藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の帯合わせ

第二千九百四十九回目は、藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の帯合わせです。

昨日は、紬と合わせてカジュアルな使い方をしましたが、本来の辻が花は権力者の衣装ですから、フォーマル方向にも展開したいと思います。しかし名古屋帯ということもあるので、とりあえず着尺です。

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いちばん上の写真は、野口の着尺と合わせてみました。とりあえず合いやすい飛び柄にしてみました。地色は紫です。帯の色が紫、水色、黄緑ですから、その3色の地色を試してみます。全体の色数を増やさない帯合わせです。

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写真2番目は、野口の着尺と合わせてみました。黄緑で合わせてみました。模様は更紗です。

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写真3番目は、野口の着尺と合わせてみました。水色で合わせてみました。模様は唐草です。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の着尺と合わせてみました。ベージュ色の紬地で、市松取りの笹模様です。ベージュで単色の模様というのはなんでも合いやすいですね。

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写真5番目は、藤井絞の疋田絞の着尺と合わせてみました。絞りに絞りを合わせるというのは、普通はあり得ないですよね。エア帯合わせだからこそできることなので、みなさんは真似をしてはいけません。

同じ絞であっても時代が違うのが救いですね。室町時代に流行った辻が花と、江戸時代に流行った疋田絞です。辻が花というのは、模様を染める手段として絞りを使うだけですから、染め終わればその過程が絞りであったことはどうでもよく、絞りであった痕跡を求めませんから生地に凹凸はありません。

江戸時代にはじまり現代に続く絞りは、絞りによってのみ染めることができる特有の模様を求めるものです。だから絞りであった痕跡を求め生地に凹凸を残します。現代人の感覚では、絞りの凹凸があるのは当然であり、凹凸がなければ絞りに似せた型モノと思うのではないでしょうか。

しかしその凹凸も染めて数十年たてば消えていくはずのもの。生地の凹凸は絞りという芸術の一部なんでしょうか。それともただの痕跡?この帯合わせが不自然に感じないなら、それは凹凸の有無によって生じる質感の違いのおかげですね。
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[ 2014/12/31 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の帯合わせ

第二千九百四十八回目は、藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の帯合わせです。

今日は、紬に合わせてみます。辻が花というのは、染織史では室町時代から桃山時代までの権力者の衣装ですから、それを再現したものもまたフォーマルであるべきと思います。実際に、辻が花模様のフォーマルな訪問着などはよく作られていますが、辻が花を帯にした場合、なぜかカジュアルな紬によく合ってしまうんですよね。

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いちばん上の写真は、白鷹紬を合わせてみました。水色と紫と黄緑の3色が綺麗なこの帯に、ベージュを合わせてみた例です。白鷹というのは、経産省の伝産マークの分類では「置賜郡の紬」になります。白鷹はお召の方が有名ですが、紬も織られていて、これは手紡ぎの糸を使った手織りの織物です。

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写真2番目は、大城カメの琉球絣を合わせてみました。3色のこの帯に、さらに多色を合わせてみた例です。琉球王家時代の御絵図帳にありそうな技巧的でありながらおおらかな、そして華麗な織物です。

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写真3番目は、永江明夫の薩摩絣を合わせてみました。3色のこの帯に、藍染の紺を合わせてみた例です。歴史に登場する「薩摩絣」とは琉球絣のことで、薩摩藩が本当の産地を知られないために「薩摩絣」とネーミングしたといわれます。現代の「薩摩絣」は大島紬の有名メーカーである東郷織物が大島紬の技法で制作している木綿の絣です。大島紬の木綿バージョンというわけですが、木綿の方が糸が切れやすく織るのは難しいということです。

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写真4番目は、郡上紬を合わせてみました。3色のこの帯に、多色の格子を合わせてみた例です。

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写真5番目は、佐藤トシの南部紬を合わせてみました。3色のこの帯に、似た色を含む縞を合わせてみた例です。
[ 2014/12/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の細部

第二千九百四十七回目は、藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯の細部です。

2014年7月14日(二千七百八十回)に紹介した藤井絞の辻が花写しの帯も六通だったので、同じシリーズです。その時も売れるのかなあと思いましたが、再び六通でつくったところを見るとあえて余計にお金を出そうという客もいたようです。丸巻を解いて、模様が現れた瞬間はお太鼓より六通の方が感動しますが、その瞬間的な感動のために見えない柄を買うのはどうかなあというところ。私は2度も買ってしまいましたけどね。

今日は模様の細部ということで、各部の近接を撮ってみました。見どころは、描き絵の上手い下手ですね。友禅の糊置きは失敗したら洗い流せますが、墨絵は消せないので一発勝負です。消せるような素材で描いたら洗濯出来ませんものね。

また絞りというのは、下手なら単純な技法だけしかしなければいいのです。難度の高い絞の技法は使わなくても意匠が良ければ良い作品になりますから。難度の高い技法が使ってないからダメだ、なんて気が付くのは同業者だけですしね。しかし描き絵の上手い下手は、誰でも気が付きます。絵は誰でも見ますし描きますからね。

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いちばん上の写真は、お太鼓の下の方の近接です。近接で見ても、描き絵の墨の線は流麗で、迷いも縮こまっているところもありません。描いた人は、芸大を出ている本業の画家ということです。

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写真2番目は、お太鼓上の方の近接です。花の模様は白抜きですが、葉の模様には地色より濃い色に染められているところもあります。生地を摘まんで防染する絞りの技法からすれば、模様は白抜きが通常ですが、その逆に模様以外の部分の全部を防染している工程もあるのです。

生地を絞っても染液に浸けない空絞りの辻が花であれば、濃い部分は筆で彩色してしまうので楽ですが、藤井絞はちゃんと染液に浸ける辻が花ですから、模様の中の方が濃いという表現をすることは非常に手間がかかる工程になります。

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写真3番目は、腹文の近接です。描き絵の外の見どころは、模様と模様の間の細い海峡のような部分に、きちんと染料が入って色がついていることですね。

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写真4番目は、お太鼓の上の方の、たぶん見えなくなってしまうあたりです。
[ 2014/12/29 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯

第二千九百四十六回目は、藤井絞の辻が花写しの六通の名古屋帯を紹介します。

生地を防染した後に染液に浸けるホンモノの絞りと描き絵を組み合わせた本格的な辻が花写しというのは、結構コストがかかるものなので、帯のばあいはお太鼓柄にするのが普通です。しかしこの帯は、少々傲慢な担当者が、ユーザーの懐具合を無視して自己満足で六通としてつくってしまったもの。

