秦荘帯の帯合わせ

三千百九十回目は、秦荘帯の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、菱一のオリジナル紬を合わせてみました。実際に制作したのは十日町の蕪重織物で、卯年の企画だったと思われます。発売された時は、なんだ企画ものか、と思うでしょうが、企画が終わればもう絶対手に入らないですから、うさぎ好きにとってはレアもの、ってことになりますね。

帯の縞に対し、具象的な意匠を合わせる例です。

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写真2番目は、菱一のオリジナル紬を合わせてみました。「つるばみ紬」というネーミングで販売されたシリーズの一反です。「つるばみ紬」とネーミングされたシリーズには無地も絣もあり、実際の制作者もさまざま(「つるばみ紬同人」と表示されている)ですが、これはぼかしの横段で、制作しているのは十日町の根啓織物です。

ぼかしの横段は、経糸は一色で緯糸だけ変えています。経糸が同じ色ということは、色が変わっても常に半分は同じということで、そうすることで色が調和するんですね。色が変わる境界は、徐々に糸を替えることで暈しになりますね。着物が横段だと、帯の縦縞に対し極端なタテヨコ関係になってしまいますが、ぼかしのおかげで尖った関係にはなっていません。

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写真3番目は、インドネシアの野蚕の糸を使った紬です。制作したのは小千谷の大新織物です。蛾の種類はアタカスというのですが、ヨナグニサンと同じということですから、巨大な蛾なんですね。インドネシアでは国策で産業として新興しているそうで、日本の着物にかぎらず、世界の絹製品の素材として売りこんでいるんじゃないでしょうか。

この紬はとても良い感じですね。大新織物というのは、かつて「あしぎぬ」と題したシリーズもありましたが、たいていセンスが良いです。こういうものは、どうしても素材が注目されてしまいますが、大事なのはデザインだと思います。

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写真4番目は、十日町の十字絣の紬です。制作したのは青裳織物です。絣の基本、十字絣です。なぜ基本かといえば、経絣だけの部分と緯絣だけの部分と、両方が重なった部分が見られるわけで、経絣と緯絣の特長をいちばん単純に見せたものだからです。

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写真5番目は、十日町の十字絣の紬です。制作したのは青裳織物です。黒と白を並べてみました。単純なバリエーションに思ってしまいますが、絣の歴史と原理から考えれば、防染の絣と捺染の絣なわけで、反対ということになりますね。
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[ 2015/08/31 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

秦荘帯

三千百八十九回目の作品として、秦荘帯を紹介します。

まず「秦荘」の意味ですが、滋賀県の秦荘町のことです。しかし現在は平成の町村大合併により、秦荘町は愛知川町と合併して愛荘町となり、その名は消えてしまっています。秦荘町というのは、もともと明治時代に秦川村と八木荘村が合併してできた町でした。八木荘村は堤康次郎の出身地ですから、ここが西武グループ発祥の地なんですね。

一方、秦川村は「秦」の言う字が渡来人を連想させ、だから織物の産地なのか、なんて思いたいですが、実際には近世以前にはこの地域には多くの村があり、その中には「秦」が付く村の名前はありません。明治22年の統合により、「秦川村」と「八木荘村」という名前が現れたとしかわかりません。素人がいきなり調べても、歴史はなかなか気持ち良くつながってくれませんね。

現在、この町には「手織りの里・金剛苑」という施設があって、作品の展示や織物体験ができます。地元で近江上布などを織っていた川口織物が作った施設で、そのホームページを見ると近江上布や秦荘紬のことがわかります。ここは元々近江上布の産地で、「秦」という字(町名としては消えてしまっても秦川山などの地名は残っている)は、京都太秦などとおなじく織物を伝えた渡来人に由来するそうです。

ところで近江上布と言えば、それを持ち歩いて売ったのが近江商人であり、その代表は伊藤家でその京都の店が京都丸紅、本体は2つに分裂して伊藤忠商事、丸紅になっているわけですから、2つの巨大商社と西武グループの3つがこの辺から生まれているんですね。今日のテーマ、秦荘帯よりその方が興味深いですね。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。「秦荘帯」で検索すると、ネットでも販売しています。これは縞ですが、無地も絣もあるようです。ネットで販売されがちの商品は、柄の良し悪しに関わらず、値段の上限がネット価格で決まってしまいますから、商売人としては面白みがないですね。でもまあ、いつもネット最安価格で販売するようにしています。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は拡大です。

こういう帯は、帯合わせして初めて価値がわかるものですね。
[ 2015/08/30 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の帯合わせ

三千百八十八回目は、千總の振袖の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「立湧装耀錦」を合わせてみました。先日紹介した、万能の龍村の袋帯を合わせてみました。訪問着に使えば訪問着用、振袖に使えば振袖用にも見えますね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「七宝連花錦」を合わせてみました。これはまだ紹介していない龍村の袋帯です。また後日紹介したいと思います。

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写真3番目は、織悦の袋帯「龍田川」を合わせてみました。赤に対して黒、補色で合わせてみました。


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写真4番目は、織悦の袋帯「彩雪輪」を合わせてみました。赤に赤の組み合わせです。色が同じという意外ですが、色を同じにして成功するには、せめては形を反対にする必要がありますね。この場合は、着物は草花が絡まった華やかな模様ですから、帯は雪輪が単純に並んだだけの模様にしています。

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写真5番目は、大匠の袋帯を合わせてみました。多色のラメのポリエステルフィルムを平金糸として限界まで盛り上げて使った織物です。素材にこだわらず、視覚効果だけを考えているわけですから、創作的な精神でつくられた作品の意義としてはもっとも芸術に近い西陣の帯ではないかと思います。

デリケートな雰囲気ですが、実際には軽くて丈夫なのではないかと思います。
[ 2015/08/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千總の振袖の続き

三千百八十七回目は、千總の振袖の続きです。

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いちばん上の写真は、前姿のメインの模様の牡丹です。集中的に刺繍をしてアイキャッチポイントになっています。

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写真2番目は、袖の近接です。一般には、手描きは伸び伸びしていて、型は絵が固まっているイメージですが、現実には、手慣れた型糸目は、下手な手描きより伸び伸びしているように見えますね。

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写真3番目は、冬毛のモデル、ポプちゃんに着てもらいました。百人一首の十二単のようなポーズで撮りました。

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写真4番目は、夏毛のモデル、チャツポンに着てもらいました。日焼けした肌の色にも赤が合うということを証明してみました。

千總の振袖

三千百八十六回目の作品として、千總の振袖を紹介します。

百貨店の定番商品でもある千總の振袖です。これは標準品(参考上代78万円)で、成人式の振袖としては、ヴィトンのバッグのようにブランド買いされるのだと思います。私も呉服屋でなければ、自分の娘のために78万円を持って、百貨店に行って千總の振袖を買ったかもしれません。外商扱いで割引きしてもらえば仕立て代と消費税に充てられるかな。どうでもいいことのようですが、そうすることで自分も世間の基準で一流の父親になった、と実感するんだと思います。

