大羊居の名古屋帯「宝来舶載」の帯合わせです

第二千七百四回目は大羊居の名古屋帯「宝来舶載」の帯合わせです。

今日は昨日の「宝来舶載」の帯合わせです。実際に試してみると、紬から訪問着まで非常に広く使える帯だと気が付きます。染めの名古屋帯ですから、本来は紬や小紋に合わせれば良いのですが、箔や刺繍も多用されていますし、宝物が載せられているという非日常的なテーマから、フォーマルでも使える雰囲気になったのだと思います。

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いちばん上の写真は野口の付下げと合わせています。友禅の模様の上に一度箔を貼ってから、また箔を剥がすという「箔剥がし」の技法によるものです。普通は金箔を使うと派手になるものですが、この「箔剥がし」という技法は友禅の色が抑制されてかえって地味に見えるのが特徴です。大羊居の帯は色が鮮やかですから、その相手としては抑えた色を選んでみました。

今回、この帯合わせを選んだもっと大事な理由は、テーマが宝尽くしだからです。この船に載せられているであろう宝物を着物の模様として見せてみたのです。

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写真2番目は、野口の訪問着と合わせてみました。制作したのは倉部さんで刺繍と箔によるものです。着物に友禅を使っていない方が、帯の完璧すぎる友禅と競合しないで良いだろうということで選んでいます。そして何より、この着物のテーマも宝尽くしです。

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写真3番目は、館山の唐桟縞と合わせてみました。2軒ある齋藤さんの工房のうち光司さんのものです(現在は代替わりしています)。南蛮船や紅毛船が舶載して来たものには、東インド会社が輸出した木綿の縞である唐桟もあります。

当時の本物は名物裂として伝わっているのみですが、それを真似て日本で織られたのが川唐であり、それに学んで明治の初めに館山で織り始めたのが齋藤家の唐桟です。川越はじめ他の産地では絶えたり機械織りにされているので、唯一商品として継続して手織りされている齋藤家の唐桟が、ホンモノにいちばん近いといえるでしょう。

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写真4番目は斎藤頴さんの唐桟です。こちらも代替わりしていますね。
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[ 2014/04/30 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の名古屋帯

第二千七百三回目の作品として、大羊居の名古屋帯を紹介します。

紹介文を書く前に売れてしまったので、もう掲載の意味が無くなってしまったのですが、帯合わせの写真も撮ってあるので、せっかくなので掲載します。

「宝来舶載」というタイトルの作品です。船は吉祥文様に分類されますが、それは、日本の歴史では遣唐使船、朱印船、南蛮船あるいは黒船と、船は外国から宝物をもたらしてくれるものだったからでしょう。

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いちばん上の写真はお太鼓です。南蛮船または紅毛船(旧教国と新教国で分けている)を思わせる西洋風の帆船ですが、帆は友禅モチーフを入れる容器ともなるので、友禅の図案にはぴったりですね。まして複数の帆を持つ西洋帆船は華やかな意匠を作りやすいです。人物などは描かれていないので、帆の装飾を見せるための船の意匠ということだと思います。

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写真2番目は腹文の全体です。普通の帯は、腹文の意匠はお太鼓のダイジェストにすぎないばあいが多いですし、波だけで海を暗示して終わりというあっさりしたものが多いですが、この作品では腹文は豪華です。お太鼓の船は純粋な装飾ですが、腹文は大小複数の船、陸地、城あるいは鳥も描かれており、ストーリー性を感じます。とくに陸地の近くにいる船は帆をたたんで停泊しているように見えますから、明らかにストーリーがありますね。装飾性⇔ストーリー性ということで、この帯は前後で違う姿勢で作られているのです。

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写真3番目はお太鼓の近接です。

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写真4番目は腹文の片側の近接です。陸地と城と鳥が描かれていますが、意外にも丸みのあるイラスト風のタッチで、西洋風のモチーフをずっと描いてきた余裕のようなものを感じます。こういう意匠は一生懸命描いている感じがしないことが大事ですね。

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写真5番目は腹文のもう片側の近接です。
[ 2014/04/29 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

再び紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千七百二回目は、再び紫紘の袋帯の帯合わせです。

先日、KEIさまからのコメントで、「花也のピンク地に縦竹模様(?)の連続柄のような物に何故合わせないのか」という指摘があったものです。写真ではピンク地に見えてしまったようですが、実物は白茶に近い色なので分からなかったのですが、今回解明しましたので試すことができました。実際試してみると、コメント通り、なかなか良いのではないかと思いました。

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いちばん上の写真は、花也の付下げで竹をテーマにしたもので、先日、KEIさまからのコメントで指摘されたものです。

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写真2番目は、同じ竹をテーマにした花也の付下げで、地色が若竹色です。こちらの方が先に制作されたもので、上の写真の方が竹シリーズとしては派生型となります。

両者の違いは、こちらは糊糸目の友禅で竹を描いただけであるのに対し、上の派生型は友禅に対してダンマル描きを併用し、近景を糊防染によるはっきりした白揚げ、遠景をダンマル描きによる半防染による中間色とし、空気遠近法により竹林を描いていることです。竹には葉も根もないため、前者は実質的に縦縞の幾何学模様であるのに対し、後者は遠近感があって絵画的要素があります。

また、こちらの絵画性が少なく幾何学模様に過ぎない方の竹は、地色を若竹色にすることで、竹そのものに色が無いながら容易に竹と連想できるようにしています。若竹色でなければ、完全な幾何学模様と思ってしまう人の割合が大きいかもしれません。

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写真3番目は、同じ花也の付下げで「紐の流れ」というタイトルの作品です。地色はいちばん上の作品に近いですし、模様も同じ白揚げですが、竹が直線なのに対し紐は曲線ですから対照的です。元々花也さんは、竹や紐が描きたかったわけではなく、直線のデザインをしたいから竹を素材とし、曲線のデザインをしたいから紐を素材としただけだったのかもしれません。

モリスの帯は曲線派の代表ですから、上の2例は直線と曲線の対照的な組み合わせ、この例は曲線どうしの組み合わせということになります。

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写真4番目は、同じ花也の付下げで「さざ波」というタイトルの作品です。これも白揚げの作品ですが、地色が墨色なので完全に無彩色だけの画面になります。上3例で直線と曲線を試したので、波も試しました。

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写真5番目は一の橋の付下げで、やはり白揚げで波を表現したものです。地色は焦げ茶色ですね。
[ 2014/04/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

野口の絞りの長襦袢

第二千七百一回目の作品として、野口の絞りの長襦袢を紹介します。

今日紹介する長襦袢は、それぞれ「兎」と「違い鷹の羽」の文様を地紋した生地を使い、その地紋の部分を絞って飛び柄の意匠のように見せています。さらに「兎」は女性的、「違い鷹の羽」は男性的とモチーフを分け、それぞれ女性的、男性的な色で染めています。

ここで見られるのは、地紋、技法、色、用途などの連携です。1つ1つについては珍しいものでもないし、難度の高い技法が使われているわけでもないですが、それぞれを連携させ、総合的に「凝った」商品にしています。技法が高度なのではなく、野口の企画力が高度なんですね。

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いちばん上の写真は女物としてつくられたものを、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目はその近接です。

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写真3番目は男物としてつくられたものを、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真4番目はその近接です。
[ 2014/04/27 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせ

第二千七百回目は、千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせです。

昨日は、更紗という着物のテーマを帯でさらに強めるという帯合わせでした。更紗というのはインド起源の植物文ですから、それを強めるとなれば帯は象や鸚哥の柄になります。着物雑誌でモデルさんがそういう帯合わせをしているのを見ると憧れますが、実際に象や鸚哥の帯を買うのは勇気が要りますよね。万能というわけではないですから、結局、出番が少なかったという場合が多いと思います。

