中井淳夫の訪問着「雑木林」の細部

第二千七百三十五回目は中井淳夫の訪問着「雑木林」の細部です。

ぼかしの技法を使って、山肌に重なる樹形を表現し深山幽谷の趣です。しかもぼかしの柔らかい輪郭線を用いることで、日本の湿潤な気候も表現しています。当店のある青梅市の少し奥の御岳・奥多摩辺りまで行くとずっとこんな風景なので、私には日常の雰囲気です。

しかしながら、ぼかしでつくられた樹形のスペースの中にダンマル描きで樹木が描かれています。この樹木が雑木林の趣なのでこのようなタイトルが付けられたのでしょう。全体の山の風景とは明らかに縮尺が違いますので、写生というより意匠ですね。植物図鑑で、ページ全部で樹木全体の写真を載せ、途中に丸窓を付けて花や葉の細部の紹介をするような編集の仕方がありますが、この訪問着の意匠もそんな発想で、全体の深山幽谷の風景のなかにぼかしの取り方を付けて、その風景を構成する個々の樹木を紹介しているのです。

ダンマルは蝋のような性格を持つ素材ですが、半防染によって濃淡表現をする時に蝋よりも使い勝手が良く、より絵画的な表現ができます。しかし、絵画的表現が容易になるほど絵画として評価されてしまいますので、工芸というより純粋な芸術に近くなり、作り手は厳しい評価にさらされやすいとも言えますね。

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いちばん上の写真はオクミです。

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写真2番目はマエミです。

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写真3番目は背中心辺りです。

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写真4番目は後姿~下前です。
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[ 2014/05/31 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

中井淳夫の訪問着「雑木林」

第二千七百三十四回目の作品として中井淳夫の訪問着「雑木林」を紹介します。

「雑木林」という適当なタイトルが本人の意思なのかはっきりしないのですが、着物を1枚のキャンバス(百号ぐらいに相当)に見立てて、おそらく東山魁夷のような山の風景を描いたものだと思います。「ぼかしの着物」と言ってしまえばそれまでですが、ぼかしの技法だけで山はおそらく雨後ではないかと感じさせ、日本らしい湿潤な気候を表現するという大きなテーマを描くのに成功しているとさえ思えてきます。

着物を平面にして広げると実際よりも大きく感じます。美術館で大きなキャンバスの作品を見るような感じですね。その一方、着物として人体に着付けたときは、誰でも着られる、そして帯合わせしやすい、普通のぼかしの着物になるのではないでしょうか。

ぼかしの訪問着は裾の方が色が濃いと落ち着くものですが、山の風景も上から陽が当たるので、山裾の方が暗いはずです。風景としても着物としても合理的なわけですね。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は前姿。

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写真3番目は後姿。

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写真4番目は上半身。
[ 2014/05/30 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

龍村の絽の名古屋帯「斐絣」の帯合わせ

第二千七百三十三回目は龍村の絽の名古屋帯「斐絣」の帯合わせです。

今日は「斐絣」を着尺(小紋)に合わせてみます。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。「疋田繋ぎ」というタイトルですが縞の着物ですね。帯の水平方向の模様に対し縞の着物は垂直方向の模様ですから、人間の体の上でタテとヨコがぶつかることになります。この程度のぶつかり方なら問題ないと思いますが、着物と帯がお互いくっきりしたタテ縞と横段だったら着る人の体の上で激突ということになりますね。

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写真2番目は野口の絽の着尺を合わせてみました。波の中に四季の花が描かれているという意匠は小袖の模様をアレンジしたもので、元の作品は刺繍を多用した重厚なものであったのを型染に置き換えています。元作品が権力者の豪華衣装であるために普通の小紋よりフォーマル感があって、帯合わせも配慮が必要です。

一方、今回の帯はフォーマルの象徴のようなブランドである龍村なのに「絣」がテーマなので、フォーマルとカジュアルがあいまいです。着物も帯も曖昧どうしで相性が良いかもしれませんね。

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写真3番目は野口の絽の着尺を合わせてみました。竹がテーマですが、こちらも小袖にある意匠で、小紋の模様というより訪問着の模様でも良いと思われるものです。訪問着のような模様が型染になって小紋になっているということですね。この「龍村のくせにカジュアルな絣模様」とは曖昧どうし相性が良いはずです。

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写真4番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。薔薇を意匠化した模様を飛び柄にしたものです。理屈を言わずこのぐらいの帯合わせをするのが良いかもしれませんね。
[ 2014/05/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「斐絣」の帯合わせ

第二千七百三十二回目は龍村の絽の名古屋帯「斐絣」の帯合わせです。

昨日の「斐絣」の帯わせを考えてみます。フォーマルのイメージの強い龍村ですが、名古屋帯ですし、テーマも絣、金糸の使用もないということなので、合わせる相手は紬、着尺(小紋)、軽い付下げというところです。

今日は付下げを合わせてみますが、試してみたいのは着物の模様と帯の模様の整合性です。帯が水平方向の模様ですが、着物もそれを意識して水平方向の模様にした方が良いのでしょうか。それとも、帯が水平方向のばあいはそれを着物で乱してやらなければおかしいのでしょうか。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の絽の付下げ「浜辺」を合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんです。砂浜の長い海岸線を、技巧的な暈しだけを使って表現主義的に表したものです。「ぼかしの付下げ」と言ってしまえばその通りですが、「浜辺」というタイトルを知ると、青空の下広い海岸にいるような晴れ晴れとした気分になってきます。

テーマは海岸線ですから当然水平方向の模様で、帯の模様とリンクした雰囲気になります。こういう様式を統一した模様の合わせ方は「無地系の着こなし」の発想につながるからか、都会的で頭が良さそうな感じがします。その一方で、一本調子で単調といわれてしまうかもしれません。

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写真2番目は千切屋治兵衛の絽の付下げ「線霞」を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんです。霞を意匠化して線で表現したもので、これも着物も帯も水平方向の模様という帯合わせです。

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写真3番目は千切屋治兵衛の絽の付下げ「鏡裏文」を合わせてみました。実際に制作したのは市川さんです。水平方向の帯の模様に対して、着物は丸い模様です。このように模様のタイプを統一しない方が普通ですよね。

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写真4番目は野口の紗の付下げを合わせてみました。海に松島が点在し島には塩釜(古代の製塩法)が描かれているという小袖以来の伝統的な意匠です。源氏物語の「須磨明石」や百人一首の藤原定家の歌に登場する古代の歌枕の風景で、自然+文芸というテーマです。帯の水平方向の模様に対し、着物は自然に広がる法則性のない模様ですね。こういう帯合わせの方が見ていてホッとしますね。
[ 2014/05/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村の絽の名古屋帯「斐絣」