丸巻を解いて広げて絵として見るととても綺麗です。1枚の写真ではとても納まらないので、写真を5枚使って連続させて、全景が見られるようにしてみました。

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[ 2014/12/28 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十五回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

もういい加減最後にします。今日は使い残し画像です。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げを合わせています。実際に制作したのは藤岡さんで、淡い地色に温かみのある乳白色の糊糸目で、春から夏にかけての果実を描いたものです。このような絵画的な作品は、花だと類型的になりがちですが、果実というモチーフがちょっと新鮮です。また、淡くて透明感のある色と糊糸目の相性はとても良いです。

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写真2番目は、藤井絞の訪問着を合わせてみました。絞りと友禅を併用した作品です。淡いピンク系の地色と紫の花の配色が見せ場ですね。絞りの技法は、さすが専業の藤井絞で、意外に凝ったことをしています。

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写真3番目は、一の橋の付下げを合わせてみました。波の表現はさまざまですが、これは新鮮ですね。地色は焦げ茶です。

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写真4番目は、一の橋の付下げを合わせてみました。芒と楓だけの大きくて簡潔な意匠です。私はこういう大きい模様に呉服屋の将来があるんじゃないかと賭けています。地色の赤がなんとも言えない、芸術性ではこれは赤であるべきだと思いますが、売るのはつらいですね。水色と赤の配色で。

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写真5番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは、当時は野口の下職をしていた橋村重彦です。橋村さんは、中井淳夫さんの彩色担当だったので、この目の奥に粘るクリームのようなオレンジのような地色は中井さんの色です。

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写真6番目は、千切屋治兵衛の玉紬の単衣用の付下げです。実際の制作したには中井淳夫です。この帯合わせの選択は私の悪戯。
[ 2014/12/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十四回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

帯合わせでいちばん難しいのは紅型です。なぜ難しいのか、3つの理由を考えてみました。

①紅型は多色の総柄で余白部分がほとんどないこと。総柄であるために帯の柄とつながってしまうので、無地系の帯しか合わない。総柄という点は更紗と同じであるが、更紗は茶系など一定の色合いのものが多いが、紅型は多色。

②紅型は顔料を使っているため色が強いこと。着物と帯では帯の方が面積が小さいので、帯の色が強い方がバランスがとりやすい。友禅の着物に対し西陣の織物が合うことや、無地系の紬に対し多色の型染の帯が合うのはこのためである。着物の色が強いとそれ以上強い帯を見つけなければならない。

③紅型は価格が高いこと。無地系の帯が合うということはわかっているが、無地系の帯というのは組織が単純なので、価格が安いものが多い。一方、紅型は高いので不釣合いになる。価格の高低によって帯合わせをするわけではないが、ユーザーは革命家でも教祖でもないから世間の目が気になり、価格を評価基準にしてしまう。

①~③を踏まえ、どういう帯が合うのかと考えると、まず特殊な素材を使って無地系でありながら高級な帯、模様がある場合は、模様の周囲に無地部分があって、着物の柄と帯の柄が引き離されている帯、ということになります。この帯は全面に本金の引き箔を使いながら無地部分が多い帯なので、条件に合いますね。

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いちばん上の写真は、城間栄喜と合わせてみました。

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写真2番目は、玉那覇有公と合わせてみました。

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写真3番目は、藤村玲子と合わせてみました。

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写真4番目は、伊差川洋子と合わせてみました。

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写真5番目は、城間栄順と合わせてみました。
[ 2014/12/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十三回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

おび弘の帯合わせがずいぶん長くなってしまい、飽きてしまったという方もいらっしゃると思います。ダメだろうと思って合わせてみると、合ってしまうのでやめられないんですね。もう少しだけおつきあいください。今日は小紋(染めの着尺)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、野口の更紗の着尺を合わせてみました。ごちゃごちゃした柄の着物にはあっさりした帯を合わせるのが定石ですから、いつも帯合わせに悩む更紗にはちょうど良いですね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の吹寄せの着尺を合わせてみました。黒地に赤や青の桜の花を含んだ華やかな吹寄せです。黒と水色の配色はいつも綺麗ですね、普段は帯が黒で着物が水色のばあいが多いですが。

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写真3番目は、野口の格子の着尺を合わせてみました。着物が格子で帯が斜線という線尽くしともいうべき帯合わせになりました。着物も帯も柄どうしで失敗するということはありますが、線どうしということは滅多にないことなので、私も合っているかどうかよくわかりません。

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写真4番目は、野口の市松の着尺を合わせてみました。

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写真5番目は、野口の横段の着尺を合わせてみました。市松と横段というのは反対の模様のようですが、ずらして仕立ててれば横段は大きな市松になりますから、じつは同じ柄の大小とも言えます。

野口の市松や横段の着尺は、私は大好きですが、大きな市松と言うだけで個性的なのに、多色の大きな花と合わせてあるので、帯合わせが結構難しいのです。黄色と水色の配色も綺麗ですし、とても良い帯合わせになりました。
[ 2014/12/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十二回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

今日は紬に合わせてみます。昨日は木村雨山の黒留袖や森口華弘の訪問着に合わせましたが、雨山の黒留袖と紬と両方使える帯が存在するなんて奇跡みたいなものだと思います。

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いちばん上の写真は、結城紬に合わせてみました。八十亀甲で、全体が幾何学模様になった柄です。結城というのは真綿の手紬の糸を使った織物で、手触りからすれば素朴な雰囲気のはずですが、その一方で、極めて細かい手括りの絣を合わせた超絶技巧の織物でもあるんですね。それに対して洗練の極みのような帯の組み合わせです。

素朴と思えば正反対、技巧的と思えば同系統の性質というわけで、よくわからない組み合わせですが、見た目についても合っているのかいないのかわからないところがあり、そこに緊張感があって良いのではないかと思います。

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写真2番目は、山口良子の首里織の着尺を合わせてみました。福木で宝石のように輝く黄色に染められた糸で織られていて、技法は花織と浮織の併用です。首里の織物は琉球王家の官服ですから、本土で言えば紬ではなく京都の織物ですね。そのつもりで華やかな場で華やかに着たらいいと思います。

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写真3番目は、真栄城興茂の琉球美絣に着尺を合わせてみました。藍の濃淡と福木の黄色を横段にした創作的な作品です。作家の創作モノにチャレンジしてみました。

