藤井絞の名古屋帯の帯合わせ

第二千八百五十八回目は藤井絞の名古屋帯の帯合わせです。今日は紬に合わせてみます。

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いちばん上の写真は、弓浜絣を合わせてみました。弓浜絣は山陰の木綿の絵絣の文化の1つです。日本で木綿が栽培されるようになったのは、おそらく中世末期で知多半島辺りといわれますが、江戸時代になると各地に普及するようになりました。特に伯耆地方の砂地が木綿栽培に向いていたようで、それに阿波から入手した藍染の技術と久留米から伝わった絣技術が加わって、日本のイメージの1つでもある木綿の藍染の絣文化が花開きます。

弓浜絣は緯絣だけなので技術的には基本技だけなのですが、劣っているわけではなく、緯絣が生み出す平明な美に気付いているので、わざと進化させないのです。そのかわり、この作品の海老のように、絵的に面白いものが多いですね。

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写真2番目は、大城永光の琉球絣を合わせてみました。上の写真とこの写真を見て、お気づきのことと思いますが、色数を増やさない帯合わせを試しています。帯は白も含めてわずか3色という色数の少ない帯ですが、だからこそ単彩主義を貫いて、着物も同じ色にして全身で3色を超えないようにしてみました。こういう帯合わせをすると、「都会的」と言ってもらえる確率が高いです。

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写真3番目は、秋山真和の綾の手紬を合わせてみました。緑と赤のクリスマスカラーの紬です。とんでもない色ですが、経緯ともに赤色になる経緯絣と、経が赤色、緯が地色の緑になる経絣を併用することで、赤色に濃淡が生じ、着易い雰囲気になっています。帯と違う色を加える例ですが、色数を増やしても野暮になるわけでもないようです。

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写真4番目は、読谷花織を合わせてみました。紫色の読谷です。着物の紫が持つ色っぽさを帯の紺が抑える感じですね。単彩とか多色とかにこだわらず、このぐらいの色のバリエーションが普通でしょうか。

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写真5番目は夏久米島を合わせてみました。帯は玉紬(しょうざんが有名すぎるので、生紬と言った方が通じやすい)なので、単衣の時期の帯として使うことができます。というわけで夏物の着物と合わせてみました。
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[ 2014/09/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の名古屋帯「波頭に千鳥」

第二千八百五十七回目の作品として藤井絞の名古屋帯「波頭に千鳥」を紹介します。

昨日紹介した藤井絞の疋田絞りは、気が遠くなるような手間を積み上げていくことに価値がある技法ですが、今日紹介する帯は辻が花の再現で、計算された絞りで模様を表現することに価値があるものです。一方が根性勝負であれば、もう一方は頭脳と技勝負ですね。どちらも工芸にとって必要なことですが、現代の状況では、根性は中国で代用できてしまいます。しかし技は代用できないので、辻が花系の方が価値が安定しているように思えます。

しかしながら、辻が花系の絞りには、絞るだけで染液に浸けないという手段があります。この作品は、本来の絞りの技法にしたがって、絞った後に染液に浸けて染めているわけですが、絞ってから筆で着彩するという技法で染めてしまう作家もいます。絞りの難しいところは、染液に潜らせても平気なぐらいに完全に防染することですが、筆で着彩するなら不完全な防染でよいので楽なのです。作家が楽しようが苦しもうがユーザーには関係ないことですが、絵画的表現が出来すぎてしまうと、友禅に近くなって絞りの意義が薄くなってしまいますよね。

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いちばん上の写真はお太鼓です。波頭と千鳥というシンプルな意匠、白も含めて3色というすっきりした配色です。友禅であれば、安易でベタなデザインといわれてしまうかもしれません。しかし、絞りだけで表現しているということならば、配色が3色も当然ですし、技法のかぎりをつくした複雑なデザインということになります。

絵画性の低い不自由な技法というのは便利ですね。何でも描ける友禅であれば意匠について人が求めるハードルは高くなります。

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写真2番目は腹文です。波頭か千鳥を選ぶようになっています。ホンモノの技法を使った絞りは、ユーザーに対してサービス良くないですね。空絞なら人気モチーフを全部並べてくれるかも。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。絞りの職人さんにとっては、この図案のように波と千鳥が近接していると絞るのが難しいということで、こういう箇所が腕の腕の見せ所だそうです。実際に絞りをしたことのある人でないと気が付きませんが、そういうチェックのポイントもあるんですね。
[ 2014/09/29 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

藤井絞の本疋田の名古屋帯の帯合わせ

第二千八百五十六回目は藤井絞の本疋田の名古屋帯の帯合わせです。今日は紬に合わせてみます。

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いちばん上の写真では、山下八百子の黄八丈を合わせてみました。まず基本の帯合わせとして、黄色と黒の配色で黄八丈を選びました。かなり個性のある縞ですが、帯は外見は大人しいものの本疋田の存在感でちゃんと受け止めていると思います。

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写真2番目では、大城カメの琉球絣を合わせてみました。一方が縞、もう一方が沖縄独特の模様単位による絣という片身変わりの着物です。片身変わりというと、演歌歌手が着ていそうな雰囲気です(偏見?)が、大人しくも存在感のある帯のおかげで普通に見えませんか。

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写真3番目では、佐藤トシの南部紬を合わせてみました。佐藤トシさんは、岩泉の製糸工場に勤めていましたが、工場廃業後、その一角を工房として借り、手織りで草木染の作品を制作していました。この作品は紫根染で、当時、毎年山菜採りのおじいさんに採取してもらった紫根で下染めし続け、5年かかってこの色まで発色した糸で織っています。

もう入手してから10年以上経ちますが、まだ独特の漢方薬のような匂いがします。現在の紫根染の多くは漢方薬の材料として中国から輸入したものを使っていると思われますが、これは岩手県で自生する珍しいものということになりますね。

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写真4番目では、結城紬を合わせてみました。昔の重要無形文化財の証紙のもので、百亀甲の総柄です。帯と似た暗い色の結城紬で地味な印象ですが、この地味どうしの組み合わせを、かっこいいに変えて着こなしてほしいです。
[ 2014/09/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の本疋田の名古屋帯

第二千八百五十五回目の作品として藤井絞の本疋田の名古屋帯を紹介します。

疋田絞はその誕生以来ずっと高級品で、特に全体に疋田絞りを施した総鹿の子といわれる小袖は、江戸時代を通してずっと憧れの商品でした。手間が非常にかかるから高級品なわけで、江戸時代において総鹿の子の小袖が憧れの対象だったのは、それがピラミッドや万里の長城のように、他人の人生を削って作ることで生まれる凄味を持っていたからだと思います。

しかしながら、現代では中国など人件費が安い海外で生産するという手があるので、その凄味も相対的です。海外の労働者は人生を削って作るというよりも、賃金をもらってつくるにすぎませんしね。

疋田絞の価値は、疋田の個数や巻きの回数で測ることができます。疋田の個数とは、反物の幅に疋田が何個あるかです。通常は40~60個、普通の高級品は55個が多いですが、この作品は60個あります。「60立」というのですが、おそらく現行品では最高でしょう。

巻の回数とは、縫い締め絞りをする時の巻の回数をいいますが、通常のものは木綿糸で4巻き、多いものは絹糸で7~8、モノによって11巻き絞ると言います。高級品の方が絞りに凹凸があって、中心のポチが小さくなるわけですね。ただしこれは疋田の個数との兼ね合いで、立が大きくなれば疋田自体が小さくなるわけですから、巻きの回数にも限界が生じます。この作品のばあいは、「60立」で絹糸で7~8巻きということになると思います。振袖の高級品は、派手さが出るように疋田の粒は大きく、その分、巻は多くということになるようです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。意匠のテーマは雲です。植物文に比べて地味に感じますが、このような一生に1本しか買わないような帯には、季節もない、人によって好き嫌いもない、雲のようなテーマが良いですね。色は黒地で、疋田部分が茶色です。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。