第二千七百三十一回目の作品として龍村の絽の名古屋帯「斐絣」を紹介します。

美しいキモノ最新号(2014年夏号)の掲載しています。矢絣のように見えますが、タイトルは「斐絣」です。まず「斐(あや)」という字にはどういう意味があるのか、ということで悩んでしまいます。おそらく「美しい」という程度の意味でよいと思いますが、ヒントになるのは龍村の展示会が「斐成會」とネーミングされていることですね。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は腹文です。お太鼓と全く同じに見えます。色が淡いだけですね。

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写真3番目は近接です。地の部分は絽の組織ですが、模様は絵緯糸で表現されていますから、模様部分は絽ではありません。

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写真4番目は上の写真の裏側です。絵緯糸による模様表現を裏から見たところということになります。着物の知識が無い人が見たら刺繍だと思うかもしれません。刺繍と絵緯糸による表現は、どちらも地の糸とは違う糸を模様専用の糸として差し入れているという点で同じです。違うのはタイミングだけですね。地が織りあがった後で違う糸を差し入れるのが刺繍、地を織りながら違う糸を差し入れるのが絵緯糸による表現です。刺繍と沖縄の浮織(読谷花織など)の関係もこれと同じですね。
[ 2014/05/27 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の帯合わせ

第二千七百三十回目は大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の帯合わせです。

今日は「南蛮蒔絵」の帯合わせの最後ということで、ジャンルに関係なく私が気に入った帯合わせを載せてみます。


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いちばん上の写真は野口の着尺と合わせたものです。明るい水色地の唐草文様です。呉服業界でも今はクリアな色の方が人気ですね。少し昔は重い色の方が高級感があって良いとされ、水色にもちょっとグレーを入れて濁したりしていたんですよ。

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写真2番目は野口の着尺と合わせたものです。ぼかしの丸の中に草花文を入れた飛び柄です。比較的模様が小さくてさりげなく着られますね。

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写真3番目は花也の付下げ「更紗裂」を合わせたものです。余白の多い小付けの付下げです。更紗裂ということで季節もありませんし、地色もどんな帯とも合うクリーム色で便利な着物です。

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I写真4番目は中井淳夫の付下げ「陶画格子」に合わせたものです。紬地で地色が緑色という個性のある作品です。陶器に描かれた絵をテーマにしたものですが、元の陶器が何かはよくわかりません。中井さん自身は近藤悠三と交流があったようで、遺作展の主催者の1人に近藤悠三の弟子の陶芸家の名前がありましたが。
[ 2014/05/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

過去の一点、再開しました。

多摩ケーブルの「過去の一点」がリニューアルしました。これからはタイトル通り過去の作品の画像置き場として使います。これからも毎日5枚ずつぐらい増やしたいと思っています(目標)。まだ現物があるものもありますし、売れてしまっているものもありますが、いずれもそれぞれの分野で良いものだけを載せてあります。
[ 2014/05/25 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

色紙散しどうしは干渉し合うか

第二千七百二十九回目は大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の帯合わせです。

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いちばん上の写真は野口の付下げと合わせたものです。唐花模様を色紙に閉じ込めて並べたものです。宮崎友禅以来の「散し」のパターンではなく、整列させたのが個性ですね。

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写真2番目は千切屋治兵衛の付下げと合わせたものです。倉部さんによるもので、金糸の刺繍だけで加工してあります。上の例が唐花、下の例が更紗で、どちらもエキゾチックな雰囲気がありので南蛮がテーマの帯とは合いそうです。また模様の量も多くないので、名古屋帯でも許容されるように思います。

しかしながら、今回の帯合わせは意外な落とし穴がありますね。


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写真3番目は野口の唐花色紙の付下げに合わせたときの前姿です。

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I写真4番目は倉部さんの更紗色紙の付下げに合わせたときの前姿です。じつは色紙どうしで模様が重なってしまうのです。帯が「散し」なのに対し、着物が整列しているというのが多少の救いかなと思いますが、着物も「散し」だと悩んでしまいますね。なんでも同じことを2回ずつ言う雛壇芸人みたいですものね。鈴木奈々さんでしたっけ。

[ 2014/05/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の帯合わせ

第二千七百二十八回目は大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の帯合わせです。

「南蛮蒔絵」の帯は、お太鼓が南蛮蒔絵、腹文がウンスンカルタということで、南蛮文化を受容した近世の歴史をテーマにしているわけですから、着物も南蛮人がもたらしたもので合わせてみたいと思います。南蛮人がもたらした裂文化といえば更紗と唐桟のイメージですよね。どちらも東インド会社の輸出品で、実際には南蛮人と紅毛人の違いはあっても、まあそれは勘弁してもらうことにします。

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いちばん上の写真は野口の更紗の着尺と合わせたものです。何種類か更紗の着尺と合わせてみましたが、更紗が専業でない野口の着尺が大羊居とは色目の相性が良かったです。都会的な色どうしで合うのかもしれませんね。

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写真2番目は川越唐桟と合わせたものです。川越唐桟は輸入品であったインド産の木綿の縞を江戸中期ごろ国産化したものですから、今回のテーマに相応しいように思います。。その後、木綿の縞の製法は江戸近郊の都市に広まり、当店のある青梅市にも青梅縞というのがあります。

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写真3番目も川越唐桟と合わせたものです。地色を淡くしてみました。

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写真4番目も川越唐桟と合わせたものです。木綿の縞は「出羽木綿」や「片貝木綿」が買いやすいですが、西村さんの川唐はちょっと色気があります。西村さん本人は普通の人で色気がでるような生き方をしたわけではなかったんですけどね。ついでにいえば「出羽木綿」は先祖が上杉鷹山のためか生地厚で質実剛健な感じがしますし、「片貝木綿」はセンスの良い紺仁がつくっているためバリエーションに富み商品的に上手いと思います。

[ 2014/05/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の続き

第二千七百二十七回目の作品は大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」の続きです。

昨日紹介した「南蛮蒔絵」の続きで、今日は腹文を紹介します。腹文のテーマはウンスンカルタで、お太鼓の南蛮蒔絵とセットで、南蛮文化がテーマになっているようです。ウンスンカルタというのはポルトガルから伝来したカードゲームですが、今でも人吉だけに伝承されていて、現役で遊んでいる人がいるんですね。ネットで見るととてもきれいなカードなので、人吉に行く機会があったらお土産として買いたいです。

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いちばん上の写真は腹文の全体です。折って締めるのでカードは3枚ずつ見えるわけですが、どちら側にも同じぐらいの量の刺繍があるので、半分の刺繍は隠れてしまいます。京友禅ではありえないことですね。

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写真2番目と3番目は、椿と牡丹と船と、もう1つは着物にありそうな抽象的な意匠ですね。ウンスンカルタにはこういうデザインはないので、帯の柄としてオリジナルの意匠でしょうか。

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ウンスンカルタと分るのは、このデザインのカードが2枚あるからです。タロットで言えばソードの2と4ですね。
[ 2014/05/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」

