喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」の帯合わせ

第二千八百二十七回目は喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」の帯合わせです。

昨日はフォーマル方向の帯合わせをしてみましたが、今日は紬と合わせてみます。有職織は、本来は王朝文化ですから京都発の中央の文化であり、もっとも格の高いもののはず。それを地方の素朴な文化であることに存在意義がある紬と合わせることに矛盾はないのか、という疑問も当然湧いてくるはずです。

このような疑問は、染織の意義や歴史を知ることから生じるもので、「金糸を使った帯はフォーマルだから紬に合わせてはダメ」なんていう、子供でもわかる基準の帯合わせの知識より、はるかにレベルの高いものです。で、実際のところはどうなのか、今日はそれを試すのですが、見た限りは合っちゃっていますよね。それならそれでいいんだろう、ということです。

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いちばん上の写真は、青戸柚美江の出雲織と合わせてみました。「星座」というタイトルの作品で、形の違う何種類かの細かい十字絣を並べたものです。十字絣という絣の基本が並んでいるにすぎませんが、それだけで星座に見えてしまうのは、背景の藍染の濃紺に透明感があって、澄んだ夜空に見えるからでしょう。なんとなく、島根県の夜空はこんなに澄んでいるんだろうなあ、なんて気がしてきてしまいます。

喜多川俵二の帯を買って、紬に合わせて使う人は、きっと紬を買うにも作家モノを買うに違いない、ということで青戸さんを選んでみました。

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写真2番目は、旧重要無形文化財の結城紬を合わせてみました。結城紬のもっとも基本の藍染の絣です。亀甲ではありません。喜多川俵二の帯を買って、紬に合わせて使う人は、きっと紬を買うにも産地の証紙付のモノを買うに違いない、ということで結城紬を選んでみました。

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写真3番目は、首里織の着尺を合わせてみました。作者は山口良子さんで福木で染めた輝くような黄色い着物です。「草木染らしい色」なんて表現がよく使われますが、近世以前の職人は草木染だけですべての注文に答えていたのですから、草木染で草木染らしくない鮮やかな色も出すことができる、というのでなければいけませんね。

使われている技法は花織(生地の糸が紋織に変化する)と浮織(紋織のための別の糸を生地に差し入れる)の併用です。

地方文化の紬+中央文化の有職という問題に対して、どうしても疑問のある人への解決策です。沖縄の織物、特に首里織は琉球王家の注文で織られた宮廷衣装ですから、京都発の有職織と同格のはずですものね。

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写真4番目は、秋山真和の紬を合わせてみました。「綾の手紬」のラベルがついていますが、19世紀に織られ、今も現存する沖縄の織物を再現したものです。意匠は全く同じ、色は本歌は退色していますが、こちらは織られた当初の鮮やかな色を再現するように織られています。上の例と同じ、宮廷衣装どうしという趣旨の帯合わせです。
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[ 2014/08/31 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」の帯合わせ

第二千八百二十六回目は喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は、中井淳夫の訪問着を合わせてみました。「雲鶴段文」は鳥の模様というよりも、日本の文化的な財産である有職文様として、普遍的な価値を持つものだと思います。しかし、ここではあえて鳥の模様として、深山幽谷を思わせる着物に合わせてみました。深山幽谷の上に雲があって、鳥が渡っていく、という意味の組み合わせにしています。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際制作したのは西山さんです。西山さんは、ダンマル描きや無線友禅を専門にしています。技法の特性から言って、作風は写生的です。

テーマの合わせ方としては、有職文様であることを無視した帯合わせをもう1度繰り返してみました。雲海の上に頭を出して山々の頂が赤や黄色に輝いているという雄大な風景を描いた着物ですが、その上を鶴が飛んでいます。横山大観の富士には、富士山頂を越える高さで鶴が飛んでいるものがありますが、そんなイメージを狙っています。

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写真3番目は一の橋の付下げを合わせてみました。有職文様の歴史と意味を無視するシリーズの3回目になってしまいました。雲と鶴なら、残りは海、それで世界のすべてだろうという帯合わせです。

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写真4番目はおまけです。今日は有職文様である「雲鶴段文」を軽んじたことの罪滅ぼしに、雲鶴段文の広がりやその影響を紹介します。写真は玉那覇有公の紅型の振袖です。竹がどんどん伸びて、雲を突き抜けていくという縁起の良い意匠で、作家の創作ではなく、沖縄の伝統としてある意匠です。雲と鶴は雲鶴段文と同じ構成で、近世までに沖縄まで伝わっていたんですね。
[ 2014/08/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」

第二千八百二十五回目の作品として喜多川俵二の名古屋帯「雲鶴段文」を紹介します。

鶴と雲が交互に段になっているという意匠です。鶴は形が全部同じで、しかもシンメトリックに向かい合って繰り返しています。雲も同じ形の繰り返しですね。このような図案は堅苦しいものになるはずですが、実物を見ると、不思議におおらかな感じがあります。

形式的な繰り返しなのに堅苦しくなず、おおらかな感じさえする、というのは古代の文様の特長だと思います。奈良や京都に行くとそういうデザインに遭遇しますね。そういうのってデザインの究極ではないか、そういう意味で私はこの帯が大好きです。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は別の箇所の近接です。

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写真4番目は拡大です。配色もきれいですが、糸の色自体きれいですね。
[ 2014/08/29 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「銀杏」を長羽織またはコートに使うというテーマ

第二千八百二十四回目は千切屋治兵衛の着尺「銀杏」を長羽織またはコートに使うというテーマです。

本来は小紋の着物である「銀杏」を、長羽織またはコートに使って見た、という設定です。着物役には、染めの例として野口の着尺、紬の例として南風原の紬と南部紬を使ってみました。
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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。紫の暈しの横段で、模様は干菓子です。干菓子というテーマは便利で、花でも蝶でも兎でも描けますね。

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2番目の写真は、野口の着尺を合わせてみました。グレーのくっきりした横段です。上の作品と比べてみると、同じような構図でもグラデーションとくっきりでは、作品の意義が違うぐらい差が出るものですね。

