工をしていないことだと思います。この作品でも琳派の秋草を素直に並べています。元絵に加工しなければ魅力的というわけではないですが、色がクリアで透明感がありそれ自体が美しいので、小細工が要らないのかもしれませんね。


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写真2番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。上の例と同じ発想です。

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写真3番目は、帯屋捨松のペルシア風の意匠の袋帯を合わせてみました。私はかつて、捨松のペルシア模様が大好きでそればかり仕入れていたことがありました。今はネットショップが良く扱う商品になっているため、価格競争になって扱いにくいんですけどね。

砂漠の国のデザインと思えば季節もないですし、現地の文化や歴史の中では意味や格式があるのかもしれないですが、日本人は知らないことなのでフォーマルに使ってもカジュアルに使っても良いですし、とにかく使い勝手が良いのです。

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写真4番目は、織悦の袋帯「金更紗蔓花」を合わせてみました。更紗模様というのは、日本ではわりとカジュアルな模様と思われています。黒留袖でも更紗模様の意匠はありますが、そのばあいにも「立派」とは言われず「お洒落」と言われるようですね。

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写真5番目は、池口平八の袋帯「琵琶湖」を合わせてみました。琵琶湖の水面を織りで表現した作品です。昨日の龍村の「海音光映錦」も波をテーマにしていて、その点では同じですがすごく違う印象です。昨日の波がロマン派なら、こちらの波は印象派なのです。

昨日の龍村は遠くから見ると迫力のある表現ですが、近くで見ると極めて精巧な組織を持った織物で、その凝り方にびっくりします。今日の平八は、織物の組織としてすごい技を見せているわけではないですが、配色の上手さか、あるいは配色が科学的に(光学的に)正しくなされているので、見る角度によって実際の水面に見えるのです。

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写真6番目は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。間道というと名物裂の1ジャンルとしてフォーマルに感じますが、縞と言うと江戸の粋を連想してカジュアルに感じます。どちらも同じストライプなんですけどね。これは間道ですが、お茶をしているか着物好きでないと、名物裂なんて知りませんから、縞と思ってカジュアルと感じるでしょう。
[ 2016/09/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせ

第三千四百九十六回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の帯合わせです。

今回の着物は、荘重な雰囲気ですから、豪華な訪問着としてフォーマルな場で着るのがふさわしいように思います。しかしながら、鹿の元絵は、宗達の下絵(本画の前の練習という意味ではなく光悦が歌を書く料紙に下地として描く絵)ですから、琳派の洒脱な雰囲気なのです。つまり倉部さんの存在感のある仕事と、金描きの若松のために、洒脱から荘厳へと変換されてしまったことになります。私は、神秘的な感じさえして春日曼荼羅を連想してしまいますから。

帯合わせをする場合には、格式高い帯を合わせることで、フォーマルの場でエースをねらうのが良いと思いますが、その反対に洒脱な帯を合わせて、元絵の宗達の洒脱な下絵に戻せないでしょうか。とりあえず今日は、フォーマル度の強い帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、梅垣織物の袋帯「名宝格天文」を合わせてみました。地が綴組織で、模様は絵緯糸で表現しています。極めて細い糸を使っていて、重厚な雰囲気のわりに軽くてしなやかです。良い時代の西陣の織物ですね。格天井のデザインは、堅牢な枠の中に模様が収まっているので、堅く見えフォーマル感があります。

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写真2番目は、坂下織物の袋帯を合わせてみました。古代から明代まで漢民族にもっとも愛された蜀江錦の意匠です。ガチっとした構成を持つ織物で、いかにも皇帝のいる中国らしいパターンです。格の高いデザインと言えばこれが最高でしょう。反対に日本らしい織物の意匠というのは花鳥風月の世界ですね。花鳥文や秋草文の左右非対称のパターンを思い浮かべてみれば違いが分かります。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯「立沸花文」を合わせてみました。唐織による織物で、近世の能衣装に取材したものです。立沸は、海から水蒸気が上がる光景でじつは雄大なテーマなんですね。平安貴族に由来する有職文様に属します。花文は、梅、椿、牡丹などが描かれており左右非対称の日本的な四季花の世界ですから、唐織というのは、名前とは逆に日本的な織物です。