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写真4番目は、腹文の近接です。
[ 2014/09/27 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

よくわからない紬の帯合わせ

第二千八百五十四回目はよくわからない紬の帯合わせです。

昨日は友禅の帯で合わせたので、今日は西陣の織の帯で合わせます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「印度煌花文」を合わせてみました。フォーマルのイメージの強い龍村ですが、紬用の袋帯もつくっています。今はフォーマルより紬の方が好きでお金を使う方も多いですから、対応しているのでしょう。高価な作家モノの創作紬に創作的な帯を合わせるのではなく、西陣の伝統ブランドを合わせるというのは、着る人の着物の知識の深さが感じられるので良いです。

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写真2番目は、龍村の袋帯「鳳遊更紗文」を合わせてみました。これも紬用の袋帯ですね。格子の直線模様に対し、更紗の曲線模様の組み合わせです。織物による更紗模様は強い印象で、どんな着物にも負けないですね。普通の着物が相手では勝ちすぎてしまうかもしれません。

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写真3番目は、龍村の光波帯「印度五葉文」を合わせてみました。光波帯は仕立て上がりの名古屋帯で、龍村でいちばんベーシックなアイテムです。通常品は経錦(経糸だけが浮沈して模様を表現する古代からある技法)で織られていますが、この帯はそれに加えて、絵緯糸(生地の組織に貢献せず、模様表現だけのための緯糸、現代の西陣の基本技法)を併用しているため、少しだけ高いです。

本歌はインドの高価な金モールです。私は本歌を特定できていないですfが、金の薄板を芯糸巻いて作った金糸を織り込んだものですから、マハラジャが使うような高価な裂だと思います。黒とオレンジでかなりケバイ印象に創作されていますが、こうして合わせてみると結構使えます。色違いもあるのですが、そちらはケバくないかと思いきや、赤とオレンジなので、ケバいというかヤバい感じですね。龍村には獣みたいなところがあって、本性は上品な奥様の玩具ではないです。

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写真4番目は、龍村の光波帯「獅噛鳥獣錦」を合わせてみました。この帯も基本は経錦ですが絵緯糸を併用しているものです。本歌は、ペルシア絨毯を陣羽織に仕立てたもので、豊臣秀吉が所用したとされているものです。地色は黄色が本歌に近いですが、紺もあります。
[ 2014/09/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

よくわからない紬の帯合わせ

第二千八百五十三回目はよくわからない紬の帯合わせです。

はっきりした色の大きい格子は個性が強くて苦手、と感じている人は多いと思います。今回は幾何学的な着物に対して、対照的な絵画的な帯を合わせるということで、植物文の友禅の染め帯を選んでみました。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは野村さんで生地は紬、技法は糊糸目です。黒地のモノトーンで、くっきりした白い輪郭線を持つ楓模様ですから、帯も着物も強めどうしの組み合わせでバランスしています。着ている人間も強くならないと耐えられない感じですね。

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写真2番目は、野口の名古屋帯を合わせてみました。シルバーグレー地にゴム糸目の友禅で、青系の濃淡で描かれた更紗です。上で黒地を試したので、今度は白地を試してみました。着物の茶に対して更紗は青という補色、格子の直線に対して更紗は曲線というように、何もかも反対になるように計算してみました。

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写真3番目は、野口の名古屋帯を合わせてみました。しぼの大きい縮緬地に、ゴム糸目の友禅で菊模様を描いたものです。菊の花は、紫と濃紺と辛子色という野口のイメージカラーともいうべき3色で描かれています。普通の人は、華やかにしようとすると朱色を使ってしまうのですが、それによって若向けになり年齢制限ができてしまいます。野口は朱色を使わず、紫と濃紺と辛子色を使って華やかにするのです。だから年配者も着られる華やかな着物ができるのです。

きりっとした格子の着物とは反対の、京友禅らしい意匠の帯です。着物の雰囲気が緩和されているでしょうか。

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写真4番目は、加賀友禅作家中町博志の」友禅の名古屋帯「野蒜」を合わせてみました。帯の地色は茶とは補色関係の水色です。加賀友禅らしい優しい雰囲気ですが、中町さんが持つ絵画の力で着物の迫力に負けていないのではないでしょうか。
[ 2014/09/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

よくわからない紬

第二千八百五十二回目の作品としてよくわからない紬を紹介します。

問屋にはいろんな種類があって、この問屋は私が掘り出し物を探す問屋です。名前を言えば、業界の人はお洒落とも名門とも思わないでしょうが、社長の人柄か意外と掘り出し物があるんですね。たとえば、昔そこでまとめて安売りされていた博多帯を無意識に買ったら、全部最高ランクの金マーク(当時の基準、2番目は緑マーク)だったということもありました。

今日はその問屋の恒例行事であるハンパ市で仕入れたものです。こういう行事はとても楽しいし、呉服屋の力試しにちょうど良いのです。大羊居のようなブランド物だけ仕入れているのでは、ヴィトンのバッグを並べているのと同じで、お金さえあればだれでもできますものね。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。手紡ぎ真綿らしいのですが、ラベルが破れ産地の情報がわかりません。わかるのは「本真綿 手織紬 ○○の里」だけです。思い当たるものはありません。

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写真2番目は近接です。大胆な格子で、赤い糸も入っていますね。

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写真3番目は拡大です。
[ 2014/09/24 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

水晶と鼈甲と瑪瑙の帯留の続き

第二千八百五十一回目は水晶と鼈甲と瑪瑙の帯留の続きです。

紅型の着物というのは、もっとも帯合わせの難しい着物です。では紅型の帯と帯留の関係というのはどうなのでしょうか。今日はまず3つの帯留を紅型の帯に合わせてみます。次に、帯の主役でありながらまだ試していなかった西陣の袋帯にも合わせてみます。

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いちばん上の写真は、水晶の帯留を玉那覇有公の紅型の名古屋帯に合わせてみました。顔料を使った強い色の上に、何色を合わせるかと考えたときに、普通は無地を考えるでしょうが、ここでは一歩進めて透明な帯留を合わせてみました。

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写真2番目は、鼈甲の帯留を城間栄順の紅型の名古屋帯に合わせてみました。考えてみれば鼈甲も南の海の仲間ですね。

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写真3番目は、瑪瑙の帯留を玉那覇有公の藍型の名古屋帯に合わせてみました。青とベージュの補色関係です。

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写真4番目は、水晶の帯留を池口平八の袋帯「琵琶湖」に合わせてみました。琵琶湖の水面を西陣の織の技法で表現した帯です。水滴に見えることを期待して水晶の帯留を合わせています。

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写真5番目は、「琵琶湖」の袋帯の地の部分を拡大してみました。緯糸として芯糸の周りに琵琶湖の水の色を思わせる透明なポリエステルフィルムを巻いた糸を使っています。その糸には金糸を巻いた部分もありますね。琵琶湖の水面を写実的に表現するため、こんな特撮みたいな努力をしているんですね。

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写真6番目は、鼈甲の帯留を、織悦の袋帯「能衣彩間道」に合わせてみました。織悦の袋帯にこんなパターンがあるというのはあまり知られていないと思います。

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写真7番目は、瑪瑙の帯留を、織悦の袋帯「ペルシア巻花蔓」に合わせてみました。細かい更紗模様の上の平板な帯留を載せてみました。柄がごちゃごちゃした更紗の着物の上に無地系の帯を合わせた感じです。
[ 2014/09/23 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