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3番目の写真は、野口の着尺を合わせてみました。葡萄をテーマにした大きな模様で総柄の着尺です。今回の「銀杏」のような上品で頭が良さそうに見える飛び柄の小紋を見慣れていると、こういう着物は新鮮です。

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4番目の写真は、大城織物工場の「三代継承紬」を合わせてみました。「三代」というのは、カメ、清栄、哲をいいます。哲さんの時代に、手紡ぎ真綿の糸を経緯につかった作品がつくられたのですが、その紬のシリーズに付けられたネーミングです。手紡ぎ真綿を経経の糸に使うと、糸のコストが高いだけでなく絣が合いにくくなるので難しいのです。

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5番目の写真は、佐藤トシさんの南部紬を合わせてみました。ベージュと水色という補色関係、そして飛び柄と縞という対照的な関係です。

千切屋治兵衛の着尺「銀杏」の帯合わせ

第二千八百二十三回目は千切屋治兵衛の着尺「銀杏」の帯合わせです。

今回は染の名古屋帯と織の名古屋帯の両方を試してみました。

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いちばん上の写真は、花也の染め帯「市松地割萩楓山吹」を合わせてみました。帯の地色は黒で無く墨色です。友禅の糸目には通常の役割である輪郭線(模様の色と地色を分ける堤防の役目)と線描き(糸目自体が絵画の役目)がありますが、難度が高いのは言うまでもなく線描きです。

染分けのための糸目は色を滲ませないという「機能」であるのに対し、線描きの糸目は芸術だからです。友禅の作者としては、輪郭線は正確な仕事が求められるのに対し、線描きは見る人が心地良いと感じることが求められます。

この作品は線描きを多用したもので、糸目の職人にとってはチャレンジだと思います。もっとも花也の職人さんはいつもそんなチャレンジばかりやらされていますけど。私の見るところ、花也には線描きの出来る糸目職人は最低3人いて、1人は毛筆の飛白のようなアクロバティックなかすれを披露する人、1人はこの帯の作者で決してかすれることが無い温かみのある線を置く人、もう1人は神です。

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写真2番目は、一の橋の染め帯「毘沙門亀甲」を合わせてみました。毘沙門亀甲というのは、毘沙門天が着ている甲冑の模様パターンです。黒地に朱色の型疋田を見ると京都っぽい感じがしませんか。私は昔、四条通を歩いていてえり善のショーウィンドウをみたら、黒地に白と朱色の疋田の模様の着尺が飾ってあって、京都に来たなあ、と感じたことを覚えています。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。「飛鳥間道」というのは龍村のオリジナルのネーミングで、本歌は法隆寺にある蜀江小幡に使われている裂です。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「芳彩」を合わせてみました。紫、水色、着戻り、オレンジの輝きのあるモダンな色彩は、ポリエステルのフィルムではなく、絹糸と撚銀糸の組み合わせから生まれています。葉と鳥の金色は、なんと本金の平金糸です。ポリエシテルフィルムの力を借りなくても、モダンな輝きが表現できるんですね。
[ 2014/08/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺

第二千八百二十二回目の作品として千切屋治兵衛の着尺を紹介します。実際に制作したのは大和さんです。

銀杏がテーマの飛び柄で、生地は割りとしぼの大きい縮緬です。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は、近接です。銀杏の装飾は、自然なグラデーションと型疋田です。私はこのような錆朱の型疋田を見ると、京都っぽいと感じるのですが、みなさんはどうでしょうか。こうしてみると型疋田の形は多様で、それぞれ個性的です。安田の描き疋田を思わせるような完璧な形もありますし、形が丸っこいものや、わざと不揃いにしているものもあります。これはとても親しみを感じる形ですね。こういう細部が全体の作品の意義に大きな影響を与えますね。

大羊居の付下げ「吉祥花」の帯合わせ

第二千八百二十一回目は大羊居の付下げ「吉祥花」の帯合わせです。

昨日は龍村の帯で合わせたので、今日は龍村以外で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、しょうざんの徳田義三シリーズの袋帯を合わせてみました。しょうざんは、レジャー施設の経営や不動産業のイメージが強いために、マニアが満足するブランドではないですが、この徳田義三シリーズは意匠も品質もとても良いものです。

トルコ石に金の装飾を付けたアクセサリーは、金と水色の配色でとてもきれいなものですが、それをイメージしてみました。

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写真2番目は、織悦の袋帯「桃山大花文」を合わせてみました。大きな桜と楓を配したおおらかな意匠です。大きくておおらかといえば、大羊居の特長の1つでもありますが、こうして合わせてみると、力が拮抗してバランスが良いように思います。

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写真3番目は、洛風林の袋帯「飾宝華文」を合わせてみました。「龍村以外」を合わせると言ったら、洛風林も登場させないといけませんね。

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写真4番目は、喜多川俵二の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。またまた喜多川俵二の万能性を証明してしまいました。牡丹唐草は、名物裂の写しの中でもっともありふれたもので、それだけに量産品も多いわけですが、こうして合わせてみるとさすが人間国宝で、大羊居の存在感をしっかり受け止めているように思います。
[ 2014/08/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「吉祥花」の帯合わせ

第二千八百二十回目は大羊居の付下げ「吉祥花」の帯合わせです。

大彦と大羊居には、とりあえず龍村を合わせることが多いです。それはこれまでずっと高島屋や松坂屋で、「大彦龍村展」のように合同で展覧会をしてきたからですから、単にユーザー側の思い込みとも言えません。今回もとりあえず龍村で合わせ、明日は龍村以外で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「楽園瑞鳥錦」を合わせてみました。ローマの遺跡の床や壁面にあるモザイクをテーマにしたものです。ローマが植民都市を建設した旧カルタゴのチュニジアなどのほうがよく残っているようです。

古色を演出しない配色から、古代のモザイクというよりは新興都市の公共建築物の壁面装飾のような気がしてしまいます。しかし古代のモザイクも、旧カルタゴにローマの退役軍人が集団で植民した時は人工的な新興都市だったでしょうから、同じことかもしれません。

