龍村の名古屋帯「麗葉果」の帯合わせ

第三千三百六十八回目は、龍村の名古屋帯「麗葉果」の帯合わせです。

今回の龍村の名古屋帯は、フォーマル方向でもカジュアル方向でも使えます。具体的には付下げと小紋と紬ですね。今日は紬で使えます。昔の着付けの本で、「金糸の使ってあるものは紬には使えない」などと書いてあるものがありますが、紬に使えるかどうか、金糸の有無ではなく全体の雰囲気で決めるべきものです。私は、たとえ金糸を使ってなくても正倉院や有職など皇室に関わる格の高い模様を紬に使う方が筋が違うんじゃないかという気がします。

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いちばん上の写真は、仲井間香代子のロートン織を合わせてみました。ロートン織は「両段織」「道屯織」などの表記があります。仲井間香代子さんは首里の作家で、ロートン織は首里織の1つです。表裏とも同じ場所で経糸が浮いているのが特長です。首里の織物は、現在の分類では紬に入れてしまいますが、本来は琉球王家の官服ですから、金糸づかいの格が高い模様の帯が合うはずですね。

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写真2番目は、山口良子の首里織を合わせてみました。花織と浮織を併用した着尺です。どちらも首里織に属する技法です。(首里以外にも読谷などにある。)派手な黄色ですが、福木によるホンモノの草木染です。

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写真3番目は、大城カメの琉球絣を合わせてみました。大城カメさんは、南風原の大城織物工場の先々代です。

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写真4番目は、秋山真和の綾の手紬を合わせてみました。19世紀に織られた首里の織物として実在する織物を再び織ったものです。草木染の茶色が派手ですが、百数十年間の退色を考慮して元に戻したものでしょう。

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写真5番目は、読谷花織を合わせてみました。読谷花織というのは技法的には浮織です。表地に模様の無い部分に渡り糸があります。でいちばん有名な作家は人間国宝の与那嶺貞さんです。現在のその弟子にあたる作家がいます。

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写真6番目は、林宗平の「古代紬」を合わせてみました。「古代紬」というのは、林宗平工房の先代の林宗平さんが、自分の作る塩沢紬に付けたのブランドです。現在はこのブランド名はあまり使われていないようですね。真綿糸を使った、草木染で手織りのとても良い紬です。

有栖川錦の鹿文に取材したこの意匠は今も続けて織られています。
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[ 2016/04/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の名古屋帯「麗葉果」の続き

第三千三百六十七回目は、龍村の名古屋帯「麗葉果」の続きです。

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いちばん上の写真は、腹文をできるかぎり近接してみました。グアバの全体は金銀糸だけで表現しています。絹の色糸は赤、青、黄、白の4色で、実の部分に限定的に使われているだけです。

金銀糸は、光沢の強い撚金糸、黄色味が強い撚金糸、揺らぎのある配置の撚金糸、平銀糸の4種類です。この4種の金銀糸の光沢の違いを使って、明暗だけで作画しているわけです。目に見える形というのはすべて、光の明暗で認識されているというわけで、印象派の理論みたいな作画法ですが、実際に近代の油彩画のようなタッチです。

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写真2番目は拡大です。色味が強い撚金糸、揺らぎのある配置の撚金糸、平銀糸の3種類が写っています。明るい部分といちばん暗い部分と、その中間の部分の3段階です。

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写真3番目は拡大です。光沢の強い撚金糸、黄色味が強い撚金糸の2種類が写っています。明るい部分とすごく明るい部分の2段階です。

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写真4番目は赤い実の拡大です。いちばん陽の当たる明るい部分は撚金糸、陽の当たらない暗い部分は平銀糸、その中間部分は赤い糸で表現しています。水彩画の描き方のテキストでも、明るいところと暗いところは無彩色の明暗だけで描き、その中間だけに赤い絵の具を挿すような描き方をしますよね。絵画を織物で再現し、その結果、西洋の絵画のようなタッチの織物になるのもまた、西陣の技法の1つですね。

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写真5番目は裏側です。葉の各部で使われた平銀糸の裏側が、渡り糸として出ていますが、部分的な使用でも全面が渡り糸になるんですね。ポリエステルフィルムなら全面銀色になるのですが、裏が和紙の引き箔糸なので、白く見えています。
[ 2016/04/29 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の名古屋帯「麗葉果」

第三千三百六十六回目の作品として、龍村の名古屋帯「麗葉果」を紹介します。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目はお太鼓の近接です。

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写真4番目はお太鼓の近接です。

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写真5番目はタイトル部分です。「麗葉果」とあります。台湾の美人についているような名前ですが、何のことでしょうね。ネット上の植物図鑑ではそのような植物はないので、画像で似た植物を探してみてグァバではないかと思いました。台湾にも自生しているということで、「台湾の美人」も的外れではないですね。

ビタミンCが圧倒的に多く、ポリフェノールも多いということで健康食品のイメージですね。
[ 2016/04/28 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

倉部さんの付下げの帯合わせ

第三千三百六十五回目は、倉部さんの付下げの帯合わせです。

今日は普通に袋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「ちとせ間道」を合わせてみました。一応間道も試してみますが、同系色の青系にしてみました。

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写真2番目は、洛風林の袋帯を合わせてみました。「大黒屋金襴」と呼ばれる、唐草文と宝尽くし文を合わせた名物裂に取材したものです。本歌は、名前の通り金襴手なので模様は金糸ですが、ここでは白地に青と茶色という都会的な配色に改作してあります。模様は本歌通りでも、色は洛風林らしく個性的で都会的になっているのです。

青は絹糸で、茶色に見えるのは臙脂色のポリエステルフィルムなのです。同じ画面にある平面的な模様と思うと質感が違って、立体的に感じたりする、洛風林の仕掛けということでしょうか。

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写真3番目は、河合康幸の袋帯を合わせてみました。唐織で花の丸文様という定番的な意匠ですが、地色の紫が個性があります。帯は着物に合わせないといけないものなので色に個性があるというのは使い勝手が悪そうですが、この事例で見るとおり、紫は水色には綺麗に合います。ほかにグレーやベージュなどにも合いますし、紫系に対しては濃淡関係を作れるので、使い勝手は意外に良いです。

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写真4番目は、龍村の袋帯「有朋文」を合わせてみました。鳥獣戯画という物語性の高い帯を合わせてみました。相手が波ならどんな物語を持ち込んでも大丈夫ですね。帯の地色は黄色ですが、黄色というのは合わせてみると綺麗な色です。

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写真5番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文」を合わせてみました。模様に動きがあって面白い上に使い勝手が良いのでつい使ってしまいます。
[ 2016/04/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

倉部さんの付下げの帯合わせ

第三千三百六十四回目は、倉部さんの付下げの帯合わせです。

今日は友禅の帯を合わせてみます。たいていの付下げは友禅で模様が描いてあるので、それに友禅の帯を重ねるのは憚られますが、今回の付下げは刺繍だけなので、友禅の帯も気持ち良く合わせられます。着物は模様も少なく絵画性も低いので、絵画性の高い友禅の帯を合わせて、絵画性の不足を補います。友禅という技法は元々絵画性が高いのが利点ですから。

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いちばん上の写真は、橋村重彦さんの野口時代の名古屋帯「貝桶」を合わせてみました。本歌は小袖や袱紗にしばしば登場する刺繍の模様ですが、ここでは友禅に変更してあります。橋村さんは中井淳夫の彩色担当でもあったので、色が中井らしい濃厚です。