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写真4番目は、秋山真和の絵羽の織物作品を合わせてみました。織物というのは、「用の美」であるべきで、装飾のための装飾は邪道、という発想もありましたが、今は伝統工芸展でも、飾って意味のある絵羽の織物が主流ですね。そんな作家モノの織物にも合わせてみました。

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写真5番目は、秋山真和の絵羽の織物作品を合わせてみました。仮絵羽にして、格子模様も縫い目で合うようにしています。ジグザグ模様の向きもちゃんと対称になっているので、やはりあらかじめ絵羽として設計されたようです。
[ 2014/12/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十一回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

昨日まで大羊居や中井の訪問着と合わせてきましたが、この帯の万能性はこんなもんじゃあありません。今日はさらにハードルを上げてみます。

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いちばん上の写真は毎田仁郎の色留袖を合わせてみました。加賀友禅作家の中でも、圧倒的に絵が上手だった毎田仁郎の色留袖です。改めて見ると、上手いだけでなく、着物としてもおしゃれですね。

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写真2番目は、中町博志の色留袖「松そよぎ」を合わせてみました。松林の中を吹き抜ける風を可視化して描いていて、写生的と言われた加賀のイメージからすれば革新的といえるのでしょうか。モダンな雰囲気の作品なので、モダンなこの帯都の帯合わせは自然ですね。

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写真3番目は、熊谷好博子の黒留袖「花舟」を合わせてみました。細密な友禅と刺繍で埋め尽くされた作品で、作家の執念も感じるのですが、執念は作品の中で完全に浄化されていて、むしろ爽やかです。その爽やかの帯が連動している感じですね。

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写真4番目は、森口華弘の訪問着を合わせてみました。森口華弘の作品というのは森口華弘そのものですから、合わせる帯は悩んでしまいますね。森口本人にこだわりが無くても、着る人はどうしても作家を意識しすぎて、作家の意図を曲げない帯合わせをしなくては、と構えてしまいます。

結局、中国代表の蜀江錦か、日本の王朝文化代表の有職文様なら大丈夫ということになってしまいます。どちらも上品で権威があり意味が無い、ということですね。北村武資の帯を合わせる人も多いですが、それも同じ文脈だと思います。この帯も意味が無いから作家の邪魔をしないという帯の仲間ですね。でもモダンな雰囲気を加味できたと思います。

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写真5番目は、木村雨山の黒留袖を合わせてみました。絶対無理、と思われる組み合わせですが、けっこう良いですよね。
[ 2014/12/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百四十回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

昨日は大羊居の訪問着と合わせてみましたが、今日は中井淳夫の訪問着と合わせてみます。昨日の東京の個性に対して今日は京都の個性です。この帯は、大羊居に続いて中井もあっさり攻略してしまいました。

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いちばん上の写真は、「平家波に色紙」を合わせてみました。波はダンマル描きで、その上から金泥で描かれています。蝋独特の半防染効果から濃淡表現にすぐれ写生風に向くダンマル描きと、装飾性に優れフォーマル感の強い金とは、一見合わなさそうですが、実際に見るととても自然です。

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写真2番目は、「孔雀」を合わせてみました。孔雀の羽根は糸目のない表現なので、白い輪郭線が無く、濃い地色と馴染んでいます。一方、孔雀の羽根の目のような部分だけは金彩と金糸の刺繍も使われて輝く表現になっています。そのため離れて見ると、輝く宝石が散らばっているように見えます。そのような視覚効果を狙って作ったんでしょうね。

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写真3番目は、「四季花文」を合わせてみました。四角い取り方で、梅の蕾~梅の花~桜~椿~菖蒲までの春の花を友禅で描いています。一方、取り方の外の空間には秋の花である女郎花がダンマルで描かれています。春は色は多彩で輪郭のはっきりした糸目友禅であるのに対し、秋は防染で染め残された白だけですから、表現は対照的です。

結局、春の着物なんでしょうか、四季の着物なんでしょうか。表面的には、嫁入り道具として揃える着物にふさわしいような、みんなに愛される着物でありながら、じつは中井さんのたくらみが隠されているようです。

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写真4番目は、「松竹梅文」を合わせてみました。松竹梅という着物の模様としてはありふれたテーマですが、それぞれの表現が変わっています。松は松ぼっくりと松葉ですが、松ぼっくりがイラストのようでかわいいし、竹は竹の花(何十年に一回しか咲かないんですよね)、梅は色紙を梅の花の形に切り抜いているということで、ホンモノの梅でさえないのです。
[ 2014/12/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百三十九回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

今日は大羊居の訪問着と合わせてみます。昨日は倉部さんの単彩で模様も少ない付下げと合わせましたが、今日は多彩で豪華な絵羽と合わせます。着物としては正反対な存在ですが、どちらでも使えることで、この帯の万能性を証明してみたいと思います。

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いちばん上の写真は、「末広流水」と合わせてみました。着物全体をつかって、流水と扇面を描いています。着物を広げた面積はキャンバス100号に相当しますから、着ない状態では、美術館でモネの睡蓮を見るような気持ちで、水面に広げられた扇面を見ることになります。

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写真2番目は、「四君子文」と合わせてみました。四君子を中国伝統絵画のタッチで描いた訪問着です。梅の幹と枝を友禅の糊を使って、わざとかすれさせて描いていますが、これが毛筆の飛白の真似で、中国伝統絵画へのオマージュですね。

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写真3番目は、「モザイク花文」と合わせてみました。大彦や龍村は西洋のモザイクに取材した作品をいくつもつくっています。モザイクは古代のローマで発達しましたが、遺跡としては本国イタリアよりチュニジアに良く残っています。その伝統はビザンツ帝国に引き継がれますが、その遺跡もイコノクラスムのあった本国よりもラベンナに残っていますね。またビザンツ帝国の同盟国であったヴェネツィアにもあります。

モザイクの良いところは天然石を使っていれば絵画と違って退色しないことです。龍村のモザイクの意匠は古代のローマの遺跡に取材したものが多いようですが、この作品はモザイクでない花とも組み合わせてあるため、ガウディの公園みたいな感じがします。

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写真4番目は、「花薫る」と合わせてみました。単衣用の訪問着です。花を飾る支柱が体の前後を貫いているという意匠です。特に後ろの支柱については、姿勢の良い人でないと着られないなあ、という気がしますが、背中が丸くなる前に着てください、ということでしょうか。

