一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の帯合わせ

第二千九百十九回目は、一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の帯合わせです。

昨日は、着物の個性が強いのを考慮して、縞や格子あるいは単一の繰り返しパターンなど絵画性の低い帯を合わせました。しかしながら、一見個性が強いと思われるこの着物は、本歌までたどってみると、じつは多くのモチーフを捨象して簡素化した結果の意匠だったことがわかりました。

この着物ができる過程で捨てられたモチーフは、桜、鶴、秋草ですね。秋草はともかく、桜や鶴といった本来なら着物の意匠の屋台骨であるべきモチーフさえ捨てた結果、この着物があるのです。今回は時間を巻き戻し、一度捨象したモチーフを加え直す帯合わせをしてみたいと思います。

昨日は、モチーフをなるべく増やさない帯合わせでしたが、今日は積極的に増やす帯合わせです。

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いちばん上の写真は、織悦の「桜楓遠山文」を合わせてみました。まず、元の慶長小袖の上半身のメインのモチーフであった桜を戻してみました。もっと春にしか着られないような桜そのものの意匠を戻してもよかったのですが、ちょっと良識が働き、現代に受け入れられる程度にしてみました。

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写真2番目は、梅垣織物の「蒔絵花鳥文」を合わせてみました。鶴の模様は結婚式のようになってしまうので、普通の鳥で代用し、桜と鳥を復活させてみました。なんだか普通の上品な帯合わせですね。

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写真3番目は、しょうざんの徳田義三の下絵シリーズの袋帯「花兎文」を合わせてみました。本歌にはないですが、うさぎを足してみました。本歌にさえないモチーフを足すことで、蛇足になるかと心配しましたが、帯の意匠がすっきりしているか、帯の色が金だけであるからか、かえって全体がすっきりしてしまいました。趣旨は間違いましたが、成功した帯合わせだと思います。

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写真4番目は、龍村の袋帯「錦秀遺宝文」を合わせてみました。平家納経をテーマにしたもので、俵屋宗達が付け加えたそっくり返った鹿がメインの帯ですね。帯合わせとしては、元の慶長小袖にない鹿を加えたことになります。普通の豪華な帯合わせかなあ。
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[ 2014/11/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の帯合わせ

第二千九百十八回目は、一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の帯合わせです。

今回の着物は色も模様も濃厚な雰囲気ですから、縞や横段、絵画性の少ない単一モチーフのものを選んで合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の光波帯(仕立て上がり名古屋帯)「日野間道手」を合わせてみました。「日野間道手」は、龍村平蔵ブランドの手織りの袋帯がありますが、それは高島屋限定の商品で一般では販売できません。これは機械織りの普及版の名古屋帯です。

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写真3番目は、洛風林の亀甲文様の袋帯を合わせてみました。実際に織ったのは帯屋捨松です。少し昔は捨松も洛風林同人でした。誰でも知っている伝統文様である亀甲文が並んでいるだけの意匠ですが、それでも配色だけで濃厚な味わいのある作品になってしまうのは、さすが洛風林です。

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写真4番目は、織悦の道長取りの袋帯を合わせてみました。道長取りにやはり貴族文化である有職文の立沸が合わせてあります。ほとんど配色だけが勝負の作品ですが、黄色が綺麗です。

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写真5番目は、河村織物の「栄昌錦」というシリーズの袋帯を合わせてみました。横段模様ということで合わせてみました。
[ 2014/11/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の続き

第二千九百十七回目は、一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の続きです。


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いちばん上の写真は、重要文化財である「染分桜花に松鶴文小袖」です。慶長小袖ですから全体に模様があり、現代の付下げとは雰囲気が大きく異なります。一見してどこが同じかわかりにくいので、近接してみます。

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写真2番目は、特徴的な松皮菱の形の染分けに摺箔を重ねた部分の近接です。桜や鶴は省略され、松は残されています。扇子が加えられていますが、扇子の型疋田の表現は、本歌の桜の疋田が引き継がれたものと思われます。今回の作品の松川菱の紫色は唐突ですが、この本歌の松皮菱の色も退色前は紫だったのかもしれませんね。

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写真3番目は、捨松の袋帯を合わせたものです。「帯屋捨松」のロゴのない、手織りバージョンです。今な中国製ですが、これは昔のものなので日本製だと思います。立沸文に椿、梅、菊などの四季花を合わせたもので、着物の本歌とほぼ同じ江戸初期の能衣装を帯にしたものです。本歌の時代を意識して合わせてみました。

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写真4番目は、かのう幸の袋帯を合わせたものです。江戸初期の胴服の意匠を帯にしたものです。本歌は胴の部分に大きな雪持ち笹があり、袖で柄が変わるという大胆意匠です。松は帯にするにあたり付け加えられたものですが、着物にも同じ松があるのは偶然です。これも本歌の時代を意識した帯合わせです。
[ 2014/11/28 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の細部

第二千九百十六回目は、一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」の細部です。

友禅、疋田、刺繍、箔を併用した作品です。倉部さん主導で制作した作品は、刺繍と箔のみの作品になりますが、これは一の橋が主導した企画なので、友禅や疋田が併用され総合的な作品になっています。慶長小袖に似た意匠の作品があり、それに取材していると思われますが、「写し」というほどでもないです。

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いちばん上の写真は、マエミの近接です。松の刺繍の部分は、倉部さんらしく全く隙が無いですね。扇子の疋田部分ですが、このような疋田は描き疋田か型疋田かわかりにくいです。狭い面積のばあいは描き疋田の方が合理的な場合もありますが、縁蓋を使って模様の外形を決めておき、四角い汎用型を使うばあいが多いようです。

中井淳夫さんは、どんな小さい個所でもその形に合わせて疋田の型を新調したため、かえって描き疋田より高かったそうです。一般の常識では型より手描きの方が価値があると思いがちですが、中井さんほどの人となると別の美意識があるんでしょうね。