貝桶は六角形なのに貝桶の模様はそれぞれの面に沿わず平面です。絵画としてはおかしいのですが、貝桶を描いたわけではなく、貝桶を取り方として利用しているということで、本歌がすでにそうなっているのです。

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写真2番目は、花也の友禅の名古屋帯「扇子」を合わせてみました。少し開いた扇子を取り方にして、松、亀甲、菊唐草など縁起の良いモチーフを入れています。取り方という様式は、各模様が独立してしまって展開しないという欠点がありますが、広げた紐がそれぞれの取り方を1つの模様としてつなげる役割をしています。それも安田の様式ですね。

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写真3番目は、花也の友禅の名古屋帯「硯」を合わせてみました。硯を描きつつ、それを取り方にして中にシダと笹を入れています。取り方とは模様の容器で、模様どうしが入れ子構造になっているわけです。「取り方」というのは日本の工芸の意匠の中で重要な要素ですね。

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写真4番目は、秀雅の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは安田です。秀雅は残念ながら今はありませんが、北秀の元社員がやっていたために安田とも取引があったのでした。意匠は以前紹介した時は「更紗」としていましたが、読者の方のご指摘により「レース」と改めました。レースの縁の部分をそのまま意匠にしているので、このような形なんですね。着物の図案家が他の分野の工芸品に取材するときは、意外にアレンジしないものです。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯「松重ね」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。今日は、着物に不足する絵画性を帯で足すという趣旨でしたが、それとは反対にシンプルなコーディネートになってしまいました。

着物の作者がシンプルな意匠を作った場合、着る人にシンプルに着て欲しいと思っているかもしれません。そうであれば、帯で絵画性を足すというのは作者の意図に逆らいますねえ。別に作者の意図にしたがわなくてもいいのですが、中学の国語の試験の読解問題の最後に「作者の意図は何ですか」という設問があったのを連想し、正解しないといけないような気がしてしまいます。
[ 2016/04/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

倉部さんの付下げの帯合わせ

第三千三百六十三回目は、倉部さんの付下げの帯合わせです。

今回の付下げは、袖や胸にも模様が有りますが、どこもみんな同じなので省略し、今日から帯合わせをします。着物の意匠には、前姿、後姿、袖、胸などで展開して変化して行くものもありますが、どこでも同じ模様を繰り返して行くものもあります。どちらも美しいですが、この着物は後者ですね。

今日は、海の波というテーマに着目して意味のつながる帯合わせを考えてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「ほかけ」を合わせてみました。波に舟という組み合わせですね。とても良い帯わせだと思いますが、朱色系を使っていない龍村の配色のおかげです。

作り手の立場になると、朱色を使わないと地味でつまらない着物になると思って、朱色を挿してしまいがちです。その結果、年輩者が派手と感じて着られない若向きの着物になってしまうんですね。「派手」と「綺麗」は似ていますが、「派手」でなくても「綺麗」な着物は作れます。この帯もその例ですね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「八つ橋螺鈿錦」を合わせてみました。光琳の本歌では、八つ橋の下は杜若ですが、この作品では波頭渦巻く海の波に改作されています。八つ橋の下の海の波を着物の海の波に連続するように見立ててみました。

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写真3番目は、木下冬彦さんの塩瀬に友禅の袋帯を合わせてみました。木下冬彦さんは熊谷好博子の弟子の東京友禅の作者です。松と砂と波頭を描いたもので、熊谷好博子も得意とした江戸解模様とも言われる意匠ですね。着物の海の中に帯の松島があるという組み合わせにしてみました。

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写真4番目は、菱一で仕入れた江戸刺繍の名古屋帯を合わせてみました。名物裂の「荒磯」をテーマにしたもので、海の波と魚というつながりで合わせてみました。

刺繍というのは、突き詰めれば針だけあればできるので、刺繍工房に勤めていた女性作家が、結婚退職後、元の工房の関係者から依頼されて子育ての合間に副業ですることもできます。そのため、実際の作者はよくわからないことが多いです。この作品も江戸友禅ということは確かですが、実際にだれが作ったのかわからないのです。仕入れ先は自分が中抜きされては困るので絶対に教えてくれないですしね。

友禅や型染であれば、水洗や蒸しの工程があったり、引き染のための12m以上の長さの敷地がある工房(都内であれば相当の資産になる)が必要ですから、隠れてすることはできないので作者がわかることが多いんですけどね。

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写真5番目は、野口の絞りの袋帯「日月」を合わせてみました。根津美術館にある辻が花裂に取材したものです。とても有名な作品ですが、本来の小袖の姿ではなく裂にすぎないため作品の天地がわからず、三日月部分が上か下かわからないのです。三日月が上に有れば月と太陽が並ぶ壮大な天体ショーということになりますが、三日月が下であれば平凡な草花模様になります。

現代人の価値観からすれば天体ショーというスケールの大きなテーマであって欲しいですよね。野口もそのような解釈で帯にしています。ここでは、海と太陽と月という壮大な帯合わせをしています。
[ 2016/04/25 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ(実際の制作は倉部)

第三千三百六十二回目の作品として、野口の付下げを紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。倉部さんの作品は技術もセンスも素晴らしいですが、コストが高いために模様の面積が小さくて寂しい着物になってしまうのが残念なところです。この作品の前姿の波の模様は、マエミに5個、オクミに1個です。倉部さんにしては多い方でしょうか。

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写真2番目は後姿です。波の数は背中心の左右に2個と1個です。付下げの後姿の模様配置としては合理的ですね。

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写真3番目は、マエミの上の方の模様の近接です。地色も含めて水色の濃淡だけで構成されており、それに金糸だけが加えてあります。波と波頭というモチーフは古典そのものですが、本来連続していく波の模様を単独で散らしてモダンな様式にしています。色もモダンで良い組み合わせになっています。

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写真4番目は、マエミの下の方の模様の近接です。

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写真5番目は、波頭の金糸の拡大です。細い金糸を重厚に重ねています。そのために盛り上がっているように見えるわけですが、それが波頭の表現にふさわしいわけです。

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写真6番目は、裏から見たところです。金糸が本金糸かポリエステルフィルムかを見分けるときは、裏側を見て金糸の端を探します。平金糸のばあいは裏が和紙、ポリエステルフィルムな場合は裏も金なのですぐわかります。

この作品のように撚金糸のばあいは、裏側を見て金糸の端のほつれているところを探します。この作品では、波頭の金糸の端が3か所飛び出して見えますね。撚金糸は、芯糸(現在はたいていテトロン)の周りに本金糸かポリエステルフィルムが巻いてあるわけですが、ほつれているところを見て、裏が和紙の本金糸か裏も金色のポリエステルかを見ます。

倉部さんの作品は、「倉部」と落款があるわけではないですから、あくまで野口の商品にすぎません。扇子や技術でもわかりますが、私はとりあえず本金が使ってあるかどうかで見分けています。
[ 2016/04/24 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百六十一回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

今日で「此君」の帯合わせは終わりにします。今日は使い残しの画像です。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。

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写真2番目は、池口平八の袋帯「琵琶湖」を合わせてみました。水面をテーマにした帯2種類を並べてみました。龍村の方は海の荒れ狂う波で、池口平八の方は波の静かな琵琶湖です。どちらも織の技法で自然現象をリアルに表現しようとしたものですが、龍村が波の形や動きに肉薄しているのに対し、池口平八は印象派を思わせる表現です。