水晶の続きと鼈甲と瑪瑙の帯留

第二千八百五十回目は水晶の続きと鼈甲と瑪瑙の帯留を紹介します。帯にも合わせてみます。

昨日の水晶の帯留は、使い勝手がとても良いということがわかりましたので、今日は鼈甲と瑪瑙の帯留も使って3者を比較してみます。まず、龍村の光波帯で比較し、次に沖縄の首里織で比較してみます。

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いちばん上の写真は、水晶の帯留を、龍村の光波帯のうち、干支の経錦シリーズで戌年に発売された「サンシャペルの犬」に合わせてみました。「サンシャペル」とはシテ島にあるサンシャペル大聖堂の意味ですが、有名なバラ窓ではなく別の場所の内装に取材したようです。

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写真2番目は、鼈甲の帯留を、龍村の光波帯のうち、「獅噛太子」に合わせてみました。法隆寺に伝わる「太子間道」はおそらく現存する世界最古の絣ですが、経錦で再現しています。再現するときにモダンな水色とし、模様を獅子の顔のようにアレンジしており、商品名として「獅噛太子」とネーミングしています。一般名のままでは商標登録できないからでしょう。

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写真3番目は、瑪瑙の帯留を、龍村の光波帯のうち、「遠州七宝」に合わせてみました。名物裂の「遠州緞子」をアレンジして商標登録できるネーミングをしたものです。

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写真4番目は、水晶の帯留を、ルバース吟子の首里織の帯に合わせてみました。何種類かの種類のある首里織の技法のうち浮織です。浮織というのは、生地に対し別の色糸を差し込みながら織っていくものですが、この作品は、その際に紋綜絖を使う綜絖花織です。ルバース吟子の作品は色がモダンですよね。水晶の透明感がふさわしいかな、というところです。

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写真5番目は、鼈甲の帯留を、宮平初子の70年代に織られた首里織の帯に合わせてみました。首里織の技法のうち浮織です。この作品は、別の色糸を差し込むときに紋綜絖を使わない手花織です。

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写真6番目は、瑪瑙の帯留を、伊藤敦子の首里織の帯に合わせてみました。首里織の技法のうち花倉織です。花倉織は首里花織と絽織を組み合わせた複雑な織物です。
[ 2014/09/22 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

水晶の帯留

第二千八百四十九回目は水晶の帯留を紹介します。帯にも合わせてみます。

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いちばん上は水晶の帯留です。

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写真2番目は、花也の夏の名古屋帯「三角割奈津草花文」に合わせてみました。紗や絽のいくつかのパターンを1つの生地の中に取り込んだ変わり織です。水晶のカットによって光が屈折するはずですが、細密な糊糸目の上にわざと帯留を置き、糸目の線が屈折するのを景色として演出してみました。

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写真3番目は、斜めからとってみました。他人の視線から見ればこんな角度で見えるのではないでしょうか。

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写真4番目は、野口の紗の名古屋帯に合わせてみました。ベージュ地に青の濃淡で更紗を描いたものです。青い更紗の上に帯留を置き、透明な水晶を青く見せるようにしてみました。サファイアには見えないですが、アクアマリンぐらいには見えるかも。

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写真5番目は、龍村の絽の袋帯「彩簾文」に合わせてみました。水晶を透しても、龍村の帯の模様は見えますね。

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写真6番目は、他人の視線を考慮して斜めから撮ってみました。

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写真7番目は、龍村の絽の名古屋帯「涼玉文」に合わせてみました。帯に帯留の模様を織り込むという、ネクタイをプリントしたシャツのようなおかしな意匠の帯です。 帯留を思わせる模様の中に、本当の帯留を潜ませてみました。絵が立体になるような騙し絵効果を狙っています。
[ 2014/09/21 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

千ぐさの訪問着の帯合わせ

第二千八百四十八回目は千ぐさの訪問着の帯合わせです。

昨日の訪問着に帯を合わせてみます。着物の模様については、桜ではなく梅ではないかと思った方も、少なからずいらっしゃるのではないかと思います。じつは小袖の意匠では、桜も梅も橘も幹の特徴を描き分けていないことが多いのです。この着物に描かれた幹と太い枝も、正確には桜というよりも小袖の様式を踏襲しているということです。ただ花びらの形が先端に割れ目がある桜の特徴を示すものがあるので桜にしています。立木模様を比較に出す場合において、桜の方が都合が良いですしね。

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いちばん上の写真は、大西勇の袋帯を合わせてみました。象と烏の組み合わせということで、ちょっとびっくりしますが、コプト織に取材したもののようです。象がいると、桜とも更紗ともつかない模様が、完全に更紗に見えてきます。すると本来フォーマルである訪問着がお洒落っぽく見えてくるという効果があります。

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写真2番目は、洛風林の袋帯「飾宝華文」を合わせてみました。本歌はよくわかりませんが、唐花文の一種です。茶系の地色に対し白地の帯はきれいですし、本来は外来でありながら日本のフォーマルとして定着した唐花文は、この着物に相応しいパートナーだと思います。

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写真3番目は、坂下織物の「御門綴」シリーズの1本で正倉院文様をテーマにした帯を合わせてみました。正倉院文様というのは日本でもっとも古い古典でありながら、外来の文様であるという二重性を持っているので、桜だか更紗だかわからないこの着物の模様とも違和感が無いように思います。

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写真4番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。名物裂である有栖川錦は有栖川家ではなく加賀前田家に伝来し、現在は前田育徳会が所蔵しているものですから、なぜ有栖川というのかわかりません。また織られた場所についても琉だから中国だろうと言われますが、オスマントルコとしている本もありますね。有名なわりに謎の多い裂です。

今回は着物の中にある有栖川錦を連想させるカクカクした鹿と鳥に合わせてみました。

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写真5番目は、紋屋井関の袋帯「銀平脱合子」を合わせてみました。銀平脱合子は聖武天皇が碁をした時の碁石入れで、正倉院に現存しています。象さんチームと鸚哥さんチームがあり、日本で最も古い古典の一部でありながらエキゾチックな雰囲気です。余分な色を使わない金地の帯です。茶系に金は安心して合わせられる定番の帯合わせですよね。
[ 2014/09/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千ぐさの訪問着(北秀の商品)

第二千八百四十七回目の作品として、千ぐさの訪問着を紹介します。北秀の商品として製作されたものです。

北秀といえば東京でもっとも高級な友禅の取り扱い、しかもセンスの良いということで知られた問屋です。千ぐさはその北秀が扱っていた工房の1つです。北秀はこの作品を製作してしばらくして破産しましたが、千ぐさも最近残念ながら最近廃業してしまいました。工房は都内ですから土地は高いですし、廃業して悠悠自適みたいですね。

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いちばん上の写真は全体です。千ぐさの作品の中でもおそらくもっとも本格的な作品でしょう。模様面積が広くて重厚な作風ですが、同時にいつもの洗練も残しています。重厚と洗練が両立できるというのは珍しいです。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。謎の多い意匠だと思います。幹や太い枝の曲がり方や表皮の描き方を見ると、木の種類は桜のようです。しかし、細い枝は曲線を描いて更紗に見えます。花や葉を見ると、桜も更紗もどちらも混じっているようです。

桜と更紗といえば、和風とエキゾチックということで全く異質なものが混じったようで気味が悪いですが、そのような意匠の源流を求めると、江戸時代後期の蔓草模様に行き当たります。曲線模様といえば、誰でもとりあえずアールヌーヴォーが思い浮かぶでしょうが、その数十年前に日本で曲線模様が流行していました。はじめは小袖の模様として蔓植物を好んで描いていたのですが、やがて梅や桜など蔓植物でないものまで蔓のような曲線で描いた意匠が現れました。さらに直線の代表であるようなアヤメや燕子花まで蔓植物として描くようになります。

もう植物の種類などどうでもよく、単なる曲線嗜好なんですね。不合理なものがまかり通るということは、すなわち流行ということだと思います。アールヌーヴォーより早いというのが意義深いですね。

