大羊居の訪問着の帯合わせ

第二千六百四十二回目は、昨日の続きで大羊居の訪問着の帯合わせです。

昨日、龍村以外の袋帯を合わせてみて4例だけ紹介しましたが、紹介しきれなかったものの中にも魅力的なものがありましたので、もう1日だけ使って残りを紹介します。

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いちばん上の写真は、坂下織物の「御門綴」のシリーズの1本を合わせてみました。坂下織物はもう10年以上前に廃業しているので、すでに名前も忘れられていると思います。この帯は「御門綴」のシリーズの中でも上のランクで、テーマは「蜀江錦」すなわち、皇帝が支配していた時代の中国のもっとも中国らしい堅固な構成を持った織物です。わかりやすく言えば、日本の花鳥風月の反対ですね。

ここで選んでみた理由は、堅固な構成から生じる格の高さ、フォーマル感です。この大羊居の訪問着はすっきりしたお洒落な着物だと思いますが、パーティー会場で主役になれる豪華で格の高い着物でもあり、ここではフォーマルとしての機能に着目して帯合わせをしてみました。

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写真2番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴのある標準品ではなく手織りとされる高級バージョンです。

ここで選んでみた理由は、帯の意匠が「立沸に草花文」という近世初期の唐織の小袖を元にしているからです。江戸時代の小袖は着るものとしてだけでなく衣桁や干物掛けて室内や花見の宴の装飾としても用いられ、その状態を模様にしたのが誰ヶ袖です。つまり、着物の意匠のテーマとして描かれた複数の誰ヶ袖の中身の1つを帯の模様としているということになります。

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写真3番目は、織悦の袋帯を合わせてみました。私は「洗練」という視点でみると、織悦の帯がいちばんではないかと思っています。しかし洗練されすぎる作品というのは、さらっとしてしまって押し出しが弱いということがあります。

というわけで、織悦の袋帯はこのような堂々たる訪問着には合いにくい時もあるのですが、今回は押し出しで負けないように派手で大きな柄の織悦を選んで合わせてみました。

「桃山大花文」というタイトルですから、やはり近世初期の小袖の意匠です。上のパターンと同じで、着物のテーマの誰ヶ袖との関連性を求めてみました。

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写真4番目は、大西勇の袋帯を合わせてみました。名物裂として有名な有栖川錦のうちの龍文をテーマにしたものです。有栖川錦というのは前田育徳会所蔵ですから、大名家に伝来したもの(なぜ有栖川というのかはよくわからない)で、しかもテーマが中国の皇帝との関連を思わせる龍ですから格が高いものです。

しかし実際の作品は大西勇らしく洒落っぽい雰囲気が有って都会的です。格が高い作品というのは権威的になりがちで、都会的とかお洒落というのとは両立しないことが多いですが、この帯は両立しています。

大羊居の訪問着は格が高いと同時にお洒落ですから、この帯のようにお洒落な龍というのも合いそうな気がします。
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[ 2014/02/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の訪問着の帯合わせです

第二千六百四十一回目は、昨日の続きで大羊居の訪問着の帯合わせです。

昨日は龍村で合わせてみましたので、今日は龍村以外の袋帯を使って合わせてみます。私が呉服屋ではなくそこそこお金持ちであったなら、フォーマルの着物を買うときは高島屋に行って大羊居と龍村をセットで買うでしょう。しかしそれしか正解がない、ということでは寂しい結論になってしまうので、それ以外の帯合わせを試してみます。

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いちばん上の写真は、紫紘の袋帯を合わせてみました。松だけをストレートに表現したもので、上下の幅の大きい(上は1千万円ぐらいまであります。)紫紘の帯の中のかなり高級バージョンです。

着物はすっきりしているとはいえ多色で華やかなので、反対に紫地に金だけというという帯を合わせてみました。意匠が単純なだけに質感で勝負する帯で、絶対に安物では作れないですね。地色は紫で模様の色と関連があるわけではないですが、そんなことはどうでも良い感じです。

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写真2番目は、加納幸の「天と地」というタイトルの袋帯を合わせてみました。雲が突風で吹き飛ばされるというテーマです。スピード感のある意匠で、誰ヶ袖という雅な意匠とは全く関連性を感じませんが、今日は単一のテーマの袋帯を合わせてみるという意図があるので試してみました。

雰囲気も違いますしモチーフの意味の関連性もありませんが、お互いに相手に拮抗する程度の存在感があり、その緊張感が帯合わせとしては心地良いものになっていないでしょうか。

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写真3番目は河村織物の「栄昌綴」というシリーズの袋帯を合わせてみました。全体は段文で、段文内部の模様はすべて七宝繋ぎです。抑えめの色彩ですが存在感があって、着物に負けていないですね。

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写真4番目は、洛風林(制作は捨松)の袋帯を合わせてみました。意匠的には亀甲文様が並んでいるだけという単純なものですが、巧みな配色により洛風林らしいユニークな雰囲気があります。不思議と着物と帯の色目が一致しているように見えます。
[ 2014/02/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の訪問着の帯合わせ

第二千六百四十回目は、昨日の大羊居の訪問着の帯合わせです。

大羊居に合わせる帯といえば、とりあえず龍村ですね。大彦・大羊居と龍村は、昔からともに高島屋の最高級品として合同で展示会をしてきた歴史がありますし、今でも「大羊居・龍村展」などしているのですから、この結びつきに逆らうわけにはいきません。とりあえず今日は龍村で合わせてみました。

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いちばん上の写真は、龍村の「騎馬陶楽文」というタイトルの袋帯を合わせてみました。着物が桐に誰ヶ袖という純和風なモチーフであるのに対し、イスラム陶器をモチーフにしたエキゾチック系の帯を合わせています。

このようなモチーフの意味が全く合わない帯合わせを間違いだと感じる人もいますが、反対に意味が合いすぎてモチーフが重複するような帯合わせを野暮と感じる人もいます。理想的なのは、その中間の適度な距離感のある帯合わせなのは言うまでもありません。

全く意味の合わないモチーフを合わせる時のコツは、色目や模様のタッチを合わせることです。意味が合わない分、色やタッチなど別の要素で埋め合わせるのです。この例では、地色はどちらも同じ黒、模様の色目はどちらも極彩色としています。

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写真2番目は龍村の「錦秀遺芳文」というタイトルの袋帯を合わせてみました。鹿がそっくり返っているのが印象的ですが、これは平家納経のうち俵屋宗達が修復した表紙として有名な鹿です。他の織屋であれば、素直に「平家納経」と名付けるのでしょうが、龍村らしく「関心のある人が微妙に感じる程度」のタイトルを付けているんですね。今、ワードで「キンシュウ」と打つと「錦秋」と変換しました。なんとなく安藝の宮島が思い浮かびますよね。

実際に帯合わせをしてみると、写真で見る通り色目がピッタリ合います。普通の意味ではこれがいちばんで今日のベストではないでしょうか。

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写真3番目は「鏡花春秋錦」というタイトルの袋帯を合わせてみました。日本の伝統的な文様である鏡裏文ですね。博物館で見る昔の鏡は、本来の機能よりも装飾工芸としての意味があったのだろうと思わせるぐらい、裏に芸術性の高い加工がしてあります。

それを着物の意匠として取り入れたのが鏡裏文です。金工という分野の工芸として完成したものを、染織という別の工芸が取り入れたわけで、妙な感じがしますが伝統的な意匠ですね。