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写真3番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。名物裂の有栖川錦をテーマにしたものです。帯合わせの時は、龍を合わせると思っても良いし、名物裂を合わせると思っても良いでしょうね。この帯は龍という大仰なテーマにもかかわらず、さりげなく使える感じがします。

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写真4番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文」を合わせてみました。平家納経に取材した帯で、奉納した人は戦乱を生き抜いた平清盛ながら、王朝貴族のおおらかな雰囲気があります。竹の相手は雀とか鳥で良さそうですが、今回は使っていませんでしたので、使い残しとして紹介します。

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写真5番目は、おび広の袋帯を合わせてみました。モダンでシンプル路線も試してみました。
[ 2016/04/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百六十回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

今日は綴の名古屋帯を合わせてみます。綴というのは、織りで絵画的な表現する際にとりあえず人間が思いつく技法であったようで、古代から世界各地にあります。中国には漢代からありますし、エジプトのコプト織やプレインカ文明の1つチャンカイの織物も綴です。

綴とは綴組織で織られた織物をいいますが、模様部分も綴組織である爪掻綴と、地は綴組織でも模様部分は絵緯糸で表現している紋織の綴があり、両者は裏に渡り糸があるかどうかで見分けます。紋織の綴は河村織物や廃業した華陽や坂下など西陣の有名織屋によって織られ、爪掻綴は綴の専業メーカーによって織られるのが普通です。本物の証明である西陣のラベルは、紋織の綴は他の西陣の同じ同じ金色、爪掻き綴は紫色です。

爪掻綴には、日本製か外国製かという問題があります。数十年前は韓国、その後はずっと中国ですね。手間がかかる技法であることが価値を生むわけですが、それは同時に人件費の安い国で作って儲けようという発想を生んでしまったのです。2割か3割安いということなら問題ないのですが、値段が10分の1だったりすると綴そのものに対する憧れもなくなってしまいます。

日本製と中国製の見分けは、基本的には日本製は腹文の模様が片側しかないことです。また模様は日本製の方が気が利かないことが多いですね。理由はいちばん下まで読むとわかります。

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いちばん上の写真は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。細見華岳は問屋を通して普通に販売するものは、花や鴛鴦など具象的な模様もありましたが、伝統工芸展に出品していた作品はだいたいこんな抽象柄でした。懐かしい方も多いのでは。

綴組織というのは、絵画的な表現をするときに色が変わるところで緯糸はつながらず組織に断裂が生じるのが欠点です。そのため縦方向に真っ直ぐ色が変わるような模様は織れないのです。この帯はメインの稲妻のような模様の他に、全体に波型の模様が有りますが、この波の部分で緯糸がつながっているのです。一見、デザインと見せてじつは織物の基本構造を支えている仕掛けなのです。

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写真2番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。十字に見える花部分の縦の線は断裂が生じそうに見えますが、色が変わっている花部分の緯糸の半分はじつは地色で、その糸は地とつながっているのです。そのために花の色は地色に対して補色であっても調和があり、また断裂を防いでいるのです。市松のような地模様は、緯糸が経糸を包むように織る際に、1本を包むところと2本をまとめて包むところがあり、その差で生じているようです。

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写真3番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。これも伝統工芸展らしい意匠だと思います。緯糸に銀糸を織り込んでいます。

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写真4番目は、細見華岳の綴の名古屋帯を合わせてみました。これは細見華岳の代表作で文科省買上げとなり、現在シルク博物館が収蔵している「友愛」をもう1度織ってもらったものです。中国の動物園で見た孔雀をテーマにしたものであり、「友愛」というタイトルは中国との友好を願ったものです。

本歌は六通ですが、お太鼓柄なら織ってもいいよ、ということでした。今だったらいくらかかるのか恐くて、人間国宝に代表作をもう1度織ってくれなんてお願いはできませんが、昔の私は度胸が良かったのです。若い時は、金なんかまた稼げばよい、って思うものですよね。

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写真5番目は、清原織物の綴の名古屋帯を合わせてみました。滋賀県に工房がある綴専業のメーカーです。綴の工房というのは現在は郊外だが元は御室というのが多いようです。御室というのは、綴の産地からオムロンの根拠地に変わり、今はそれもないようですね。

全体に金糸が織り込んであり、鳥の種類も鳳凰ですから、割りとフォーマルに使えそうです。色紙は斜めに配してありますが、綴の組織の特性からまっすぐにはできないわけですね。

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写真6番目は、清原織物の綴の名古屋帯を合わせてみました。なんとなく水平に広がる景色だと思いませんか。これも縦方向に断裂を生じないための工夫です。絵画として魅力的なものを考えつつ、同時に組織の宿命である縦方向の断裂を防ぐデザインを発想することができているかというのも優れた綴の条件の1つです。

明綴は、精緻な絵画的表現をして素晴らしかったですが、陽に透かして見ると穴だらけで織物としては弱いんだろうなあと思いました。帯をして運動する人はいないし、フォーマルなら年に一回ぐらいしかしないから問題にはならなかったでしょうが。
[ 2016/04/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百五十九回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

大羊居のパートナーと言えば、とりあえず龍村なので一応試してみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。平蔵ブランドの「威鎧」は名作として有名ですが、これは「たつむら」ブランドの鎧バージョンで、「威鎧」と同じ手織りによるものです。こちらは六通で振袖にもつかえます。

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写真2番目は、龍村の袋帯「八つ橋螺鈿錦」を合わせてみました。八つ橋といえば杜若との組み合わせになっているものですが、ここでは筍との組み合わせになってしまいました。龍村自身が、八つ橋の下の風景を杜若が生えそうにない波頭渦巻く海に改作しているので、これでも良いのかと。

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写真3番目は、龍村の袋帯「騎馬陶楽文」を合わせてみました。イランやシリアで出土するイスラム陶器をテーマにしたもので、筍とも筍の季節とも日本の情緒とも全く関係がありません。人というのは、2つのものがあるとそれを意味でつなげたくなるものですが、帯合わせはモチーフの意味より色や質感の方が大事、ということも多いです。

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写真4番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳錦」を合わせてみました。平家納経に取材した帯で、反っくり返ったように見える鹿は、福島正則の依頼により俵屋宗達が修復した部分です。タイトルの「錦秀」は「錦秋」に掛けているのかと思われるぐらい宮島は秋のイメージですが、特に秋を示すモチーフはないため使ってみました。

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写真5番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。大羊居と龍村だ、という高島屋の都合的な意味以外、全く意味の無い組み合わせですが、存在感では釣り合いの取れる組み合わせです。
[ 2016/04/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百五十八回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

今回の付下げは、「季節の美しい瞬間を写す」ということで作品として完結しているため、帯で意味や季節を足そうとすると蛇足になりがちです。昨日はそれでも意味や季節を求めて帯合わせをしましたが、今日は意味も季節もを求めない帯合わせをします。意味も季節も求めない帯合わせとは、有職文様、名物裂文様、間道や格子、華文(たとえば正倉院の唐花文様)のような帯を合わせることだと思います。

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いちばん上の写真は、喜多川俵二の有職文様の名古屋帯「鳥襷丸文」を合わせてみました。日本の文様の起源にはいくつかあって、もっとも古いものとしては縄文時代の渦巻文様などがあるのでしょうが、着物や帯の意匠としてよく使われるのは正倉院文様が最初ですね。

