千切屋治兵衛の振袖

第三千四百六十回目は、千切屋治兵衛の振袖です。

桐鳳凰文の豪華すぎる振袖です。成人式だと浮いちゃいそうなので、結婚式の披露宴で着た方が良さそうですね。

じつは千切屋治兵衛から仕入れたわけではなく、仲介者を通して別の小売店から購入しています。仮絵羽の着物のばあい、袖の裏辺りに反物であった時の生地の端があるのですが、そこに千治の管理番号があるので、制作者が千治であることの証拠になります。京友禅のメーカーは白生地を仕入れたときに、自社の管理番号を印刷するとともにコンピュータに登録します。下請けの悉皆屋(染匠)に渡すときから小売屋に販売するまで、その番号で管理しているのです。

一方、どの悉皆屋が加工したかという情報は、紙の札で管理します。こちらは外れてしまっているのでわかりません。前の所有者は中井淳夫だと言っているのですが、証拠はありません。中井としてはイマイチということではなく、これが制作された30年ほど前は、中井ぐらいのすごい人が複数いたということなのです。

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いちばん上の写真は、全体です。

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写真2番目は、1羽目の鳳凰です。

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写真3番目は、2羽目の鳳凰です。

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写真4番目は、3羽目の鳳凰です。

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写真5番目は、桐の基本形です。
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[ 2016/07/31 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

東京友禅の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百五十九回目は、東京友禅の名古屋帯の帯合わせです。

今日は、フォーマル系に進出して付下げに合わせてみます。今回の帯は多色の友禅の更紗模様で絵画性が高いですから、友禅を使わず絵画性が高いとは言えない倉部さんの付下げで合わせてみます。倉部さんの作品にも絵画的なものはありますが、単価が高いですから、絵画として鑑賞できるほど、模様をたくさんつけるとすごく高価になってしまうんですよね。

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いちばん上の写真は、一の橋による倉部さんの作品を合わせてみました。更紗に対する孔雀で、花鳥の組み合わせでもありますし、更紗の産する国の事物の組み合わせでもあります。

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写真2番目は、野口による倉部さんの付下げを合わせてみました。エジプトの風物に取材したもので、戦前の図案集によるものです。エキゾチックどうしの組み合わせです。

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写真3番目は、一の橋による倉部さんの付下げを合わせてみました。宝飾リングをテーマにしたもので、エキゾチックな器物文様です。

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写真4番目は、野口による倉部さんの付下げを合わせてみました。蝶をテーマにしたもので、花と蝶の組み合わせです。更紗の花でも花は花、ということで。

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写真5番目は、一の橋による倉部さんの付下げを合わせてみました。宝尽くしと霞で、和風のテーマです。和風とエキゾチックでチグハグにしてみました。色目も違いますが、違和感がありますか、それとも許容範囲でしょうか。現実にはこの程度の関連性の無い帯合わせをしている人もいますが、非難するほどでもないですよね。

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写真6番目は、野口による倉部さんの付下げを合わせてみました。どちらも更紗の花で同質的過ぎる帯合わせをしてみました。お太鼓に更紗模様を収めると、枠の中に更紗がある模様になりますが、着物の色紙模様もまた枠の中に更紗があります。同質というより同じモチーフの変奏ですね。「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ」に行くときは、こういう帯合わせでいいと思いますが、もう終わったのかな。
[ 2016/07/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京友禅の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百五十八回目は、東京友禅の名古屋帯の帯合わせです。

今日は、紬と小紋の使い残し画像をお見せします。フォーマルについて試すのは、まだ私も迷いがあるので明日にします。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。飛び柄の花模様ですが、周囲がぼかしになっているので優しい雰囲気です。それに加えて、しぼの大きい縮緬の生地を使っているため、ぼかしのグラデーション効果が普通の生地より大きいように思います。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。江戸の粋を思わせるような地味で洗練された格子です。なぜ江戸の粋を引き合いに出すかというと、北斎の美人画に似た着物があるからです。

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写真3番目は、南部古代型染の着尺を合わせてみました。南部藩の御用染として、江戸時代は裃などを染めていた蛭子屋(小野さん)の藍染の着尺です。呉服業界のルートで販売されるより盛岡の直営店で販売される方が多いのではないかと思います。透明感のあるとても美しい藍が特長ですが、この帯も青が美しいので相性を試してみました。

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写真4番目は、佐藤トシさんの南部紬を合わせてみました。玉葱と茜で染めた綺麗としか言いようのないピンクです。なかなか着る機会はないので、こんな時に試さないと。

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写真5番目は、本塩沢の着尺を合わせてみました。経緯の絣の塩沢です。

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写真6番目は、かつての重要無形文化財の証紙のある結城紬を合わせてみました。百亀甲の飛び柄です。結城紬は手紬の真綿で質感としては素朴の極致のはずですが、このようなきらびやかな帯が合ってしまうんですよね。文化財のご威光でしょうか。
[ 2016/07/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京友禅の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百五十七回目は、東京友禅の名古屋帯の帯合わせです。

今日は染の着尺に合わせてみます。着物が織物であればたいていは縞や格子や幾何学模様なので、帯はエキゾチックでも和風でも合いますが、染の着物は、たいてい模様が具象的なので帯の更紗との相性が問題になりますね。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。四角い取り方の中に、割付文、七宝文、型疋田などを入れたものです。これらは日本の伝統的な文様でありつつ、人類がみんな理解できる普遍的な模様でもあるので、帯が和風でもエキゾチックでも合います。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。短冊という日本的な取り方の中に、国籍不明の抽象的な幾何学模様を入れた着尺を合わせてみました。更紗の帯に合わせる着物は、更紗に合わせてエキゾチックが良いのか、あえて反対の和風が良いのか、それが問題になると思います。それに対する答えでもありますね。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。抽象的な曲線模様の着尺を合わせてみました。更紗は具象的な曲線模様ですから、曲線を同質性、抽象と具象の違いを異質性として合わせてみた帯合わせです。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。孔雀や象など更紗の原産地に居そうな動物を飛び柄にしたものです。更紗に対する帯合わせとして、更紗の原産地に居る動物や民族衣装を着けた人物を合わせるのは理想的な組み合わせだと思います。なぜなら、意味で合わせるばあいの帯合わせのコツは、同質すぎず異質すぎず、ちょっとかする程度の同質性にあるからです。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。更紗模様の着尺で、着物も帯も全身更紗という同質すぎる帯合わせということになります。普通はしませんが、チェッカーズがデビューしたときの全身チェックの衣装みたいなもので、更紗がテーマの展覧会に行くときなど、テーマが合えばありうると思います。せめてもの救いは、帯の模様の周りに余白があり、更紗どうしが直接接していないことですね。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。上の帯合わせは、更紗どうしということで、同質性が強すぎておかしかったのです。というわけで今度は、更紗というエキゾチックに対して源氏香という異質すぎる帯合わせをしてみました。「絶妙」とは思いませんが、普通にある帯合わせで、パーティー会場で知らない人がこういう帯合わせをしていれば、違和感なくすれ違うのではないかと思います。
[ 2016/07/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京友禅の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百五十六回目は、東京友禅の名古屋帯の帯合わせです。

今回紹介している帯は、多色で重厚な友禅に、箔や金糸の刺繍を施した豪華なものです。フォーマルは西陣の袋帯担当、カジュアルは染の名古屋帯担当、と決めつけていると使いみちがわからなくなる帯ですね。西陣の袋帯は、捨松も洛風林も買っちゃったよという方は、こういう方面に進出しても良いのでは。