技法としては、手挿し(型糸目)です。意匠は手馴れていて、数十年間、百貨店の定番商品であり続けるだけあって、さすがだと思います。

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いちばん上の写真は全体です。千總様式とでも言えるぐらいの手慣れた意匠です。私のように、たまたま1枚だけ仕入れる者は、いちばんそれらしいパターンを選ぶものです。これもいかにもそうですね。千總が好きで一生に一枚買う振袖ならば、「いかにも」というパターンが良いでしょう。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は、後姿(中央の縫い目が背中心)です。

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写真4番目は、落款です。百貨店でブランド買いする方にとっては重要ですね。

龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせ

三千百八十五回目は、龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせです。

今日は付下げと合わせてみます。付下げの本来の意味は、反物の生地を指定された位置で裁断すると、柄が全部上を向くように設計された着物という意味ですが、現在は反物状態で販売される訪問着を指します。ついでにいえば、訪問着というのは、大正時代ごろの百貨店による造語「訪問服」が始まりです。

反物状態で販売されている付下げは、仮絵羽状態にしなくても販売できる程度に模様のつながりが単純ということですが、現在は本来仮絵羽にいないと制作できないような複雑な意匠も、付下げとして制作されていますね。その一方で、あっさりした模様でも仮絵羽で制作され、訪問着として販売されているものもあります。これは、顧客が似合うかどうか羽織って確かめられるというわけで、制作上の理由だけでなく販売上の理由でも、訪問着と付下げが分けられることがあるということです。

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いちばん上の写真は、大羊居の付下げとあわせてみました。大羊居には龍村という習慣にしたがって、とりあえず大羊居を合わせてみました。一見、地味であっさりしたこの帯が、華やかな着物と合わさるとキラキラしてきますね。

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写真2番目は、野口の付下げと合わせてみました。実際に制作したのは岡本等さんです。岡本等さんの作品の特徴は、朱色など京友禅の伝統色を配したモダンな色彩とゴム糸目の繊細な輪郭線です。この作品は、松竹梅に菊や萩を加えたもので和風のモチーフですが、モダンなタッチで描いてもけっこう自然ですね。

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写真3番目は、野口の付下げと合わせてみました。実際に制作したのは橋村重彦さんです。橋村さんも岡本等さんと同じく、当時は野口の専属作家でした。橋村さんは岡本等さんとは反対に、輪郭線は糊糸目で、色は中井淳夫さんの仕事をしていたこともあって重い色を好んでいました。

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写真4番目は、花也の付下げと合わせてみました。小袖をアレンジした意匠で、本来訪問着で制作されるべき全体の模様ですが、製作費を節約するため付下げとして制作しました。型疋田を多用しつつ、色数も抑えた安田系の作品です。この龍村は安田刑のも合うというのを証明してみました。

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写真5番目は、一の橋の付下げと合わせてみました。扇面に御所車と松竹梅という意匠で、修学旅行のお土産みたいなベタな京友禅の意匠ですね。こういう意匠は型で安く作るといやらしいですが、糊糸目で真面目につくるとなかなか良いものです。

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写真6番目は、花也の付下げと合わせてみました。墨色の地色に白揚げのみの単彩作品です。こうして見ると、龍村の帯も単彩の仲間みたいに見えてきます。使い勝手の良い帯というのは、着物に合わせて見え方も違ってきたりするもののようです。
[ 2015/08/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせ

三千百八十四回目は、龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせです。

今日は振袖に合わせてみます。振袖用としては派手さが無胃ですが、振袖にも使えます。振袖専用の帯でない方が、後々訪問着や留袖で使えるので、経済的と言うこともあります。特に着物マニアということでなければ、龍村の帯1本でずっと一生のお供ということでいいんじゃないですか。

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いちばん上の写真は、岡重の振袖に合わせてみました。古典モチーフをモダンな色と配置にアレンジしたシリーズの1枚です。モダンな雰囲気ながら、じつは純粋な手描きの友禅による作品です。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の振袖に合わせてみました。全体が地色と型疋田による市松模様になっており、それぞれの区画の中に琳派模様が配されています。琳派模様は無彩色の仕上げで、全体は豪華ながら単彩のすっきり感もあります。このような意匠は、琳派模様が区画の中にきちんと納まっているものと、はみ出しているものとがあって、雰囲気が大きく違うものですが、これは納まっているタイプですね。

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写真3番目は、藍の絞りの振袖に合わせてみました。徳島の佐藤さんの藍を使って、矢野さんが染めたものです。検索してみると、徳島の藍染のサイトで、「第2回 日本の藍 ジャパンブルー」という展覧会にも同手のものが出品されていますね。

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写真4番目は、野口の振袖に合わせてみました。江戸時代後期に流行って多くの優品がある「瀧模様小袖」を野口が振袖にアレンジしたものです。
[ 2015/08/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせ

三千百八十三回目は、龍村の袋帯「立湧装耀錦」の帯合わせです。

上品な意匠ですし、本金の糸もふんだんに使っていて高品質なものであることもわかりますが、作品として眺めて、存在感があるとか芸術性が高いとか言うほどのものではありません。作品として存在意義があるのでなければ、龍村の帯としての機能を果たしてくれないと困ります。機能とは、この帯を合わせることで、着物も身に着ける人も上品に見せることですね。

今日から2,3日かけて、この帯が帯合わせに力を発揮することを証明しますが、まず今日は色留袖に合わせてみます。美しいキモノの掲載でも、色留袖に合わせているので。

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いちばん上の写真は、野口の色留袖を合わせてみました。意味が分からず見ると、変な柄としか見えませんが、かつて野口が会長を務めていた祇園祭の山の飾りで、それを色留袖の意匠としたものです。織物の雰囲気を出すために、友禅の上に箔剥がし(箔を貼ってから剥がす技法)をしてふんだんに刺繍もしています。

本歌は、ローマ教皇がラファエロに下絵を描かせ、ブラッセルで織らせたものです。ヨーロッパで教会や城館のためにタピスリーが盛んにつくられるようになるより100年ほど前のものと言われます。注文主、デザイナー、職人ともに世界の一流ですから、人類の宝ともいうべきものなのですが、本来バチカンに有るべきものがなぜか流出し、出島に持ち込まれ、加賀前田家が2枚買い、京都の町衆が4枚買って祇園祭の飾りに使っているのです。もちろん国宝に指定されています。

テーマはイリアスで、マエミにいるのはパリスの父であるプリアモス王です。6枚でトロイ戦争が展開していくのでしょうが、当時は時代考証という概念が無く、意匠はギリシア風でなく中世風なので分かりにくいのです。これらについては、初代龍村平蔵も調べていて、私はそれを読んでこれを書いています。

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写真2番目は、大松の色留袖を合わせてみました。東京の大松は大彦や大羊居の本家に当たります。龍村と言えば、大彦や大羊居に合わせることが多いですから、大松にも合うはずです。

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写真3番目は、大松の色留袖を合わせてみました。松竹梅をモダンにアレンジしていますが、豪華モノですねえ。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の黒留袖を合わせてみました。すっきりした琳派の鶴で、こんな黒留袖なら貸衣装と間違えられなくていいですね。
[ 2015/08/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「立湧装耀錦」