次が平安時代に創られて鎌倉時代に体系化された有職文様、中世以降中国などから輸入された名物裂の文様、花鳥風月といった日本的な情緒を織り込んだ唐織の文様、室町時代の辻が花に始まり江戸時代を通して進化し続けた小袖文様、近代になって日本の模様に取り入れられるアールヌーボーなどです。

ここで紹介する「鳥襷丸文」は有職文様に属しますが、平安貴族の衣裳は古代は使われていた絞りやロウケツは衰退し織物だけになってしまったので、有職文様というのは織物の特徴である繰り返し文様が多いです。鳥襷丸文も鳥襷部分を共有しながら華文が続いていくようなパターンですね。

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写真2番目は、織悦の袋帯「菊枝文」を合わせてみました。菊枝文様と亀甲文様が重なっているように見える意匠になっていますが、これも有職織物の1つである「二陪織物」です。喜多川俵二が得意としてよく織っていますが、ここではあえて織悦を使ってみました。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「寄せん裂」を合わせてみました。「角倉金襴」「笹蔓金襴」「牡丹唐草」など名物裂として有名な裂を集めています。このように名物裂を切りばめした作品は昔から作られていますが、これはそれを意匠とした1つの織物です。

龍村裂にも名物裂がいろいろ出ていて、そのハギレを集めて別の人が縫い合わせて龍村の帯とかバッグとか言って売っているのもありますが、これは始めから1つの作品です。

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写真4番目は、喜多川俵二の名物裂文様の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。名物裂の中で最も数も多くもっとも有名な牡丹唐草です。「牡丹だから春」なんていう発想ではなく、様式の決まった名物裂文様の代表として用いるのが良いですね。

牡丹の花は大きいのも、この作品のように小さいのもあります。また牡丹を菊に替えたり桜に替えたりしたのもあります。元は中国からの輸入ですが国産も多くあります。

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写真5番目は、龍村の袋帯「清香間道」を合わせてみました。間道もまた中世以降名物裂として輸入されたものの1つです。また近世初頭に東インド会社経由で輸入されたインド産の木綿の縞もあり、それを模して江戸中期以降に川越などで織られた唐桟もあります。意匠としては同じようですが、その模様の起源から間道と呼んだり縞と呼んだりします。

これは名物裂の1つとして伝わる間道をベースに、ちょっと創作要素を加えて織られています。ただ販売チャネルの問題で、高島屋や三越で販売するものと重ならないように「清香」という起源がわからないようなタイトルにしているようです。

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写真6番目は、喜多川俵二の名物裂文様の名古屋帯「厚板格子」を合わせてみました。「厚板」というのは、中国から輸入される際に厚板に巻かれていたことからその名があります。だから名物裂の一種ですね。このような格子のパターンは歌舞伎役者の衣裳にもありますが、喜多川俵二さんがあえて「厚板」とタイトルを付けているので、名物裂と見てほしいということでしょうか。
[ 2016/04/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の帯合わせ

第三千三百五十七回目は、大羊居の付下げ「此君」の帯合わせです。

帯合わせをするときは、色を合わせるだけでなく、意味のある帯合わせをしたいものです。しかし今回の筍のように、季節限定で単一のモチーフの着物の帯合わせに意味を持たせることは難しいです。着物の意匠だけで世界が完結しているからでしょう。春だからと言って、帯で春の草花を足すのも蛇足と思えますし、さあどうしたものでしょうか。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「ほかけ」を合わせてみました。帆掛け船と筍には全く意味的なつながりはありませんが、季節にはつながりがあります。舟は旅立ちの意味で、卒業式や入学式にふさわしいモチーフですから、筍の時期と重なるのです。

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写真2番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。正倉院御物の臈纈屏風に取材したものです。この作品は精緻な現代の西陣織ですが、天平時代の臈防染のタッチを模して素朴なデザインにしています。象と筍には全く意味的なつながりはありませんが、季節にはつながりがあります。白象は摩耶夫人が釈迦誕生の時に見た夢ですが、釈迦の誕生を祝う花まつりは4月8日で、筍の時期と重なるのです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「扇子霞文」を合わせてみました。春と言えば霞ということで合わせてみました。雲や霞というのは、合わせるにしても消極的なモチーフですが、それだけに便利ですね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「彩籠目小文」を合わせてみました。筍が竹になって籠になるということで、原材料と商品という組み合わせをしてみました。

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写真5番目は、花也の名古屋帯「湊取り琳派梅松」を合わせてみました。偶然、梅と松だけの帯が有ったので、着物と合わせて松竹梅をつくってみました。花也が中井淳夫さんの元下職を使って作ったもので、中井のテイストがあります。中井の友禅とと大羊居の友禅が合わさってしまったわけで、共演NGの女優さんをキャスティングしちゃったプロデューサーみたいな感じですね。
[ 2016/04/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」の細部

第三千三百五十六回目は、大羊居の付下げ「此君」の細部です。

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いちばん上の写真は、オクミの筍の近接です。この作品ではいちばん若い筍は、ベージュと黄色で描かれているようです。実際に食用にする筍は、地面から出るかでないかというタイミングですから、これは絵としては美味しそうですがちょっと育ちすぎですね。

輪郭線と筋を金糸で刺繍(あしらい)しています。あしらいの機能は模様の大事な部分の強調ですが、このばあいは強調するとともに、金糸の輝きが若い筍のみずみずしさを表現しているようです。

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写真2番目は、マエミの笹の葉の近接です。笹のあしらいは、葉の輪郭を金糸で括っているものについては強調だと思います。しかし、葉の内部を同系色の緑で刺繍しているものについては、刺繍糸の光沢が葉の表面の光沢を表現しているように見えますね。このばあいは単なる強調ではなく、写生的な表現を目指すという積極的な機能を持っていると思います。

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写真3番目は、マエミの竹に変わりつつある筍です。茶と紺の配色が美しいですが、実際にこのタイミングの筍はこんな色をしているのでしょうか。私は筍の観察をしたことが無いのでよくわかりません。しかし、紺色が効き色になって意匠として優れているのは確かですね。

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写真4番目は、後ろ姿の竹に変わりつつある筍です。これも紺と茶の配色が美しい筍ですが、輪郭と筋に金糸のあしらいもしています。茶と紺の配色だけではなく、金と紺という配色でもあるわけで、際立った意匠性をもっています。

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写真5番目は、後姿の筍の大小です。ここでグレーの筍も登場しました。銀糸のあしらいがされていて全体がシルバーに輝いているようでもあります。この時期の筍は育ってしまった竹よりも水分があってみずみずしいので、光の加減で陰になるとこんな風に輝くということでしょう。この作品は、竹と筍という単一のテーマ、単一の季節を扱っていますが、意匠と写生がせめぎ合う境目にあって、それが魅力ですね。

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写真6番目は、福田平八郎の筍です。純粋な芸術作品である絵画の筍と比較してみてください。
[ 2016/04/18 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「此君」

第三千三百五十五回目の作品として、大羊居の付下げ「此君」を紹介します。

「此君」とは筍の意味ですね。ちょうど季節になりましたので、取り上げてみました。竹は1年中着られるテーマですが、筍が描いてあるとこの季節限定になりますね。2015年4月27日(3065回)には、竹と雀を組み合わせた作品を紹介しています。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。前姿は、竹が1本、筍が1本、筍が竹になりつつあり食べられなくなったのが1本で、竹の成長段階が一通り描いてあります。