実際に着てみると、帯のすぐ上で支柱は丸くなり、それほど個性のある図案ではないので安心して着られます。

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写真5番目は「色かさね」と合わせてみました。これも単衣用の訪問着です。私は「七色の谷をー越えて♪」の歌を連想いてしまいます。色で着る感じですね。美しいキモノで掲載された時は、沢口靖子さんが着ていました。
[ 2014/12/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百三十八回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

今日は倉部さんの付下げと合わせてみます。倉部さんは刺繍と箔(友禅より古い伝統である縫箔)が専門ですが、縫箔はもともと友禅よりも絵画性が低いですし、倉部さんはコストが高いので、あまりたくさんの模様は付けられません。そのために、今回のおび弘の帯と合わせると、模様があっさりしたものどうしの組み合わせになります。

いわゆる無地系と言われるコーディネートですよね。とても豪華な無地系になると思います。

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いちばん上の写真は、野口が制作した倉部さんの付下げを合わせてみました。源氏香を扇面に見立て、刺繍の秋草を合わせたものです。

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写真2番目は、一の橋が制作した倉部さんの付下げを合わせてみました。リングがテーマです。上の作品は、秋草を刺繍で表現していましたが、ここでは一転して、無機質の金属を刺繍で表現しています。

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写真3番目は、千切屋治兵衛が制作した倉部さんの付下げを合わせてみました。垂れ梅に色紙を合わせ、松竹梅のテーマにしたものです。これは模様も多く、見た目も値段も豪華な作品です。

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写真4番目は、千切屋治兵衛が制作した倉部さんの付下げを合わせてみました。唐花文を霞取りにしたものです。唐花文は正倉院でおなじみの中国渡りの格の高い文様ですが、それを日本の花鳥風月そのものである霞の形にしたというわけです。

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写真5番目は、一の橋が制作した倉部さんの付下げを合わせてみました。流水に桜楓という伝統的な文様です。倉部さんの金彩や金糸の刺繍は、黒や濃い地色を背景にすると引き立つので、そういうものが多くなってしまうのですが、この作品は玉子色にしてみました。
[ 2014/12/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の帯合わせ

第二千九百三十七回目は、おび弘の袋帯の帯合わせです。

今日は花也の付下げと合わせてみました。

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いちばん上の写真は、花也の中でも、わりと模様がごちゃごちゃしているものと合わせてみました。帯がすっきりしていますから、着物の模様はごちゃごちゃしている方がバランス的に良いだろうという発想です。

「ごちゃごちゃ」「すっきり」というように言葉を並べてしまうと、すっきりの方が良いように思ってしまいますが、美術の様式というのは、地が見えないほど模様があって美しいものと、余白があって美しいものの間を揺れ動いてきたものです。帯合わせというのは、普通はその両者のバランスを取るものですから、これが基本の帯合わせだと思います。

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写真2番目は、花也の中では多彩な友禅と合わせてみました。花也は糊糸目の美しさをウリにしていますから、色については乏しいイメージです。芸術家というのは、色派と線派とに分けられるような気がしてしまうものです。(実際には線派と思われていた画家でも、退色によってそう思われていただけで、修復してみたら色も綺麗だった、ということがよくある。)花也は断然、線派なのですが、このような色のきれいな作品もあります。

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写真3番目は、完全に色のない線描きがメインの作品と合わせてみました。

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写真4番目は、着物の地色を帯の水色とは補色関係になる茶色にしてみました。

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写真5番目は、これは普通はお勧めしない帯合わせですが、着物の模様を帯と同じ斜線にしてみました。体に反対方向のネジがついて、帯で巻いたものを着物で巻き戻したような雰囲気です。どうなんでしょうね。
[ 2014/12/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯の続き

第二千九百三十六回目は、おび弘の袋帯の続きです。

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いちばん上の写真は、帯の裏側です。本金の引箔糸が作品の表面に露出している部分は限定されていますが、残りはすべて渡り糸になっており、じつは全体が引き箔で覆われた帯です。

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写真2番目は拡大です。赤いポリエステルのフィルムと本金の平金糸です。平金糸を拡大すると、金属糸風のポリエステルのフィルムはツルツルですが、本金箔にはこのような痕跡があります。

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写真3番目は拡大です。青いポリエステルのフィルムと本金の平金糸です。
[ 2014/12/18 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

おび弘の袋帯

第二千九百三十五回目の作品として、おび弘の袋帯を紹介します。

高梨という問屋のハンパ市で拾っています。この問屋は、高級問屋として尊敬されているわけではないですが、実質的に良心的な経営をしていて、掘り出し物の発見率が高いです。以前、いくつかの問屋で博多帯を安売りで買ったことがあるのですが、家に帰ってよく見ると、高梨で仕入れた博多帯だけが、いちばん上のランクの金の博多で、他の問屋は緑でした(当時は4段階)。

「おび弘」をネットで検索して公式サイトをみるとイラスト風の面白い帯がありますね。手織りは日本製、手刺繍は海外製ということなんだろうと思います。「おび弘」はかつての池口商事で、証紙番号は607ですから佐波理綴と同じです。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目はもっと近接です。

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写真4番目は、さらに近接です。赤と緑と青の糸はポリエステルフィルムで、銀糸もいっしょに織り込むことで、ポリエステルが本来持つ光沢以上に輝いています。金糸は、本金の平金糸です。


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写真5番目は品質表示です。一見、無味乾燥な成分表示みたいですが、これでその帯の素性から作った人も心情までわかります。ポリエステル6%は赤青緑のフィルム、レーヨン6%はその芯糸、指定外繊維(紙)6%は本金糸の土台になる和紙ですね。高級品を前提としていえば、ポリエステルやレーヨンの比率は作品の創作性、紙の比率は作品の真実性を表しますね。
[ 2014/12/17 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

私の長女の振袖の続き

第二千九百三十四回目は、私の長女の振袖の続きです。

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いちばん上の写真は鳩です。これは元の帯に有った意匠で、色を変えています。

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写真2番目は柚子です。長女の名前にちなんだ模様です。最初、紋として入れようかと思ったのですが、本人が嫌がったので、着ている本人だけが知っている秘密の模様ということで、裾回しに入れました。昔、オーダーのスーツの裏にネームを付けたような発想です。これは、くわ垣さんの下絵です。

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写真3番目は鳥が卵から生まれたところです。

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写真4番目と5番目は、上の作品の元になった、長い部分が4cmの象牙の細工です。骨董のオークションで、依頼により代理で落札したのですが、預かり中に図案に利用しました。