三千百八十二回目の作品として、龍村の袋帯「立湧装耀錦」を紹介します。

いちばん最近発売された「美しいキモノ」(2015秋)の177ページの掲載しています。加賀友禅の色留袖に合わせています。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。全体は六通で、オレンジ、黄緑、水色が繰り返します。

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写真2番目はラベルです。絹75% ポリエステル(金属糸風)11% レーヨン8% 指定外繊維(紙)6%とかいてあります。ユーザーが知りたい情報は、手織りか機械織りか、日本製か中国製か、そんなところだと思いますが、そんな期待には応えてくれない、無味乾燥な成分表のように見えますね。しかし、ここには重要なj情報があって、意味が分かると、実物をみなくても、この数字だけでどんな帯か見当が付くようになります。

絹の割合が大きい帯は金銀糸が使ってないわけですから、紬にも使えそうな光らない帯ということがわかります。これは75%しか使ってないですからフォーマル系ですね。ポリエステル11%は本金でない金糸ですね。 レーヨン8%はその芯糸です。芯糸の割合が多ければ、多くが撚金糸であるとわかります。 指定外繊維(紙)6%は、本金糸の裏の和紙ですから、この割合が多いのは本金糸の多い帯ということでうれしいですね。しかし、擦れも発生しやすいですから振袖の変わり結びとかしてほしくないですね。もちろん紙でも本金の和紙とは限らないですが、龍村などのブランドなら大丈夫でしょう。

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写真3番目は、オレンジの華文の近接です。

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写真4番目は、水色の華文の近接です。

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写真5番目は、華文の拡大です。華文の平面は、金糸で埋め尽くされているのではなく、平金糸で間隔があいて、地の白の絹糸が見えています。だから光りすぎなくて上品なのです。一方、華文の輪郭はびっしり糸が重なっています。

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写真6番目は、華文の拡大です。華文の先端ですね。華文も輪郭は金糸ではなく、黄色い絹糸と細い撚金糸の混合でできています。金のギラギラした光沢ではなく、金の光沢と絹の軟らかい光沢の組み合わせになっています。
[ 2015/08/23 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

綿入りの草履

三千百八十一回目の作品として、綿入りの草履を紹介します。制作したのは高橋慶造商店です。

最近、綿入りの草履が流行っているので仕入れてみました。足を載せる天革の下に普通はスポンジが入っているはずですが、そこにさらに綿を凝縮して入れたものです。(私は中は見たことが無いですが、大量に入っているらしいです。)いかにも足に優しそうに見えますが、実際どうなのでしょうか。

この草履は、龍村で仕入れています。龍村の草履というわけではないのですが、たまたま売っていたのです。鼻緒に龍村裂を使った草履はたくさんありますが、その中で、龍村自身が作っているものは、高橋慶造商店が作っているとのことで、そういう縁で売っていたのでしょう。

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いちばん上の写真は、並べて撮ってみたところです。

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写真2番目は、綿入りの膨らみがわかるように、横から撮ってみました。
[ 2015/08/22 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせ

三千百八十回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯に合わせてみます。染め、特に友禅の名古屋帯というのは、元々手で自由に描くものですから、模様に絵画性が高いのが特長です。しかし、今回の着物の更紗模様は多色の型友禅で絵画性が高く、模様どうしが衝突する危険が大きいですね。どのように回避するかがいちばん主要なテーマになると思います。

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いちばん上の写真は、藤井絞の名古屋帯を合わせてみました。技法を絞りに変えることで、模様どうしの衝突を回避しました。模様のテーマはパリオペラ座の屋根ということですが、絞りの技法としては高度なものです。絞りというのは、生地を摘まんで縫い締めで圧力をかけて防染し、染料に浸けるわけですが、そのような技法でどうしたらこんな線表現ができるのか、と思ってしまいますよね。絞り作品を選ぶときの基準として、他人が真似できない技法を使っているものを買っておくと、似たものがネットに出なくていいですよ。

テーマとしては、更紗とパリオペラ座ということで、エキゾチックどうしですね。

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写真2番目は、藤井絞の名古屋帯を合わせてみました。絵画性の高い模様どうしを重ねないということで、円と直線の抽象模様を合わせてみました。シンプルな模様ですが、正確な直線、正確な円を絞りで表現するというのは難易度が高い作業です。もともと絞というのは、正確な表現をするには向かない技法ですが、あえてそれで正確な表現を目指し、全力を尽くして少し至らないところに美がありますね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。友禅の作品ですが、友禅の特長をあえて封印し、単彩でシンプル、饒舌になりすぎない作品です。このぐらいに抑えれば、友禅どうしでも模様どうしが重なってうるさいという感覚はないですね。

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写真4番目は、秀雅の刺繍の名古屋帯を合わせてみました。千代田染繍の流れをくむ東京の刺繍ですね。「流れをくむ」という曖昧な表現をするのは、たいていのものは下請けで制作されているため、誰が作っているのか正確にはわからないからです。疋田部分は、型ではなく堰出友禅によるものです。手描きの微妙なズレが美強いのですが、写真で分かるでしょうか。

雪輪という日本の伝統的な文様をテーマにしていますが、更紗と違和感はないように思います。

[ 2015/08/21 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせ

三千百八十回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせです。

今日は龍村の間道を合わせてみます。間道あるいは縞は直線模様なので、曲線模様である更紗とは組み合わせしやすいです。それだけでなく、いわゆる縞模様は、日本の染織史では、古代の繧繝または長斑、中世~近世の名物裂である間道、近世の木綿の唐桟がありますが、いずれも輸入品で後に日本に定着して生産もされるようになったものですから、更紗の歴史に似ています。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。「飛鳥間道」は龍村によるネーミングで、法隆寺に伝来する(東京国立博物館法隆寺館)「蜀江小幡」の一部に使われている裂に取材したものです。本歌は赤で、色が変わっているのでわかりにくいです。

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写真2番目は、龍村の袋帯「清香間道」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の袋帯「清風間道」を合わせてみました。

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写真4番目は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。


[ 2015/08/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせ

三千百七十九回目は、千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)の帯合わせです。

更紗模様の着物の欠点は、松竹梅のような純粋な和風のテーマの帯が合わせにくいところです。しかし、実際に帯合わせをしてみると、更紗の帯が合わせられないことのほうが不便ですね。更紗は、唐草とは本来異なるものですが、実際にはどちらも曲線の植物文ですから同じように見えてしまいます。そして更紗と唐草を合わせると、西陣の帯の中ではかなりの比率になりますから。

