藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯の細部

第三千二百八十二回目は、藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯の細部です。

絞りの技法にはホンモノもニセモノもありますが、ホンモノとニセモノの2つがあるわけではなく、純粋なホンモノから純粋なニセモノまで段階的になっています。

純粋なホンモノというのは、室町時代の技法と全く同じという意味ですが、小さな絞りについては生地を摘まんで竹の皮で包んで防染して染液に浸けます。竹の皮の面積は竹の円周を超えないわけですが、それを超える面積を絞るばあいには桶絞りをします。桶絞りは、生地の防染したい場所だけ桶に挟んで染液に浸けます。現代人から見れば、わざわざ桶など持ちだすところは不合理ですが、当時としては他に方法が無く合理的だったのです。泰三の振袖の大きな面積の絞りは桶絞りで染められています。

その次にホンモノといえる絞りは、生地を摘まんでビニール(プラスチックのフィルム)で包んで防染して染液に浸けるものです。絞って染液に浸けるという点でホンモノですが、室町時代に無いプラスティックのフィルムを使うという点でニセモノになるわけですね。藤井絞はこのような技法で作られています。プラスティックのフィルムは大きさに制約が無いので桶絞りは必要はなく、そのため現在桶絞りをできる工房は京都に一社しかなくなってしまいました。

その次にホンモノといえる絞りは、生地を摘まんで筆で着彩するものです。絞る段階まではホンモノですが、染液に浸けないという点でニセモノです。染液に浸けるということは、防染に少しでもゆるみがあれば染料が浸入して台無しになるのですから、いちばん難しいところであり、それが無ければ作業は簡単になります。しかし同時に、絞り方に制約がなくなり創作の自由度が増し、作品の芸術性が高くなるということもあります。そのため個人の辻が花作家には向いていて、現在、伝統工芸展の常連の入選者である小倉健亮の弟子たちはこの技法で染めています。

純粋にニセモノといえるのは、絞らないものです。絞りの形に型染をした後、生地に圧力をかけて凹凸を演出するものなどですね。エアブラシを使うばあいもあります。見分ける方法としては、糸で縫い締めした時の針の穴が無いことですね。

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藤井絞は、染液に浸ける絞りを行い、それを同社のアイデンティティにしていますが、この作品と先日の金魚玉にかぎり、筆で着彩する技法を併用しています。葉を見ると、2度絞って2度目は筆で着彩しているように見えますね。

ここで言えることは、ホンモノができる作家はニセモノを作るとなお上手くなるということですね。

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[ 2016/01/31 ] 絞り | TB(0) | CM(4)

藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯

第三千二百八十一回目の作品として、藤井絞の辻が花系の絞の名古屋帯を紹介します。

絞りには、有松的発想ともいうべき絞りと、辻が花的発想ともいうべき絞りがあります。有松的発想とは、生地をいろいろ工夫して絞ってみて、解いた時に人間が意図してもできない模様が現れることを喜ぶ発想です。辻が花的発想とは、先に描きたい模様(多くは具象的な絵画)があって、それを実現するために意図的に絞り方を開発していくという発想です。辻が花は室町後期、有松絞は江戸初期ですから、辻が花的発想の方が先行しています。そして現代の絞り文化は有松的発想の方が主流ですね。

模様の表現手段が少なかった時代は、絞りが具象表現にも使われていたのが、徐々に模様の表現手段が増えてくると、絞りは絞り本来の強みが生かせる分野に限定されていったのでしょう。本来はハプニング芸術のように一回性のものであるべきと思いますが、有松のように専業の職人さんが現れると意図的にハプニング的な模様を作るようになって、明治以降、特許も取ったんですね。

もう1つの絞りの強みとは不器用さだと思います。現代の辻が花にしても、いくら巧みに絞っても、正確さにおいて筆で描いた絵に劣るのは当然なのですから、それが絞りという絵を描くのにふさわしくない技法で出来ているという制約を楽しんでいるのだと思います。「あじわい」と呼ばれるものですね。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。お太鼓の模様が少し大きく見えますが、そのかわり上下が少し切れています。


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写真3番目は、腹文です。

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写真4番目は、帯の前の部分を半分に折って、実際に締めたときに見える状態にしてみました。

[ 2016/01/30 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせ

第三千二百八十回目の作品は、一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせです。

今日は名古屋帯で合わせてみます。付下げで使える織の名古屋帯といえば、カジュアルが基本である名古屋帯でありながらフォーマルっぽい雰囲気を持つものということですが、龍村と喜多川俵二がその代表でしょうか。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「投壺矢」を合わせてみました。壺に矢を入れるという昔のゲームに取材したものです。単に矢をテーマにすれば殺生につながり茶事に使いにくいですから、着物や帯の模様で矢を描くときは、たいてい破魔矢とか鏑矢とか、人や動物に刺さらないものを描いているものです。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「花韻」を合わせてみました。花から音波が出ている意匠です。音波もちゃんと表現されていて、1つ間違えればアニメのようなすごい意匠ですよね。

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写真3番目は、喜多川俵二の名古屋帯「鳥襷丸文」を合わせてみました。鳥襷文は公家の装束にもある有職文ですね。

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写真4番目は、喜多川俵二の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。牡丹唐草は名物裂の代表のような文様で、これは牡丹の花の小さいものですね。

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写真5番目は、喜多川俵二の名古屋帯「厳島華文」を合わせてみました。平家納経に取材したものですね。
[ 2016/01/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせ

第三千二百七十九回目の作品は、一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせです。

今日は、龍村の各種間道を合わせてみました。こうしてみると間道は万能ですね。間道を1本だけ買っておいて、もう一生帯は買わなくてもいいかもしれないですよ。そんな人が増えたら西陣はかないませんが。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。

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写真4番目は、龍村の袋帯「彩光間道」を合わせてみました。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。

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写真6番目は、龍村の光波帯「日野間道」を合わせてみました。光波帯は、仕立て上がりの名古屋帯です。
[ 2016/01/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせ

第三千二百七十八回目の作品は、一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせです。

今日も帯合わせの続きです。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯を合わせてみました。水色地で閉じた扇子と霞がテーマです。元々の帯の意匠のテーマが尖ったものではないので、なんとなく穏当に合っているのではないかと思います。こういう帯は、どうしてもこの1本が欲しいとも思わないかわり、嫌われる理由もなくどんな着物にも合いますね。