今日は、縞や格子、正倉院の唐花文など、更紗に全く関係のない万能タイプの帯を合わせてみます。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。縞と更紗は曲線と直線で意匠としては正反対です。しかし、それぞれの起源を考えてみると、どちらも木綿で、どちらも近世にインドから輸入されたものですから、じつはガミラスとイスカンダルのような関係なんですね。

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写真2番目は、龍村の「甲比丹(カピタン)縞格子」を合わせてみました。一見、縞や格子ですが、金糸で横段文様が入っています。このタイプは「モール」と呼ばれ、当時で本金糸を使えるのはマハラジャ階級でしょうから、唐桟縞といわれるような普通の木綿とは格違いの高級品です。これも近世インド起源ですから、ガミラスとイスカンダルのような関係で、雰囲気は更紗と正反対でも関連を感じる帯合わせです。

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写真3番目は、河村織物の「栄昌綴」というシリーズの袋帯を合わせてみました。全体が横段模様で横段内部の小さい模様は七宝繋ぎです。更紗の曲線に対する直線文様ということで選んでみました。

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写真4番目は、坂下織物の「御門綴」というシリーズの袋帯を合わせてみました。坂下織物は10年以上前に廃業した織屋ですから、もうネットショップで見ることもないブランドだと思います。正倉文様の中でもっとも典型的な唐花模様で、フォーマルなら何でも合う万能型ですが、日本の古典でありながら外国起源の文様でもあり、更紗とも馴染んでいるように見えます。
[ 2014/04/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせ

第二千六百九十九回目は、千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせです。

昨日は更紗の着物に対し更紗(または唐草の曲線模様)の着物を合わせるというテーマでした。私は着物の柄と帯の柄の関係は、共通すぎても良くないし反対すぎても良くないと思っていますので、失敗例を示すつもりだったのですが、実際に帯合わせをしてみると、特に違和感はありませんね。たいていの方にとって許容範囲ではないかと思います。

今日の帯合わせの方針は、着物の更紗というテーマを帯でさらに強めるという帯合わせです。更紗というのは植物文ですから、帯は実際に更紗という文様を生んだ国に住む動物や人物を合わせます。植物と動物を並べれば動物の方がインパクトが強いですから、面積の大きい着物が植物、面積の小さい帯が動物ということで、バランスが取れるのではないでしょうか。

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いちばん上の写真は龍村の「西域舞踊錦」というタイトルの袋帯を合わせてみました。更紗文様とその地の人物という組み合わせです。元絵は西域のある遺跡から出土した壁画だろうと思います。西域は更紗の産地ではないですから、あまり正確ではありませんが、普通の日本人にとってはエキゾチックなイメージで統一されて見えるのではないでしょうか。

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写真2番目は太西勇の「銀平脱合子」というタイトルの袋帯を合わせてみました。正倉院にある碁石の入れ物で、象と鸚哥の2つがあります。試合をする時は象さんチームと鸚哥チームということで、古代人もカワイイのセンスがあるようですね。「銀平脱」は技法の名前なのですが、不合理なぐらい面倒で、古代には職人の人生を吸い尽くしてしまうような技法がありますね。更紗を生んだ国の動物といえば、象と鸚哥、模範解答ではないでしょうか。

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写真3番目は龍村の「木画狩猟文」というタイトルの名古屋帯を合わせてみました。韃靼人の狩猟風景というテーマは日本人に愛され、近世まで多くの作例がありますが、その最初のものがこの帯の元絵である正倉院の木画です。木画とは異なる種類の木を使った象嵌ですね。韃靼人は更紗の国の住人ではないですが、普通の日本人にとっては区別がつかないだろうということで合わせてみました。

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写真4番目は大松(大彦、大羊居の本家)の友禅染の袋帯を合わせてみました。銀系脱合子の鸚哥の方に想を得て創られた意匠かもしれません。大松の作品は、大彦や大羊居を都会的に洗練させた感じがします(大彦や大羊居はあくまで芸術的)。色彩感覚が洋風でモダンなのが魅力ですが、鸚哥などエキゾチックなモチーフで本領を発揮するようですね。
[ 2014/04/25 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせ

第二千六百九十八回目は、千切屋治兵衛(倉部)の付下げの帯合わせです。

私は更紗模様の着物が好きですが、更紗の着物には大きな欠点があります。それは更紗の帯が使いづらいことです。厳密には更紗ではなくてもエキゾチックな曲線の蔓模様の帯は多いですから、それが使えないというのは不便です。

更紗と唐草は、日本においてそれが受容されてきた歴史を考えると全然違うわけです(更紗は近世に木綿の裂として輸入されたもの、唐草は古代に中国経由でもたらされ正倉院にもあるもの)。しかし、どちらも曲線模様ですから、「ペルシア模様」のようなタイトルで捨松の帯の意匠になっていると、同じに見えてしまうこともあります。

唐草も更紗も模様の起源は草花ですが、日本の草花ではないため季節の制約を受けませんし、エキゾチックでありながら、日本に定着したものであるため、和風とも解釈できます。そして何より、この分野では捨松が強いのですが、捨松の帯は品質も意匠も優れていますし、ネットでいつでも適価で買えるという頼もしい存在ですから、それが使えないのはつらいです。

では本当に更紗の着物に更紗や唐草などの曲線模様の帯は使えないのか、今回はそれを試してみます。

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いちばん上の写真は帯屋捨松の「たすき取華文」というタイトルの作品で、「帯屋捨松」のロゴのある標準的なものです。更紗に更紗の組み合わせですが、どうでしょうか。意外に許されるとしたら、着物は金色のみ、帯は多色という違いのおかげではないかと思います。

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写真2番目は帯屋捨松の「ヴィクトリア華文」というタイトルの作品で、「帯屋捨松」のロゴが無い手織りの高級バージョンです。インドの更紗は東インド会社によってヨーロッパにも輸入され、マルセイユ中心にヨーロッパで流行します。

インドの木綿の更紗は既存のフランスのウール業者と競合し、更紗を厚かった商人は死刑、なんていう命令が王の名で出たこともあるぐらいです。それでも更紗文化はヨーロッパに浸透し、独自の更紗も自製されます。そんな流れの一点でしょうか。

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写真3番目は洛風林の「宝飾華文」というタイトルの作品で、実際に織った野は誰かわかりませんが、捨松かもしれません。これは、中国経由で日本に伝わった唐花文の仲間でしょう。

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写真4番目はじゅらくの「帝王紫」のシリーズのうち、まだ吉岡常雄が存命していた極初期のものです。吉岡常雄の手描きの貝紫の染帯に似たよくデザインがあり、意匠も本人が描いたか監修したかしていると思います。こちらはギリシアにもある葡萄唐草の典型デザインですが、更紗であるはずの着物の模様の蔓の回転と重なりますね。
[ 2014/04/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(制作は倉部)の付下げの細部

第二千六百九十七回目の作品は千切屋治兵衛(制作は倉部)の付下げの細部です。

倉部さんによる金描きと京繍の付下げです。濃い紫のような焦げ茶のような、宇宙を思わせる深い色の中に星空のように箔と刺繍が金色に輝いている、という倉部さんの必勝パターンの作品です。

濃い地色に金描きだけの配色は、「紺紙金字一切経」のような装飾経や川端龍子の「草炎」を連想させます。「草炎」は激しいながら装飾性もありますが、同じ配色でも着物の意匠になるとただの装飾になりがちです。装飾ならまだ良くて妖しいだけの下品なのもありますよね。私は紺地に金字の装飾経のような配色の現代の着物のうち、最良のものは倉部さんの作品ではないかと思います。