純粋な和風もダメ、更紗も唐草もダメということになると、帯合わせは少し困難になりますね。和風ではあるが、松竹梅鶴亀のようにいかにも和風と言うほどでもなく、なんとなく和風な帯を合わせるか、エキゾチックをさらに推し進めて、象や鸚哥や外人そのものを合わせるしかないですね。今日は、エキゾチックを推し進め、更紗を飛び越してダイレクトな外国モチーフを合わせます。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「木画狩猟錦」を合わせてみました。正倉院御物の木画とは、木に違う種類の木を嵌め込んで作画する木の象嵌です。この狩猟文は、「韃靼人狩猟文」などとして(この木画は胡人でしょうね)、近世まで繰り返し画題にされます。日本人に好まれて定着したということだと思います。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「アンデスの神」を合わせてみました。アンデスと言えばインカですが、インカというのは、この地域がスペイン人に征服される直前に有った帝国にすぎず、それ以前に多くの文明があって、プレインカ文明と総称されます。これはその1つのチャビン文明のデザインではないかと思います。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「豊穣文」を合わせてみました。エジプトの王家の谷のある遺跡の1つの壁画だと思います。収穫がテーマですから、季節でいえば秋でしょうか。秋にいかにも秋らしい帯を合わせるのではなく、情緒の全然違う外国風景を合わせ、よく考えたら秋だった、というのも面白いと思います。

また収穫されているのは小麦ですから、麦秋ということで6月、あるいはビールに関連づけて着ることもできると思います。ビール会社の社員でもないと、ビールのイベントもないと思いますが。もちろん、エジプトテーマで博物館も良いと思います。

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写真4番目は、大西勇の袋帯「正倉院臈纈屏風」を合わせてみました。正倉院御物である臈纈屏風に取材したものです。正倉院の染織品は、織物は現代と変わらない精緻なものですが、臈纈は素朴なタッチなのが魅力です。この帯は西陣ですからもちろん織物ですが、芸能人のヘタウマの絵みたいで、元作品のタッチを再現しています。

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写真5番目は、山鹿清華の袋帯「孔雀文」を合わせてみました。山鹿清華の本人の作品は「手織錦」といい、作品数も少なく高価なものですが、これは本人監修のライセンス作品としてつくられたものです。織物というのは、本人モノも監修モノも本来同じなので、落款などで見分けるのみだと思います。
[ 2015/08/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)

三千百七十八回目の作品として、千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(小紋)を紹介します。

昨日まで紹介していた一の橋のよくわからない帯は、訪問着に合わせることも可能だと思いますし、やりがいのあるテーマですが、カメラが故障してしまったので別の機会にします。カメラが急に動かなくなったので、諦めつつも念のためメーカーのホームページを見たら、なんとメーカーに責任があって保証期間を過ぎていても無償で直してくれるとのこと、電話をしてみたらすごく誠実な対応で驚きました。

というわけで、しばらくはたまたま撮り溜めしてあった写真を使います。カメラが帰ってきたら、あの妙な帯の帯合わせの続きをお見せします。 

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。更紗模様は3種類で、それが繰り返しているわけですが、写真で見る通り、模様は結構大きく、模様どうしの間隔も結構大きいです。

理想を言えば、マエミに模様が2個出て、その間のオクミに1個の合計3個模様が出たら素晴らしいですね。さらにオクミの模様はマエミの2つの模様の中間より少し上が良いです。でも着る人の身長はさまざまで、身長が十分に高くないとマエミに模様が2個出ないかもしれませんね。しかし身長が高い人は反物の尺に余裕がないため、オクミの模様の位置の調節ができません。飛び柄の着物の仕立ては、着る人というよりも、仕立て屋さんにとって茨の道なんです。

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写真2番目は、模様の近接です。大きな模様はデザインに自由度があって絵画的にも魅力があります。しかし、大きな模様は大きな余白を伴いますから、仕立て易いか、着姿はどうかまで考えると、諸刃の剣でもあります。なぜ大きな模様は大きな余白を必要とするのかと言われそうですが、大型獣は生きていくための縄張りが広いのと同じですね。

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写真3番目は、模様の近接です。

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写真4番目は、模様の近接です。

一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の帯合わせ

三千百七十七回目は、一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の帯合わせです。

今日は紬で、紺以外の色を合わせてみます。赤、黄色、茶色など色合わせのように合わせてみますね。

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いちばん上の写真は、首里織の仲井間香代子のロートン織を合わせてみました。福木で染めた輝くような黄色~オレンジ~茶色の着物です。ここでは、紺とオレンジの配色を試してみました。補色関係の華麗な組み合わせですね。

ロートン織というのは、経糸が浮く組織なので、浮いた経糸の色だけの部分と、経緯の糸が平均した地の部分とが、グラデーションを形成します。糸が立体的になるために光の反射角度が異なるのも、グラデーション効果を助けています。私は、花織とロートン織の糸が浮く織物の存在理由はグラデーション効果だと思います。

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写真2番目は、大城永光の琉球絣を合わせてみました。紺と臙脂色を試してみました。着物というのは全身を包むので、たとえ臙脂色でも赤系は売るのが難しいのですが、こうしてみると自然ですねえ。

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写真3番目は、秋山真和の綾の手紬を合わせてみました。紺と焦げ茶色を試してみました。19世紀に織られて実在する作品の意匠を再現したものです。色はこちらの方が鮮やかですが、百数十年間の退色を考慮したものでしょう。絣の中に朱色の十字もあって、それが帯の朱色の花に連携しているように見えます。帯の合う合わないは、細かいところが決め手になることもありますね。

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写真4番目は、大城カメの琉球絣を合わせてみました。紺と多色を試してみました。今回の帯合わせは、いろいろな色を合わせる反面、模様はすべて縞と格子(沖縄ですから綾の中と手縞というべきですね)にして、帯と着物が曲線同紙にならないようにしてみました。
[ 2015/08/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の帯合わせ

三千百七十六回目は、一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の帯合わせです。

加工がいっぱいしてあって、価格的にも高価な帯です。こういう帯の帯合わせは期待しすぎちゃって悩みますね。とりあえず紬と合わせてみます。帯が饒舌ですから、着物は無地系が良いという考え方もありますね。また、帯が高級だから着物も高級紬でないと合わないという考え方もありますし、帯が高級だから着物は安物でも高く見えるから大丈夫という考え方もあります。

矛盾に満ちて迷宮のような帯ですから、帯合わせもまた迷宮のようになるのでしょうか。今日はとりあえず迷宮にしない帯合わせをしてみます。迷宮にしないためには対立する要素を少なくしてやればいいのですから、帯の色と同じ紺色の紬を合わせました。

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いちばん上の写真は、松枝哲哉の久留米絣を合わせてみました。久留米絣には珍しい格子柄の作品です。格子では「絣」ではないだろうとも思われますが、格子の縦の線が途中何か所も途切れているので、やはり絣の技法を使っているのです。

久留米絣伝統の藍染の色に、さりげなく赤と黄色の線が入っているので、帯の配色との共通性を感じる一方、帯の模様の取り方の曲線と着物の格子の直線との対照性も感じて、良い帯合わせだと思います。良い帯合わせは、共通性と対照性の両方を含んでいるものですね。

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写真2番目は、大城広四郎の琉球絣(沖縄県で生産される平織の絣を「琉球絣」と定義している。)に合わせてみました。大城広四郎さんの死の直後、「遺作」というネーミングで発売されたものです。経緯共に手紡ぎ真綿の糸を使い、しかも細かい経緯絣を織っているという特別な作品です。

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写真3番目は、林宗平の塩沢紬に合わせてみました。林宗平が生きているころの作品です。現在も同じ意匠の作品が織られているようですが、現在のラベルは「林宗平工房」となっています。絣合わせが大変そうな、ちょっとでもずれたら全体が崩れてしまいそうな意匠です。

