一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせ

第三千二百五十一回目は、一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせです。

今日は紬と合わせてみます。フォーマルである付下げとカジュアルである紬と、どちらでも使える帯というのは難しいですが、無理やり合わせてみました。この帯は雅で華やかですから、初釜のような場にこそふさわしく感じますから、紬は難しいかとも思います。しかし名古屋帯ですからカジュアルにも使いたいですよね。

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いちばん上の写真は、佐藤トシさんの「南部紬」を合わせてみました。南部岩泉で手織り草木染をしていた作家です。元は製糸工場の社員で、廃業した製糸工場の一部を使って制作していたそうです。色が綺麗というのは糸が良いということもあるのでしょうね。これは胡桃と藍です。

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写真2番目は、新田機業の紅花紬を合わせてみました。紅花はオレンジ色の花ですが、黄色と赤の染料を抽出することができます。これに藍を加えると、赤と黄と青の3原色を得ることができますから、理論上あらゆる色が作れるはずです。「紅花」というと綺麗なピンクのイメージですが、実際にはいろいろな色が有るのはそのためです。

上の写真は背景が寒色の水色、この写真は背景が暖色のクリームからピンクですが、これだけで春が進んでいる感じがします。、

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写真3番目は、山下八百子の黄八丈を合わせてみました。背景が黄色のばあいを試してみました。黄色の梅といえば蝋梅ですが、全体のイメージで、そんな勘違いを誘えるといいですね。

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写真4番目は、秋山真和の綾の手紬を合わせてみました。19世紀の琉球王家時代に実際に沖縄で制作され、現存する作品を再現した作品です。現存する作品は渋い茶色ですが、これはとても鮮やかな茶色です。百数十年間の退色を考慮すると最初はこういう鮮やかな色だったんでしょうね。

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写真5番目は、佐藤トシさんの「南部紬」を合わせてみました。これは岩手で採取した紫草で染めた糸で織ったものです。そのように書くと、多少とも紫根染の知識がある人は、そんなことができるわけがない、栽培か中国産だろうと疑うでしょうね。山菜採りの人に依頼して採取したもので染めたもので1年分では色が付かず、5年間染め重ねたということです。

企画したのは近藤伝ですが、高価すぎて青山みともが引き取らず、私が5年前に依頼したと嘘をついて私に引き取らせたものです。私は5年前に何を言ったかなんてわからなかったので、自分の責任かと勘違いして引き取ったんですけどね。それから十数年経ちますが、まだ漢方薬みたいな匂いがします。それがホンモノの証拠なので桐箱に入れて匂いを保つようにしています。私が知るかぎりもっとも美しい色で、だから承知して騙されたんですけどね。
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[ 2015/12/31 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせ

第三千二百五十回目は、一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせです。

今日は付下げと合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の付下げを合わせてみました。テーマは羊歯の丸で、羊歯は冬に枯れないから縁起が良いということで着物の模様になっているわけですが、同時に季節性が無いので便利ということもありますね。

模様は糸目友禅の種類の中でも難度の高い線描きを多用しています。友禅の糸目の本来の機能は、染料が滲んで混ざるのを防止する堤防ですが、その糸目の線を主役して作画したのが線描きです。糸目の線が、堤防という機能を果たすだけなら正確なら良いわけですが、作画そのものならば芸術性も問われるわけです。線描きの糸目は、作者によって毛筆の飛白のように擦れて美しいのもありますし、温かみが有って癒されるのもあります。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんで、刺繍だけの更紗が多角形模様に配されています。倉部さんの刺繍は高価なものなので、訪問着や付下げに使われる場合、模様の面積は小さいものが多いです。小さくても存在感が有って大きく感じてしまうんですね。

帯が友禅と雲母に対し、着物が刺繍だけで技法が重ならないので、自然な帯合わせになりますね。

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写真3番目は、花也の付下げを合わせてみました。これはまだ紹介していない付下げで、いずれ掲載しようと思っています。最近、この地色はとても人気がありますね。私は京都っぽいイメージがあります。

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写真4番目は、一の橋の付下げを合わせてみました。これもまだ紹介していない付下げで、いずれ掲載しようと思っています。市松に華文で、模様面積は大きいながら仰々しくない着物です。
[ 2015/12/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせ

第三千二百四十九回目は、一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」の帯合わせです。

今日は小紋(染めの着尺)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の着尺(小紋)を合わせてみました。染めたのは千治の型染を担当している大和さんです。模様は源氏香で、模様の意味のつながりを考えると、つながりが有るような無いようなというところです。琳派梅との距離感は、帯合わせとしてはちょうど良いというところではないでしょうか。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の着尺(小紋)を合わせてみました。染めたのは千治の型染を担当している大和さんです。雪輪の模様の中でも、このように途中で切れているものを「破れ雪輪」といい、季節で言えば冬の終わりという意味になります。早春の梅と合わせれば流れるように季節がつながっていくわけですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の着尺(小紋)を合わせてみました。染めたのは千治の型染を担当している大和さんです。もし着物が松と竹の模様が有って、それに帯の梅が加わって「松竹梅」が完成するなら、それは素晴らしい帯合わせです。あるいは、着物が松で帯が梅、帯留が竹でもいいでしょう。しかしそんなアクロバティックな組合わせが決まることは滅多にありません。

今回は雪輪に松竹梅の飛び柄の小紋を合わせています。現実的な帯合わせではないかと思います。

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写真4番目は、野口の着尺(小紋)を合わせてみました。長方形の取り方に、七宝繋ぎ、型疋田、割付文など連続する文様を入れたものです。気持ち良く筆で描いたタッチの琳派模様と規則正しく連続するパターン文様という対照的な組み合わせです。

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写真5番目は、地紋のみが絵羽模様になった無地の着物です。花也が制作したもので、先日紹介した立木模様の白揚げの着物の元になった着物です。最初はこのように無地として制作され、その派生型として地紋の一部を防染して模様にした付下げも作られたのです。
[ 2015/12/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」

第三千二百四十八回目の作品として、一の橋の友禅と雲母の名古屋帯「琳派梅」を紹介します。

琳派の梅ををテーマにしたものです。梅の枝と蕾は、糸目の友禅で描かれています。花の部分は、染織作品としては珍しい雲母を使って加工しています。役割としては金箔や金泥と同じですが、雲母は白く輝くので都会的な雰囲気になりますね。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。梅の枝の洒脱なタッチ、太い枝の微妙な陰影のつけ方など、琳派の様式にしたがって描かれています。早春のまだ空気が冷たい時期に咲く花を表現するには、金泥の色よりも雲母の輝く白が向いているように感じます。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は、雲母部分を近接してみました。均等に雲母を貼るのではなく、琳派の筆のタッチを再現するように貼っています。

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写真4番目は腹文です。片側は見えなくなります。

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写真5番目は腹文の片側の近接です。

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写真6番目はもっと近接です。花の表現は無心の筆のタッチのように演出されていますが、その輪郭線を見ると他の花との境界線はきっちり分かれています。洒脱なタッチは演出で、描いた人は洒脱どころか精密作業なんですね。

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写真7番目は参考図版です。おそらくこれが元絵でしょう。今回の作品の梅の花の表現は、この元絵のタッチを忠実に再現していたなだとわかります。また、もしこの元絵の梅の花が金泥で描かれていたら、今回の作品の梅も雲母ではなく金泥で描いたのではないでしょうか。光悦の薄墨のセンスを生かし、さらに女性の着物らしく華やかにするため雲母を選んだのだと思い増します。
[ 2015/12/28 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせ

第三千二百四十七回目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせです。

今日は龍村の名古屋帯に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、「鳥羽絵戯画譜」というタイトルで、鳥獣戯画をテーマにした名古屋帯を合わせてみました。地色は濃い紫色で、着物の水色との相性はいいですね。主にうさぎを抜き出しているようです。

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写真2番目は、「シャムパーシン」というタイトルで、タイの伝統文様をテーマにした名古屋帯を合わせてみました。

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写真3番目は、「投壺矢」というタイトルで、壺に矢を投げ入れるゲームをテーマにした名古屋帯を合わせてみました。矢をテーマにすると殺生につながって茶事に使いにくいですが、これは鏃の無いゲーム用の矢と分るようになっています。

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写真4番目は、「木画狩猟文錦」というタイトルで、正倉院御物の琵琶の装飾をテーマにした名古屋帯を合わせてみました。木の象嵌による絵画です。これがおそらく最初の外国の風俗をテーマにした狩猟文で、この後、エキゾティックな図像として日本に定着し、近世まで「韃靼人狩猟文」などのタイトルで繰り返し描かれるようになります。

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写真5番目は、「ほかけ」というタイトルで、波と舟をテーマにした名古屋帯を合わせてみました。船の帆の色に朱色など暖色を使っていないために、都会的な雰囲気になっていると思います。
[ 2015/12/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせ

第三千二百四十六回目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせです。

今回の帯は、和風なのでしょうか、エキゾチック風なのでしょうか。外周は雪輪ですから和風ですが、中身はサンテチエンヌリボンですからエキゾティック風ですね。帯はどちらに合わせればいいのか、と考えれば、答えは1つ、どちらでもいい、選択肢が広いのだからありがたいということですね。

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いちばん上の写真は、洛風林の袋帯を合わせてみました。こういう華文は、古代にするクロードを通ってペルシアにも奈良にも伝わったものでしょう。エキゾチックというか、人類に最も愛された模様の1つということでユニバーサルですね。

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写真2番目は、華陽の綴の袋帯を合わせてみました。華陽はすでに廃業しています。廃業直後は一部のネットショップに安く出たこともありますが、もうそれも尽きて元の高級帯に戻ったようです。作風は、地は綴れ組織、模様は絵緯糸によるもので、模様部分だけ裏に渡り糸があります。

花鳥がテーマですが、自然の風景ではなく屏風の絵という設定になっています。ドラマで言えば劇中劇ですね。模様が類型的過ぎてつまらないと思うとき、一ひねりするために使う技法ではないでしょうか。

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写真3番目は、大西の袋帯を合わせてみました。象ということでエキゾチック風の代表ですね。ただしこの作品のオリジナルは、正倉院の御物である「臈纈屏風」ですから日本の美術史に含まれるものです。聖武天皇の時代はエキゾティズムの時代ですね。

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写真4番目は、華陽の綴の袋帯を合わせてみました。テーマは文箱で、四角いものの代表として丸い雪輪に対峙させてみました。、

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写真5番目は、捨松の袋帯を合わせてみました。桃は和風でしょうか、エキゾティックでしょうか。あえて言うなら、西王母伝説に関係するので中国風ですね。
[ 2015/12/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせ

第三千二百四十五回目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の帯合わせです。

今回の着物は、雪輪のモチーフを繰り返すだけの意匠です。雪輪は丸紋みたいなものですから、帯は対照的な直線であるべきでしょうか、それとも同じ丸紋でも良いのでしょうか。

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いちばん上の写真は、龍村の間道の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。着物が雪輪で丸いモチーフですから、直線である間道を合わせてみました。色は紺で、水色である着物に対して同系色濃淡ですから、すっきりしています。

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写真2番目は、龍村の間道の袋帯「甲比丹縞格子」を合わせてみました。東インド会社からの超高級輸入品であるモールに取材した帯です。インドやペルシアの金糸は、薄い金の板を芯糸に巻き付けたものということですから、金箔を和紙に貼って裁断して芯糸に巻き付けた日本の金糸より、金を大量に使っているのではないかと思います。

実物は誰でも東京国立博物館で見られますが、触ったりライトスコープで見たりはできないので、どの程度の金なのかわかりません。いつか確認したいと思っていますが、知り合いに持ってる人なんていないですしね。

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写真3番目は織悦の袋帯「若松」を合わせてみました。丸紋である雪輪と対照的な、真っ直ぐ伸びる意匠として若松を選んでみました。

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写真4番目は、河合康幸の袋帯「四季花の丸」を合わせてみました。「河合康幸」というロゴの入った袋帯は、河合美術織物の弟さんということです。西陣の証紙番号を持つブランドには本家分家の関係にあるものが結構ありますね。1000番以上の新しいと思われる織屋も、たいていは2桁番号ぐらいの老舗の分家ですね。

花の丸と雪輪で、丸紋どうしの組み合わせになります。気が利かないということになるのでしょうか、シンクロ的な美を狙ったということになるのでしょうか。
[ 2015/12/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の細部

第三千二百四十四回目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」の細部です。

今日は昨日の続きで、前姿のそれぞれの模様の近接と、下前の模様です。

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いちばん上の写真は、前姿の一部で、マエミの近接です。雪輪の輪郭は、青い色ではっきり太い輪郭があるものと、防染だけのものがあり、遠近感を生んでいます。また、模様もふんだんに刺繍があるものと金描きだけのものが有ってメリハリがあります。この作品は雪輪の取り方の模様だけで単調ですから、このような強弱が付けてあるんですね。

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写真2番目は、前姿の一部で、オクミの近接です。防染だけの輪郭の外側にさらに白い糸目の線を付けています。これで雪輪の輪郭は3段階ですね。

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写真3番目は、前姿の一部で、マエミの近接です。いちばん上の写真と同じく、模様と輪郭でメリハリを付けた2つの雪輪が並んでいます。いちばん上の写真では重なっていますが、ここでは重なっていないですね。

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写真4番目は、下前の模様の近接です。世間には見えない自分だけが満足する位置にある模様です。友禅の意匠では、たいてい簡略的な模様を付けますね。
[ 2015/12/24 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」

第三千二百四十三回目は、花也の付下げ「雪輪取りサンテチエンヌリボン」を紹介します。

先日、サンテチエンヌリボンの付下げを紹介しましたが、これはそのシリーズの一点です。前回は桂帯の形式でしたが今回は雪輪です。制作者は、1つの発想を、縦にしたり横にしたり斜めにしたり、丸くしたり伸ばしたりして、何回か使い回すものなんですね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は、後姿です。

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写真3番目は、胸です。

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写真4番目は、袖です。

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写真5番目は、もう片方の袖です。袖の模様の量に違いがある場合は、量が多くて華やかな方が右袖の外側、量が少ない方が左袖の内側になります。両方とも刺繍があるというのは稀で、これはその稀な作品ですが、雪輪が2個と1個で差が付けてありますね。
[ 2015/12/23 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げの帯合わせ

第三千二百四十二回目は、花也の地紋を生かした付下げの帯合わせです。

今日でこの着物の帯合わせは最後にします。最後は使い残しの画像です。

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いちばん上の写真は、洛風林の袋帯「印度七宝文」を合わせてみました。白地にピンクと薄紫の模様の帯です。この着物と帯の組み合わせは、どちらも洗練されすぎてだんだん透明になってしまうような雰囲気です。

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写真2番目は、紫絋の袋帯「天平臈纈文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈」ですが、実際には刺繍や挟纈など天平時代のあらゆる技法で表現された意匠が含まれています。この帯は、たいていの着物に合う使い勝手の良い帯です。