第二千七百二十六回目の作品として大羊居の名古屋帯「南蛮蒔絵」を紹介します。

南蛮蒔絵あるいは南蛮漆器といわれるものは、蒔絵または螺鈿ですから、本来は黒地に金のみあるいは青白く光る貝のみです。それを大羊居の友禅らしく華麗な色彩に変換しています。それぞれの箱は南蛮蒔絵の作品として実在するものなのでしょうか。

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いちばん上の写真はお太鼓です。手前は人物文、奥は草花文なので、2つの箱を描いた器物模様でありながら、実質的には人物と草花の文様で友禅意匠らしい取り合わせになっています。

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写真2番目は円筒形の方の容器に近接してみました。鎌倉の東慶寺に所蔵されている「葡萄蒔絵螺鈿聖餅箱」やサントリー美術館の「草花蒔絵螺鈿聖餅箱」に似ているように思います。用途は、オスチヤといわれる聖餐式に用いるパンを入れるものですから、東慶寺についてはそれがお寺に伝来しているのは不思議ですね。

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写真3番目は箱型の入れ物の近接です。輸出用の南蛮漆器といえば洋櫃のイメージですが、それは蓋が丸く模様は余白のない草花文ですから、これとは違います。ぜひこの箱の元になった作品を探してみたいですね(もちろんネット上で)。輸出されて現在ヨーロッパにある蒔絵の箱には、教会で書見台などとして使われたものは余白のない草花文ですが、ベルサイユ宮殿などには普通の日本の風物を描いたものもありますね。この作品の南蛮人は刀を2本差していたり、軍配を持っていたりするので、案外早く見つかるかもしれません。
[ 2014/05/22 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百二十五回目は花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせです。

今日も昨日の続きですが、花也の絽縮緬の名古屋帯を付下げに合わせてみます。本来は染の名古屋帯を染めのフォーマルに合わせることはしません。例外があるとすれば、その染の帯が箔や刺繍を多用した重厚な帯であるばあいだけですね。今回の帯はそういう帯ではありませんから、フォーマルに合わせるわけにはいきません。

ではどの程度ダメなのか。みなさんが現実世界でするわけにはいかないので、ここでエア帯合わせとしてしてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の付下げを合わせています。フォーマルに合わせるのは無理ということで、フォーマルの中でもいちばん軽い付下げ、しかも「棒霞」という軽い模様にしてみました。このような模様は、模様の形が単純ですから、配色や質感だけが見せ所です。配色や質感が平凡だとただの安物になってしまいますね。

制作したのは藤岡さんです。普通の友禅だと白い輪郭線が残りますが、地色と模様の色の調和を重視して糸目の線を残さない友禅をしています。

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写真2番目は千切屋治兵衛の絽の付下げを合わせています。制作したのは中井亮さんです。タイトルは「浜辺」で、透明感のある青い地色にぼかしだけを使って海岸線を表現しています。ぼかしの技巧のレベルが高く、芸術性も高い作品ですが、同時に「ぼかしだけの軽い作品」なので、名古屋帯でも大丈夫か、ということで合わせています。

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写真3番目は野口の紗の付下げを合わせてみました。鷺草をテーマにしたもので、植物どうし、ちょっと悩む組み合わせですね。今回でいちばんリスクが高いです。ただ1つ救いがあるとしたら、帯の模様が糊糸目なのに対し、着物の模様がカチン描きなのでタッチが違うことですね。

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写真4番目は千切屋治兵衛の絽の付下げを合わせています。植物どうしは難しいということで、器物文様を合わせています。

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写真5番目は、今回の帯の帯合わせの最後なので、私がいちばん好きなパターンにしてみました。東郷織物の夏大島です。格子柄ですから高いものではないですが、茶色と水色の組み合わせ、しかも真夏に、というのが気に入っています。
[ 2014/05/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百二十四回目は花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせです。

今日は昨日の続きですが、花也の絽縮緬の名古屋帯に対して小紋(染めの着尺)を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。小豆色でテーマは光悦垣です。
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写真2番目は千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。薄いグレーで四角い取り方のなかに型疋田とクローバーの小紋柄が入っているという意匠です。上の帯わせもこの帯合わせも単色の着物に合わせています。単色というのは合わせるのは楽ですね。

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写真3番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。金魚と水流を表す渦巻が洒脱なタッチで染められています。

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写真4番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。意匠化した薔薇を飛び柄にしたものです。

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写真5番目は野口の絽の着尺を合わせてみました。小袖写しと言っても良い意匠で、小袖に登場する模様を飛び柄にしたものです。そのため普通の小紋よりフォーマル感があります。写真3番目、4番目、5番目は、洒脱、意匠、格調高い古典という3パターンを試す形にしてみました。

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写真6番目は千切屋治兵衛の絽の小紋を合わせてみました。太いよろけ縞です。
上の3つのパターンがお洒落かどうかといえば、他人が着ている分には批判する必要はない、というレベルですね。最後はみんなに認められる帯合わせにしてみました。
[ 2014/05/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百二十三回目は花也の絽縮緬の名古屋帯の帯合わせです。

染めの名古屋帯を合わせる相手の着物は、普通は紬か小紋ですが、その染の帯が箔や刺繍が多用された重厚なものであれば付下げでも使えます。今回の帯はフォーマルに使えるほど重厚ではありませんが、付下げでも訪問着のようなものから波や葉だけの軽いものもあるので、使えるばあいもあります。

いろいろ試してみたいと思っていますが、今日はとりあえず夏用の紗の紬です。

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いちばん上の写真は、林宗平の越後上布を合わせてみました。越後上布は宮古上布とともに、日本の着物の中でいちばん高額なものの1つですね。ここでは色で選んでいます。写真で見るときれいに青系でまとまっていますが、これは偶然ではなく、手績み苧麻の糸に透明感があるために藍に染めても沖縄の海みたいに透明な光を反射しているのです。

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写真2番目は夏久米島を合わせてみました。青系の帯に対し補色的なベージュで合わせてみました。

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写真3番目は宮古上布を合わせてみました。

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写真4番目は大城永光の花絽織を合わせてみました。今回なぜか高額品ばかり集めてしまったので、最後の一点もそうしてみました。花織と捩り織を併用した沖縄の織物は、従来はすべて「花倉織」と呼ばれてきました。しかしながら歴史的には花倉織は首里でだけ織られてきたものなので、近年商標化され首里織以外ではこの名称は使えなくなりました。そこで一般名である「花絽織」となっています。
[ 2014/05/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の絽縮緬の名古屋帯