おそらくこの場合は、汎用型で型疋田として染めながら、外縁近くにある疋田のいくつかを手描きで染め潰していると思われます。絞りが失敗した部分の表現ですね。この絞の抜けの表現があるために、型でも立体感があるように見えます。

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写真2番目は、オクミの近接です。松皮菱内部は紫に彩色され、その上から摺箔による表現がされています。凸凹のある表現なので、金泥描きか摺箔かわかりにくいですね。でもここが手描きタッチでなければ、もっと平板なつまらない作品になっていたはず。技法がどうかということよりも、作者が手描きタッチの魅力を追求していたということが大事ですね。

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写真3番目は、マエミの近接で、いちばん上の写真の扇子の下辺りです。

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写真4番目は、マエミの近接です。裾に近い方ですね。

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写真5番目は、袖の近接です。

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写真6番目は、後姿の近接です。細部を見てきた感想は、全体は大胆ですが、細部は緻密な作品ということです。人生や事業で成功する人は皆、大胆な計画を立てながらも、緻密に実践していくものですよね。作品も同じです。
[ 2014/11/27 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」(制作は倉部)

第二千九百十五回目の作品として、一の橋の付け下げ「松皮菱慶長」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

倉部さんの作品は何度も紹介していますが、今回は地色も意匠も、今までの倉部さんの作風とは違います。じつはこの作品は、一の橋の会長の直接の指示によってつくられたものです。失敗しても上司から叱られない立場の人だけが作れるものなんですね。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2014/11/26 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

藤井絞の浴衣の帯合わせ

第二千九百十四回目は、藤井絞の浴衣の帯合わせです。

昨日は色をテーマに無地の単衣用の博多の半幅帯を合わせてみましたが、今日は縞を使ってみます。博多帯の伝統的なデザインと言えば独鈷ですが、さすがに今回の浴衣に合わせる自信がありませんでした。

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いちばん上と2番目の写真は、それぞれの浴衣に濃紺(黒と見分けがつかない)と白の縞の単衣用の博多の半幅帯を合わせてみました。色の影響のない状態で、縞が合うか試しています。青の浴衣に対しては結構合っているように見えますし、黄緑とピンクの浴衣に対しても及第レベルではないでしょうか。

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写真3番目は、信号のような原色を合わせた博多帯を合わせてみました。昨日は、浴衣のモダンで淡い色調を大事にして、それに合わせていましたが、今日は原色の帯で、モダンで上品な雰囲気を叩き壊してみました。壊れても大丈夫みたいですね。

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写真4番目は、朱系の割合の多い博多帯を合わせてみました。透明感のあるモダンな青の濃淡に対し、我々の父母の世代からありそうな帯の色思わせる博多帯の組み合わせです。色としては合わない気がしますが、実際合わせてみると、不自然な感じはしませんね。

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写真5番目は、無地の黄色部分と緑の縞部分がある博多帯を合わせてみました。博多帯の緑の部分は、浴衣の黄緑と濃淡関係を狙ったようにも見えますし、黄色はどんな色にも馴染んでくれる便利な色だし、とても良いかんじですね。

一見、モダンに徹して着ないといけないような浴衣ですが、意外とどんな帯でも合いますし、着るのも難しくないようですね。
[ 2014/11/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の浴衣の帯合わせ

第二千九百十三回目は、藤井絞の浴衣の帯合わせです。

昨日の大胆な染分けの絞りの浴衣の帯わせを考えてみました。このような着物の良し悪しはどこで決まるのか、と考えれば、結局は色が綺麗かどうかですね。であれば、帯の色も綺麗でなければなりませんね。今回は無地の帯を使って、色だけを意識した帯合わせをしてみました。

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いちばん上の写真と2番目の写真は、それぞれ同系色の単衣の博多の半幅帯を合わせてみました。まあとりあえず考える帯合わせです。

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3番目と4番目の写真は、それぞれ補色関係になる帯合わせをしてみました。着物と帯の色の関係は、昔は補色関係でなければいけないと思いこんでいた人もいたようです。しかし、全体のコーディネートを考えた場合、色数を増やすということは1つの冒険です。

着物の作者は色の調和を考えて自分の作品を作っているわけですから、着る者としては、帯も同系色にして、元の作者の色彩感覚の範囲内でコーディネートを考えた方が失敗の確率は低いはずです。帯を補色(反対色)にして、新しい色を加えるばあいには、着物の作者と対決するような気持ちが必要だと思います。

実際の帯合わせには、色だけでなく模様もあり、模様の大きさ、意味、形なども影響しますから、一律に論じられないですが、今回のように色しか要素がないものは、色合わせの練習になりますね。いろいろな組み合わせをしてみたうち、黄緑地ピンクの浴衣に水色の帯は却下しました。水色の濃淡に黄色の帯はそれなりに良かったです。誰でも考えそうなので載せませんでしたが。
[ 2014/11/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の浴衣

第二千九百十二回目の作品として、藤井絞の浴衣を紹介します。

絞りの模様の輪郭に縫締絞の痕跡である針の穴が無いので、縫いでなく生地に圧力をかける技法、すなわち雪花絞の仲間だと思います。藤井絞は京都ですが、この作品については実際の制作地は有松ということになります。有松ブランドで販売される絞りの浴衣との違いは生地で、有松の浴衣は木綿ですが、藤井絞は麻と浴衣が半々の生地を使っています。

どう違うかと言えば、当然着心地が違うわけですが、夏の着物として浴衣と小千谷(半分麻ですから半分小千谷の着心地ですね)の違いということになるでしょう。当然、麻混じりの方がコストは高いですが、実際の着心地は、どちらもそれぞれ良いところがあるというべきでしょう。

むしろ意味があるのは、見た目かもしれません。麻が混じっている方が光沢があって、色が綺麗に見えるんじゃないでしょうか。こういう作品では色が綺麗に見えるということがすべてですよね。

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[ 2014/11/23 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯の帯合わせ