私の長女の振袖の続き

第二千九百三十三回目は、私の長女の振袖の続きです。

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いちばん上の写真は鸚哥です。福田平八郎の絵に取材しています。中井淳夫さんも福田平八郎に多く取材しています。千治の考案室の方が遺族に許可を取っていたそうです。

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写真2番目は、色が変わって全然面影が無いですが文鳥です。文鳥がいろいろなポーズをしているフィギュアが出てくるガチャガチャの1つを写しています。

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写真3番目と4番目は、長女が描いたもので、ちょっと頼りなげな小鳥ですよね。これが今の本人の心情かと思えばちょっと不安ですが、でもそれもまた残すべき家族の記念ですね。

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写真5番目はエトピリカです。学研の図鑑を参考にしています。実物は黒ですが、水色に替えています。長女が1年生の時、エトピリカという絵本を元に作文を書いたら、青梅市の文集の最初のページに載ったことがあるのです。このまま正常進化したら芥川ぐらい獲れるだろうと思っていたのですが、それが人生の頂点だったみたいですね。そんな思い出を込めて、エトピリカを入れてみました。

私の長女の振袖

第二千九百三十二回目の作品として、私の長女の振袖を紹介します。

10月15日の記事で、下絵を紹介した振袖ができてきました。成人式本番は1月12日ですから、もう1か月弱ですね。本番3か月前にはまだやっと下絵ができた段階で、1か月前で加工が終了、これから仕立てですから「紺屋の白袴」ということわざそのものですね。

身内のものなので仮絵羽はしません。反物を身ごろや袖などに裁ち、それぞれに刺繍をして完成状態をチェックし、そのまま仕立てをします。今は仕立てをしていますが、刺繍が完成して届いてから、仕立て屋さんにもっていくまでの1日の間に、着る本人が見て納得し、私が写真を撮ったものです。そのために全体の構想がわかる写真はありません。

今回の企画は、家族全員が下絵を描き、それを刺繍で表現して長女が着るというものです。中井さんのような天才にお願いするのではなく、素人がバラバラに下絵を提供するので、全体に統一性のある意匠というのは出来ず、個別のモチーフが散っているような意匠になります。

このような作り方をする場合、技法としては刺繍が一番向いているのです。後から思いついて追加することもできますし。意匠に凝らないのであれば絵画性の高い友禅を選択する必然性もありませんし。

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いちばん上の写真はメジロです。よく見ると目の周りが白でさらに金糸で括って強調してあります。全体の配色の都合で、黄緑から水色に変更されてしまったようで、メジロ感が無くなってしまいました。これは私の下絵です。

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写真2番目は雀です。今回の企画は、素人である家族が均等に下絵を提供することでしたが、やはりそれは理想論にすぎず、本人と私以外、下絵を描く人はいませんでした。そのため30個必要な下絵が揃わず、やむを得ず昨日も紹介した帯からいくつか拝借しました。このスズメは、昨日の帯のお太鼓にも写っています。剽窃といえばそうですが、販売目的ではなく家族で楽しんでいるだけですからね。

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写真3番目は孔雀です。これは私の下絵です。孔雀の体を緑にしたのは、杉山寧の有名な孔雀へのオマージュです。

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写真4番目は、長女の下絵なので、私には種類が特定できない小鳥です。頼りないとぼけた感じは描いた本人の人柄です。ピンクと黄緑の配色は上手いですね。全体は柔らかいというか、だらしないタッチですが、目の周りの金の刺繍だけは繊細できちっとしています。それは団子の串のようなもので、この串に相当する部分があれば、だらしないタッチではなく、かわいいタッチと感じるものなんですね。

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写真5番目は鶏です。これもじつは昨日も紹介した帯に有ったものです。体の色を水色に替えてみたら雰囲気が変わりました。

11月22日の東京の刺繍の帯の帯合わせの続き

第二千九百三十一回目は、11月22日の東京の刺繍の帯の帯合わせの続きです。

刺繍だけでいろいろな種類の鳥を表現した名古屋帯を紹介していたとき、染の小紋の帯合わせをした後、紬とも合わせてみようと思っていましたが、忘れていたので、今日、合わせてみました。このような趣味的な帯は紬と合わせるのが基本で、たまたま加工が友禅でななく刺繍なので、友禅柄の小紋にも合わせてみようというのが、その次ですね。

以前紹介したときは、野口の着尺などに合わせ、「その次」の帯合わせだけをして基本はしなかったので、今日はその埋め合わせです。この帯は、今後紹介する、うちの長女の振袖の基本になった作品でもあるので、お付き合いください。

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いちばん上の写真は、新田機業の紅花紬の、明るい色の縞と合わせてみました。黒地の帯というのは使い勝手が良いので、粋な紬にも、ほんわか系の紬にも合わせてみようと思っていますが、まずほんわか系です。「紅花」のイメージどおりのの綺麗な紬ですが、ピンクとベージュにグレーが加わることで大人も着られる雰囲気ですね。ほんわかな感じがするのは、ピンクが入っているからだけではなく、縞の各色の境界がグラデーションになっていて、くっきりしていないからです。

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写真2番目は、かつての無形文化財である結城紬の、くっきりとした縞を合わせてみました。濃紺と薄いグレーのコントラストの強い太い縞、さらに結城紬という素材からくる、男性的なきりっとした縞です。今の言葉で言うとこういう雰囲気は「強め」っていうんですよね。イラストっぽい鳥は、「強め」を緩和する役目をしています。

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写真3番目は、山下八百子の黄八丈を合わせてみました。黄色と黒の組み合わせは、自然界では蜂とか蛇とか毒をもつ動物にありがちな配色ですよね。実際にはとてもきれいですし、帯合わせとしては、みんなが一度はやってみたい配色ではないでしょうか。この場合も、イラストっぽい鳥が個性を緩和する役目をしています。

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写真4番目は、読谷花織の着尺を合わせてみました。黒地で、浮織の糸が浮いている割合が少ない、現実に着易い着物だと思います。今回は黒地の着物に黒地の帯、というテーマで合わせてみました。

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写真5番目は、小川内瀧雄の久留米絣を合わせてみました。重要無形文化財の要件を満たすものです。今回は藍染の木綿の絵絣に合うか試してみました。まあいいかな、というところ。