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写真4番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。織物の技術で出来る限りの精度で写実的に波を表現したものです。格の高い意匠というのではなく、歴史も意味もない写実的な織物ですが、圧倒的な存在感で格が高いような気がしてしまいます。

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写真5番目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。倉部さんの作品は、金糸を主体とした色の無い世界ですが、多色の帯を合わせて思い切り色を足してみました。
[ 2016/09/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の細部

第三千四百九十五回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の細部です。

今日は斜めから撮ったり、さらに近接したりしてみました。

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いちばん上の写真は、前姿の色紙を斜めから撮ってみました。斜めから撮ることで、刺繍の立体感を際立たせてみました。色紙の縁の刺繍も立体的に見えるので、色紙というよりも額縁に入っているように見えますね。

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写真2番目は、後姿の色紙を斜めから撮ってみました。

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写真3番目は、前姿の色紙の波の部分を近接で撮ってみました。額縁の役目をしている色紙の縁の金駒刺繍は、細い金糸の駒糸が3重になっています。普通のあしらい刺繍であれば、太い金糸の駒糸が1本ですませてしまうところです。鹿の体は、縁蓋できっちりと描かれていますが、波は手描きの勢いがあり対照的なタッチです。

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写真4番目は、金描きの若松を斜めから近接して撮ってみました。松葉の先端は、すっと力が抜けてかすれて消えていきます。同じ個所の背景は金ぼかしになっていて、線のカスレと金ぼかしの併用が、本物の琳派の絵画を見るような視覚効果を生んでいます。
[ 2016/09/05 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の細部

第三千四百九十四回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」の細部です。

前姿と後姿の色紙に近接してみました。

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いちばん上の写真は、前姿に近接してみました。

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写真2番目は、前姿にもっと近接してみました。波の色紙も、普通なら主役になれるぐらいしっかり描かれています。

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写真3番目は、色紙の中味に近接してみました。鹿の輪郭は縁蓋を切っているようで、くっきりした仕上がりになっています。2頭の鹿は金の色が違って区別ができるようになっています。金箔の中の銀の含有量の違いで色がちがうのでしょう。

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写真4番目は、裏から撮ってみました。色紙の真ん中辺りは何もないので、鹿本体は箔だけによる表現で、周りの槇が刺繍による表現であることがわかります。常識であれば、主役の鹿が刺繍で、周りの草木が箔であることが多いので、ちょっと意外です。

また、皿のその外側である色紙の輪郭は金駒刺繍になっています。金駒刺繍の端の糸のほつれたところを見ると、芯糸に巻かれた金糸の裏側が和紙で、本金糸を使っていることがわかります。

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写真5番目は、後姿に近接してみました。

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写真6番目は、色紙の中味に近接してみました。鹿には顔が無く輪郭だけの表現ですが、金に濃淡があって、鹿の体の丸みも質量も感じます。鹿の耳の片方の金の色が暗いですが、これだけ絵も奥行きを感じ、立体感の表現になっています。

金描きによる表現がしっかりできているので、周りの草木だけが刺繍で鹿に刺繍が無くても負けていないのでしょうね。箔による鹿の表現が平面的で不十分であれば、追加のあしらい刺繍をしなければならなかったでしょう。
[ 2016/09/04 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」(実際の制作は倉部さん)

第三千四百九十三回目は、千切屋治兵衛の付下げ(実質的に訪問着)「若松に色紙取り鹿」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

倉部さんの作品は、刺繍や箔などデリケートなものが多いので、本来絵羽にするようなものでも丸巻で制作します。そのため「付下げ」としましたが、存在感でいえば留袖ぐらいの感じです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)を紹介します。金描きの若松が3本、色紙は重なった配置で2枚、色紙の中は、鹿が2頭と槇2本、もう1枚の色紙は金描きの波、いずれも琳派の様式です。

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写真2番目は、後姿です。金描きの若松が4本、色紙は1枚、色紙の中は、鹿が1頭と槇が2本、いずれも琳派の様式です。

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写真3番目は袖です。若松が2本です。

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写真4番目は胸です。若松が1本です。倉部さんの作品はコストが高いので、何がいくつ描いてあるかということが大事ですね。友禅であれば、50万円ぐらい出すと模様がいっぱい付いてきますが、倉部さんだと刺繍が2,3個だったりしますから。この作品は倉部さんにしては模様面積が大きく、大変ありがたいです。
[ 2016/09/03 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「雪の結晶」の帯合わせ