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写真2番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。モダンな色、モダンな意匠でありながら、手織りで本金の引き箔の糸を多用するという、もっとも正統な西陣の織物でもあります。上の例では「人が気が付かないほどの普通」を狙いましたが、この例では「こんな合わせ方もあるのか」という驚きを狙ってみました。

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写真3番目は、北村武資の袋帯「七宝連珠文」を合わせてみました。北村武資の帯は古典の写しでもモダンな雰囲気があって、良い着物ならたいてい合いますね。この「七宝連珠文」には色違いもあるようですが、私はこの黄色地がいちばん気に入っています。

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写真4番目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。上の例では同系色の黄色で合わせており、こういうのを上品と感じる人が多いのも承知していますが、今度は着物とは全く関連性の無い多色の帯でデコトラみたいに合わせています。逆もまた真、というのは帯合わせにもありますからね。

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写真5番目は、織悦の袋帯を合わせてみました。琳派の草花文と芝垣を合わせた意匠で、白地にきれいな多色です。織悦の色は原色を合わせても、色に透明感があるためか上品ですよね。お太鼓がうさぎである帯は、腹文が秋草であることが多いですよね。そんな意味でうさぎに秋草を合わせています。

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写真6番目は、織悦の袋帯「楽園」を合わせてみました。茶色に細かい模様ですから年輩者向きのようですが、よく見るとお馬さんが居たりしてファンシー系のかわいい意匠なんですよね。アンバランスが持ち味なわけですが、本来大人しか着られない着物である安田なのにうさぎが居るこの着物も同じですね。
[ 2016/01/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせ

第三千二百七十七回目の作品は、一の橋の付下げ(実際の制作は安田)の帯合わせです。

今日は、帯屋捨松の袋帯で帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、桃がテーマの袋帯を合わせてみました。桃の文様は中国の西王母伝説に由来し長寿の意味、うさぎは子孫繁栄ということで、縁起が良いことの押し売りみたいな感じですね。帯の黒地は、緯糸が引き箔で(漆箔、ラッカー箔かも)、特殊な光沢があり、重さも絹の織物より軽いです。

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写真2番目は、菊と牡丹の袋帯を合わせてみました。帯の地の部分は、全体に本金の引き箔が使われており、さらに撚金糸も使われて、金色どうしでありながら籠目文様が浮き上がるというとても凝ったものです。

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写真3番目は、亀甲文様がテーマの洛風林ブランドの袋帯を合わせてみました。少し昔は帯屋捨松も洛風林同人で、「洛風林」のロゴと48番の証紙がついています。伝統的な亀甲という本来は背景に使う程度の単純な文様を主役にしながら、配色が上手くて退屈な感じはしません。うさぎと亀の組み合わせですね。

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写真4番目は、鳴子がテーマの袋帯を合わせてみました。鳴子は収穫を守るものですから秋のテーマですね。描かれていなくても、鳴子だけで雀か小動物の存在を暗示します。「帯屋捨松」のロゴが無い手織りの高級バージョンです。今の手織りバージョンはすべて中国製のようですが、少し昔は日本製ですごく高くてロゴのある標準品との価格差が大きかったのです。

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写真5番目は、名物裂の牡丹唐草がテーマの袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴが無い手織りの高級バージョンです。意匠的には単純な写し文様ですが、地が引き箔でとても凝っています。

[ 2016/01/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際に制作したのは安田)の細部と拡大

第三千二百七十六回目の作品は、一の橋の付下げ(実際に制作したのは安田)の細部と拡大です。

今日は、あしらい(友禅の着物の一部を強調するための補助的な刺繍)を中心にこの作品の細部を近接と拡大で見てみます。

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いちばん上の写真は、うさぎの顔の近接です。赤い目と波の飛沫があしらいですね。以下で拡大してみます。

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写真2番目は、赤い目の拡大です。

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写真3番目は、波の飛沫の拡大です。金糸は、本金の平金糸です。留め糸は淡いピンクです。平金糸の留め糸というのは、強く留めすぎると平金糸が歪んでしまうようです。これは顕微鏡で見たもので、実物は極めて小さいものですから難しそうですね。

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写真4番目は、波の拡大の裏側の拡大です。淡いピンクは留め糸の裏側の状況です。平金糸の裏側が見えるところがありますね。裏側が白いのは、金箔を裏打ちした和紙で、本金糸の証拠です。
[ 2016/01/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際に制作したのは安田)の細部

第三千二百七十五回目は、一の橋の付下げ(実際に制作したのは安田)の細部です。

波兎の文様は、謡曲『竹生島』の「緑樹影沈んで魚木に登る気色あり 月海上に浮かんでは兎も波を奔(はし)るか 面白の島の景色や」という一節が元になって生まれたと言われます。舟で竹生島に渡るシーンで島が近づいてくるときの描写です。島の樹木が湖面に映って実際にいる魚が木に登っているように見える、月が湖面を照らし波がうさぎが走っているように見える、というところです。白い小動物なら何でも良さそうなところ、あえて兎に例えているのは、月にうさぎがいるという伝説からの連想でしょう。

人というのは、好きなものに甘くなり何でも許してしまう人と、好きなものこそ厳しくなりよほどのものでないかぎり許せなくなってしまう人がいます。蛙が好きだからと言って旅行するたびに蛙の玩具を買い、1000個ぐらい集めているという人は前者でしょう。私は後者で、うさぎが好きだからこそ滅多にうさぎの玩具は買わないのです。

その私が、どうしても仕入れないではいられなかったうさぎです。決まりきった波兎の様式ですが、かわいくて高貴でちょっと色気がありますよね。さすが安田、何でも描けちゃうんだなあというところです。

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いちばん上の写真は、マエミとオクミの縫い目にある波うさぎです。赤い目と波の飛沫があしらい刺繍です。

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写真2番目は、マエミにある波に花です。波の飛沫があしらい刺繍です。

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写真3番目は、マエミの下の方にある波うさぎです。赤い目があしらい刺繍です。

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写真4番目は、オクミにある波に花です。波の飛沫があしらい刺繍です。

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写真5番目は、背中心の縫い目にある波うさぎです。赤い目があしらい刺繍です。
[ 2016/01/24 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ(実際に制作したのは安田)