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写真2番目は、後姿です。筍3本です。もう竹になりつつあり食べられないのもありますから、筍の成長段階が一通り描いてあります。

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写真3番目は胸です。笹ですね。

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写真4番目は袖です。

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写真5番目はもう片袖です。袖は片袖が筍、もう片袖は笹です。
[ 2016/04/17 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」とそれ以外の間道の帯合わせ

第三千三百五十四回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」とそれ以外の間道の帯合わせです。

今日は大羊居の訪問着にいろんな龍村の間道を合わせてみました。この訪問着は「新様更紗」というものです。タイトルについて説明を受けたわけではないので、想像するだけなのですが、「新様」というのは、アールヌーヴォーやアールデコが日本に入ってきたときに使われた言葉ではないかと思うのです。アールヌーヴォーは「新芸術」ですし。

昭和の初めごろに、呉服業界にも新デザイン運動のようなものがあり、三越など百貨店が着物のデザインを一般公募するすることがありました。写真5番目の参考図版をご覧ください。この当時、東京の小売店にデザインの主導権を握られてはかなわないというわけで、京都の友禅界も対抗策を打ちました。それが京都丸紅の「美展」です。

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いちばん上の写真は、「ちとせ間道」を合わせてみました。この大羊居の訪問着は、直線の斜め取りと更紗を組み合わせたものですが、帯合わせとしては、更紗の帯を合わせれば模様が重なってしまうし、古典模様を合わせればモダンな斜め取りに逆らってしまう、けっこう難しいものです。そこで間道の出番となりました。

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写真2番目は、「彩香間道」を合わせてみました。上の例では、青系の色で合わせましたが、ここでは青から離れてみました。地色とは同系濃淡ですね。

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写真3番目は、「海老殻間道」を合わせてみました。青と茶色を合わせた間道です。青部分は模様と同系、茶部分は地色と同系です。

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写真4番目は、「郁芳間道」を合わせてみました。青とベージュの間道で、模様の色と地色にぴったり合わせてみました。

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写真5番目は参考図版です。京都書院「染色の美10」のなかの中村勝馬が「東京友禅いま昔」という文章から拝借しました。「大正2年の百貨店の懸賞当選図案」というもので、第一等賞が「古代更紗」という三宅清治郎の作品でした。三宅清治郎というのは、洛風林を創業した堀江武さんが戦前に勤めていた京都の問屋の社長です。直線の斜め取りと更紗を合わせたもので、大羊居もじつはこの作品を知っていて、「古代」と「新様」で言葉遊びをしているんじゃないかと思います。

[ 2016/04/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百五十三回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

今日も絵羽を合わせてみますが、特に大羊居を選んでみました。大彦、大羊居といえば基本の相手は龍村ですが、それが間道でも通用するか試してみます。

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いちばん上の写真は、大羊居の訪問着「飛鶴瑞祥」を合わせてみました。全体の構図としては、画面を大胆に鋭角に切り取った意匠ですが、その中の模様自体は小付けです。江戸時代の小袖でこのような構想を持つ有名な作品がありますし、木村雨山にも似た構想を持つものが有ります。意匠というのは引き継がれていくものですね。

模様が小付けであるために飛んでいる鶴も小さいですが、そのためにかえって模様が雄大に見えます。大型鳥である鶴がこんなに小さく見えるということで、じつはこれは大きな景観なのだろうと感じられるわけです。

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写真2番目は、大羊居の訪問着「長谷路」を合わせてみました。奈良の長谷寺から室生寺まではハイキングコースになっていて、それが長谷路ということだと思います。百人一首でいうと、「うかりける人を初瀬の山おろしよ はげしかれとは祈らぬものを」の土地ですよね。長谷寺は牡丹で有名で、室生寺はシャクナゲで有名ですが、それがそれぞれ帯の下と帯の上の模様になっています。イメージ通りの大羊居で、「大羊居展」という展示会があったなら正面に飾っていそうですね。

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写真3番目は、大羊居の訪問着「麗日大観」を合わせてみました。江戸時代後期に流行した茶屋染の意匠を引き継いだものです。茶屋染とは、大奥の夏の衣裳としても流行ったもので、麻地に糊置き防染をして藍染にし、刺繍で色を加えたものです。意匠はだいたいこのようなもので、現在では茶屋辻という意匠として名前だけ残っています。大羊居のスタイルで制作すると、結構個性が出るものですね。

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写真4番目は、大羊居の訪問着「四君子」を合わせてみました。梅、菊、竹、蘭が四君子で、中国から伝来した縁起の良い組み合わせです。この作品は中国趣味を強く意識した作品で、梅の幹は友禅の糊置きの技法を応用して毛筆のような擦れを表現しています。中国の文人画のタッチですね。

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写真5番目は、大羊居の色留袖「寿」を合わせてみました。松が描かれていますが「寿」の文字に見えます。判じ物なんですね。判じ物というのは江戸時代に流行したものでもあり、創作というより文化を引き継いだものということでしょうか。
[ 2016/04/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百五十二回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

今日も絵羽を合わせてみますが、特に加賀友禅を選んでみました。私の好きな、少し昔の世代の作家の作品に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、梶山伸の色留袖を合わせてみました。

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写真2番目は、中町博志の色留袖「松そよぎ」を合わせてみました。

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写真3番目は、毎田仁郎の色留袖を合わせてみました。

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写真4番目は、毎田仁郎の色留袖を合わせてみました。

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写真5番目は、能川光陽の訪問着を合わせてみました。
[ 2016/04/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百五十一回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

今日は絵羽の着物と合わせてみます。

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いちばん上の写真は、野口の更紗の訪問着と合わせてみました。更紗の着尺用の型を流用し、絵羽の訪問着としたものです。本来小紋であった作品の派生品という制作の経緯からすれば、カジュアルな訪問着ということになるでしょう。お洒落着とかパーティー着というカテゴリーと思えば理解しやすいです。

フォーマルの様式で作られたカジュアルな着物とも言えますね、その結果ポジションが曖昧になっているわけですが、着る人間の側も、みんなが昔のようにポジションを決めて生きているわけではないので、出番は多いかもしれません。帯合わせについては、紬でも訪問着でも合わせられる間道が有って助かった、というケースですね。

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写真2番目は、花也の訪問着を合わせてみました。ダンマル描きと刺繍で、夕暮れ時の薄墨色を思わせる桜を描いた訪問着です。晴れの空を背景にしたピンクの桜も美しいですが、夕方の一瞬だけ見られる薄墨色の桜も風情がありますよね。その短い時間をテーマにした訪問着だけに、帯合わせは悩みます。「薄墨色の桜」を100%味わうべきで他の意味を加えたくないですものね。というわけで、間道の出番となりました。

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写真3番目は、藤井絞の訪問着を合わせてみました。全身柄の蔦模様を絞りで表現したもので、縫い目でも絞りの模様がしっかりつながっている凝ったものです。このように1つのテーマに集中した作品というのは、帯合わせには悩むものです。秋の風情ということで栗鼠の帯でも合わせたいところですが、都合良く栗鼠の帯なんて持っている人はいないです。というわけで意味も季節も足さない間道を合わせてみました。