有栖川錦を思わせるカクカクしたデザインの鹿です。名物裂という中央の文化の意匠を、越後の織物が取り入れるということに矛盾を感じる方もいるのではないでしょうか。地方の文化は土俗性を大事にして京都の真似はしないでほしいですよね。なぜ林宗平はこんな意匠を好んだのか、その謎は「北越雪譜」を読んだら解けました。越後の織物は、地方性を大事にしたのではなく、京都の錦に負けない織物を織ろうとしていたのです。地方性を大事にするというのは近代の民芸思想以後のものなんでしょう。

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写真4番目は、絹久留米絣を合わせてみました。久留米絣は、戦後の日本人は木綿の絵絣を着物にしてきたり、布団にして寝たいという気持ちが無くなってしまったので、衰退の一途をたどりました。文化庁は、絶滅を避けるべく重要無形文化財の指定をしたのですが、それで技法を合理化することができなくなり、産地はかえって生活が苦しくなったと言われました。

一方、同じ立場の結城や大島の産地は栄えていたので、その差はなんだろうと考えて、木綿と絹の違いだろうということになりました。木綿でも絹でも絣を作る手間や織る手間は同じなのに、売値は全く違ったからです。日本人は絹は高い、木綿は安いと思いこんでいるので、手間は結城と同じでも木綿に50万も100万も出す人はいなかったからです。

というわけで、当時織られたのが絹の久留米絣です。しかし伝統に逆らったものはやはり邪道なのでしょう。やがて途絶えてしまいました。しかし、初めて絹で織ろうとした人々の心情を考えれば、期待を込めて絣も織も最高のスタッフを集めたと思うんですよね。

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写真5番目は、佐藤トシの南部紬を合わせてみました。岩手県岩泉町で手紡ぎ草木染も紬を織っていた作家です。扱っていたのは近藤伝でした。この作品は藍とクヌギなどで染めています。
[ 2015/08/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の細部

三千百七十五回目は、一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯の細部です。

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いちばん上の写真は、お太鼓(腹文も同じ)の近接です。

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写真2番目は、さらに近接です。朱色の花は、形が流動的で乱れているように見えますが、刺繍の糸自体はまったく乱れが無いですから、全体の意匠の雰囲気に合わせて、花の形を崩しているのでしょう。この花がぴちっとした形だったら、全体の意匠がぎこちないものになってしまいますね。

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写真3番目は、上の写真の少し下辺りです。大きな絞りの取り方の輪郭線の一方の側だけが、朱色の糸で刺繍してあります。染色作品における作画技法というのは、糊防染(友禅染)、型染、刺繍、箔、絞り、などいろいろありますが、他の技法では輪郭線はくっきりしますが、絞りだけは輪郭線がくっきりしないんですね。だから絞りを選ぶ理由は輪郭の凹凸とグラデーションを求めてのことだと思います。

この作品もまた、輪郭線の凹凸とグラデーションを求めて絞りで取り方を表現しています。もし型染で取り方が描かれ輪郭線がくっきりしていたら、安っぽい平板な作品になっていたでしょうから、手間とコストをかけて絞りをしていることも意義があるんですね。ところが、です。そうやってやっと得た凹凸とグラデーションの半分を、刺繍で隠蔽して無にしているのです。その刺繍だってさらに手間とコストがかかっているはず。

もう全然合理的ではないですよね。なんでそうするのか、もう頭がくらくらするほどです。この意味が不明な刺繍も、倉部さんの刺繍だから高いんですよね。

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写真4番目は、上の写真の少し下辺りです。草の刺繍は緑色のグラデーションが美しいです。朱色の花はグラデーションが無く均一な表現であるのと対照的です。何で表現を統一しないんだろう、なんて私は思ってしまうのですが、たぶんそうしてしまったら作品の深みが無くなってしまうんでしょうね。

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写真5番目は、垂れの部分の近接です。疋田絞りの「X」の形の崩れと、朱色の花の形の崩れがちょうど合っている感じですね。

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写真6番目は、お太鼓の笹の模様の近接です。型疋田によって笹が描かれているのですが、1つの作品の同一画面で、本当の絞りの疋田と型疋田が並んで併用されている例というのは珍しいと思います。そのような作例が、江戸時代の小袖に有るのかどうかよくわからないですが、外見上似ていて、違う進化の経路をたどった2つを並べることに意味が有るとも思えず、迷宮に入り込んだような気がします。

このように矛盾を3つも4つも抱えることで、深淵を覗きこむような魅力のある作品になっています。私はこれを仕入れず、もっと合理化した様式で作った方が良いかとも思ったのですが、そうするとこの魅力も薄くなってしまうのだろうということで思いとどまりました。
[ 2015/08/15 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯(実際に制作したのは倉部さん)

三千百七十四回目の作品として、一の橋の絞りと刺繍の名古屋帯を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

おそらく着尺の長さのある生地に、おそらく名古屋帯になるように模様が染めてあります。袋帯かとも思ったが、名古屋帯にしかならないだろうなあということ。生地は白ではなく、白に近い色に染めてある地紋のある綸子地です。

非常に魅力のある作品ですが、商品としてはよくわかりません。私も若い時は、わけのわからないものでも芸術性の高いものは仕入れたものですが、今はそういう元気はないです。これについては、うちの母親がどうしても買いたいというので仕入れたものです。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。ただし、腹文としてもほぼ同じ模様がついています。つまりこれと同じ加工が2個あるということですね。お太鼓としても腹文としても、身に着けてしまうと表に出ない部分が多いです。見えない部分にもお金を払わされているので合理的ではないですね。

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写真2番目はお太鼓の上部です。

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写真3番目は、お太鼓の下部です。

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写真4番目は、垂れの部分です。これで腹文として十分だと思うのですが、そうではないんですよね。

明日はもっと詳細に。
[ 2015/08/14 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせ

三千百七十三回目は、東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせです。

今日は付下げと合わせてみます。刺繍で和楽器を表現した帯は、テーマの品格や加工の重さという点でどんなフォーマルでも対応できると思いますが、名古屋帯という形式であることを考慮して付下げぐらいで合わせてみようと思います。

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いちばん上の写真は、花也の付下げ「紐」を合わせてみました。名古屋帯が相手ということで、軽めのテーマの付下げを選びました。普通の意匠は、文箱や貝桶があって、その添え物として紐があるわけですが、ここではその脇役だけですから軽い雰囲気になりますが、その一方で帯合わせで自由度が大きいですね。

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写真2番目は、花也の付下げ「千鳥」を合わせてみました。この帯合わせも、名古屋帯が相手ということを意識して、軽めのテーマの付下げを選んだものです。普通の意匠は、千鳥は波とセットで伝統文様を構成します。千鳥だけを切り離すことで、伝統文様ではなく軽い雰囲気の付下げということになりますね。伝統文様であれば、帯も古典ということになりますが、千鳥だけならば古典でもモダンでも自由度が大きいですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げ「果実尽し」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。植物文ですが、花ではなく果実をテーマにしたところに個性があります。着物は植物文の極みのようで、帯で植物を重ねたくないですし、帯のテーマが植物でないということのありがたみを感じる帯合わせですね。