今日は紬に使います。着付けの教本を読んだ人は、紬に金を使った帯はいけないんじゃないの、なんて言いますが、それは邪悪な思想なので、すぐ捨てた方がいいと思います。紬も、少し昔までは野良着として使われていた素朴なものから、作家が伝統工芸展のような競技会で審査員に評価されるためだけに作るものもあります。紬と言っても全然成り立ちが違うのですが、それに合わせる帯も全然違って良いのです。

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いちばん上の写真は、山下八百子の黄八丈を合わせてみました。今回は、帯の華やかさに合わせ、作家モノの紬を合わせています。

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写真2番目は、秦荘紬を合わせてみました。近江上布の産地で近年織られるようになった正絹の紬です。越後上布と塩沢の関係でしょうか。

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写真3番目は、秋山真和の「綾の手紬」を合わせてみました。19世紀に首里で織られて実在する作品を再現したものです。

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写真4番目は、大城カメの琉球絣を合わせてみました。大城カメの晩年の玉糸を使った精緻な絣です。

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写真5番目は、佐藤トシの南部紬を合わせてみました。もともと岩泉の製糸工場の社員であったのが工場が閉鎖された後、その工場の建物で、手紡ぎ、草木染、手織りで制作していました。

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写真6番目は、齋藤光司の舘山唐桟を合わせてみました。木綿の縞と言えばカジュアルの代表ですが、その一方で、希少な手織りで人気作家の作品です。今回は、作家モノであるという方に着目して合わせています。
[ 2016/07/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京友禅の名古屋帯

第三千四百五十五回目の作品として、東京友禅の名古屋帯を紹介します。

少し昔、北秀があったころは、大松や千ぐさの作品として、こんなエキゾチックな雰囲気の友禅がありました。模様のテーマだけでなく、色も伝統的な友禅の色を離れてモダンな雰囲気になっていました。私は、今回の帯のような雰囲気の作品に出合うと北秀を思い出します。

今でも、「美しいキモノ」などを見ると最上さんなどの名前で、こういう雰囲気の東京友禅が掲載されていることがありますよね。実際に現在の東京友禅の業界では、どういう状況で誰が作っているのかよくわからないんですけどね。ちなみにこれは千總で仕入れています。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は少し下の部分の近接です。

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写真4番目はさらに近接してみました。模様の中心部分にアイキャッチポイントとしてあしらいが入っています。

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写真5番目は腹文です。

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写真6番目は、腹文の近接です。

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写真7番目は、お太鼓の裏側です。
[ 2016/07/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋で仕入れた着尺の帯合わせ

第三千四百五十四回目は、一の橋で仕入れた着尺の帯合わせです。

今日は織の帯で合わせてみます。普通、このような具象画的な着尺(小紋)に対してはシンプルな織帯を合わせるのが普通で、昨日までのように絵の上に絵を載せて勝負させるような帯合わせの方が特殊です。一般的には、絵の上に絵を載せて「センスが良い」などと言われようと思うのは、駱駝が針の目を通るようなものだと思います。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「彩雪輪」を合わせてみました。今日はゴレンジャーみたいに色で合わせています。まずレッドです、模様はシンプルに雪輪。

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写真2番目は、龍村の仕立て上がり名古屋帯「光波帯」の1本「獅噛鳥獣文錦」を合わせてみました。イエロー担当は、豊臣秀吉が来ていた陣羽織として伝わるペルシア絨毯に取材したものです。この作品は、帯の意匠として模様が小さくなっていますが、元作品は龍村が正式に再現してもいます。

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写真3番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。おび弘は証紙番号607ですから、「佐波理綴」で有名な池口と同じです。本金引き箔の手織りの帯で、デザインはモダンでも技術は伝統そのものです。戦隊モノのブルーは水色ですよね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「甲比丹縞格子」を合わせてみました。近世、東インド会社経由で輸入されたモールに取材したものです。同じころ輸入された唐桟縞も高級品だったのでしょうが、木綿の縞とは格違いの本金糸(モール)を織り込んだマハラジャ専用超高級品です。緑担当。

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写真5番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。ピンクはやめて紺にしてみました。紺とベージュの間道ですが、ベージュは着尺の模様にも使われているので、ほとんど色数を増やさない帯合わせとして選んでみました。間道なので色だけでなく模様も増やしていません。

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写真6番目は、洛風林の袋帯「名物小枝文」を合わせてみました。梅唐草に宝尽くしを合わせた意匠で、名物裂の「大黒屋金襴」に取材したものです。白地。
[ 2016/07/25 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

一の橋で仕入れた着尺の帯合わせ

第三千四百五十三回目は、一の橋で仕入れた着尺の帯合わせです。

今回の着尺は、訪問着に匹敵するぐらい重厚な模様が付いた存在感のある作品です。そのような着物に友禅の帯を合わせると存在感で負けて帯の模様が埋没してしまいます。そこで昨日は、木村雨山を始めとする有名作家に登場してもらいました。今日は、重量感と立体感で、同じ面積なら友禅に勝てる刺繍で合わせてみたいと思います。

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いちばん上の写真は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。堰出しの疋田と手刺繍を合わせた名古屋帯です。堰出しの疋田とは、友禅の糊を粒として置いて防染する疋田です。つまり疋田には、本来の絞りの疋田、型疋田、安田の描き疋田、そしてこの堰出しの疋田があるわけです。堰出しの疋田は精緻なものですが、手描きですから粒の形や大きさ、配列に微妙な揺らぎがあるはずです。その辺が鑑賞のポイントですね。

着尺の模様が短冊で四角ですから、丸い雪輪を合わせています。

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写真2番目は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。これも堰出しの疋田と手刺繍を合わせた名古屋帯ですが、疋田は菱形になっています。刺繍は着尺と同じ琳派風の草花図で、着尺の模様を帯の刺繍で復習するような感じになっています。

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写真3番目は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。これも堰出しの疋田と手刺繍を合わせた名古屋帯ですが、疋田は四角で、着物の意匠とシンクロする感じになっています。刺繍は龍田川で、着尺は四季模様でも帯で秋のコーディネートになりますね。

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写真4番目は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。これも堰出しの疋田と手刺繍を合わせた名古屋帯ですが、疋田は大胆な三角形の取り方になっています。刺繍は芒と秋草で秋のコーディネートになりますね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の塩瀬地の袋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんで、乾山の陶画に取材しています。友禅と箔によるもので、存在感があるので合わせてみました。

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写真6番目は、野口のしぼの大きい縮緬地の友禅の名古屋帯を合わせてみました。大きな模様の重厚な友禅なので、存在感で着尺の模様に勝てるかと思い、選んでみました。着尺の模様は琳派の四季花ですが、菊はないので、帯の琳派の菊で花の種類を補完しています。
[ 2016/07/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋で仕入れた着尺の帯合わせ

第三千四百五十二回目は、一の橋で仕入れた着尺の帯合わせです。

訪問着並の存在感のある着尺(小紋)に対する帯合わせというテーマです。訪問着並、ということであれば、袋帯を合わせれば良い、というのが正解だと思います。留袖に合わせるようなものではなく、「洒落帯」と呼ばれるようなものと言うことになりますね。

しかし今回は、染の名古屋帯を合わせてみようと思います。存在感で袋帯に負けないように偉そうな作家モノを集めてみました。

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いちばん上の写真は、木村雨山の加賀友禅の名古屋帯を合わせてみました。「立山連峰」と題されたもので、通常の染料ではなく胡粉を混ぜて油絵のようなタッチにしてあります。そのため生地は不自然な風合いになっていますが、帯のお太鼓だから支障はありません。着物では生地が体の動きに馴染んでくれなくなるし、畳めないので、このような加工は許されませんね。