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写真4番目は、中井淳夫さんの訪問着を合わせてみました。朝露をテーマにしたもので、モノトーンの階調で描かれた2種類の植物(木の枝に蔦の蔓が絡まっているようです)に、真珠のように白く輝く朝露が描かれています。一部の朝露はあしらいがされています。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。ダンマル描きで描かれたもので、紅葉が散る秋の風情がグラデーションを多用して美しく描かれています。ですが、烏帽子を被った謎の人物がその紅葉を掃除しており、意味の分からない作品になっています。本人が亡くなっているために永久に謎です。着物の意味が分からないので、意味の無い間道を合わせるしかないですよね。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。梅と竹と菊をテーマにしたものですが、竹には笹だけではなく竹垣も有って、その竹垣の囲いで模様が散らばらないようにがちっと抑えているのです。

広がって美しい模様もありますが、このようにガチっとした構造の中に納まる模様の美しさもあります。ガチっとした模様の着物にガチっとした格子の帯を合わせてみました。
[ 2016/04/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百五十回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

今日は付下げを合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の付下げを合わせてみました。紬地で、生成りを思わせるようなナチュラル感のある地色です。(もちろん生成りではありません。)友禅は糊糸目で、松皮菱を取り方にして中に草花模様が入っています。金彩で輪郭を取った紺色の霞がありますが、帯の地色と似ています。そういう細かいことで、帯合わせがピッタリいくことがありますね。、

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写真2番目は、花也の付下げを合わせてみました。竹をテーマにしたものですが、葉や枝は描かれておらず実質的には直線を使った幾何学模様でもありますね。モダンな図案のようですが、それでもインスピレーションの源になったと思われる小袖はあります。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。描かれているのはガーデニングでも使われるるジャノヒゲです。冬の間ずっと青い実が付いていますよね。青い実の色と帯の青が良く連携して帯合わせに貢献しています。

糸目はありませんが、葉が重なる部分で模様どうしが離れていますので、もともと糸目の線が有ったのを隠したと思われます。地色と模様の色が良く馴染んでいるので、途中に糸目の白い線が介在したら無粋ですよね。そういうことに無頓着で、ホンモノの友禅なんだから糸目があって当たり前だろ、という考えの友禅作家もいますが、中井さんは絵としての感性状態を考えて、糸目の線が無い方が良いと思われる場合は線を隠しました。

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写真4番目は、花也の付下げを合わせてみました。市松の地紋のある生地を使い。その地紋を生かして市松のパターンに模様を配しています。帯も格子なので、着物と帯の四角い升目模様がシンクロしています。着物と帯が同じ模様というのは変ですが、条件次第でプラスの効果がある場合がありますね。

桜の模様の着物は、帯合わせは悩むものです。着る人は桜の時期に桜を強調したいわけですから、帯で別の意味を加えて、桜というテーマをぼかしたくないですものね。結局、流水模様を合わせて「桜と流水」をつくるか、意味を加えることのない間道を合わせるしかないのではないでしょうか。

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写真5番目は、花也の付下げを合わせてみました。雪輪を取り方にして、柳を背景にして桜の花を描いたものです。上の作品は四角ベース、これは丸ベースです。
[ 2016/04/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百四十九回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

今日は着尺(小紋)を合わせてみました。龍村の間道は帯合わせしやすいですから、世間で帯合わせしにくいと言われる着尺を選んでみました。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。実際に制作したのは岡重です。野口の着尺として制作されるもののうち、実際には岡重が製作するものは、一定期間、野口のため以外には製作しないとめ柄になるのではないでしょうか。最初なのでとりあえず一般的な小紋を合わせてみました。

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写真2番目は、藤井絞の重厚な絞の着尺を合わせてみました。藤井絞でも絞りを飛び柄の着尺とこのような総柄の絞りの着尺があります。飛び柄は帯合わせしやすいですが、総柄は重厚で帯が負けてしまうことが多いですね。

現在、総柄の絞りの多くは中国など海外で絞られますが、この絞りのように1つ1つの絞りが単純作業の繰り返しではなく、意匠力や技術力を要するものは京都市内で絞られます。そのため、細かい疋田絞りで埋め尽くされたものより高いこともあります。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。多色で大きな模様、全身柄、地色が暗緑色と個性的、と帯合わせしにくそうな着尺です。着物に負けない存在感がありつつ、柄どうしがつながらないように無地場の多い帯ということですが、そういうのって、滅多にないですよね。

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写真4番目は、更甚の更紗の着尺を合わせてみました。生地は牛首紬です。牛首紬というのは、よほど染料に対して相性の良い生地なのか、細部までくっきり染まっています。後染めように染下地としても高額で取引される理由がわかりますね。更紗というのは多色のごちゃごちゃ柄ですから、龍村の間道のような存在感があってすっきりした帯の出番ですね。

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写真5番目は、皆川月華の着尺を合わせてみました。作家モノの頂点とも言える皆川月華です。帯合わせで悩む着物の頂点でもありますね。このような超高級品の作家モノは千切屋(千總、千切屋治兵衛などの千切屋一門との関係はない)の得意分野ですね。

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写真6番目は、藤村玲子の紅型の着尺を合わせてみました。帯合わせしにくい着物と言えば紅型ですから、一応対応できることを証明してみました。
[ 2016/04/11 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせ

第三千三百四十八回目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」の帯合わせです。

龍村の間道の良いところは、縞から江戸の粋を連想し、カジュアルと考えて紬に合わせたり、名物裂だから格が高いと考えて訪問着に合わせたりできることだと思います。今日はカジュアルと考えて紬を合わせます。

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いちばん上の写真は、大城広四郎の琉球絣を合わせてみました。伝統的な模様単位に縞を合わせたもので、沖縄の織物の歴史の中では、「綾の中」と言われる意匠です。

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写真2番目は、大城永光の琉球絣を合わせてみました。これも綾の中の意匠で、福木で染めた黄色系は鮮やかです。

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写真3番目は、重要無形文化財に相当する結城紬を合わせてみました。百亀甲の飛び柄です。高級な紬に龍村の間道を使う例です。

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写真4番目は、林宗平の古代紬を合わせてみました。「古代紬」というのは林宗平時代の林織物のブランドで、塩沢紬です。藍で染めた糸で織った紬で、青系どうしの組み合わせにしてみました。

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写真5番目は、郡上紬を合わせてみました。手紡ぎ真綿、草木染、手織りという紬が好きな人が求める条件をすべてそろえた紬です。伝統的な技法にこだわりながら、色とデザインは都会的というのが、現代の紬の人気の条件だと思います。郡上紬は50万円ぐらいして値段も高いですが、高級な紬に龍村の金銀糸の少ない袋帯という組み合わせも良いですね。
[ 2016/04/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「ちとせ間道」

第三千三百四十七回目の作品として、龍村の袋帯「ちとせ間道」を紹介します。

すでに何度も帯合わせで使ってしまっているので、新鮮味が無いかもしれませんが、まだ単体では紹介していませんでした。龍村の間道は何度も紹介していますが、意匠はすべて間道でも織りの組織はいろいろです。この作品は、生地に高低がある畝織で、博多や八重山のミンサーみたいな感じですね。

ストライプの意匠は、経糸を何種類か替えて織るだけのものですから、人類が無地の次に思いついたはずで、世界のあらゆる地域で自然発生的に生まれたと思います。日本の染織史におけるストライプの意匠は、正倉院時代においては長斑(全く違う色を並べてくっきりさせたもの)と繧繝(似た色を並べてグラえーション効果を狙ったもの)です。色の並べ方で違うものと認識していたのは驚きます。