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写真のいちばん上はオクミの近接です。金描きの金の色や強弱が一様では無いので、作品に奥行きを感じます。また蔓の回転の仕方もよく描き分けられていて上手なように思います。

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写真2番目はマエミの近接で、上のオクミの写真からつながります。

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写真3番目は後姿の近接で、マエミの下の方にある模様(昨日の前姿の写真参照)からつながる部分です。

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写真4番目は後姿の近接で、背中心辺りです。
[ 2014/04/23 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(制作は倉部)の付下げ

第二千六百九十六回目の作品として千切屋治兵衛(制作は倉部)の付下げを紹介します。

倉部さんによる金描きと京繍の付下げです。濃い紫のような焦げ茶のような、宇宙を思わせる深い色の中に星空のように箔と刺繍が金色に輝いている、という倉部さんの必勝パターンの作品です。

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写真のいちばん上は前姿(マエミ+オクミ)、

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写真2番目は後ろ姿、

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写真3番目は袖、

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4番目は胸です。

タイトルは「霞取り更紗」で、輪郭線が無いのでわかりにくいのですが、更紗は霞の形に切り取られています。霞は写生的な形ではなく両端が鋸歯状になった意匠的なものです。

曲線である植物の蔓模様が鋭角的に切り取られている、というところに意匠の上での主張があります。この曲線と鋭角的な直線の対比こそが意匠家の仕事で、数多ある更紗文様の中で存在意義のあるものになっています。
[ 2014/04/22 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百九十五回目は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

ウィリアムモリスの帯合わせは、もうこれで最後にしようと思いますが、今回じつは膨大な量の写真を撮っていて(合いやすかったというよりも、それだけ悩みが大きかったということですね。)、使い残しの画像がたくさんあるので、今日はそのうち私が気に入っていたものを紹介します。

フォーマル方向の帯合わせということで付下げに合わせてみます。今回の帯合わせでも小紋のときと同じように、模様の種類や和様の別、色というような属性を共通にすべきか、反対にすべきかということを意識しています。

今回も両者の属性が共通でも反対でもない関係、自然な無関係が作れるでしょうか。

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いちばん上の写真は、小溝一夫さんの版染の着尺を合わせてみました。小溝一夫さんはすでに故人ですが日展に入選していた染織作家です。版染とは、木などで版を彫りそれを生地の上から判子のように押したり、版の上に生地を置いて上からバレンで擦ったりして染めるものです。小溝さんは版の上に生地を置いて擦っていたそうです。

型紙を使う型染より原始的な感じもしますし、型の凹部で染める型染にたいし、版染は型の凸部で染めるので、反対とも言えますね。実際に作品を見ると、原始的どころか、型染よりも輪郭がくっきりしていて精緻に染められるということがわかります。どんな技法にも上手い人や下手な人がいるので、素朴な技法であっても日展で入選しているような人は、その分野の頂点にいて作品は洗練されているものなのだと思います。

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写真2番目は新田機業の紅花紬を合わせてみました。紅花というのは紅色のイメージですが、実際にはいろいろな色があります。それは紅花の花はオレンジですが、最初は水溶性の黄色の染料が出て、その後紅色の染料が出るからです。この工程で得られた黄色と紅色に藍染を重ねると色の三原色になり、理論上どんな色も作れるということなのです。

この作品は紅色の縞をグラデーションにして優しく演出して着易い着物になっています。私は気に入っていますが、今回は林織物の本塩沢を優先したため「使い残し」になりました。

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写真3番目は大城広四郎さんの琉球絣(南風原の紬)を合わせてみました。格子(沖縄では格子の模様をグバン=碁盤といいます)の交わる部分を絣にした意匠です。福木で染められた辛子色と帯の青の対比がきれいです。とても良い帯合わせですが、格子ならばどんな帯にも合うので試すまでもな医ということで掲載しませんでした。

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写真4番目は野口の着尺を合わせてみました。横段の着尺は普通では大胆ということになりますが、野口では普通にあります。今回も何種類か横段の着尺を合わせていて、すべて合いました。代表として紫地の干菓子を載せたので、他の例は載せませんでしたが、反対色の例としてオレンジを載せておきます。
[ 2014/04/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(4)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百九十四回目は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

今日はフォーマル方向の帯合わせということで付下げに合わせてみます。今回の帯合わせでも小紋のときと同じように、模様の種類や和様の別、色というような属性を共通にすべきか、反対にすべきかということを意識しています。

今回も両者の属性が共通でも反対でもない関係、自然な無関係が作れるでしょうか。

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いちばん上の写真は藤井絞の更紗の訪問着を合わせてみました。絞りで模様の場を作り、その中に絞りと友禅を併用して更紗模様を描いています。曲線模様どうしで共通性のある帯合わせですが、それほどわざとらしくもなく、まあ許容範囲かというところでしょうか。

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写真2番目は千切屋治兵衛の玉紬地の付下げを合わせてみました。実際の制作は藤岡さんです。夏の京野菜をテーマにしていて単衣に相応しい付下げです。

帯は夏物ではないですが、重厚感がなく涼しげなので単衣にも対応できそうです。着物の模様は和風というより京都近郊の夏という地域限定ですが、自然な無関係が作れたように思います。

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写真3番目は千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際の制作は西山謙一さんです。西山さんは無線友禅を専門にしています。糸目の輪郭線という制約が無いので純粋な絵画に近く、作品のテーマも自然と写生的なものになる傾向があります。

この作品も雲海から山の頂が頭を出し、日光を浴びて輝いているというもので、着物というより展覧会に出品された日本画のようでもありますね。着物のテーマは和だの洋だのと言ったレベルでは無いので、どんな帯に対しても自然な無関係が成立するように思います。

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写真4番目は千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際の制作は倉部さんです。波兎というテーマは謡曲の「竹生島」に取材したもので、登場人物は船で竹生島に渡るのですが、その途中で見える景色の描写の中に、白い波頭が兎が走っているように見える、というのがあり、それを図像化したものです。

謡曲ですから和風モチーフで帯とは反対ですが、帯の鳥と着物のうさぎで可愛いどうしというテーマで共通の帯合わせです。
[ 2014/04/20 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百九十三回目は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

今日は小紋(染めの着尺)に合わせてみます。今回の帯合わせで意識したことは、帯と着物の関係で、模様の種類や和様の別、色というような属性を共通にすべきか、反対にすべきかという問題です。

正解はおそらく、両者の属性が共通でも反対でもない関係、図形の問題で言う「ねじれの位置」、あるいは自然体な関係になるのが良いということでしょう。

しかしこの帯のような更紗や唐草のような曲線模様は普遍的であり、意識しないようにすると、結果的に共通になってしまう確率が高いです。意識して共通にならないようにすると、わざとらしく正反対にしたようになってしまいますしね。自然体にまとめるというのは、駱駝が針の目を通るぐらい難しい気がしてしまいます。

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いちばん上の写真は野口の着尺を合わせてみました。地色は水色で青系、葡萄模様で曲線ですから、色も形も共通です。ボケ老人が同じことを繰り返し言ってるような帯合わせになってしまうでしょうか。それとも計算されたお洒落と言ってもらえるでしょうか。

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写真2番目は写真は野口の着尺を合わせてみました。全体が石畳模様で、半分が鮫小紋、もう半分が宝尽くしです。石畳という直線的なパターン、宝尽くしと鮫小紋という和風模様ということで、帯の曲線、エキゾチック風とは反対にしてみました。