第二千九百十一回目は、東京の刺繍の名古屋帯の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、梅、桜、菊などの枝が横段のように配された野口の着尺を合わせてみました。。たまたまお太鼓の下の方に鶯がいたので、その下あたりに梅の枝が来るように載せてみました。ちゃんと仕立てたら、帯の鶯の近くに梅の枝が来るとは限りませんから、あくまでエア帯合わせです。着物の色は、この写真ではグレーに見えてしまっていますが、本当はきれいなペパーミントです。

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写真2番目は、綺麗な黄緑色の更紗の野口の着尺を合わせてみました。こんな綺麗な色の着物に合う帯はどんなだろう、と思ってしまいますが、黒い地色の帯は万能ですね。帯を買うときに迷ったら、とりあえず黒にしておくという選び方も良いと思います。また、更紗のような込み入った柄の着物には、重みのあるわりに余白の多い刺繍の帯は合いますね。

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写真3番目は、大きな更紗模様の野口の糸目型の訪問着を合わせてみました。着尺のように反物で販売されながら、訪問着のように全体で模様がつながる着物です。パーティー着とでもいうようなカジュアルな訪問着の雰囲気です。大きい染VS小さい刺繍の対決と言うことになりますね。両者が拮抗するポイントがあるはずですが、それはこれぐらいでしょうか。  

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写真4番目は、横段模様の野口の着尺を合わせてみました。世間では大胆ですが、野口では定番の横段の着尺です。帯に対して、無地部分が接するか、柄部分が接するかで感じが違うはずですが、黒地の余白の多いこの帯ならどちらが接しても大丈夫のようです。
[ 2014/11/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯の細部

第二千九百十回目は、東京の刺繍の名古屋帯の細部です。

この作品を見ると、刺繍というのは技術の優劣だけではなく、デザインやコンセプトも大事ということがよくわかります。刺繍のは基本技も応用技もあり、いつも紹介している倉部さんの作品ではいろいろな超絶技巧を見ることができますが、この作品では基本技しか使っていません。しかし十分に魅力的なんですね。

この帯は、私が今作成している長女の振袖のヒントになりました。商品としてお客さまにお見せするものは、倉部さんの超絶作品も良いですが、家族にそういうものが必要かなあと思ったのです。家族全員参加で下絵を描いて記念にするには、超絶技巧は使えません。私は超絶技巧が生かせるような図案を考えますが、家族はそんなことは全く知りませんものね。

また意匠についても、各自が勝手に考えるのですから、中井さんのように創作で人を驚かすようなものは作れません。作れるのはただこのようにパラパラ散っているものだけです。

そのかわり温かみのあるモチーフを散し、この鳥は妹が描いたというような思い出になる作品にしようと思ったのです。しかしながら、そこに陥穽があって、大学の漫研の本人すら「温かみのあるモチーフ」が描けなかったのです。というわけで、花也さんに下絵を含めて相談しました。それに対して花也さんの答えは、私はイラストみたいな絵は描けません、草稿でいいから描いてきてください。

ようするに、「温かみのあるモチーフ」は温かい心が描くものではなく、プロがスキルで描くものなんですね。この顛末は、振袖が完成した時に。

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[ 2014/11/21 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京の刺繍の名古屋帯

第二千九百九回目は、東京の刺繍の名古屋帯を紹介します。

刺繍という技法は、友禅や箔に比べて門戸が広いと思います。趣味で友禅をするというのは、蒸しなどの工程がありますし、地染めには広い場所が必要ですから、自分一人で始めることができる人は少ないでしょう。趣味で金箔を貼るという人はさらにまれだと思います。それにくらべて刺繍は、道具もわずかですし場所もいりません。何よりも自分の技量に合わせて創作できるのが良いです。

そのため、東京にもかなり刺繍職人はいるようです。それで生計を立てているプロもいますし、趣味の延長の人もいますから実際の数はよくわかりません。作品を制作するだけでなく、先生として教室を持つプロもありますものね。

今日紹介する刺繍の帯も、メーカーの下請けをする誰かが繍ったものですが、刺繍の技法自体は比較的単純で、倉部さんのような超絶技巧を見せているわけではないですから誰かはわかりません。しかし、センスの良い人ですよね。ほのぼのとした雰囲気が伝わってきますもの。それもまた刺繍の特徴で、技法と同じぐらいセンスが大事ということもあります。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は腹文です。刺繍だけの作品なので模様は片側だけです。

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写真3番目はお太鼓の近接です。スズメともう1羽は何でしょうか。

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写真4番目お太鼓の近接です。ウグイスみたいですね。

明日も近接写真で個別の鳥を紹介します。
[ 2014/11/20 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

笹の意匠の帯留の帯合わせ

第二千九百八回は、笹の意匠の帯留の帯合わせです。

昨日は、帯と帯留を笹で重ねてみましたが、今日は帯の模様に足りないものを帯留の笹で補う、というテーマで合わせ方を考えてみます。

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いちばん上の写真は、花也の染め帯「琳派梅松模様」に合わせてみました。この写真は腹文で、模様としては松しかないですが、お太鼓は三角定規のように2つの湊取りが交わる中に梅と松が描かれています。私はこういう帯を見ると「なぜ梅と松だけなんだろう、竹があれば松竹梅ということで、季節に関係なく着られるのに」と思うのです。というわけで、足りない竹を補って、春秋とも着られる松竹梅を作ってみました。

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写真2番目は、清原織物の綴の名古屋帯に合わせてみました。紫のラベルのある日本製の爪掻綴です。笹の葉のない竹は現実の植物ではなく直線模様のようですから、帯留で笹の葉を補ってみました。

普通の西陣の織物は、模様の色が変わるときに不要な色糸は裏に潜って渡り糸になります。一方綴組織というのは、模様の色が変わるときは不要な色糸は引き返してしまいます。そのためその場所は緯糸が途切れており、それをハツリ孔と言います。だから絵画のように自由にデザインすると生地がハツリ孔だらけになってしまい生地の強度が失われてしまうのです。綴の意匠というのは緯に長くつながり経に変化のないデザインが良いということですね。