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写真3番目は近接です。この作品でただ1羽いる鳥です。ここが模様のメインということになるでしょうか。ただし鳥自体は小さいですから、作者の意図としては、メイン柄に注目してほしいわけではなく、模様を全体として楽しんで欲しいということでしょう。更紗模様の味わい方に似ているように思うので、やはり更紗なのでしょうか。

江戸時代の小袖にある立木模様という図案は、インドの生命の木の翻案であるということなので、桜が更紗になるのもつながりがあるのかもしれません。そういうデザインの伝搬の歴史を無意識に、あるいは意識的になぞった作品なのかもしれませんね。

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写真4番目は近接です。謎は桜=更紗だけではありません。更紗の間にある、このカクカク模様も謎です。カクカクしたエアのような模様はやはり更紗のパターンとしてあるものだと思います。ではこのカクカクした鹿と鳥は何? 誰でも連想するのは有栖川錦ですよね。なぜここに、という気もします。意味があるのか、思いつきなのか、わからないですねえ。しかしまあ、あまり直線的に解釈できる作人というのも、ただの絵解きみたいで底が浅い感じがします、これぐらいエントロピーが高い方が良いのかも。
[ 2014/09/19 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

倉部さんの訪問着の帯合わせの続き

第二千八百四十六回目は倉部さんの訪問着の帯合わせの続きです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。平家納経に取材した帯です。この帯合わせは基本ですよね。誰からも異論はないのではないでしょうか。

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写真2番目は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。縞というのは粋というイメージがありますが、間道というと貴重品として舶載された名物裂だから格の高いイメージになります。実際に帯合わせをしてみると、どちらも混じりますね。フォーマルの道理に合っている気もするし、少し崩してお洒落に着ている気もします。

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写真3番目は、織悦の「彩悦錦」シリーズの1本「立沸地遠山文」を合わせてみました。遠山文様自体は典型的な古典ですが、この帯ではモダンなイラストのようなタッチに変換されてます。それによって、中啓を描いた着物も、古典の格式を失うことなく都会的な雰囲気に変換できた気がします。

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写真4番目は、しょうざんの徳田義三シリーズの1本「花兎」を合わせてみました。地も模様も金だけという帯です。それでも模様が認識できるのは、、模様部分に金でありながら微妙な色のついたポリエステルフィルムを使用していること、また地は本金の平金糸であるのに対し、模様部分のフィルムだけが捩じってあって、それによって立体感が生じていること、この2つの身によります。

柄がよく見えないからつまらない、なんていう人もいるでしょう。見る人の鑑賞能力に期待するような作り方で、作家モノらしい思いきりですね。帯合わせをしてみると、金だけ、ということがすごく有利だとわかります。

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写真5番目は、龍村の袋帯「陶楽騎馬文」を合わせてみました。ペルシアやシリアで出土するイスラム陶器に取材した帯です。帯合わせをする時に、着物と帯のそれぞれのテーマの違い、時代の違い、というのが気になることがありますが、そういう懸念は、こういう外人ネタを見ると何でもないような気がしてしまいますね。
[ 2014/09/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

倉部さんの訪問着の帯合わせ

第二千八百四十五回目は倉部さんの訪問着の帯合わせです。

今回の訪問着のテーマである中啓は、公家が檜扇の代わりに持ったり、武家が最高の正装のときに持つものであったとのことですが、それに松竹梅を組み合わせたものですから、模様の意味としては訪問着というよりも色留袖がふさわしいようなドフォーマルな着物ということになります。

そう考えれば、合わせる帯は留袖用ともいうべき格の高いモノということになりますね。しかしながら、この着物は都会的な洗練された雰囲気も持っています。ドフォーマルと都会的洗練というのは、本来両立しにくいものです。たとえば松竹梅鶴亀のような着物で、お洒落というのはあまり見たことがありませんよね。この着物は珍しく両立しているので、それを生かしてあげるような帯合せもしてみたいです。

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いちばん上の写真は、梅垣の綴の袋帯を合わせてみました。地が綴組織で模様は西陣の織物らしく絵緯糸で表現されています。引き箔の糸が非常に細く裁断されていて、かつての上のランクの梅垣は流石ですね。テーマは格天井です。格天井という模様は直線で四角く区切られて、石造りの建築のようなガチっとした構成になりますから、フォーマル感が強いです。

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写真2番目は、北尾の綴の袋帯を合わせてみました。この帯も上の作品と同じく、地が綴組織で模様は西陣の織物らしく絵緯糸で表現されています。王朝的なモチーフである道長取りです。中啓と合わせて公家のイメージでまとめてみました。
ただしこの帯は、フォーマルでありながら洗練された雰囲気もありますね。

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写真3番目は、紫絋の袋帯を合わせてみました。織りだされているのは懐紙入れですから、器物模様ということになりますね。しかし懐紙入れには菊や桐文などの模様が描かれているという設定になっていますから、懐紙入れはそれ自体がテーマであるとともに模様を導き出す装置でもあるんですね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「海音装映錦」を合わせてみました。龍村の中でもランクの高い帯です。海の波の情景を西陣の織の技術で表現しているわけですが、細く裁断した引き箔を使って細密に表現しているので、「海音」が聴こえるぐらい写実的なのですが、この作品はそれにとどまらず、琳派かと思うような装飾性さえ感じます。
[ 2014/09/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

倉部さんの訪問着の細部

第二千八百四十四回目は倉部さんの訪問着の細部です。

良い刺繍作品とはどういうものだと思いますか。職人さんが人生そのものを惜しげなく捧げたような全身を覆うようなものが良いと思いますか。それとも顕微鏡で見たくなるような細い糸で細密に繍ったものが良いと思いますか。私は刺繍も芸術作品であるならば芸術的なのが良いと思います。

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いちばん上の写真は、マエミにある中啓の細部です。

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写真2番目は、さらに近接してみました。

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写真3番目は、後姿の中啓の細部です。
[ 2014/09/16 ] 繍箔 | TB(0) | CM(2)

千切屋治兵衛の訪問着。制作は倉部さん

第二千八百四十三回目の作品として千切屋治兵衛の訪問着を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

テーマは中啓と松竹梅です。中啓というのは、中国製の扇子といえばいいのでしょうか。団扇を折り畳み式にして扇子を発明したのは日本人ですが、その扇子を中国に輸出したところ、中国人は骨の片側にしか紙が貼っていないのは手抜きと感じ、両側に紙を貼ったのです。そうしたら紙の厚みできっちり閉じなくなってしまったのですが、その状態で逆輸入されてきました。ただのオマヌケ商品のように思いますが、日本では先進国である中国製ということで身分の高い人が儀礼的に使うようになったのです。能や狂言では見られます。

全体の模様の配置は、前姿と後姿に中啓が1つずつです。中啓の中味は、前姿が紅白梅と松、後姿が紅白梅と竹です。その周囲と、胸と袖には、金描きの松が散らされています。堂々たる訪問着ですが、倉部さんらしく仮絵羽ではなく反物状態です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目はマエミの近接です。

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写真4番目は後姿の近接です。
[ 2014/09/15 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

銘仙の着尺の帯合わせ

第二千八百四十二回目は銘仙の着尺の帯合わせです。

今回は龍村を中心に西陣の帯で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「スウェーデンの鳥」を合わせてみました。スウェーデン刺繍をテーマにした作品で、刺繍のステッチを織物で表現しています。1つの染織技法の特徴を、別の染織技法で真似しているわけで、なんだか妙な気がします。

模様のテーマは着物の花に対して、帯は鳥にしました。色は多色どうしですが、帯の白地によって両者が隔離されているため、混ざってしまうことはなく、むしろ調和して見えます。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「豊穣文」を合わせてみました。エジプトの王家の谷にある遺跡の1つの壁画をテーマにした作品です。着物の菊模様から思い切りテーマを変えて古代の外国のモチーフを持ってきました。今、あえて銘仙を着たいという人なら、帯も思い切った方が良いのではないか、という発想の帯合わせです。