石畳模様は市松模様と同じですね。市松模様というのは歌舞伎役者の佐野川市松が流行させたのでこの名があるのですが、市松は1700年代の人であり、それ以前にも遠州緞子のような市松模様の名作はあります。その場合、石畳模様と言わなければ変ですね。

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写真3番目は野口の着尺を合わせてみました。横段模様の着尺(仕立て方で市松にも)ですが、色の変わる部分がグラデーションになっているので柔らかい印象です。テーマは干菓子で花や兎や鶴が見えます。本当の植物や動物ではなく砂糖で固めてあるという設定ですが、かわいいモチーフが自由に選べるので干菓子というテーマは便利ですね。

干菓子は和風、モリスはエキゾチック風と反対ですが、モリスの鳥と干菓子の動物はかわいいどうしで共通とも思えます。横段は直線ながらグラデーションのためにくっきりしていないので、曲線の反対とも言えません。まあそこそこの自然な無関係が演出できたように思います。

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写真4番目は野口の手挿(輪郭だけが型、中塗りは手描き)の着尺を合わせてみました。これも「自然な無関係」狙いの帯合わせです。帯の曲線に対して着物は花の枝を使った横段模様ですが、不完全な直線であるため正反対とも言えません。花の種類は梅、桜、菊など和風なので反対と言えますが、色は帯の青に対してペパーミントで、ベストな都会派組み合わせですね。
[ 2014/04/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百九十二回目は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

袋帯でありながらカジュアルな雰囲気なので、紬や小紋に合わせて使えそうです。フォーマル方向については、まさか黒留袖に合わせる人はいないでしょうから、付下げぐらいでしょうか。

とりあえず今日は紬に合わせてみます。たいていの紬には合いますから、帯合わせで失敗するということはないと思います。帯の植物文様が青系なので、着物も青系でまとめれば都会的な雰囲気になると思います。青系の紬というのは藍染がある日本ではいちばん手に入れやすい色でもありますし。

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いちばん上の写真は松枝玉記の久留米絣に合わせています。松枝玉記の作品は明るい藍も黒に近い藍もありますが、この作品は濃紺と言っても良い濃い藍色ですね。意匠的にも多様でホンワカ系もあるのですが、これはガチっとした構成の意匠です。

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写真2番目は松枝哲哉の久留米絣に合わせています。松枝哲哉さんは玉記さんの後継者で、伝統工芸展で連続入選しているのですが、才能は工芸分野だけではないようで、今年の歌会始で入選していて驚きました。全国で10人ですものね。この作品は上の作品とは対照的で、藍の色は明るく模様は流れるような柔らかい意匠の絵絣です。

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写真3番目は林織物の本塩沢を合わせてみました。林織物は現在は「林宗平工房」という屋号になっています。濁りのない多色のお召(塩沢紬→真綿、本塩沢→お召系)です。組織としては緯絣で、経緯とも生成りの色で織られた生地の間に、一定間隔で鮮やかな赤・緑・青・紫の絣糸が緯糸として織り込まれているのです。人間の目で見ると生成り糸と鮮やかな色の糸の比率で淡い色に見えるのです。色が淡いということで結構着やすいです。

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写真4番目は佐藤トシの南部紬を合わせてみました。茜と玉葱で染めた糸で織ってあるということですが、私が持っている紬でいちばん美しく、いちばん着られない作品ですね。帯の青と着物のピンクで綺麗どうしの組み合わせにしてみました。年齢制限のある組み合わせですね。そうでない人が着るばあいにはファンデーションを厚めに塗ればいいと思います(ホントか?)。
[ 2014/04/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の細部

第二千六百九十一回目の作品は、紫紘の袋帯の細部です。

今日は昨日紹介した帯の細部を拡大写真で紹介します。

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いちばん上の写真は植物文の青い部分の拡大です。水色のポリエステルのフィルムを絵緯糸として使い、さらにその間に青い絹糸を束にして、これもまた絵緯糸として織り込んでいます。質感も形も違う2種類の糸ですが、両者が並置されることで、この帯の青い植物文の質感を演出しているわけです。

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写真2番目は、その植物文にも青の濃淡があることに着目し、その濃淡の境界部分を拡大で撮ってみました。画面上の方の青い絹糸がある部分が青の濃いところで、白い絹糸の部分が青が薄いところです。つまり青の濃淡は、フィルムは同じで絹糸の色だけでコントロールしているのです。

ここで4月5日(第二千六百七十九回)のネブラディスクの青銅部分の拡大と比較してみます。同じ帯屋の同じ時期の作品だけあって、フィルムと絹糸の使い方がそっくりです。違いはモリスはフィルムが単色の水色なのに対し、ネブラディスクはラメが入っているのです。

モリスの青が絹の織物としてナチュラルな質感なのに対し、ネブラディスクの青は青銅らしく金属質に妖しく光ります。質感は非常に異なるのですが、じつはわずかなラメの違いだけで演出しているのです。

この帯は先日紹介したネブラディスクの帯と一緒に仕入れ、同じ日にブログ用の写真を撮りました。この青い部分は拡大するとわずかな違いなので、私は画像を取り違えていました。

最初の予定では、ネブラディスクの後にこのモリスを紹介するつもりで書いていたのですが、たまたま小保方さんの会見の日で、見ながら書いていたら私も画像の取り違えに気付き、急きょ取り下げて途中に紗のコート地の記事を挟みました。

5日の記事を読むとフィルムのラメについて触れていないので、取り違えた画像をもとに書いていますね。すでに掲載してしまったブログの記事そのものも取り下げるべきかと思ったのですが、写真だけ修正しておきました。

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写真3番目は地の白い部分の拡大です。市松に見える仕組みは、それぞれが花織のように糸が浮く紋織で、2種類の紋織のパターンを交互に並べることで市松に見せているのです。

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写真4番目は鳥の目の拡大です。鳥や動物は羽毛や獣毛に見えるような織り方にしていますね。
[ 2014/04/17 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯

第二千六百九十回目の作品は、紫紘の袋帯を紹介します。

紫紘で現在進行中の「ウィリアムモリスシリーズ」の1本です。他にも魅力的なものも多く、紫紘のフェイスブックの写真を丹念に見ていくとそれらしきものに出会えます。https://www.facebook.com/shiko.kyoto

タイトルは「葡萄摘み」です。ウィリアムモリスが美術史に残る他の芸術家と違うのは、内装のファブリックや壁紙として普通に売られている現役の商品であることですね。回りを見ると、うちでも掛け布団カバーとバスタオルがモリスでした。

現在まで継続している理由は、モリス商会が破産した後、サンダーソンという会社がモリスの商標や壁紙の版木などを買い取ったからです。現在のものはもちろん現代の技術によるプリントですが、特注すれば版木によるブロックプリントの壁紙もできるそうです。

いちばん売られているのは鳥がいちごをくわえている「いちご泥棒」だと思いますが、この「葡萄摘み」も曲線模様の草花と一対の鳥の組み合わせのデザインです。

現在普通に販売されているウィリアムモリスのデザインを、わざわざ西陣で商品化するというのは意味があるのかとも思いますが、元がプリントであり現在販売されているものもプリントであるものを、織で表現するわけですから紫紘のシリーズには独自性があるように思います。どの程度の独自性なのか、作品を拡大してみると西陣でしかできないような仕掛けもあってなかなか面白いのです。

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いちばん上の写真はお太鼓、

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写真2番目は腹文、

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写真3番目はお太鼓の近接、

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写真4番目はもっと近接です。

意匠的に元作品と大きく異なるのは連続性ですね。元作品は壁紙ですから模様は繰り返して連続していきます。特にモリスの壁紙はとても丁寧にプリントされ型継がわからないそうです。