しかしそれではただの横段になってしまいますから、綴における優れたデザインとは、自然な絵画のように見せながら、じつは緯糸が長くつながっているデザインであると言えます。そう考えると、横方向の竹というのは格好のモチーフなのです。そして笹の葉が描けないわけもそこにあります。今回はそれを帯留で補ったというわけです。

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写真3番目は、押絵の名古屋帯に合わせてみました。以前、菱一で仕入れたものです。竹と雀をテーマにしたもので、お太鼓には雀の外に竹もありますが、腹文は雀だけなので笹の葉を補ってみました。押絵の帯は、はじめ見た時とても斬新な感じがして思わず1本仕入れました。しかしその後、次々に現れてしまったので仕入れをやめました。

押絵というのは、それ自体は魅力的な芸術で、帯にするととても面白いのですが、カルチャースクールなどで習っている人も多く、アマチュアでもセンスの良い人がいて、けっこうすぐれた作品を作れてしまうので、商売しにくかったのです。でもまあ、最近は押絵で帯をつくる人も少なくなったので、また売れるかなあと思っています。

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写真4番目は、藤井絞の辻が花の帯に合わせてみました。生紬の生地を使用したもので、普通にも使えますが単衣用としても使えます。描き絵の技法で、筍が少し大きくなったぐらいの竹が描かれていますので、もう少し時間が経ったら笹の葉が出るでしょう。つまりここで補っているのは時間ですね。
[ 2014/11/19 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(5)

笹の意匠の帯留の帯合わせ

第二千九百七回は、笹の意匠の帯留の帯合わせです。

昨日紹介した笹の意匠の帯留を帯に合わせてみます。今回の帯留の特徴は具象的な文様、特に着物の意匠にも多い笹文であることです。このような作品は、単体で鑑賞するのは良いのですが、帯を限定し使い道を狭くする可能性がありますね。

今回の帯留の合わせ方は2通りです。1つは同じものを重ねて強調する合わせ方、もう1つは足りないものを補う合わせ方です。今日は、同じ笹の笹のモチーフを重ねます。理想は、エッシャーの騙し絵のように、平面の絵の一部が立体化したような錯覚を導くことです。なかなか難しいですけどね。

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いちばん上の写真は、花也の染め帯「楕円取笹柳文」に合わせてみました。楕円の中で、柳を背景に笹が描かれていますが、笹の形は同じですから、笹の1つが金で立体になったように見せる演出をしてみました。

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写真2番目は、花也の染め帯「松笹文」に合わせてみました。ダンマル描きで模様を描いて、その上に金描きと金糸の刺繍をしたものです。ダンマル液の濃淡により写生的なタッチに見えるダンマル描きと、装飾的な金彩・金糸の刺繍は本来異質なものと感じますが、中井淳夫さんが多用した技法で、意外と馴染んでしまいます。

笹の形は同じですから、くすんだ金の大きな笹と、光る金の小さな笹の組み合わせのように見える演出にしてみました。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の染め帯「兎笹文」に合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、糊糸目による作品です。腹文には笹と菊しかありませんが、お太鼓にあるメインのモチーフはうさぎです。幕末の蒔絵の名品で、東京国立博物館に展示されたこともあります。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の染め帯「笹の丸文」に合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。笹のモチーフは全く同じですね。金の上に金を乗せる合わせ方で、平面の模様の一部が立体化したように見せようと狙っています。


[ 2014/11/18 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

笹の意匠の帯留

第二千九百六回は、笹の意匠の帯留を紹介します。

素材は18金で、裏にk18の刻印があります。大きさは5cm×1.5cmです。

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いちばん上の写真は、表側です。

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留め金が変則的ですが、別パーツを併用する必要があるようです。

明日は帯に合わせてみます。どんな合わせ方が効果的でしょうか。

[ 2014/11/17 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせ

第二千九百五回は、一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせです。

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いちばん上の写真は、清原織物の綴の名古屋帯を合わせてみました。紫のラベルのある本物の日本製の爪掻綴です。着物では地上に立っている鳳凰を、帯では飛ばしてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。着物は、古代のユーラシア大陸に広く分布する対偶文ですから、それに合わせて西域をテーマにした意匠の帯を合わせてみました。着物は余白の多いすっきりした意匠なのに対し、帯は横段に模様を詰め込んだ余白のない意匠なので対照的です。一方、地色は濃い色どうしなので、横段が浮かび上がる感じですね。

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写真3番目は、織悦の袋帯「業平菱」を合わせてみました。着物が正倉院模様なので帯も正倉院で合わせたり、着物がエキゾチックなモチーフなので、帯もエキゾチックで合わせたり、としてきましたが、ここでは純日本的な有職文様で合わせてみました。

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写真4番目は、龍村の袋帯「錦秀遺宝文」を合わせてみました。正倉院、有職、名物裂などと並んで、日本のデザインの源泉の1つである平家納経を選んでみました。平安時代末期の平清盛の請願により制作されたものですから、平安時代に日本人が生んだデザインの集大成ということになるのでしょうか。

この反っくり返った鹿は、俵屋宗達の修復によるものなので、近世のセンスということになってしまうのかな。帯や着物のデザインを見たときに、その文様の起源を正確に言えるようになると、その着物がフォーマルなのかカジュアルなのかなど、雰囲気でなく理論的に説明できるようになります。呉服屋さんには必須の知識ですね。
[ 2014/11/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせ

第二千九百四回は、一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせです。

今回の付下げは、箔と刺繍だけの作品で友禅を使っていません。友禅という技法の特長は絵画性が高いことです。絵画性をさらに一歩進めて物語性のある意匠も得意ですね。今回は、絵画性・物語性に乏しいこの着物の弱点を補うように、友禅の染帯を合わせてみます。しかし、倉部さんの作品と互角に渡り合う名古屋帯というのは普通にはありません。そこで大羊居だけで合わせてみます。