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写真3番目は、龍村の光波帯(仕立て上がり帯)「ペルシア佳人」を合わせてみました。宮廷生活を描いたミニアチュールをテーマにした作品です。オレンジ~朱色系の帯です。着物も帯も柄が混んでいるどうしですが、帯の色が単彩主義ですし、模様も繰り返しなので意外と鬱陶しくないかも。

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写真4番目は、龍村の光波帯(仕立て上がり帯)「日野間道手」を合わせてみました。名物裂の名品を帯にしたものです。きりっとした縞ですが、ピンクの色もあってかわいさもあります。東京国立博物館のある本歌は、退色を考慮すればほぼ同じ色だと思います。このようなきりっとした縞ではなく、じつは段文で波形です。

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写真5番目は、太西勇の袋帯を合わせてみました。正倉院御物の蝋染の屏風をテーマにした作品です。着物も帯も地色が紫というのを狙った帯合わせです。

今回は西陣の帯と合わせるということで、銘仙を京都の古い伝統文化と合わせるのだろうと期待した方、残念でした。じつは外国モチーフを取り入れるのもまた西陣の得意分野ということでマクベスの魔女の予言のような罠でした。日野間道も舶来ですしね。
[ 2014/09/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

銘仙の着尺の帯合わせ

第二千八百四十一回目は銘仙の着尺の帯合わせです。

今日は染め帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、藤井絞のうさぎの帯を合わせてみました。このような意匠の帯は、友禅のような絵画性の高い技法で表現すると、おそらく通俗的な雰囲気になってしまいます。ファンシーショップで売っている雑貨のイメージですね。しかしながら、この作品は絞りであるために救われています。絞りというのはもともと絵画的表現に向かない技法ですが、それで苦労して絵画表現をしているために(辻が花とはそういうもの)、あまり通俗的にならずに済んでいると思います。

これまでのアンティーク銘仙のファンも納得する帯合わせではないでしょうか。

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写真2番目は藤井絞の辻が花写しの名古屋帯を合わせてみました。帯の生地は紬です。辻が花の高度な作例として現存しているものを、かなり忠実に写したものです。生地は生成りで、模様の部分に色がついています。これを染液に浸けて表現するのは極めて高度な技術です。

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写真3番目は、藤井絞の名古屋帯を合わせてみました。「パリオペラ座の屋根」というテーマです。絞りというのは生地を摘まんで圧力かけて防染して染液に浸けると、摘まんだ部分が染め残るという原理ですが、その原理を考えると、このような絞り表現は極めて困難だと気づきます。感性重視の個人作家ではできない職人技ですね。ついでに言えば、デザインもすごく良い。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。着物が具象的な花模様なので、抽象柄の帯にしてみました。テーマは斜線と水玉で、色は黒と茶色と金、かなり個性の強いモノで、着物の多色を押さえ込んでいます。銘仙の波乱の歴史も押さえ込んでいる感じです。

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写真5番目は、野口の友禅染の名古屋帯を合わせてみました。生地はしぼの大きい縮緬です。帯と着物が染めと織で技法は違っていても、テーマが菊の花で同じだったらどうなるんだろうというテーマです。まさかこういう合わせ方をする人はいないだろう、という帯あわせです。
[ 2014/09/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

銘仙の着尺の帯合わせ

第二千八百四十回目は銘仙の着尺の帯合わせです。

銘仙の帯わせというテーマは難しくて、かつ重要です。なぜ難しいのか。銘仙が流行していた昭和30年代より昔、世間は絹の着物を着ていれば上等で、このブログで試しているように、知的なゲームとして帯合わせを論じることはなかったので前例がないからです。

なぜ重要なのか。現在までのところ、銘仙が復活したと言ってもアンティークマニアの間にとどまっています。普通に着物のカテゴリーとして確立するためには、アンティーク文化だからアンティーク系の帯と合わせるというのではなく、今のおしゃれな帯で帯合わせができなといけないと思うからです。沖縄の花織の帯や、龍村の帯と自然に合わさってこそ、お洒落な着物として本当に復活できるのではないでしょうか。

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いちばん上の写真は、林織物(林正機、現在は林宗平工房)の塩沢紬の帯と合わせてみました。沖縄の織物でヤシラミと呼ばれるパターンで織られています。また緯糸の色を変えることで段模様のように見せています。着物が多色で絵画的な意匠ですから、帯は絵画的でないものにしました。また色は着物との調和を考えて、花の黄色や葉の緑との共通性を意識しました。

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写真2番目は、丹波布の八寸の名古屋帯を合わせてみました。丹波布伝承館で制作された作品です。銘仙の色は中途半端なモダンっぽさがアンティークの味わいで面白いわけですが、その色を飼い馴らすようなポップな黄色の絣を選んでみました。こういう色の丹波布って、私は気に入って仕入れましたが、珍しいですよね。

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写真3番目は、仲井間香代子のロートン織の八寸の名古屋帯と合わせてみました。今回の銘仙を眺めていると、色は黄色と茶色が印象に残りました。この2色がアンティークっぽさの源かなあと思います。というわけで帯は黄色を。

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写真4番目は、ルバース吟子の首里織の九寸の名古屋帯と合わせてみました。技法は浮織ですが、手花織と綜絖花織を併用しています。明るい茶色ということで選んでみました。ルバース吟子の作品というのは、沖縄モノの中でも特にモダンで都会的ですよね。だからこれが合うことは、銘仙がアンティークマニア以外にも復活する条件の1つではないかと思います。
[ 2014/09/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

9月10日の記事に対するコメントの参考写真

9月10日の記事に対するコメントの参考写真です。

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[ 2014/09/11 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

銘仙の着尺

第二千八百三十九回目の作品として銘仙の着尺を紹介します。

このブログで銘仙を紹介するのは初めてです。私も仕入れるのは初めてですから。私が仕入れたというか、母親が懐かしがって仕入れちゃったんですね。いくつも仕入れようとするので、やめさせようとしたのですが、親を怒鳴りつけるのも世間体が悪い、だからまあ1反にしておきなさいと言ったのです。どれが良いと訊かれたので、記念に買うならいちばん典型的な柄にしたらと言ったらこれを選んだようです。

江戸時代後期の風俗を論じるときは、たいてい守貞謾稿という本に載っているかどうかということから調べます。銘仙を論じる人たちも、守貞謾稿から説き始めていますね。銘仙の主な産地は、足利、桐生、伊勢崎、秩父など北関東各地ですね。昭和30年代頃まですごく流行って大量に流通していたので、今でも古着市場には一定の量があります。そのため、かつての古着ブームの時は主役でした。今でも古着マニアの間では人気がありますが、それを見込んでかつての産地では復刻版がつくられています。今日紹介するのもそのような一点です。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。多色で絵画性の高い絣織物です。地方の絣織物といえば、素朴な雰囲気をウリにするものが多いです。草木染で、手紡ぎ真綿の糸で、絣であれば手括り、織りは手織りというのが現代の高級品の条件だと思います。それに対し、銘仙は同じ絣織物ながら、最新のデザインを取り入れて流行を追うという全く反対の発想で織られていました。

銘仙が衰退した理由もそこにあるでしょう。最新流行を追えば、常に最新のものと競争しなければならないことになり、相手はプリントなど日々進歩するわけですから、頑張ってもいつかは滅びます。キリスト風に言えば剣を取るものは剣に滅びるということです。古着の人気商品として銘仙が復活したのも、時代が変わって流行を追うものでなくなったからです。

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写真2番目は近接です。絣の技術で、こんなに多色でこんな絵画的な意匠を表現してしまうのですから、当時のハイテクだったんですね。