第二千七百二十二回目の作品として花也の絽縮緬の名古屋帯を紹介します。

絽縮緬は、普通の絽よりも着る期間が前後に長いとされていますが、そのかわり盛夏の2週間ぐらいは避けるべきという人もいますね。一方、盛夏でも着ても良いという人もいます。呉服業界は、かつて着物がよく売れていた時代はルールを厳しくして更に売ろうとしていたのですが、着物人口が減ってからは1人でも多くに人に着て貰うため、ルールを甘く解釈する傾向があります。私も呉服業界にいる1人なので、ルールは着る人有利に解釈してほしいと思っています。着ることが最大のルールで、ルールを守ってたまに着る人よりも、ルールを破ってしょっちゅう着る人の方がありがたいです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。蔦の葉は青と茶と緑で描かれており、自然を無視した意匠的な表現をしています。葉を描くときに自然にない多色を使うのは小袖以来の伝統で、友禅というものは、写生的表現と意匠的表現(反自然的とも言えますね)の間を揺れ動いてきたということだと思います。

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写真2番目は腹文です。片側は白揚げの波で、選べるようになっています。

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写真3番目は腹文の近接です。

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写真4番目はお太鼓の近接です。この作品は近景の葉について色も形も意匠的な表現をしていますが、遠景の葉についてはグラデーション表現をしています。空気遠近法とも言えますから、写生的ということになります。1つの絵の中に意匠的発想と写生的発想が混じっているのです。ごちゃごちゃで統一感が無いともいえますが、これが絵画と違う友禅意匠だとも言えますね。
[ 2014/05/18 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「アヤメ」の帯合わせ

第二千七百二十一回目は紫紘の袋帯「アヤメ」の帯合わせです。

5月11日(二千七百十五回)で紹介した紘の袋帯「アヤメ」の帯合わせを考えてみましたが、本来は帯合わせを考えることは無駄かもしれません。このような帯を買う人は、なにかに合わせようと思って買うのではなく、作品自体に惚れ込んで買うからです。そしてたいてい無地か江戸小紋か、訪問着であればぼかし程度のものに合わせるのだと思います。

このブログはエア帯合わせですから、具象的な友禅模様の訪問着に合わせて大失敗して見せるのが使命ですが、それでもアヤメの相手となれば流水か観世水ぐらいしか思いつきません。当店にもそういう付下げや訪問着は何点かありますが、流水や観世水というのはたいてい紅葉とセットになっていて竜田川としてつくられているのです。

問題はそれだけではなく、アヤメの帯を締める時期はちょうど袷から単衣に替わる時期だということです。このアヤメの袋帯のために、袷か単衣か悩みながら専用の流水の訪問着を誂えるのは難儀ですね。

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いちばん上の写真は、花也の変わり織の紗の付下げと合わせています。夏物ですが、盛夏に着るにはちょっと地厚な雰囲気もあり、単衣の曖昧な時期にも着られそうです。ペパーミントグリーンの地色で、糸目ではなくぼかしで芭蕉を表現しています。着物と帯が模様で競い合っても仕方がないので、着物はぼかしぐらいで良いだろうという普通の発想です。

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写真2番目は十日町の市松模様の紬を合わせてみました。取り扱いは菱一です。アヤメと市松の組み合わせは、ちょっと粋っぽい感じもありますね。このばあい、紬は単衣で仕立てる必要があるかも。

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写真3番目は上の紬の色違いです。アヤメと合わせるなら、黄緑(あるいはペパーミントグリーン)か紫と思いますが、意外と補色関係の黄色でも合いそうです。

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写真4番目は秋山真和さんの創作的な織物作品と合わせてみました。

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写真5番目は千切屋治兵衛の色留袖「野崎村」を合わせてみました。制作は藤岡さんです。野崎村は歌舞伎の演目で、ラストシーンの男女が籠と船で別々に帰るところですね。裾の低い位置だけに模様を配した作品です。野崎村とアヤメが関係があるわけでもないですが、なんとなく違和感はないというレベルです。

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写真6番目は千切屋治兵衛の訪問着「神坂雪佳写し」を合わせてみました。制作は中井淳夫さんです。大根を収穫した女性と田植をしている女性ですが、大原女あるいは白川女といわれるテーマでしょう。意外にも神坂雪佳の下絵をアレンジせず描いています。春播きの大根の収穫時期は6月ごろですし、田植もそのころですからアヤメと一致します。6月の風物詩と言った帯合わせです。私は今回はこの帯合わせがいちばん気に入っています。
[ 2014/05/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百二十回目は花也の名古屋帯の帯合わせです。

花也の名古屋帯の帯合わせは今日で終わりにしようと思いますが、最後は帯合わせの中で最も難しい紅型との相性、それから私が掲載しないのはもったいないと思う帯合わせです。

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いちばん上の写真は、城間栄喜の紅型の着尺を合わせてみました。紅型に合う帯の条件は、①紅型の柄は多色でごちゃごちゃしているので、無地または模様の周囲に余白がある帯、②紅型は顔料で染めてあるため色がくっきりして迫力があるため、その迫力に負けない帯、③紅型は高価であるため、それと釣り合いが取れる高価な帯という3つです。③の条件はあまりにも低俗・無教養と思うかもしれませんが、無視できない人間の心理です。

しかし、ごちゃごちゃ柄に合う無地系の帯は、組織や加工が簡単なため迫力もなく価格も安いので、①~③の条件が同時に満たされることはない、だから難しいのです。今回の花也の帯は、刺繍であるため模様が少なくて余白が多くても迫力があり、紅型に合うありがたい帯だと思います。

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写真2番目は玉那覇有公の紅型の着尺を合わせてみました。帯には、黄緑、オレンジ、水色、紫、白という多色の刺繍がありますが、その5色のそれぞれが、紅型に使われている多色のいずれかに対応しているので、帯合わせとしては「許容できる」というよりもっと積極的に連携していますね。

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写真3番目は大城カメの琉球絣を合わせてみました。沖縄の伝統的な意匠である手縞ですが、鮮やかな反対色を経緯に織り込んでもなお、透明感があって爽やかな雰囲気です。この都会的な雰囲気もまた沖縄の伝統だと思います。御絵図帳にもありますからね。

多色でありながら都会的、ということが共通なので相性が良いと思い、合わせてみました。

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写真4番目は久留米絣を合わせてみました。絣の手括りと手織りは 田中キヨ子、藍染は森山虎雄、タイトルは「古代物語」、重要無形文化財のラベル付です。四角がきちんと整列したデザインですが、帯のよろけた横段と対照的で面白いと思い、合わせています。
[ 2014/05/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百十九回目は花也の名古屋帯の帯合わせです。

今日は「アールヌーヴォー亀甲抜取間道」の帯を小紋(染めの着尺)に合わせてみました。野口の着尺を使っていますが、今回の帯合わせののルールは明快で、刺繍の横段の色と合わせています。白を除いて、紫、黄緑、オレンジ、水色の4色です。いろいろ試してみましたが、野口の着尺ばかりになってしまいました、やはり色に濁りが無くきれいなんですね。