それに対しこの紫紘の作品は、一対の鳥を中心とする1つのユニットで終わっていて、帯のお太鼓の中にお行儀良く収まっています。意地悪く見れば、縮こまっているようにも見えますね。帯には模様がお太鼓をはみ出して一見無駄の見えるものもありますが、それにも模様を縮こまらせないという機能があることを感じます。
[ 2014/04/16 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(2)

野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定

第二千六百八十九回目は、野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定してみます。

これまでの実験で以下の2つのことがわかりました。
①コート地は濃い地色と薄い地色では、濃い地色の方が透け度が大きい。
②下に着る着物は平織のばあいが模様が透けて上からよく見え、絽、紗の順に見えなくなっていく。

実際の運用においては、柄を見せたい着物を着るばあいはコート地は黒地がよく、柄を見せたくないばあいは水色のような白っぽいコート地が良いということです。また単衣の着物を作るときは、絽や紗よりもコートの上から透けて見えるということで、模様に気を使うべきということが言えます。

今日で終わりにしますが、今回は使い残し画像ということで、表地の模様と下地の模様の意味的なつながりを考えてみました。意外な視覚効果と感じるか、紛らわしいと感じるかどちらかです。

いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の付下げ(実際の制作は市川さん)で、コート地のテーマと重なる風になびく柳です。

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写真2番目は、絽の付下げを水色の方のコート地に合わせてみたものです。


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写真3番目は、絽の付下げを黒地の方のコート地に合わせてみたものです。コート地の意匠は、人は柳のすぐ近くにいて、目の前で柳の葉が揺れている、燕は遠くに飛んでいてそれを柳の葉の間から覗いているというものです。今回は着物も柳ですから、柳も重なっていることになり、柳は並木として植えられているもので、遠近法的な表現になりますね。

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この広重の版画のイメージですね。

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写真5番目は、野口の絽縮緬の付下げで、水辺の芦を描いたものです。

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写真6番目は、水色の方のコート地を野口の絽縮緬の付下げに合わせてみたものです。

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写真7番目は、上の絽縮緬の付下げを黒地の方のコート地に合わせてみたものです。柳というのは水辺に植えられていことが多いですが、葉の間から水辺を眺めているというストーリーです。

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このモネの絵のイメージですね。

野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定

第二千六百八十八回目は、野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定してみます。

先日からの続きで、野口の紗のコート地を実際に着物の上に着てみたらどう見えるのか試してみました。今回は紬です。

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いちばん上の写真は、青戸柚美江の出雲織の着尺に合わせてみたものです。経絣の基本である矢絣かと思いきや「雪おこしピカッと落ちて霰かな」というタイトルを持った作品です。雪で雷というのはすさまじい光景と思ってしまいますが、日本海側では雪の時期の始めごろにある現象だそうです。


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写真2番目は、水色の方のコート地を上の青戸柚美江の出雲織の着尺に合わせてみたものです。地色は白で、素材は紬、技法は藍染の経緯絣です。今回は単衣に仕立てて着ているという設定ですね。

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写真3番目は、上の木綿の絵絣を黒地の方のコート地に合わせてみたものです。こうして試してみると、上の写真よりこの写真の方が模様がよく透けていますから、やはり紗の生地というのは、薄い地色よりも濃い地色の方が下の着物が透けるといえます。

稲妻を表す意匠のはずですが、紗を通して間接的に見ると太い竹のように見えます。大きさの比率で、紗で表現された葉がこの太い竹から散利つつある笹の葉に見えててしまうからですね。いっそ刺繍の燕が雀なら良かった、と思えてしまうぐらい都合よく錯覚を起こしてくれています。

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写真4番目は、秦荘花織という織物です。もともとの近江上布の産地で現在織られている織物の1つで、夏用の紗で赤と白と黒の格子で紋織も併用しています。

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写真5番目は、水色の方のコート地を上の秦荘花織に合わせてみました。

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写真6番目は、上の秦荘花織を黒地の方のコート地に合わせてみたものです。紗の模様は変わらず、ただ格子を背景にしているように見えるということですね。下地になる格子が赤と白と黒という究極の配色であったのが幸運でした。

野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定

第二千六百八十七回目は、野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定してみます。

昨日の続きで野口の紗のコート地を、実際に着物の上に着てみたらどう見えるのか試してみました。今回はフォーマルの絽または紗ということで合わせてみました。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の絽の付下げです。伝統的な文様である鏡裏文ですね。近世以前の鏡は顔を写すという機能だけでなく、裏側に美術品としての価値があり、それが着物の意匠にもなっているのです。

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写真2番目は、水色の方のコート地を千切屋治兵衛の絽の付下げに合わせてみたものです。地色はこのコート地の地色とほぼ同じ水色です。今回はコートの地色と着物の地色が同じだったらどのような視覚効果があるか試しています。無地部分については同じ色の生地が2枚重なるので、色は変わることなく透け度が低くなります。模様部分はそれなりに透けて適度に見えていると思います。

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写真3番目は、上の付下げを黒地の方のコート地に合わせてみたものです。こうして試してみると、上の写真よりこの写真の方が模様がよく透けていますから、やはり紗の生地というのは、薄い地色よりも濃い地色の方が下の着物が透ける、といえますね。

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写真4番目は野口の紗の付下げです。江戸時代の小袖の意匠にもある風景文様ですが、海中の島には塩釜があって古代の製法で塩が作られています。藤原定家の「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ」という百人一首にある和歌を連想させますが、小袖の意匠としてこのパターンが成立した時も、自然の風景からではなく和歌の教養から生まれたのだろうと思います。

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写真5番目は、水色の方のコート地を野口の紗の付下げに合わせてみたものです。残念ながら、松帆の裏の風景はほとんど見えません。これまでは、紗に重ねた生地は単衣と絽でしたが、今回は紗です。紗どうし重ねると下の模様は見えにくいようです。その理由は、下にあって模様が描いてある生地が、単衣(平織)→絽→紗となるにしたがって透け度が大きくなり、染料を含ませる能力が減って絵が淡くなってきているからです。

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写真6番目は、上の付下げを黒地の方のコート地に合わせてみたものです。地色はこのコート地の地色とほぼ同じ黒色です。いちばん上の写真と同じくコートの地色と着物の地色が同じだったらどのような視覚効果があるか試しています。

無地の黒は2枚重なることで透け度が減り、ますます黒くなっています。上の紗は黒い方が模様が透けて見えるという原則は同じですが、模様の上に一度墨を流したような色に見えますね。

野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定

第二千六百八十六回目は、野口の紗のコート地を実際に着てみたと想定してみます。

昨日と一昨日に紹介した野口の紗のコート地を、実際に着物の上に着てみたらどう見えるのか試してみました。紬の上にもフォーマルの上にも着て良いコート(あるいは長羽織)ですが、今回はフォーマルの単衣代表ということで、大羊居の単衣専用の訪問着に合わせてみました。

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まずこの大羊居の単衣専用の訪問着で試してみます。「色かさね」というタイトルで、「美しいキモノ」で紹介されたことがありますが、そのときのモデルは沢口靖子さんでした。

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この写真は、上の訪問着を水色の方のコート地に合わせてみたものです。

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この写真は、上の訪問着を黒地の方のコート地に合わせてみたものです。こうして試してみると、紗の生地というのは、薄い地色は下の着物が透けないが濃い地色は下の着物が透ける、という特性を持っていることがわかります。