視覚的な効果を優先して生地の風合いなんか放棄してしまうところは、作家モノの面目躍如というところですが、地色の強烈なオレンジもあって、なかなか帯合わせに使う機会がありませんでした。

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写真2番目は、羽田登喜男の鴛鴦を合わせてみました。人間国宝の指定を受けた直後ぐらいに仕入れたもので、たぶんの帯を作り始めた最初期のものでしょう。羽田登喜男は人間国宝指定後も活動期間が長く、その間、帯は市場に出続けたので、ネットで安く見ることもあり、そこがちょっと残念なところです。

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写真3番目は、中町博志の加賀友禅の名古屋帯「重陽」を合わせてみました。着尺に使われている唯一の無彩色でない色は黄色なので、それを意識して黄色い菊を合わせてみました。今日の帯合わせの中でいちばんのお勧め、そしていちばんの冒険です。

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写真4番目は、中町博志の加賀友禅の名古屋帯「砕」を合わせてみました。着物の模様の短冊の四角形は、すべて真っ直ぐ並んでいます。帯ではその四角形はごちゃごちゃに崩れています。自分で創って自分でそれを否定してみせる、ピンで漫才をやってる芸人さんみたいですね。

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写真5番目は、玉那覇有公の紅型の名古屋帯を合わせてみました。紅型の帯というのは、紬の着尺に対して使い勝手が良いものですが、今回は着尺にも使えました。無彩色のみだったからでしょうね。
[ 2016/07/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋で仕入れた着尺

第三千四百五十一回目の作品として、一の橋で仕入れた着尺を紹介します。

大きな短冊を配した着尺(小紋)です。短冊の意匠というのは珍しいものではないですが、普通は小さい飛び柄で、これほど大きいものは滅多にないです。小さい短冊を飛び柄にした小紋は上品なものですが、モチーフは同じでも大きさが違うと全然違う意匠になるという例ですね。

仕入れ先は一の橋ですが、制作したのは一の橋ではなく、一の橋の営業員が制作者から販売を委託されて持って歩いていたものです。実際に制作したのは、誰かわかりませんし教えてももらえません。直接買えばもっと安くなるんじゃないの、と言われそうですが、その通りなので秘密にされているんですね。私としては、デザインが斬新なので、1反買ってみたというところです。

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2枚の写真を繋ぎ合わせてみましたが、これが模様の一回転です。2mほどで、これが6回転ほどして一反の反物になっています。1つの模様のパターンが2mあると、身丈より長いわけですから、仕立てて着付けてしまうと、全身チェックしないと模様の繰り返しのポイントはわからないのではないでしょうか。そうなると訪問着みたいなものですねえ。

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写真2番目以降は、各部を適当に撮ってみました。わずかな黄色を除けが、墨絵の濃淡を思わせる表現ですが、京型友禅は、濃淡も型を使うので、濃淡表現が多いということは、それだけ多くの型を使っているということです。

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芒と女郎花ですね。女郎花の花の表現の黄色が効果的です。写生というより琳派の草花図の写しですね。

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楓の葉は黄色ですね。芒の穂や葉は1枚の型による平明な表現なのに、この楓の幹は型を多用した陰影のある表現です。さらに下の写真の竹は、型疋田を使っており、表現が多様なんですね。それが無彩色の型染なのに平板にならない理由なのでしょう。

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竹は型疋田による表現、椿は1つだけ黄色でアイキャッチポイント化。

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梅もあるので、春秋対応ですね。蔓植物の蔓の回転は日本画みたいでとても上手。

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百五十回目は、野口の着尺の帯合わせです。

この「松葉」の着尺の帯合わせは今日で最後にしますので、使い残しの画像をお見せします。

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いちばん上の写真は、花也の刺繍の華文の名古屋帯を合わせてみました。華文の形に防染して地色を染めて白抜き状態を作り、後描き友禅と刺繍を作って、地色のピンクの他に、白、黄色、水色の繊細なグラデーションを作っています。刺繍も後描き友禅と完全に連携し合って、継ぎ目無くグラデーションを形成しています。

なぜいつもの糊糸目でなく、ゴム防染の後染にしているのかというと、全体の色の調子を見ながら完璧なグラデーションを作るためです。糊糸目の友禅とゴム糊の防染による後描き友禅をくらべれば、糊糸目の方がありがたいわけですが、ここでは技法の優位性よりも、完璧なグラデーションの方を優先しているわけです。

地色は淡いピンク系ですが、着物の地色の焦げ茶とは相性が良いです。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「桐」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の仕立て上がり名古屋帯「光波帯」の1本「遠州七宝」を合わせてみました。名物裂の遠州緞子に取材したものですが、商標の関係で「遠州七宝」というネーミングになっています。

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写真4番目は、龍村の仕立て上がり名古屋帯「光波帯」の1本「糸屋輪宝手」を合わせてみました。名物裂としての一般名は、糸屋金襴です。糸屋という豪商が所有していたという意味です。輪宝のデザインが載っているので、「糸屋輪宝裂」ともいいますが、龍村の商標に「手」が付いているのは、完全な再現ではないよ、という意味でしょう。

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写真5番目は、清原織物の爪掻綴の名古屋帯を合わせてみました。清原織物は工房が滋賀県に有って、きちんと日本で織られている綴です。(綴の工房については、他にも元は京都御室に住んでいたのが滋賀県に移転したという例がありますね。)

この作品は、色紙の中にいる鳥が鳳凰で、ちょっと格が高いですね。鳥の種類に合わせるように、地には金糸が織り込んであります。
[ 2016/07/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百四十九回目は、野口の着尺の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、秀雅で仕入れた東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。堰出しの疋田と刺繍を合わせた作風は、かつては黒留袖として千代田染繍が制作し北秀が売っていました。値段は200万円から350万円ぐらいまででした。北秀破産後は、元社員が運営する秀雅が売りやすい名古屋帯にアレンジして1/10ぐらいの値段で売っていました。実際ん制作していた人はわかりませんが、千代田染繍ゆかりの個人の作家だったのでしょう。

この作品は、名古屋帯らしくない意匠ですが、それはかつての黒留袖の意匠をそのままミニチュア化したものだからです。かつての最高級黒留袖の片鱗が味わえる名古屋帯ですね。北秀の最盛期を知っている私にとってはありがたいですが、世間はどうでしょうか。

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写真2番目は、菱一が扱っていた東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。名物裂の荒磯に取材したもので、本歌を連想すれば、名物裂ですからそこそこフォーマル感があり、松葉の着尺に合うような気がします。

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写真3番目は、花也の琳派テーマの名古屋帯を合わせてみました。いちばん外側が霞、その中は琳派様式の波、その中は色紙、いちばん内側は蛇籠に流水模様、という入れ子構造になっています。金屏風を思わせる琳派模様ですから、多少のフォーマル感が有ります。

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写真4番目は、花也の名古屋帯「槇に流水」を合わせてみました。槇は、「槇檜図」など琳派の様式で描いてあります。槇の木から松葉が散っているように見えると妙ですが、同じぐらいのフォーマルっぽさということで。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「硯」を合わせてみました。硯は器物模様であるとともに、ここでは取り方の役目もしています。取り方内部は羊歯と笹ですから季節に配慮する必要はないです。器物模様は種類や使われ方で意味やフォーマル度が変わってきますが、硯のような文物は着る人がお勉強が好きそうに見えますし、多少のフォーマル感もあります。