ここでは、桐の葉の抽象画にも見える表現と帯の意匠が雰囲気が似ているかと思って合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「有朋文」を合わせてみました。鳥獣戯画をテーマにした帯ですが、あいかわらず龍村の帯のタイトルは解説者泣かせです。兎と蛙が友達という程度の意味でしょうか。よく見ると相手を芒で殴ろうとしたり、弓をつがえて射ようとしたり、うさぎの方が狂暴ですね。

ここでは辛子色と水色の配色の美しさを狙っています。模様を見ていると意味のつながりにこだわりたくなってきますが、表面的な色の効果の方が大事、ということも多いです。

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写真3番目は、龍村の袋帯「海老殻間道手」を合わせてみました。龍村の間道シリーズは私が大好きなものの1つです。「日野間道手」、「青木間道手」(「手」は完全に同じではないという程度の意味か)などがありますが、たいてい高島屋が独占して販売することになっています。青木間道は三越限定版もあるのですが、それは高島屋と区別するため「列仙青木縞」というタイトルになっています。

「海老殻間道手」は、龍村の間道類のうち、唯一オープンに販売できるものです。本歌は青木間道とよく似ていますが、龍村の作品としてはかなり違うものになっています。普通に考えると、配色などの点でこちらの方がモダンでお洒落です。しかし配色が極端な高島屋の青木間道手を身に付けると、難解な本を読み切ったような満足感があるかもしれません。

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写真4番目は、龍村の袋帯「陶楽騎馬文」を合わせてみました。イスラム陶器がテーマです。私は大好きなのですが、骨董屋でホンモノを見極めて買う勇気が無いので、加藤卓男で満足しています。桐文という和風モチーフにエキゾチックなモチーフの組み合わせです。
[ 2014/08/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の桐文様の比較

第二千八百十九回目は大羊居の桐文様の比較です。

今回の付下げ「吉祥花」に描かれた模様は、まさに桐だけですが、桐は大羊居ではもっともよく登場するモチーフです。他の作品ではどのように扱われているでしょうか。大作の訪問着で比較してみます。

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いちばん上の写真は、訪問着「」の全体です。桐というのは10mぐらいになる大きな木です。箪笥が作れる木ですものね。桐といえば着物好きな人は自然の樹木よりも家紋としての桐紋を思い起こすでしょう。大羊居の桐文様もほぼ桐紋のような形をしていますが、この訪問着では、文様ではなく生きている1本の木として描かれています。

添え物としては、根本辺りに笹が描かれているだけですので、様式としては意匠的ながら自然の木をテーマにした写生的な姿勢の作品といえます。肝心の桐文を見ると、葉はほぼ自然な緑系、陰影も描かれ、陽光の反射も金彩で表現しています。

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写真2番目は部分です。

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写真3番目は、訪問着「桐と誰が袖文」の全体です。桐文と誰が袖文を合わせて意匠です。ここでは桐は植物というより吉祥文様ですね。登場するモチーフは桐と誰が袖の2つだけのように見えますが、誰が袖内部には、桜、竜田川、若松、七宝など友禅にありがちなモチーフが描かれ、実際にはフォーマル衣装らしい装飾的な画面になっています。

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写真4番目は部分です。桐の葉を見ますと、自然な植物の色に拘泥せず、緑、青、黄色という装飾的なものになっています。さらに上の訪問着の桐の葉の葉脈と比較してみると、上の作品は写生的な配列で描かれているのに、こちらは左右対称にお行儀良く並んでいます。こんなところにも、写生と装飾を描き分ける小技が使われているんですね。こういう小技の積み重ねが、写生調か装飾かという全体のイメージにつながっていくのだと思います。

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写真5番目は、昨日紹介した付下げ「吉祥花」の近接です。

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写真6番目も同じく近接です。ここで桐の葉を比較してみると、写生でも友禅らしい装飾でもなく、現代美術の抽象絵画の色彩分割みたいなことになっています。こうして見ると、またか、という感じの大羊居の桐文様は、決して使い回しではないんですね。上記2つの大作の訪問着に比べると、付下げは模様の展開に乏しく、ただ桐文を並べただけのダイジェスト版といわれても仕方がないですが、それだからこそ個性を持たせるべく仕掛けをしているんですね。やっぱり大羊居の下絵師はレベル高いです。
[ 2014/08/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の付下げ「吉祥花」

第二千八百十八回目は大羊居の付下げ「吉祥花」を紹介します。

大羊居のモチーフのレギュラーメンバーともいうべき桐の花です。訪問着や留袖にも、しょっちゅう登場しますね。この作品は、付下げですから桐の単独モチーフでシンプルにまとめていますが、訪問着や留袖では、いろいろに変奏したり、他のモチーフと合わせ技にしたりしています。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2014/08/22 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」を長羽織かコートに使う

第二千八百十四回目は千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」を長羽織またはコートに使うというテーマです。

このような市松取りの着尺を長羽織やコートに使うのはとても面白いので、記事にしようと写真を撮っていたのですが、倉部さんの金彩のきらびやかさに幻惑され、忘れていました。そのため、消化試合のようになってしまいましたが、ぜひお付き合いください。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の着尺「雪輪取松竹梅」を着物とし、その上に「紬地市松取笹疋田」を長羽織またはコートとして羽織ったと想定しています。墨色と薄茶色という配色、雪輪の丸い模様と市松の四角い模様、そんな取りあわせ選んでいます。とりあえず基本の合わせ方です。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の着尺「黒地吹寄せ」を着物として合わせています。上の例で、もう少し若い人を想定してみました。

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写真3番目は、旧重要無形文化財の規定を満たさない結城紬を着物として合わせています。小椋さんという結城のメーカーの文化財でないバージョンの結城紬です。水色とグレーの中間ぐらいの爽やかな縞で、明るい色の取りあわせで選んでみました。