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写真3番目は、洛風林風の袋帯を合わせてみました。洛風林というのは、西陣の帯のブランドの中でも最も創作的なものの1つですが、洛風林自体は証紙番号を持たず問屋的な位置づけです。実際の制作は「洛風林同人」と称する複数の織屋によって行われるため、昔から、「本来洛風林ブランドで売るべきだったが、たまたま流出した、実質的には洛風林」なんていうものがありました。

ほんとうにそういうものもあったでしょうし、単に問屋のセールストークであったものあったでしょう。この帯もそのような1本で、そう信じても良いような手織りのとても良い帯です。安くはなかったのですが、私があえて仕入れたのは、関東人には好まれそうにない濃厚な色だったからです。妙に新鮮だったんですよね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「業平菱」を合わせてみました。上の帯合わせを意識して、色も模様もすっきりしてみました。淡い色に濃厚な色を合わせる帯合わせが可能ならば、淡い色どうしの帯合わせもまた可能なはず。帯合わせには「逆もまた真なり」ということがよくあります。

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写真5番目は、龍村の絽の袋帯「彩簾」を合わせてみました。厚手ではないですが、とてもしっかりした生地で、単衣にも向いていますので、単衣に仕立てたと想定し夏帯を合わせてみました。龍村の夏帯は組織としては絽なのですがかなり地厚で、単衣でちょうど良いぐらいの感じですね。

模様は簾がモチーフですが、簾というのは模様としては実質的には間道でもありますね。
[ 2015/12/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げの帯合わせ

第三千二百四十一回目は、花也の地紋を生かした付下げの帯合わせです。

今回の着物は、色は防染による白抜きのみですし、テーマも真っ直ぐな立木があるのみですから、絵画性と物語性に乏しいといえます。こういう着物の帯合わせは、着物に足りない絵画性・物語性を帯で補うような帯合わせをするか、着物と同じ絵画性・物語性に乏しい間道のような帯を合わせ、全体として無地系のコーディネートにするか、どちらかですね。

昨日は、間道や横段の帯を合わせ、無地系のコーディネートにしましたが、今日は、友禅染と刺繍の帯を合わせて絵画性・物語性を補う帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、木下冬彦さんの東京友禅の袋帯を合わせてみました。木下冬彦さんは熊谷好博子の弟子です。有名作家は工房を運営し弟子が2~30人いて、その人たちがやがて弟子を名乗って独立するわけですが、熊谷好博子は生涯に2人か3人の弟子しか育てなかったと思います。その1人でいちばん有名なのがこの人ですね。

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写真2番目は、木下冬彦さんの東京友禅の袋帯を合わせてみました。細密な糊糸目の友禅に蝋たたきの地、それに刺繍も加えるという濃厚な画面をつくっています。模様は海浜模様ですが、ずっと見ていると迷路に入って出られなくなったような感じがしますね。

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写真3番目は、一の橋の友禅の名古屋帯を合わせてみました。中井淳夫を思わせる重厚な友禅です。薬玉と立木は何の関係もないですが、直線的な着物の模様と、回転する薬玉の紐の対比が良いです。直線に対し曲線という形を加えることでもありますね。

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写真4番目は、東京の刺繍と堰出し友禅の名古屋帯を合わせてみました。疋田部分は、型疋田ではなく、堰出しによる手描き友禅です。型とどこが違うのかといえば、粒の形の微妙な違い、配列の微妙な揺らぎだと思います。堰出しの疋田と刺繍を合わせたこのような様式は、もともとは千代田染繍に由来するのでしょう。しかし刺繍というのは技術があれば自宅で出来るので、全て内職者に外注されているようで、この作品の作家は東京の誰か、という以外わかりません。

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写真5番目は、北秀の刺繍と箔の袋帯を合わせてみました。この帯合わせは、絵画性・物語性を補う帯合わせとはいえないですね。色も無彩色のグレーと金だけですし、むしろ無地系のコーディネートといえるかもしれません。しかし、華やかさは加えられています。無地系のコーディネートに対し、つまらないコーディネートという人がいますが、それは華やかさが足りない時だと思います。無地系のコーディネートというのは、色や模様が少ないことですが、地味であれとは言っていません。模様がなくなっても華やかさをキープするのが無地系コーデ成功のコツですね。
[ 2015/12/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げの帯合わせ

第三千二百四十回目は、花也の地紋を生かした付下げの帯合わせです。

今回の付下げは、縦長のすっきりした立木模様です。このすっきり感を生かすため、帯もすっきりと間道を合わせてみました。もともと着物が持っている長所を妨げない帯合わせですね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。薄いピンクに対して紺という補色でくっきりさせる帯合わせですね。これだけ見るととても良いのですが、前姿に対してお太鼓を合わせているのですから、じつは現実にはないトリックなんですね。

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写真2番目は、上のばあいの本当の前姿です。縦長の模様の着物に間道の帯を合わせたつもりが、現実には横段を合わせていました。

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写真3番目は、河村織物の「栄昌綴」のシリーズの1本を合わせてみました。横段模様の中に七宝文が入っているという意匠です。縦長の模様に対し、交差するような横段も悪くありません。

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写真4番目は、上のばあいの本当の前姿です。なんと着物も帯の縦の模様どうしでした。当たり前のことですが、お太鼓と腹文はタテとヨコが反対になります。着物の前も後も同じテーマの模様であれば、どちらかは当たるからいいのですが、この着物のばあい、前は縦長で後ろは無地ですから、当てが外れるかもしれません。

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写真5番目は、龍村の光波帯シリーズの「日野間道手」を合わせてみました。同系色濃淡でも、くっきり間の強さで際立つ「日野間道手」を合わせてみました。私はとても好きな組み合わせですが、これも幻で、ほんとうは無地に間道か縦長模様に横段なんですよね。
[ 2015/12/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げの帯合わせ

第三千二百三十九回目は、花也の地紋を生かした付下げの帯合わせです。

このブログの帯合わせの欠点は、着物のマエミに帯のお太鼓を合わせているので、実際にはあり得ない情景となっていることです。着物と帯のそれぞれのいちばん華やかなところを合わせて、特徴を分かりやすくしているわけですが、前姿の模様と後姿の模様が極端に違うばあいは無意味なことになってしまいます。

今回の着物は、模様が違うどころか、後姿は無地なのです。正確には地紋だけということですね。だから帯合わせでは、ほんとうは無地で合わせなければいけないわけですが、それでは全部合ってしまうので、あえてマエミで合わせています。

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いちばん上の写真は、大西勇の「銀平脱の合子」をテーマにした袋帯と合わせてみました。銀平脱とは、古代のみに存在する極めて面倒な技法です。用途は碁石の入れ物で、そのために象と鸚哥の2種類があります。遊んだのは聖武天皇で、死後、正倉院に収蔵されたので、今日見ることができます。

淡いローズの地色が若向きと感じるばあいは、この例のように茶色の地色の帯を合わせると上手く抑えることができます。着物の模様が、縦に真っ直ぐ伸びる図案なので、対照的な丸の図案の帯を合わせてみました。

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写真2番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶華文」を合わせてみました。平家納経をテーマにした帯です。平家納経の絵といえばといえば、十二単姿の女性や反っくり返った鹿を思い浮かべますが、こんな花鳥画もあります。平家納経は30巻以上有って、それぞれの表紙や見返しに絵がありますから、全体ではいろんな絵があって、西陣の帯の図案家は、その中から自由にコラージュして図案を作っているのです。