そんなことは知っているという方も、ここまで極端に差が出るとは思わなかったのではないでしょうか。せっかく大羊居を着ているならば、道路ですれ違う人にも是非見てもらい、世間を美しくしてほしいですから黒地の紗が良いですね。

一方、この生地は12mあって着物にもなるわけですが、着物にする場合は黒地は長じゅばんも透けるということを計算しなければなりません。それが嫌なら薄い地色ということですね。

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次にこの大羊居の単衣専用の訪問着で試してみます。「夏日涼風」というタイトルで、麦とアザミをテーマにしています。それぞれの季節を考えると、麦は5~7月(九州~北海道)、アザミは6月~10月(種類による)なので、6月の単衣がメイン、9月も何となく着てしまえ、というところだと思います。


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この写真は、水色の方のコート地を上の訪問着に合わせてみたものです。

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この写真は、黒地の方のコート地を上の訪問着に合わせてみたものです。やはり黒地のほうがよく透けるのがわかります。あまりに透けると、コートの意匠である「柳に燕」と下地の着物に描かれたテーマの間に意味的な関連性を持たせたいという誘惑に駆られますね。そうするとまた迷宮に入ってしまい出てこられなくなります。

野口の紗のコート地

第二千六百八十五回目の作品として、野口の紗のコート地を紹介します。

昨日の作品のパターン違いです。昨日の作品は昨年バージョンで、今日の作品が今年バージョンです。色は毎年数色あって、黒と水色は定番のようです。

紋紗は織機で織るわけですから、一定のロット数が必要です。そこでまず1パターン作って、好評ならパターンを増やしていくという方式なのでしょう。そのばあい1作目のパターンは手堅く、2作目から冒険的になるものですが、昨日と今日を比較するとそれがよくわかります。

今回も柳に燕というテーマだと思いますが、人は柳のすぐそばに立っていて目の近く葉があり、その葉の間から燕を見ているということでしょう。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は刺繍がある部分の近接、

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写真3番目はもっと近接、

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写真4番目は刺繍部分の拡大です。

野口の紗のコート地

第二千六百八十四回目の作品として、野口の紗のコート地を紹介します。

コート地というタイトルにしましたが、12mの生地なので着物にもなります。紗の生地で文様を織り出しそれに刺繍を加えたものです。こういう作品はセンス次第ですが、織で柳を表現し刺繍で燕を加えており、さすが野口で着物好きが好みそうなポイントをわかっていますね。実際にこのシリーズはよく売れているそうです。

柳と燕という組み合わせは、土佐光起に有名な作品があってやまと絵の伝統的モチーフですが、琳派でも現代の着物の意匠でも採用されているので、どこかで見たことがあると感じられると思います。しかし、柳が織であるのに対し飛び回る燕だけを刺繍で表現することで躍動感や立体感が生じています。

友禅というのは、純粋な芸術である絵画の堕落バージョンあるいは通俗バージョンになりがちですが、織と刺繍を併用して重層的な表現をするというのは、絵画にはできず染織だけができることです。私はそれだけでも意義あることと思うので、こういう作品は大好きです。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は刺繍がある部分の近接、

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写真3番目はもっと近接、

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写真4番目は刺繍部分の拡大です。

この作品のように模様を織り出した紗の生地というのは紋紗と言って、夏物としては昔からあるありふれたものです。夏の長襦袢で流水や楓を織り出したものがよくありますね。こういうものは意匠やアイディア次第で高級品にもありふれたものにもなります。流水と楓の例でも、流水が紋紗で楓が刺繍で、その配色が上手ければ表地として魅力的だと思います。

この作品のばあい、柳は縞の中に納まっていますが、その縞がよろけて見えます。じつは縞は真っ直ぐなのですが柳がS状なので縞自体がよろけて見えるんですね。柳というのは風になびくもので、それが「柳に風」のたとえにも使われますし、土佐光起の元絵の柳も大いに風になびいています。

縞のコートはすっきりしていてかっこいいですが、粋すぎると感じる人もいます。S状の柳は本来は風になびく表現ですが、縞のコートが粋すぎると感じるのを緩和してもいるんですね。図案家というのはよく考えているものです。刺繍の燕のデザインは土佐光起に準じていますね。




紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百八十三回目の作品は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

もういい加減でやめないといけないとわかっているのですが、もう1回だけお付き合いください。今回は3600年を意識した帯合わせです。このネブラディスクが地中にあった3600年の間に変わらない風景をテーマにした着物を選んでパートナーにしてみました。

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いちばん上の写真は、加賀友禅の人気作家である中町博志の訪問着「大波小波」を合わせてみました。中町さん独特の創作的な表現ですが、大海原を越えていく千鳥の群れを描いたものです。ネブラディスクが地中にあった3600年の間も毎日見られた光景でしょう。

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写真2番目は、花也の色留袖「松に砂浜」を合わせてみました。これを見て「俊寛」を思い浮かべると言った人がいました。海中の島を描いた絵はいろいろありますが、家や船など人間の生活の痕跡を描く場合と描かない場合で、雰囲気が大きく違うものです。

この島には波と風以外動くものは1つもなく、鳥も通っていません。ネブラディスクが地中にあった3600年の間、波も静止画のようにいつも同じなのかもしれません。そう思い始めると雅な京友禅の模様どころではなく、絶望的な孤独を感じますね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは無線友禅が得意な西山謙一さんです。無線友禅というのは輪郭線がないので、糸目友禅よりも純粋な絵画に近いです。作品のテーマも自然と創作的なものになるようで、この作品も着物の柄というより日本画のようですね。

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写真4番目は、加賀友禅作家の毎田仁郎の色留袖「伊勢路」を合わせてみました。3600年には足りませんが、西欧代表のネブラディスクに対し日本代表に選んでみました。
[ 2014/04/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百八十二回目の作品は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

昨日この帯は万能と書きましたが、本当に万能と言うためには、もっとも帯合わせしにくい紅型と合わせて成功して見せないといけませんね。ホンモノの沖縄の紅型を買った人で、合わせる帯が無いと言う経験をした人は結構多いのではないでしょうか。

なぜ紅型は帯合わせが難しいのかと考えると、余白のない総柄であるために帯の柄とつながって境界が無くなってしまうということと、染料ではなく顔料であるために色が強く鮮やかで帯が負けてしまう、ということだと思います。

総柄の着物はいくらでもあるので、同じような問題は常に起きているはずですが、そういう時はたいてい無地や無地系の帯で対応しているのです。紅型も無地の帯を合わせればよいのですが、無地の帯というのは加工が無いのでたいてい安価なものであり、高価な紅型に対しては不釣合いではないかという心理が働いてしまうのでしょう。

ではどういう帯が合うかと言えば、無地でありながら特別な素材を使ったり、特別な織り方をして重厚な質感があるもの、あるいは帯の柄の周囲に無地の部分があって柄どうしが直接接しないもの、のいずれかだと思います。

今回のネブラディスクは、古色の付いた金属を表現するために凝った引き箔という特別な素材を使っていますし、円盤のデザインですから周りに余白があります。紅型に合う要件を備えているわけですね。

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いちばん上の写真は、玉那覇有公の紅型の着尺を合わせています。紅型というのは、意匠を考えるところから型を彫って染めるところまで、すべて1人の作家または1つの工房で行います。そのため型を彫るのと染める人が分業している江戸小紋よりも、作品の優劣というのがはっきり出るものです。

紅型の良し悪しというのはどこで見分ければいいのか、私は紅型も型染ですから型染一般の見方で良いと思います。すなわち模様にキレがあって(ビールのCMのようですが)、連続する模様であればリズミカルにつながっていくことですね。この作品はその典型であるように思います。