第三千二百七十四回目の作品として、一の橋の付下げを紹介します。実際に制作したのは安田です。

私がかつて憧れ、北秀や千切屋治兵衛であまりの高価さに悩みながら仕入れていた安田は、安田好男さんというのですが、今回紹介する一の橋が扱う安田はその息子さんの作品になります。息子さんの作品は少し前に「雲」を紹介しましたから、今度の「うさぎ」で2点目になりますね。

安田好男さんの作品は、安田様式ともいうべき一定の形式を持っていました。雪輪、扇面、色紙あるいは短冊などの取り方があって、その内部を友禅の割り付け文、箔、描き疋田あるいは刺繍でこれでもかというぐらい重加飾をし、一方で取り方の外部は波や松などをさらっと白揚げの友禅で描くというものでした。

すなわち、取り方の内部は江戸前期までの権力者好みの重厚な装飾であり、取り方の外部は江戸後期に現れる粋な文化を思わせる装飾なのです。1枚の着物で、何百年かの小袖の歴史を説明してしまうんですね。だからこそ、安田様式はもはや進歩する必要のない完璧な様式であり、かつ誰でも真似できて模倣品が氾濫するという欠点を持ったものでした。

私は、息子は安田様式を受け継いで正統な模倣品をつくるものと思っていました。ところが全然違ったのです。なんだか親より才能があるみたいですね。なんと自分で下絵を描くそうです。自分で筆を持たずコンダクターの立場でいる従来の京都の悉皆屋とは違うようです。

それは一見良いことのようにも思えますが、京友禅界の余裕がなくなって、全く筆を持たない人を1人養う余裕がなくなって、コンダクターも何かしなければいけなくなったのかもしれません。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。うさぎ2、花2です。

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写真2番目は後姿です。うさぎ1、花2です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。模様の数は、前姿4、後姿3、胸と両袖各1で10個ですね。
[ 2016/01/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の帯合わせ

第三千二百七十三回目は、千總の振袖の帯合わせです。

振袖に合わせる帯を買う時に考えることは、振袖専用にするか、後に訪問着などと兼用できるものにするかですね。私は、ある程度高いものを買うときは、兼用することを考える方が良いと思いますね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「王朝華映錦」を合わせてみました。千總の振袖に龍村の華やかな帯を合わせるという、三越や高島屋の特選コーナーにありそうな組み合わせです。

百貨店で、娘のためにこういう組み合わせで買い物をできる人は、自分は幸運に恵まれていると神か仏に感謝するべきだと思います。

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写真2番目は、龍村の袋帯「瑞鳥遊園錦」を合わせてみました。チュニジア辺りに多く残る古代ローマのモザイクに取材したもので、かなり個性的ですね。

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写真3番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。帯の地色が金色ということで選んでみました。赤地に金は失敗の無い安全な組み合わせですよね。

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写真4番目は、昔の服部の袋帯「オリエント錦」を合わせてみました。全面的に本金の引き箔で織られた帯ですが、今、高級と言われる帯よりもずっと細く裁断された糸を使っていて、昔の服部のすごさがよくわかります。

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写真5番目は、洛風林同人の誰かによって織られた袋帯を合わせてみました。洛風林というのは、西陣でももっとも個性的な作風でまさに創り手であるのですが、証紙番号を持たず、定義上は問屋になります。もともと西陣には出機というのがあるのですから、織屋と問屋の境は曖昧ですよね。

これは、問屋が「実質的には洛風林です」というセールストークで売っていた帯です。洛風林同人によって織られ、洛風林に納めず独自に売った帯という意味でしょうね。本当なのか、単にセールストークなのか知りませんが、手織りの帯であることは確かです。

西日本好みというか、関東に人は好まない濃厚な色彩の帯です。赤に対し濃厚な赤紫という組み合わせになります。
[ 2016/01/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の細部

第三千二百七十二回目は、千總の振袖の細部です。

着物というのは、日本人が昔から着てきたものと錯覚しがちですが、近世以前に小袖を着ていた人は人口の1%ぐらいじゃないかと思いますし、近代になって千總が型友禅を開発して三越で売っても、一握りのお金持ちしか買えなかったでしょう。

成人式にみんなが振袖を着るようになったのは、美智子さまのご成婚以後の昭和30年代より後でしょう。その時代に振袖のデザインを確立したのは千總です。百貨店の店頭に並んだ千總の振袖のデザインが、現在まで続く振袖のデザインの基本になったのだと思います。

日ごろ普通の着物を使っているメーカーが、たまたま高級な振袖をつくると肩に力が入って、これでもか、って感じになってしまうものですが、ずっと昔からこんな振袖をつくってきた千總は、高級品でも手慣れた感じで作っています。そこがこの作品のいちばん良いところではないでしょうか。

今日はさらに細部を見てみます。

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いちばん上の写真は、そこそこ主要な場所にある牡丹の花です。立体感を強調する刺繍がしてあります。普通の友禅の着物の刺繍はマエミが中心ですが、この作品ではあちこちが刺繍で盛り上げてあります。単に豪華にするというよりも、立体感を演出する必要があるということですね。

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写真2番目は、水色の牡丹の花で、刺繍でオレンジと金の縁取りが付いています。モダンなセンスで、私が好きな場所です。

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写真3番目は、花の丸の次の主役である大きな葉です。切箔のデザインの摺箔で装飾されています。切箔というのは、平家納経にも使われている古い技法で、生地に糊を縫っておいて、四角く切った金箔を撒くものです。近年では、四角い形も型で表現して摺箔にする場合が多いです。

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写真4番目は、摺箔の葉と型疋田の葉です。準主役の大きな葉は、豪華であるが平面的な摺箔や型疋田による表現をしています。主役の花の丸は刺繍による立体的な表現ですから、役割分担になっていて、両者で立体と平面の奥行表現になっているのです。

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写真5番目は、添え物の植物文です。花の丸模様は求心力の強い模様で、各模様が独立しがちですが、それを有機的につないでいるのが流水です。その流水だけでは足りないと思ったのか、枝花模様が添えられています。

[ 2016/01/21 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の細部

第三千二百七十一回目は、千總の振袖の細部です。

今回の千總の振袖は、十数個の花の丸と、それを有機的につなぐ流水によってできています。花の丸の種類は、牡丹、菊、橘、梅、椿、桐の6種類です。そのバリエーションで十数個の花の丸ができているんですね。