花鳥画は、日本ではどの時代でも描かれてきたわけですが、この花鳥は平清盛の時代すなわち王朝文化の最終形態でもありますね。鳥は、羽ばたいて飛んでいるのではなく、お気楽に浮かんでいるように見えます。まるで重力が少ないようで、この世ではなく極楽を飛んでいるようです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「楽園」を合わせてみました。淡いローズの着物の地色に対し、茶色の地色の帯を合わせて年輩向きにしてみました。帯の模様も細かくて年輩向きではあるのですが、その一方で、お馬さんみたいなかわいい動物もいて、「地味」と「かわいい」を上手く共存させています。若い人が使っても良いですし、かわいいおばあさんになってもいいです。

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写真4番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。全体が引き箔で、見た目よりはるかに軽い帯です。帯屋捨松らしいペルシア模様ですね。青い地色の帯というのは、どんな色の着物に合うのかと思いますが、意外に使い道がありますし、つまらない着物が面白くなったりします。

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写真5番目は、織悦の袋帯「霞に扇子」を合わせてみました。和風で大人しく上品な帯で、そのためにあまり存在感が無いようにも感じますが、やはり織悦で、ものすごく洗練されていて、それが個性ですね。
[ 2015/12/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げの細部

第三千二百三十八回目は、花也の地紋を生かした付下げの細部です。

今日は刺繍のある部分を中心に近接で撮ってみました。

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いちばん上の写真は、マエミとオクミの近接で、前姿のいちばん華やかなところの近接です。

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写真2番目は、マエミの立ち木の頂上で、帯を突き抜けて胸の模様になります。

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写真3番目は、マエミの模様で、いちばん上の写真をさらに近接したものです。あしらい(刺繍)がよくわかるようにさらに近接してみました。京都のあしらいは、模様の中心である花の芯だけを盛り上げるか、模様の輪郭を金糸の駒繍で囲うかどちらかですが、ここでは多色の糸と金糸を使って、面そのものを覆うように装飾しています。西陣の帯で、絵緯糸で模様を表現する発想に似ていますね。

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写真4番目は、マエミの模様を斜めから撮ってみました。斜めから撮って光の角度を変えることで、地紋と刺繍を浮き立たせてみました。この着物の模様表現は、地紋、地紋の上に友禅の防染の白抜き、友禅の白抜きの上に刺繍、の3段階になっていることがわかります。普通の友禅作品は、友禅に箔と刺繍で強弱の段階をつくることが多いですが、この作品はそれに地紋が加わるわけです。強弱が3段階になることで、より重層的な表現になっています。
[ 2015/12/18 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の地紋を生かした付下げ

第三千二百三十七回目の作品として、花也の地紋を生かした付下げを紹介します。

もともとは地紋のみの絵羽の着物として制作されたものです。反物の指示された場所で裁断すると、訪問着のように地紋がつながる着物になるというものでした。それがそこそこ売れたので、今回、その派生型として、地紋の一部を糊糸目の友禅で加工した着物が作られました。地紋は訪問着のように全体の絵羽になっていますが、そのうち、マエミ、オクミ、袖など主要は部分だけ友禅してあります。

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いちばん上の写真は、反物の袖になる部分です。上下両端に顔があるトランプの人物のように、両端に先端がある樹木のような模様が描いてあります。この樹木の中央で裁つと、両袖に立木模様が現れます。

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写真2番目は、片袖です。片袖の一方だけに刺繍(あしらい)があります。普通は外側にします。

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写真3番目は、もう片方の袖です。こちらは刺繍はありません。袖の加工に重軽の差があるときは、重い方が右手の外側ですね。

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写真4番目は、反物のマエミになる部分です。非常に長い樹木模様になっています。裾から始まって、帯下になる部分もおはしょりになる部分も突き抜けて胸までつながるからです。そして膝辺りと胸辺りの2か所に刺繍があります。

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写真5番目は、オクミと衿になる部分です。これも両端に先端がある樹木のような模様が描いてありますが、中央に裁ち位置の印しがあります。刺繍のあるところがマエミと並ぶオクミの模様の先端です。

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写真6番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。オクミの先端の刺繍とマエミの中ほどの刺繍が出会います。
[ 2015/12/17 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせ

第三千二百三十六回目は、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。型疋田を1粒か2粒ずつつなげて縞のように見せている意匠です。ちょっと見ると水槽の中の泡のように見えます。着物単体ではあくまで型疋田にの見えますが、金魚と合わさると泡に見えるのです。人間の脳が勝手に画像を意味付けしようとするんでしょうね。

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写真2番目は、広瀬雄望さんの絽の江戸小紋を合わせてみました。色は紫、模様は波に千鳥です。金魚と千鳥のダブルヒロインの帯合わせです。アナ雪とか牡丹と薔薇とか、ダブルヒロインで当たった企画を意識してみました。

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写真3番目は、野口の絽の着尺を合わせてみました。市松模様にぼかしで染め分けられていますが、その中に四角いパターンで型染による模様があって、大小の方形が相似形で重層的に重なるような意匠です。金魚という具象で個性のあるテーマに、幾何学的な模様を合わせるという常識的な帯合わせです。

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写真4番目は、野口の紗の着尺を合わせてみました。草間彌生のドットのようなタッチで描かれていますが、薔薇です。具象と抽象の組み合わせで、薔薇が抽象画のようでよくわからないことが帯合わせにはプラスになっています。

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写真5番目は、野口の紗の着尺を合わせてみました。水を表す螺旋模様と洒脱に描かれた金魚です。モチーフを重ねてしまうパターンで、金魚の品評会に行くならともかく、普通はあまり頭が良さそうには見えない帯合わせですね。水の模様だけなら良いんですけどね。
[ 2015/12/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせ

第三千二百三十五回目は、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせです。

昨日までは織物で合わせましたが、今日は染物で合わせてみます。生地は普通の生地で人映仕立てて、4月の急に暑くなった日から、6月までの間に着るという設定です。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。宝尽くしと鮫小紋の市松模様です。この絵は、「金魚玉」と言われる球形でぶら下げる金魚鉢を描いたものだろうと思いますが、時代劇なら大名の道楽の宝物かな。ついでに鮫と金魚のアンバランス。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。着物の模様を金魚と意味的に合わせるとしたら、波か流水か泡ですが、あまりまとまりすぎてもつまりません。これはアールヌーヴォーのような曲線模様ですが、波にも見えるかな、というところ。かするぐらいの意味の共通性を狙ってみました。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の着尺を合わせてみました。単衣にも使えそうなさらっとした紬地で、模様としては金魚と当たり障りのない竹の市松模様です。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。淡い多色の格子ですが、着物も帯も地色は淡いどうしで、赤い金魚だけが浮かび上がるという視覚効果を狙ってみました。

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写真5番目は、復刻版の銘仙の着尺を合わせてみました。織物ですが、多色の具象模様なので、視覚効果としては型友禅と同じと言うことで選んでみました。金魚というテーマは大正好みのイメージがあるので、同じくレトロな銘仙と合いますね。合いすぎて古着マニアと思われてしまうかも。
[ 2015/12/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせ

第三千二百三十四回目は、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚(金魚玉)」の帯合わせです。

昨日は、単衣の着物に合わせて、4月の汗ばむ日から6月の間に着るという設定で帯合わせをしましたが、今日は夏物である紗の織物を合わせてみます。着物が夏物であれば、帯は単衣に合いそうな玉紬ではなく、完全な夏物である紗か絽であるべきだと思われるかもしれませんが、今日は6月の、初夏というには爽やかでないが真夏ではないという曖昧な時期という設定です。体感では着物は紗で十分、帯は夏物でも単衣でも自由な解釈で、というところです。

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いちばん上の写真は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。東郷織物は大島紬の有名織元ですが、この夏大島は格子なので、値段がリーズナブルです。大島紬は織締という技法で作られる細かい絣に手間とコストがかかっているので、それ以外のものは高くはありません。私は、真夏に茶色、というセンスが好きなので、この夏大島はしょっちゅう帯合わせに使ってしまいます。