第三千四百九十二回目は、千切屋治兵衛の着尺「雪の結晶」の帯合わせです。

今日は西陣の織の帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「雪輪くくり入り」を合わせてみました。先日も試した雪モチーフどうしの帯合わせの織帯バージョンです。黒と朱色の組み合わせは綺麗ですが、年齢制限があるのが残念なところ。

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写真2番目は、龍村の袋帯「波兎遊跳文」を合わせてみました。波と兎を合わせた文様は、伊万里の染付の皿にも、建物の軒の装飾にもありますが、謡曲「竹生島」のワンシーンによるものです。 「月海上に浮かんでは兎も波を奔るか 面白の島の景色や」というところですね。

舟が竹生島に近づく場面で、波頭が月に照らされると兎が走っているように見える、というんですね。書かれているのはこれだけで、そこから話が展開するわけではないのですが、その一言が強烈なイメージでたくさんの文様を産んできたわけです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「ペルシア巻蔓文」を合わせてみました。更紗模様と雪にはなんの関係もないですが、意味はつながらなくても、なんとなく雰囲気の合う組み合わせはありますね。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「竹屋町兎文」を合わせてみました。「竹屋町裂」とは紗に金糸を織り込んだ生地をいい、掛け軸の表装で見ることが多いです。竹屋町にそっくりに見えるが金糸が織でなく刺繍というものがあって、それを「竹屋町刺繍」といいます。本来は地は紗ですが、普通の生地のばあいも「竹屋町」ということがあります。

「竹屋町」という言葉の由来については、竹屋町通のことだそうです。京都市内の東西の道で丸太町通りと夷川通りの間で、二条城の北側の道ですよね。そこにこの裂を作る職人さんたちが住んでいたからということです。

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写真5番目は、龍村の光波帯(仕立て上がり名古屋帯)「獅子噛鳥獣文錦」を合わせてみました。北政所ゆかりの高台寺に所蔵されている豊臣秀吉が陣羽織として着ていたという裂に取材したものです。元はペルシア絨毯で南蛮人が持ち込んだようです。光波帯のシリーズは、上代裂(正倉院裂と法隆寺裂)、名物裂、干支用に制作された世界各地の動物モチーフに取材した創作裂など多岐にわたっていて、出所を調べると面白いです。
[ 2016/09/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「雪の結晶」の帯合わせ

第三千四百九十一回目は、千切屋治兵衛の着尺「雪の結晶」の帯合わせです。

今日は、昨日の続きです。

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いちばん上の写真は、大羊居の名古屋帯「舞踏会」を合わせてみました。舞踏会の会場にあるシャンデリアを描いたものです。大彦の作品で同じタイトルで複数のシャンデリアを描いた豪華な絵羽の着物がありました。それをダイジェストにして名古屋帯にしたものと思われます。雪の結晶というのは日本の伝統文様というよりも、世界共通の科学の知識ですし、西洋のモチーフと合わせてモダンな帯合わせになります。

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写真2番目は、大羊居の名古屋帯「寿桃」を合わせてみました。大羊居の作品によく登場する桃のモチーフです。雪の結晶と意味的につながるわけではないですが、関連は無いけどなんとなく普通、という帯合わせも有って良いのかと。

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写真3番目は、一の橋が制作した小袖に取材した絞りや刺繍の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。絞りと型疋田を併用したり、桶絞りの輪郭線を刺繍してしまったり、不合理なところの多い、言ってみればエントロピーの高い作品です。こういう作品は値段の高さもあり、気味が悪いですが、人を巻き込む魅力がありますね。

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写真4番目は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。堰出しの疋田と刺繍を組み合わせた、おそらく千代田染繍に始まる様式の作品です。黒留袖として制作されていたときは、200~300万円したものですが、今は帯として値段も模様もダイジェスト的に作られています。

現在制作しているのは、もちろん千代田染繍本人ではなく、その周辺の職人さんたちでしょう。元締めとなる卸屋さんがいて、そこからメーカーや問屋に流れるようです。私は千總から仕入れています。

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写真5番目は、花也の友禅の名古屋帯「楕円取りに柳笹文」を合わせてみました。毛筆のように擦れる糊糸目が美しい作品です。雪柳、雪笹などのイメージで見てください。
[ 2016/09/01 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)