今日は、6種類の花の丸を近接で撮ってみました。その6種類は、十数個のうちいちばん代表的なのを選びました。

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いちばん上の写真は牡丹です。これはマエミとオクミにまたがっています。

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写真2番目は菊です。これは後姿です。

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写真3番目は橘です。マエミにもありますが、袖を撮ってみました。

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写真4番目は梅です。これは後姿です。

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写真5番目は椿です。これはマエミの下の方です。

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写真6番目は桐です。これは帯の下になってしまいそうですね。
[ 2016/01/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千總の振袖

第三千二百七十回目の作品として、千總の振袖を紹介します。

2015年8月27日(三千百八十六回)でも千總の振袖を紹介しましたが、それは標準品で百貨店価格が78万円、こちらはもっと上のバージョンで百貨店価格は180万円になります。世間では高めの価格を参考上代として提示しておき、実際には値引き販売が常態化している場合も多いですが、千總のばあいは売上げの9割が百貨店ということなので、百貨店価格というのはほぼ実質価格ということになるのでしょう。

世間では、千總の京友禅が日本一だと思っている方もいますが、京友禅というのは、実際には悉皆屋が作るので、良い悉皆屋と契約したメーカーが良いメーカーということになります。少し目利きになると、千總の着物とか、千治の着物とか、野口の着物とか言う見方ではなく、どのランクの悉皆屋で作ったのかな、という見方ができるようになります。

ただ、千總のすごいところは、今でも社内で図案を作れることです。正社員として美大などを出た人材をおそらく20人ぐらい抱えているんですね。昔は千治にも考案室というのがあって、有田の絵付師の家系の方をチーフに10人ほどのチームが有ったのですが、20年ほど前に解散し、今はすべて悉皆屋まかせなのです。

千總の意匠力は、振袖によく発揮されていますよね。今回は、平板で退屈なゴム糸目をけなしたりするのではなく、図案を中心にチェックしていきます。

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いちばん上の写真は全体です。図案として全体を眺めてみると、7通りか8通りの花の丸文様で構成されていることに気づきます。しかしそれだけではただの飛び柄になってしまうので、流水がそれらに有機的なつながりをもたらし、意味のある1つの模様にしているのです。

振袖というのは、100号のキャンバスに相当します。それを1つの絵として破たんなく仕上げるということだけでも、素人にはできないことです。


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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は後姿です。
[ 2016/01/19 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

神社と提携した女児のお宮参りの着物

第三千二百六十九回目の作品として、神社と提携した女児のお宮参りの着物を紹介します。
どこかのメーカーが企画した平安時代の装束のような女児のお宮参りの着物です。企画されたのは数年前ではないかと思いますが、今になって仕入れてみたのは、羽生結弦選手の陰陽師の衣裳に似て受けるかなと思ったからです。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は、刺繍紋の近接です。刺繍はミシン刺繍です。

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写真3番目は、袖の紋と紐です。白地地に対し、刺繍紋と組紐のポイント的な五彩が効果的です。

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写真4番目は、付属するお守りです。提携した神社のお守りが付いてきます。

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写真5番目は、メーカが付けた解説書です。どこかのメーカーが企画して百貨店などでキャンペーンして、結構高い値段で売られたのでしょう。そういうのは、時が経ってみんなが忘れてから買うのも良いものです。

キャンペーンしているときは、みんな良く見えますが、終わってしばらく経つと実質的な価値がわかるからです。これは、時間が経ってから見ても結構魅力的です。私の子供が生まれたときにこれが有ったら絶対に使ったと思います。皇族みたいで照れくさいと思うかもしれませんが、初めての子のときは、どんな特別なことも許されるような気がしてしまうものです。

黒地の女児のお宮参りの着物

第三千二百六十八回目の作品として、黒地の女児のお宮参りの着物を紹介します。

女児のお宮参りの着物で黒地というのは、私は生まれて初めて見ました。びっくりしたのですが、考えてみれば、昔はランドセルの色も男子は黒、女子は赤と決まっていたのが、今は自由なのですから、着物の色も自由なんだなあと思い直しました。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は、背中の上の方の近接です。刺繍はミシン刺網です。

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写真3番目は、袖の近接です。

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写真4番目は、背中の真ん中辺りの近接です。

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写真5番目は、私が面白いと思った部分の近接です。

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十七回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。


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いちばん上の写真は、木村雨山の黒留袖に合わせてみました。実際に着用する人の買い物パターンを考えてみますと、人間国宝の黒留袖を売る店や百貨店は、それに合わせる帯としては龍村の高いバージョンを勧める可能性が高いと思います。ですから、こういう組み合わせはかつて実際に有ったものだと思います。

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写真2番目は、毎田仁郎の色留袖に合わせてみました。「伊勢路」というタイトルのおそらく晩年の作品です。絵としてはとても魅力的な作品だと思います。海の表現も本当に海に見えて世間の友禅作家のレベルをはるかに超えています。しかし実際に着るとなると、マエミに初日の出で有名な夫婦岩があるわけで、なんだか自分が日本の中心みたいで照れくさいですねえ。

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写真3番目は、羽田登喜男の訪問着に合わせてみました。京都丸紅の美展で発表されたもので、人間国宝になった直後ぐらいだと思います。当時の美展の価格は780万円(+消費税3%)でした。当時、羽田登喜男の頭の角ばった鴛鴦は大人気で、「1羽いくら」なんていわれたものですが、これは24羽です。

今ネットショップで、羽田登喜男の鴛鴦の帯など見るとあまりありがたみが無いですが、あれは作りすぎですねえ。この作品のように、本人が元気だったころの本格的な絵羽作品は、広げると周囲の景色まで変わるぐらい特別なものですよ。

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写真4番目は、森口華弘の訪問着に合わせてみました。上の3例は着物と帯が良く合っていました。呉服の展示会や百貨店で有名作家の絵羽の着物を買う人は、龍村の帯も合わせて買ったことでしょう。それに比べて、この森口華弘はちょっと微妙ですね。

おそらく森口華弘という人は、伝統工芸展に出すものと、問屋を通して一般に販売するものと分けていなかったのでしょう。実際に森口華弘が買った人は、北村武資を合わせているのかも。
[ 2016/01/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十六回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。先日紹介した作品ですが、帯と合っているとは言えませんよね。着物も帯も優れた作品ですし、どちらも同じぐらい存在感があるのですが、重い中井の色と原色の龍村の色が違いすぎますよね。