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写真2番目は、小千谷縮を合わせてみました。小千谷縮といわれるものには、重要無形文化財の手績みの苧麻を手織りしたものと、ラミーで織ったものがありますが、これはもちろん後者です。縞や格子ならば値段は高めの浴衣ぐらいですし、立派な伝統工芸品ということで浴衣よりは本気で着物を着ている実感があり、とても良い商品です。

この小千谷縮はグレーとグリーンの大胆な染め分け模様に見えますが、縞で太さが変わっているだけですから、値段としては縞の扱いになります。

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写真3番目は、夏琉球を合わせてみました。撚りの掛かった糸で紗に織られた琉球絣で、素材は絹です。10万円前後ですから、ホンモノの手織りの沖縄の織物の中ではいちばん買いやすいですね。

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写真4番目は、夏久米島を合わせてみました。久米島紬の夏物として近年織られたものです。ラベルには王朝時代に有ったものを参考に織ったとあります。夏久米島と言われる着物が出始めるごく初期に仕入れたもので、今のものとは手触りが違うように思います。

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写真5番目は、麻の生地を千葉よしのが染めた着尺を合わせてみました。これは私が注文して染めてもらったものです。千葉さんの正藍冷染は奈良時代以来の技法で、600年ほどの歴史を持つという日本式の藍の建て方が発明される以前の技法で、そのころは麻しかなかったのだから、麻で染めるべきだろうという理由で、麻で染めてもらいました。

桜の理由は、型染めの型は千葉さんが所有しているものを使うべきだろうということで、その中から選んだら、いちばん気に入った型紙がこのデザインだったのです。そのため、夏しか着られない麻なのに桜模様というチグハグなものになりました。でも、この青の桜がとてもきれいなので後悔していません。
[ 2015/12/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」の帯合わせ

第三千二百三十三回目は、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」の帯合わせです。

この帯はさらっとした玉紬の生地を使っていて、単衣の時期にピッタリ合いそうな雰囲気です。玉紬は、「生紬」という呼び方の方が有名ですが、「生紬」はしょうざんの商標で、一般名は「玉紬」です。「絹芭蕉」という呼び方もありますが、それも他社の商標ですね。

金魚というテーマは夏物のイメージですから、単衣にふさわしいさらっとした玉紬を使っています。絽や紗で作って完全な夏物にしても良いと思いますが、絞りにくいのかもしれません。着用するときは、普通の生地を単衣に仕立てた着物に合わせて4月の汗ばむような日から着始めるか、紗や絽の生地の着物に合わせて6月ごろの曖昧な季節に着るか、どちらかだと思います。

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いちばん上の写真は、青戸柚美江の出雲織を合わせてみました。「豆腐つなぎ」という妙なタイトルの作品です。四角い形の絣が斜めにつながっているのですが、手括りの絣の微妙なズレを効果的に使って、自然に崩れた四角い形になっています。ズレが無ければ機械で織った量産品に見えてしまうでしょう。

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写真2番目は、奥順の結城縮を合わせてみました。「はたおり娘」ブランドで売りだされたものです。結城紬が重要無形文化財に指定されたのは、昭和30年ですが、その時指定されたのは平織のみで、それを契機に平織の「細工物」と言われる細かい絣が人気になりました。しかしそれ以前は、縮織の方が人気で生産量も多かったのです。

これは縮織も復活させようという企画の始めのころに開発されたものです。単衣用として販売されました。

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写真3番目は、舘山の唐桟を合わせてみました。斉藤光司さんのものです。木綿の着物は、木綿の裏を付けると重くなってしまうし、絹の裏を付けると水洗いでさっぱりできるという木綿の良さがなくなってしまいます。というわけで単衣で仕立てることが多いですね。

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写真4番目は、十日町製の真綿の紬を合わせてみました。割と生地がしっかりした紬で、経糸が玉糸、緯糸が真綿だと思います。涼しげな生地を単衣にするという選択もありますが、生地がしっかりした紬を単衣にするという選択もあります。

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写真5番目は、林宗平の本塩沢を合わせてみました。先代の林宗平の時代のものです。「塩沢」と呼ばれる着物は、温かい真綿の「塩沢紬」と、シャリ感のある単衣に相応しい「本塩沢」があります。本塩沢はお召ですね。上の4枚の写真は、コントラストの強い濃い地色の紬を合わせましたが、ここでは同系色を試してみました。
[ 2015/12/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」の続き

第三千二百三十二回目は、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」の続きです。

昨日紹介した「正面から見た金魚」の腹文(帯の前の模様)を撮ってみました。帯のお太鼓と腹文の関係は、腹文がお太鼓のテーマのダイジェストであるばあいが多いですが、そうでないばあいもありますね。全く違うようでいて、じつは意味的につなげたというものもありますし、そのつもりで描いたのに滑ってしまったものもあります。

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いちばん上の写真は、腹文の全体です。完全なダイジェストであれば、お太鼓の金魚を小さく描くということになりますね。しかし、絞りのばあいは、同じ形で小さく絞るというのはかえって難しいかもしれません。植物文ならば、枝を減らして描きますが、金魚は小さいからと言ってヒレが少ないわけではないですものね。

その他には、普通に横向きの金魚を描くという方法、お太鼓の金魚を反対から見ているということで、後姿の正面を描く方法もありますが、それはすでにダイジェストではなく創作ですね。

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写真2番目は、腹文の片側の近接です。この作品では、お太鼓に金魚の添え物として水草を描き、その水草を腹文の両側に引き継ぎました。また全体には絞りによる染分けをしていますが、これもお太鼓からの引継ぎで、ダイジェストといえる部分ですね。

腹文の片側の主役は流水か泡のような模様が絞ってありますが、これは琳派の流水文の形を写しています。神坂雪佳も琳派ですから妥当なところでしょう。

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写真3番目は、腹文のもう一方の片側の近接です。ここは賛否両論だと思います。金魚に対して猫で、神坂雪佳の意匠に挑戦した感じですね。近年、呉服業界では神坂雪佳は人気がありすぎ、各社競作の状況ですから、なにか個性を持たせたいという気持ちはわかります。猫を尻尾だけにしたのは藤井絞の良識ですね。

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写真4番目は、悩む箇所をさらに近接してみました。近接してみると、染液に浸けていない絞りとはいえ、とても上手です。独立した猫の作品を絞りで作った方が良いかも。この分野は発展の可能性があるかも。
[ 2015/12/12 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」

第三千二百三十一回目の作品として、藤井絞の名古屋帯「神坂雪佳の金魚」を紹介します。

最近、とても有名になった神坂雪佳の「正面から見た金魚」を絞りで表現して帯にしたものです。神坂雪佳は、琳派に分類される近代京都の日本画家ですが、近年になって再評価されています。きっかけはエルメスが取り上げたことだとされています。神坂雪佳は、明治時代に創業し今も続く芸艸堂(うんそうどう)という出版社から、木版摺の下絵集「百々代草」などを出版していて、これは近代の工芸の意匠に大きな影響を与えたものです。当時と同じ木版摺の本ならば10万円ぐらいするでしょうが、今は普通の美術本として同じ芸艸堂から3000円ぐらいで販売されています。

着物業界では、神坂雪佳は大変な人気で、いろんなメーカーが写しをつくっています。糸目のある友禅で普通に作ってしまった作品もありますし、元作品を完全に再現するために糸目を消したり素描で作ったりした作品もありますね。この作品は、絞りでつくってみた、ということです。