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いちばん上の写真は、大羊居の名古屋帯「寿桃」を合わせてみました。

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写真2番目は、大羊居の名古屋帯「楽園」を合わせてみました。

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写真3番目は、大羊居の名古屋帯「高台寺」を合わせてみました。

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写真4番目は、大羊居の名古屋帯「八つ手」を合わせてみました。

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写真5番目は、大羊居の名古屋帯「更紗遊苑」を合わせてみました。

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写真6番目は、大羊居の名古屋帯「舞踏会」を合わせてみました。

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写真7番目は、大羊居の名古屋帯「桐」を合わせてみました。

和モノもエキゾチックものもありますが、着物と帯は存在価値が拮抗すれば合うものなんでしょうね。「更紗遊苑」が良いという人が多いでしょうが、どれでも悪くはないと思います。
[ 2014/11/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせ

第二千九百三回は、一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせです。

今日は、縞と格子と横段の帯を合わせてみました。どんな着物にも合うはずの縞や格子を、どんな帯にも合いやすい単彩で余白の多い倉部さんの付下げに合わせるという安易な企画です。誰で出来る帯合わせのはずですが、みなさん意外と、縞や格子の帯、特に袋帯って持っていないのではないですか。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。あらゆる着物に合う万能の帯です。おまけに「龍村」というみんなが知っているブランドですし。西陣の袋帯は一生に1本しか買ってはダメ、と言われたら、私はこれを買うでしょうね。

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写真2番目は、河村織物の「栄昌綴」のシリーズの1本で、「唐草七宝文」を合わせてみました。横段模様の内部は七宝繋文です。

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写真3番目は、喜多川俵二の名古屋帯「厚板綾格子」を合わせてみました。「厚板」というのは、名物裂の1つで能衣装などに多く使われています。中国から輸入されたもので、輸入された時に厚い板に巻かれていたためにこの名があるとされています。この帯の仲間は色違いもありますが、喜多川俵二の作品中でも使い勝手の良さで人気があります。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。「飛鳥間道」というのは、龍村の商品としてのネーミングで、本歌は「蜀江小幡」といいます。法隆寺に伝わる幡のパーツ(紐状の部分)として使われている裂です。

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写真5番目は、龍村の光波帯のシリーズの1本で、「太子菱繋文錦」を合わせてみました。「太子菱繋文錦」というのも、龍村の商品としてのネーミングで、本歌はじつは上の帯と同じ「蜀江小幡」です。色が違うだけでこんなにも雰囲気が違います。
[ 2014/11/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせです

第二千九百二回は、一の橋(倉部さん)の付下げの帯合わせです。

正倉院をテーマにした着物ですから、とりあえず同じく正倉院をテーマにした帯を合わせてみたいと思います。色や質感よりも模様の意味を優先して帯合わせができるのは、この着物が色も単色、余白も多い、それでいてフォーマルの存在感を持っているという、元々帯合わせが楽な着物だからです。

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いちばん上の写真は、坂下織物(すでに廃業)の「御門綴」のシリーズの1本で、複数の正倉院模様を巧みにコラージュしたものです。よくある正倉院柄だなあ、となんとなく見てしまいますが、「なんとなく」見られるということは違和感が少ないということですから、とても上手にコラージュしているということになります。本当は螺鈿とかろうけつとか、素材も技法も違うものが混ぜてある、フランケンシュタイン博士がつくった化け物のような模様なのです。

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写真2番目は、織悦の袋帯を合わせてみました。正倉院に伝わる唐花文様の裂の多くは、主文と副文の2種類の模様が並んでいるという様式になっています。

唐花文をテーマに帯をデザインするときは、普通は主文を中心に意匠化するものですが、なんとこの帯では副文が中心に大胆に近接していて、主文は途中が切れた状態でしか見られません。大きな模様がドーンとくるすっきりした印象ですが、とても思い切った意匠なんですね。

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写真3番目は、紋屋井関の「御寮織」のシリーズの1本で、銀平脱の合子をテーマにしています。銀平脱というのは古代特有の不合理なまでに面倒な技法を言います。用途は聖武天皇が使った碁石入れ(碁盤もあってそれは象嵌の傑作)で、インコチームと象チームがあります。

この帯は、インコチームと象チームの碁石入れを交互に並べた意匠です。金糸が主体の単彩主義の作品ですから、倉部さんの着物のに合わせた時に、全体の色数を増やさない帯あわせができます。

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写真4番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。上と同じく銀平脱の合子をテーマにしています。こちらもインコチームと象チームの碁石入れを交互に並べた意匠ですが、象をお太鼓に出すとインコは見えません。

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写真5番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。正倉院にある臘纈(ろうけち)屏風をテーマにしています。臘纈とは現代のロウケツ染ですが、染織史のいちばん始めに必ず登場する天平の三纈(さんけち)の一つです。古代の蝋は蜜蝋ですが、聖武天皇はビールを飲んだり蜂蜜を食べたりしたので、材料の蜜蝋が輸入されていました。その後は輸入がとだえたため日本では定着せず、ロウケツ染として復活するのは大正時代になってからです。

元の屏風は、木と象の模様で、この帯でもそうなっていますが、お太鼓には象しか出ませんね。精緻な西陣の織物でありながらも、素朴な古代の臘纈の雰囲気を出すように演出しています。
[ 2014/11/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋(倉部さん)の付下げの近接

第二千九百一回は、一の橋(倉部さん)の付下げの近接です。

今回紹介している付下げは、正倉院にある「樹下鳳凰双羊文白綾 (じゅかほうおうそうようもんしろあや)」に取材したものです。元の裂は、直径49cmの丸い形ですが、そこに樹下に鳳凰が向かい合っている文様と同じく樹下に羊が向かい合っている文様が同居している意匠です。どちらの文様も丸い裂の中央を外れているので、元は大きな裂でそれを丸く切り取ったものでしょう。