実際に合わせてみると色目も質感も良く合って、やはり大羊居と龍村はコンビなんだなあと思いますね。

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写真4番目は、「有朋文」というタイトルの袋帯を合わせてみました。鳥獣戯画をテーマにしたものですが、おそらく兎と蛙が友達だ、というような意味のタイトルの付け方で、やはり「関心のある人が微妙に感じる程度」ですね。

洒落感のある袋帯で、このような大作の訪問着にはふさわしくないように思いますが、それでも選んでみたのは黄色の地色です。この大羊居の訪問着には、前姿にも後姿にも黄色い誰ヶ袖が描かれていて、着物の柄の色挿しとして黄色は目立って大胆なのですが、とてもきれいでアイキャッチ効果のあるいわゆる効き色になっています。その黄色効果を拡張してみたのです。




[ 2014/02/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

大羊居の訪問着の細部

第二千六百三十九回目の作品は大羊居の訪問着の細部です。

この訪問着は、誰ヶ袖と桐の花の2つのモチーフしかありません。そのために色数も多く模様面積も広いにもかかわらず、東京友禅らしいすっきり感があるのですが、おそらくそれだけでは、「すっきりしてかっこいいけどつまらない」着物になったのではないかと思います。

現実には決してつまらない着物ではないのですが、それは誰ヶ袖模様の中に多様な友禅モチーフが詰まっていて、目を楽しませているからです。さらにその多色で多様な模様は、画面に散らばることなく、誰ヶ袖を容器にしてその中に閉じ込めてあるので、整理されてすっきりしているのです。

このようにして「多様多色」と「すっきり」という相反する要素が両立しているわけですね。しかし誰ヶ袖は小袖(着物)ですから、多様多色な模様があるのは当然で、作者による巧みな意匠ではなく普通の写生とも言えますね。凝った意匠を凝った意匠と見せず自然に見せているわけです。

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いちばん上の写真から写真3番目までは誰ヶ袖を中心とした近接、

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写真4番目は桐の花の近接です。

注目してほしいのは写真4番目。桐の花の茎が細くなって途切れそうになりながらつながっています。糊糸目で地色が黒や濃い色のばあい染料が浸食してくるのです。染料の色、生地、糊の調合によって浸食の度合が違うわけですが、それを勘案しつつ糊糸目を置いていくわけですね。
[ 2014/02/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

大羊居の訪問着

第二千六百三十八回目の作品として、大羊居の訪問着を紹介します。

「桐に誰ヶ袖」というタイトルの大羊居の訪問着です。美しいキモノ2013年秋号の256ページに着姿、284ページに絵羽を広げた写真が載っています。当時、創刊60周年記念ということで目黒雅叙園で展示されたとのことなので、実物をご覧になった方もいらっしゃると思います。

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いちばん上の写真は全体、

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写真2番目は前姿(マエミ+オクミ)、

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写真3番目は後姿、

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写真4番目は袖です。

通常であればこのような大作の訪問着は多数のモチーフが展開し、付下げのばあい1つか2つのモチーフが展開するものです。しかしこの作品のモチーフは桐と誰ヶ袖の2つしかありません。大作の訪問着でありながら軽い付下げなみのモチーフの数なのです。

その少ないモチーフを、誰ヶ袖の模様の中身などの色や形など小さいところで変奏させながら、訪問着全体に展開しています。東京友禅というのは京友禅や加賀友禅とくらべてすっきりしているといわれますが、この大羊居のばあいは、色も多色で模様面積も多いながら、モチーフの数を限定することですっきりさせているんですね。「すっきり」と「華やか」という両立しにくそうな2つの美の要素をみごとに両立させていて、それは大羊居の意匠の特長の1つではないかと思います。

明日は細部。
[ 2014/02/24 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百三十七回目の作品も、野口の紗の名古屋帯の帯合わせです。

今日は先日の野口の紗の名古屋帯を絽や紗の着尺(小紋)に合わせてみました。昨日との違いは、織物はたいてい縞か格子か幾何学的な絣模様なので、帯の更紗と重なることはありませんが、型友禅の模様のばあい、具象柄はたいてい草花なので更紗と重なってしまうということです。エキゾチックな更紗に対し、楓や萩や撫子のような日本の夏秋の情緒たっぷりな草花を並べたらちぐはぐになるでしょうね。今回はそういう問題を意識して帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。制作したのは大和さんです。更紗も植物ですから、植物模様どうしが重なることを恐れて、とりあえず縞にしてみました。

型染ですが、手描きに見える演出をした揺らぎのある太い縞です。更紗も曲線ですから、曲線どうし相性が良いかも、ということで合わせてみました。

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写真2番目は千切屋治兵衛の絽の着尺を合わせてみました。制作したのは大和さんです。上の例は着物の色をきれいな水色にして、透明感のある青の濃淡の更紗模様と同系色にしてみましたが、今回は着物を焦げ茶色にして、ベージュの帯の色と同系色にしてみました。

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写真3番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。洒脱なタッチで描かれた金魚と波紋というテーマのカジュアル感の強い着尺です。更紗と干渉しないということを意識して草花文を避けてみました。

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写真4番目は野口の紗の着尺を合わせてみました。白茶地に薔薇の模様です。水玉模様が特徴的なので草間彌生を意識した作品かと思い、薔薇と分りませんでした。以前このブログで紹介した時に読者の方から薔薇だと指摘を受けて初めて気づいたのです。

そのぐらい意匠化の度合いが大きいので、なんの草花ともわからず更紗と干渉し合うこともないのではないかと思います。
[ 2014/02/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百三十六回目の作品は、野口の紗の名古屋帯の帯合わせです。

今日は先日の野口の紗の名古屋帯を紬に合わせてみました。泥大島に更紗の帯という帯合わせは、昔からお金持ちの奥さまの基本でもありますから、更紗の帯と紬の相性は良いはずです。

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いちばん上の写真は夏結城を合わせてみました。「夏結城」と呼ばれる着物は、本場の結城紬には紗の織物が無かったためにニセモノとも言われず、越後の織物として認知されています。(最近は本場の結城紬でも夏ものが織られているようです。)

この織物は全体が本場の結城紬のような亀甲絣になっており、無地の部分が水玉のような飛び柄になっています。地色は黒に近い紺です。

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写真2番目は小千谷縮を合わせてみました。夏のカジュアルとして浴衣よりも高級感がありますし、価格の設定も合理的でとても良い織物だと思います。無地・縞・格子幾何絣・絵絣と意匠的にも揃っていてお洒落の幅があります。

この小千谷縮は、濃い緑とグレーの縞です。色分けのように見えますが、じつは太さが徐々に変わる縞なのです。帯の更紗の柔らかい曲線模様と着物の寒色の直線模様という正反対の組み合わせです。

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写真3番目は、夏琉球を合わせています。琉球絣(沖縄県内で制作される平織の絣はすべて琉球絣と定義されるが、実際には南風原産が9割ということである。)の夏バージョンです。強い撚りのかかった絹糸で織られた隙間の大きい織物(紗)です。

帯の更紗の青の濃淡と同系色の淡い紺の夏琉球を選んでみました。模様は沖縄独特の模様単位を並べた幾何絣ですが、わりと大きめのものです。

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写真4番目は夏琉球の拡大写真です。
[ 2014/02/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

