花也の単衣~夏の刺繍の名古屋帯「投取横波京変繍」

三千百二十九回目の作品として、花也の単衣~夏の刺繍の名古屋帯「投取横波京変繍」を紹介します。

花也のオリジナルの生地に対して、友禅と刺繍をした名古屋帯です。花也といえば、糊糸目の美しさがウリですが、別の作風にもチャレンジしていて、この作品もその一点です。このような刺繍を主役にした作品は、2015年2月7日、2月19日、5月15日にも紹介していますので、このブログでは4回目ですね。4回目にして夏物の登場です。

生地は花也がオリジナルとして織らせたもので(最低ロットは30反で、それ以上発注すればオリジナルが作れるそうです)、沖縄の織物のような花織と絽織が横段状になっています。一見すると、沖縄の珍しい織物か作家の創作織物に見えますが、こういうのも染下地として機械で織ってくれる白生地メーカーがあるんですね。

その生地に対して、友禅で抽象的な波の模様を描き、さらにその友禅をほとんど覆うように刺繍をしています。刺繍は、京都でしていますから京繍ですが、普段あまり見ることのない変繍です。

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いちばん上の写真はお太鼓です。生地は、絽織と花織がセットになって横段状になっています。その間に抽象的な波の模様が友禅と刺繍とで表現されています。お太鼓では波は3段ですね。

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写真2番目は腹文です。写真は腹文の全体で、名古屋帯として仕立てる時は半分に折りますから、実際の見えるのは半分です。お太鼓では、横段の地模様に対し並行な横段の波の意匠でしたが、構造上、腹文では地模様は縦方向になり、横波の模様は直角に交わるようになりますね。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。変わり刺繍のパターンがわかるように近接してみました。明日は、この刺繍部分を拡大してもっと分析してみますが、織物のように糸が経緯に交わるよな刺繍が多く、変わり織にも見えます。

しかし、生地は元々変わり織ですから、変わり織に見せかけた刺繍と元々の変わり織が混ざって見え、だまし絵的な効果があります。それこそがこの作品のテーマだと思います。
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[ 2015/06/30 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせ

三千百二十八回目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。夢の続きか朝の目覚めかといえば、もう別次元の帯合わせですね。朝起きたら革命が起きていて、別の国になっていた、ぐらいの刺激でしょうか。赤の疋田とグラデーションの甘えた感じはいきなり終わって大人が着られる着物になりました。

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写真2番目は、河村織物の「栄昌綴」シリーズの1本を合わせてみました。横段に七宝文を合わせた意匠です。織物というのは、経糸と緯糸で出来ているものですから、経糸と緯糸に異質な色を持ってくることで、曖昧な雰囲気や対立物を含んだ雰囲気を作ることができます。対位法を多用したワーグナーみたいな感じですね。

この帯は、地が綴組織で、横段状に白、オレンジ、水色、紫に色分けされており、その上に絵緯糸で七宝文が織りこまれているのですが、よく見ると七宝文はすべて同じ色です。しかし、地色が違うと七宝文もまた違うモノのように見えます。このような2つの旋律が重なって錯覚を起こすテクニックが人の目をだますので、目が覚めない帯合わせの仲間ですね。

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写真3番目は、おび弘(607,池口)の袋帯を合わせてみました。経と緯の縞を試したので、斜めも試してみました。この帯の端には、「杉本泰子」と名前が織り込んでありますが、この人は、おび弘のホームページにも載っていて、エース級の織り手のようですね。本業は綴のようですが、この作品は例外のようです。私は紫と水色の配色が大好きなので選んでみましたが、濁りのない透明感のある帯の色が、爽やかな目覚めをイメージさせます。

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写真4番目は、織悦の袋帯「霞に扇子」を合わせてみました。私の好きな水色を合わせてみました。霞の中に扇子が浮いていて、嫁の中そのものです。その一方、織悦らしい濁りのない透明感のある色が、爽やかな目覚めもイメージさせますね。

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写真5番目は、龍村の袋帯「錦秀遺宝錦」を合わせてみました。平家納経に取材したもので、俵屋宗達が修復した見返しの反っくり返った鹿がメインです。この鹿については、修復したというよりも付け加えたということでしょうか。多色の豪華な帯を合わせてみました。でも目覚ましの音と違って上品ですよね。

ヨーロッパの王様が枕元で音楽家たちに演奏させて起きる感じです。映画でそういうシーンありますよね。
[ 2015/06/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせ

三千百二十七回目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせです。

昨日の続きで、春の夢をそのまま見続けるか、目覚まし時計を鳴らして起きるか、そんなテーマで帯合わせをします。

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いちばん上の写真は、洛風林の袋帯「印度七宝」を合わせてみました。そのまま朝寝し続けるのも、ちゃんと目覚まし時計で起きて人との約束を守るのも良いですが、いちばん良いのは爽やかに起きることですね。意図してはいなかったのですが、この洛風林の帯はそんな健康的な帯合わせになりました。

濁りのない透明感のある色が良いのかもしれないですね。

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写真2番目は、しょうざんの徳田義三シリーズの袋帯「花兎文」を合わせてみました。金地に金で模様を表現した帯です。金地に金で描いたら絵が見えないだろうと思われますが、微妙な色と立体感で模様を表現しています。模様が立体的なのは、ポリエステルフィルムの平金糸を捩って使っているのです。その辺の創作性はやはり徳田義三ですね。

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写真3番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。目覚まし時計で無理やり起こされた感じに合わせてみました。帯の青と着物の紫の地色の合わせが面白いので、不快ではありませんけどね。

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写真4番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文を合わせてみました。タイトルに「厳島」とあるので、平家納経がテーマだとわかります。平家納経といえば、鹿が反っくり返ったような絵が有名ですが、平家納経は30巻ぐらいあって、その表紙や見返しに装飾があるので、西陣の帯屋としては図案の材料はたくさんあるのです。

平家納経は平清盛が奉納したものですから、平安時代の末期すなわち王朝文化の美意識が最高に高まって終わりが始まる時代のものです。鳥はおおらかに飛んでいて、夢の続きのようです。織悦らしく色は濁りが無く透明で、やがてさわやかに目覚めるのでしょうが。昨日も織悦の帯を試しましたが、織悦の良さは透明感のある色だと分りますね。
[ 2015/06/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせ

三千百二十六回目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の帯合わせです。

フォーマル方向かカジュアル方向か、和モノかエキゾチックものか、たとえどんな帯を合わせるにしても、この着物の帯合わせの基本方針は2通りですね。春の夢のような雰囲気をこのまま続けるか、目覚まし時計を鳴らして起きるかです。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「彩悦錦」シリーズの1本「亀甲菊枝文」を合わせてみました。春を思わせる瑞々しい柳と秋を思わせる菊枝は逆じゃないかと言われそうですが、夢のような曖昧な雰囲気を続けさせるてくれる相手として選んでみました。帯の本来の地色は青なのですが、地の全体に緯糸として平金糸が織り込まれていて、地色は青と金の中間の色という曖昧で不安定な状態になっています。それが夢の続きのように見せているんですよね。

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写真2番目は織悦の袋帯「光琳水」を合わせてみました。柳といえばたいていは川端に生えているものですから、帯の意匠には水が省略されていると考えて、帯で水の意匠を補ってみました。織悦の色は透明感が有って、曖昧なところがありませんから、目覚まし的なところがありますね。しかし色自体は紫系が共通ですし、よく調和しています。爽やかな目覚めと言ったところでしょうか。

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写真3番目は、北村武資の袋帯「連珠七宝文」を合わせてみました。北村武資の経錦の帯で、複雑な模様なのに古代の織物のように経糸の浮沈だけで模様を表現しています。ただ赤い色の模様だけが現代の西陣らしく絵緯糸による表現になっていて、そこだけ糸が浮いていますから、アイキャッチ的な効果があります。北村武資は経錦の人間国宝ですが、現代の西陣の要素も1か所だけ入れているんですね、

今回選んだ理由は色です。地色が珍しい黄色(辛子色)なのです。黄色って着物にも自動車にもあまりないですよね。不思議な感じということで、夢の途中の仲間に入れてみました。

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写真4番目は、帯屋捨松の袋帯「牡丹唐草文」を合わせてみました。牡丹唐草は名物裂の金襴手として、いちばん有名なものですね。それを太い引き箔の糸でストレートに表現したものです。糸自体は本金でなくポリエステルフィルムを使っていますが、これは耐久性を考えたものでしょう。表面の擦れる位置にある太い引き箔の糸が和紙の本金だったら、着付師さんが嫌がると思います。

その代わり地がすごく凝っていて、細い本金の引き箔の糸を多用し、ピンクと白(銀)の不思議なグラデーション効果を演出しています。そのグラデーションのために、夢の途中の仲間に入れてみました。
[ 2015/06/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の細部

三千百二十五回目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の細部です。

今日は、蹴鞠以外の場所に近接してみました。

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いちばん上の写真は、柳、雲の輪郭、グラデーションを撮ってみました。この作品の魅力は、主役の蹴鞠ではなく背景の脇役たちが作る雰囲気にありますね。

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写真2番目も、柳、雲の輪郭、グラデーションを撮ってみました。柳の黄緑が瑞々しいです。

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写真3番目は、柳だけが見えるように撮ってみました。柳の葉に濃淡のような染めムラのように見えるのは、地紋のためです。地紋は、生地に厚いところと薄いところがあるわけですから、染料の含みが違うのでしょうか、あるいは、生地に凹凸があるので、光の反射が違い、それが色の違いに見えるのでしょうか。

地紋による色の濃淡は、シンプルな意匠を内容の濃いものに見える効果がありそうですね。

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写真4番目は、地紋がわかるまで近接してみました。鹿と草花です。地紋のある生地をグラデーションにすると、生地の凹凸による染料の含みの違いや、光の反射が違いによってグラデーション効果が増幅されます。グラデーションによる色差も大きくなり、領域も広くなるみたいですね。グラデーション表現を主役とするこの着物には、このような複雑な地紋のある生地が必要だったということです。

私は、初めてこの作品を見たとき、すごく気に入ったのですが、刺繍が手刺繍かミシン刺繡かという点は妥協したくなかったし、赤い疋田の色は、作品を春の夢のように見せるという点では貢献しているものの、商品としては年齢的に厳しいので、小豆色に替えたいと思っていました。紫と小豆色というのは、大人っぽい色気があるのです。

しかしこの地紋の白生地がなかったのです。普通の生地では、グラデーション領域が普通になり、これほどの効果は上げられません。いろいろ考えた結果、私はグラデーション効果の方を選んだのです。作品も人と同じで、正しい性格に変えてやる、なんて思っちゃあいけませんね。今は、一の橋の会長が最初に発想したままのを手に入れて良かったと思っています。
[ 2015/06/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の細部

三千百二十四回目は、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」の細部です。

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いちばん上の写真は、赤い型疋田の蹴鞠を近接で撮ってみました。

この作品では、蹴鞠の周囲にふんだんな刺繍がしてあります。京友禅のあしらいでは、普通は後姿にまで刺繍はしませんが、この作品では思い切りしています。じつはこの刺繍は、私としては不本意ながらミシンによるものです。手描きの京友禅の部分的なあしらいで、意匠自体がよくできている場合、裏を見ないかぎりミシンとはばれないと思います。

なぜミシンかといえば、大量にする必要があったからだと思います。この作品はグラデーション表現が主役ともいえるもので、そのために全体が春の夢であるような非現実感を持っています。朝、目がさめきらない時間のような心地よさが作品のテーマではないかとさえ思えます。

それに対し、金糸の刺繍は団子の串のような役割を果たしています。この串が弱いと、団子がバラバラになってしまうのです。たとえて言えば、自動車のデザインで、全体が局面でありながら、後部のピラーだけが垂直に屹立しているようなものとか、かな文字の短歌や俳句のなかに、漢字の専門用語やカタカナの外来語が1つだけ入れられているものですね。

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写真2番目は、さらに近接してみました。このような型疋田は、中井さんのばあい、その都度、周囲の形に合わせて作成していたとのことです。その場合、絞りの疋田よりコスト高だったのではないかと思います。普通のばあいは、汎用性のある四角い疋田の型を持っていて、周囲を模様の形に防染して使うようです。縁の絞りの抜けの表現は、手で染めつぶします。

このように近接でよく見ると、型とは言え、疋田の形は微妙に違って上手にデザインされていることがわかります。

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写真3番目は、白い摺箔の蹴鞠を近接で撮ってみました。赤い蹴鞠の型疋田に対して、白い蹴鞠は摺箔の表現で、京友禅の脇役が顔を揃える演出になっています。テレビドラマで、この人がいなくちゃ、という男女の脇役が両方いる感じです。そういうお約束も大事ですよね。

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写真4番目は、さらに近接してみました。細密な友禅もされていて、やはり一の橋の作品だなあと再認識しますね。ミシン刺繍とのアンバランスが理解不能ですが、この友禅があるからこそ、ミシン刺繍でもばれないとも言えます。