1つの樹下に2頭の同じ動物が向かい合うという文様は、対偶文あるいは対獣文といわれ、古代のユーラシア大陸に広く分布します。いちばん東はもちろん正倉院ですが、いちばんに西はヒッタイトかな。それともイベリア半島まであるんでしょうか。

模様の数は、マエミに2つ、オクミに1つ、胸に1つ、片袖に1つ、後ろ身ごろに1つずつです。メインのモチーフである鳳凰の対偶文は、体の前後に1つずつ、それ以外は植物文でお茶を濁しています。倉部さんらしく最小限しかありませんね。

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いちばん上の写真は、マエミの近接です。金でも色にバリエーションがあって、平板な絵になっていないことがわかります。

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写真2番目は、マエミの模様にさらに近接してみました。

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写真3番目は後姿の近接です。

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写真4番目は、後姿のもう1つの模様の近接です。
[ 2014/11/12 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ。実際に制作したのは倉部さん。

第二千九百回目の作品として、一の橋の付け下げを紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

正倉院の鳳凰文様をテーマにした箔と刺繍の作品です。縁蓋(プラスティックのシートを生地の上に置き模様の形をカッターで切る)を使ってくっきり仕上げた箔です。金箔というのは、銀の含有量によって金色の中でもいろいろなバリエーションが作れますが、そのために平板な感じはありません。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2014/11/11 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣の帯合わせ

第二千八百九十九回目は三勝の浴衣の帯合わせです。

昨日写真を撮りはじめたら意外に面白くて、いろいろ写真を撮ってしまったので、今日も特集させてください。浴衣の帯合わせで2日も3日も使ったら、いつも見てくれている方はがっかりしてしまうかもしれないですが、もう1日我慢してくださいね。

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いちばん上の写真と2番目の写真は、グレー地に意匠的な茶色の花模様の三勝の浴衣に、2種類の単衣の博多帯を合わせてみました。浴衣は、グレーと茶色という色だけ見れば年輩向けですが、大きな花という意匠を見れば若向けに見える浴衣です。こういう浴衣は、どっちつかずとも言えるし、年齢幅が広いとも言えます。

上の例ではピンクの帯で若向けに、下の例では茶色で大人向けにしてみました。

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写真3番目と4番目は、黒地に白の粋な雰囲気の三勝の浴衣に、2種類の単衣の博多帯を合わせてみました。上の例では、白と紺のくっきりした縞の帯を合わせて粋を貫き、下の例では茶色にして、普通の人に近づけてみました。ピンクにすればきりっとした若い人にもなりますよね。

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写真5番目と6番目は、多色の三勝の浴衣に、2種類の単衣の博多帯を合わせてみました。多色とは言いながら、派手ではない、でもグラデーションが綺麗、と言える、そこそこ年輩者でも着易い浴衣だと思います。帯合わせは、どっちも同じぐらいアリだと思います。
[ 2014/11/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣の帯合わせ

第二千八百九十八回目は三勝の浴衣の帯合わせです。

浴衣の帯合わせを真面目に論じるべきか迷うところですが、訪問着や付下げと同じような気持ちで帯合わせをしてみました。なぜ真面目に論じるべきでないと思うのか、それは浴衣と帯の寿命の違いです。浴衣の帯として最もふさわしいのは、正絹の単衣の4寸幅の博多帯ですが、とても丈夫で、50年ぐらい前のものでも普通に使えます。一方の浴衣は数年でへたってきますよね。だから浴衣と帯を合わせて買っても、両者が一緒に寿命を終えることはありません。帯は何枚もの浴衣をパートナーに迎えることになるので、いろんな浴衣に合うものを買っておくのが合理的なのです。

それも承知で、今回は勝手に帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、昨日の茶色地の葉と縞の浴衣に浅葱色の無地の単衣の博多帯を合わせてみました。茶色と浅葱色という補色関係で合わせてみました。浴衣としては地味?という感じの着物ですが、きれいな浅葱色を合わせることで華やかになりますね。

もし一本しか単衣の博多を買ってはいけないと言われたら、この浅葱色の無地が良いと思います。浴衣の基本は藍染の伝統を考えれば紺ですから、何枚も浴衣を買っているうちにいずれは紺を買うでしょう。紺と浅葱は、濃淡関係としてきれいな配色になるのです。

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写真2番目は、茶色地の葉と縞の浴衣に茶の無地と緑の縞の単衣の博多帯を合わせてみました。大人の浴衣として帯合わせをしてみました。大人は大人の着方をした方が良いですよね。

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写真3番目は、焦げ茶色地の大きな麻の葉の浴衣に濃紺と白の縞の単衣の博多帯を合わせてみました。巨大な麻の葉という大胆モチーフですが、手描きを思わせるような柔らかいタッチのために意外に着易くなった浴衣です。粋な太い縞のおびをw合わせて大胆を貫いてみました。

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写真4番目は、白地に茶系の縞の浴衣にピンクの無地の単衣の博多帯を合わせてみました。白地の大きな縞は、鬼平に出てくる船宿(じつは盗人宿)の女将みたいなイメージがありますね。今回はあえてピンクを合わせて堅気に戻ってもらいました。茶とピンクは意外に合いますね。

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写真5番目は、実質的には木綿の織物であるような浴衣に、野口の絞りの帯を合わせてみました。「三勝」という浴衣のブランドとして販売されていますが、実質は木綿の織物ということで、四寸の博多ではなく、八寸の絽縮緬の帯を合わせてみました。朝顔と雀という花鳥画のテーマを辻が花的に絞りで表現したものです。
[ 2014/11/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣

第二千八百九十七回目の作品として、三勝の浴衣を紹介します。

いまどきなぜ浴衣?と思われるかもしれませんが、当社はかつての城南電機の社長の「季節品は季節はずれに買い、季節はずれに売れ」という言葉にしたがって商売をしています。季節品を季節はずれに安く仕入れれば儲かるだろう、というのは誰でも考えることですが、「季節はずれに売れ」というのは、城南電機の社長でないと思いつきませんよね。