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写真3番目は拡大です。絣は総て経絣だったということがわかります。技法的には、銘仙といえば、ほぐし絣という技法が有名です。その原理は、絣にしたい糸を木綿を相手にざっくりと織り、布地の状態にしてから型紙で柄を染め、それをほぐして正式に織るというものです。現代はブロック捺染というのもあります。経糸を張って固定し型で模様を捺染し、そのままずれないように巻き取って、正式に織るというものです。現代の復刻版はどちらで織っているのかわかりませんが、それぞれの過程で生じる模様の微妙なズレが味わいです。

[ 2014/09/11 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「装華遥映錦」の帯合わせ

第二千八百三十八回目は龍村の袋帯「装華遥映錦」の帯合わせです。

美しいキモノ2014年秋号(最新号)の表紙では、片山文三郎商店の絞りの振袖と合わせて、柴崎コウさんが着ています。片山文三郎商店の絞りの振袖というのは、少し昔は三越で売っていました。もう何年も前ですが、三越に福袋を買いに行ったときに、ライオン像の近くのショーウィンドウにお正月イメージの演出として飾られていたのを覚えています。

今回の片山文三郎の振袖は黒地の絞りに刺繍をしたものです。私も黒地で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、竹田庄九郎ブランド(竹田嘉兵衛商店)の振袖を合わせてみました。絞りの疋田には、疋田の大きさと縫締めて絞るときの巻の回数による違いがあります。疋田の大きさは反物の幅に何個あるかで判定します。巻の回数は頂点のポチの大きさで判定します。この振袖は本疋田といわれる最高品ですが、疋田の大きさと巻の回数はトレードオフの関係にあり、振袖のばあいは、疋田は大きめ(数は少ない)で巻が多い(立体感が強い)ですね。

竹田庄九郎のばあいは、標準の絞りの振袖は多色、本疋田は単色が多いように思います。この帯合わせは、単色の着物に多色の帯でポイントにするパターンです。

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写真2番目は、大羊居の振袖を合わせてみました。着物好きの人が、一生に1枚でも大羊居を買えたらけっこう幸運な着物ライフだと思います。なかなか娘に大羊居の振袖を買ってやる親はいませんよね。大彦や大羊居といえば帯は龍村ですが、このばあいは薬玉と華文と異なるものの花の丸い模様どうしが重なるかな。

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写真3番目は、中井淳夫の振袖を合わせてみました。  江戸時代後期に流行した瀧模様小袖を写した振袖です。江戸時代の本歌は、白揚げで瀧模様を描いた後、花模様の部分を多色の糸で刺繍して彩りとしています。それに対し中井の作品は、白揚げ部分を胡粉仕上げとし、地色の黒と金のみの仕上げです。黒白金だけの凄味のある振袖です。

色のない世界に多色の色を加える帯合わせです。凄味のある着物に帯はかわいすぎるか、それともこのぐらいのかわいさで緩和しなければ、20歳の成人式に向かないか、実際に人間に合わせてみるとわかるでしょうね。

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写真4番目は、岡重の振袖を合わせてみました。黒地に大きな桜の花、桜の花はそれ自体が模様であるとともに、同時に取り方(模様の容器)にもなっていて、中に菊や萩の秋草が入っています。伝統的な友禅模様でありながら全体の雰囲気はポップです。

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写真5番目は、岡重の着尺を改造してつくった振袖を合わせてみました。小豆色の地色に小紋としては大きい桜の模様です。成人式よりパーティー着の雰囲気で、25歳ぐらいになってから友人の結婚式で活躍しそうです。では成人式当日は寂しいのか、ということで、その対策としてフォーマルの王道である龍村の袋帯を合わせることで、全体の雰囲気をフォーマル方向に修正しています。
[ 2014/09/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

龍村の袋帯「装華遥映錦」

第二千八百三十七回目の作品として龍村の袋帯「装華遥映錦」を紹介します。

美しいキモノ2014年秋号(最新号)の表紙です。表紙では片山文三郎商店の絞りの振袖と合わせています。当店が雑誌に掲載するときは、たいてい自分の意思でなく問屋の付き合いです。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は、模様部分の近接です。主文的な模様である華文の近接です。華文には赤と緑の組み合わせと藤色と青の組み合わせがあって、お互い陰と陽のような関係になることで模様に深みを出しています。私は陰の方の色の組み合わせが好きなので、そちらを近接してみました。

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写真3番目は、模様部分の近接です。副文的な模様である格子模様の近接です。銀の引き箔による表現で、下の写真のツンツンしている糸です。主文である華文がふっくらした絹糸で織られているのに対し、模様として副文であるこちらは平面的な平銀糸で織られているので立体化が無く、奥に引っ込んでいるように見えます。糸は色や素材だけでなく形状もまた表現に貢献しているということになります。

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写真4番目は、帯の裏側の耳の部分です。ここを見るとどんな糸を使っているかわかります。内容表示によると、絹75%、ポリエステル11%、レーヨン8%、紙6%です。現在の西陣の帯の内容表示は無味乾燥に感じるかもしれません。しかし、じつは多くの情報を含んでいて、どんな帯かわかるためのヒントがあります。

例えば絹の比率は75%と低いですが、これはラメ系の糸の割合が多めであることを示しています。キラキラするわけですから、実物を見なくても派手な振袖用の帯かなあと分るわけですね。

また耳からは白い和紙の糸がツンツン出ています。これは本物の引き箔の糸です。表示で言えば「紙6%」ですね。割合としては少ないようですが、これは重量比です。和紙は軽いですから実際の量はもっと多いイメージになります。

また絹糸部分をよく見ると、細い金糸と銀糸が混じっています。これがポリエステル11%とレーヨン8%を意味します。ポリエステルフィルムが表面で、レーヨンが芯糸ということでしょう。絹糸の中に隠すように使っています。これは金色や銀色を表現するためではなく、絹本来の光沢に人工的な光沢をプラスして、振袖らしいキラキラ感を演出する役割を担っています。

この部分を見ると、帯の仕掛けや創作の意図がわかるわけですね。

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写真5番目は拡大です。花の水色の部分です。表面を肉眼で見るときれいな水色にしか見えませんが、絹の光沢と見えたものは、じつは細い銀糸で援護されたものでした。

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写真6番目は拡大です。緑の葉と縁取りの金色です。金色は黄色い絹糸と金糸の組み合わせでした。ただの金糸ではないんですね。
[ 2014/09/09 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「琳派楓」を長羽織またはコートに使うというテーマ

第二千八百三十六回目は千切屋治兵衛の着尺「琳派楓」を長羽織またはコートに使うというテーマです。

本来は小紋の着物である「琳派楓」を、長羽織またはコートに使って見た、という設定です。着物役には、染めの例として千切屋治兵衛の着尺、紬の例として久留米絣、久米島紬、塩沢紬を使ってみました。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の着尺「源氏香」を着物役に使ってみました。着物役の地色と、羽織役の模様の色は同じ黄緑色です。また、羽織役は飛び柄で、着物役は総柄ですから、配色も模様パターンも絶妙な組み合わせですね。実際の着物と羽織ではなく、呉服店が在庫を使って勝手にやっているエア羽織合わせだからできることですね。

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写真2番目は、久米島紬を着物役に使ってみました。普通の久米島紬は経糸が玉糸、緯糸が真綿糸ですが、これはモロといわれる経緯とも真綿糸の作品です。値段は2.5倍から3倍ぐらいします。糸のコストが高いだけでなく経糸が真綿だと絣が合わせるのが難しいのでしょう。