襦袢と着物の関係というテーマ

第二千六百三十五回目の作品は、長襦袢と着物の関係というテーマです。

昨日は野口の紗の名古屋帯を紹介しましたが、今日は再び長襦袢と着物の関係というテーマに戻ります。縮緬の着尺に合わせてみるというのをまだ試していなかったからです。柄どうしをぶつけるというのは面白くて難しい課題ですし。

素材としては大正風の意匠の長襦袢を使ってみました。今回紹介した3点の長襦袢をすべて試したのですが、この大正風がいちばん試しがいがあったのです。

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いちばん上の写真は、野口の市松模様の着尺に合わせてみました。全身の大きな市松の意匠は江戸時代にも明治時代にもありますから、大正時代の意匠というわけではありません。しかしかつて大正浪漫着物というのが流行ったときは市松模様の地がけっこうありましたので、そんなイメージがあるのでしょう。

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写真2番目は、野口も市松模様の着尺の色違いを合わせてみました。上の写真では黒白の市松でコントラストをくっきりさせてみましたが、ここでは山吹色と白の市松ということで、長襦袢に対しては同系色とも見える組み合わせにしてみました。

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写真3番目は、野口の薬玉の着尺に合わせてみました。薬玉は歴史的には端午の節句に関わるものでもあったので、七五三の着物(女の子でも)の意匠に使われることも多いです。しかし、この着尺は絶対に子供向きとは思えない地味な地色でつくられています。

それはアンバランスとも言えますが、年齢幅を広くしているとも言えますね。私はアンバランスそのものに魅力を感じます。バランスの取れた人生を送っている人にだけ着物を売っているわけではないですしね。今回の長襦袢合わせは、そのアンバランスに大正風を見い出してみました。

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写真4番目は野口の水色地の。唐草模様の着尺を合わせてみました。あまり余計なことを考えずきれいな色、華やかな着物という基準で合わせています。それでも良いんですよね。
[ 2014/02/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯

第二千六百三十四回目の作品は、野口の紗の名古屋帯を紹介します。

ベージュ地に青(群青というべきか)の濃淡で更紗を描いた名古屋帯です。茶系に青というのは配色として美しいですが、さらに模様の輪郭線を細い金彩にしていて、茶・青・金というおしゃれで華やかさもある配色になっています。

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いちばん上の写真はお太鼓、

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写真2番目は腹文、

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写真3番目と4番目はお太鼓の近接です。

更紗というエキゾチックなテーマでありながら、桜・菊・撫子など和様の花のモチーフも含んでいて不思議な雰囲気になっています。本歌が別にあるのかオリジナルの図案なのかわかりません。

紗の生地というのは夏に着るための透ける生地として作られたわけですが、この作品を見ると、生地が透けることの良さはただ着心地の涼しさだけではないとわかります。空気が透ける生地は光も透けるわけで、それによる透明感が美しいのです。

この作品は、その透明感が最大限発揮されるような色に彩色されていて、その色が茶と金と群青の濃淡なんですね。紗を着るというのは自分が涼しいだけでなく、透明感の美しさを他人に見せることです。着物を作る側に立てば、透明感を引き出すような色と柄に染めなければならないということだと思います。
[ 2014/02/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

長襦袢と着物の関係というテーマ

第二千六百三十三回目の作品は、長襦袢と着物の関係というテーマです。

今日は3番目に紹介した辛子色とグレーの市松に海の生き物の長襦袢を使ってみました。
今回はとりあえず紬の下に着るという設定ですが、

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いちばん上の写真は、シルクアタカスの糸で織った紬を合わせてみました。シルクアタカスとはインドネシアにいる蛾の一種で、日本でいう野蚕ですね。日本では家蚕でないというだけで高価なイメージがありますがインドネシアではそれを産業として育てているので、服地の素材などで耳にした方もあると思います。これは日本の着物への応用例です。

こういうものを買うときに大事なことは、素材が云々ということよりデザインあるいはファッション性ですね。この紬のばあい糸だけを輸入し小千谷で織られているのですが、配色がとても上手だと思います。格子の配色の中にグレーも辛子色もあるように見えるので、同系濃淡を狙うつもりで合わせてみました。

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写真2番目は青戸柚美江の出雲織「とうふつなぎ」を合わせてみました。上とは反対にくっきり感のある補色的な関係の合わせ方を狙ってみました。

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写真3番目は石下紬を合わせてみました。石下紬の名前の元である結城郡石下町は今は合併により無くなり常総市(じょうそうし)になっています。元々は結城郡の中に結城町や石下町があったのですが、結城町が結城市となって結城郡から抜けたために結城市と結城郡が併存するという他県の人からは紛らわしい地理でした。紬の産地で言えば結城市の結城紬と結城郡石下町の石下紬があります。

この石下紬はグレーの縞ですが、長襦袢の辛子色とグレーの市松のうち一方の色だけに合わせるという合わせ方をしてみました。一方の色だけに合わせれば、もう一方の色に対しては補色関係になるわけですから、同系と補色の両方の合わせ方を体現できるわけです。

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写真4番目は菱一のオリジナルの紬を合わせてみました。黄色の紬なので、長襦袢の辛子色とグレーの市松のうち上とは反対に辛子色にだけ合わせるという合わせ方をしてみました。やはり同系と補色の両方の合わせ方を体現できていますが、ただ問題が1つ。着物も長襦袢も市松模様で重なってしまっています。袖の振りしか出なければ見えないでしょうけどね。

長襦袢と着物の関係というテーマ

第二千六百三十二回目の作品は、長襦袢と着物の関係というテーマです。

今日は2番目に紹介した大正風の意匠の長襦袢を使ってみました。とても個性のある意匠なのですが、地色がクリームと薄いグレーということで、上に着る着物が染物でも織物でも合わせられる使いやすい長襦袢になっています。

今回はとりあえず紬の下に着るという設定ですが、どんな色の紬でも、絣でも格子でも紋織でも問題なく合ってしまいますね。

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いちばん上の写真は、林織物の「越後繭布」とネーミングされた紬を合わせてみました。越後繭布とは玉糸と手紡ぎ真綿糸を混ぜて織られたもので草木染しています。玉糸の比率が高いので「紬」という語を使わないネーミングなのでしょう、本来の紬よりさらっとした手触りです。

きれいな青の紬です。お客さまの動向を見ていると最近は藍染でも何回も染めた紺よりも淡い青が人気があるように思います。

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写真2番目は塩沢紬を合わせてみました。良いか悪いかわかりませんが珍しい緑系です。絣は経緯の絣です。

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写真3番目は秋山真和が、19世紀に沖縄で織られた紬として現存するものを再現した作品です。けっこう鮮やかな焦げ茶色ですが、博物館で現存するオリジナルを制作当初の色に再現するとこんな鮮やかな色なんでしょう。紅型の色が織物に移ったみたいで、本土の人間から見ると沖縄らしいと感じますね。

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写真4番目は読谷花織を合わせてみました。紫色の地色で、浮織部分の糸の配色は、露出部分は少ないものの虹が出たような鮮やかさです。

長襦袢と着物の関係というテーマ

第二千六百三十一回目の作品は、長襦袢と着物の関係というテーマです。

3日間にわたって野口の長襦袢を紹介してきましたが、今日はその長襦袢を着物に合わせてみます。着物の着姿に対して長襦袢が与える影響は、袖の振りの部分でチラッと見える程度ですからどうでも良いとも言えます。