少し昔、夏に浴衣を着る人がほとんどいなかったとき、呉服業界は、戦前のようにみんなが浴衣を買ってくれると良いと願っていました。ところが、今は花火大会など夏の行事には若い人が制服のように浴衣を着るので、その願いは意外にあっさりかなってしまいました。しかし、そうなると浴衣はインクジェットで大量に染められ、海外で仕立てられ、スーパーで大量に売られるようになり、呉服屋は蚊帳の外になってしまいました。

呉服屋というのは、砂漠とか深海だけで生きている希少な生物なのかもしれませんね。環境が良くなると、他の生物に住処を追われてしまいます。今日紹介する浴衣は、そんな希少種を連想させる意匠を集めてみました。スーパーで売っていないもの、という基準で商売しているものですから。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。涼しげ、とは言えないためにあまり使われない茶色地に、縞のように並べられた葉です。葉というモチーフの柔らかさが、縞の粋を和らげています。

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写真2番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。巨大な麻の葉模様です。手描きのようなタッチが個性ですね。

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写真3番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。白地に色と縁差が違う縞です。

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写真4番目は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。じつは先染めなので、木綿の織物と言うべきでしょうか。

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写真5番目は、4番目の浴衣の生地を拡大したものです。

[ 2014/11/08 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせ

第二千八百九十六回目は堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみました。疋田と絞りという組み合わせは、江戸時代の小袖にいちばん多いパターンです。前期においては友禅が普及していないので、疋田と絞りが多いのは当然ですが、江戸時代トータルで考えても、友禅よりむしろ多いと思います。

そう考えれば、この帯はフォーマルに向いているということになります。本来カジュアルである名古屋帯なので紬で試していましたが、本筋ではなかったのかもしれませんね。というわけで、今日は本筋の付下げです。紬で使うときは、有名産地の高い紬か作家モノで使うと気分的に合うかもしれませんね。(本来値段で決めるべきではないですが、「気分」ということで。)

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いちばん上の写真は、花也の付下げ「流水に六角箱」を合わせてみました。帯の持つフォーマルな雰囲気がどの程度のものか確認するため、付下げの中でも特に格式の高そうな意匠を選んでみました。かつて安田が好んだ上品な奥さま向けのテーマですが、地色を黒にすることで個性的な感じが出ています。

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写真2番目は、花也の付下げ「波に千鳥」を合わせてみました。江戸時代の後期の白揚げの小袖によく登場する、千鳥が波間に飛ぶ、というテーマです。日本を代表するようなテーマで、これに親しみを感じないという人は鳥アレルギーの人だけだと思います。水色に藤ピンクという配色は明るくていいですね。

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写真3番目は、花也の付下げ「波に松」を合わせてみました。今回は波や流水という水モノが多くなってしまいましたが、これは、ガチっと菱形を組んだ堅固な帯の意匠と、流動的な水の意匠を対比するためです。着物に水の意匠は多いので、実践しやすい帯合わせだと思います。

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写真4番目は、花也の付下げ「四君子丸紋」を合わせてみました。帯の菱形の意匠に対し、着物を丸紋にしてみました。今回は黒地や墨色が多くなってしまいましたね。藤ピンクと黒が合うのは当然ですが、他の色ももっと試してみれば良かったです。
[ 2014/11/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせ

第二千八百九十五回目は堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせです。

今日は小紋(加工着尺)に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。帯の地色は、藤色というにはピンク、ピンクというには藤色です。若作りになりすぎない、色気も出過ぎない、良い色ですね。ただ、やけやすい色なので、この帯を締めている時は砂漠で迷ったりしない方が良いと思います。

着物の地色の濃い紫に対しては濃淡関係になりますし、飛び柄はどんな帯にも合いやすいですから、誰が見ても誉めてくれる帯合わせだと思います。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。紫の地色と干菓子の横段模様です。うさぎや白鳥などかわいいモチーフも見えますが、これも干菓子です。干菓子というテーマは何でも盛り込めて便利ですよね。横段は仕立て方によって市松風にもなりますが、色の変わる境界がグラデーションになっているので優しい雰囲気です。

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写真3番目は、野口の着尺を合わせてみました。正倉院以来の古典柄である葡萄唐草模様ですが、明るい水色の地色のおかげでポップな雰囲気になっています。

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写真4番目は、野口の着尺を合わせてみました。大きな葡萄の蔓の意匠です。上の作品と同じテーマということになりますが、こちらは葡萄唐草の様式というよりも、もっと写生的な雰囲気ですね。模様が大きく、しかも総柄というのは、帯合わせは難しいものですが、堰出の疋田は規則正しく並んだ模様で、着物の躍動的な模様とは反対なため、無難にあっているように思います。
[ 2014/11/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせ

第二千八百九十四回目は堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせです。

今日は紬に合わせてみました。

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いちばん上の写真は、真栄城興茂さんの琉球美絣を合わせてみました。大正時代に創始されたグラデーション表現が美しい木綿の織物です。沖縄の絣は日本本土の絣の先輩にあたり、当然本土の絣より歴史が長いので、大正時代に創始された、と書くと歴史が新しいのかと勘違いされてしまいそうですね。

これには事情があって、沖縄における地租改正は1903年であり、それまでは貢納布として織られていたので、自由には織れなかったのです。地租改正により、現金で税金を納めることとなり、自分の裁量で織物を織り、それで得た現金を税金として納めるようになりました。そのため、より高く売るためにデザインやネーミングに関心が向くようになって、創作的な紬が生まれたのです。つまり、大正に創始された琉球美絣は、沖縄の人が自分の意思で織った早い絣とも言えます。

紬というのは、藍で糸を染めたものが多いわけですから、藍色に合わなければ紬に合うとは言えません。そこでこの絣を選んでみました。藍色にもきれいに合っていますね。

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写真2番目は、久米島紬の細かい格子と合わせてみました。紬というのは、藍以外では泥染が多いですよね。泥染めの黒に近い焦げ茶に合わなければ紬に合うとは言えません。そこでこの紬を選んでみました。問題なく合っていますね。