中世においては、主に中国から輸入された名物裂の「間道」で、近世においては、東インド会社がもたらしたインド製の木綿の「唐桟」です。近世以後、島経由で来たということで、初めて「縞」という言葉ができました。近世初頭においてはまだ木綿は高級品でしたが、日本各地で栽培可能となった江戸中期からは庶民の着物となり、川越などで木綿の縞が織られるようになりました。それが江戸で流行して、「江戸の粋」と結びついたために、縞→粋→フォーマルではない、というイメージが生まれてしまったのかなあと思います。

一方、「龍村」というブランドは皇室のローブの制作者ということもありフォーマルのイメージがあります。その龍村のフォーマルイメージが重なることで、縞模様をフォーマルの方に引き戻して、フォーマルの袋帯として使えるのではないかと思っています。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は、近接です。部分的に入る緯の線は、絵緯糸として織られています。緯すべてにつながっているので、一定間隔で経糸で抑えられており、裏に渡り糸はありません。

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写真3番目は、タイトル部分です。間道のタイトルには、「日野」「青木」「弥兵衛」など実在する名物裂を踏襲するものもありますが、これは「ちとせ」というオリジナルのタイトルなので、龍村のオリジナルの配色パターンなのでしょう。

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写真4番目は全体です。袋帯の本来の織り方である袋状に織ってあるため、裏も同じ間道です。
[ 2016/04/09 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせ

第三千三百四十六回目は、一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせです。

今日は染めの帯を使って、私が好きに帯合わせをしてみました。

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いちばん上の写真は、木下冬彦さんの東京友禅の袋帯を合わせてみました。木下冬彦さんは熊谷好博子の弟子です。加賀や京都では有名作家の工房には大勢スタッフがいて、弟子を名乗って独立する人も数十人いるものですが、熊谷好博子のばあいは、1度に一人しか弟子を取らなかったので、生涯に育てた弟子は3人ということです。

木下冬彦さんは寡作で値段が高く、あまり作品を見ることはないですが、写真の通り細密で存在感のある作風であるために、帯としては無地や江戸小紋でないと合わせづらいですが、今回の付下げでは使えそうですね。

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写真2番目は、北秀の塩瀬地の袋帯を合わせてみました。塩瀬地に金彩と金糸の刺繍をしたものです。地色も無彩色なので、色数を増やさず、元の着物の作者の意図に逆らわない帯合わせです。

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写真3番目は、一の橋の友禅の名古屋帯「薬玉」を合わせてみました。一の橋の作品の中でも中井淳夫さんの雰囲気を引き継ぐ重厚な友禅です。回転するような薬玉の紐が、動きのある表現で着物の静寂を打ち破ってくれています。

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写真4番目は、花也の染め帯「湊取り琳派模様梅松」を合わせてみました。存在感がありながらすっきり感もあり、良い作品だと思いますが、それは花也が中井淳夫の元下職を使って作った作品だからです。

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写真5番目は、秀雅で仕入れた江戸刺繍の名古屋帯を合わせてみました。堰出しの疋田と刺繍による作品で、先日紹介した千代田染繍の流れの作品と同系のものです。この方が安いですし使いやすいですね。

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写真6番目は、野口の友禅の名古屋帯を合わせてみました。御所解模様の小袖に登場するモチーフを部分的に使って帯の模様にしたものです。友禅作品でありながらカチンの墨描きの線も併用していますが、本歌の小袖の様式にしたがっているんですね。
[ 2016/04/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせ

第三千三百四十五回目は、一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせです。

今日は袋帯を使って、私が好きに帯合わせをしてみました。

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いちばん上の写真は、紫絋の袋帯を合わせてみました。杜若を肖像画のようにそのものズバリ織り出しています。私はこういう作品が好きですが、季節限定ですし、着物も無地や江戸小紋のように意味のないものでないと合わないので使い勝手が悪いです。それで普段は帯合わせに登場することはないのですが、今回の華文が連続するだけの付下げを背景として使わせてもらいました。

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写真2番目は、織悦の袋帯を合わせてみました。上の杜若と同じように栗だけを織り出しています。本歌は刺繍作品で、それを織りで表現したもののようです。これも私が好きな作品ですが、やはり秋限定ですし、着物も栗鼠の模様でもないかぎり、無地や江戸小紋のように意味のないものでないと合わないので使い勝手が悪いです。それで普段は帯合わせに登場することはないのですが、今回は連続する華文の付下げを背景に使わせてもらいました。

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写真3番目は、紫絋の袋帯「松重ね」を合わせてみました。この帯も単一の植物をテーマにしていますが、松は季節が無いですし、縁起も良いということで、ふつうにフォーマルな着物に合わせることができます。単一植物の肖像ということでやっていることは同じでも、その植物の意味で使い勝手も違ってくるわけですね。

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写真4番目は、紋屋井関の袋帯を合わせてみました。正倉院御物の銀平脱の合子をテーマにしたものですが、市松模様の中に丸文が並んでいるというパターンでは、付下げと同じです。シンクロしたような雰囲気を狙ってみました。普通はやらないでしょうが。

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写真5番目は、北村武資の袋帯「七宝連珠文」を合わせてみました。北村武資の帯は、あらゆる上品な着物に合ってしまうともに独自の存在感もあります。人気があるのもわかります。
[ 2016/04/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせ

第三千三百四十四回目は、一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせです。

昨日は西陣の織の帯で合わせてみたので、今日は友禅の染め帯で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の防染による白揚げと刺繍の名古屋帯を合わせてみました。白揚げ部分の一部に豊富な刺繍とその同色のわずかな挿し色をしています。白揚げと挿し色と刺繍の3者が、きれいなグラデーションをつくるというただ1つの目的のために協同している作品です。

着物には小さな華文が沢山あって、帯には大きな華文が1つあるわけですから、帯合わせとしてはテレビゲームの最後に出てくるラスボスの関係ですね。

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写真2番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。半開きの扇子2本に、糊糸目の友禅と箔と刺繍で重厚な加飾をしています。扇子の中に描かれているのは、牡丹唐草、松、七宝文、亀甲割り付け文などで、かつての安田様式そのものですね。華文の対して扇子で、フォーマル方向で良い組み合わせではないでしょうか。

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写真3番目は、秀雅の堰出しの疋田と刺繍の名古屋帯を合わせてみました。このような疋田は、絞りでもなく型でもなく、糊筒で1粒ずつ糊を置いて防染しているもので、堰出しの疋田と言います。それと刺繍を合わせたこのような様式の作品は、かつては黒留袖として千代田染繍が作って北秀が売っていました。値段は小売価格で200~350万円でした。

この作品は、その黒留袖をミニチュア化して名古屋帯としたもので、北秀の元社員である秀雅がつくっていました。正体がわかると黒留袖の模様に見えてきますよね。名古屋帯としては使い勝手が悪いですが、付下げ以上の着物に合わせるとピッタリしますね。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の友禅と箔の袋帯を合わせてみました。生地は塩瀬です。制作したのは中井淳夫さんです。本歌は乾山の陶画です。千鳥が省略されていますが、それも中井さんの見識でしょうか。帯の模様の色は着物の色に良く馴染んでいますが、静的な着物の意匠に対して、帯は対照的な動きのある意匠です。

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写真5番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。糊糸目による線描きを多用した高度な友禅です。世間ではこういう帯合わせはあまりしないでしょうが、市松どうしでシンクロさせてみました。
[ 2016/04/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