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写真2番目は、藤村玲子の紅型の着尺を合わせています。城間栄喜の弟子の一人ですごく人気のある方ですね。私もいちばん好きです。

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写真3番目は、藤村玲子の紅型の着尺を合わせています。上と同じグレー地ですが、こちらは細かい模様です。常識では、細かい模様は年配向きなどと思うのですが、そんな常識には収まらない力強い作品ですね。

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写真4番目は、知念貞男の紅型の着尺を合わせています。珍しい玉紬の生地を使っているのでナチュラル感があります。
[ 2014/04/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百八十一回目の作品は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

昨日の続きでネブラディスクの帯合わせです。昨日は訪問着に合わせましたが、今日は紬に合わせて万能性を証明してみます。一般的には、帯の模様のテーマがフォーマル度の高いものであれば訪問着向き、カジュアルであれば紬向きとなるわけですが、先史時代のモチーフではフォーマルなのかカジュアルなのか見当もつきません。

また、金銀糸の割合が多く光っている帯は訪問着向きで、金銀の輝きが少なければ素朴でナチュラル感がありますから紬向きという感じがします。しかしこの帯のばあい、3600年土中に在った金属の質感を表現するため、引き箔が多用されながらも光沢を消してあるので、輝いているのかいないのかわからない状態になっています。

時代を経た青銅の色の表現こそこの帯の存在意義ですから、その青緑色を生かすべく、今回は青と緑の着物を選んで合わせてみました。

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いちばん上の写真は、佐藤トシの南部紬に合わせてみました。岩手県岩泉町で少量織られた紬です。今は同じ名前で花泉町のものもありますね。

岩泉町にはもともと地元の繭と草木染料を使った紬がありましたが、昭和になって製糸工場ができ白生地を織っていたそうです(工場組織では草木染は合わないのでしょう)。佐藤トシさんもその社員だったということですが、その工場が廃業した後、その廃工場の一角を借りて佐藤トシさんたちのグループが草木染の紬を織り始めました。現物を見ると糸も染も素晴らしいのですが、当時のメンバーは全員年輩者だったので今どうなっているかわかりません。

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写真2番目は、秋山真和の「綾の手紡」ブランドの真綿の紬に合わせてみました。緑地に赤の絣というクリスマスのような配色ですが、手織り、草木染の絣なのでナチュラルな雰囲気です。

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写真3番目は、秋山真和の絵羽の作品を合わせてみました。絣や花織が自由に使われたいかにも作家モノと言った感じの創作的な織物です。

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写真4番目は、 真栄城興茂の琉球美絣に合わせてみました。大正頃に起源をもつ琉球絣です。日本の歴史では地租改正と言えば明治初めの出来事ですが、沖縄における地租改正は日露戦争直前です。それまでは江戸時代と同じ貢納布制度が続いていて、織物は年貢として現物で納めていたために織手にはマーケティング的発想はありませんでした。

地租改正により現金で税金を納めるようになり、織手は本土で売るための工夫をするようになりました。そのため大正頃に新しい技法や意匠が生まれるようになり、琉球美絣もその1つです。

琉球美絣は、「美絣」というネーミングにふさわしく絣が美しい織物です。どこが美しいかということはこの作品のように仮絵羽にしてみるとよくわかります。グラデーションが美しいんですね。このグラデーションは、通常の絣の技法だけでなく、抜染の絣の技法も使われているということです。
[ 2014/04/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の帯合わせ

第二千六百八十回目の作品は、紫紘の袋帯の帯合わせです。

昨日のネブラディスクの帯合わせです。このような帯の帯合わせは難しいのでしょうか、それとも意外に帯合わせしやすいのでしょうか。難しいと考えるなら、それは日本の花鳥風月をテーマにした着物に対し、西洋史どころか西洋の先史時代のテーマが合うのか、ということでしょう。意外に合わせやすいと考えるなら、それは季節が無いということでしょう。

私は合わせやすいと考えます。理由は下の写真です。これは野口が制作した絞りの袋帯ですが、「日月(じつげつ)」というタイトルで、太陽と月が並んで日食を思わせる雄大なテーマです。オリジナルは桃山時代の辻が花で着物や帯の意匠としては良く知られています。日本の着物好きはこういう意匠を見慣れているので、ネブラディスクも驚きが無いと思うのです。
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もっともこの辻が花(根津美術館蔵)はすでに小袖ではなく裂であるために作品の天地がわからず、三日月が下であればただの草花文にすぎないというオチがあります。現代人の感覚では草花でより天体ショーの方がウケるので、作品化されるときはたいてい三日月を上にして「日月」としてつくられます。

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写真2番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。中井淳夫の作品で、神坂雪佳の下絵からほぼ忠実につくっています。大きな株を担いで行商している女性(大原女とか白川女を連想させます)と田植えをしている女性たちを描いています。

ネブラディスクは先史時代の暦ですが、人類が暦を作ったのは、種蒔きの時期など農業の手順のタイミングを知るためです。イメージしたのは「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」で、「ベリー公」も暦とともに農作業をする女性たちが美しく描かれています。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。中井淳夫の作品で、地色がとても珍しく青銅の色に似ています。一方、意匠は鋭い斜線の取り方で丸いネブラディスクとは対照的です。色が同系ならば形は対照、という私の好きな組み合わせです。

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写真4番目は 千切屋治兵衛の訪問着を合わせてみました。倉部さんの刺繍と箔の作品で、芒をメインに秋草を描いています。イメージしたのは「武蔵野図屏風」です。武蔵野は万葉集や古今集にも詠まれたために、やまと絵系の絵師に好まれた画題です。「武蔵野は月の入るべき山もなし、草より出でて草にこそ入れ」と言うのが有名ですが、芒と月の組み合わせですね。

本当は全然勘違いなのですが、なんだか伝統のやまと絵に見えてきませんか。
[ 2014/04/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯の拡大

第二千六百七十九回目の作品は、紫紘の袋帯の拡大です。

昨日のネブラディスクですが、全体は青銅製で天体の模様は金が貼られています。3600年間土中にあったにしてはきれいな印象です。じつは最初に盗掘された時、かなり傷められてしまい、その後修復されて原状回復したということです。盗掘者はきれいにして販売しようとしますから、青銅部分の錆を取ろうとして酸に付けたりグラインダーで削ったりしたのかもしれませんね。その後、現代の考古学のルールに基づいてできる限り原状回復されたのだろうと思います。

紫紘がネブラディスクを帯の模様にするときに目標にしたことは、現物の質感を完全に織物で再現しようということだったのでしょう。3600年の間に劣化し、さらに盗掘者によってとどめを刺され、その後研究者によって慎重に修復された状態を織物で表現するという、難しいテーマにチャレンジするのはこの会社だけだと思います。

帯というのは女性のファッションですから、出土品を再現するよりお洒落にアレンジすべきですよね。たとえば私が帯合わせによく使う龍村の「陶楽騎馬文」は、出土のイスラム陶器ですから色はわずかに残っている程度のはずです。しかし原色の龍村色に変換されていましたね。

それに対し紫紘という会社は、源氏物語絵巻を再現したというプライドがあるためか、ユーザーの機嫌を取ることよりも、西陣織の技術で図鑑のようにリアルな再現をするとか、そんな独自のことをしているのかもしれません。

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いちばん上の写真は青銅部分です。青銅という金属、しかも3600年地下にあって劣化し修復された感じを織物で表現するというのは難しいテーマだと思います。ここでは緯糸に水色のポリエステルフィルムを織り込み、さらにその上に青い絹糸を撚らない束にして緯糸にして織り込んでいます。