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写真4番目は、花也の付下げ「笛袋」を合わせてみました。これは禁忌だろうというのをやってみました。全身楽器の衣装ででコンサートに行くというのは、矢沢永吉のコンサートに矢沢永吉のコスプレで行くおじさんみたいなものですね。好きすぎてそうしました、ということならその場では温かい目で見てもらえるかも。
[ 2015/08/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせ

三千百七十二回目は、東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせです。

今日は染の着尺(小紋)に合わせてみます。コンサートや観劇は、小紋を着ることがいちばん多いのではないかと思います。

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いちばん上の写真は、野口の飛び柄の着尺に合わせてみました。輪郭線だけが型で内部は手描きで染めているものです。内部を手染めすることに着目して「手挿し」という場合もありますし、輪郭が型であることに着目して「型糸目」という場合もあります。

余白の多い飛び柄の着尺は、帯合わせがいちばん楽な着物ですね。失敗するとしたら帯と着物で花の種類が重なることでしょう。着物の模様というのはたいてい植物文が付いてきますから、この帯のように模様が花でないというのは、すごくありがたいことです。

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写真2番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。絞りというのは、原理的には、生地を摘まんで、糸で縫うなどして圧力をかけて防染し、染液に浸け、染料が入り込まなかった部分が模様になるわけです。濃い地色の中に相対的に淡い色の模様があり、その模様が花のような丸い模様であれば絞りやすいですから、カルチャーセンターでもできるんじゃないでしょうか。

この作品のように、模様の方が濃い色のばあいは、模様ではなく地の方を絞っていることになりますね。さらにこの雀のように、模様に輪郭があって2色になっている場合は、外側の水色の部分はどう絞るのでしょうか。絞った後、染料に浸けず、筆で着彩してしまうのなら何でもできるわけですし、現代の辻が花作家にはそういうものが多いのです。

しかし、藤井絞のように専業の絞りの職人さんを抱えている会社は、絞り本来の技術を持っています。以前、このような複雑な絞りの工程を写真で紹介したことがありますが、なるほど、というものがあります。読者の方が、もう当時の方と入れ替わっているかもしれないので、そのうちまた紹介してみようかと思っています。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。大きな模様で、しかも余白の無い総柄の着尺というのは、もっとも帯合わせしにくいものです。そのもっとも難しい課題にチャレンジしてみましたが、けっこう良い感じではないでしょうか。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。横段模様は、個性があってパーティー着にするとかっこいいですが、帯合わせは難しいですね。特に、柄部分が帯と直接接すると難しいですが、その難しいケースにチャレンジしてみました。もうこの帯は万能ですよね。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。縦縞に大きな花模様という、個性の強い着尺です。帯合わせは難しいはずですが、やはり万能を証明する結果になりました。この帯の万能の理由は、地色が黒、花模様でない、余白がある、ということでしょう。余白があっても存在感があるのは刺繍であるための模様自体に重みがあるためです。友禅では模様に重みが無いので、意匠の面白さで勝負することになり余白が確保できなくなるのです。
[ 2015/08/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせ

三千百七十一回目は、東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の帯合わせです。

和でも洋でも楽器をテーマにした帯や着物は、コンサートに着て行くとお洒落という使い道があります。コンサートや観劇は、紬でも付下げでも着ることはありますから、この帯も紬でも付下げでも合わせる必要がありますね。今日はとりあえず紬に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、山下八百子の黄八丈に合わせてみました。今回の帯は黒地ですから、着物の色をいろいろ変えてみようと思います。まず黄色代表として、黄八丈ですね。

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写真2番目は、久米島紬を合わせてみました。横段模様というのは大胆な感じがしますから、創作的な雰囲気にもなりますね。しかしよく見ると、泥染、福木、ユウナなど、久米島本来の染色方法で染めた色を横段にし、沖縄の伝統的な模様単位である鳥(トゥイグァー)を配したものですから、伝統のアレンジでもあるんですね。

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写真3番目は、久米島紬を合わせてみました。黒に黒というテーマで合わせてみました。細かい格子の久米島です。

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写真4番目は、松枝哲哉の久留米絣を合わせてみました。黒に青というテーマで合わせてみました。久留米絣の藍染には、何十回も藍甕に浸けた黒に近い藍も、明るい藍もありますが、松枝哲哉さんの明るい藍の色は人気がありますね。

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写真5番目は、佐藤トシの南部紬を合わせてみました。茜と玉葱で染めた糸で織ったというきれいなショッキングピンクの紬です。誰が着るんだろうとも思いますが、あまりに色が綺麗なので仕入れてしまいました。
[ 2015/08/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の細部

三千百七十回目は、東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」の細部です。

今日はお太鼓の近接です。お太鼓にも笙がありましたが、昨日、腹帯の近接で紹介したので、それ以外のものを載せてみました。

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いちばん上の写真は、弦楽器ですが、本体が丸いのは何なんでしょう。私はこちら方面の知識がほとんどないのでわからないのですが。4本の弦が金糸による表現です。

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写真2番目は琴あるいは箏でしょうか。弦の数や琴柱の有無は、技術上の制約で省略してあるのかもしれずよくわかりません。これも弦は金糸による表現ですが、余分な弦の糸の表現が良いですね。

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写真3番目は、笛袋に入った笛ですね。着物や帯の模様では、笛よりも笛袋がテーマにされることが多いです。

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写真4番目は、箜篌(くご)というハープのような楽器です。正倉院にもある楽器です。弦の下にある太い糸(紐)は2色にして重なるような表現にしているので立体感がありますね。これも弦楽器ですが、やはり弦は金糸による表現です。本物は弦だけが張ってあるわけですから、金糸だけでもいいと思いますが、背景に白い糸を置いています。これも作者の創意ですね。

5つの線は、五線譜のイメージでしょうか。和楽器も五線譜を使えるのか知りませんが、それはともかく、5つの線はラメのポリエステルフィルムを平糸の状態で繍いこんでいるようで、西陣の織物のような発想ですね。

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写真5番目は、鼓です。
[ 2015/08/10 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」

三千百六十九回目の作品として、東京の刺繍の名古屋帯「和楽器」を紹介します。

東京の刺繍作品ですが、事情があって千總から仕入れています。私にとって東京の刺繍の最高峰といえば、やはり千代田染繍です。かつて北秀で黒留袖ばかり扱っていて、価格は200万円から350万円でした。実際の作業は複数の下職によって行われており、その中でいちばん有名なのは竹内功さんでした。青汁のコマーシャルに出たこともあるんですよね。

北秀破産後は、そんな大作を注文をする会社は珍しくなってしまいました。今日紹介する作品は、そんな千代田染繍の流れを継ぐ作品ですが、おそらく千代田染繍の下職の誰かが制作したものでしょう。刺繍というのは、友禅のように設備が要らないですし、個人が自分のペースで出来ますから、中国やヴェトナムの刺繍が席巻しても、東京で意外にたくましく存続しています。作者はほとんどが主婦の副業で、好きでやっているのだろうと思いますが、だから滅びないんですね。