実際に私がお客さまからアドバイスを求められたときは、どうでも良いです、と言っています。着物を一式そろえる時は着物や帯や長襦袢に予算を配分しなければならないわけですが、私は合理主義者ですから見えるところに予算を重点配分します。だから長襦袢については白の長襦袢で喪服と兼用でも良いですよ、とかその程度のアドバイスしかしないのです。

しかしながら今回はせっかくの長襦袢テーマですから、その振りのちょっと見える部分にこだわってみます。今日テーマにする長襦袢はカジュアルな雰囲気な上に地色が臙脂なので、生地の厚い紬でないと長襦袢の色や模様が表地に透けてしまうかもしれません。というわけで今回はすべて紬です。

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いちばん上の写真は、菱一のオリジナル紬を合わせてみました。小千谷あるいは十日町製の緯糸に真綿、経糸に玉糸を使った紬です。結城紬のように産地のラベルが自慢できるものではないですが、良質の紬ですよね。意匠は黄色の市松で、色の変わる部分は絣らしいグラデーションになっています。

長襦袢は袖からチラリと見える程度ですが、ここでは見やすく一定の面積の比率で並べてみました。黄色と赤の組み合わせで遊びがあって華やかです。年齢さえ気を付ければカジュアルはかくあるべき、という気がします。

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写真2番目は青戸柚美江さんの出雲織を合わせてみました。「とうふつなぎ」という深遠なタイトルの作品です。藍染の木綿の絣に赤い色を合わせると、どうしても「おてもやん」のイメージですね。基本の配色ではありますが、おてもやんといわれてうれしい人は少数だと思うのでお勧めできません。

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写真3番目は大島織物工場がかつて制作したスペシャルバージョン「三代継承紬」を合わせてみました。「三代」とは大城カメ、清栄、哲の三代を指します。タイトルの意義というのを詮索しても仕方がないですが、経糸・緯糸とも手紡ぎ真綿を使ったホンモノのスペシャルで、値段は通常の大城織物工場の作品の3倍ぐらいです。

泥染の焦げ茶色に対し赤の振りという組見合わせです。高い着物に対し、ことさらにカジュアル感を強調した着方をするというにはかっこいいですよね。

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写真4番目は秋山真和の「綾の手紬」の細い縞を合わせてみました。手紡ぎ真綿の良い手触りの紬です。ただ縞が赤いので離れて見ると白と赤でピンクに見えるのが商品としてちょっとつらいところです。今回はそれを逆手にとって、ピンクと赤の同系色グラデーションとしてみました。着るべき人が着ればすごくかわいい組み合わせです。

野口の長襦袢

第二千六百三十回目の作品は、野口の長襦袢を紹介します。

辛子色とグレーの市松の地に、海の生物をテーマにした模様を配したものです。模様は白抜きのため色数は増えていませんから、この作品の主役はあくまで辛子色とグレーの黄金配色ですね。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は近接です。

模様は抽象的な表現にも見えてわかりにくいのですが、魚のような形も珊瑚のような形もあります。リーフィーシードラゴンみたいなのもありますので、やはり海の生物がテーマなのだと思います。このばあい魚や海藻を写生的に描いたらおしゃれじゃないですよね。

野口の長襦袢

第二千六百二十九回目の作品は、野口の長襦袢を紹介します。

具体的な本歌はわからないのですが、大正ごろにあったのではないかと思わせる意匠の長襦袢です。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は近接です。

長襦袢としてだけでなく羽裏として販売されたこともある意匠です。おそらく同じ型で染められているのでしょう。しかし生地は違って、羽裏のための生地は長襦袢より薄いです。長襦袢として染められたものを羽裏に流用すると重くなり、普通の人は何でもないですが肩こりしやすい人からは苦情が来ますね。

野口の長襦袢

第二千六百二十八回目の作品は、野口の長襦袢を紹介します。

臙脂色に家紋を飛び柄にした模様の長襦袢です。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目以後は近接です。

ちょっと見るとかわいらしい玩具模様のように見えますが、よく見るといずれも家紋です。丸もついていますから創作に見えてじつは家紋そのものを散らした意匠なんですね。

恥ずかしいことに私も仕入れる時に玩具模様と思っていて、家に帰ってよく見てから家紋だったと気が付いたのです。なぜ見る人が玩具模様と勘違いしてしまうのか、それは絵のタッチですね。写真2番目以降の近接で見ると、本来の家紋の意匠はそのままにタッチだけが丸みのあるやさしいイラスト風に変換してあるのです。

家紋を並べた図案の長襦袢なんて着たくないですよね。玩具に見えることで楽しみながら紬の下に着られる長襦袢になっています。その着物がどんな場に着て行くのがふさわしいかという用途や性質を決めるのは、テーマだけでなくタッチもありますね。本来は格の高い正倉院模様や名物裂模様でも、イラストタッチにしてカジュアルにしてしまうこともできますから。

長襦袢の色ですが、濃い色のばあい上に着る着物の色が淡いと透けてしまうことがありますので注意が必要です。紬なら生地が厚いので大丈夫ですね。

野口の絽の着尺の帯合わせ

第二千六百二十七回目の作品は、昨日の続きで野口の絽の着尺の帯合わせです。

昨日は友禅の名古屋帯を使って帯合わせをしたので、今日は織物の帯で試してみます。

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いちばん上の写真は龍村の絽の名古屋帯「颯音」を合わせてみました。織物は美術に属し目で見て楽しむものであるのに、「颯音」という視覚よりも聴覚を刺激するタイトルが付けられています。

タイトルが示すものは楓の葉が散る微かな音というテーマでしょう。なぜ葉が散るのかと考えれば、そこを風が吹き抜けるからで、それが涼しさにつながり夏の衣装にふさわしいタイトルということになるのです。

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写真2番目は龍村の絽の名古屋帯「硝波文」を合わせてみました。またまた意味ありげなタイトルですが「硝」の一字でガラスに陽光が当たってキラキラしている様子を表しているのでしょう。

さて帯合わせですが、上の例が黒地の帯のメリハリの効いた帯合わせだったのに対し、今回は白地すなわち同系色の帯合わせです。しかしながら模様の面積が大きく地色の露出は少ないので、同系色の帯合わせの目的である「帯が着物に溶け込む」という状態にはなりませんね。模様が大胆で動的なので静的な雪輪模様の着物に対して対照的な組み合わせとなり、色でなく形によってメリハリのある帯合わせになっていると思います。

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写真3番目は龍村の絽綴の名古屋帯「花流水」を合わせてみました。絽綴はかつては高額な趣味品の代表のようなものでしたが、中国製が大量に出回って安物代表になり、最後は値段がつかず絽の小紋のおまけに付けられるという市場の都合に翻弄された織物です。ここで紹介するのはそのような紆余曲折を経て現れた本来の高級な日本製の絽綴です。

龍村といえば敷居の高いブランドイメージですが、本作は意外にかわいらしい模様とモダンな色彩の作品です。今回の雪輪の絽の小紋は、人間に例えるとすまし顔の美人といったところですが、それに愛嬌が加わってバランスが取れたように思います。

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写真4番目は河村織物の絽綴の名古屋帯を合わせてみました。タイトルはないですが「燕」としか言いようがありませんね。燕のみで色も単彩で地味な感じもしますが、飛んでいる姿態を良く写して動きのある図案でカバーしています。

雪輪のみに絽の小紋に燕のみの絽綴の帯を合わせると「すまし顔の美人」を貫いたような着姿になりますね。それもまた良いと思います。
[ 2014/02/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絽の着尺の帯合わせ