[ 2014/12/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせ

第二千九百三十回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせです。

今日はまず、模様自体には存在感があって、その模様の周りに余白がある帯を合わせてみます。着物も帯も存在感のあるどうしで、濃すぎる帯合わせになるはずですが、両方の模様を余白で引き離すことで、緩衝地帯をつくるという帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「陶楽騎馬文」を合わせてみました。ペルシアやシリアで出土するイスラム陶器に取材したものですね。無茶苦茶に濃い帯ですが、丸い皿がモチーフであるために周囲に黒い無地場があり、着物の模様との間の緩衝地帯になっています。

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写真2番目は、大西勇の袋帯「正倉院合子文」を合わせてみました。正倉院御物である「銀平脱の合子」に取材したもので、象とインコの模様が浮き上がった丸い碁石入を上から見たところです。象とインコという濃いモチーフながら、茶色の無地場があるので、着物の模様とは直接接していません。

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写真3番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。名物裂の有栖川錦は有名ですが、「有栖川」の名があるので有栖川家に由来するのかと思えば、実際には前田家(前田育徳会)が所蔵しているなど、謎の多い裂です。龍というテーマ自体が濃いですが、周りに余白があるので、龍が深山幽谷の上を飛んでいるように見えて、私はこの組み合わせがいちばん好きです。

次に、龍村の袋帯を使った帯合わせをしてみます。読者の方からそういうリクエストがあったからです。

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写真4番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。山と霞という湿潤な日本の風土を表す着物に、乾燥地帯の中央アジアの踊子さんが乱入してきた感じです。地方の小さな町にいきなり外人のパブができたと思えば、意外にありがちな風景かも。

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写真5番目は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。平家納経に取材した帯で、俵屋宗達が描いた反っくり返った鹿が面白いですが、「平家納経」とわからなくても、山に鹿がいるとも見えますね。

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写真6番目は、龍村の袋帯「海音光映錦」を合わせてみました。山に対して海という帯合わせです。霞も合わせれば、水の大きな循環でもありますね。
[ 2014/12/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせ

第二千九百二十九回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせです。

今日は濃厚な着物の上に、濃厚な帯を合わせてみます。ライオンと虎を同じ檻に入れてみて、どっちが勝つか勝手にしろ、という帯合わせですね。動物虐待の残酷なショーみたいですし、両方死んでしまうかもしれませんが、意外に秩序のある世界ができるかもしれませんしね。

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いちばん上の写真は、帯屋捨松の手織りの袋帯(「帯屋捨松」のロゴのないバージョン)「豊公花鳥錦」を合わせてみました。豊臣秀吉が所用していた輸入品の織物に取材したものです。濃厚な雰囲気な帯で、着物に負けていないですね。良いところは鳥がテーマなところでしょうか。着物のテーマが「遠山」「霞」「草花」ですから、帯で鳥を加えることで、山の風景が完成します。

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写真2番目は、帯屋捨松の手織りの袋帯(「帯屋捨松」のロゴのないバージョン)「ヴィクトリア花文」を合わせてみました。合っているか、合っていないかと言えば、今、戦っている最中といった感じです。こういう帯合わせもスリルがあって良いと思います。

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写真3番目は、洛風林りの袋帯「飾宝華文」を合わせてみました。豪華な華文ですが、洛風林がつくると豪華であると同時に都会的になりますね。中井さんの着物は、基本的に都会的ですから、都会的な帯を選ぶのは基本だと思います。

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写真4番目は、坂下織物の「御門綴」シリーズの「蜀江錦」を合わせてみました。坂下織物は十数年前に廃業していますが、当時の高いクラスのもので、重厚な雰囲気です。合わせてみると、互いに衝突をすることもなく、自然な雰囲気です。

「蜀江錦」は、中国の古代から明代まで連綿と織られてきた織物で、それだけ中国人に愛されてきたということです。皇帝を頂点とする秩序だった社会そのものを表すようなガチっとした構成を持った意匠の織物です。着物が躍動感のある意匠なので、対照的で良いのかもしれませんね。
[ 2014/12/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせ

第二千九百二十八回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の帯合わせです。

個性の強い、あるいは芸術性の高い着物に対する帯合わせという事例です。いちばん難しいものですね。着物の作者自体が帯合わせを考えて着物を創っていてくれればいいですが、他人の都合に配慮してつくるようなものに、芸術性の高いものがあるとは思えません。

伝統工芸展の出品作の友禅のように、絵羽として飾って世間の審判を受けようとする作品というのは、帯合わせを考慮しているとはとても思えません。監査委員も帯合わせまで考えて、入選作を決めているということはありえません。その点、中井さんは独りよがりの芸術家ではなく、女性が着るための着物をつくってきた人ですが、それでもこの着物は厳しいかもしれませんね。

本当に大事なのは、女性が着て美しく見える、ということですが、それ以前の問題として、今日は帯合わせがしやすい着物かどうか試してみます。帯合わせの方針としては、着物の作風が濃厚なのですから、縞や格子のさっぱりした帯を合わせるということと、着物を上回る濃厚な帯を合わせるということの2通りがあると思います。

さらに3通り目の方法として、模様が濃厚でありながら、その周囲に余白部分があって、着物の模様と帯の模様が直接接しない、という帯を合わせる方法があります。濃厚とさっぱりの両方の良いところを合わせているわけで、それがたぶん理想でしょうね。食べ物のコマーシャル風に言えば、「コクがあって爽やか」っていうことですね。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。偶然ですが色目も合っています。「海老殻間道手」は万能と思っていますが、今回も証明されたようです。

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写真2番目は、河村織物の袋帯「栄昌綴」シリーズの七宝繋ぎと横段文様の組み合わせの帯を合わせてみました。上の写真のタテ縞に対し、これは横段です。

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写真3番目は北村武資の袋帯「七宝連珠文」を合わせてみました。細かい規則性のある模様で、着物の大きくて躍動的な意匠とは正反対です。また、色は辛子色系に統一されていて、遠目ではシンプルな無地と変わらないです。というわけで、さっぱりした帯を合わせる帯合わせの仲間に入れてみました。

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写真4番目は、しょうざんの徳田義三シリーズの袋帯「花兎文」を合わせてみました。色は金色のみなのでさっぱりした帯を合わせる帯合わせともいえます。また、大きな花兎文はインパクトが強いですが、その周囲の余白のために着物の個性
とは干渉しあわないので、濃厚とさっぱりが両立できているとも言えます。
[ 2014/12/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続き。今日も細部。