そのような人たちを束ねている人がいて、その人が問屋の役割をしていて、千總のような「メーカー」を通して販売することもあるのです。経済史における近世以前の問屋制手工業のようですよね。刺繍のように近世以前から進歩していない手作りの商品は、近世以前の流通システムが似合うのでしょう。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。お太鼓には気前良く8個も楽器が刺繍してあります。見どころは個別の刺繍なので、明日近接でお見せします。

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写真2番目は腹文です。刺繍なので片側だけです。

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写真3番目は、腹文の近接です。

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写真4番目は、腹文の近接です。

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写真5番目は、腹文の近接です。
[ 2015/08/09 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせ

三千百六十八回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせです。

今日で紫紘の袋帯「ポピー」を終わりにします。使い残しの画像のうちのいくつかを掲載します。

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いちばん上の写真は、岡重の付下げを合わせてみました。一見、派手で若向きの帯ですから、派手で若向きの付下げと合わせてみました。前姿に巨大な半円型の雪輪文様があって、それ以外にはほとんど無地(白揚げの小さい雪輪が数個ある)という、芸術作品みたいな大胆な模様配置です。

若向きどうしで合いそうな気がしますが、実際にはしっくりしませんね。古典的な桜の意匠がポピーと合わないのでしょうか。それ以上に色の相性の悪さも感じます。岡重の赤は、派手なようでも、やはり京都の伝統的な朱ですね。フランスのデザインに取材したというポピーの赤と比べてみると、稚貝がよくわかります。

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写真2番目は、大羊居の付下げを合わせてみました。これは意外に合ってしまいますね。上の帯合わせで感じたような違和感は全くありません。着物のテーマはチューリップとコスモスで、それにポピーが加わるわけですが、案外仲良しという感じ。京友禅と大羊居の違いでしょうか。

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写真3番目は、玉那覇有公の紅型の着尺を合わせてみました。紅型というのはもっとも帯合わせしにくい着物です。単体で見て最も美しい着物だと思うのですが、そういうものの宿命でしょうか。具体的には、余白の無い全体の模様で、色が多色、染料でなく顔料であるため色が強い、という3つの理由だろうと思います。

一方、紅型に対応できる帯の条件は、顔料より強い色ということで、友禅ではなく、織か刺繍の帯であるということ、模様どうしがつながらないように、模様の周りに余白がある意匠の帯であることです。とすれば、原色の赤を使った織物で、しかも植物文の間に白い余白のあるこの帯は適任だと思うのですが、銅でしょうか。

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写真4番目は、藤村玲子の紅型の着尺を合わせてみました。柄が細かくて色が地味でありながら、存在感のある表現は、さすが藤村玲子さんだと思います。紅型が本土で流行し始めてすぐ、本土の業者から、もっと年輩者が着られるような地見え細かい柄の紅型を作ってほしいという要望がありました。紅型というのは、はじめから高価なものだったので、どうしても販売の中心はお金のある年配層だったからです。

しかしながら、紅型を普通に色を地味にして柄を細かくすると、本土の人が憧れる紅型のイメージと離れてしまいます。外国の商品を日本人向きに使いやすくし過ぎると、ホンモノらしさが無くなってしまうという、商品開発につきものの問題ですね。ホンモノ感が十分あって、しかも制作地とちがう環境で使いやすいという商品企画は難しいのですが、藤村玲子さんの作品は、東京で着るのに合った色で染めながら、ちゃんと紅型ってわかりますよね。やはり存在感だと思います。

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写真5番目は、城間栄順の紅型の着尺を合わせてみました。これは本物の琉球藍で染めた藍型です。藍の粒子が生地に食い込んでいてけっこう重いのです。摩擦で色が落ちるのか、けっこう不安です。1970年代のものですが、当時はこういう商品としては不安な紅型があったのです。売るのは怖いですけどね。
[ 2015/08/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせ

三千百六十七回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。フォーマル系に合わせるのはやはり難しいですね、何でも合うというわけにはいきません。

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いちばん上の写真は、一の橋の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。テーマはリング装飾です。紬と合わせたときに、久米島紬や結城紬など濃い地色の一見地味な着物に良く合っていたので、その発想で、濃い地色で色も模様の量も少ないながら、価格も質感も重厚な倉部さんの付下げに合わせてみました。帯が花の模様ですから、植物文を避けてみました。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。テーマは唐花で霞取りにしてあります。制作者も技法も上の作品と同じですが、上の作品がリングの形の中に装飾が閉じ込められて凝縮する意匠なのに対し、こちらは霞取りのため拡散する意匠ですから、その分、模様面積が広く感じて得した気分です。

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写真3番目は、花也の付下げを合わせてみました。テーマは紐です。曲線を使った抽象的な模様ということかもしれませんね。帯の花模様を邪魔しない、ということで選んでみましたが、紐の文様というのは、あらゆる個性のある帯に合わせることができる便利な帯のようです。また、ここで初めて明るい地色を使ってみましたが、けっこう良い感じです。

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写真4番目は、花也の付下げを合わせてみました。テーマは竹林です。この竹には笹の葉もなく、ただ節があるばかりですから、直線を使った抽象的な模様ということかもしれませんね。帯の花の茎の色に通じる地色です。
[ 2015/08/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせ

三千百六十六回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせです。

今日は着尺(小紋)ですが、縞と格子を使ってみます。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。グレー、茶、紺という渋い色を組み合わせた格子です。こんな配色、こんなパターンの着物は、北斎の美人画にも描かれています。江戸時代の粋で渋いというのはこんな感じなのかもしれませんね。講師は手描きタッチですが、型だと思います。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。縞の地紋がある生地に対し、手描きの蝋で防染して、ラフなタッチで彩色したものです。きちっとした織りの縞の上に、手描きのよろけ縞が重なるという面白さを狙ったのでしょう。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。変則的な格子模様で、手描きタッチのよろけ模様です。防染は蝋によるものと思われますが、手描きか型はわかりづらいです。

見分けの方法としては、癖の強いよろけ箇所をチェックして、そのパターンが繰り返すか調べるのです。繰り返さなければ手描きですし、繰り返すなら、その繰り返しの距離が型紙の長さです。

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写真4番目は、藤井絞の着尺を合わせてみました。有松絞の1つで、縫い締めではない絞りによるものです。ラベルには「立巻絞」とありますが、技法を指しているのか商品名に過ぎないのかわかりません。

元々、絞りというのは生地を糸で縫い締めて防染したものですが、明治時代には、縫い締め以外の技法が多数考案されました。今人気のある「雪花絞」もその1つで、技法としては「板締絞」ということになります。技法としては「板締絞」、意匠としては「雪花絞」で、両方で特許(実用新案)を取っていたのです。もちろん現在は切れていますが。

縫締め以外の技法が発明されたことで、有松絞の技法は一気に増えたのですが、もっとも貢献したのは鈴木金蔵という人です。この人が丸太に生地を巻き付けて防染する「嵐絞」を考案し、その巻き方によっていろいろな絞りが生まれました。それらの絞りには、技法と意匠と両方の言い方があるわけです。またそれ以外の技法も多く発明され、そこからまた違う意匠が生まれ、さらに違う技法から似たような意匠が生まれてしまったり、よくわからないことになっています。以前、分類しようと思いつつ断念したことがあります。