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写真4番目は、旧重要無形文化財の結城紬を着物として合わせています。反物の幅の4:1ぐらいの位置に1本太い筋が入る意匠です。博多帯で言う1本独鈷のような柄ですね。筋の内部は結城らしからぬきれいな多色の絣になっています。体の前後に筋が来て、袖も筋が1周すりのですが、筋がある方をオクミにするか、衿にするか選択できます。オクミにする人の方が多いと思いますが。

こういう大胆な模様構成は、本物の結城でやってしまうからかっこいいんですね。こういうのを着ていると、家に5,6枚文化財の結城があって、もう飽きている人みたいに見えるじゃないですか。

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写真5番目は、細かい格子の久米島紬を着物として合わせています。主役は2人は要らないということで、長羽織かコートの個性のある市松取りに対し、着物は森田空美ファンが選びそうな細かい格子にしています。最後の1枚は見てホッとするのにしました。

逆に言えば、地味な紬を着たときは、個性のある長羽織かコートを着ればよい、ということでもありますね。
[ 2014/08/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせ

第二千八百十三回目は、一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせです。

このような着物は、たいていの方は西陣の袋帯を合わせるでしょうが、今回はあえて染め帯を使います。keiさまから、染め帯を応援するコメントをいただきましたしね。

絵画性の高い友禅の着物であれば、友禅の染め帯を合わせるのは苦しいですが、今回は倉部さんの箔と刺繍の着物で、単彩ですし絵画性もあまり高くないですから、多色の友禅の帯も使えそうですね。その一方で、金彩だけの帯を使って、単彩で絵画性も低い森田空美風の合わせ方もしてみます。

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いちばん上の写真は、大羊居の「南蛮蒔絵」を合わせてみました。意味的には、日本が外国から積極的に文化を摂取した時代というテーマで、正倉院と南蛮文化を合わせています。それと同時に、単彩で表面的な華やかさに欠ける着物に対し、多彩な友禅の帯で色を補うという帯合わせになっています。

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写真2番目は、北秀が製作した金彩と刺繍のみの袋帯です。制作したのは東京の工房ですね。金彩に着物に金彩の帯で、色数を増やさない帯合わせです。

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写真3番目は、京正の金銀彩の名古屋帯です。実際に制作したのは中井淳夫です。上の例と同じ発想の帯合わせですが、地色が錆ローズであるだけちょっと華やかさがあります。

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写真4番目は、秀雅の友禅の名古屋帯です。実際に制作したのは安田です。金彩ではなくシルバーグレーで単彩を作ってみました。これは以前、更紗と紹介したらレースではないかと指摘された作品です。レースの角のところを比較的忠実につくっているようです。

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写真5番目は、花也の友禅の名古屋帯「琳派槇流水」を合わせてみました。多彩で絵画的な帯で着物に色を補うような帯合わせをするべきか、金彩の帯で色数を増やさない帯合わせをするべきか、この相反するテーマを同時に満たす帯合わせを考えてみました。

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写真6番目は、一の橋の友禅の名古屋帯を合わせてみました。中井系の悉皆屋を使った作品です。西陣の袋帯に対抗するために作られたような帯ですね。龍村とか洛風林とか、西陣のブランドはたいてい持っているという方は、こういう方向で良いのでは。

[ 2014/08/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせ

第二千八百十二回目は、一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせです。

昨日は、同じ正倉院模様で合わせるというのを第一候補にあげながら、平家納経で肩すかしをしてしまったので、今日は基本の正倉院で統一バージョンから始めます。

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いちばん上の写真は、坂下織物(10年以上前に廃業)の「御門綴」シリーズの1本を合わせてみました。一見、古典そのもののように見えますが、正倉院模様をかなり自由にコラージュしていて、たとえば中央の唐花文は錦ですが、脇の方に見える鳥襷文は、本歌は蝋染ですよね。また、唐花文の周囲の植物文も花喰い鳥も別の作品の別の技法のものです。全然素材の違うものを集めて不自然に見えないのは図案家の力量です。

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写真2番目は、紋屋井関の「御寮織」シリーズの1本です。「銀平脱の合子」といわれる、聖武天皇が碁をする時の碁石の容器で、鸚哥チームと象チームがあります。「銀平脱」は技法の名前ですが、古代特有の、職人の人生を奪うような面倒な技法です。ここでは、倉部さんの世界観を帯で壊さないようにするため金の色だけのものを選びました。

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写真3番目は、梅垣織物の20年間に18本織って、1本は梅垣に保管してあるという高級バージョンですね。全体が細く裁断された本金の引き箔で織られていて、吸い付くような手触りです。

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写真4番目は、織悦の袋帯「霞取遠山文様桜楓」を合わせてみました。楓の黒漆のような質感、桜の暗い金が独特の雰囲気です。これは経糸が黒の絹糸、楓の緯糸が平漆糸、桜の緯糸が平金糸で織られています。桜については、金と黒が交って暗い金色に見えているのです。

[ 2014/08/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせ

第二千八百十一回目は、一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の帯合わせです。

着物の意匠が正倉院に由来するものということから考え始めると、その帯合わせは、同じ正倉院模様で合わせるか、別の模様で合わせるか、ということになると思います。着物が倉部さんの作品ということから考え始めると、倉部さんといえば箔と金糸の刺繍ですから、その帯合わせは金地で統一するか、多色のものにするか、ということになると思います。この着物の帯合わせは、この2つの基準を意識しつつ試してみたいと思います。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。正倉院でない模様で合わせると言えば、モダンなデザインでも合わせるのかと思われた方を裏切ってみました。俵屋宗達が修理して付け加えた反っくり返った鹿でわかるように、厳島神社の平家納経です。

着物の金のみに対して、多色の帯の組み合わせです。着物に色が不足しているから帯で足してやろう、という発想ですね。倉部さんの世界観を壊すことになるのか、とも思いますが、帯が金地でもあり、統一感はあるかも。

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写真2番目は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文錦」を合わせてみました。帯のタイトルからわかるように、これも平家納経に取材したものです。平家納経は30巻以上あって、表紙や見返しなどに装飾があるわけですから、全体では多様な絵があることになります。