明日はさらに細部を。
[ 2015/06/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」

三千百二十三回目の作品として、一の橋の付下げ「柳に蹴鞠」を紹介します。

一の橋といえば、千切屋治兵衛、京正、花也と同じく、ホンモノの糊糸目をウリにしていて、職人の技を見せつけるようなものが多いですが、この作品は正反対で、職人の個別の技よりも、意匠のおおらかさ、色の優しさを感じます。野口が上品になったような感じですね。

これは会長自身の指示による作品ということです。普通の社員が作ると一の橋らしいものしか作れませんが、会長は誰にも気兼ねが要らないので、一の橋らしくないものもつくれるのでしょうね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。1つ1つのモチーフが大きくて、種類が少ない場合(柳と蹴鞠の2つだけ)、全体としておおらかな雰囲気になるように思います。また、ぼかし(ようするにグラデーション効果ですよね)を多用すると、色どうしが優しく馴染み、それもおおらかさに貢献するようです。

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写真2番目は後姿です。おおらかさを感じる要素としては、柳も貢献していますね。風になびく柳だからおおらかなので、狩野永徳の屏風みたいに力強い松の枝であれば、全く反対かもしれません。

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写真3番目は袖です。雲には、一応、糸目による輪郭線があります。輪郭線とグラデーション表現という、本来相反するものが併存しているのが珍しいですね。私であれば、くっきりしたところは糸目による輪郭線、曖昧にしたいところは暈しというように使い分けると思います。両者を併用するなんて思いつかないです。

絵画としてみれば、鉛筆でくっきり輪郭線を描きつつ、水彩絵の具でぼかすという表現はありますよね。その描き方を染色に応用したということでしょうか。

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写真4番目は胸です。いちばん上の写真で、オクミの反対側に少しだけ柄が写っていますが、それが衿の柄で、この胸の柄につながります。上半身の柄が生地の縫い目を越えてつながると実質的に訪問着になりますね。
[ 2015/06/24 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせ

三千百二十二回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせです。

今日は、昨日の続きで、紬に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、黄八丈(黒八丈)を合わせてみました。やはり紬に合わせる時は、黄八丈にも合わせてみたいですね。

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写真2番目は、新田機業の紅花紬を合わせてみました。山形県の紅花紬は、経産省が伝産マークの指定をする際に置賜郡の紬として分類されました。今回の帯は、生成りの色に墨描きという色彩の少ない作品ですが、綺麗な色も合うか試してみました。

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写真3番目は、白鷹紬を合わせてみました。白鷹の織物といえば、本塩沢によく似た白鷹御召が知られていますが、手紡ぎ・手織りの白鷹紬も織られています。触ってみるとすぐに真綿とわかる手触りですが、素朴な雰囲気に合うか試してみました。

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写真4番目は、舘山の唐桟を合わせてみました。斎藤頴さんのものです。

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写真5番目は、秋山真和の首里の織物を再現した作品を合わせてみました。
[ 2015/06/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせ

三千百二十一回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせです。

生地は、はじめから染下地として織られ、京都の染屋に納められるものですから、当然機械で織られているものです。しかし薇を織り込んでいることで、民芸的な雰囲気があります。だから、合わせる着物は当然、紬ということになります。

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いちばん上の写真は、結城紬の縞を合わせてみました。かつての重要無形文化財の証紙のあるものです。紺の濃淡ですから鰹縞ですね。民芸調の蕨の生地、プロの画家による精緻な墨描き、真綿の紬の組み合わせですね。横段と縦縞の関係になりますが、横段ははっきりしていないので違和感はないですね。

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写真2番目は、紺仁の片貝紬を合わせてみました。上の例とよく似ていますが、こちらの真綿の方が糸が太くて、さらに民芸っぽいですね。結城というのは、真綿を使いつつ、人間の出来る限界まで精緻なんですね。

紺仁の「片貝木綿」は機械織りの木綿の縞で、センスも良くて人気があります。値段がリーズナブルなのに安モノ感が無いのは、シンプルな木綿の縞として、やれることしかやっていないのでモノ欲しそうな感じがないからだと思います。

しかしそこに陥穽があって、じつはメーカーは、使い勝手の良い機械織りのシンプルな商品を出しながら、その上に真綿の手織りのホンモノバージョンを出していたのです。庶民の味方と思わせて、ちゃっかりお金持ちの味方もしているんですね。ブランド政策の鑑だと思います。

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写真3番目は、大城織物工場の琉球絣を合わせてみました。大城織物工場は南風原町にあって、大城カメの工房として知られていますが、今は孫の哲さんの時代です。格子の中に絣という形式は、沖縄織物の基本パターンで「手縞」と言います。また格子は、碁盤の意味のグバンといいますね。

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写真4番目は、重要無形文化財の久留米絣を合わせてみました。小川内瀧雄さんのものです。藍染も木綿の絵絣も合いますね。

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写真5番目は、大城永光の琉球絣を合わせてみました。縞の間に絣という形式は、沖縄織物の基本パターンで「アヤノナカ」と言います。赤系の着物でも合いますね。
[ 2015/06/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯の細部

三千百二十回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯の細部です。

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いちばん上の写真は、葡萄ですね。

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写真2番目は、雪輪の中に蝶と花です。

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写真3番目は、楓と雪輪に蔦です。

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写真4番目は、辻が花のありがちな花です。藤も辻が花のレギュラーですね。

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写真5番目は、生地の概略がわかるように撮ってみました。産地は小千谷で、藤井絞のマークが入っているので、藤井絞が別注したことがわかります。
[ 2015/06/21 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯

三千百十九回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯を紹介します。

薇を横段状に織り込んだ生地を使った名古屋帯です。蕨を織り込んでいないところに模様を入れて、全体を横段の意匠にしていますから、生地と加工を連携させた作例ですね。模様は墨描きによる描き絵のみですが、上杉謙信所用の辻が花小袖にも描き絵のみという作例がありますから、これもまた辻が花ということになると思います。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は腹文です。基本的にはお太鼓と同じなので、模様が横倒しになっています。

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写真3番目は、生地の拡大です。蕨を織り込んだ部分を拡大してみました。こういう織物は作家モノか産地の伝統工芸品みたいですが、染下地として機械で織っている業者もあるということです。もちろん普通の白生地よりずっと高いですが。

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写真4番目は、模様の近接です。友禅染の糊置きは、失敗したら水に流すこともできますが、墨描きの描き絵は消せないですから一発勝負で、作者にとっては難易度が高いと思います。この作者はとても上手いので、明日はもっと別の部分の近接をお見せします。
[ 2015/06/20 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせ

三千百十八回目は、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。上代158万円と言う「たつむら」ブランドとしては、特に高いものです。タイトルに「音」があるのが面白いですが、波の音が聞こえるぐらい迫真の表現をしたぞ、という意味でしょうね。

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写真2番目は織悦の袋帯「亀甲菊枝文」を合わせてみました。現代では、喜多川俵二が得意にしているような有職織物である二陪織物ですね。水色の地に対し、絵緯糸として金糸が入っており、不思議な光沢のある色調になっています。

水色と金が混じって見えるというのは、他の作家の有職織物にはない織悦独自の不思議な感覚ですが、そのことで、いろんな色の着物に対して合いやすくなっていると思います。

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写真3番目はかのう幸の袋帯「菱菊に雪持ち柳」を合わせてみました。

現存する「雪持ち柳胴服」に取材して袋帯にしたものです。本歌は背中に1つの大きな雪持ち柳が刺繍してあり、袖に織物の菱菊文があります。それをすべて唐織にして、松を加えて石畳模様(市松模様)に配しているわけですから、帯として作品化するにあたってはかなりアレンジしていることになります。

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写真4番目は、河合美術織物の「立華蒔絵菊文」を合わせてみました。河合美術織物には、昔から手織りと機械織りがあって、「西陣手織りの証」の有無によって判別できるようになっています。これは希少な手織りバージョンで、手織りというだけでなく、糸も本金の引き箔を使っています。

古着で河合美術を買おうとする人にとっては、両者の見分けは是非したいところですね。しかし西陣手織協会の証紙は保存されていないでしょうし、端がかがってあるので裏が見られなければ、本金引き箔かどうかもわかりにくいです。そういうときの見分けの方法は意匠です。わかりやすく言えば、変な柄なら手織り、良い柄なら機械織りです。

この帯にしても、菊だけがしつこく並んでいて、良い柄かと言われれば微妙なところでしょう。機械織りのばあい、ロットが大きいのでみんなに好かれる意匠が選ばれるのに対し、手織りはロットが小さいので少数の人に好かれればいいからです。
[ 2015/06/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせ

三千百十七回目は、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせです。

昨日は、いつも通り、マエミの模様と袋帯のお太鼓を合わせてしまいましたが、よく考えたら間違いですね。普通の着物は、後姿の模様は前姿の模様のダイジェストに過ぎないので、特に問題はないのですが、前後の模様が違う場合は大問題ですね。というわけで、今日からは後姿の模様に合わせます。

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いちばん上の写真は、坂下織物の「御門綴」シリーズの1本、「蜀江錦」を合わせてみました。日本の花鳥風月の文化とは対照的な、皇帝がいる中国らしいガチっとした構成を持った意匠です。古代から明代まで織りつづけられた意匠ですから、中国を代表する織物だと思います。もっともフォーマルな席を意識して帯合わせしてみました。

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写真2番目は帯屋捨松の袋帯「桃山立沸華文」を合わせてみました。近世の唐織による能衣装に取材したものです。薄いピンク色の地色に対し、いきなり濃い茶色の銚子がアイキャッチになって美しい着物なので、そのアイキャッチの色に対応する濃い地色の帯を合わせてみました。

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写真3番目は梅垣の袋帯「蒔絵花鳥文錦」を合わせてみました。梅垣織物の最高級シリーズの1本です。同じぐらいの高級感、ということで選んでみました。昭和58年から毎年1本ずつ18本織られたとのことですが、同じ高級品でもブランドのバッグなどに比べると、西陣はものすごく少ないんですね。

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写真4番目は、龍村の「海老殻間道」を合わせてみました。薄いピンク色の着物は、茶色か焦げ茶色の帯を合わせると、年齢幅が広くなりますね。

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写真5番目は池口の袋帯「佐波理つづれ」シリーズのごく初期の作品「御簾」を合わせてみました。実質的に間道に見えますが、垂れの部分が御簾が風でめくれる意匠になっています。
[ 2015/06/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせ

三千百十六回目は、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の帯合わせです。

今日は、なんとなく意味的なつながりがありそうな帯を合わせてみました。実践的な帯合わせで大事なのは、色や雰囲気あるいは季節で、意味はどうでもいいということが多いです。しかし、江戸時代の小袖をみますと、表面的には風景でありながら、じつは謡曲や源氏物語のような文芸テーマが隠されているものが流行った時代もあり、当時の人はQさまみたいなクイズ番組のように楽しんでいたんじゃないかと思います。

それもまた着物の文化の一部だったのでしょう。というわけで、今日は、帯合わせを理屈を考えるゲームと考えて帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。前姿では神さまにお供えをしていて、後姿では氏子が酒宴をしているということですから、帯では神さまに流の姿で登場してもらいました。龍神さまは水の神で、収穫の神とは違うのかなあ。

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写真2番目は龍村の袋帯「錦秀遺宝錦」を合わせてみました。平家納経をテーマにした帯で、厳島神社に奉納されたものですから、神社つながりで選らんでみました。厳島神社は収穫の神じゃないよ、と言われてしまえばそれまでですが。

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写真3番目は龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。「お酒を飲んだら踊りでしょ」という発想で合わせてみました。西域の舞踊手たちも遊んでいるわけではなく神さまに捧げる踊りを踊っているんじゃないかと思いますし。イスラム以前の西域の神さまって誰か知りませんけど。

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写真4番目は帯屋捨松の袋帯「鳴子」を合わせてみました。収穫というテーマで合わせてみました。収穫をもたらすのは神さまのおかげですが、人間もまた鳴子など考案して収穫を守ってきました。
[ 2015/06/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の続き(制作は倉部)

三千百十五回目は、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の続きです。制作したのは倉部さんです。

今日は後姿を紹介します。前姿の模様と後姿の模様の関係も見どころの1つです。たいていは後姿の模様は前姿のダイジェスト版に過ぎないことが多いですし、草花模様のばあいは、前も後もつながっているのが普通ですが、たまにそうでない作品に出会えます。一見違っているように見えながら、意味的なつながりがあったりすると良いですね。

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いちばん上の写真は、後姿の全体です。

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写真2番目は近接です。後姿のテーマは両口銚子でした。

銚子はもともとは、酒宴に用いる長い柄のついた器を指しました。大勢で酒盛りをする時は両口で、左右の口から盃に注ぎます。 ときどき骨董のオークションで見るので、コレクションしている人もいるのでしょうね。素材は根来と鍍金とがあり、鍍金のものは、この作品のように模様が彫られています。文化財として有名なものは神社に伝世しているようです。