このような重層的な組織を作ることで、古くなった金属を表現しているようです。青銅は一部錆びて変色していますが、それはポリエステルフィルムの色を調整することで演出しているようです。

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写真2番目は金の部分ですが、金が部分的に剥離した部分も再現しています。織物を成り立たせている地の経緯の糸にプラスして経糸に白い糸、緯糸に撚金糸を織り込んでいます。それが金が剥がれた部分ですね。

金がきれいに光っている部分は、緯糸にさらに撚金糸をプラスしています。その撚金糸は、全体の撚金糸よりもさらに太く色も黄色く、輝度も高いものを用い、最大限輝かせています。

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写真3番目は背景の黒い部分です。黒の絹糸をベースにしながら緯糸には少し赤みがある色の平金糸(ポリエステルフィルム)が織り込まれて漆のような雰囲気をつくっています。この緯糸のポリエステルフィルムの色を調整することで、漆が剥がれた感じも演出しています。

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4番目は腹文で、お太鼓では円盤の背景である黒い部分は、腹文では漆黒の夜空に見立てられ、星の中心部は平銀糸、星の輝きは撚銀糸で表現されています。
[ 2014/04/05 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

紫紘の袋帯

第二千六百七十八回目の作品は、紫紘の袋帯を紹介します。

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上の写真は今日紹介する帯のお太鼓の写真ですが、これを見てピンときた方いらっしゃるでしょうか、10年ほど前に話題になって愛知万博でも展示されたネブラディスクです。お暇な方は「ネブラ天文盤」などで検索してみてください。遊戯王カードやパズドラでも登場するので、「ネブラディスク」で検索するとゲームの解説が多いです。

ネブラディスクは1999年ドイツで盗掘により発見されたものですが、2002年に幸いにも奪還され陽の目を見ることになりました。紀元前1600年頃に制作された円盤型の金属製の暦で、青銅器時代のウーニェチツェ文化に属するものです。歴史学の領域ではなく考古学の領域であり、ヨーロッパの先史時代には巨石文化もあり謎が多いです。

銅は東アルプスの鉱山から、金はコーンウォールから採掘されたものということなので、メソポタミアから輸入されたものではなく、彼ら自身が作って運用していたということになります。ウーニェチツェ文化は高度なレベルにありストーンヘンジ時代のイギリスとも交易があったというのを裏付けますね。

ディスクに表現されているのは、太陽(満月?)と月、7個まとまった星はプレアデス星団、太陽の船、左右の縁の金は夏至と冬至の日の出と日の入の角度と言われます。用途は、これを実際の天体の位置に合わせることで閏月をいつにするか計算ができるというものですので、32cmという大きさから携帯用のストーンヘンジとも言えます。

これで実際に計算したのか、族長が儀式に使ったのか、400年間使われたともいうので、最初は計算に使っていたのが、次第に分からなくなって最後は儀式用だったのかもしれません。日本で天皇の即位によって年号リセットされるように、暦を管理することが族長の証だったというのはありそうですし。

メソポタミアで出土したなら驚きませんが、なぜドイツなんでしょうね。歴史に現れる古代のドイツと言えば、カエサルのガリア戦記やタキトウスのゲルマーニアですが、ケルト人やゲルマニア人は裸で石を投げてくるような蛮族です。それより1000年以上前にこんな天文の知識があり、しかもそれを土に埋めて消えてしまった人って誰なのでしょうか。

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写真2番目は腹文、

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写真3番目と4番目はお太鼓の近接です。
[ 2014/04/04 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

井尻茂子の帯留の使い残し画像

二千六百七十七回目は、井尻茂子の帯留の使い残し画像です。

このテーマももうそろそろ飽きてくるころと思いますが、捨てるに忍びない使い残し画像がありますので、もう1回だけおつきあいください。

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いちばん上の写真は花也の友禅の名古屋帯に合わせてみました。湊取り(三角定規のような取り方)のなかに琳派様式の松です。今回の帯留は有職の人形ということで、王朝文化の香りのする有職文様などを意識して合わせてみましたが、琳派もあってしまいますね。

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写真2番目は首里花織の帯に合わせてみました。作者は上間ゆかりさんという沖縄の方ですが、技法は純粋に沖縄モノながら意匠や色は青山っぽい感じなのが特徴ですね。この作品も色はグレー、ベージュ、紺のみ、意匠は幾何学的であり、沖縄の海より都会のビル街に合いそうです。有職の京ほり人形が青山風にも合うか試してみました。

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写真3番目はルバース吟子の首里織の帯に合わせてみました。沖縄の糸の浮いている織物には、生地の糸が変化しただけの花織と生地とは別の糸を差し入れる浮織があります。見分け方は、裏を見て渡り糸があるのが浮織ですが、表から見るだけでも生地の緯糸と同じ色の糸が浮いているのが花織(生地の経糸と同じ色の糸が浮いているのがロートン)、生地と関係のない色の糸が浮いているのが浮織とわかります。この帯は生地と浮糸の色が違うので浮織ですね。

平面的な織物や染物に立体的な帯留を合わせるばあいは、平面に帯留の立体がぴょこんと乗る感じになりますが、浮織は糸が浮いて立体的ですから、帯留の立体と相まって立体の階層を成すことになります。その面白さを狙ってみました。

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写真4番目は細見華岳の綴の名古屋帯に合わせてみました。人間国宝であった細見華岳のいかにも伝統工芸展出品作のような作風の帯です。伝統工芸展に入選してきた作家には。伝統工芸展様式ともいうべきものがありますが、京ほり人形は対応していますね。
[ 2014/04/03 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

今年も桜が咲きました

近所の梅岩寺の垂れ桜が咲きました。

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境内に2本の巨大な垂れ桜があります。昼と夜に行って撮ってみました。

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[ 2014/04/03 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

井尻茂子の帯留を帯に合わせてみる

二千六百七十六回目は、井尻茂子の帯留を帯に合わせてみます。

今回の帯留はとてもかわいいのですが、実物を手に取ってみると、かわいいだけでなく気品もあって精緻な工芸品と言った印象です。川端康成と入江相政の序文がついているという先入観があるからそう思うのかもしれませんね。

今回は、有職という言葉に惑わされず、かわいい帯留としてカジュアルな帯に合わせてみます。

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いちばん上の写真は栗山工房の染め帯を合わせてみました。犬張子や玩具をテーマにしたもので、ここへこの帯留を混ぜると、有職も目利きのノーベル賞も冷泉家出身の侍従長も関係なく、ただのかわいいお人形になるはずです。

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写真2番目は丹波布の名古屋帯を合わせてみました。丹波布は木綿で一部に絹が織り込まれています。この写真では白い格子が絹糸です。手織り草木染の織物ですが、ここでは黄色と青のモダンな配色の作品を選んでみました。色の組み合わせのせいか格子というよりチェックという感じですね。帯留もアクセサリーとして見える?

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写真3番目は川平織の名古屋帯を合わせてみました。石垣島に工房がある深石美穂さんの作品です。絣による丸文と格子と花織を組み合わせた、いかにも現代作家らしい作品です。丸文部分に帯留を合わせ後光のように見せてみました。一瞬お地蔵様のように見えますか。

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写真4番目は千葉あやのの名古屋帯を合わせてみました。紬地を無地に染めた八寸の帯です。千葉さんの藍は文化財としての価値があるだけでなく、実際に色もきれいなのです。紺ではなく青で透明感があり、観光用のポスターの海のような色ですね。ここでは人形が海中にいるように見えます。
[ 2014/04/02 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)