しかし帯合わせとは不思議なもので、この組み合わせで堂々と着ていたら、それはそれで素敵かもしれません。着ている人間という要素もあるので、堂々としていればみんな納得させられてしまうのではないでしょうか。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。金銀の扇面を配しただけのシンプルな図案ですが、周囲を圧するような存在感がある中井淳夫にしかつくれない作品ですね。

無彩色の他は金銀だけという、色がほとんどない作品ですが、そこに対照的な原色があふれるような龍村の帯を合わせています。全く異質なはずですが、なんとなく許せてしまう気がしませんか。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。元絵は神坂雪佳の下絵集にあります。それは多色の普通の絵でしたが、ここでは金泥と墨絵のように変換されています。金泥は筆の勢いで描いているように見えますが、実際には縁蓋で防染されていて、非常に手間を掛けて計算した線なのです。

墨と金だけという、色がほとんどない作品ですが、そこに原色があふれるような龍村の帯を合わせています。全く異質なはずですが、上の例と同じくなんとなく許せてしまう気がしませんか。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。全体が巨大な雪輪の重なりで、それで生まれた空間は型疋田で満たされています。型疋田だから安いなんて舐めてはいけません全身を型疋田で埋めるなら簡単ですが、縫い目を越えて勝手につながっていく雪輪の形に沿って、全て型疋田を合わせるというのは大変な手間ですよね。

縁蓋を使って雪輪の形を防染しておき、汎用の疋田の型を使って染めるのだと思いますが、中井のばあいは、汎用型を使わず、毎回模様の形に沿って疋田型を新調していたという話もあります。どちらにしても、こういう巨大な形をコントロールするのは難しそうですね。

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写真5番目は、北村芳嗣の個展で販売された色留袖を合わせてみました。北村芳嗣さんは北秀の元社長で、「YK」の落款で個人作品として制作し個展で販売していました。実際に制作したのは大松やそこから分かれた山下が多く、作品のレベルも値段も高く、業界では尊敬されていました。

大松は大彦の本家でもあり、大羊居と同じく多色の作風で、上の中井とは反対です。普通はこんなふうに合わせるのでしょうね。
[ 2016/01/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十五回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。

今日は羊居の絵羽を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、牡丹唐草をテーマにした作品に合わせてみました。牡丹についてはモザイクを思わせるカクカクした表現をしています。まさに大羊居というような作品ですね。帯合わせとしては、着物で牡丹を強調している以上、帯で他の植物を追加するのは蛇足になるし、花札みたいに猪を合わせるわけにはいかないし、もうこの帯以外考えられないというレベルだと思います。鎧から猪武者を連想しても良いですが。

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写真2番目は、四季の花をテーマにした作品に合わせてみました。帯より下には牡丹と菊と笹、帯より上には楓と八重桜が描かれています。上下の模様のつながりが希薄で意匠に統一性が無いように思えますが、じつは下前に木の幹が有って、下は草花、上は木の花とつながっているんですね。着物の模様で植物文についてはお腹いっぱいですから、帯は花以外が良いということで鎧と言う選択になりました。

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写真3番目は、更紗模様をテーマにした作品を合わせてみました。江戸時代の小袖にある立木模様は、もともとはインドの更紗である生命の木の翻案ということなので、小袖の意匠の歴史を意識した意匠とも言えます。更紗の曲線に対して鎧の直線が対照的な組み合わせです。

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写真4番目は、扇と結び熨斗という縁起の良いモチーフを組み合わせた訪問着に合わせてみました。地色は紫で、多彩な色の模様が浮き上がっています。着物と帯の地色の白と紫も綺麗ですし、多彩な色も反応し合って良いように思います。

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写真5番目は、雪庭をテーマにした作品に合わせてみました。上の4例では着物の模様の色が多彩で、帯の色と同調うところがありましたが、今回は白が基調で帯の色だけが浮いて見えます。こういう組み合わせは良いのか悪いのか、意見が割れるかもしれませんが、新年の行事でこんな衣裳の方が居たら魅力的魅ですね。
[ 2016/01/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十四回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。

大羊居と龍村といえば、高島屋でおなじみの定番ですが、今日はそれ以外を試してみました。

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いちばん上の写真は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」を合わせてみました。龍村のきつい原色と花也の淡い色という、水と油のような関係の2点を合わせてみました。意外と大丈夫? 花也の地色が透明感のある水色だからかもしれませんね。

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写真2番目は、花也の付下げ「紐の流れ」を合わせてみました。帯の模様に紐があるので、だまし絵のような感覚で、紐の模様の付下げを合わせてみました。帯と着物の組み合わせを使って、エッシャーみたいな騙し絵をつくるというのは、いつか本当にやってみたいですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げ「色紙散し松竹梅」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。倉部さんがふんだんに刺繍をした高い系の着物を合わせてみました。原色で多色の龍村と濃い地に金のみの倉部さんで、対照的な作品ですが、値段は釣り合っているという関係です。

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写真4番目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」を合わせてみました。原色がくっきりして美しい織物の龍村と、淡い色のグラデーションが美しい染め物の一の橋という対照的な2者の対決ですね。意外と馴染んでいるのは、どちらの色も濁りが無く、透明感があるからです。
[ 2016/01/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十三回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。

今日は、この帯が振袖専用ではないことを示すために、大羊居の付下げに合わせてみます。龍村は昔から高島屋上品会や松坂屋名作展のメンバー同士として大彦・大羊居と一緒に展示会をしてきたのですから。

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いちばん上の写真は、「流麗華文」というタイトルの付下げを合わせてみました。黒地に多彩な華文を描き、さらに豪華な金彩と金糸の刺繍を加えた作品です。華やかな作品なので、原色があふれる帯の色がちょうど良いですね。

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写真2番目は、「菱取り華文」というタイトルの付下げを合わせてみました。綺麗な黄色地に菱形の取り方を置き、なかに西洋の家紋のような意匠と、チューリップなどの洋花を入れた綺麗な着物です。この作品も華やかなので、今回の帯がちょうど良いですね。