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写真3番目はもっと近接です。鍍金両口銚子の模様は楓の唐草模様です。桔梗かとも思いましたが、花芯ではなく葉脈があるので楓だろうと思います。

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写真4番目は、刺繍の立体感を際立たせるため、斜めから撮ってみました。柄の部分の金糸の駒繍の立体感がわかっていただけるとありがたいです。

ここで改めて、いちばん上の写真と見比べてみると、銚子本体の茶色がすごく強く、それがアイキャッチポイントになっています。この部分が、前姿にない魅力です(反対に言えば、前姿には刺繍の技はありますが、アイキャッチポイントが不足していますね)。しかし、この茶色の強さの秘密は、純粋な友禅ではなく顔料が混ぜてあるのかもしれませんね。

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写真5番目は、刺繍部分を分かりやすくするため裏側から撮ってみました。銚子の内側は細い金糸の斜線で表現してありますが、裏側は激しくて、鑑賞者にはうれしいところですね。

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写真6番目は植物文の近接です。倉部さんの金描きは上手いですが、金描きというのは、友禅の糊のように洗い落とせないですから、一発勝負なので尊敬してしまいます。さらっと描いているようでも、絵として様になるというのは大変なことですし、同じ画題なら、昨日比較した大羊居の友禅と同じぐらいの価値があるんじゃないかと思っています。
[ 2015/06/16 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」(制作は倉部)の続き

三千百十四回目は、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」の続きです。制作したのは倉部さんです。

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いちばん上の写真は、酒器の部分を斜めから撮ったものです。刺繍は立体なので、斜めから見るとよくわかります。

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写真2番目は、酒器の部分を裏から撮ったものです。刺繍は裏に糸が渡っているので、裏から見るとよくわかります。酒器の模様の亀甲と紗綾形は全部刺繍という豪華さです。

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写真3番目は袖の模様です。金描きによる表現です。金描きによる表現です。もともと帯より下にだけ模様がある着物でした。私が指示して帯より上に金描きで模様を付けて訪問着にしたものです。刺繍と箔の着物の良いところは、友禅と違って完成後も模様が足せることです。倉部さんは最低限の模様だけを付けて販売し、購入者が色留袖や訪問着など選べるようにしています。

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写真4番目は胸の模様です。これも私の指示で金描きしたものです。萩と稲です。稲があるために、酒器は神に収穫を感謝するためのものだとわかります。

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写真5番目は、大羊居の付下げ「稔りの里」のマエミの模様です。大羊居の作品にも、同じような稲穂と萩の模様がありました。こちらは友禅による表現で、比較してみると面白いです。

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写真6番目は大羊居の付下げ「稔りの里」の前姿(マエミ+オクミ)です。大羊居のこの作品は、「過去の一点」に収録されています。まだ在庫としてありますので、いつか改めて紹介してみたいです。
[ 2015/06/15 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着「酒器」

三千百十三回目の作品として、千切屋治兵衛の訪問着「酒器」を紹介します。制作したのは倉部さんです。

テーマが「酒器」なんていう訪問着を着てパーティー会場にいると、よほど飲むつもりなのか、なんて警戒されそうですが、この酒器でお酒を飲むのは人間ではなく神さまですね。草花文の中に稲があるので、収穫を神さまに感謝する、そんなテーマの作品だと思います。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は、マエミの上の方の模様の近接です。

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写真3番目は、マエミの上の方の模様のさらに近接です。

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写真2番目は、マエミの下の方の模様の近接です。
[ 2015/06/14 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

野口の麻のカジュアルな縞の帯の帯合わせ

三千百十二回目は、野口の麻のカジュアルな縞の帯の帯合わせです。

昨日は浴衣に合わせてみました。浴衣には半幅(4寸)の博多の帯を合わせるのが基本ですから、八寸の麻の帯を合わせるのは、浴衣にとってはフォーマル方向の帯合わせということになります。今日は、浴衣でない夏のカジュアルな着物を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、小千谷縮を合わせてみました。小千谷縮には、無地、縞、経絣、緯絣、経緯絣と有って、値段も正直に段階になっています。これは経絣です。

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写真2番目は、近江ちぢみを合わせてみました。「秦荘上布」ブランドのものです。「近江ちぢみ」は、小千谷縮によく似た麻の着物ですが、値段は少しリーズナブルです。もともと近江上布の産地で、買いやすい着物を合理的につくっているんですね。

縞の着物に縞の帯を合わせるというのは、普通はしませんが、この場合はどうでしょうか。帯の縞が多色であるのに対して、着物は単色とし、縞の太さも変えてみましたが・・・

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写真3番目は、近江ちぢみを合わせてみました。開き直って、同じような多色の縞を合わせてみました。こういう帯合わせをする人は、まああんまりいないでしょうが・・・

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写真4番目は、夏結城を合わせてみました。「夏結城」は結城紬の夏物ではなく、小千谷の着物です。産地を騙っているのではなく、昔からこのネーミングで通っていて、少なくとも呉服屋さんでは、結城で織っていると勘違いしている人はいません。

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写真5番目は、野口の着尺を合わせてみました。カジュアルを意識して、紗の生地に洒脱な金魚と渦巻の柄を選んでみました。
[ 2015/06/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の麻のカジュアルな縞の帯の帯合わせ

三千百十一回目は、野口の麻のカジュアルな縞の帯の帯合わせです。

「カジュアル」の範囲には、浴衣から正絹の小紋まであって、けっこう幅広いものです。今日はいちばんカジュアルな浴衣を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、三勝の浴衣を合わせてみました。あまり浴衣らしくないデザインを選んでみました。焦げ茶色の地色で、大きな麻の葉の意匠です。

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写真2番目は、三勝の浴衣を合わせてみました。あまり浴衣らしくないデザインを選んでみました。茶色の地色で、正絹の小紋にありそうな意匠です。

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写真3番目は、三勝の浴衣を合わせてみました。紺の濃淡で、菊や桔梗の夏から初秋の花が描かれていて、伝統的な浴衣らしいデザインです。

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写真4番目は、藤井絞の雪花絞の浴衣を合わせてみました。近年大流行している雪花絞ですね。雪花絞というのは、有松に明治になって現れた量産を前提とした絞りです。「量産」と言っても明治時代の基準の「量産」で、モノを機械で作るのが当たり前の現代の基準では、手仕事の単品制作ですね。