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いちばん上の写真は、紫のグラデーションの横段に干菓子の模様の着尺を合わせてみました。

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写真2番目は黄緑地の更紗を合わせてみました。

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写真3番目はオレンジ色の地に意匠化された多色の花模様を合わせてみました。

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写真4番目は水色地の横段の梅の花の模様を合わせてみました。
[ 2014/05/15 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

花也の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百十八回目は花也の名古屋帯の帯合わせです。

今日も「アールヌーヴォー亀甲抜取間道」の帯合わせを考えてみました。昨日は帯の横段に逆らって着物をタテ縞にしてみました。考えてみれば、タテとヨコを人間の体のぶつけてみるわけで、人にやさしくない帯合わせですね。今の商品コンセプト「人にやさしい」の反対です。というわけで今日は、帯の模様と着物の模様を連動させてみます。

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いちばん上の写真は、真栄城興茂の琉球美絣を合わせてみました。藍のグラデーションが美しい琉球美絣ですが、この作品は福木による黄色も加えて、青、黄緑、黄色のグラデーションになっているという凝った作品です。伝統的な幾何絣も使われていますが、メインは横段模様ですから、帯の意匠と連動しています。

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写真2番目は久米島絣を合わせてみました。泥染、ユウナ染など現地の素材による草木染を使って横段の意匠を作り、途中にトゥイグアーをポイント模様のように付け加えるという創作的な作品です。伝統工芸産地における創作とは、伝統的な素材と伝統的な技法と伝統的な意匠をつかって新しい組み合わせを考えるといことで、この作品は模範的だと思います。帯とは横段つながりです。

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写真3番目は結城紬の百亀甲の飛び柄を合わせてみました。百亀甲で桔梗のように見える花を表現しています。今回は帯の刺繍の横段ではなく、その背景のアールヌーヴォー亀甲を意識して連動させてみました。桔梗と亀甲で違いますが、桔梗は亀甲で構成されていますし、遠くから見れば同じような形に見えるかなと。

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写真4番目は久留米絣を合わせてみました。作者は小川内瀧夫で、重要無形文化財の要件を満たすものです。これも着物の意匠とアールヌーヴォー亀甲が遠くから見れば似ているということで選んでみました。
[ 2014/05/14 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

花也の名古屋帯の帯合わせ

第二千七百十七回目は花也の名古屋帯の帯合わせです。

昨日の「アールヌーヴォー亀甲抜取間道」の帯合わせを考えてみました。カジュアルな雰囲気の帯ですから、合わせる着物は小紋か紬でしょう。とりあえず紬から合わせてみますが、紬の意匠というのは、タテ縞か横段か両者を合わせた格子か絣ですね。今回のように帯が横段のばあい、タテ縞の着物を合わせると、人間の体の真ん中でタテヨコがぶつかることになります。そういうのってどうなんでしょうね。

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いちばん上の写真は縞の結城紬を合わせてみました。黒に近い濃い藍染でくっきりした太い縞ですから、粋できりっとした女性のイメージです。時代劇で言えば、男勝りで旗本の馬鹿息子相手に啖呵を切る女性が着ていそうですね。

非常に強い縞なのですが、その一方で帯の横段はよろけています。まるでタテの物理的な力に引きずられて横段がゆがんだように見えます。両者に物理的な関連があるように錯覚できて、帯合わせとしては思いがけず成功したように見えます。

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写真2番目は「清次の草木染、三代目清次」という紬を合わせてみました。十日町の会社がブランド化して制作しているようです。手紡ぎ真綿を使っていると表示してありますが、その表示が信じられるとても手触りの良い紬です。十日町の紬といえば、本来の価値を無視してネットで安く売られてしまうイメージがありますが、素材にもこだわって付加価値を付け、ちゃんとブランド化して売ろうという考えの人もいるようです。

上の例では、濃い藍のくっきりした組み合わせだったので、今度は明るい色の組み合わせを狙ってみました。

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写真3番目は松枝哲哉の久留米絣を合わせてみました。「島うた」というタイトルで、久留米絣と思えば創作的な感じです。縞と格子で、久留米「絣」ではないみたいですが、じつは格子が途中で途切れていて、その部分は防染しているわけですから、立派な「絣」なのです。垂直方向の模様でも、単純な縞でない方が合わせやすいかもしれないという発想です。

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写真4番目は結城紬のタテ縞と亀甲を合わせたちょっと個性的な意匠の結城紬を合わせてみました。地の部分には絣もあります。縞と亀甲と絣と混じっているという結構凝った結城紬です。意図していなかったのですが、着物の藤色が帯の刺繍の色にも似ていて帯合わせに協力しています。帯合わせの要素には色も形もありますから、タテとヨコということで形だけ論じるのも意味が無いのかもしれない、と思わせますね。
[ 2014/05/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の名古屋帯

第二千七百十六回目は花也の名古屋帯を紹介します。

タイトルは「アールヌーヴォー亀甲抜取間道」です。このタイトルについては少し説明する必要がありますね。「アールヌーヴォー亀甲」というのは、私も聞いたことが無いのですが、京都の図案家が出版した下絵集あるいは図案集にこのようなものが載っているのだと思います。「西洋ではアールヌーヴォーというのが流行っている」と知った昔の図案家が、亀甲と合わせてみてハイカラな図案として創ってみたのではないでしょうか。京都の友禅制作者、主に悉皆屋といわれる人たちはそういう資料を集積しているんでしょう。

当社は、明治40年刊行の紋帳を代々使っているのですが、この紋帳には通常の家紋のほかにアールヌーヴォー家紋というのが載っています。そんなものは美術史に残ることもなくすっかり忘れ去られているのですが、どの時代にも好奇心の強い人はいて、限られた情報の中で一生懸命考えているんですね。

「抜取」というのは、彩色しない白揚げの友禅だということでしょう。刺繍で表現されたよろけた間道の背景として挿入されたものですから、白揚げでなければセンスが悪いということになりますね。帯の意匠としては、よろけ間道だけで完成しているように見えるので、有っても無くても良いと思うのですが、これがあるために作品に奥行きが生じて立体的に見える効果があるのでしょうか。

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いちばん上の写真はお太鼓です。いつもの花也とは全く違う配色で、それがこの作品の中心テーマのように思います。黄緑と紫を同時に使う配色は、私の世代は暴走族の車の色を連想してしまいます。私の知り合いはこういう色のハコスカとかケンメリとかに憧れていました。でも不思議とここでは下品ではありませんね、それどころか初夏の爽やかな風さえ感じてしまいます。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目は近接です。白揚げの一部は銀糸で刺繍が刺繍がしてあって、キラッと光るようになっています。刺繍には立体感があるので、これも奥行き表現の助けになっていますね。

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写真4番目は花の拡大です。普段の京繍では見ない技法ですね。
[ 2014/05/12 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯「アヤメ」