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写真3番目は、前姿が松竹梅、後姿が紅葉という華やかな付下げを合わせてみました。特に後姿の紅葉は、赤も黄色も緑も有って季節不詳の華やかな作品ですが、地色がグレーなので、年齢幅はかなり広いです。原色あふれる帯を合わせることで、年齢不詳の着物を若向きに引き寄せるコーディネートになると思います。

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写真4番目は、「竹に雀」を合わせてみました。竹に雀という伝統的な組み合わせですが、雀が丸く膨れてイラストのようなかわいさがあります。地色は地味で、模様にも派手な色は使っていませんから、年輩向きの雰囲気です。しかし雀がイラスト風でかわいいので、地味で目立たない着物とは言えません。かわいい+地味、という組み合わせということになりますが、意外とそういう雰囲気を好む人は多いのでは。

派手な帯を合わせることで、全体のコーディネートを若向きの方に手繰り寄せてみました。

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写真5番目は、掛け軸の水墨画を大羊居風にアレンジした付下げを合わせてみました。後方に松と大岩がそびえたち、前方には川と粗末な橋があります。それが縦長の掛け軸の水墨画の基本パターンですが、絵画として鑑賞する人の視線は、その危ない橋を渡って岩を登って頂上を目指すわけで、禅の修行そのものなんですね。

この付下げは、元絵が水墨画であることを引き継いで、ほぼ白揚げで制作しています。そのように書くと、成仏しそうなおばあさん向けの着物みたいですが、大羊居が作るとエネルギーがあって、見ていて楽しくなってしまうので、元が説教臭い画題ということさえ気が付かないぐらいです。

母か祖母から着物を譲られたが、まだ地味で着られないというときに、わざと合わない帯を合わせてバランスを崩してやるという手もあるという例です。
[ 2016/01/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせ

第三千二百六十二回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の帯合わせです。

華やかで六通の帯ですから、まず振袖に合わせてみます。ただし、全体が本金の引き箔ですから、美容室の着付け師に、あまり極端な変わり結びなんかされたらこわいですね。普通は振袖用の派手な帯のばあいは、ポリエステルフィルムを多用していることが多いです。

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いちばん上の写真は、野口の振袖を合わせてみました。江戸時代後期に小袖の模様として人気のあった「瀧模様」です。黒地に青や赤など原色の模様を合わせたもので、偶然ですが、帯と色目が合っています。

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写真2番目は、大羊居の振袖を合わせてみました。刺繍も多用した豪華な薬玉模様ですが、地色が黒でオレンジの霞という安物だったら許されない色ですよね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の振袖を合わせてみました。かつて本社で制作した手挿しの標準的な振袖です。朱色の無地と型疋田の市松で、中は琳派模様ですね。朱色の単色の着物に多色の帯の組み合わせです。

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写真4番目は、竹田庄九郎の本疋田の振袖を合わせてみました。「竹田庄九郎」は有松絞の創始者とされる人物ですが、竹田嘉兵衛商店のブランドでもあります。普通の疋田は木綿の糸で4巻きして絞りますが、絹糸で7~8あるいはそれ以上巻いて絞ったものが有り、それを本疋田といいます。中心のポチが小さくて生地の凹凸が大きいのが特長です。

黒白の無彩色の着物に多色の帯の組み合わせです。

[ 2016/01/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の細部

第三千二百六十一回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の細部です。


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いちばん上の写真は近接です。

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写真2番目は、鎧の模様の紐の部分を近接で撮ってみました。

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写真3番目は、上の2つの写真の緑の絹糸と金糸が接する部分を拡大してみました。絹はナチュラルな感触で立体的に盛り上がっていますし、金糸は金属的な感触で平面的ですから、質感も形状も対照的です。素材のバリエーションが、単なる平面的な絵では表現できないリアルな鎧の雰囲気を表現しているんですね。

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写真4番目は、帯の裏側です。全体が白い糸で覆われているのが見えますが、それは金糸の裏側です。本金の引き箔の糸を全面的に使っていると裏はこんな風に見えるのです。

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写真5番目は、金糸の種類がわかるように拡大してみました。平金糸と撚金糸(芯糸に平金糸も巻き付けている、金糸は本金糸のばあいもあるしポリエステルのばあいもある)の両方が写るように撮ってみました。今回、金糸の色が違うようですが、たとえ同じ金色であったとしても、形状の違いによって光の反射の仕方が違うので、違う色に見えたりします。

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写真6番目も、金糸の種類がわかるように拡大してみました。平金糸とベージュの絹糸が混ぜてあります。平金糸の輝きと、絹糸の自然な光沢が混ざって、そこそこの上品な輝きを表現しています。上の写真の2種類の金糸と合わせて、3種類の輝きというところでしょうか。
[ 2016/01/10 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」の細部

第三千二百六十回目は、龍村の袋帯「王朝華映錦」の細部です。

今回の帯は鎧がテーマですが、龍村ではすでに「龍村平蔵」ブランドで「威毛錦」という名作があります。今回から細部を見ていくわけですが、近接で見ると同じような帯なんですね。じつは織っている工房も同じです。龍村は「龍村平蔵」(高島屋)、「龍村美術織物」(三越)、「龍村錦」、「たつむら」など、ブランドロゴを分けることで、いくつかの販売チャネルを持っています。

「たつむら」と「龍村平蔵」は、トヨタとレクサスみたいなものですね。レクサスの方が高級感がありますが、値段も高めですから、部品も同じ、品質管理も同じならトヨタの方が得という人もいるでしょう。ただし西陣というのは、昔から「出機」という外注のシステムがあり、同じブランドでも別の工房のことがあるので、それを見分けるのはちょっと知識が必要です。

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いちばん上の写真は近接です。最近は、「ガルパン」とか「艦これ」の続きで刀剣とか鎧も流行っているんですよね。私は武具がよくわからないので、モチーフになっているのが鎧のどの部分か正確にわからないのですが、糸の違いで素材の違いも表現しているようです。鮮やかな色の絹糸の部分は実物でも絹ですよね。黒い部分は実物では金属なのでしょうか、革なのでしょうか。この作品では素材を変えてポリエステルフィルムで表現しています。

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写真2番目は、同じ部分の拡大です。黒いポリエステルフィルム部分の拡大です。この怪しい光沢はポリエステルでないと表現できず、本物の鎧のように金属や革を使わないかぎり、ポリエステルフィルムに必然性があるんですね。