「平家納経」をタイトルにした着物や帯はたくさんありますが、それぞれ模様が違うのはそれぞれ取材した箇所が違うためです。また、たいていは複数の場所をコラージュしていますが、それは意匠をオリジナルにして模倣品を防ぐためです。

これも色の少ない帯に対し、多色の組み合わせですね。しかし帯地の銀が着物の地色と関連し、意外と統一感があります。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「平泉遺宝錦」を合わせてみました。正倉院以外に取材した帯を合わせるということで、中尊寺金堂の内部で荘厳具として飾られている華鬘をテーマにした帯を合わせてみました。正倉院とテーマを変えるというよりも、テーマをずらす感じですね。

華鬘には金属製と革製がありますが、中尊寺のものは金銅製です。そのためか、この帯でも金銀糸だけで表現されています。倉部さんの着物と合わせれば、全身ほとんど色なしの帯合わせということになります。華やかな森田空美風といったところでしょうか。

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写真4番目は、紫紘の袋帯「ネブラディスク」を合わせてみました。

3600年前のドイツのモチーフということで、完全に正倉院テーマから離れてみました。帯合わせについては万能の帯ですね。帯は間違えて反対に置いていますが、元々どちらが上かわからないですよね。
[ 2014/08/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の細部(制作は倉部さん)

第二千八百十回目は、一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」の細部です。

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いちばん上の写真は、マエミの赤い花の近接です。この赤い花の模様の本歌は、有名な正倉院御物の「螺鈿紫檀五弦琵琶(らでんしたんごげんのびわ)」の背面の螺鈿の模様です。本歌ではまとまっている意匠ですが、斜め取りになるように解しているんですね。

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写真2番目は、オクミの赤い花の近接です。

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写真3番目は、マエミの紫の実の近接です。葉の形や蔓の回転の仕方、あるいは他の倉部さんの作品の様式から蔦のように見えますね。
[ 2014/08/14 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」(制作は倉部さん)

第二千八百九回目の作品として、一の橋の付下げ「斜取金彩唐花」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

京繍の倉部さんの作品は、野口、千切屋治兵衛、一の橋などが扱っています。同じ人が作っているはずですが、メーカーによって作風が微妙に違います。作風というのは倉部さんだけが作るわけではなく、メーカーの製作担当者と倉部さんとの関係から生まれてくるものだと思います。作家と編集者みたいなものですね。

その関係はさまざまですが、おそらく一の橋は倉部さんに関しては、京友禅界では有名な会長自身が関わっていて、もっともメーカー側のセンスの比重が大きいものになっていると思います。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2014/08/13 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせ

第二千八百八回目は千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせです。

今日は織物の帯で合わせてみます。織物というのはフォーマルとカジュアルの正反対の2通りの方向がありますね。西陣織のような京都の織物と、地方の真綿の紬織物です。「染の着物に織の帯」ということわざではこの違いを表現できていないので、京友禅に結城紬の帯というのも成り立ってしまうわけですね。

今回は織の名古屋帯で、フォーマルとカジュアルを表現します。フォーマル担当は龍村の九寸の名古屋帯、カジュアル担当は帯屋捨松の八寸の名古屋帯をつかいます。着物が紬地に後染めという蝙蝠のような存在だからできることです。

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「ほかけ」を合わせてみました。帆掛け船のモチーフが整然と並ぶパターンで、昨日の細見華岳の「花菱文」や喜多川俵二の「軟錦筥形」と同じですね。このようなパターンは安定感を感じるので、使いやすいのではないかと思います。

配色は、赤系を避けているので年輩者でも使えますし、きれいな水色を使っているので地味にもなっていません。年配者が着られて華やかさもある、というのは人気商品の条件だと思います。、

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「シャムパーシン」を合わせてみました。タイをテーマにした作品です。

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写真3番目は帯屋捨松の八寸の名古屋帯を合わせてみました。市松模様のパターンなので着物に対しては模様がシンクロしたような感じになります。

着付け教室で習う知識として、金糸を使ったものはフォーマルなので紬に合わせてはいけない、というのがあるのですが、そういう浅はかな知恵をあざ笑うのがこの捨松の八寸名古屋帯のシリーズです。

金糸を使うとか銀糸を使うとか、あるいは青く光らせるためにポリエステルのフィルムを使うとか、そういうことは作者の創作に属することであって、帯合わせのルールに属することではないということで、捨松らしい主張だと思います。

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写真4番目は帯屋捨松の八寸の名古屋帯を合わせてみました。「東アジア文」という大雑把なタイトルがついているため、何に由来するものかよくわかりません。きちんと構成された横段文ですが、洒脱なタッチなのでカジュアル感があります。捨松のデザインは着物初心者にも人気があります。それはデザインが優れていて普遍性があるからです。良いことなのですが、それが仇になってネットショップで販売されがちなので、呉服屋さん的には扱いにくいのが残念なところです。儲けようと思わなければいいんですけどね。
[ 2014/08/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせ

第二千八百七回目は千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせです。

今日は友禅の染め帯で合わせてみます。

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いちばん上の写真は、花也の友禅名古屋帯「羊歯の丸」を合わせてみました。昨日、うちに在庫が無くて黒地の綴を試せなかったので、今日染め帯で試してみました。ベージュ地や茶色地の着物に黒地の帯は、きりっとしまって良い感じです。今回は黒地というより墨色地ですが、黒の代わりに墨色にすると粋になりすぎなくてすむというメリットがあります。

着物が市松模様で四角いイメージですから、丸紋にしてみました。同じ形の大小にしてシンクロさせるという合わせ方もありますが、普通は四角に対しては丸、直線に対しては曲線という合わせ方をしますね。