第二千九百二十七回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続きです。今日も細部です。

今日も細部の紹介したいと思います。普通の読者の方はすでに飽きているであろうことは承知しているのですが、それでも私は、どうしても細部の紹介がしたくてたまらないのです。どの草花も琳派の様式であり、京友禅で何万回も描かれてきたものですが、それでも上手いのです。この描き方を暗記して部分的に利用すれば、だれでもそこそこ上手な付下げが複数つくれます。

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いちばん上の写真は女郎花です。花の色は、葉と同じグレーでシルエット的な表現であると見せて、部分的に赤を入れています。赤の配置はバランスよく散らすのではなく、2つのグループにまとめています。自然を無視して意匠に徹した配色ですが、大胆なことをするときは、バランスよりグループ化が良いという中井さんの判断かもしれませんね。

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写真2番目は松です。伸び伸び描いています。

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写真3番目は橘です。

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写真4番目は藤の花です。

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写真5番目は蔦です。

[ 2014/12/08 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続き。今日も細部

第二千九百二十六回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続きです。今日も細部です。

今回の作品の糸目(もちろん糊糸目です)は白ではなく、薄いグレーぐらいの色です。訪問着全体が取り方であり、それぞれの取り方が、グレー、ブルーグレー、焦げ茶の色彩分割の状態になっているわけですが、それぞれの色は微妙な均衡を保っていますから、その境界線として真っ白な線に介入されては無粋で興ざめなのです。

そこで、色彩の均衡を壊さないように選ばれた色が、どの色とも馴染む薄いグレーなのです。技法的には、友禅をする前に白生地を薄いグレーで無地染します。その色をベースに本来の友禅の作業を始めます。すると、最初の無地染めの色が糸目の色になるのです。また作品全体の色調については、すべての場所が重ね染になっているわけですから、どうしても色は重くなりますね。

今回もそれぞれの取り方の中の草花を個別に撮ってみました。

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いちばん上の写真は菊です。京友禅ではありふれた意匠的な表現です、類型的と言ってもいいですね。それでも不思議と立体を感じますし、見ていて退屈もしません。絵が上手い、ということの意味は深いですね。白い菊の花弁には、あしらい(刺繍)があります。中井さんのばあいはいつも、あしらいの刺繍の糸の色は染と同色です。普通の人はちょっと濃い色などにするものですが。

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写真2番目は山吹でしょうか(ちがうかもしれません)。これも京友禅ではありふれた意匠的な表現です。葉は自然に近い緑もありますし、グレーもあります。昨日の燕子花と白梅はグレーでしたが、ここではグレーの葉に赤い花の組み合わせです。赤は中井さん独特の重い赤ですね。

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写真3番目は椿です。

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写真4番目は萩と芝です。

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写真5番目は、紅白梅と青楓です。枝が反対向きに出ているように錯覚します。
[ 2014/12/07 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続き

第二千九百二十五回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続きです。今日は細部です。

今日は、取り方の内部の琳派風の草花を個別に撮ってみます。この作品では、1つの取り方の中には1種類の草花しか入っていませんが、それぞれの草花は、意匠としてみても、友禅の技術としてみても、とても巧みで参考になることが多いです。

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いちばん上の写真は、マエミのいちばん目立つ辺りの近接です。山の形の取り方の中に、紅梅と白梅が入っています。琳派らしく「紅白梅図」になっているんですね。紅梅の色は中井独特の重い朱色です。白梅はなんとグレー。これは中井しかできない配色ですし、私がいちばん好きな部分ですから、さらに近接してみます。

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写真2番目は、白梅の近接です。花は全部正面を向いていますが、これは小袖にもある伝統的な表現を踏襲したもの。意外にも写生的ではなく、粉本主義的な表現をしています。咲いた花はグレーですが、蕾には重い朱色もつかっています。主役になるような色をわざと端の方に小さく使うと、肩すかしをされたような感覚があって、ちょっと憎いです。

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写真3番目は、燕子花(菖蒲かな?)を撮ってみました。ここにもグレーがありました。なぜグレーかと思えば、墨絵的な表現を取り入れているということでしょう。白梅では見られませんでしたが、燕子花では葉が重なるので、グレーの濃淡を見ることができ、墨絵のタッチなのだと気が付きます。

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写真4番目は、上半身にある模様を近接で撮ってみました。山の形の取り方に対し、霞の形の取り方が入り組んでいるので、2つの草花が混じっているような印象があります。チラッと見ると、真っ直ぐな茎が、途中から急に蔓植物に変わってしまったように見えて、あれっと思うのです。その後、よく見なおすと、取り方が入り組んでいるために2つの植物がつながって見えるのだと気がついて、「ああ、そうか」と納得できるのです。

この時の一連の脳の作業は、一時期、脳学者がテレビでよくやっていた「アハ体験」ですよね。わからないことがあると脳が緊張する、それが解決すると緊張が解けて喜びを感じるというものです。そういうのが脳の体操になるとか。中井さんは数年前に亡くなっているので、「アハ体験」のテレビは見ていなかったでしょうが、同じようなことを仕掛けていたようです。
[ 2014/12/06 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続き

第二千九百二十四回目は、千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)の続きです。今日は袖の模様と参考図版です。

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いちばん上の写真から4番目までは、袖の写真を撮ってみました。模様の量にはかなりメリハリがあります。私はむしろ、伸び伸びしているという点において、模様の少ない場面に魅力を感じます。

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全身が遠山と霞で深山幽谷の風情で、さらにそれが取り方となって、それぞれの取り方には琳派の草花文が収められているという、この作品の意匠の源泉を求めてみました。とりあえずシリーズとも思われる中井の訪問着があります。

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写真5番目は、全体が取り方になって中井の訪問着です。過去に紹介したことがありますが、一の橋の企画によってつくられた作品です。今回の作品は、取り方が山と霞という意味を持って行って、全体が深山幽谷ともいうべき雄大な景色になっていますが、この作品は取り方は意味のない直線模様で、全体は幾何学的な分割になっています。

それぞれの取り方の内部は、今回の作品は一種類ずつの琳派の草花であるのに対し、こちらは、「楓と流水で竜田川」のような琳派模様の慣用的な組み合わせがそのまま納められています。全体が幾何学的で意味が無いものは、中のモチーフに意味があり、全体が深山幽谷という意味があるものは、中のモチーフに意味が無いのです。中井さんの作品というのは、あらゆるものに摂理のようなものが貫いているのです。