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写真3番目は、新田機業の紅花紬と合わせてみました。今回の帯の地色はピンクではなく、赤みのある藤色です。明るい色であることは確かなので、やはり明るいきれいな色の紬と合わせて、お花畑的な帯合わせにしてみました。着ている人間もお花畑だとなお良いです。自分は明るくて良い人だと演出したい時は、こういう帯合わせで。

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写真4番目は、小岩井工房の上田紬と合わせてみました。杉村春子、池内淳子と言った女優さんたちが愛好したと言われる小岩井工房の上田紬です。手織りで草木染なのですが、なぜか都会的な雰囲気がありますね。お花畑になりたくない人に。
[ 2014/11/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の派生型

第二千八百九十三回目は堰出の疋田と刺繍の帯の派生型を紹介します。

この堰出の疋田と刺繍の帯の派生型はこれまで何度か紹介してきました。今日はそのおさらいです。

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いちばん上の写真は、菱形取りの堰出の疋田に、花の丸の刺繍を合わせたものです。刺繍については、この花の丸が基本の様式であったと思われます。注文もいちばん多いようで、刺繍の技もこの模様の時に最も熟練しているように見えます。

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写真2番目は、市松取りの堰出の疋田に、竜田川の刺繍を合わせたものです。堰出の疋田については、この市松取りが基本の様式であったと思われます。

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写真3番目は、堰出の疋田と刺繍を互い違いの横段に配したものです。これは派生型ですね。

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写真4番目は、堰出の疋田と刺繍を雪輪取りにしたものです。先日紹介した湊取りを合わせると、丸と三角と四角が揃いますね。堰出の疋田と刺繍の組み合わせで帯をつくるという1つの発想から、このような派生型がつくられ工房が経営されているんですね。
[ 2014/11/04 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の細部

第二千八百九十二回目は堰出の疋田と刺繍の帯の細部です。

いちばん上の写真から4番目の写真までは、お太鼓の刺繍の近接です。
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いちばん上の写真は、流水に楓と芦です。

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写真2番目は、流水に菊と垣です。

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写真3番目は、笹と芝です。

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写真4番目は、萩です。

写真5番目と6番目は、腹文の近接です。
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写真5番目は、笹と芝です。写真3番目に似ていますが、よく見ると違います。

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写真6番目は、流水に楓と芦です。いちばん上の写真に似ていますが、よく見ると配色の順番などが違います。

パターンとしては4通りですね。
[ 2014/11/03 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯

第二千八百九十一回目の作品として、堰出の疋田と刺繍の帯を紹介します。

昨日まで紹介していた帯と同じ東京の工房によって制作された、堰出の疋田と刺繍を組み合わせた作品です。堰出の疋田のパターンから見ると、こちらの方が先に作られていて、湊取りの方は派生型だと思われます。

制作者は、1つの思い付きで1つの作品しか作らないというわけではありません。優れた発想というのは、一生に何度もできるわけではないので、1つ思いついたら、それをタテにしたりヨコにしたりナナメにしたり、花の種類を桜にしたり菊にしたりラフレシアにしたりして、なるべく食い延ばそうとするものです。

また意匠の方も、派生型を作りにくいものもありますが、堰出の疋田を使うこのパターンはレゴみたいに組み換えできるので、派生型がつくりやすいです。おそらく最初は市松で、次にこの菱形、さらに雪輪、横段、七宝繋ぎとつくられていったと思います。湊取りは最後の方だったでしょうね。

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いちばん上の写真は、お太鼓です。

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写真2番目は、腹文です。刺繍は片側だけですね。

出し惜しみするようですが、細部は明日です。刺繍は全部で6個ですが、すべて近接で紹介します。
[ 2014/11/02 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせ

第二千八百九十回目は、堰出の疋田と刺繍の帯の帯合わせです。

今日は付下げに合わせてみます。昨日は紬に合わせてそれなりに使えるということがわかりましたが、今日は、帯が持つ本来のフォーマルっぽさを生かして付下げで試してみます。

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いちばん上の写真は、花也の付下げを合わせてみました。花枝がオクミから斜めに流れるようにつながっていくという訪問着の定番的な意匠ですが、生地は紬地で、地色はピンク、技法は安田由来の糊糸目というカジュアルかフォーマルかわからない着物です。帯合わせとしては、ピンクと黒の配色もきれいですし、紬地に糊糸目友禅という変則的な組み合わせの着物も、名古屋帯をフォーマルに使うには変則どうしで合っているように思います。

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写真2番目は、一の橋の付下げを合わせてみました。紅葉と芒の組み合わせですが、私はこのように大きくてシンプルな意匠は大好きです。問題は地色ですね。京都の友禅業界で知らぬ人はいない一の橋の会長が直々に指示して染めた色ということです。

まあ確かに、上司のいる立場ではこういう色は選べませんね。テーマにあった美しい色で唯一の正解だとは思いますが、この色を思いつくのは天才と白内障の人だけです。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは、中井亮さんです。レモンイエローともクリーム色とも思える明るい地色に大きな楓を描いたシンプルな意匠です。

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写真4番目は、花也の付下げを合わせてみました。笹の葉を水平に配して、四季の花を加えたものです。帯合わせというのは、丸いモチーフには角ばったモチーフ、飛び柄には流れるような柄、というように反対のものを合わせるのが常識ですが、逆もまた真なりで、同じパターンでシンクロさせてみるという合わせ方もありうると思います。今回は付下げの模様のパターンと帯の刺繍の模様のパターンをあえてシンクロさせてみました。

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写真5番目は、花也の付下げを合わせてみました。羊歯がテーマですが、地色の濃淡で湊取り(三角形)をつくり、その中に羊歯を収めています。上の例では刺繍の模様とシンクロさせてみましたが、ここでは堰出の疋田の湊取りとシンクロさせてみました。
[ 2014/11/01 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)