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写真2番目は、加賀友禅作家、中町博志の友禅名古屋帯「砕」を合わせてみました。とても悪戯な意匠の帯だと思います。ぴちっと締めても着崩れたように見えるし、反対に着崩れてもばれないのです。似た発想の作品としては、ジュリオ・ロマーノのマントヴァのパラッツォ・デル・テの壁画「巨人族の没落」があります。ちゃんとした建物の壁画として崩れていく建物が描いてあって、人を不安にさせるというマニエリスムの見本のような作品です。

ここでは着物の市松模様を帯で壊してみました。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の友禅名古屋帯「笹にうさぎ」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、本歌は幕末ごろの蒔絵作家のものです。数年前の卯年のお正月に東博の新年の特集で展示されていたのを見ました。

帯と着物を合わせる時に、双方の意味は、ほどよい距離感を保ちながら関連しているというのが良いですね。同じモチーフを重ねるのも、全然無関係なモチーフを合わせるのもかっこ悪いですよね。ではこの帯合わせのように、笹という全く同じモチーフと違うモチーフが同居しているというのはどうでしょうか。

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写真4番目は、大羊居の友禅名古屋帯「桐」を合わせてみました。上の3例では理屈を並べてきましたが、これは理屈を言わない帯合わせです。ホッとします。
[ 2014/08/11 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせ

第二千八百六回目は千切屋治兵衛の着尺「紬地市松取笹疋田」の帯合わせです。

昨日のコメントに答えて、今日は綴で合わせてみました。コメント主の期待する黒やグレーはうちの在庫にはなかったので、淡い色ばかりの帯合わせになってしまいました。ベージュ地や茶色地の着物に黒地の帯はきりっとしまって良いと思いますので、それは染め帯で試してみます。

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いちばん上の写真は、細見華岳の綴の名古屋帯「石畳」を合わせてみました。伝統工芸展の図録で見る細見華岳の綴は、流れるような図案が多いですが、これはそれを織のパターンだけで表現した作品です。着物のベージュと帯の水色の配色はブランド物にもありがちですし、帯の織パターンと着物の市松のシンクロも狙ってみました。

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写真2番目は、細見華岳の綴の名古屋帯「間道」を合わせてみました。「間道」という箱書きがついていますが、横段で、しかも一部は途切れているという意匠です。生地には銀糸が織り込まれていて、着姿としてはパーティー着といった感じです。

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写真3番目は、細見華岳の綴の名古屋帯「花菱文」を合わせてみました。金糸と銀糸で花菱文を織り込んでいます。花菱文は規則正しく並んでおり、先日の喜多川俵二に近い雰囲気ですね。上の例よりさらにフォーマル感が強いです。

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写真4番目は、清原織物の綴の名古屋帯「竹」を合わせてみました。笹の模様の着物に竹の模様の帯です。このように模様が重なる帯合わせはしつこいですか。植物の種類としては同じですが、意匠としては全く違う形、という帯合わせを狙ってみたのですが、竹に関するイベントのゲストみたいといわれそうですね。
[ 2014/08/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「紬地笹疋田市松」

第二千八百五回目の作品として千切屋治兵衛の着尺を紹介します。実際に制作したのは大和さんです。

紬地で市松取りの中に笹を入れたものです。笹には型疋田も使われています。後染めの紬というのは、用途が広いような狭いような着物ですね。小紋にも紬にも解釈できて、フォーマルとカジュアルの間で広く使えるのか、どちらに対しても中途半端で結局使い勝手が悪いのか、どちらの意見もあると思います。

私は、帯合わせの上手い人は広く使えて、こういう着物に合う帯に出会えていないと、どう使っていいかわからない、ということになるのだと思います。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。

喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形(ぜんきんはこがた)」の帯合わせ

第二千八百四回目は喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形(ぜんきんはこがた)」の帯合わせです。

王朝文化の一部である軟錦(ぜんきん)に取材したこの作品は、本来は格の高いもので、フォーマル方向に使うべきと思いますが、今日はあえて紬と合わせて使います。モダンな雰囲気もあるので、普通に紬でも使えるのではないでしょうか。優れた作品は古典に取材しても常にモダンで、凡庸な作品はモダンなつもりでつくっても古臭く感じるものですよね。

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いちばん上の写真は郡上紬を合わせてみました。この帯の意匠は軟錦ということで王朝文化に属し、普段紹介している近世の小袖写しなどより、さらに古典ということになるのですが、今回はそれにモダンを見出し、あえて紬に使おうという趣旨なので、紬もモダンな雰囲気のあるものを選びました。そうすると、有名産地や工房の格子(というよりチェック)の着物が多くなりますね。

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写真2番目はみさやま紬を合わせてみました。

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写真3番目は、久米島紬を合わせてみました。大胆な横段模様に、本来は連続して並べるべき幾何絣をワンポイント柄のように置いたものです。幾何絣は伝統的な模様単位であるトィグアー(鳥)ですが、模様単位というより絵画のように使っています。模様自体は伝統ですが、用途転換の仕方は創作的だと思います。

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写真4番目は、小岩井工房の上田紬を合わせてみました。小岩井工房の上田紬は問屋に卸さずファンや旅行者に直販することになっています。ファンには池内淳子さんなどの女優さんも多く、そのためにお洒落なイメージがありますが、この作品もすごく都会的ですよね。
[ 2014/08/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形」の帯合わせ

第二千八百三回目は喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形(ぜんきんはこがた)」の帯合わせです。

今回はフォーマル方向の帯合わせということで、付下げと合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げ「波に兎」を合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。「波に兎」というテーマは、謡曲の「竹生島」にちなむものです。「竹生島」で波兎が登場する場面は、天皇の勅使が竹生島に渡るために舟に乗っていると、波が湖面を兎が走っているように見えるというものです。

この帯の本歌は、間仕切りのない寝殿造において発達した屏風や几帳などの衝立の縁取りである軟錦であるということを意識して、王朝文化を連想させるようなテーマの着物を選んでみました。


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写真2番目は、野口の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんです。扇面に秋草花を合わせたように見えますが、扇面に見えるのはじつは源氏香という図案です。これも王朝文化を意識した組み合わせにしてみました。