それについては、ホームページ本体の「繍箔絞」の「有松絞」に痕跡が残っていますが、途中で断念したため、結論無しで終わっています。
[ 2015/08/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせ

三千百六十五回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせです。

今日は着尺(小紋)に合わせてみます。野口の着尺を使っています。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。飛び柄で模様は短冊形、短冊の中の模様は金描きの華文です。帯は花模様そのものですから、着物は花模様でない方が良いでしょう。色についても、帯は大胆ですから、着物は大人しくしてみました。模様のテーマについては、あまり和モノではない方が良いと思いますが、短冊型が多少日本的でしょうか。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。飛び柄で模様は気球、色は多色です。帯の花模様に対して、着物は花模様でないし、模様のテーマについては、気球ですから和モノではないです。色については、普通は染物の方が色が淡いものですが、このばあいは帯も着物も、同じぐらい強いですね。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。ほとんど花と分らないぐらいの抽象的な花文です。多色も模様ですが、染物は織物より色が淡いので、色が直接競争することはないですね。色がかわいいですから、年齢相応の人が着れば合うと思います。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。濃い地色の総柄の小紋です。ロウケツのようなタッチです。昨日、焦げ茶色の久米島紬を合わせましたが、それと同じような感じになると思います。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。一般には帯合わせしにくいといわれる多色のしつこい更紗です。帯合わせとしてよいか悪いか、人によって意見が異なるところだと思います。帯の模様に余白があるので、なんとか合っているのではと思います。

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写真6番目は、野口の着尺を合わせてみました。世間では大胆な、野口にとっては普通の横段の着尺です。野口の横段の着尺は、華やかで、ちょっと訪問着的なスペシャル感があるので、パーティー着として使われることが多いです。

ただし、帯合わせは着尺の中でいちばん難しいですね。今回は、無地の部分に帯を載せていますが、柄の部分に載ることもあります、そうなるとさらに難しいですね。
[ 2015/08/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせ

三千百六十四回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の帯合わせです。

今回の帯は、袋帯というフォーマルな形式でありつつ、フランスの壁紙のようなデザインということで、カジュアルな雰囲気もあります。そのような帯は帯合わせしにくいとも考えられますが、帯合わせの範囲が広いと考えることもできます。今回は後者のような発想で、訪問着から紬まで合わせてみようと思っています。

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いちばん上の写真は、結城紬と合わせてみました。かつての重要無形文化財の証紙のあるもので、八十亀甲の総柄です。全体が幾何学模様の配置になっています。地味な着物に地味な帯、派手な着物に派手な帯というような組み合わせで考えるなら、地味な着物に派手な帯の組み合わせです。このような組み合わせは、帯に視線が集中しますから、帯を見てもらいたい時に向いていますね。

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写真2番目は、久米島紬を合わせてみました。細かい格子模様の久米島紬で、大きな絣に比べると地味な着物ということになります。焦げ茶色の地面にパッと華やかな花が咲いたみたいな印象です。

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写真3番目は、久留米絣を合わせてみました。久米島紬の焦げ茶と赤の組み合わせは、とてもきれいに合いましたが、赤とは補色関係の青系はどうでしょうか。こうして見ると、藍の色とも合いそうですね。元がフランスのデザインということで、トリコロールに戻ったというとこでしょうか。

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写真4番目は、石下紬の無地を合わせてみました。赤とピンクというかわいい色どうしまとめて、若い人用にしてみました。まあ基本の帯合わせパターンの1つですよね。

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写真5番目は、小岩井工房の上田紬を合わせてみました。小岩井工房というのは、池内淳子さんなどかつての有名女優さんたちが愛好した紬としても知られています。とても都会的な雰囲気の紬で、どんな帯でも合ってしまうのですが、赤のポピーにも対応してますね。
[ 2015/08/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(4)

紫紘の袋帯「ポピー」の細部

三千百六十三回目は、紫紘の袋帯「ポピー」の細部です。

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いちばん上の写真は、赤いポピーと赤白のポピーの近接です。

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写真2番目は、赤いポピーの拡大です。鮮烈な赤と白のコントラストがこの作品のテーマみたいなものですが、この鮮烈さは色から来るだけではありません。白は地の組織であるのに対し、赤は絵緯糸(えぬきいと、織物の構造や強度に貢献せず、模様表現のためにだけある緯糸)による表現であり、立体性があるのです。

こうして拡大してみると、サスペンスドラマで床に血が流れてくるように見えるでしょう。そんなことを書くと、実際に買う人は嫌かもしれないですが、そのぐらい人間の感性を揺さぶる要素が無いと良い作品にはなれないですよね。

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写真3番目は、茎の拡大です。右側の赤白のポピーの茎を拡大したものです。茎に濃淡2種類の色があることは普通に見てもわかりますが、それを拡大してみると、薄い方は普通の絹糸、濃い方はポリエステルフィルムであることがわかります。両者の違いは光沢、すなわち絹の自然な光沢とポリエステルの人工的な光沢ですね。

ドラマの演出に例えれば、自然をそのまま撮っているかに見えて、じつは特撮も併用している、ということです。

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写真4番目は、白いポピーの拡大です。地の組織も白、花も白で色が同じですから、両者の違いは立体性しかありません。花の輪郭線がちゃんと見えるか、少し心もとないと思ったのか、両者の境界には銀糸が織り込んであります。

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写真5番目は裏側です。裏は緑と銀に見えます。緑は、色が薄い方の茎の色ですから、わずかな茎の表現のために全体に渡り糸が通っていることになります。もっと驚くのは銀色に光っていることで、白いポピーの花の輪郭線に使う僅かな銀色の表現のために、全体に銀糸の渡り糸が通っているのです。

これは作り手にとっては、相当のコストアップ要因です。白いポピーに銀糸の輪郭線が無くては、絵として絶対成り立たないというわけではないのですから、銀糸を省略してコストを減らすこともできたはずです。それで値下げした方が売りやすかったかもしれません。私が制作者なら銀の輪郭線などやめてその分値下げするんじゃないかと思います。でも紫絋さんはそうしなかった、ということです。どちらが正しいかはわかりません。
[ 2015/08/03 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「ポピー」

三千百六十二回目の作品として、紫紘の袋帯「ポピー」を紹介します。

先日、大羊居の帯合わせで先に紹介した作品です。紫絋の社長のお嬢さんが制作したもので、フランスのデザインに取材したものということですが、まさに見たとおり、という感じですね。赤と白のコントラストが美しく、それが作品の命ですが、それは身に着けなければならない和装品としては年齢制限にもなり、諸刃の剣にもなります。

年齢幅を広げるには、赤系でも、もっとくすませればいいのですが、そうすると作品の意義もくすんでしまいます。そういうときは、この色のまま、小売店が努力して顧客を探せばいいのだと思います。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は、腹文です。

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写真3番目は、お太鼓でも腹文でもない部分です(全体は六通)。

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写真4番目は、お太鼓の近接です。
[ 2015/08/03 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(2)