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写真3番目は近接です。真ん中辺りの金と水色の模様は竹に雀ですね。そこと緑の絹糸の間は怪しい赤黒に光っています。実物の鎧としては革で、留金に見える金の部分が金属ではないでしょうか。赤黒の中に見える青の模様は、革に型押しされた模様の意味のように思います。

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写真4番目は、同じ部分の拡大です。怪しい赤黒の部分を拡大してみました。やはりポリエステルフィルムの怪しい光沢で表現していました。青い模様は上品な絹糸ですね。
[ 2016/01/09 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「王朝華映錦」

第三千二百五十九回目の作品として、龍村の袋帯「王朝華映錦」を紹介します。

振袖にも使えそうな華やかな袋帯を紹介します。鎧のモチーフといえば高島屋の「龍村平蔵」ブランドの「威毛錦」が有名ですね。これも手織りの高級バージョンなので、高島屋の販売チャネルに抵触しないように企画された帯なんでしょうね。

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いちばん上の写真は、模様の一回りです。六通の帯で、この模様が繰り返しています。龍村のばあい、振袖での使用を意識した華やかな帯は六通、それ以外の帯は「お太鼓と裏太鼓と腹文」という構成になっています。裏太鼓は、お太鼓とほぼ変わらないですが、金糸の分量が少ないなど微妙に地味になっています。

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写真2番目は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。

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写真3番目は、別の場所を帯の幅を写真の幅として撮ってみました。写真2番目と3番目で、ほぼ模様一回りになります。

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写真4番目はタイトル部分です。

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写真5番目は品質表示です。絹は80%と低め、指定外繊維(紙)は13%と高めです。「紙」は金箔の裏の和紙ですから、引き箔を多用した高級品と予想されますね。世間の常識では絹は高級品ですが、本物の引き箔の糸はもっと高級品です。ポリエステルフィルムも4%使っているので、普通に金色に光るだけでなく、青や紫にも光るでしょう。レーヨン3%はその芯糸でしょう。

たとえ実物を見なくても、このような数字を見るだけで、本金の上品な輝きとともに青や紫にも光るという高級感と華やかさを同時に持った帯だろうと想像できます。引き箔の糸やポリエステルフィルムはじっさいにどのように使われているのか、明日は近接と拡大の写真で確認します。
[ 2016/01/08 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせ

第三千二百五十八回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、大西勇の袋帯「正倉院合子文」を合わせてみました。
聖武天皇が碁で遊んだ時に使った碁石入れで、象さんチームと鸚哥さんチームがあります。使われている技法は銀平脱という古代特有の手間のかかるものです。

全体の地が、茶色の漆箔で地味ながら凄味がある帯です。中井に重厚な色との相性が良いですね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「錦秀遺宝文」を合わせてみました。俵屋宗達が修復した反っくり返った鹿が要るので、平家納経がテーマと分ります。タイトルは、「錦秋安藝の宮島」に掛けているんでしょうね。中井の重厚な色に対して、龍村の濁りの無い色が相性が良いとは思いませんが、色には2通りの美がある、ということで面白いんじゃないでしょうか。

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写真3番目は、爪掻綴の袋帯を合わせていました。30年以上前に仕入れた帯で、牡丹を織り出した贅沢な爪掻綴の袋帯です。もちろん日本製ですが、高すぎたのと地色が緑のせいで、ずっとうちに有ります。女王様のように君臨していrますね。着物に合っているかいないかわかりませんが、お互いの存在感をぶつけてみて、どっちが勝ったかは勝手に決めればいいという帯合わせです。ドラマでも、整合性はともかく、とにかく有名な女優さんを2人ぶつけてみるという企画はありますよね。

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写真4番目は、河村織物の袋帯「栄昌綴」シリーズの1本を合わせてみました。横段と七宝文の組わせです。河村織物の高級バージョンらしく、とても存在感がありますが、その一方、横段と七宝繋という具象性の無い文様なので、使い勝手が良いです。

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写真5番目は、紫絋の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。タイトルには「臈纈」とありますが、実際には、刺繍や挟纈など正倉院の染織品がいろいろとコラージュされています。着物が存在感ありすぎ、色ありすぎ、のばあいは、帯は金地に逃げるのも良いですね。
[ 2016/01/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせ

第三千二百五十七回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせです。

昨日は、重厚感で着物と競おうとせず、間道などすっきり系を合わせてみました。今日は堂々と重厚感で競ってみようと思います。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「騎馬陶楽文」を合わせてみました。イスラム陶器をテーマにしたもので、オリジナルは出土品ですから、色はかすかに有るのみでしょうが、この作品は、黒地にオレンジの人物、青の馬、金の背景と原色を並べた濃い帯です。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯「豊公花鳥文」を合わせてみました。「豊公」と付くのは、南蛮人から輸入したペルシア絨毯を豊臣秀吉が陣羽織にしたものという意味です。雲形に対して鳥を合わせると言う意味も持たせてみました。

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写真4番目は、坂下織物の袋帯で御門綴シリーズの1本「正倉院華文」を合わせてみました。坂下織物はかなり昔に廃業し、今は見ることはありません。御門綴シリーズは、地が綴組織で模様が絵緯糸ですから、裏には渡り糸があります。この作品は、知らないで見ると1つの絵のように見えますが、じつは複数の正倉院模様を巧みにコラージュしたものです。

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写真5目は、坂下織物の袋帯で御門綴シリーズの1本「蜀江錦」を合わせてみました。蜀江錦は、古代から明時代ごろまで織られ続けた中国を代表する意匠です。ガチっとした構成を持っていて、皇帝の権威そのもののようで、日本の花鳥風月とは対照的なものです。

着物は重厚ですが、雲形で中に琳派の植物文ですから、花鳥風月的ですね。
[ 2016/01/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせ

第三千二百五十六回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせです。

存在感のある訪問着に対する帯合わせの例として、昨日は着物に拮抗するような高級な帯と思って合わせましたが、今日は存在感で対抗しようとせず、間道のようにすっきりした帯を合わせます。縞というのは、たいてい粋なものであって権威とは逆なものです。存在感という点では、おそらくバランスが悪いでしょう。今回は、重厚なイメージを求めて龍村の間道を使っています。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。「海老殻間道」は名物裂として実在するものです。「青木間道」ほど有名ではないので、あまり本に載っていないですが、だいたい似たもののようです。龍村にタイトルに「手」と付くのは、完全に再現しているわけではないという意味でしょう。