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写真3番目は、菱一の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは大松(野口雅史さん、大彦の本家に当たります。)です。黒地に大松独特の色彩で洋花を描いた付下げです。

帯の模様の花菱文は有職文様ですが、見えない矩形で区切られてモダンな雰囲気もあります。今回は王朝文化というテーマを離れ、モダンな洋花と合わせてみました。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の絹芭蕉の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは中井淳夫さんです。斜線模様という幾何学的な意匠の着物です。

平安時代の公家文化がテーマの帯ながらモダンな雰囲気もあるということで、幾何学模様と合わせてみました。じつはこの付下げは中井さんの巧みなアレンジで本歌がわからなくなっていますが、じつは元は小袖ではないかと思います。
[ 2014/08/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形(ぜんきんはこがた)」

第二千八百二回目の作品として喜多川俵二の名古屋帯「軟錦筥形(ぜんきんはこがた)」を紹介します。

昨日、帯合わせで使用した「軟錦筥形」を改めて紹介します。平安時代の寝殿造には構造上間仕切りが無いため、屏風や几帳のような衝立が多用されました。その衝立の縁取りの装飾のために使われた帯状の錦を「軟錦(ぜんきん)」といいます。今回の作品は平安文化の1つである軟錦を本歌として創られたのだと思いますが、じつは私も平安時代の風俗というのは詳しくなく、この意匠の本歌となる作例がわからないので、あまり偉そうなことは言えません。

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いちばん上の写真は帯の幅を写真の幅として撮ったものです。全体を眺めると、平安時代のおおらかな貴族文化の雰囲気がありますね。

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写真2番目は近接です。有職文様の花菱文が見えない矩形で区切られているという意匠です。グラフィックデザインのようなモダンな雰囲気さえします。

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写真3番目は近接です。

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写真4番目は拡大です。
[ 2014/08/06 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「果実」の帯合わせ

二千八百一回目は千切屋治兵衛の付下げ「果実」の帯合わせです。

今日は名古屋帯を合わせてみます。名古屋帯でもフォーマル寄りのものを使いたいので、喜多川俵二と龍村の中から選びました。

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いちばん上の写真は、喜多川俵二の有職織の名古屋帯「軟錦筥形」を合わせてみました。軟錦筥形は「ぜんきんはこがた」と読みます。この帯もまだ紹介していないので後日紹介しようと思っています。

軟錦というのは、屏風などの周囲に縁取りとして貼る錦です。なかなか読めないですし、軟らかい錦なのか、などと思ってしまいますが、平安時代の貴族文化に属するもので、源氏物語を深く読んでいる方なら詳しいのではないかと思います。平安時代の寝殿造は、建物自体に間仕切りが無く屏風や几帳が多用されていたので、そのようなものも発達していたんですね。

筥は、蓋のある容器の意味ですが、この有職文様の形を言うのでしょう。「軟錦筥形」とは、どこかに現存する屏風か几帳に縁取りとして使われている裂を再現した意匠という意味だと思いますが、まだ本歌を見つけていないので、偉そうな解説はできないですね。

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写真2番目は、喜多川俵二の有職織の名古屋帯「小牡丹唐草」を合わせてみました。名物裂として最も愛されている牡丹唐草です。この2例をみると、喜多川俵二の帯は、どんな着物とも合ってしまうのがわかります。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「木画狩猟文錦」を合わせてみました。正倉院御物の「木画紫檀琵琶」の表側の捍撥(撥が当たる部分)に木製象嵌で描かれた「狩猟宴楽図」に取材したものです。このテーマは日本人に愛されて「韃靼人狩猟図」などとして近世まで繰り返し描かれますね。

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写真4番目は、龍村の名古屋帯「薫雅」を合わせてみました。上で紹介した「木画紫檀琵琶」の裏側の装飾に取材したものです。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「オアハカの鳥」を合わせてみました。オアハカはメキシコの都市でアステカの首都モンテアルパンの近くです。オアハカの歴史地区とモンテアルパンは共に世界遺産になっています。独特の色彩ですが、オアハカを旅した人のブログを見ると、現地で売っている土産品を見ると、本当にみんなこんな色をしていますね。強い日差しの下ではこんな色でないと負けてしまうのでしょうか。

龍村の名古屋帯のシリーズの中ではカジュアルな使い方ができる作品だと思います。紬に合わせる方の方が多いのではないですか。上の「薫雅」の合わせ方が、なんだか押しつけがましい気がしたので、その反対を試してみました。
[ 2014/08/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「果実」の帯合わせ

二千八百回目は千切屋治兵衛の付下げ「果実」の帯合わせです。

これまで付下げに対して友禅の染め帯を合わせたこともありましたが、今回の付下げは友禅染の存在意義をそのまま形にしたような絵画的な作品ですから、常識どおり西陣の帯を合わせるしかありません。今日は袋帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶花文」を合わせてみました。私の好きな帯なので、つい繰り返し使ってしまいます。

着物の模様が果実なので、それを食べそうな鳥の居る意匠を選んでみました。藤岡さんの作品は糊糸目にこだわっているために、「ホンモノの伝統的な友禅」というイメージが強いですが、実際の作品はモダンで洗練されているのです。「モダンで洗練」といえば、いちばん先に思いつくのは織悦ですから、この帯を合わせてみました。

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写真2番目は、洛風林の袋帯を合わせてみました。実際に織ったのは捨松です(少し昔は捨松も洛風林同人だったのです)。意匠としては亀甲文様が並んでいるだけという古いものなのですが、洛風林が関わると、配色の馬さか、モダンな帯に見えてしまいますね。

上の例では、「果実と鳥」という意味的なつながりを考えましたが、「洗練された着こなし」というと、森田空美風のモノトーン系を連想してしまいがちですが、洛風林の力を借りれば「多色でかつ洗練」というのも可能だと思います。

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写真3番目は捨松の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴがある標準的な捨松で、地のグレー部分の緯糸は引き箔です。帯の意匠としては、模様は大きいですが、それにグレー地の抑えた色の組み合わせ、年齢幅を広くしています。着物の果実の意匠はかわいい感じですが、地味目の色の帯を合わせて年齢層を広くしてみました。