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写真6番目は城間栄喜の紅型の着尺です。古紅型にある意匠で、鎌倉芳太郎も同じようなものをつくっていますね。山が重なっていく意匠がよく似ています。中井作品において霞の役割をしているのは、こちらでは波です。すなわち、この作品では重なるのは山ではなく、島なのです。

昔の沖縄人の芸術的才能に感服せざるを得ない、雄大にしておおらかなイリュージョンですね。中井さんは気に入ったデザインを見ると、新聞でも何でも切り抜いてスクラップしていたということなので、この作品も当然知っていたでしょう。
[ 2014/12/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の訪問着(中井淳夫)

第二千九百二十三回目の作品として、千切屋治兵衛の訪問着を紹介します。制作したのは中井淳夫さんです。

2012年に仕入れたものですが、私はまだ解説を書く資格がないように思われたために、ブログで取り上げなかった作品です。今でもただすごいなあと思うだけで、作品が理解しきれないのは同じですが、そのままでけりがつかないので、今日思い切って載せてみます。

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いちばん上の写真は全体です。全体は遠山と霞で、それが取り方となって中に琳派の草花文を納めています。数か所、稲妻型の取り方も見えますね。

色だけで考えると、現代の着物の基準では地味な年輩者向けの着物ということになるのですが、現物を見ると存在感がありすぎで、地味とも派手ともわかりません。着物というのは地味とか派手とか言えるよなものはまだまだなんですね。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は後姿です。


[ 2014/12/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

藤井絞の雪花絞の帯合わせの続き

第二千九百二十二回目は藤井絞の雪花絞の帯合わせの続きです。

今日は、基本の浴衣帯である、単衣の半幅(四寸)の博多帯以外の選択肢というテーマで試してみました。いずれも八寸ですから、四寸よりもフォーマル方向になって、浴衣から離れて「夏のカジュアルな着物」っぽくなっていきます。

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いちばん上の写真は、麻の八寸の名古屋帯を合わせてみました。昨日紹介した麻の縞の帯の具象画バージョンです。麻100%(抑え糸を除く)の表示があるのですが、西陣織の金のラベルも付いているので、京都のものなんですね。もちろん機械織りでリーズナブルな値段ですが、現実の生産と流通の状況を考えると、手織りの名品よりもこういう商品の方が絶滅危惧種だと思います。

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写真2番目は、紫絋の絽の八寸の名古屋帯を合わせてみました。紫絋もこんな夏のカジュアルを織っていたことがありました。今も織っているのか、これからも織ることがあるのかはわかりません。

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写真3番目は、博多の紗献上を合わせてみました。夏のカジュアルとしては定番的な、紗の博多帯(八寸)です。色は、万能に使えるように白かクリームを選ぶ人が多いです。

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写真4番目は、千切屋治兵衛のパイナップルの繊維を使った名古屋帯を合わせてみました。千切屋治兵衛らしくない帯ですが、何かの都合で扱ったことがあったのでしょう。型絵染に見えますが手描きです。友禅というより筒描きの感じですね。本来浴衣用の帯とは言えませんが、あえてチャレンジしてみました。
[ 2014/12/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の雪花絞の帯合わせ

第二千九百二十一回目は藤井絞の雪花絞の帯合わせです。

浴衣の帯と言えば、単衣の博多の半幅(四寸)帯が基本ですが、八寸の帯を合わせることもできます。四寸の帯に替えて八寸の帯を使うことは、方向としてはフォーマル方向ですから、浴衣ではなく夏の着物という雰囲気になりますね。

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いちばん上の写真は、黄色と紺の雪花絞に黄色の半幅帯を合わせてみました。まず基本の浴衣の着こなしです。浴衣の帯としては、黄色がいちばん基本で使い勝手が良いと思いますが、ここではもう1歩踏み込んで、紺に対して補色、黄色に対して同系色というのを意識して黄色にしてみました。帯合わせは、同系色関係か補色関係かと考えますから、両方を同時に試してみたわけです。

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写真2番目は、オレンジと緑の雪花絞に黄色と緑の半幅帯を合わせてみました。雪花絞は色が美しい着物ですから、帯合わせでは色の遊びをしてみたいですね。

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写真3番目は、麻の八寸のカジュアル帯を合わせてみました。浴衣というよりカジュアルな着物の雰囲気にしています。雪花絞の配色と同じ、オレンジと緑の帯を合わせて色数を増やさない帯合わせにしています。雪花絞の配色の美しさをいちばん生かす帯合わせのつもりです。

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写真4番目も、麻の八寸のカジュアル帯を合わせてみました。浴衣の帯合わせも、普通の着物の帯合わせと同じ発想でしてみました。
[ 2014/12/02 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の雪花絞

第二千九百二十回目の作品として、藤井絞の雪花絞を紹介します。

昨年の夏(2013年8月27日)にも3反紹介していますが、今回は別の柄です。雪花絞は、江戸時代以前の縫絞の比べれば、手間が少なく量産に向いた技法として近代になって有松で考案された板締絞の1つです。実際の作業を写真で見ると、非情に面倒ですし、手先が器用で力もないと出来なさそうです。「量産に向いた」というのは、あくまで明治時代の基準だと思います。

生地の折りたたみ方で、いろいろな幾何学模様が現れ、その1つが雪花絞です。昨年に続き今年もすごい人気で、百貨店でもよく売れているようです。ネットで検索もしてみましたが、楽天などでもすべて定価販売で、安く買うのはほとんど不可能だったのではないでしょうか。雪花絞の人気の理由は、グラデーション表現の美しさだと思います。もともと絞の美しさの源泉はグラデーションですよね。完全に防染してくっきり色が変わる絞りであれば、型染で染めても同じだと思うからです。

藤井絞の雪花絞も有松でつくられていますから、わざわざ京都の藤井絞で買うよりも有松のブランドで買った方が安いです。しかし、そのかわり藤井絞バージョンは生地がオリジナルの綿麻になっています。それは今年も変わりません。それに加え、今日紹介するバージョンは紅梅織の生地を使っています。

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いちばん上の写真から3番目までは、それぞれの浴衣を、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真4番目は、グラデーションの美しい部分を近接で撮ってみました。紅梅の生地は糸の太さが均一ではないので、グラデーションを美しく表現するには不利だと思います。この写真ではきれいに見えますが、2013年8月27日のグラデーションの方が綺麗ですものね。
[ 2014/12/01 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)