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写真6番目は、東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。いちばん上で紹介したものと同じシリーズですが、事情があって千總で仕入れています。刺繍だけで和楽器を表現したもので、これも器物模様ですね。和楽器は、宮中の雅楽器の演奏など連想すれば、フォーマル感もありますし、オーケストラのコンサートに着て行くこともできるので便利です。

着物や帯の模様というのは、目的の場所と微妙にずらすとかっこいいので、クラシックのコンサートに行くときに、バイオリンの柄ではなく和楽器に柄にすると上級者っぽく見えますよね。
[ 2016/07/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百四十八回目は、野口の着尺の帯合わせです。

今回の着尺は、織の名古屋帯でも友禅の帯でも合いますが、今日は友禅の帯で合わせてみます。染の帯が見たいという要望がけっこうあるので。またこのブログで使っている着物や帯はすべて売り物です。お気軽に値段などお問い合わせください。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の友禅の染め帯「松重ね」を合わせてみました。実際に制作したのは、中井亮さんです。尾形乾山の陶画に取材したものです。シンプルな絵ですが、普通の友禅で染めただけではなく、顔料も併用しているかと思えるほど色が強いですが、さらにその上に、金の粉末による箔加工をして表現を強めるなど、けっこう凝ったことをしています。もともとの重厚な陶画の色を、絹地の染で再現するため、いろいろ工夫しているのでしょう。

帯は松の木で、そこから松葉が散って着物に広がるという、帯と着物で1つの絵になるような帯合わせを考えてみました。

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写真2番目は、花也の名古屋帯「地割松笹図」を合わせてみました。ダンマル描きと箔と刺繍を併用した重厚な作品です。絵画的な技法であるダンマル描きと、装飾的な金箔は相性が悪いように思いますが、実際に併用するとこのような重厚な雰囲気になるようです。裏から見るとベースはダンマル描きだとわかります。

これも、帯の松から松葉が落ちたように見えるでしょか。

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写真3番目は、花也の名古屋帯「慶長扇子模様」を合わせてみました。半開きの扇子を描いていますが、それは同時に取り方にもなっていて、中に菊唐草、亀甲、松など友禅模様がぎっしり入っています。松というのは、枯れて落ちて松葉になって木枯らしに吹かれても、野草よりは格が高い気がします。そこで帯も扇子などフォーマル系なモチーフを選びました。

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写真4番目は、花也の名古屋帯「地紙羊歯模様」を合わせてみました。扇子から骨を外した扇面は地紙ともいいます。羊歯文は、1年中枯れないところから縁起が良いとされています。松葉が野草より格が高いなら、良い組み合わせかも。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「霞取り羊歯文」を合わせてみました。花也は、安田に由来する精緻な糊糸目の作品が多いですが、このような中井淳夫に由来する重厚な箔と友禅の作品も作っていました。
[ 2016/07/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺

第三千四百四十七回目の作品として、野口の着尺を紹介します。

単色で1つのテーマの着尺です。松葉が散る季節と言えば晩秋あるいは冬で、地色もまた秋から冬に向いた色ですから季節もまた1つです。色もテーマも季節も1つの着物は、当然シンプルになるでしょうが、シンプルだから意味も薄いということはないですね。、

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ってみました。松葉というのは、形はいつも同じですが、方向性のある形なので、その向きで風を表現でき、動きのある模様を作ることができます。動きがあれば、シンプルでも退屈でない模様になりますね。

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写真2番目は、近接です。

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写真3番目は、もっと近接です。

一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせ

第三千四百四十六回目は、一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせです。

「紅葉吹寄せ」の帯合わせは今日で最後にしますので、私が気に入ったのを適当に合わせています。

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いちばん上の写真は、紫絋の袋帯を合わせてみました。正倉院にあるさまざまな染色品(織物はない)に取材したものです。正倉院の染色といえば、天平の三纈が有名ですが、それ以外に刺繍作品もコラージュしています。かなり自由にアレンジしていますが、帯としての使い勝手はすごくいいです。

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写真2番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。前田育徳会が所有する有栖川裂の龍文部分ですが、偶然、色目が合っているので選んでみました。

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写真3番目は、帯屋捨松の手織りの高級バージョンの袋帯を合わせてみました。立沸に花文を合わせた意匠ですが、近世の唐織の能衣装をほぼ写したものです。

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写真4番目は、紋屋井関の「御寮織」シリーズの1本「銀平脱の合子」を合わせてみました。銀平脱とは恐ろしく手間のかかる古代の工芸技法で、作品の用途は聖武天皇の碁石入れです。白石と黒石を入れるために象と鸚哥の2種類があります。いちばん上の例もそうですが、金の単彩というのは使い勝手がいいですね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「有朋文」を合わせてみました。楓だけ(わずかな桜)の着物なので、帯で物語性を加えることになりますね。黄色または辛子色というのは、あまりない色ですが、使いようでとても綺麗です。

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写真5番目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。ドーンと多色で華やかな帯を持ってきましたが、合ってしまいますね。着物は色も淡く、模様の量も控えめですが、存在感で負けていないのは絵が上手だからでしょう。
[ 2016/07/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせ

第三千四百四十五回目は、一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせです。

今日は、単純で伝統的なモチーフの袋帯を合わせてみました。ものによっては、あちこちで使われて手垢つきまくりのものもありますが、配色などによってお洒落に見えるのもありますね。

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いちばん上の写真は、洛風林の袋帯を合わせてみました。実際に織ったのは、当時は洛風林同人だった帯屋捨松です。単純な亀甲文様ですが、洛風林が企画するとお洒落に見えてしまいます。配色が上手いんでしょうね。

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写真2番目は、織悦の袋帯「彩籠目小文」を合わせてみました。これも単純な伝統モチーフですが、配色の上手さでお洒落に見えているんでしょうね。亀甲や籠目というモチーフは、日本人の財産のようなモチーフですが、使い方を誤ると野暮で古臭くなりますよね。

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写真3番目は、織悦の袋帯「彩雪輪」を合わせてみました。雪輪も伝統モチーフながら、どんなに使い方を誤っても野暮にも古臭くもなりません。雪輪模様で野暮な着物なんて見たことないですよね。ありがたいものです。問題はこの朱色の地色ですが、若い人がこの組み合わせで着ていたらすごくかわいいです。成人式の振袖用の帯として買って、30代まで着るというのはどうでしょうか。

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写真4番目は、織悦の袋帯「料紙文山川能宣集」を合わせてみました。文様の中には、正倉院に由来するもの(超古典なのに外来でエキゾチック)、王朝文化に由来するもの、武家文化に由来するもの、江戸の粋を連想させるもの、などありますね。料紙は、奈良から平安時代、写経や和歌を書くための紙ですが、その装飾の1つが道長取りと言われるものですね。王朝文化に分類されるものは、戦いが本業の武家の文化ではないと思うからか、ゆったりおおらかに見えますね。

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写真5番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。名物裂の間道裂に取材しながら、元の裂の名前を出さず、適当な綺麗なネーミングをしているシリーズです。おそらく商標登録の関係でしょう、本来の名物裂の間道裂に準じたネーミングをしている帯は、すでに高島屋から発売しているのかもしれません。
[ 2016/07/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせ

第三千四百四十四回目は、一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。俵屋宗達が修復時に描いたという反っくり返った鹿があるので、平家納経をテーマにしたものだとわかります。安藝の宮島と言えば、紅葉が綺麗で有名ですから、そんなつながりで帯合わせをしてみました。

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写真2番目は、織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。紅葉と流水で龍田川を作ってみました。水をテーマにした帯は、それだけでは単純で絵的につまらないですが、桜と合わせて「桜と流水」をつくったり便利ですよね。

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写真3番目は、服部の袋帯「こはく錦」シリーズの1本「オリエント更紗24k」を合わせてみました。かつて高級品として大人気だった「こはく錦」シリーズの中でも、極細に裁断された本金の引き箔糸を使って手織りされた上級ランクのものです。上の2例では、意味をつなげることを重視しましたが、唐花文はフォーマルでさえあれば、意味に関係なく合わせられて便利です。

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写真4番目は、織悦の袋帯「東大寺花文」を合わせてみました。正倉院御物として多くある上代の唐花文で、主文と副文の2つのモチーフから成っているのが意匠の特徴です。クローズアップして帯の模様にする場合、普通は主文にクローズアップするものですが(上の例はそうですよね)、この帯は副文にしていますね。

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写真5番目は、織悦の袋帯「遠山霞桜楓文」を合わせてみました。楓ということで、模様のテーマの一部が重なっています。「大事なことなので2度言いました。」みたいな帯合わせになってしまいました。こういうのってどう思われますか。

2番目の例では、楓と流水で模様が重ならないように龍田川を作ることができましたが、現実には、紅葉模様の着物に龍田川の帯を合わせて、楓を重ねてしまう例が多いと思います。
[ 2016/07/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の細部

第三千四百四十三回目は、一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」の細部です。

今日は細部を紹介します。せっかくの安田なので、細部をよく見てくださいね。

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いちばん上の写真は、マエミとオクミの模様がつながる部分の近接です。

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写真2番目は、マエミの上の部分の近接です。

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写真3番目は、マエミの下の部分の近接です。

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写真4番目は、後姿の背中心近くの模様の近接です。

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写真5番目は、あしらいのある紅葉の近接です。紅葉は、輪郭は乳白色の糊糸目で描かれ、彩色は透明な色彩でグラデーションを多用しています。全ての紅葉がそのような描き方をしているので、全体は柔らかいタッチですが、その紅葉のいくつかに対し、金糸の駒繍で完全に輪郭を取るようながちっとした刺繍をしています。

その部分が、アイキャッチポイントになって、全体にメリハリが生まれているんですね。しかし、このようなあしらいの仕方は、安田の様式ではなく、一の橋の様式です。おそらく、友禅が完成した段階で一の橋に納品され、一の橋のセンスであしらいがされたのでしょう。

[ 2016/07/14 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」(制作したのは安田)

第三千四百四十二回目の作品として、一の橋の付下げ「紅葉吹寄せ」を紹介します。実際に制作したのは安田です。

以前、千切屋治兵衛や北秀から仕入れたものとして紹介していた安田はお父さんの時代のもの、最近、一の橋から仕入れたものとして紹介する安田は息子さんのものです。お父さんの時代の安田は、完璧な糊糸目、完璧な描き疋田と型疋田(両方使い分けていた)が特長で、意匠はいわゆる安田様式でした。

安田様式とは、友禅模様を取り方の中に押し込め、その部分だけを友禅と刺繍と箔で重加飾し、取り方の外部は白揚げで波などをさらっと描くものです。取り方内部は豪華な江戸時代前期の小袖の様式に似て、取り方外部は粋な江戸後期の小袖の様式に似ていました。そのため豪華でありながらすっきりしていましたが、それだけでなく、1枚の着物で江戸時代の小袖の歴史を説明してしまうという奥深いものでもありました。

欠点は、小袖の歴史を真面目に踏襲しているだけに、誰でも真似で来てしまい、真似した作品はどれでもそこそこ上品にできてしまうことです。そのため、京都だけでなく十日町でも安田風の訪問着がいっぱいできてしまい、みんなが見飽きてしまったのです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。さて、安田の息子さんの方の作風ですが、糊糸目が美しいのは当然ですが、疋田は有っても補助的です。色は淡いというより透明感が有ってグラデーション効果を多用しています。しかし親とのいちばんの違いは、様式美を追求するというよりも詩情があることです。様式は真似できますが、詩情は真似できないですから、十日町でそっくりさんが作られる危険はありません。

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写真2番目は後姿です。京都の着物の制作者、悉皆屋とか染匠とか言われる人たちは、職人さんたちに仕事を割り振るのみで、自分で筆を持つことはありません。オーケストラの指揮者のようなものですね。それはあの中井淳夫さんであっても同じです。しかし、安田の息子さんは絵が描ける人で、自分で下絵を描くそうです。京都の悉皆屋さんとしては異端ですよね。

それがこの人の作品の詩情につながってくるのか、それとも京都の友禅界がしぼんだ結果、指揮者も何か1つ楽器の演奏をしなければならなくなったのか、芸術という視点から見るか、経済という視点から見るかの違いですね。

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写真3番目は袖です。もう片側の袖にも同じぐらいの量の模様が有ります。

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写真4番目は胸です。明日は細部を紹介します。安田はやっぱりすごいですよ。
[ 2016/07/13 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百四十一回目は、野口の着尺の帯合わせです。

今日でこの着尺の帯合わせは最後にしようと思いますが、使い残した画像を染め・織り混ぜて紹介します。適当に合わせていますが、色合わせが綺麗になるように、ということだけは意識しています。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「琳派草花柴垣文」を合わせてみました。白地になんの意匠的仕掛けもなく、琳派の草花模様を並べたものですが、織悦の色というのは透明感があって、それだけで十分に美しいです。純粋に色合わせだけで選んだ帯合わせです。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「寄せん裂」を合わせてみました。蒐集した名物裂を寄せ集めて1つの裂にする文化というのは昔からありますが、これはそれを模して1つ織物として織ったものです。色目重視で合わせています。

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写真3番目は、龍村の仕立て上がり名古屋帯を合わせてみました。オスカルさまが登場するときの背景みたいな薔薇の意匠です。黄色の帯も結構合いますよね。

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写真4番目は、龍村の仕立て上がり名古屋帯である光波帯のシリーズの1点「花鳥梅花文錦」を合わせてみました。正倉院に遺品の多い意匠で、その多さから国産であろうとされています。オリジナルは緑色ですが、龍村には緑と赤があります。

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写真5番目は、秀雅の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは、千ぐさあるいはその系統の職人さんです。千ぐさ作ということで仕入れていますが、秀雅自体が廃業してしまったので証明してくれる人が無いです。作風や作品のレベルは千ぐさですから、千ぐさでないとしても千ぐさ由来の職人さんのものでしょう。

意匠は「裂取り更紗」と言われるもので、高価な南蛮渡りの更紗の裂の蒐集品を並べたという趣旨の意匠です。黒地に浮かぶ更紗の色目が、着物によく合うので選んでみました。

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写真6番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。扇子が2本で、その扇子の形が取り方となって、中に松・亀甲・菊唐草・割付文などの模様が入っています。器物模様でも扇子を選ぶとフォーマル感が出るので、小紋でもレストランの結婚式なら行けそうな感じがしますね。
[ 2016/07/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百四十回目は、野口の着尺の帯合わせです。