「芸」をなぜ「うん」と読むかですが、この「芸」は「藝」の新字ではなく、もともと旧字で「芸艸」と書くミカン科の植物名なんだそうです。昔からずっと謎だったのですが、最近本人のブログを見て謎が解けました。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は、近接です。

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写真3番目は、もっと近接です。近接するとよくわかるのですが、じつは今回は絞った後に染液に浸けていません。本来絞りというのは、生地を絞って防染した後に染液に浸けるものですが、現代の辻が花作家の多くは染液に浸けず、絞った後に筆で着彩しているのです。有名な作家はほとんどそうなのです。

それは本来邪道で、藤井絞は数少ない本当に染液に浸ける工房なので凄かったわけですが、この作品では他の現代作家と同じく、染液に浸けないで作っています。さすがにこの金魚の造形は完全防染できなかったのでしょう。実際に近接で作品を撮るととても美しいです。染液に浸ける作家は、染液に浸けなければさらにうまく作れるということでしょう。雨の日に速く走れるドライバーは晴れの日にはもっと速く走れるものですよね。

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写真4番目は、水草に近接です。水草は茎は絞って筆で着彩して、葉は筆で生地に直に描いているように見えます。これも現代辻が花作家の普通の手法ですね。
[ 2015/12/11 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百三十回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は、友禅の染め帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、野口の友禅の名古屋帯を合わせてみました。野口の友禅と言いうのは、何を描いても明るさや遊びという要素がありますね。色は青系で同系色の組み合わせですが、遊びの無い直線の縞に対し、遊びを加える感じになりました。

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写真2番目は、秀雅の染めの名古屋帯を合わせてみました。色数を増やさず、直線に曲線という形を加える帯合わせです。

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写真3番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。「輪繋ぎ」というタイトルの作品です。着物の縞の直線模様に対して、帯の模様の丸が対照的と言う発想です。

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写真4番目は、菱一で仕入れた友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは千田工房ということですが、私は詳細は知らないです。着物の縞の直線模様に対して、帯の模様の曲線の凹凸や濃淡が対照的で良いんじゃないかと思います。

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写真5番目は、加賀友禅作家、中町博志の友禅の名古屋帯を合わせてみました。「砕」というタイトルの、かなり大胆な意匠の帯です。どこが大胆かといえば、ちゃんと着付けをしても着崩れて見えてしまうし、着崩れてもばれないことですね。ちゃんとした建物の壁画として崩れていく建物を描いたジュリオロマーニの発想に似ています。マニエリスム的発想ということですね。

格子柄の帯を締める時、ちょっとでも斜めになると、格子の線とずれるからすごく気になってしまいます。そういう経験のある方には、ありがたいデザインということになるのではないでしょうか。今回選んだのは、崩れていくブロックの中の模様が縞に見えて、着物の模様にリンクするからです。
[ 2015/12/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百二十九回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は龍村の帯で合わせてみました。龍村には紬に合わせる袋帯もあります。袋帯、名古屋帯、光波帯で合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「甲比丹縞格子」を合わせてみました。インドのモールに取材したもので、先日、大城広四郎の琉球絣に合わせた帯の色違いです。近世に東インド会社経由で輸入されたのは、木綿の縞である唐桟と、金糸が織り込まれたモールです。近世の東インド会社からの人気輸入品2つを着物と帯で揃えた感じですね。

木綿の縞が庶民のものになるのはずっと後のことで、江戸初期には唐桟は高級品でした。しかし、モールには金の薄い板が織り込まれているのですから、それとは比べ物にならないぐらい高級品だったと思います。

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写真2番目は、龍村の袋帯「鳳遊更紗文」を合わせてみました。袋帯ということで高級感もありながら、同時に濃厚なエキゾチック作品でもあり、すごく存在感がありますね。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「ほかけ」を合わせてみました。間道とも呼ばれていたストライプ模様が近世に「縞」と呼ばれるようになったのは、南の方から島々を経由して渡ってきたというイメージからです。ということであれば、島々を渡ってくるイメージを帯合わせに生かそうということで、帆掛け船を選んでみました。この作品も舘山で織られていますしね、海のイメージがいいかもしれません。

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写真4番目は、龍村の光波帯「コプト甲冑異文」を合わせてみました。仕立て上がり名古屋帯である光波帯です。この作品は「コプト」の名がついていますが、「異文」とありますので、ほとんど龍村の創作だと思います。

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写真5番目は、龍村の光波帯「花鳥梅花文錦」を合わせてみました。仕立て上がり名古屋帯である光波帯です。この作品は正倉院裂に取材したものですが、古代の裂としては遺品が多いので日本製だろうと言われています。正倉院時代は高級品を輸入するだけでなく、数十年のうちに技術を習得して自前で織っていたんですね。原品は緑ですが、これは赤にアレンジしてあります。

この作品には少し赤が入っていますが、江戸時代の唐桟は「紅入り」ということで、赤が入っているだけで高級品だったでしょう。この作品も少しだけ赤が入っていますから、江戸時代の高級品を意識して赤を増幅してみました。
[ 2015/12/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百二十八回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は、八寸の織の名古屋帯と合わせてみます。名古屋帯には、八寸の帯と呼ばれるものと九寸の帯と呼ばれるものがあります。九寸の帯は芯を入れて仕立てて八寸になります。八寸の帯は耳をかがるだけで八寸のままで身に付けます。どちらも実際に使う時は八寸ということです。

ただし九寸の帯は、仕立て方で8寸2分ぐらいにはなって体格の良い方に対応します。八寸の帯は、芯を入れたり裏地を付けなくても形を維持できるわけですから、糸が太く地が厚いわけです。名古屋帯はカジュアルですが、八寸の帯は九寸の帯よりさらにカジュアルです。

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いちばん上の写真は、帯屋捨松の八寸の名古屋帯を合わせてみました。

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写真2番目は、帯屋捨松の八寸の名古屋帯を合わせてみました。

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写真3番目は、紫絋の八寸の名古屋帯を合わせてみました。紫絋は袋帯のイメージですが、かつて8寸と9寸のカジュアルなデザインの名古屋帯を織ったことがありました。この帯のタイトルは「テンガナン菱文」ですが、テンガナンとはバリ島にある村で、経緯の絣を織ることができます。

日本では経緯の絣が普通に織られていますが、世界では経絣が基本です。経緯の絣というのは極めて高度なもので日本以外では極めて少なく、このテンガナン村もその1つです。もちろんこの帯は、絣技法ではなく西陣の帯らしい技法で織られていて、デザインだけテンガナンに倣っています。

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写真4番目は、金谷の八寸の名古屋帯を合わせてみました。金谷というのは、「まことのすくい」で知られるまこと織物の分家のようです。証紙番号2000番以上の新しそうな織屋さんでとても良い帯を織っている場合、たいてい若い番号の老舗織屋の分家であることが多いです。

技法としては素朴な経絣で、デザインもタテ縞で、色も地色の焦げ茶を除けば原色の赤白青で、素朴さを演出しているように見えます。それでも十分にお洒落なので、魅力的な商品をつくるには技巧を極めなくても良いということです。

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写真5目は、丹波布の八寸の名古屋帯を合わせてみました。丹波布は江戸時代以前から織られている伝統的な織物でしたが、その後絶え、近代になって再興されました。木綿で部分的に絹糸が使われています。現在は帯も着尺も織られていますが、みんな都会的でおしゃれです。
[ 2015/12/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百二十七回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は、青戸柚美江さんの出雲織の名古屋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、出雲織の名古屋帯「白絣」を合わせてみました。白地に藍染の濃淡の格子で、爽やかな配色です。格子の交わるところは、普通は経緯の色糸が交わって色が濃くなるのですが、ちょうどその部分を白地の絣にしています。