ベージュの羽織またはコートに対し、焦げ茶色の着物で、同系濃淡の組み合わせです。色合わせとしては基本ですね。

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写真3番目は、塩沢紬を着物役に使ってみました。塩沢には、お召の本塩沢と真綿の紬の塩沢紬があります。これは真綿のほうですね。絣は総て経緯絣です。経緯絣は、本来極めて高度なものなのですが、伝統的な絣産地というのは、さりげなく作ってさりげない価格で売っているものですね。一方、格子しかできない産地の紬でありながら、珍重されて高く売られているものもありますし、モノの値段というのは哲学的なものです。今回は珍しい緑色の紬で、羽織役の模様の色と合わせてみました。

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写真4番目は、久留米絣を着物役に使ってみました。作者は小川内龍夫さんです。絣というのは、経絣や緯絣は交わる相手の糸は地色なので、中間色になります。一方、経緯絣は経緯ともに白く防染された糸が交わりますから、色は真っ白になります。両者を組み合わせると濃淡表現になり遠近感のある作品になります。これが絣文化の最終形態であり、戦後の創作品の様式です。

着物役は本物の久留米絣ですから、藍の色そのものであり、配色としては羽織に対し全く配慮していない状態になります。でもそれが普通ですよね。羽織と着物の配色を合わせようとしたら、着物ごとに羽織も買わなくてはいけないことになってしまいますから。そんな無駄遣いはする必要なありません、これで十分ですよね。
[ 2014/09/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛「琳派楓」の着尺の帯わせです

第二千八百三十五回目は千切屋治兵衛「琳派楓」の着尺の帯わせです。

昨日は友禅の染め帯を使って帯合わせをしてみましたが、今日は西陣の織物を使って帯合わせをしてみます。龍村で試してみました。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「甲比丹縞格子」を合わせてみました。近世に東インド会社経由で日本にもたらされた裂は、木綿の縞である唐桟と金モールといわれる糸を織り込んだ裂で、モール段文などとして伝わる最高級の名物裂です。金モールとは、薄い金の板を芯糸に巻き付けた糸で、マハラジャが使うような特別なものだと思います。

モールというのは、私は残念ながら東博でガラス越しにしか見たことがありません。日本における金糸は金箔を和紙に貼りそれを裁断して芯糸に巻き付けるものです。インド式は、和紙に貼ることはないわけですから、金の板を直に巻くのでしょうかなんでしょうか。そうであればすごい値段であったはずですよね、一度、顕微鏡でチェックしたいものです。

さて作品ですが、「縞格子」というタイトルは妙ですよね。格子は縞を含んでいますから。名物裂として伝世する作品は段文ですね。帯合わせとしては、楓の黄緑と帯に地色を合わせています。

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写真2番目は、龍村の袋帯「印度煌彩文」を合わせてみました。本歌は私にはわからないのですが、花模様の段文です。帯合わせとしては、着物が葉、帯が花という関係です。こういう帯合わせがあるので、葉だけの模様の着物って存在意義があるのです。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「双鳥繍華文」を合わせてみました。黒地を試すという意味で合わせてみました。ここではタイトルに着目してみます。「繍」という文字がありますね。これは元絵が刺繍という意味です。刺繍というのは、人間が手で勝手にするものですから、デザインに繰り返しが無く自由です。刺繍を元絵にした織物作品は意匠が織らしくないという特徴があります。これは織物らしい繰り返しデザインの下の作品と比較すると明らかです。

帯合わせとしては、葉に鳥の組み合わせですね。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「花韻」を合わせてみました。白地を試すという意味で合わせてみました。花は色があって香りがあるものですが、音がするものではありません。だからこそ、この「花韻」というタイトルは巧みだと思うのです。実際の作品を見ると、花から音が響いているような、それも正確なリズムを刻んでいるような意匠ですね。

帯合わせとしては、葉に花の組み合わせですね。
[ 2014/09/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛「琳派楓」の着尺の帯わせ

第二千八百三十四回目は千切屋治兵衛「琳派楓」の着尺の帯わせです。

丸いふっくらした形の楓ですが、この形は琳派の意匠です。江戸時代の小袖の友禅模様にも登場しますね。琳派の絵として描かれた作品では、赤も黄色も緑もあって、装飾的な画面となっています。着物の模様にする場合には、赤・黄色・緑と3色入れれば紅葉が色づいていくまでの変化を表したものということで、秋の着物ということになります。

しかしこの着尺は意図的に、赤や黄色を外し青楓だけにしていますね。これは、地色との関係でたまたま緑がきれいだったからそうしたのでしょうか。それとも春物として着ろ、という作者からのメッセージでしょうか。今回は友禅の名古屋帯を使って帯合わせをしてみますが、帯のテーマを変えることで、春物、秋物両方に使えることを示したいと思います。

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いちばん上の写真は、花也の糊糸目の友禅の染め帯を合わせてみました。椿の葉を葉脈のみの線描きで表現しています。通常の友禅で描かれた花よりも、この線描き部分が難度が高いし、見どころですね。春の椿と合わせることで、この小紋は青楓で春物ということになりますね。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の友禅の染め帯を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。穂の付いた麦です。麦の収穫時期は麦秋といいますが初夏ですね。九州で5月、北海道で7月、大きな産地である丹波地方は6月というところでしょうか。単衣の時期にちょうど良いモチーフということになりますね。

この帯合わせでは、着物は単衣で仕立てて青楓と思って着ているという設定です。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の絽の糊糸目友禅の染め帯と合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。

三日月に風鈴に芒です。芒の穂は銀描きされていて、月の光を反射しているようです。夏の終わりと秋の始まりの風情ですね。9月の第一週の、ちょうど今日あたりに着る着物として帯合わせを考えてみました。着物はもちろん単衣に仕立ててあるという設定で、6月に麦の穂と合わせて着た単衣をまた出して着たということです。

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写真4番目は橋村重彦さんの糊糸目の友禅の染め帯を合わせてみました。小袖の取材した意匠で、比較的オリジナルの模様を崩さずにミニチュア化しています。

私はこのような作品を見ると「小袖写し」と思いますが、世間の人は「菊だから秋の帯」と思うでしょう。この場合は、10月1月に袷に仕立てた秋の着物として着たという設定です。春に椿と合わせて着た着物をもう1度出して、楓だから秋、緑の葉だけなのは(デザイン上の都合、と言うつもりで着たという設定です。
[ 2014/09/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺

第二千八百三十三回目の作品として千切屋治兵衛の着尺を紹介します。実際に制作したのは大和さんです。

青楓がテーマの飛び柄で、生地は紬です。これは春の着物でしょうか、秋の着物でしょうか。楓の形を見れば秋のイメージですよね、でも青楓だから春だという理屈も通ります。私なら、どちらでも自分に都合の良いことを言い張って両方着てしまいます。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は、近接です。

振袖の帯の概略というテーマ

第二千八百三十二回目は振袖の帯の概略というテーマです。

振袖に合わせる帯としては、振袖専用ともいうべき豪華で華やかな帯があります。これは見るだけで喜びを感じるような美しいものですが、振袖にしか使えないということで、買う立場にとっては贅沢なものですね。そこで派手目ではあっても、、訪問着や留袖でも使えそうな帯を選んでおくと、長い目で見て経済的ということはあります。今回は両方のパターンを紹介します。

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いちばん上の写真は、坂下織物の「御門綴」シリーズの1本です。坂下織物は10年以上前に廃業しています。坂下のこのシリーズは、帯の地が綴組織で、模様部分だけを絵緯糸で表現しています。だから爪掻綴と違って模様部分の裏に渡り糸があります。

背景が金地なので華やかな金屏風のようですが、金屏風と違って絵が盛り上がっていますから、さらに豪華です。美しいという点で異論のある人はいないでしょうが、それが仇となって振袖を着納めにする時に、いっしょに箪笥にしまうようでしょう。