第二千七百十五回目は紫紘の袋帯「アヤメ」です。

今紹介しなければ紹介する季節が無いということで取り上げてみました。アヤメだけを描いた堂々たる肖像画みたいな帯ですね。優れた肖像画は、その人の内面を暴いてしまうとともに、その人の生きた時代までを写すものですが、このアヤメの肖像画もまた、アヤメ2本だけで今日みたいに爽やかな風が吹き抜ける初夏の日の全てを感じさせてしまう作品です。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は腹文です。模様は片側だけです。

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写真3番目は花の近接です。

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写真4番目は花の拡大です。

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写真5番目は葉を斜めから近接してみました。

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写真6番目は葉を拡大してみました。初夏の爽やかな風を表現するのには、アヤメだけでなく引き箔で表現された背景も貢献しています。ペパーミントグリーンの爽やかな色は、西陣独特の引き箔表現の適度な光沢や透明感にとってもたらされています。

背景は筆で不均等に塗られたように見えるのですが、織物ですから色ムラもまた計算して織られたものです。
[ 2014/05/11 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせ

第二千七百十四回目は花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせです。

今日も花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせの続きです。昨日までは直線か丸紋か、形にこだわった帯合わせをしていましたが、今日は色をメインに考えてみます。

絵画が色と形から成っているように、友禅は糊糸目と彩色から成っています。画家にデッサンが上手くて有名な人と、色が美しくて有名な人がいるように、友禅にも糊糸目が上手いと言われる作家と、彩色が豊かで人気がある人とがいますね。たいていの場合は、デッサンの上手い人は色もきれいなのですが、それでもどちらかというと色、どちらかというと形、というようなイメージはあります。昔の作家は筆の使い方が見事なのでデッサン派と思われがちですが、描かれた当時の色を再現してみると、じつは色彩家だったと再認識されることが多いです。

しかしながら、花也はあきらかに彩色より糊糸目重視派ですよね。この作品も丸華文部分を見ると彩色もセンスが良いとわかりますが、やはり圧倒的に白揚げ部分が多いです。帯合わせとしては、白揚げに合わせて色数を抑制した帯を合わせ、全体に森田空美風にまとめるか、多色の帯を合わせて着物に不足している「色の美しさ」という要素を加えるか、どちらもできるかと思います。

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いちばん上の写真は、北尾の綴(地が綴組織、模様は絵緯糸)の袋帯を合わせてみました。道長取りの意匠で、色は抑制されています。誰が見てもピッタリと感じる教科書的な帯合わせだと思います。

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写真2番目は織悦の袋帯を合わせてみました。こちらも道長取りの意匠で、色は赤、黄、青、緑、紫と多色が使われています。上品に抑制されて見えるのは、どの色も濁りが無く透明感があるからでしょう。

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写真3番目はしょうざんの徳田義三ブランドの袋帯を合わせてみました。「しょうざん」は決してマニアに受けるブランドではないですが、かつての「徳田義三ブランド」のシリーズはマニアックですね。花兎は、元は「角倉金襴」という名物裂ですが、兎がモチーフであることから和風ファンシー雑貨みたいな通俗になりがちです。この作品は、地の部分は本金の平金糸で、模様部分はポリエステルを捩じって織り込んでいます。色ではなく普通の金糸と捩じった金糸の立体感の差だけで表現することで、通俗に陥らない表現をしています。

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写真4番目は、捨松の袋帯を合わせてみました。近世の唐織の能衣装に取材したもので、たて沸に花模様を合わせたものです。色は抑制されているようにも見えますが、深くて強い色ですね。
[ 2014/05/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせ

第二千七百十三回目は花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせです。

今回は同じ花也の同じテーマの付下げのうち、カオス的に模様が絡み合ったシダ文様を使って帯合わせをします。昨日は、着物のメインテーマが丸華文ですから、帯は唐花文様を避けた方が良いと決めつけてしまいましたが、本当にそうでしょうか。もし丸紋どうしを合わせることが帯合わせに悪い影響があるとしたら、その範囲はどの程度まで及ぶのでしょうか。今回はあえて丸紋どうしを合わせてみます。

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いちばん上の写真は、紋屋井関の「御寮織」の袋帯を合わせてみました。模様のテーマは正倉院に所蔵されている「銀平脱合子」で、聖武天皇が碁で遊んだ時の碁石入れです。丸い紋のデザインには、唐花文、花の丸紋などいろいろあって、それぞれ意味も起源も異なります。この帯合わせの例でも共通なのは丸い形だけでその意味は全く異なりますが、実際に着物の柄と帯の柄として並べたときは模様の大きさの方が大事で、この場合は大きさが同じすぎる気がしますが、どうでしょうか。

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写真2番目は池口の刺繍の袋帯を合わせてみました。企画したのは野口で野口の作品として販売されました。さや型の地紋を織り込んだ帯地に箔と刺繍で模様を付けた帯ですが、丸紋は菊花と波です。この着物にもある唐花文のように本来丸紋として発達した文様は同心円状の模様配置になっているものですが、この模様はそれぞれのモチーフを丸い形の中に納めただけです。こういう配置はいかにも和様だとおもいます。また丸紋の大きさは、着物と帯で全然違いますね。

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写真3番目は山口織物の袋帯を合わせてみました。桜と菊を花の丸にした文様です。花の丸という文様は、花木模様の枝を丸めて丸紋にしたものですが、小袖の意匠にも家紋にも多用されて、日本を代表するデザインだと思います。同じ丸紋ながら、同心円状の唐花文とは違うわけですが、花の丸の起源をたどれば、平安時代にはじまる有職文にたどり着くわけですし、彼らはそれ以前の古代に輸入されて正倉院に納まっている唐花文の裂を参考にしているのでしょうから、文様というのは進化の枝(系統樹)みたいなものなのだと思います。

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写真4番目は、織悦の唐花文様の袋帯を合わせてみました。主文の唐花文様に対し圧迫されながら副文の文様も並んでいるという典型的な正倉院裂の意匠です。副文をメインにして、主文が途中で切れているという大胆な模様配置が、織悦のセンスですね。

これは同心円状の模様で、着物と帯が同じ系統の模様になってしまうわけですが、その一方で大きさが違うという例です。さて今回の4例の帯合わせはいかがでしょうか。お勧めというわけでは決してなく、けっこう遊びでやっています。


[ 2014/05/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせ

第二千七百十二回目は花也の付下げ「丸華文にシダ」の帯合わせです。

今回は同じ花也の同じテーマの付下げのうち、模様がよく整理されたさっぱりしたシダ文様と、カオス的に模様が絡み合ったシダ文様を比較しながら紹介しています。両者について帯合わせに違いが出るかといえば、私は同じだと思います。テーマも同じですし、色も同じですものね。