昨日は加賀友禅で合わせてみましたので、今日は京友禅で合わせてみました。

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いちばん上の写真は、橋村重彦の琳派の草花図に取材した名古屋帯を合わせてみました。1つ1つの草花については、琳派の様式を写していて、写生とは言えません。しかし、装飾というより絵画的で、昨日の加賀友禅とそれほどの違いはないですね。加賀友禅作家でも写生というより琳派的な人もいますものね。

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写真2番目は、野口の名古屋帯を合わせてみました。琳派的ではありますが、上の作品に比べると装飾的です。「着物の柄」っていう感じになりますね。

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写真3番目は、野口の名古屋帯を合わせてみました。江戸時代後期の小袖として流行した御所解模様の一部を取り出したものです。型疋田も多用されていますし、上の作品よりもさらに装飾的でし、フォーマル感も高まっています。このくらいの様式になると、加賀友禅との区別は明確ですね。

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写真4番目は、花也の名古屋帯「椿」を合わせてみました。着物の明るくて爽やかな多色に対し、春の花を合わせて、春アピールをしてみました。椿は意匠として再構成されています。葉は線描きになっていて、糊糸目の味わいがはっきりわかり、それが見どころですね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。パステルカラーの濃淡で春アピールをしてみました。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。麦の収穫期、すなわち麦秋というのは、九州で5月、北海道で7月ですから、単衣の装いとして合わせてみました。淡い綺麗な色の着物に対し、コントラストの強い色の帯を締め、しかも単衣、というところを狙っています。
[ 2016/07/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百三十九回目は、野口の着尺の帯合わせです。

今日は加賀友禅の染め帯を合わせてみました。明るい多色で柔らかいタッチの格子ですから、やはり明るい多色の加賀友禅を合わせてみました。色目が同じ系統で、絵が格子と具象画で反対ならば良い組み合わせになると思います。

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いちばん上の写真は、中町博志の加賀友禅の名古屋帯を合わせてみました。描かれているのは葱です。花の下に見える青い実のようなものは、むかごですね。植物の中には、実や根で増えつつ補助的にむかごを形成するものもあります。

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写真2番目は、中町博志の加賀友禅の名古屋帯を合わせてみました。「砕」というタイトルです。着物が格子で帯でその格子が壊れているという、だまし絵的な視覚効果を狙ってみました。この帯は、着崩れてもばれない意外に便利な帯です。

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写真3番目は、羽田登喜男の名古屋帯を合わせてみました。羽田登喜男が人間国宝になった直後ごろのものです。この後、大量につくられるようになり、今でも京都きもの市場で安く売っていますよね。後に作られるのは、鴛鴦が2羽で花もついてとても気前の良いものになっています。初期のものは、この作品のように鴛鴦1羽ぐらいしかいなかったんですよ。

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写真4番目は、羽田登喜男の名古屋帯を合わせてみました。これも羽田登喜男が人間国宝になった直後ごろのものです。初期のものは、模様のつけ方が控えめで、この作品のように鴛鴦が2羽いるものは、鶏冠に金彩が無かったのです。その後、どんどんサービスが良くなっていったのです。

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写真5番目は、羽田登喜男の名古屋帯を合わせてみました。これも羽田登喜男が人間国宝になった直後ごろのものです。蕨を描いたものですが、シンプルながら、私はこれがいちばん好きです。

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写真6番目は、羽田登喜男の名古屋帯を合わせてみました。これも羽田登喜男が人間国宝になった直後ごろのものです。水仙ですね。これが制作された当時は、鴛鴦だけが先に売れて草花は残っていたものですが、今となってはこの方がネットで安く買ったと思われなくていいかも。

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写真7番目は、百貫華峰の加賀友禅の名古屋帯を合わせてみました。百貫華峰も加賀友禅でもっとも高い値段を付けられる作家でした。この人は、日展作家として入選を重ねて有名だったのです。
[ 2016/07/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺

第三千四百三十八回目の作品として、野口の着尺を紹介します。

明るい色の多色の格子です。このような作品は、型染なのか手描きなのかわかりにくいです。線が揺らいでいても、それが手描きの味なのか、型としてそういうデザインになっているのかわからないですから。また、普通の友禅の模様ならば、型染と手描きならば値段が全然違うのでわかりますが、このような格子のばあい、手描きと型のコストの差がわからないですから。

見分ける方法としては、型継ぎの痕跡を探すことですね。小紋のデザインによっては型継ぎが全く分からないものもありますが、このような凹凸の線をぴったり合わせるのは難しいのでわかるでしょう。また線の揺らぎのうち、特徴のある箇所を1か所決めて、その形が繰り返すか探すという方法もあります。そのような方法で検討してみると、どうも手描きのようです。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は、もっと近接です。防染したくっきりした線ではなく、染料が自然にしみ込んだ柔らかい線です。そういうことが作品全体の雰囲気を決定しますね。

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写真4番目は、生地の拡大です。上の写真を見ると、野口がいつも使っていたしぼの大きい縮緬ではなく、緯糸だけが横線として浮いて見える生地です。どんなものか拡大して確認してみました。見た目通りの織り方ですね。

千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百三十七回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせです。

今回の帯は、地色は焦げ茶色で、模様もほとんどの面積が疋田という単彩という一見地味な作品です。このような帯をフォーマル、カジュアルにかかわらず綺麗な色の着物に合わせると、対比がとても綺麗です。

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いちばん上の写真は、吉岡常雄の天然染料の紬の無地を合わせてみました。コチニールとしぶきで染めたということですが、紬の白生地を後染めしたものでありながら、30年放置しても全く退色していないです。さすが吉岡さんですね。ピンクの着物が派手で着られなくなったら、焦げ茶色の帯を合わせて寿命を延ばすという手もありますね。

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写真2番目は、新田機業の紅花紬を合わせてみました。紅花というのは赤い染料ですから、年輩者は着られないイメージがあります。実際の紅花はオレンジの花ですが、水溶性の黄色とその後に出てくる赤とに分離することができます。それに藍染めを合わせると、赤・青・黄の三原色が得られますから、理論上、あらゆる色が作れるわけです。

この作品では、グレーとベージュに合わせ、さらにピンクをグラデーションにすることで、年輩者でも着られそうで、ピンクの綺麗さも保つという上手な商品づくりをしています。

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写真3番目は、野口の着尺に合わせてみました。多色の大きな花と綺麗な黄色の無地部分が横段になっている、野口しか作れないような着尺です。しぼの大きい縮緬を使用し、その生地が染料をたくさん吸い込んで、深い色と落差の大きいグラデーションを形成している、というように感じさせることこそ、野口の独自の様式なのだと思います。これを見てしまうと、他社の小紋は全て、生地の上に型で色をぺらっと乗せただけのようにしか見えなくなりますからね。

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写真4番目は、野口の着尺に合わせてみました。これも横段の意匠ですが、模様部分は写生的な草花ではなく、慶長縫箔の写しになっています。元作品は刺繍ですが、型染に変更しているんですね。横段の色が切り替わる部分は、上の作品はくっきり変わっていますが、この作品はグラデーションになっています。それだけでも大きく印象が変わるものですね。

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写真5番目は、花也の付下げを合わせてみました。綺麗なピンクに染めてありますが、生地が紬なので光沢が少なく、それほど若向き感はありません。加工は糊糸目で安田的なクオリティです。

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写真6番目は、野口の着尺に合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。蝶がいて春のモチーフですが、雪輪と合わせることで、冬~春に長く使えますね。
[ 2016/07/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百三十六回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。染の名古屋帯ですから本来は小紋までですが、貫禄のある意匠と加工ならば、そこそこフォーマルにも使えます。フォーマルに使うコツとしては、仕立ての際になるべく帯の前の幅を広くしておくこと(4寸3分ぐらい)ですね。自動車のデザインで、フロントグリルが立派だと高級車に見えるのと一緒です。ロールスロイスはパルテノン神殿みたいですものね。