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写真5番目は、藤井絞の縫締絞の浴衣を合わせてみました。雪花絞に代表されるような、強く折りたたんで器具で圧力をかけることで防染する絞りが現れる前の絞りは、模様になる部分を1つ1つ糸で縫い締めて圧力をかけ、防染していました。模様を1つ1つ縫い締めていたものを、折りたたんで器具で締めるようにしたところが簡略化であり、明治時代における量産だったのです。

この作品は、その有松絞よりさらに前の辻が花の様式を引き継ぐものです。すなわち、花とか雲とか表現したい具象的な模様があって、それを目指して工夫しながら縫い締めの方法で絞っていくものです。これは同じ絞でも有松の文化ではなく、京都の文化ということになりますね。
[ 2015/06/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の麻のカジュアルな縞の帯の別の柄

三千百十回目は、野口の麻のカジュアルな縞の帯の別の柄を紹介します。

昨日紹介した野口の麻のカジュアルな縞の帯には、別パターンもありますので、2種類紹介します。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。色の入る部分を市松のように配置したパターンです。突き詰めて言えば、色の入る部分の面積を半分にしただけですが、作品は縞から市松になりますし、意味も雰囲気もすごく変わりますね。

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写真2番目は近接です。この作品は、手描きと思われますが、仮に型染で縞の着物を作る場合、このようなパターンにすると型継ぎが不自然になりませんね。作る側の知恵ですね。

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写真3番目は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。昨日紹介した作品と同じではないかと思われるでしょうが、昨日の作品は腹文まで縞が通っていますが、今日の作品はお太鼓と腹文とで縞の向きが違います。仕立てる前の丸巻の状態で見た場合、お太鼓は縞、腹文は横段に見えます。

しかし仕立てて実際に着付けると、全部つながった縞の帯は、お太鼓が縦縞ならば、腹文は横段になります。丸巻の状態でお太鼓は縞、腹文は横段の帯は、仕立てて実際に着付けると、お太鼓も腹文も縦縞になります。当たり前のことですが、私はどちらを仕入れるか迷って両方仕入れたのです。業者は2本仕入れれば済むことですが、ユーザーは双子の歌手でないかぎり、帯を2本同時に使うわけにはいかないので、どちらにすべきか迷うと思います。

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写真4番目は、上の帯のお太鼓辺りと腹文辺りを並べてみたところです。このようなパターンだと実際に着付けたときは、全部縦縞になるわけです。
[ 2015/06/11 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

野口の麻のカジュアルな縞の帯

三千百九回目は、野口の麻のカジュアルな縞の帯を紹介します。

野口が、毎年夏物として制作する麻のカジュアルな帯です。手描き、型染、絞りなどいろいろな技法のバリエーションがあって、なんとか市場でも売っていますね。私は各種の縞を選んで仕入れています。このブログでは、製造業者への配慮で値段は書けませんので、値段についてはなんとか市場を参考にしてください。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

このようなリーズナブルな値段の縞を見ると、型染なのか手描きなのか気になります。このような手描きの揺らぎのある縞を型染すると、型の継ぎ目をぴちっと合わせるのは難しいですから、どうしても型継ぎが現れます。しかし、この作品では型継ぎが見えません。その一方で、縞の継ぎ目が各所に見えますね。

このようなハンドペイントのナチュラル感をテーマにした作品のばあい、手描きっぽい凹凸を生かして型染しようとすると、精緻な技が必要になります。であれば、正直に手描きしてしまった方が合理的なようです。

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写真2番目は近接です。縞の継ぎ目が見えますね。

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写真3番目は拡大です。上の写真の緑の濃淡の部分です。
[ 2015/06/10 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせ

三千百八回目は、千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせです。

今日は染め帯で合わせてみます。友禅という技法は、多色性と絵画性が高いというところが長所ですから、金糸の刺繍のみの倉部さんの付下げに対しては、色彩と絵画性・物語性を補う帯合わせになりがちです。

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いちばん上の写真は、加賀友禅作家・中町博志の友禅の名古屋帯「重陽」を合わせてみました。染めの帯物を合わせるということを思い切り意識して、もっとも色彩と絵画性にあふれた帯を選んでみました。反対物で補うという考えが強すぎると、異質すぎて乖離するということがよくわかりますね。

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写真2番目は、北秀の刺繍と箔の塩瀬地袋帯を合わせてみました。上の例と反対に、金銀糸の刺繍と金彩だけ、模様も抽象的な、同質のものどうしで合わせてみました。模様も絵画的とは言えませんが、適度に面白味もありますね。他人に勧めるとしたら、こんな帯合わせがいいかなあというところ。

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写真3番目は、花也の友禅の名古屋帯「湊取り琳派松梅」を合わせてみました。このような鋭角の三角形の取り方は、江戸時代の小袖の意匠にもあって、所蔵する博物館の学芸員が「湊取り」を名付けています。いちばん上の例と2番目の例の中間を狙ってみました。適度な色彩、適度な絵画性です。しかし鋭角三角形の取り方のおかげで、十分に個性を感じます。

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写真4番目は、一の橋の友禅の名古屋帯「薬玉」を合わせてみました。これも、いちばん上の例と2番目の例の中間を狙った例です。色彩は抑えられていますが、絵自体の存在感はありますね。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯「松重ね」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。中井淳夫さんの甥ですね。元絵は乾山の陶器の筥です。これも、いちばん上の例と2番目の例の中間を狙っています。乾山のデザインですから、シンプルながらデザインとしては秀逸ですね。十分な余白がとってあるという点では、着物との同質性も感じます。
[ 2015/06/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせ

三千百七回目は、千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせです。

昨日は、縞や格子の帯を合わせ絵画性を封印しましたが、今日は普通に模様のある袋帯を合わせてみます。今回の着物は、金糸のみですから色彩に乏しく、リングは斬新とはいえ、散らばるのみですから物語的な展開はないわけですが、それに具象的な模様のある帯を合わせることで、色彩や絵画性を加えることになります。

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いちばん上の写真は、紋屋井関の「御寮織」シリーズの袋帯の1本を合わせてみました。正倉院御物の「銀平脱の合子」をテーマにしたものです。「銀平脱」とは技法の名前ですが、職人の人権を無視したような古代にしか作られていない面倒な技法です。用途は、聖武天皇が碁をするときの碁石入れで、象さんチームと鸚哥さんチームがあります。

和装のコーディネートに象と鸚哥を持ってくれば、絵画性・物語性共に満載ですが、その代わり色は金のみにして色彩は遠慮しています。一方で好き放題にしたら、もう一方では抑えるというようにするのが、全体のコーディネートを保つコツですね。