第二千六百二十六回目の作品は、昨日の野口の絽の着尺の帯合わせです。

昨日の野口の絽の着尺は色はほとんど単彩で、模様は縞と雪輪のみのすっきりしたものです。今日は友禅の染め帯を使って絵画性をプラスするような帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は花也の紗の生地に友禅をした名古屋帯を合わせています。生地は単純な紗ではなく、普通の平織と紗が交互に縞状になっている生地です。夏物である紗の部分と冬物である平織の部分が同面積あるのですから平均して単衣用といえるかもしれません。

この生地は花也がオリジナルとして織らせている生地です。ですからこれが単衣用なのか盛夏用なのかは、いかなる着物評論家も論じたことはなく、決める権利があるのはただ花也の社長のみということになります。本人は何とも言っていないので、単衣用としても盛夏用としても着る人が自由に判断すればいいと思います。

さて帯合わせですが、黒の帯によるメリハリの効いた帯合わせです。こうして見ると黒の帯は万能ですね。あえてケチをつけるなら、丸い雪輪の模様に対し千鳥も丸紋ですから、丸どうしが重なりすぎるというところでしょうか。

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写真2番目は花也の上と同じ生地に友禅をした名古屋帯を合わせています。オリジナルで生地を織らせるということは、かなりのロットが必要です。そのため花也の夏物ではこの生地を使ったものが結構あります。

今回は帯で絵画性をプラスすることは考えず、すっきりどうしで合わせてみました。帯は水色地なのでメリハリ狙いではなく同系色の帯合わせです。テーマは稲妻みたいに見えますが、じつは霞を意匠化したものです。着物の雪輪の丸い形に対して丸い模様が重ならないように意識して選んでいます。

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写真3番目は花也の上と同じ生地に友禅をした名古屋帯を合わせています。一見斬新な柄の取り方のようにも見えますが、古典模様の短冊で、それを取り方として中に取りオモダカ、撫子、萩という初夏から初秋までの草花を描いています。

帯の地色は水色で着物と同系色の帯合わせ、模様のパターンは、着物の丸型に対して帯は直線型です。いちばん上の帯合わせは色が反対で形が同形、2番目と3番目は色が同系で形が反対という組み合わせになっています。人間同士の交渉と同じで、何かで対立したら別の何かで妥協すると上手くいくわけですね。

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写真4番目は千切屋治兵衛(藤岡さん)の染め帯を合わせています。燕子花(菖蒲?)をテーマにしていますので単衣の時期に合いそうですが、生地もまた単衣に相応しい玉紬です。湿度の高い時期を考慮して、涼しげとか爽やかでまとめてみました。
[ 2014/02/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の絽の着尺

第二千六百二十五回目の作品は、野口の絽の着尺を紹介します。

細い縞に飛び柄の雪輪という誰からも愛される着尺です。「愛される」というよりも「嫌われない」という方が正確かもしれませんね。飛び柄の雪輪というのは「よくある柄」にすぎませんから。しかし自分で絽の着尺を1反買うならこういうのが良いのではないでしょうか。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、

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写真2番目は近接、

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写真3番目はもっと近接、

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写真4番目は拡大です。

今回はまず4番目の写真で生地を見ます。3本絽ですね。絽の生地とは、緯糸に二本の経糸を交差させて織っていくものです。写真で見る通り、経糸を隣の糸と捩ることで緯糸の間に隙間をつくっていくんですね。その隙間は緯糸3本に1回、5本に1回、7本に1回とあり、それぞれ3本絽、5本絽、7本絽と言います。

当然3本に1回隙間がある生地がもっとも隙間率が高くなり、生地としては薄く軽く涼しげになります。夏物ですから涼しげなのは良いことですが、隙間が多いのですから生地の強度は下がりますし、下着が透ける程度が大きくなりますから長襦袢もちゃんとしないといけませんね。長所も短所もあるわけです。

もう1つ重要な短所があって、それは友禅の特長である色の深さや美しさが十分に表現できないということです。友禅というのは生地に染料が染み込んで発色するわけですが、3本絽は3回に1回は刷毛が空振りして染まっていないのです。完全に染めたつもりでも3/4しか染めていないんですね。そのため色の深さや美しさも3/4なのです。

ここまで読んで改めて写真を見ると、色に深みが無く物足りない気がしてきませんか。絽とはそのようなもので、それを防ぐためには隙間で減殺されることを計算して、あらかじめ鮮やかすぎる色で彩色しておくという場合もあります。

しかしながら、じつは絽には1つ重要な長所があるのです。それは裏からも光が透けるということです。科学的に言えば色は光から生まれ両者は切り離すことができないものです。絽は色の深みという美を失っていますが、代わりに光の効果という美を得ています。そう考えると光の効果を上手く生かせるような色に染めておくことが大事ですね。

ここで再び写真を見て欲しいのです。野口は、光を計算に入れた上で涼しげに見える色に染めているんですよね。

野口の紗の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百二十四回目の作品は、昨日に続いて野口の紗の名古屋帯の帯合わせです。

昨日まで染の小紋を合わせてきましたが、今日は織物を合わせてみます。織物の意匠は縞か格子か絣で、絵絣であったとしても友禅のように絵画性が高いわけではないので、模様どうしの意味や形が矛盾したり重なったりすることはないでしょう。帯合わせとしては楽だと思います。

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いちばん上の写真は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。茶色の地色というのは夏物としては涼しげではありませんが、その一方で大人っぽい感じがします。夏にあえて茶色を着こなしてしまうというところに大人っぽさがあるのかもしれませんね。

着物と帯の関係は補色の関係です。模様についても思い切り絵画的な帯と格子だけで全く絵画性のない着物の組み合わせですから、だれも異論のない教科書的な帯合わせだと思います。

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写真2番目も東郷織物の夏大島を合わせてみました。黒と白の格子で粋な感じもありますね。粋な着物と華やかな帯の組み合わせですね。

東郷織物は大島紬の織元として有名ですが、薩摩絣も織っています。江戸時代の薩摩絣というのはじつは沖縄の織物であった言われています。薩摩藩が産地を隠すため琉球絣と呼ぶべきものを経由地に過ぎない薩摩絣と呼ばせていたんですね。一方現代の薩摩絣は大島紬の織元によって織られる木綿の大島紬ということになります。

この東郷織物の夏大島は縞や格子だけなので価格もリーズナブルでセンスも良い、商品として優れたものだと思います。

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写真3番目は夏琉球を合わせてみました。夏物として紗に織られた琉球絣です。琉球絣という言葉は歴史的にあるものではなく、戦後沖縄県内で産する平織の絣を琉球絣と定義したものです。

値段は比較的リーズナブルでありながら、手織りと絣の手括りはホンモノですからとても良い商品だと思います。

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写真4番目は夏結城を合わせています。夏結城は新潟の織物で、そのように書くとニセモノみたいですが、はじめて「夏結城」というネーミングがされたのはかなり昔で、いまは新潟産の織物として定着しているので世間ではニセモノという認識はありません。

「夏結城」というネーミングがされたとき、なぜ結城紬の産地から苦情がこなかったのかわかりませんが、当時結城紬には夏物の紗の織物はなかったのでホンモノとニセモノが競合することはなかったからかもしれません。
[ 2014/02/10 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百二十三回目の作品は、昨日に続いて野口の紗の名古屋帯の帯合わせです。