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写真4番目は捨松の袋帯「豊公花鳥錦」を合わせてみました。豊臣秀吉が陣羽織に使っていたという輸入された裂ですね。これは捨松の中では手織りの高級品として、「帯屋捨松」のロゴのないものです。

この帯を選んだ理由は「果実に対して鳥」ということもありますが、存在感のある帯をパーンと合わせるという趣旨です。
[ 2014/08/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「果実」の細部

二千七百九十九回目は千切屋治兵衛の付下げ「果実」の細部です。

藤岡さんの糊糸目は、乳白色で柔らかいタッチですから、糊糸目のイメージそのもののような糊糸目です。糸目の線には作家ごとの個性があって、シャープでくっきりした線もありますし、毛筆のようにかすれた線もありますし、この藤岡さんのようにふわっとした線もあります。

友禅の解説の本には、糊糸目は柔らかく、ゴム糸目は細くてシャープなどと書いてあるものもありますが、それは正しくありません。糸目の線は絵画にとっての輪郭線ですから、作者にとっての芸術性そのものです。シャープな線が必要だと思えば、ゴムでも糊でも作者はシャープな線を置くはずです。その際、ゴム糸目のほうが操作性が良いので、ゴム糊を使いたい人が多いということです。

花也の職人さんの中には、操作性の良くないはずの糊でも自由自在に使いこなして、細くてくっきりして、しかも躍動感のある線を置ける人がいます。しかし芸術性とはそういうことだけではないでしょう。糸目の技量=芸術性というわけではないですから。

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いちばん上の写真は、前姿の上の模様の近接です。

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写真2番目は、上の写真のさらに近接です。蔓が枝に巻き付いて回転する場面は、これ以上絵が細かくなると、糊糸目がきれいに仕上がらなくなってしまうという限界を示したような表現になっています。手作りの工芸の美というのは、職人が最善を尽くしつつも、天然素材の性質からもうここで限界、というところにありますね。

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写真3番目は、前姿の下の模様の近接です。

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写真4番目は、上の写真のさらに近接です。

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写真5番目は、後姿の模様の1つに近接してみました。

[ 2014/08/03 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「果実」

第二千七百九十八回目の作品として千切屋治兵衛の付下げ「果実」を紹介します。実際に制作したのは藤岡さんです。

色紙散しの形式で、内部に糊糸目で各種の果実が描かれています。藤岡さんといえば、柔らかいタッチの糊糸目で草花や果実などを描いた名古屋帯が定番で、千切屋治兵衛の全商品の中でも売れ筋ですが、この付下げはその名古屋帯の人気作品のお太鼓を集めて流用したもののようです。

果物のモチーフは色紙取りの中に押し込められ、途中で切られているように見えますが、本当は元の図案が帯のお太鼓からの流用ですから、四角い形の外側にはもともと図案が無いのです。さらに考えると、色紙がすべて真っ直ぐで斜めに散っていない理由もその辺にありそうですね。

意匠としては安直な感じもしますが、元の帯のファンにしてみればシングル集めたベストアルバムみたいなものですし、作品的にも高いレベルで安定した作りになっていると思います。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖(片側)です。

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写真4番目は胸です。意外と模様の量も多く、訪問着的ですね。明日は細部を紹介しますので、藤岡さんの糊糸目の優しいタッチを見てください。
[ 2014/08/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺「乱菊」を長羽織またはコートとして使う

第二千七百九十七回目は千切屋治兵衛の着尺「乱菊」を長羽織またはコートとして使ったと想定してみました。

本来は、反物には12mの着尺と8mの羽尺があって、用途が分けられていました。しかし、現在は羽尺はほとんど生産されず、羽織またはコートも着尺(着物を作るための長さのある生地)で作るのが普通になっています。

なぜそうなったのかといえば、1つには羽織やコートの丈が長くなり、着尺でも無駄が少なくなったことがあります。しかしもっと主要な理由は、生産側が多様な生地を供給する余裕がなくなったことではないかと思います。

それがファッションに与えた影響は大きいです。もともと羽織やコート地専用の生地は、あらゆる着物に合うように無地で地紋だけで模様表現したものや暈しだけのものが多かったのですが、着尺を流用するようになると、羽織やコートが着物と同じような絵画的な模様染になります。すると、あらゆる着物に合わせるという便利さが無くなり、かわってコーディネートの中心に据えられるようになりました。いちばん上に着るものとして、もっとも世間に対して露出度が大きいのですから、お金をかけるのは合理的だと思います。

「乱菊」は、本来は着物として仕立てるために染められた生地ですが、今回は長羽織またはコート地として使ったと想定し、小紋や紬と合わせてみます。

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いちばん上の写真は、野口の着尺を合わせてみました。世間では大胆といわれますが、野口では定番である横段の着尺です。野口の横段模様には、色の境がくっきりしているものとグラデーションになっているものがあり、今回はグラデーションを使っています。たいした違いはないように思いますが、実際にはグラデーションの方が温和な雰囲気で着易い気がします。

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写真2番目は、野口の着尺を合わせてみました。上の例は明るい暖色も着尺、この例は比較的年輩者でも着られる寒色の着尺を合わせてみました。「乱菊」はモノトーンの暗い寒色なわけですが、組み合わせとしてはどちらもきれいに見えます。

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写真3番目は、大城広四郎の琉球絣を合わせてみました。福木できれいな辛子色に染められた紬です。グバン(碁盤、本土では「格子」ですが、沖縄の人は碁盤と考えたんですね)の模様ですが、その交わるところを絣にするという意匠です。創作的にも思いますが、御絵図帳にもある伝統意匠ですね。

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写真4番目は、久米島紬の縞を合わせてみました。縞の久米島紬は絣より値段が手ごろで、便利な着物だと思います。上の例ではきれいな辛子色、この例では地味な茶色、両方試しましたがどちらも良い感じに思います。