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写真2番目は、紫絋の袋帯「正倉院臈纈文」を合わせてみました。タイトルは「臈纈文」ですが、実際の意匠は、刺繍や挟纈など正倉院にある染織品から自由に取材しています。具象的な鳥の文様もあり、抽象的な文様に花を加えたようなものもあり、バランスの良い意匠だと思います。色も金地がベースながら紫などが加わって、多彩とも金彩ともわからない、結果として使いやすいと思います。

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写真3番目は、池口平八の袋帯「琵琶湖」を合わせてみました。琵琶湖の湖面を織で表現したものですが、離れて見ると印象派の技法で湖面を描いたように見えます。印象派が油彩でしたことを西陣の織の技法でしたのではないでしょうか。

この倉部さんの小付けの着物を年輩者の着物と考えて、そのばあいにどういう帯を締めるかと考えて合わせてみました。こんなコーディネートなら、お金持ちで上品なおばあさんに見えるんじゃないでしょうか。

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写真4番目は、織悦の袋帯「栗枝繍文」を合わせてみました。この帯の意匠を理解する鍵は、「繍」にありますね。元絵は刺繍作品だという意味です。元絵が織物作品であればもっと規則性のある意匠になりますが、元絵が刺繍でそれを織物で表現しているため、意匠が織物らしくないのです。刺繍は織機のようなシステムを使わず、指だけでするわけですから意匠も自由で規則性が無いのです。

抑制された着物の意匠に対し、伸び伸びした大きな栗の意匠ではバランスが悪いとも思うので、色は調和を考えて金地です。模様で好き勝手をしたら色彩は妥協しないといけませんね。
[ 2015/06/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせ

三千百六回目は、千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の帯合わせです。

今回の付下げは、色は金糸だけですから最小限度ですし、意匠はリングですから斬新ではありますが、小さいですし、そのリングは散在するだけで物語として展開することはないですから、色彩にも絵画性にも乏しいといえます。

そういう着物に対する帯合わせは2通りですね。1つは、着物に不足している色彩と絵画性を帯で補うことです。もう1つは、着物には色彩と絵画性が不足しているのではなく、作者の意思であえて排除しているのだと考えて、その意思を尊重し、帯にも色彩や絵画性のないものを選ぶことです。後者の帯合わせは、近年支持者の多い「無地系のコーディネート」にも通じますね。

今日は間道や横段の帯を合わせて、着物の世界観を大事にします。

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いちばん上の写真は、「おび弘」の袋帯を合わせてみました。呉服屋は「おび広」といわれてもピンときませんが、池口と言われればすぐわかりますね。証紙番号は607で、池口の時代と変わりません。水色地に絵緯糸で曲線模様を表現しています。金糸は本金の平金糸で、モダンな意匠に見えますが、技法的にはもっとも伝統的な手織りの西陣の帯ですね。

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写真2番目は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。名物裂の1ジャンルに間道があるのですが、龍村の間道の多くは残念ながら「平蔵」ブランド、すなわち高島屋の専売となっていて、定価でしか買えません。(外商を通すと1割引きまで交渉できるそうです)。「海老殻間道」は「たつむら」ブランドで自由に売買できる数少ない間道です。

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写真3番目は、河村織物の袋帯「栄昌綴」のシリーズの1本を合わせてみました。横段に七宝繋ぎ文様を合わせた意匠です。地は綴組織、七宝繋ぎ文様は絵緯糸による表現で、裏に渡り糸があります。西陣手織協会の「西陣手織の証」つき。河村織物のばあい、中国で手織りしたものは「西陣」の言葉はなく、ただ「手織り」と書いた証紙が貼ってあります。

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写真4番目は、織悦の袋帯「印度更紗段文」を合わせてみました。織悦の横段模様シリーズは、どんな着物にもあって使い勝手が良く、よく見ると意外にエキゾチックな模様もついていて面白いのですが、もっともリーズナブルなシリーズでもあります。ただ、定価は安いのですが、その反面、ネットの安売りは出にくいようですね。

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写真5番目は、織悦の袋帯「能衣間道」を合わせてみました。別に禁忌を犯しているとは思わないですが、良いとか悪いとか批評してもしょうがないような気もしますねえ。

[ 2015/06/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の細部

三千百五回目は、千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」の細部です。

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いちばん上の写真は、着物の模様のリングの1つの近接です。

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写真2番目は、着物の模様の別のリングの近接です。リングの模様は全部違います。


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写真3番目は、昨日紹介したマエミのリングを斜めから撮ってみました。

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写真4番目は、昨日紹介したマエミのリングを裏から撮ってみました。

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写真5番目は、リングを拡大してみました。
[ 2015/06/06 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング

三千百四回目の作品として、千切屋治兵衛の付下げ「小付けリング」を紹介します。実際に制作したのは、倉部さんです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。リングをテーマにした作品で、金糸の刺繍だけで表現しています。倉部さんらしい繊細な作品で、細部を近接で見ると素晴らしいですが、コストとの兼ね合いで模様自体は小さいので、そばで見てくれないと素晴らしさに気が付いてもらえないですね。パーティーに着て行ったら、柄が見えない、と言われてしまうかもしれません。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は、マエミのリングの近接です。

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写真4番目は、2014年1月1日と1月2日に紹介した一の橋の付下げ「金彩リング宝飾」の前姿です。やはり倉部さんの作品ですが、こちらは刺繍と金彩を併用しています。刺繍だけの純粋な作品と、金彩を併用して面積を水増しした作品の違いですが、メーカーが提示する参考上代は同じぐらいですね。

最初の草稿の段階では同じだったかもしれませんね。刺繍という技法の純粋性と見た目のありがたみとどちらを取るかという問題だと思います。刺繍だけで面積が広ければなお良いですが、それでは高くなりすぎてしまいますから。それぞれ違うメーカーの商品として発売されたわけで、悉皆屋のシステムがあって、下職を多用する京友禅ならではの現象だと思います。

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写真4番目は、一の橋の付下げ「金彩リング宝飾」の近接です。
[ 2015/06/05 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせ、単衣の織物

三千百三回目は、花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせです。

今日は単衣の時期を想定し、単衣に向いた絣の織物に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、本塩沢に合わせてみました。塩沢の織物というのは、元々は越後上布の産地であったものが、近代になって越後上布の技術で素材を変えて織り始めたものです。真綿の塩沢紬は真冬でも暖かそうですが、お召である本塩沢は単衣で着るとかっこいいですね。