昨日は縞や格子を合わせてみましたが、今日は具象柄の小紋を合わせてみました。帯も着物も模様が具象であれば、模様どうしの意味が矛盾したり重なりすぎたりすることがあります。具象+抽象の組み合わせよりも気を遣うことが多いですね。

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いちばん上の写真は、千切屋治兵衛の絽の付下げ小紋(制作は大和さん)を合わせています。付下げ小紋というのは小紋でありながら裁ち位置の指示があって、仕立て屋さんが指示通り裁つと柄がすべて上を向くという着物です。人物模様のばあいに効果的です、さかさまになると頭に血が上って苦しそうですものね。

この小紋のテーマは楓ですから上を向いても下を向いても良さそうですが、制作者の意図によりすべて上を向くように作られています。楓と言えば秋っぽいですが、季節は先取りという意図か絽の着物にも付けられていることが多いですね。

帯と着物のそれぞれのテーマである朝顔と楓の相性ですが、この2つの植物が1つの絵に描かれていることもあるので良いのでしょう。朝顔が多色で絵画的であるのに対し、楓は無彩色で意匠的ですしね。

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写真2番目は野口の紗の着尺を合わせています。草間彌生の水玉のように意匠化された薔薇です。薔薇と朝顔の相性はどうかといわれれば悩むところですね。そもそも夏の着物の模様として薔薇はふさわしくないからです。

なぜ薔薇?というところですが、意匠化してあるのでたいていの人には薔薇と分らないと思います。私もかつてこのブログに掲載した時m読者の方に指摘されるまでわからず、草間彌生もどきのデザインに過ぎないと思っていました。薔薇と分らなければ、朝顔と無意味な柄の組み合わせということで、まあそれなりの帯合わせではないでしょうか。

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写真3番目は野口の絽の着尺を合わせています。小袖に登場するモチーフをそのまま使って飛び柄の小紋にしています。江戸時代の上流階級の正装の模様を写しているわけですから、小紋としてはフォーマル感が強いですね。

野口の得意分野はお洒落なパーティ着ですから、この小紋もそのような用途でつくられているのだと思います。完全なカジュアルではなく、夏のパーティーで訪問着を着るほどでもないとき、観劇やコンサートでも格の高い場ですね。そう考えると、絽や紗の付下げに合わせる紗の袋帯のほうがよいかもしれません。

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写真4番目は野口の紗の着尺を合わせています。洒脱なタッチで描かれた金魚と波紋です。帯の朝顔は花だけが洒脱なタッチで葉は写生的に描かれています。同じ洒脱タッチ同士とはいえ、着物の金魚と波紋の方が洒脱度が大きいですね。帯合わせとしては、まあ許容範囲かなあという程度。
[ 2014/02/09 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百二十二回目の作品は、昨日の野口の紗の名古屋帯の帯合わせです。

今回は型染の着尺のうち縞や格子を合わせてみました。帯が絵画的な意匠なので、着物は絵画的でない方が安心して合わせることができるからです。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の縞の着尺(制作は大和さん)を合わせています。単純な縞ではなく疋田の粒を繋いで縞にしたような意匠です。

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写真2番目は上の着尺と全く同じ型を使った色違いです。上の例では着物は帯と同系色の水色で、今回は補色である茶色です。帯合わせをする時は、着物と帯の関係について同系色でまとめるか補色にしてメリハリをつけるか、ということをまずに考えますよね。

昔は同系色の帯合わせというのは一般的ではありませんでした。それどころか非常識と言い切る呉服屋さえあったのではないでしょうか。

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写真3番目は千切屋治兵衛の縞の着尺(制作は大和さん)を合わせています。型染ですが手描きをイメージさせるよろけ縞です。縞としてはとても太く、このような太い縞は一般人では着るのが困難なほど個性的になるものですが、この作品では淡い同系色でまとめることで個性を緩和しています。形に個性がある場合は色で緩和する、あるいはその逆というように、色と形は一体のものですね。

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写真4番目は野口の着尺を合わせています。平織と紗の組織の違いを利用して市松を表現した生地です。その市松を生かすように、飛び柄として四角い模様を入れています。赤、黄色、緑の斜線でポップなデザインですね。まあこれも縞や格子の一部ということで。

[ 2014/02/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の紗の名古屋帯

第二千六百二十一回目の作品は、野口の紗の名古屋帯を紹介します。

水色地の紗の名古屋帯です。紗で水色というのは透明感があって涼しげです。模様がとても大きいです。これまで30年間小付けの柄が流行った時代だったので、そろそろ反動が来るのではないかと思い、当社では保険を掛けるつもりで大きい柄の比率を増やしています。

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いちばん上の写真はお太鼓、

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写真2番目は腹文、

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写真3番目と4番目はお太鼓の近接です。

朝顔を洒脱なタッチで描いた名古屋帯です。ただし、3番目と4番目の近接写真を見てわかるとおり、元の琳派の絵は洒脱に描かれていても友禅の工程が洒脱であるわけではありません。洒脱に見える線もじつはその線の輪郭を厳密に取るように糸目を置いています。

模様がお太鼓の長さよりかなり大きく上下にはみ出しています。はみ出した部分は着装してしまえば見えないのですから不合理ですが、最初からお太鼓の上下を限定しその範囲だけに絵を描こうとすると絵が縮こまってしまうから、はみ出した部分を無駄とは考えず自由に描いた方が良いという考えもあります。

この作品はおそらくそのような発想で描かれたものでしょうが、たしかにお太鼓の長さの中に絵がちゃんと収まり上下に無地部分があるよりも、絵が上下につながると思わせる状態で終わった方が絵全体がのびのび見えますね。ドガの競馬場の絵は馬や人物がキャンバスに中にちゃんと収まらず途中で切れていますが、それと同じ効果なんでしょうね。
[ 2014/02/07 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

龍村の草履

第二千六百二十回目の作品は、龍村の草履を紹介します。

龍村が草履の台まで作れるわけではないので、正確に言えば龍村裂の鼻緒を使った草履ではないか、と思われるかもしれませんが、龍村の鼻緒を使った草履には、龍村から裂だけを買って別の業者が草履としたものと、龍村自身が草履として販売したものがあります。

当社はじつは両方あるのですが、どちらも原価はほぼ同じ、売値も同じです。龍村が龍村ブランドだからと言って高く売っているわけではありませんし、私が草履屋さんに頼んで台を作ってもらっても、それなりの原価はかかるからです。

今日紹介するものは、3足目までは龍村製として龍村で販売していたものです。だから良いというわけではないのですが、同じ原価なら自分で考えるよりもできたのを買ってくる方が楽ですから。4足目は龍村裂を使って作ってみました。

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いちばん上の写真は「早雲寺文台裂」を鼻緒に使っています。北条早雲の菩提寺である箱根の早雲寺が所蔵する文台の内側に貼られている裂を再現したものということです。正確にいつの時代かわかりませんが輸入された名物裂ですね。

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写真2番目は「春正芒文錦」を鼻緒に使っています。龍村裂としては有名ですが、意外にも名物裂の再現ではなく、江戸初期の京都の歌人であり蒔絵師であった山本春正の作品(芒をテーマにした蒔絵)を織物の意匠とした創作ものです。白地に金糸を織り込んだ意匠なので、金色の台と合わせフォーマルとしてつくっています。

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写真3番目は喪服用の草履です。そんなものも作っているんですね。

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写真4番目は、パナマの台に「天平相華文錦」という龍村裂の鼻緒を合わせたものです。「天平相華文錦」というのは龍村の商品名で、正倉院裂としての一般名は「花文錦」です。正倉院のオリジナルも龍村裂も経錦です。