名物裂の間道に取材した龍村のシリーズは、「青木間道」「日野間道」「弥兵衛間道」などがありますが、残念ながらすべて高島屋が独占販売する制度になっています。値段は88万円ぐらいからで、外商に頼んでも1割引きぐらいしかしてくれないようです。唯一、自由に販売して良いのがこの「海老殻間道手」で、値段も私は自由にやっています。

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写真2番目は、龍村の袋帯「彩光間道」を合わせてみました。「彩光」「郁芳」「清風」など、音は綺麗だが意味が無いタイトルが付いた間道シリーズは、名物裂にこだわらない龍村オリジナルの間道という意味だと思いますが、実際に見るといずれも名物裂のどれかに似ています。

私は龍村の間道が好きなので、これからも見れば仕入れるつもりでいます。


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写真3番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。龍村の間道の良いところは、「縞」というと粋でカジュアルな感じがするものですが、それに「龍村」という権威的なブランドが合わさることで重厚なイメージになることですね。「縞」として紬に合せることもできるし、「龍村」として訪問着にも使えるというわけです。

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写真4番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。

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写真5番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。おび弘は、西陣の証紙番号607、すなわち「佐波理綴」で有名な池口の帯です。これは池口らしく手織りで本金引き箔の高品質な帯ですが、それでいていかにも高そうな権威的な模様を付けず、単なる斜めストライプにしているという贅沢な帯です。
[ 2016/01/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせ

第三千二百五十五回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の帯合わせです。

今回は、存在感のある訪問着に対する帯合わせの例です。さすがに、たとえ龍村と言っても名古屋帯というわけにはいかないですから、全て袋帯で合わせます。

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いちばん上の写真は、梅垣の袋帯「蒔絵花鳥文」を合わせてみました。蒔絵の意匠に取材した作品で、梅垣の帯の中でも最高ランクの作品です。もともと梅垣というブランドは、主に銀座のきしやで扱っており、高級ブランドのイメージがありました。今回は、高級感や存在感でいちばん合う帯として選んでみました。

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写真2番目は、織悦の袋帯「彩悦錦立沸遠山文」を合わせてみました。唐織のように浮かせた絵緯糸で模様を表現した「彩悦錦」シリーズの1本です。濁りの無い色、モダンな雰囲気の帯で、重厚な雰囲気の着物とは違いますが、雲と遠山という組み合わせで選んでみました。

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写真3番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。龍村の中でも高級バージョンですね。着物の雲形に対して、帯は海の波という「空海」みたいな雄大な組み合わせです。帯にも重厚感があるのでバランスが取れていますね。

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写真4番目は、じゅらくの袋帯を合わせてみました。じゅらくの帯といえば、昭和40年代の一流品で、その後は一般的には一流品ではあるが、一般的過ぎて、着物好きがわざわざ欲しがるものではないというイメージがありますね。これは山鹿清華のライセンス商品で、じゅらくの商品ですが別格です。

私が見るかぎり、本人作の「手織錦」と比べてそん色はないです。生産量はすごく違うのでしょうけど。同じようなイメージのブランドに「しょうざん」がありますね。しょうざんには、「徳田義三」のシリーズがありますが、それと同じような位置づけではないでしょうか。

この孔雀は飛ばなそうですが、雲と鳥の組み合わせで。
[ 2016/01/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の細部

第三千二百五十四回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の細部です。

今日も雲取り内部の模様を紹介します。

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いちばん上の写真は、牡丹唐草の雲取りと、摺箔と金砂子の雲取りです。雲取りに琳派模様の訪問着というイメージですが、全てが琳派模様ではなく、唐草模様や金加工のみの雲形も含まれています。模様の密度に強弱をつけて息が詰まらないようにしているんですね。摺箔と金砂子の雲形は箸休めといったところでしょうか。

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写真2番目は、菊唐草です。琳派模様と唐草模様が並ぶと、目は具象的な琳派模様に引き寄せられます。しかし、琳派模様は余白があるのに対し、唐草模様には余白が無いですから、物理的には密度が高いのかもしれませんね。

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写真3番目は、松竹梅や牡丹が唐草になっています。マエミに有って主役を構成する模様の1つです。牡丹と梅の輪郭の金糸の駒繍が非常に精緻です。これは中井作品の特長の1つで、ここだけ部分的に見ると倉部さんより上手いぐらいですね。

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写真4番目は、琳派模様ですね。構成的な唐草部分に対し、琳派部分は模様に動きがあります。

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写真5番目は、私がいちばん好きな部分です。友禅で花を描く場合、濃淡が美しいものが多いですが、もしかしたらその美しい濃淡は、色のムラをごまかすために必要なものなのかもしれません。水彩で絵を描くとき、筆で平面を単色で塗るというのは意外に難しいですものね。

全くムラの無い平面塗りの花の表現と、その輪郭の精緻な金糸の駒繍が、私がいちばん好きな部分です。
[ 2016/01/03 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の細部

第三千二百五十三回目は、千切屋治兵衛の訪問着(制作は中井淳夫)の細部です。

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いちばん上の写真は、背中心辺りにある雲取りの中の楓と青海波です。楓の葉の形は琳派の様式ですね。楓の葉は、幹に比べて大きすぎてラフレシアのようですが、その意匠的なスタイルが様式的な青海波と相性が良いです。

この作品に登場する植物は、完全に装飾的なものもあるし、比較的写生的なものあって、必ずしも統一されていないのですが、雲取りでそれぞれが分離されていることで違和感はありません。着物のデザインを考える上で、場面転換に使う「取り方」は無くてはならぬものですが、中井さんは取り方を使いこなしています。

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写真2番目は、白梅と流水です。MOA美術館の有名な「紅白梅図」の片側のダイジェストとも言えますから、完全な琳派ですね。

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写真3番目は、蔦です。中井作品にはよく登場しますが、琳派の秋草図の一部に取材したものです。

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写真4番目は、椿と流水です。花弁を1枚ずつ描かない洒脱な表現は琳派風ですね。隣の取り方は桔梗か鉄線に見えますが、これは唐草模様ですから、琳派というより着物の意匠的ですね。
[ 2016/01/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)