梅岩寺の桜

当店から7,8分のところにある枝垂桜です。今年も見てきました。

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青梅で有名な桜の巨樹です。寺の境内に2本、将来のための木が1本あります。

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もう1本の枝垂桜です。

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ピンクの濃い花弁を近接で撮ってみました。
[ 2016/04/05 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせ

第三千三百四十三回目は、一の橋の付下げ「取り方市松華文」の帯合わせです。

「無地系の着物」というのは、無地または模様の少ない着物という意味でしょうが、今回の付下げもまた雰囲気や使い勝手としては、無地系の着物に近い気がします。模様の面積だけ考えれば、普通の付下げよりむしろ多いぐらいですが、華文という上品な古典文様が規則正しく連続するだけの意匠なので、模様の物語的な展開が無いからでしょうね。

作者が目指すものは、古代の神殿の列柱や神社の参道の杉並木のような単調な繰り返しの美しさでしょう。スーパーでもトイレットペーパーなど同じものを店頭に大量陳列して来客を圧倒することがありますが、古代の神殿の列柱と同じ発想だと思います。

このような単純な模様が連続する着物に対する帯合わせには、2つの発送があります。1つは着物の作者の意図を尊重して、帯で模様を足さないことです。神社の参道の杉並木に中に薔薇やチューリップを植えちゃあ雰囲気が壊れちゃいますよね。もう1つはその着物には絵画性や物語性が不足していると考えて、帯で意味のある模様を足すことです。この場合、帯が模様の中心になり、着物の連続する模様は背景としての役割をすることになるでしょう。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。着物に対し余計な意味を足さない模様ということで、間道を選んでみました。色もなるべく足さないようにしてみました。

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写真2番目は、織悦の袋帯「七宝道長取り」を合わせてみました。有職文である七宝文様と立沸文様と、道長取りを合わせた帯です。意味をあまり足すことのない帯合わせということになると思います。

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写真3番目は、織悦の袋帯「彩悦錦」シリーズの1本「亀甲菊枝文」を合わせてみました。有職文は普遍的な美しさを持ち、しかも着物と同じ連続文様ですから、意味をあまり足すことのない帯合わせということになると思います。

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写真4番目は、坂下織物の袋帯「御門綴」シリーズの1本を合わせてみました。複数の正倉院裂の意匠をコラージュしたものです。メインになっている模様は唐花文ですから、着物に並んでいる華文のラスボスが帯についているという感じです。形は連続していて、大きさが連続を崩しているということになりますね。

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写真5番目は、龍村の袋帯「有朋文」を合わせてみました。鳥獣戯画をテーマにしたものですが、「有朋文」というタイトルはさすが白井さんですね。意味も動きも展開もある模様を足してみました。

[ 2016/04/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「取り方市松華文」の続き

第三千三百四十二回目は、一の橋の付下げ「取り方市松華文」の続きです。

今日はそれぞれの模様を近接で撮ってみました。「それぞれ」と言っても模様はどこもいっしょですけどね。着物の意匠としては、模様にストーリーがあって物語的に展開していくものと、同じモチーフを繰り返すものが有ります。変化があるのも美しいですが、変化がなくただ繰り返すだけという美しさもありますね。神殿の列柱のようなものでしょう。

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いちばん上の写真は、市松模様を近接で撮ってみました。こうして見ると、華文の種類は結構あります。多様なものが単純に並んでいるわけで、変化のある美と繰り返す美の両方の要素をもっているのです。

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写真2番目は、取り方の輪郭線がよくわかる部分を近接で撮ってみました。輪郭線は直線ではなくフリーハンドの線のようにみえますし、糸目の線も優しいです。そういうことが作品の雰囲気を決定しますね。

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写真3番目は、マエミのあしらい(刺繍)がある部分に近接してみました。あしらいは、華文の外縁ではなく中の芯を繍っています。刺繍屋さんのセンスでしょうか。

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写真4番目は、同じ個所を斜めから撮ってみました。
[ 2016/04/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「市松取り華文」

第三千三百四十一回目の作品として、一の橋の付下げ「取り方市松華文」を紹介します。

グレーの濃淡と金とわずかな錆朱だけを使った単彩主義の作品です。意匠も数種類の華文の連続ですから、模様は有っても気分は無地系の着物の仲間かもしれませんね。無地系の着物が目指すものは、知的で上品に見せるということに尽きると思います。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。斜めの取り方は2段です。上が4マス分、下が3マス分ですから、上がやや大きいというのが収まりが良いのでしょうか。オクミの端に見える少しの模様は衿の模様で、縫い目を越えて胸の模様(写真4番目)につながります。

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写真2番目は後姿です。下の斜めの取り方は、背中心を越えたところで着物の裾に到着して終わります。上の取り方は、下前まで続いて見えなくなります。

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写真3番目は袖です。左は3マス、右は2マスですからだんだん細くなっていますね。

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写真4番目は胸です。いちばん上の写真の衿につながります。

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写真5番目は下前です。後姿の下の斜めの取り方は、下前に入って見えなくなりますが、その結末はこうなります。丸くなって終わるんですね。この着物の取り方は、中が直線である市松ですが、輪郭線は柔らかい線です。糊糸目のなせる業でもあるわけですが、そういうことが作品全体の雰囲気を決定しますね。
[ 2016/04/03 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の帯合わせ

第三千三百四十回目は、千總の振袖の帯合わせです。

今回の千總の振袖は、先日の参考図版で見ていただいたとおり、刺繍が友禅に変更してあるだけで、モチーフやそのならべ方は意外に古典に忠実です。芒の表現もモダンに見えますが、それもまた古典通りなんですね。全身が草花文様であるわけですが、それに合わせる帯は草花模様でも良いでしょうか。それとも草花を避けた方が良いでしょうか。今日はそんなテーマです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「瑞鳥遊園錦」を合わせてみました。チュニジアに多くあるローマ時代のモザイクをテーマにした作品です。葡萄の蔓と鳥を合わせたものですが、着物の草花に対して帯は鳥ということで、全体で花鳥画をつくる帯合わせです。いつもこんな風に決まれば帯合わせは楽ですね。

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写真2番目は、紋屋井関の銀平脱の合子をテーマにした袋帯を合わせてみました。銀平脱は職人の人権を無視したような古代特有の面倒な技法です。用途は聖武天皇の碁石入れで、象さんチームと鸚哥さんチームがあります。それを並べて帯の意匠としたものです。着物の草花模様に対する帯の鳥獣模様であり、着物の拡散模様に対する帯の円形凝縮模様です。

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写真3番目は、織悦の雪輪の袋帯を合わせてみました。着物の草花模様に対する帯の気象現象模様であり、着物の絡み合った模様に対する帯のすっきり模様です。こういうすっきりした模様は使い勝手は良いですね。

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写真4番目は、帯屋捨松の袋帯「ヴィクトリア花文」を合わせてみました。洋の東西の違い、織りと染の質感の違いはありますが、どちらも絡み合った草花模様です。避けた方が良いでしょうか、それとも質感が違うから良しとしますか。

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写真5番目は、山口織物の花の丸をテーマにした袋帯を合わせてみました。どちらも草花模様ですが、着物の拡散模様に対して帯は円形凝縮模様です。円形凝縮模様は余白がありますが、その余白のおかげで模様が切り離されてそれが救いになっています。
[ 2016/04/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)