この作品は、全体が市松になっていてお洒落ですが、経絣だけで出来ていますからそんなに高くありません。織物の工程の中で、おそらく絣の工程が技術的にも難しく、コストもかかることですから、産地や素材や手織りであることが同じでも、縞、経絣、経緯絣で値段はすごく違います。しかし、経絣だけであってもデザインによってお洒落なものは作れます。

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写真2番目は、久留米絣に合わせてみました。糸を染めたのは森山虎雄、手織りしたのは田中キヨ、タイトルは「古代物語」です。重要無形文化財の赤いラベルがあるものです。木綿の着物は、袷にも単衣にもなりますが、袷のばあいは胴裏や裾回しは正絹を使うのが普通です。裏も木綿だと重くなるし、裾さばきも悪いからです。しかしそうなると木綿らしく水洗いできなくなる、そんな理由で木綿の良さを発揮させるために単衣にする人が多いですね。

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写真3番目は、東郷織物の薩摩絣に合わせてみました。永江明夫のラベルのあるものです。上野の西郷さんの銅像は薩摩絣を着ているなんて言いますが、歴史的な薩摩絣は沖縄の絣のことです。それに対して現代の薩摩絣は、大島紬の技術で木綿を織ったものです。細くすると木綿の方が切れやすいので、細かい絣を織るのは困難ですから、その分高いのだと思います。

薩摩絣の価値判断は大島と同じで、模様が面白くても緯絣に相当するものは比較的安く、この写真のように9マルキに相当するものは高いです。

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写真4番目は、琉球美絣に合わせてみました。真栄城きく江さんのもので、木綿ではなく駒糸を使った薄手のものです。沖縄の近代は1903年の地租改正に始まります。それまでは織物は年貢として物納していたので、デザインなどを自分で考える必要はなかったのが、自由に織って売り、それで得た現金を納税することになったので、良いデザインを考えて高く売った人の方が生活が向上することになったのです。

琉球美絣が創始されたのは大正年間ですので、沖縄でもっとも歴史のある創作織物であったということになりますね。「美絣」というネーミングに相応しい絣によるグラデーションが美しい織物です。
[ 2015/06/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせ

三千百二回目は、花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせです。

今日は夏の紬を合わせてみました。

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いちばん上の写真は、夏琉球(琉球壁上布)を合わせてみました。沖縄の織物というのは、値段の高いイメージですが、夏の絣として、おそらく一番コストパフォーマンスの高い着物です。

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写真2番目は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。縞や格子のシリーズで、10万円以下で買えるものです。黒と白の細かい格子ですっきりしています。いろんな帯の背景を務められる着物ですから、合わないということはありえません。

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写真3番目は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。縞や格子のシリーズで、10万円以下で買えるものです。茶色のグレーや黄色の混じった格子柄です。私が好きな「夏に茶色」の着物ですね。黄色の帯との配色で選んでみました。

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写真4番目は、小千谷縮を合わせてみました。グリーンとグレーの太さが変わる縞です。今日の4種類の帯合わせの中では、いちばんカジュアルな着物ですね。今回の花也の帯は昨日は付下げにも合わせたわけですから、ものすごく使用範囲が広いとも言えますね。
[ 2015/06/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせ

三千百一回目は、花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせです。

今日は、夏の付下げ(絽と紗)に合わせてみます。その際に考慮することは、帯が草花文なので着物は草花文を避けるということですね。しかし、着物の模様というのは圧倒的に草花文が多いわけですから、やや制約がありますね。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「横棒霞」を合わせてみました。実際に制作したのは、藤岡さんで糊糸目による作品です。絵画生の高い意匠の帯と、絵画性の低い意匠の着物の組み合わせです。

霞模様を横棒のように表現した意匠は、自然描写を幾何学文様にしたものですから斬新にも思えます。しかし小袖の文様としては風景模様の一部として使われているもので、それを独立させただけですね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「古鏡」を合わせてみました。「鏡裏文」といわれる文様ですね。実際に制作したのは、市川染匠で糊糸目による作品です。 草花を重ねないために器物文様にしてみました。

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写真3番目は、野口の絽の付下げを合わせてみました。このような例では、着物も帯も絵画性が高く、うるさい帯合わせになりがちです。今回は草花文と風景文で分かれるので、まあかろうじて、といったところでしょうか。着物の風景の大部分が海であることも救いになっていると思います。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「雪輪取草花文」を合わせてみました。実際に制作したのは村田さんです。雪輪の文様は夏物にも使われます。この作品に有るような「破れ雪輪」は、春の模様という意味もあります。雪輪の中の模様は、撫子など夏のモチーフですね。

帯の模様も取り方を使ったものですが、草花は取り方を無視して自由に生えています。それに対し着物の模様は、草花がきちんと取り方に収まっています。このような差が、同じ草花文ながら共存を可能にしているのではないかと思います。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の絽の付下げ「浜辺」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。辛子色と水色の色の対比がとてもきれいです。着物の模様は抽象的な暈し模様のようですが、じつは浜辺という具象的なテーマなんですね。綺麗な水色も単なる地色ではなく、海と空の色なんですね。
[ 2015/06/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせ

三千百回目は、花也の単衣から夏の染め帯の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、野口の絽の着尺を合わせてみました。薄い地色(縞が薄い水色)に、細い縞、飛び柄の雪輪の模様という、誰にでも着やすい夏物です。つまらないと言ってしまえばそれまでですが、とりあえず1枚買うならこういう夏物ではないでしょうか。

一方帯は、辛子色に焦げ茶色という夏物としては個性がある帯です。

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写真2番目は千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。光悦垣をテーマにしたものです。地色の小豆色は、一見夏物に相応しくないようですが、夏に茶系というのは、大人っぽい雰囲気になりますね。実際に着ると、白い長襦袢が透けて色は薄くなりますが、写真はそれを再現するため、下に白い紙を敷いています。

辛子色と小豆色は良く合いますし、帯の色が個性的ですから、着物が単彩であることも良いと思います。

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写真3番目は千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。墨色地に楓の模様です。実際に着た状態を再現するため、写真では下に白い紙を敷いています。辛子色と墨色も良く合いますし、着物が単彩であることも良いと思います。


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写真4番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。紗の生地で、波紋を表す渦巻と金魚が洒脱なタッチで描かれています。花也の作風は端正な糊糸目ですから、洒脱なタッチと合うかどうかということが気になりますが、特に問題はないようです。

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写真5番目は千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。個性的な太い縞ですが、よろけ縞であることで柔らかい雰囲気になり着易くなっています。端正な帯とは雰囲気はかなり違いますが、まあありうる帯合わせですね。
[ 2015/06/01 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)