今回すべて花也の付下げを使っていますが、いろいろ合わせているうちになんとなくそうなってしまいました。理由はわからないですが。

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いちばん上の写真は、花也の付下げを合わせてみました。地紋で市松模様が浮かび上がる生地を利用して、松と笹模様を配したものです。丸い雪輪模様と市松の四角い模様の対比を狙っています。

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写真2番目は、花也の付下げを合わせてみました。羊歯の葉の模様を湊取りにしたものです。羊歯というのは、花も咲かないし湿気の多い日陰に生えている陰気な植物ですが、冬に枯れないところから縁起の良い模様ということになっています。シダ類といわれるものは、門にまたがる大きなグループなので形はさまざまです。そのため意匠としても使いやすいんですね。

湊取りというのは、三角定規にある長い方の直角三角形のような形の取り方を言います。湊という呼び方は海辺の地形からきているようです。丸い雪輪模様と直角三角形の模様の対比を狙っています。

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写真3番目は、花也の付下げを合わせてみました。紬地の付下げです。普通の付下げよりカジュアル感があをるので、名古屋帯も使いやすいですね。もちろん袋帯でも良いのですが、結婚式で着るような金襴の袋帯は使いづらいですから。

このような取り方の形は、松皮菱に由来して松皮取りとも言いますね。鋭角が連なる形が特徴なので、丸い雪輪模様との対比を狙っています。

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写真4番目は、花也の付下げを合わせてみました。

いつもの糊糸目の友禅ではなく、白生地を模様の形に防染して、地染めをし、白抜き部分を後で彩色するという技法で描かれたものです。白い糸目の輪郭線が無いのが特徴です。地色と模様の色を隔てる白い輪郭線が無いと、双方の色が直接馴みます。作者は、どんな表現をしたいかによって技法を選択します。

帯の焦げ茶色と緑系の地色の組み合わせが意外に綺麗なので、試してみました。

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写真5番目は、花也の付下げを合わせてみました。「サンテチエンヌリボン」と題されたものです。サンテチエンヌというのは、フランス中部にあってリボンの産地ですね。丸い雪輪模様と長い紐状の模様の対比を狙っています。
[ 2016/07/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百三十五回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせです。

今日は、染の着尺を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、藤井絞の着尺を合わせてみました。梅の飛び柄で、雪輪と梅で早春を演出してみました。お正月でも大丈夫です。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。手挿しの着尺で、絵羽ではないですが、横段状に梅の模様が配されています。雪輪の冬と梅の春が同居しているわけですから、お正月から本当に梅が咲くまでですね。青梅では、梅の名所である梅の公園に梅が咲くのは3月20日ごろなんですよ、そう考えればけっこう長いです。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。吹寄せの着尺に合わせてみました。吹寄せという模様は、松葉と銀杏が木枯らしに吹かれて庭を舞っているという晩秋を表すものが基本なのでしょうが、この着尺のように梅・桜・菊など四季の花も加えて、多色で華やかにして四季に着られるようにしたものもあります。

小さくて多色の吹寄せと、大きくて単彩の雪輪で良い組み合わせではないでしょうか。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。地味で都会的な格子です。使われている色は、グレーと茶と青ですが、これは江戸の流行色の代表ですから、浮世絵に登場する美人が着ているような江戸好みの着物だと思います。帯合わせについては、何でも合う楽な着物ですね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。雪輪に雪輪を重ねるという、普通はお勧めできない帯合わせを試してみました。雪輪という同じテーマでありながら、色の明暗、形の大きさは反対という組み合わせです。歌舞伎で雪が主要なモチーフである演目に着て行くとか、用途を考えればお洒落かも。

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写真6番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。型疋田と本疋田と、疋田どうしを重ねてみました。雪輪を重ねることはあっても、疋田を重ねることはないでしょうねえ。

昔の本だと、本疋田が奢侈禁止令で禁止されたので、安価な代用品として型疋田が作られた、というような解説を書いてあるものがありました。しかし現在では否定されています。両者は全く別に発達したもののようで、型疋田が本疋田の安物ということはないようです。

型疋田については、生地が完全に伸びてしまうと、元が型疋田だったのか本疋田だったのか、わからないほど巧みものもありますが、一目でわかる簡単なものもあります。ただ、小袖に施されたもののばあい、簡単なものでも美術的な評価が高いものもあるので、精巧なものが価値があるというわけでもないようです。現代でも、安田を頂点とした精巧なものと、温かみのあるものとがありますね。
[ 2016/07/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせ

第三千四百三十四回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯の帯合わせです。

染の名古屋帯ですから、常識的には紬か小紋に合わせることになります。雪輪と疋田を組み合わせた意匠はシンプルでデザインのお手本のようなものですから、嫌いと言う人はたぶんいないと思うので、帯合わせは楽ですね。上手く使えば付下げにも使えてフォーマル分野にも進出できそうです。

今日はとりあえず紬に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、重要無形文化財であった結城紬の縞に合わせてみました。伝統ある高品質な織物と、同じく伝統的で高品質な京都の老舗の染物の組み合わせです。形的には、直線の縞と丸い雪輪の組み合わせで相性もいいはずです。でもなぜか、ダンプに蝶がとまっているような、素朴な力強さと雅さが対照的過ぎるような感じがしてしまいますね。合わないというほどではないですが。

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写真2番目は、松枝哲哉の久留米絣「島うた」に合わせてみました。重要無形文化財の要件を満たす久留米絣です。一見、縞か格子のように見えますが、生地の途中で格子が消えるところがあり、やはり絣なんですね。木綿の着物にも使えるということで泡汗てみました。

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写真3番目は、松枝哲哉の久留米絣「」に合わせてみました。重要無形文化財の要件を満たす久留米絣です。こちらは物語性も感じる絵絣です。この人の明るい藍の色はほんとに綺麗ですし、すごく人気もありますよね。着物の模様は絵画的ですが、雪輪、特に大きい雪輪は絵画的というより意匠的なので、絵画どうしがぶつかるということはありませんね。

焦げ茶と明るい青の組み合わせも意外と綺麗なのでは。

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写真4番目は、久米島紬と合わせてみました。モロといわれる経緯ともに手紡ぎの真綿糸を使った作品です。普通の久米島紬(緯糸は真綿糸、経糸は玉糸)に比べると2,5倍ぐらいの価格です。

帯の焦げ茶と泥染めの焦げ茶が、ほぼ同じ色になりますが、そこを狙ってみました。帯と着物を同じ色にすると、模様だけが浮かび上がるように見えるので、それが面白い視覚効果になる時もあります。

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写真5番目は、山下八百子の黄八丈を合わせてみました。配色としてはベストな組み合わせではないでしょうか。有名作家の高い紬は、それにふさわしい帯を合わせたい気持ちになりますが、貫禄のある帯だからと言って袋帯は使いたくない、別の有名作家の染め帯を合わせると全身作家モノみたいでこれ見よがしっぽい、などなどユーザーにはいろんな思いがありますね。

この場合は、人気作家と京都の老舗と真面目な悉皆屋さんの組み合わせで、高級感もありつつ、嫌味もないのではないでしょうか。
[ 2016/07/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の染めの名古屋帯(藤岡さん)