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写真2番目は、出雲織の名古屋帯「茶綿絣」を合わせてみました。茶色は染めているのではなく茶木綿を使っています。茶色の木綿なんてあるのかと思ったら、ネットでも茶木綿の種子というのが売っているんですね。

もともと茶色の木綿を藍染しているわけですが、経緯とも藍染していない部分、緯糸だけを藍染している部分、経緯ともに藍染している部分の3通りだけでこの模様ができているんですね。数学の図形の問題を応用したパズルみたいなもので、よく年寄りができるなあと感心してしまいます。

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写真3番目は、出雲織の名古屋帯「矢車文」を合わせてみました。

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写真4番目は、出雲織の名古屋帯「格子縞絣」を合わせてみました。縞と格子と絣があるのでタイトル通りですね。あまり意味のないタイトルですが、実際の作品は地色の藍も、絣で生まれる濃淡も美しいです。

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写真5番目は、出雲織の名古屋帯「木綿の帯地(タイトルなし?)」を合わせてみました。珍しくタイトルの無い作品です。「木綿の帯地」が唯一のタイトルなのか、それとも付け忘れたのかわかりません。黄色と藍のコントラストも良いものですね。

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写真6番目は、出雲織の名古屋帯「白地に力」を合わせてみました。濃淡2種類の藍の色が面を構成するグラフィックデザインみたいな意匠です。このようなデザインは、白はくっきりした白であるべきと思うのですが、この作品では白地の部分にかすれたような藍色が付いています。計算された絣で作品の一部なのか、ミスなのかわからない雰囲気ですが、これがタイトルの「白地に力」の意味なんでしょうね。
[ 2015/12/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百二十六回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は沖縄の織物の帯で合わせてみます。沖縄にはあらゆる織物があります。「あらゆる織物」とは、無地、縞と格子、平織の絣、紋織(花織、浮織、ロートン・・・)ですね。着物が縞ですから、縞や格子は模様が重なってしまうでしょうね。絣は、パターンによっては模様が重なるように見えてしまうかも。大きい絣なら大丈夫かなあ。紋織は、着物の縞の平面に対し、立体なのでどれでも合うでしょうね。

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いちばん上の写真は、深石美穂さんの川平織の名古屋帯を合わせてみました。深石美穂さんは、沖縄にある織物のほとんどすべての技法ができてしまいます。この作品にもそれが反映していて、格子もあり絣もあり、格子が交わる部分には花織もあります。丸い模様は絣で、数学の図形の問題を解くように設計されています。縞の直線に対し、対照的な丸模様がとても合いますね。

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写真2番目は、深石美穂さんの川平織の名古屋帯を合わせてみました。これは近年着物の柄でみないような大きな絣です。大正時代の着物の絣のようにも感じますし、琉球王家の衣裳の見本帳である御絵図帳に載っている南国風のおおらかな絣模様のようにも見えます。絣の交わる部分には花織もありますね。

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写真3番目は、深石美穂さんの川平織の名古屋帯を合わせてみました。一見、昔のブラウン管のテレビが古くなったときに出たゴーストのように見えますが、これは写真を撮るときの手がぶれたわけではなく、作者の罠なのです。

絣の暈し足と言って、手括りの絣をつくるときに、何段階かに分けて括りを解きつつ染液に浸けることで、段階的なグラデーションを作るという技法があります。花織を作る場所にぴったり合わせてその技法でグラデーションを作ったのがこの作品です。花織とグラデーションが重なって、面白い錯覚が起きているのです。

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写真4番目は、深石美穂さんの川平織の名古屋帯を合わせてみました。浮織の帯です。首里織でも読谷花織でもこのようなものは作られていますが、さすが深石さんのはセンスが良いです。

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写真5番目は、ルバース吟子さんの首里織の名古屋帯を合わせてみました。浮織の帯ですが、そのように書くと、これは首里織なのか、浮織なのかと思ってしまうこともあるでしょう。首里織というのは組合を単位とした産地の分類、浮織というのは技法の分類です。首里織の産地では、花織、浮織、ロートン、花倉織、平織の絣などいろんな技法が伝承されています。

浮織でも、これは紋織に綜絖を使う綜絖花織で、上の作品は紋織部分に手を使う手花織です。裏を見ればわかりますが、デザインを見ただけでもわかります。綜絖花織は模様が横方向に連続するというようにパターンがありますが、手花織は自由ですね。綜絖花織の方が進歩しているわけですが、進歩すると不自由になるとも言えます。

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写真6番目は、上間ゆかりさんの首里織の名古屋帯を合わせてみました。この人も首里織の作家で、格子、絣、花織を併用しています。沖縄出身ですが東京の美大を出ていて、青山の八木さんでも扱っていたはずです、そういわれるとこの色やデザインが理解できますね。森田空美流の無地系の着物に合いそうですものね。
[ 2015/12/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせ

第三千二百二十五回目は、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟の帯合わせです。

今日は、藤井絞の辻が花写しの帯を合わせてみました。いずれも玉紬地の帯で、袷の着物に合わせる帯として使っても良いですが、単衣の着物に合わせるとよりぴったりしますね。木綿の着物は、袷でも単衣でも良いですが、単衣で仕立てる人の方が多いでしょう。袷で仕立てるばあいは、裏地も木綿にすると思いですし、裏地を正絹にするとアフターケアは正絹の着物と同じになりますから、木綿のメリットである「水洗いでさっぱり」というのができなくなります。

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いちばん上の写真は、六通の辻が花写しの帯と合わせてみました。辻が花のような手絞りと描き絵の帯は、加工の面積比でコストが上がってしまいますから、あまり見えないところにもお金を払う六通はコスパが悪いです。展示会場で飾ったりするときは綺麗で良いんでしょうけどね。実際に、反物を解きながら見るととても美しい作品なので、呉服屋の店頭にはありがたい作品です。鋭角の絞りなど、技法的にも見どころが多いですし、描き絵もとても上手です。

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写真2番目は、絞りも描き絵も両方見せる、商品としては売れ筋の辻が花の様式です。

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写真3番目は、松坂屋コレクションにあるものを意識して作ったものでしょうか。蔦の葉の形も綺麗に絞っていますし、鋭角の絞りや疋田など見どころもあり、辻が花の技法の最盛期の作品の写しですね。

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写真4番目は、絞りだけの辻が花で、瑞泉寺裂とよばれる瑞泉寺に伝わる裂を写したものです。瑞泉寺は秀次の妻子の菩提を弔う寺ですが、この裂は江戸時代に入手したものということなので怨念はありません。

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写真4番目は、先日大城広四郎の琉球絣でも使いましたが、波と千鳥を絞りだけで表した辻が花です。
[ 2015/12/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

齋藤頴、光司兄弟の舘山唐桟

第三千二百二十四回目の作品として、斉藤頴、光司兄弟の舘山唐桟を紹介します。

唐桟は、近世に東インド会社から日本に輸入されたものです。なぜ「唐桟」というのかはわかりません。昔の本にはインドのサントトーマスから船積みされたからだと書いてありましたが、現在では否定されているようです。江戸後期から日本でも木綿の縞が織られるようになり、その中心地は川越で川唐と呼ばれました。

幕末にイギリスから機械で紡績した細い木綿糸が輸入されると、薄手でしっかりした現代につながる川唐あるいは野田双子が織られるようになりました。また昭憲皇太后が禄を失った武士のために東京授産所を設立し、川唐の技術も各地に伝えましたが、そこで技術を修得した1人が斉藤家の先祖でそれが舘山唐桟の始まりです。