唐花文の多くはこのように2つの文様からできていますが、それぞれの文様の大きさに差があり主文と副文の関係になっています。しかしこの裂は2つの文様がほぼ同じ大きさなので、古いタイプと言われています。

生物にライフサイクルがあるように文様にもライフサイクルがあるのです。この花文錦は時間が経つと文様の一方だけが肥大し、もう一方は圧迫され縮小されます。この状態が「狩猟文錦」のような普通の唐花文ですね。さらに主文が成長すると自らの重さに耐えきれず中身が飛び出してしまいます。その瞬間をとらえたのが「花卉山羊文錦」です。中身が出きってしまうと、均等な散し文様になり、主副の差のない花文錦からまた始まるのです。理科で習う星の一生みたいでしょう。

さてパナマの台ですが、現在非常に高価なものになっています。草履に使うパナマ草は台湾で栽培されていたそうですが、今はほとんどないとか。私はよく似た偽パナマでも良いと思いますけどね。

パナマについては一般にはパナマ帽の方が知られています。夏目漱石が愛用していて「吾輩は猫」にも登場するため、文豪とかインテリのイメージですよね。パナマ草の原産地はエクアドルだそうですが、昔のアメリカの大統領がパナマ運河を視察した時に、この帽子を被っていたのでパナマ帽というようになったそうです。


[ 2014/02/06 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせ続き

第二千六百十九回目の作品は、昨日の野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせ続きです。

倉部さんの帯合わせは昨日で終わりにしようと思いましたが、もう1つだけ試してみたいパターンがありました。それは本来であれば袋帯を合わせるべき付下げです。

付下げには訪問着と区別がつかないような模様面積の大きな作品もありますが、飛び柄の小紋と区別がつかない程度の作品もあります。実際の着物の使用頻度を考えると、誰もが毎週パーティ-をしているわけではないので、小紋のような付下げの方が出番が多いです。

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いちばん上の写真は花也の飛び柄の付下げを合わせてみました。一見、飛び柄の小紋のようですが、よく見るとマエミやオクミなど付下げとして模様を付ける位置にある柄に金彩が多くなっているようです。たいていの人は最後まで小紋だと思い続けるかもしれませんね。着る人は、着る時によって都合の良いように解釈すればいいと思います。

今回この付下げだか小紋だかわからない着物を選んだ理由は配色です。水色とクリーム色がとてもきれいです。、

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写真2番目は花也の飛び柄の付下げを合わせてみました。この着物も一見飛び柄の小紋のようですが、一応生地に裁ち位置の指示があるので、作者の意図としては付下げなのだとわかります。

テーマは笛のように見えるのですが、よく見ると穴が無くただの横棒の模様なのです。着る人にはいろいろな考え方がありますし、着て行く場もいろいろです。意味があるように見せてない方が商品としてはすぐれているかもしれませんね。

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写真3番目は花也の飛び柄の付下げを合わせてみました。この着物もまた飛び柄の小紋のようですが、生地に裁ち位置の指示がありますし、マエミやオクミ部分の模様が多めになっているので付下げですね。

若竹は本来若竹色のものですが、この作品の竹はいろいろな色で表現されています。その代わり地色が若竹色になっています。反物を羽織ってみると、模様の竹自体は別の色であるにもかかわらず、若竹が若竹色で描かれている爽やかな着物、という印象が残ります。これも意匠のテクニックですね。ピンクの桜を描いた着物と見せて、じつは桜はピンクではなく地色がピンクということもあります。

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写真4番目は、先日紹介した花也の付下げ「額縁取りと羊歯の丸」を合わせてみました。飛び柄じゃないじゃないかと言われそうですが、これは読者の方からのリクエスト。このブログは、じつは結構リクエストに応じています。
[ 2014/02/05 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせ続き

第二千六百十八回目の作品は、昨日の野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせ続きです。

今日は倉部さんの帯を紬に合わせてみます。紬は無地か縞か格子か絣ですが、もっとも絵画的な絵絣であっても技法上の制約が多く絵画性が高いとは言えません。そのために絵画性が高い友禅染の帯とは補完性があって相性が良いですね。

一方、紬の着物には金箔を使った帯を合わせてはいけない、と信じている人もいますね。金彩はフォーマルであり紬はカジュアルですから、両者を同時に使うことはTPOが矛盾するということになるのでしょう。それが本当かどうかも試してみます。

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いちばん上の写真は郡上紬を合わせてみました。郡上紬というのは、経緯とも手紡ぎ真綿糸、草木染、手織りという紬ファンが喜ぶ要素を全部そろえた紬です。しかしながら郡上紬の本当の魅力はそんなことよりもセンスの良さですね。色が綺麗で透明感があるのです。

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写真2番目は秦荘紬を合わせてみました。現在は「秦荘」という地名はありません。秦川村と八木荘村が合併して秦荘町になり、さらに愛知川町と合併して愛荘町となっています。「秦」という語は帰化人を連想させ織物の里にふさわしいですが、それが消えてしまったのは残念です。

元々は近江上布の産地ですが、現在はその技術を流用して秦荘紬、秦荘帯(麻)、近江ちぢみ(麻)などが織られています。今回は、帯のクリーム色と着物の水色の配色の美しさを狙って帯合わせをしてみました。

余談ながら、近江上布の行商であった伊藤さんがつくった会社が伊藤忠と丸紅、八木荘村の家屋敷を売って東京に出た堤さんが西武グループの始まりですから、この狭い地域からすごい人が出ていますね。

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写真3番目は南部古代型染を合わせてみました。盛岡の蛭子屋(有限会社小野染彩所)で製造小売りしている藍染です。蛭子屋は江戸の初めごろ藩の御用染をするために京都から南部藩に招へいされたのが始まりということです。そのような事例はどこでもあったのでしょうが、たいていは近代までに廃業してしまったのでしょう。しかしこの蛭子屋だけが、近代に小野三郎という人物が輩出し彼が中興の祖となったために現在まで続いているのです。

かつては藍の栽培も自前だったそうですが、現在は佐藤さんの阿波藍のすくもを買っているそうです。上手に染めた本当の藍の色は透明感があって美しいですが、結構個性があって帯合わせしづらい時もあります。この例はどうでしょうか、試してはみましたがぴったりというほどではないですよね。

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写真4番目は大城永光さんの琉球絣を合わせてみました。赤い色の紬はきれいですが、年齢制限があって売りにくいです。あまり帯合わせにも使えないのですが、倉部さんは赤も受け入れますね。

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写真5番目は久米島紬を合わせてみました。普通の久米島紬ではなく、モロと言われる経緯共に手紡ぎ真綿の糸を使ったものです。普通の久米島紬は経糸は玉糸ですが、モロは値段も高く普通の3倍ぐらいします。素材の値段の違いだけではなく、経糸が手紡ぎ真綿だと張力を掛けすぎると伸びてしまいそうで、絣を合わせるのが難しいのでしょうね。

この絣の意匠を見ると、反物の全面について斜めに絣模様がつながってくるわけですから、ずれないように織るのは難しそうですね。帯御合わせについては、泥染の焦げ茶とクリーム色でとても合っています。泥染で真綿の紬の素朴さと帯の金彩は対極ですが、高価な紬の実際のTPOは純粋なカジュアルとは思えませんから、金彩で緩和するという考えで良いと思います。
[ 2014/02/04 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせ

第二千六百十七回目の作品は、昨日の野口(倉部さん)の名古屋帯の帯合わせです。

この帯の地色は、クリーム色のように見えていると思いますが、実物はクリーム色ながら微妙なピンク、微妙なオレンジ、微妙な黄色も含まれて、少し若々しく、少し艶っぽい色ですね。複数の色を混ぜると明度が下がるものですが、この色は明るいままなのがすごいです。まだるっこしい説明ですが、言葉で説明できない色こそ中井と倉部の特長です。

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いちばん上の写真は千切屋治兵衛の飛び柄の着尺(制作は大和さん)を合わせています。源氏香に花を合わせた模様を散らした飛び柄です。地色は焦げ茶とも墨色とも言えるような色。誰でも考える帯合わせの基本ですね。

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写真2番目は野口の着尺を合わせています。テーマは吹き寄せです。本来の吹寄せは晩秋に木枯らしで松葉などの落ち葉が吹き溜まる様子ですが、この吹寄せは桜の花の比率が高くて華やかなものになっています。

着物と帯の柄合わせの関係を考えると、着物が葉だけで帯が花という関係の方がありがちですね。帯の方が体の真ん中にあり、しかも面積が小さいですから帯の方に目立つモチーフがあった方が良いと思います。その点で、この帯合わせは着物に桜があるのに、帯は枯葉2枚のみということでパターンが逆ですが、倉部さんの重厚な質感でバランスが取れているように思います。

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写真3番目は野口の着尺を合わせています。全体は黄緑色の太い縞、その中に大きな飛び柄の草花という野口らしい個性的な着尺です。しかしその個性を相手にしても、倉部さんは枯葉2枚でしっかりバランスを取っています。

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写真4番目は野口の着尺を合わせています。江戸後期の粋文化を思わせるような茶色地の格子の着物ですが、実際にこの着物のとほぼ同じ意匠の着物を着た女性が描かれた北斎の美人画にあります。安定した帯あわせですね。
[ 2014/02/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口(倉部さん)の名古屋帯

第二千六百十六回目の作品は、野口の名古屋帯を紹介します。制作したのは倉部さんです。

刺繍と箔を本業とする倉部さんの作品なので友禅染は使われていません。しかしこの作品は刺繍はないので、倉部さんらしさは箔だけですね。とはいうものの、箔は葉脈などに限定されています。

他のすべて、すなわち葉の本体は胡粉と樹脂系顔料ということでしょう。胡粉や樹脂系顔料は生地がごわっとして絹の自然な風合いがなくなってしまうのが残念です。江戸時代に友禅染が開発された理由は、このごわっとした感じが嫌だったからです。

絹の自然な風合いということにこだわらなければ、土佐派や狩野派の絵師が屏風を描くつもりで小袖にも絵を描いて、等伯や永楽の小袖の名品が現れたでしょうから友禅染の出る幕はなかったと思います。

現在、安物の訪問着や素人が趣味で模様を描いた訪問着で樹脂系顔料のものがあります。私はそういうのを見ると染織史を愚弄しているようで大嫌いですが、機能的に見れば体の動きに追随してしなやかに動かなければならない着物については問題があっても、常に同じ形である帯のお太鼓ならば樹脂系顔料でも良いことになります。

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いちばん上の写真はお太鼓、

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写真2番目は腹文、

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写真3番目はお太鼓の近接で、葉に光が当たっているところを金彩で表現しています。

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写真4番目はお太鼓の近接で、葉脈の軸の部分ですね。

いちばん上から4番目までの写真を、葉を描いた絵画として眺めてみれば、さすがは倉部さんで圧倒的に上手いですね。こういうのを見せられてしまうと、下手なホンモノの友禅よりよっぽど良いですから、やっぱり芸術に類するものは芸術的であることが大事で、素材はどうでも良いんだなあと思ってしまいます。

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5番目の写真は、すぐ上の4番目の写真の葉の軸のところを拡大してみました。この作品は縁蓋を使ったようにくっきりした葉の形が美しいので、その中でも特にくっきりした部分を拡大してみました。

塩瀬の生地の組織の上を胡粉あるいは樹脂系顔料が覆っているのが見えます。あまり美しくないですね。大変微細な世界と思えば、葉脈の軸の金彩のくっきりはすごく巧みな縁蓋の技術だと思います。
[ 2014/02/02 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げの帯合わせ

第二千六百十五回目の作品は、昨日の続きで花也の付下げの帯合わせです。この付下げの帯合わせはもう3日も続けてしまいましが、最後にやり残したテーマがありますから、それをして終わりにしようと思います。そのテーマとは絵画性です。

この付下げは色もなく形もすっきりしているだけですから、友禅染の特長である絵画性がありません。そこで、帯を西陣の織帯ではなく友禅の帯にして、着物に欠ける絵画性を補ってみたいと思います。

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いちばん上の写真は、野口の縮緬地の友禅の名古屋帯を合わせてみました。辛子色、紺、濃紫と言った野口のイメージカラーで描かれた菊模様です。着物と帯は全く異質な雰囲気のものの組み合わせですから、調和しているともいえません。しかし、もともと着物にない要素を帯で加えるという趣旨ですから、共通性がないのは当然です。

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写真2番目は大羊居の塩瀬の友禅名古屋帯「寿桃」を合わせています。友禅の中でも特に絵画性が高く、袋帯の代わりになるぐらい存在感のあるものということで大羊居を選んでいます。

この帯合わせは上の写真以上に調和も共通性も感じません。着物にない特徴を帯で補うというタイプの帯合わせは、異質なものを合わせるわけですからたいていこういう感じになりますね。反対に着物と共通性の多い帯を合わせる帯合わせは無難です。ただし同質すぎるとつまらない帯合わせになり、着ている人も料簡が狭い人のように見えてしまいます。

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写真3番目は北秀の刺繍と箔の袋帯を合わせてみました。エキゾチック模様とも幾何学模様ともみえるモダンな意匠、グレー地に金のみという無彩色、全体の模様配置は横段という、上2枚の写真とは対照的な同質的な帯合わせで、着物が持つ都会的な雰囲気を帯で増幅しています。

同質すぎてつまらないか、着ている人が狭量に見えるかというと、帯に金彩という着物にない要素を加えているので、同質すぎるということはないと思います。

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写真4番目は秀雅の刺繍と堰出の疋田の名古屋帯を合わせてみました。制作したのは千代田染繍です。上の例では、付下げのⅬ字型の意匠に合わせて帯は横段を選びましたが、今回は、着物の意匠のシダの丸を意識して帯は丸い雪輪を選んでみました。いずれも調和を求めた帯選びですね。

この帯も多色を使わない都会的スタイルですから着物と同質的ではありますが、上の例では同質的過ぎるのを避けるために、金彩の帯を選んだように、今回の例では着物にない刺繍を主役にした帯にしてみました。同質的だが同質的すぎない=調和、というような発想です。

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写真5番目は北秀の友禅と刺繍と箔の袋帯を合わせてみました。帯で粋を感じる方向に引っ張ってみました。着物が無彩色ですから粋という要素のあると考えて、その方向を目覚めさせてみました。

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写真6番目は木下冬彦さんの友禅の袋帯を合わせてみました。粋を意識した帯合わせですが、帯に東京友禅作家の江戸解の模様を合わせたら粋を感じるか、というテーマで合わせてみました。どなんでしょう、そんなに安易なものではないかな。
[ 2014/02/01 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)