帯合わせに注意しなければいけないことといえば、着物のメインテーマが丸華文ですから、帯は唐花文様を避けた方がいいということでしょう。着物には丸華文が5つか6つあるわけですから、帯が唐花文様であれば、全身の姿としては丸華文が1つ増えて6つか7つあるというだけになってしまいますものね。

今日は、先に紹介したさっぱりしたシダ模様の付下げで帯合わせをしますが、着物が丸華文とシダの曲線ですから、帯は直線模様にしてみます。

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いちばん上の写真は、池口定男の「佐波理綴」のごく初期の作品を合わせてみました。御簾をテーマにしたもので、帯のたれの部分を見ると、風でわずかにめくれていて御簾と分るという意匠です。たれを見なければ、縦縞の模様にすぎません。

花也のこの付下げは、丸華文に抑制された彩色がある以外、白揚げですから、白、グレー、金銀のみの無彩色の帯で、色数を抑制した帯合わせにすれば、森田空美風で都会的ですよね。

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写真2番目は龍村の「海老殻間道手」を合わせてみました。名物裂の一分野である間道です。「縞」と言ってしまえば粋でカジュアルな感じがしますが、「名物裂の間道」と思えば龍村ブランドに相応しい格のある意匠に見えてきます。龍村はいろいろな間道を再現していて、「日野間道」「青木間道」などがありますが、すべて高島屋および三越限定となっており、唯一自由に取引できる間道はこれだけです。自由と言っても注文しなければ滅多に出会うことはありませんが。

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写真3番目はすでに廃業した織屋である華陽の綴の袋帯を合わせてみました。笛と笛袋をテーマにしたものです。笛と笛袋を水平に並べた意匠で、実質的な直線の横段模様ということで、丸華文に対比させてみました。

直線の意匠で硬くなりがちですが、笛袋に織りだされているという設定の鹿のかわいさが硬さを緩和しています。鹿を取り込むことは図案家のみごとな配慮だと思います。

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写真4番目はすでに廃業した織屋のブランド「御門綴」の袋帯を合わせてみました。古代から明代まで織り続けられ、中国文化を代表するようなデザインである「蜀江錦」をテーマにしたものです。強い構成力を持つガチっとしたデザインで、皇帝が支配する社会構造を思わせます。

丸華文も元は中国古代の唐花文様ですから、じつは蜀江錦と起源は同じということになります。しかし、蜀江錦の唐花文はガチっと角ばった構成の中に閉じ込められているのに対し、丸華文は日本的な流れるような植物文様に囲まれていて、対照的です。その辺を味わっていただくような帯合わせです。
[ 2014/05/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」の細部

第二千七百十一回目の作品として花也の付下げ「丸華文にシダ」の細部を紹介します。

昨日の付下げの細部ということで、一応華文を中心に撮ってみましたが、絡まったシダの枝もご覧ください。太い枝と細い枝が、意匠というには不合理なくらい計算されていない角度で交わっているように見えます。自然の草むらの状態を整理(意匠化)せずそのまま写生したように見えます。

このような枝の自然な重なりを省略せずそのまま意匠にできる能力はすごいのか、私は正直なところ懐疑的です。意匠というのは見る人が苦痛が無い程度に整理すべきなのかもしれないので、無駄な能力なのかも知れませんものね。

どうやって、このような計算していない枝の重層的な重なりを、頭痛にならないように描くことが出来たのか、レイヤーを使って画像処理をしている方はお気づきのことと思いますが、アニメのセル画の原理を使っています。昔のアニメはセル(セルロイド製だったため)という透明のシートに別々に近景や遠景を描き、重ねて画像にしますが、現在の画像処理ソフトも同じ仕組みになっていて、レイヤー(層)を設定してから描くと、失敗してもその層だけ廃棄すれば良いので効率的に描けます。

じつはこの作品のシダの枝の部分は、セル画あるいはレイヤーの手法を利用していて、まずシダの枝に糊を置き、それを完全に乾かし、その後さらに別のシダの枝に糊を置き、また乾かして完成させているのです。2つのレイヤーから成り立っているわけですが、それぞれのレイヤーに描かれたシダの枝の意匠は、おそらくすっきりした意匠なのです。それが重なったとき、それぞれは意匠として意識的に統合させていないため、自然のカオス状態が表現できているのです。

どの部分が同じレイヤーで、どの部分が別のレイヤーなのか、全体を眺めるとわかりますね。相手の存在を無視するような角度で交わって重なっているのが別のレイヤーなのでしょうね。

とても科学的なやり方だと思います。写生とは何か、意匠とは何か、ということを科学的に教えてくれていますものね。私はそういう意匠の存在意義を認めるからこそ、この作品が今ここにあるわけですが、実際に着る人はどうなんでしょうね。

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いちばん上の写真は、オクミの華文を中心とした近接です。太いシダの枝は、細いシダの葉の上に、相手を無視するような角度で重なっています。自然状態では当たり前のことですが、1枚の絵として描くときは描きづらいものです。画家は、このような自然を描くときは、写生とは言いながら頭の中で整理して描いているものだと思います。レイヤー的な思考をすることで、自然のカオスがそのまま描けているのです。

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写真2番目はマエミの華文を中心とした近接です。

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写真3番目はマエミの華文を中心とした近接です。

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写真4番目は後姿の2つの華文を中心とした近接です。
[ 2014/05/07 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」

第二千七百十回目の作品として花也の付下げを紹介します。

タイトルは前回紹介した付下げと同じ「丸華文にシダ」です。前回の付下げは、シダ文様がオクミから斜め下に向かって流れるようにつながっていったのに対し、今回の付下げは、斜めに流れるような模様配置は同じながら、シダ文様の量が増えてにぎやかな印象になっています。

前回の作品と今回の作品を比べて、みなさんはどちらが好きですか。前回の作品はあくまで付下げで大きな会場では寂しいのに対し、今回の作品は豪華な訪問着で大きな会場でも主役を務められる、とも言えますし、前回の作品はすっきりして都会的なのに対し、今回の作品は模様が重層的に重なって視線が混乱する、とも言えます。

一般的な傾向としては、すっきりした模様とそうでない模様とどちらが良いかと聞かれれば、たいていの人は「すっきり」が良いと言いますが、実際にすっきりした模様の着物を羽織ると「寂しい」というものです。そういう理由で、たいていの人は実際に自分のものにする時は、こちらの着物を選ぶのではないかと思います。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。この付下げも、前回の付け揚げと同じように、オクミからスタートしたシダは斜めに流れるように降りて行き、その間に華文は4つなのです。にもかかわらず印象は全く違います。その理由は、この付下げは単に模様が多いだけでなく、模様が重なっていて重層的なのです。

意匠として描かれた木の枝や草むらは、作家によって線が整理されて描かれていますから、豪華でもすっきりしているものです。しかし現実の自然状態の木の枝や草むらは、枝や茎が絡まって目で無理に追おうとすると目が疲れてしまうものです。この作品はそんな自然の枝や茎の絡まりをそのまま描いているように思います。本当の意味の写生的作品ですね。