当時は関東各地で織られていたはずですが、現代まで手織りで残っているのは舘山唐桟だけです。現代まで文化財として残ることができたのは、女子美の柳悦孝氏によって世間に知られるようになったからでしょう。本家の川唐は、最後まで残ったのは飯能の西村さんと言います。私の叔母が西村さんの娘さんの同級生ということで訪ねたこともあるのですが、川越郷土資料館のために手織りをし、ふだんは機械織りでした。現在は女流の個人作家が川唐を継承するということで手織り作品を織っているようです。伝統工芸を残す方法は、有名な文化人に本に買いてもらうか、美大を出た女性に継承してもらうかどちらかだと思います。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。
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写真2番目は近接です。木綿の縞の歴史を考えると、東インド会社がインド産の木綿の縞を世界中に売り、イギリスにも大量に輸出されたのが、イギリスで産業革命が起こり機械で大量生産されるようになると、逆にインドが輸入するようになりました。そしてインドの木綿業者が壊滅し、ガンジーはその当てつけにスピンドルを回していたのです。

こんな感じの木綿の縞は、ユニクロに行けば木綿のシャツとしていっぱい売っているでしょう。しかし、それを手織りで織っている人は世界で何人いるでしょうか。雲南省の山岳民族とかブータンに行けば会えるでしょうか。先進国でやっているのは斉藤さんと趣味でやっている個人だけでしょうね。

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写真3番目は拡大です。

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写真4番目は、今日の作品に付いているラベルです。文末の最後の年代が昭和47年になっています。下のラベルは昭和59年ですから、その間に制作されたものということになります。作者は兄弟連名になっているので、先代豊吉さんの死後兄弟で継承し、ラベルを共用するなど連携して仕事をしていたことがわかります。

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写真5番目は、当店に在庫としてある別の作品のラベルです。文末の最後の年代が昭和59年になっています。昭和59年以後の作品で、私は平成になってから仕入れています。作者が光司1人に変わっています。それぞれ別の道に行ったんでしょうね。現在は代替わりしています。
[ 2015/12/04 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

大城広四郎の琉球絣の帯合わせ

第三千二百二十三回目は、大城広四郎の琉球絣の帯合わせです。

今日は千切屋治兵衛の塩瀬の名古屋帯を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の塩瀬地の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、技法は糊糸目の友禅、テーマは「ザクロ」です。千治では昔から人気のシリーズである、藤岡さんの糊糸目友禅による植物画の塩瀬の名古屋帯です。藤岡さん自体が代が替わっても、連綿と続いている千治の人気商品で、いろんな植物を描いてきましたが、これは柘榴ですね。

本来緑色である葉を青の色で染めるという反自然的なこともしていますが、これは江戸時代の小袖によくある様式です。作品自体は写生的なタッチでもありますが、装飾的な要素や伝統的な友禅の様式を取り込んでいるんですね。写生を基本に装飾的要素を隠し味のように入れるのが、ユーザーに受ける現代の友禅のコツではないかと思います。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の塩瀬地の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、技法は糊糸目の友禅、テーマは「恵比寿大黒」です。お太鼓に米俵に乗った大黒を、腹文に魚を釣った恵比寿を描いた帯です。私がうさぎが好きなので、どちらもうさぎにしてあります。大黒様は鼠で表現することがありますが、その鼠の耳を伸ばしたらうさぎになりました。まあ着物の柄なんて、そんな安易な作り方で良いんですね。

凝ったところはうさぎの顔です。人間の顔は、友禅ではなく友禅の完成後に仕上げ工程で墨描きするものですが、普通はあまり上手くないのです。それを避けるために十二単のお姫様は後ろを向いていることが多いですよね。なぜ上手くないかというと、人の顔を描くのは面相筆を使い、それはそれで専門の修業をしないといけないので、友禅の名人でも面相筆が使えるわけではないからです。

藤岡さんはうさぎの顔を描くのに、面相筆を使う専門家である人形師を使っています。普通の工程の中で友禅師についでに描かせてしまえば、なんとなくただで済むところ、そこだけ別の業種の人に頼めば、別にお金を払わないといけません。時間にすれば少しの仕事でも、子供の小遣いではないので、千円や2千円というわけにはいかないですよね。そういうコストアップを恐れないと、綺麗な顔が描ける、コストアップを嫌がると十二単が後ろ向きになるというわけです。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の塩瀬地の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、技法は糊糸目の友禅と金銀箔、テーマは「梅楓」です。楓(実際は八つ手にみえますねえ)を全体が梅の形に見えるように並べ、春にも秋にも着てくださいという意匠です。

現状ではほとんどが箔加工に覆われていて、葉の間の茶色いところだけに友禅の彩色が見えますが、糊糸目の友禅で完全に描いた上に金銀の加工をしています。見えなくなってしまうところもちゃんと染めているんですね。友禅が本業の藤岡さんは、あくまで箔は加飾なんですね。刺繍と箔が本業の倉部さんは、生地にいきなり箔で加工すると思います。その結果、視覚効果が違うのか、私の目では何度見てもわかりません。

着付けの本などで、箔の帯はフォーマルだから紬に合わせてはいけない、なんて書いたものがありますが、あれは信じないでください。作者はフォーマルにしたくて箔を使うわけではなく、そこに金があるとアイキャッチになって美しいなあという芸術的な理由で箔を使うだけですから。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の塩瀬地の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんで、技法は糊糸目の友禅と金銀箔、テーマは「麦」です。藍の着物に焦げ茶色の帯という配色は良く合うということを証明するために選んでみました。その焦げ茶色に金が加わって、藍、焦げ茶、金の3色になるとなお美しいということも、ついでに証明してみました。
[ 2015/12/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大城広四郎の琉球絣の帯合わせ

第三千二百二十二回目は、大城広四郎の琉球絣の帯合わせです。

今日は龍村の袋帯を合わせてみます。龍村の袋帯といえばフォーマルのイメージですが、紬に合わせるシリーズも制作されています。結城紬のように上質だが地味で着物好き以外の人には気が付いてもらえない、という着物に合わせるといいと思います。また作家モノの創作織物に合わせるのも良いですね。作家モノの織物の着物に、作家モノの織物の帯を合わせると、全身グッチの人みたいになってしまいますが、個人の創作に伝統ブランドを合わせると着ている人の知識の幅が広く見えます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「波兎遊跳文」を合わせてみました。付下げぐらいには使ってもいいと思いますが、洒脱なデザイン、金糸を使っていないこと、などから紬でもいいと思います。

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写真2番目は、龍村の袋帯「印度煌花文」を合わせてみました。これは紬の着物に合わせることを想定したバージョンです。帯の地の糸が紬風です。

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写真3番目は、龍村の袋帯「甲比丹縞格子」を合わせてみました。近世に東インド会社経由で日本に輸入された名物裂は、木綿の縞とともにモールがあります。モールは金糸を使ったもので、マハラジャが使うようなものでしょう。

日本の金糸は、金箔を和紙に貼りそれを細く裁断したものですが、インドの金糸は金自体を細い板に延ばしたもののはずですから、木綿の縞とは比べ物にならない高級品だと思います。私もじつは本物を確認したことが無くて(東博の東洋館ではモールは見られるが、ルーペでは見られない)、いつか見たいと思っています。

これはモールをイメージしたもので、格子の中に金糸の模様も入っていますが、もちろん日本流の金糸で、金の延べ板が糸になっているわけではありません。

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写真4番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。この帯は、私は普段はフォーマルの帯合わせに使っていますが、紬にも使える雰囲気ですね。
[ 2015/12/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)