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写真2番目は、龍村の袋帯「経巻彩花錦」です。装飾経の表紙か見返しの唐花模様を帯の意匠にしたものです。現代人の感覚だと、成人式に使おうという華やかな帯がお経の表紙の模様というのは変ですが、本来はお経はお葬式のときだけ唱えるものではなく、その装飾は古代では舶来の最新のデザインだったんでしょうね。

振袖に相応しい華やかな帯ですが、銀糸を中心にして色は抑制されているため、振袖専用ではなく訪問着や留袖にも使えます。

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写真3番目は、織悦の袋帯「東大寺花文」です。タイトルから東大寺に伝来する裂と分りますが、正倉院にもあるような典型的な上代の唐花文です。

唐花文というのは、主文と副文から構成され整然と並んでいるものです。唐花文の歴史を、理科で習う恒星の一生のように考えると、はじめは均等に模様が並んでいたのが、一方だけが肥大し、このような主文と副文に分かれ、この後、主文はさらに膨張して自分の質量に耐えられず崩壊するのです。そしてまき散らされた模様は、一度総柄の小紋のような散し模様となり、その後再び均等に並ぶ模様になり、さらに主文と副文が生じるというサイクルを繰り返すのです。

この意匠は典型的な唐花文ではありますが、模様に近接して、主文を脇に追いやり副文を中央に置いているのが個性ですね。織悦を振袖用に使うことの欠点は、全体が本金のため、美容院の着付け師が、遠慮なく変わり結びなどすると箔が損傷する危険があることです。そういうときは、全体がポリエステルフィルムの帯にした方が良いです。

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写真4番目は、華陽の袋帯です。華陽もすでに廃業しています。ネット絵販売されているのを見たら、それはすべて問屋などの滞留在庫です。「御門綴」と同じく、地が綴組織で模様だけが絵緯糸による表現です。

六通の雪輪模様で、派手な色を使っているわけではないので振袖用とは言えません。しかし金地ですし、雪輪も大きいので華やかさがあり、振袖にも使えそうです。「華やかだが派手ではない」という様式で、このようなものは万能性がありますね。

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写真5番目は、捨松の袋帯「寿桃」です。黒に見えるのは、じつは全体に引き箔が使われています。経糸は絹の黒い糸、緯糸は引き箔ですね。そのため見た目より軽いですし、色も真っ黒ではなく、かといって光りもせず、このような地色を見ると、西陣の織物とは引き箔の糸を使った芸術だと思います。そう考えれば、紬や絣のような他の織物と西陣の織物との本質的な違いが理解できます。

おしゃれも上品もかわいいも個性も全部ある帯ですね。私なら振袖に使って、その後一生使います。
[ 2014/09/04 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

振袖の概略というテーマのつづき

第二千八百三十一回目は振袖の概略というテーマのつづきです。


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いちばん上の写真は作者がどうというものでもないですが、まじめな悉皆屋さんの振袖です。技法的にはゴム糸目の手描き友禅です。光沢のある綸子の生地を使っているため、地色は金茶色との相乗効果で金色に光って見えます。

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写真2番目は千切屋治兵衛の標準品(とはいっても高級)の振袖です。技法としては手挿(型糸目輪郭線が型)です。意匠は琳派の草花模様を素直に描いたものです。余白の美も感じるすっきりとした意匠です。

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写真3番目は上の作品と同じく千切屋治兵衛の標準品の振袖です。技法としては手挿です。昨日の鴛鴦の振袖のように全体を市松にしています。朱色の型疋田で、私のイメージする京都風です。

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写真4番目は竹田庄九郎の振袖です。昨日は京都の絞りの代表として藤井絞の振袖を紹介しましたので、今日は有松代表として竹田庄九郎の振袖を紹介します。「竹田庄九郎」というのは有松絞の創始者の名前ですが、現在は江戸時代から続く絞り商である竹田嘉兵衛商店のブランドです。

絞りの振袖の典型的な様式なので、これを着ると典型的なお嬢さまになりそうです。コスプレのつもりで、昔のお嬢さまになってみるのも良いのではないかと思います。

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写真5番目は岡重の着尺(小紋)を元に作った振袖です。市松模様の着尺をベースに作ってみました。梅、桜、椿、菊、紅葉の四季の草花をテーマにしています。お洒落なパーティー着のイメージですね。

振袖の概略というテーマ

第二千八百三十回目は振袖の概略というテーマです。

過去の記事を見ると、FC2になってから一度も振袖を取り上げていませんでした。じつは私の長女が今度の1月に成人式で、私も迷うことが多いです。いつでもあると思うからのんびりしていたんですけどね。今日は同じように迷っている方のために、振袖の概略です。

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いちばん上の写真は大定の振袖です。今はすでに廃業している東京友禅の名門大定の振袖です。大定の振袖というのは、正規で販売されている時は200万円ぐらいは普通だったように思います。糊糸目による手描きの友禅、特許も持っていた柔らかくて生地に馴染む本金箔、ふんだんな手刺繍が特長でした。この作品については、ピンク地で花車ですから意匠的には大時代めいていて、だれが着るんだろうという気もします。キャバクラ風に茶髪を盛り上げたら似合わないでしょうね。親は娘にいつまでもこうあってほしいと思う、でも娘にとっては全然自分らしくない、そういう振袖かもしれませんね。

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写真2番目は岡重の振袖です。ゴム糸目による手描きの振袖です。刺繍はありません。大きな桜が描かれていますが、桜はそれ自身が模様の主役であるとともに、取り方の役目も果たしています。「取り方」というのは他の模様の容器の役目を果たしていることを言いますが、その中身はなんと菊、萩などの秋草です。桜の中に秋草ということで、ビックリ箱のような組み合わせですが、これこそ宮崎友禅以来の友禅の意匠の伝統です。

意匠的には友禅の精神に忠実な古典作品ですが、色とタッチ、そしてなにより全体の雰囲気はモダンです。「古い革袋に新しい酒を入れた」というキリストに怒られそうなパターンですが、工芸の意匠の成功パターンでもあります。人間国宝をゲットする作家は、たいてい創作に見えて骨組みは伝統、というのが多いですものね。

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写真3番目は千切屋治兵衛の標準品(とはいっても高級)の振袖です。千總でも千治でも高級品と言っても100万円以下のものは、たいてい手挿で作られます。手挿は、糸目のみに型を使い、彩色だけは手描きで行うものを言います(型糸目、輪郭も手で描くものが手描き、手描きと手挿の表示の違いに注意)。理論的には手描きと手挿しは完成してしまえば区別がつきません。見分ける方法は、離れて全体を見渡し、意匠に気に入らない部分が無ければ手挿しです。

この作品のように地を市松にしたものはおしゃれで、私は大好きです。

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写真4番目は藤井絞の振袖です。絞りの産地は有松(名古屋)と京都です。全体が疋田で埋められていて、いかにも手間がかかっていそうなのが有松、余白が多く手間はかかっていなさそうだが、意匠が面白いというのは京都です(一般論ではありますが)。

絞りはどういうものが良いのか、と言われれば、私は色が良くて模様がお洒落なものと答えます。手間がかかっている方が価値があるのではないか、と思う人もいるでしょうが、手間というのは中国で安くすることができます。そう考えれば、真の価値とは人間が頭の中で生み出すもの、デザインではないでしょうか。そうはいっても真似されちゃえばそれっきりですけどね。

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写真5番目は岡重の着尺(小紋)を元に作った振袖です。柄が大きい派手目な小紋を選び、4丈(16m、通常の着尺は12m)に染めると振袖になります。染価は正直に1.3倍です。この方法で作ると、成人式当日のフォーマル感では劣りますが、その後の友人の結婚式などではお洒落なパーティー着になって威力を発揮します。袖を切っても元の小紋に戻るだけなので、この作品のように焦げ茶色地にしておけば40歳過ぎても着られます。トータルの経済価値を考えるといちばん安いのではないでしょうか。