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写真2番目は後姿です。後姿は前回の付下げとは大きく違います。前回の付下げは、マエミからつながってきたシダの枝がそのまま流れるように斜めにつながって終わっていました。華文は、背中心を越えない部分に1つだけでした。

この付下げは、普通の付下げの模様配置と同じで、マエミから流れてくる模様は背中心に至る前に終わり、背中心辺りでは、別のシダの枝がもう1度上へ盛り上がって、そこからさらに2つの華文があります。後姿の華文は全部で3つですね。

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写真3番目は袖です。メインの意匠と同じように、模様が重層的に重なっていてホンモノの草むらのようです。

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写真4番目は胸です。この部分の模様も、前回の付下げと同じように斜めに流れているのですが、シダの枝が重層的に重なっているので、全体の印象としてすっきりではなく豪華ですね。

この付下げを見ていると、中学の写生大会で雑木林の絡まる木の枝をそのまま描こうとして、目が疲れてイライラしてしまったことを思い出しました。この作品の作者は視線が混乱して目が疲れることはなかったのでしょうか。明日はその謎を解明します。
[ 2014/05/06 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「丸華文にシダ」の細部

第二千七百九回目の作品として花也の付下げ「丸華文にシダ」の細部を紹介します。

華文の表現は、花也らしく細密な糸目と上品な色彩の組み合わせです。作品の見どころは、誰が見ても上品としか言いようのない華文よりむしろシダの線描き表現の方ですね。糸目はの本来の機能は、染料どうしが混じって色が濁らないように、堤防の役割をするものですから、絵の輪郭を取ることが多いです。

しかし、この作品のシダの葉のような表現方法は、色が濁らないようにという機能を超えて、絵画そのものになっています。これを線描きと言います。どのような線を置くかは、画家が線を描くことと同じですから、芸術そのもので、本来の輪郭を取る糸目よりも難度が高いです。

この作品では、糊筒を毛筆のように使っていますね。これも作者の創作性の一つで、江戸時代の小袖では糊筒で毛筆のマネをするという発想はありません。

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いちばん上の写真はオクミの近接で、上の方の華文です。

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写真2番目もオクミの近接ですが、下の方の華文です。

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写真3番目はマエミの近接です。

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写真4番目は後姿の近接です。
[ 2014/05/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ

第二千七百八回目の作品として花也の付下げを紹介します。

タイトルは「丸華文にシダ」です。シダ(羊歯)というのは日蔭に生える陰気な植物ですが、1年中枯れないということで永続性につながり、文様としては縁起が良いことになっています。縁起の良い羊歯と華文の組み合わせた着物ということですね。

この着物に描かれた羊歯には、線状の葉と幅がある葉の2種類が描かれています。対照的な2種類の葉が描かれているためにリズムが生まれて模様として成り立っているわけですが、そこが羊歯という植物の便利なところなのです。一般的に「シダ類」などといいますが、このばあいの「類」は一般語であって科学的な分類ではありません。科学的な分類はあくまで「界・門・綱・目・科・属」ですね。シダ類というのは、じつは門にまたがる大きなグループなのです。だから葉の形もさまざまであり、下絵師はシダの図案を考える時は、葉の形を都合よく選べるのです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。オクミからスタートしたシダは斜めに流れるように降りて行きます。その間に華文は4つですね。付下げならばオクミは1つでも良いので、ちょっと豪華ですね。斜めに流れるシダの枝に沿って描かれたので、4つになったのでしょう。

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写真2番目は後姿です。マエミからつながってきたシダの枝がそのまま流れるように斜めにつながっています。後姿と言っても背中心を越えない部分に華文が1つだけです。背中心を越えると枝は先細りになってあっさり終わっています。普通の付下げであれば、背中心を越えた辺りでもう1度上へ盛り上がって、そこにもう2つぐらい華文があるものです。

前姿に重心を置き、後姿はあっさりという模様配置ですね。このタイプの模様配置のメリットは、帯合わせが楽ということです。帯はお太鼓すなわち後姿にメインの模様がありますから、着物は後姿が主張しなければ、両者が競合しにくいのです。

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写真3番目は袖です。メインの意匠と同じように、斜めにあっさりとしています。

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写真4番目は胸です。ここも斜めにあっさりとしています。胸や袖が、メインの模様と同じように斜めに流れているために、全体の印象としてすっきりしているのです。模様の量自体は少なくはないので、豪華とすっきりが両立していますね。
[ 2014/05/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯「宝来舶載」の帯合わせ

第二千七百七回目は大羊居の名古屋帯「宝来舶載」の帯合わせです。

「宝来舶載」の帯合わせは今日で最後にしますが、最後なのでなるべく意外そうな帯合わせを考えます。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の訪問着と合わせてみたものです。制作したのは中井淳夫で、斜めに並んでいるのは干支ですからお正月を意識した着物です。

船は吉祥文様ですから、お正月に相応しい模様とも言えます。七福神は船に乗っていますものね。

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写真2番目は、花也の付下げを合わせてみました。雪輪の取り方の中に柳と桜を入れた意匠です。友禅はかすれのある糊糸目です。糊糸目には作者ごとに個性があって、かすれを毛筆の飛白のように景色の中に取り入れる作者もいますし、かすれを失敗と思う作者もいるようです。

桜と西洋帆船の組み合わせは意外に思うかもしれませんが、船は「旅立ち」の意味がありますから、卒業式や入学式に相応しいモチーフです。その時期は桜の時期でもありますからね。

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写真3番目は花也の付下げと合わせてみたものです。花也では定番になっている糊糸目の白揚げの波のシリーズで、彩色友禅の千鳥を加え、「波に千鳥」の組み合わせにしたものです。波のシリーズには、他に松を加えたものや、刺繍を多めにしたもの、ダンマル描きを併用して濃淡をつけ写生的にしたものなどがあります。

船だから海、という単純な発想で合わせています。この場合は、和洋の組み合わせがちぐはぐなところが良いのです。

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写真4番目は、4月9日(二千六百八十三回)の記事で、帯合わせに使った花也の色留袖と合わせてみたものです。松島と海をテーマにしたものですが、「鳥も通わぬ」という言葉通り、人どころか動くもののの痕跡さえない風景です。

帯合わせの手法の1つに、決まった組み合わせのうち着物に足りないものを帯で補うというやり方があります。たとえば、松と梅の着物に丈の帯を合わせて松竹梅を作るような帯合わせですね。今回は、人の痕跡が無い風景に人の痕跡である船を加えてみました。

4月9日の解説では、3600年よりはるかに長い時間、人が全く関わらないために変わらない景色、絶望的な孤独で俊寛を連想させると書きました。この帯合わせでは、オランダ船が俊寛を救助しそうですね。おせっかいな帯合わせです。
[ 2014/05/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)