第三千四百三十三回目の作品として、千切屋治兵衛の染めの名古屋帯を紹介します。実際に制作したのは藤岡さんです。



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いちばん上の写真は、お太鼓の模様の全てです。実際にお太鼓として表に出る部分よりかなり長く染められています。雪輪の内部の疋田は型疋田で、3つの雪輪の型疋田の色は微妙に濃淡が付いています。

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写真2番目は、お太鼓辺りを生地の幅を写真の幅として撮ってみました。実際にお太鼓として表に出る面積はもっと小さいですね。中央に完全な雪輪、上端と下端に半分ずつの雪輪、ということになるのでしょう。

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写真3番目は近接です。よく見ると、型疋田は整然と並んでいるのではなく、波打つような揺らぎがあります。また粒の1つ1つも形が違うのもありますね。型疋田では、最初に取り方の形に縁蓋をして、四角い汎用の型をつかって染める技法もありますが、この作品のばあいは、雪輪ごとに型疋田を新調しているのではないでしょうか。そうでないと雪輪の形にきれいに納まるように波打たないですものね。

型疋田でもそういうところでコストが違うものです。制作者が良いものを作ろうという意思を持って細部にこだわるかどうかですね。

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写真4番目は腹文です。実際にはこの半分を織って腹文にするわけですが、表に出す方向で雪輪が1個半出るばあいと、半分だけ出るばあいがあります。たいていの人は1個半出る方にすると思いますが、着物の模様との兼ね合いで、無地系にしたいばあいは半分の方を出すこともあるでしょう。
[ 2016/07/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百三十二回目は、野口の着尺の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯で帯合わせをします。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、糸目は糊糸目です。

うさぎの顔は、友禅師の仕事の延長ではなく、面相筆を使う専門の人が描いています。うさぎの顔も友禅師に仕事のついでに描いてもらえばお金はかかりませんが、わざわざ別系統の職人(面相筆を専門に使うのは人形業界の職人ですね)に頼むとなると、そのわずかな面積のために別にお金を払わなければなりません。制作者の身になれば、そこそこ良いものをできるだけ安く作りたい
ところですが、小動物の顔という微妙なことのためにコストアップしても全力を尽くすところに心意気を感じます。

これは数年前に1度作って作って販売したことがあるのですが、白黒の兎がかわいいのでまた作ってしまいました。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、糸目は糊糸目です。

恵比寿大黒をテーマにしたもので、お太鼓には大黒さま、腹文には恵比寿さまがいます。どちらもうさぎです。大黒さまを米俵の上に乘った鼠で表現するのは江戸時代からありますが、うさぎの方がかわいいので変更してみました。耳を長くするだけでうさぎになったので簡単でした。

これも顔は面相筆の専門の職人さんが描いています。十二単の女性をテーマにした着物などもありますが、顔を描くのにわざわざ面相筆の専門の職人を使ったものまではありません。今度、人間の顔を描いた着物があったら、ぜひチェックしてみてください。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。着物と帯を花と蝶の関係にしてみました。着物の植物文は四季揃っていますが、一気に春のコーディネートに見えてきます。秋のモチーフにすれば秋のコーディネートに見えてくるということでしょう。

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写真4番目は、秀雅から仕入れた東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。刺繍に堰出しの疋田を合わせたもので、かつて北秀が千代田染繍に作らせて、超高級な黒留袖として販売していた様式です。

堰出しの疋田とは、1粒ずつ糊を置いて防染して描いた疋田です。整然と描いていますが、手描きらしい微妙な揺らぎがあるはずです。実際にはすごく上手いので、なかなか揺らがないですけどね。手描きの美とは、限界まで整然と描いて、人としての限界を超えたところにちょっとだけ揺らぎが見える時、そこに美を感じることだと思います。最初から揺らいでいたらただの下手ですし、完全に揺らがなければただの機械染ですものね。

刺繍のテーマは龍田川で、秋でコーディネートしてみました。

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写真5番目は、秀雅から仕入れた東京刺繍の名古屋帯を合わせてみました。刺繍に堰出しの疋田を合わせたもので、上は市松、こちらは菱形です。刺繍はほぼ秋草ですが、ちょっと見には四季花に見えますね、春っぽい地色のためでしょう。

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写真6番目は、野口の京友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは橋村重彦さんです。橋村さんが野口の専属作家だったころのものです。中井さんの彩色担当だった橋村さんらしい重厚な色彩の作品で、もともと絵画性の高い着物に対し、さらに絵画性の高い帯を被せた感じですね。そういうのって、今は逆ギレっていうんですよね。逆ギレの帯合わせということになりますが、けっこう合ってませんか。
[ 2016/07/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の着尺の帯合わせ

第三千四百三十一回目は、野口の着尺の帯合わせです。

今日は昨日より自由に、理屈を言わずに帯合わせをしています。ただし、着物が植物文なので、植物どうしが重なるのは避けて、動物、器物、風景などを合わせています。着物の意匠も帯の意匠も、圧倒的に花や木が多いので、植物文が重なってしまうばあいは多いですね。そのため植物文でない帯というのを買っておくと助かるということがあります。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「シャムパーシン」を合わせてみました。龍村のテーマを決めて展示会をすることがありますが、これはタイやインドネシアをテーマにした展示会に合わせて制作されたものです。絵画性の高い飛び柄小紋は、普通の総柄小紋よりフォーマル感が高いので、龍村の名古屋帯などが合わせやすいですね。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「寄せん裂」を合わせてみました。価値ある名物裂の小片を複数合わせて茶道具などとして使う文化は昔からありますし、今でも龍村の半端な裂を貼り合わせて帯などにして販売している業者もあります(龍村自身もやっている)が、これは複数の名物裂に見せてじつは1つの織物です。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「木画狩猟文」を合わせてみました。元の意匠は、種類の違う木を嵌め込んでつくった象嵌で作画されたもので、正倉院御物の五弦の琵琶の撥が当たる部分の装飾です。鐙の無い時代に、走っている馬の上で振り返って弓を射るなんて技は、生まれつき馬に乗っている胡人ぐらいしかできないので、正倉院ならではのモチーフですね。

狩猟文はこののちずっと日本人に愛されて、近世まで「韃靼人狩猟図」などとして繰り返し描かれます。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「竹屋町兎文」を合わせてみました。紗の生地に金糸を織り込んだ織物を竹屋町と言います。掛け軸の表装で見ることがありますね。織物である竹屋町裂を模して、紗の生地に金糸で刺繍したものもあって、それは竹屋町刺繍と言います。「竹屋町」というのは、それを制作していた京都の町の名前ともいいますが、それがどこだかよくわかりません。

本来の竹屋町裂は生地は紗なのですが、そうでなくても竹屋町というばあいもあります。これもそのようなものですね。

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写真5番目は、清原織物の爪掻綴の名古屋帯を合わせてみました。綴組織というのは、経糸を緯糸で包むように織るので、表面上は緯糸しか見えません。作画のために緯糸の色を変える時は、その緯糸はつながらないので、縦方向に色が変わるときは生地に断裂が生じるという宿命的な欠点があります。

それを避けるためには、なるべく縦方向に色を変えないことですね。風景ならば、絶壁のような縦長の風景ではなく、平原のように水平に広がる風景にすることです。この作品もそうですね。どうしても縦方向に色を変えたい時は斜めにしたり、凹凸にしたりして断裂を短く区切ることです。この作品で雲がギザギザしているのはそのためです。

技術的にダメ、という時は、意匠で乗り切ることもあるわけです。
[ 2016/07/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)