龍村の干支のぬいぐるみ

第二千五百二十四回の作品として、龍村の干支のぬいぐるみを紹介します。

早くも来年の干支の飾りが発表される時期になりました。龍村では、毎年、木目込み人形とぬいぐるみの2種類が制作され、当店では私の趣味でぬいぐるみだけ販売しています。例年のぬいぐるみは、龍村裂を使った羽織を着ているデザインなので、いつも動物は座った姿勢です(肩がないはずの蛇でさえ羽織を羽織っていた)。その羽織が龍村裂であることに意義があって、それが無ければただの化繊のぬいぐるみになってしまうわけですから、不自然な座った姿であることは宿命であると思われていました。

ところがなんと、今年は動物らしく自然な四つ足になりました。四つ足もなかなかかわいいです。肝心な龍村裂は、なんと三種類も使われていて、従来より少し豪華になっています。

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いちばん上の写真は全体です。

前飾が本来の干支の経錦で、「パジリクの牛」と題された列が使われています。本歌は、ロシア連邦の南部アルタイ共和国にあるパジリク墳墓群から出土した絨毯の模様です。紀元前3世紀とも5世紀ともいわれるもので、普通ならば原形をとどめていないはずのものが、当地が永久凍土であるために残っていたのです。馬は鞍ではなく敷物を被せられており、騎士はペルシア風の装身具をつけていて、さらにその周囲の花模様はアッシリア風ということですから、かなり興味深いものですね。

胴飾は、龍村裂の定番でもある名物裂の「早雲寺文台裂」、鞍は、やはり龍村裂の定番でもある上代裂の「葡萄唐草文錦」です。

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写真2番目は横顔です。龍村の干支ぬいぐるみは、普通のぬいぐるみよりも割高ですが、馬具も凝っていて、こういう小物でも結構コストがかかっているようです。

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写真3番目は正面顔です。今回もアイドルのグラビア風に撮ってみました。
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[ 2013/10/31 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯

第二千五百二十三回の作品として、千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯を紹介します。

千切屋治兵衛の下職の一人で、温かみのあるタッチの糊糸目が美しい藤岡さんの作品です。タイトルは「丸取り鈴蘭」です。鈴蘭は、季語としては夏と決まっているので、夏物の帯のテーマでちょうどいいことになります。

実際には初夏でしょうか。本来の日本の野生の鈴蘭は、北海道の高原に咲いているイメージですよね。ということは、初夏と言っても春ぐらいの気温で咲くのでしょうか。園芸種はドイツのスズランだそうですが。じつは毒草なんですよね。

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いちばん上の写真はお太鼓です

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写真2番目は腹文です

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写真3番目はお太鼓の近接です

地色は藤色で、本来は白い花である鈴蘭はここでは辛子色になっています。葉はオリーブ色でしょうか、色と曲線のせいか、アールヌーヴォーっぽい雰囲気にも見えます。

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写真4番目は生地の拡大の鈴蘭の花の辛子色の部分です。これを見てわかるのは、絽の中でも隙間の多い生地だということです。このように生地(支持体)に隙間が多いと、染めた色が作者の意図よりも淡く見えるようになります。絹に染料が浸透して染まるわけですから、隙間が多いということはそこに浸透すべき絹がなく、染めるという行為自体が空振りしていることになるからです。作者はその分を計算して、意図するよりも鮮やかな色を染めておく必要があるようで、拡大してみるとかなり鮮やかな黄色です。(写真より実物はもっと鮮やかなイメージでした)

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写真5番目の拡大写真では、緯糸に真綿のように見える、撚りの強くない糸が混じっているのが見えます。この絽の生地は一定の割合で、このような風合いの違う糸が混ざっています。そのために普通の絽の生地より、少し野趣のある紬っぽい雰囲気の生地になっています。生地メーカーもいろいろ工夫していますね。
[ 2013/10/30 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の付下げの帯合わせ

第二千五百二十二回目は千切屋治兵衛の絽の付下げの帯合わせです。

10月20日(二千五百十八回)の作品として紹介した「線霞」というタイトルの千切屋治兵衛の絽の付下げ(制作したのは藤岡さん)を使って帯合わせをしてみます。

「線霞」という、横線だけの抽象画のような意匠なので、帯合わせにありがちな模様どうしが重なるという失敗はなさそうです。(夏の風物というのは限定されるので、夏物のコーディネートでは、着物と帯が両方とも萩になったりしがちなのです。)

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いちばん上の写真は、龍村の名古屋帯「蒐夏文」を合わせてみました。妙なタイトルですが、「朝顔と萩という夏の(秋の)花を蒐めた文様」という意味でしょう。着物の抽象柄に対して帯の具象柄、着物の横の直線に対して帯の丸紋、ということで、意味も外形も対照的な組み合わせです。帯合わせとしては基本的な発想ですね。

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写真2番目は、紫紘の袋帯「琳派秋草(菊と萩ですね)」の帯を合わせてみました。着物の抽象柄に対して帯の具象柄、着物の抑制された色彩に対し帯は鮮やかな多色ということで、上と同じく意味も色彩も対照的な組み合わせです。これもまた帯合わせとしては基本的な発想ですね。


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写真3番目は、紫紘の袋帯「撫子」の帯を合わせてみました。着物の抽象柄に対して帯が具象柄であるところは、写真2番目と同じですが、こちらは着物も帯も同系の抑制された色彩で合わせてみました。存在感に欠けるものの、都会的な感じがしないでもないですね。

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写真4番目は、龍村の袋帯「古伊万里扇」を合わせてみました。上の3つの組み合わせは、直線である抽象柄に対し、生き物で、柔らかい曲線を持つ植物文を合わせていましたが、ここでは器物文様を合わせています。

合わせてみた感想としては、普通の植物文の方が良いんじゃない、という感じですね。しかしながら、普通の絽の着物は萩や芒などの秋草文が多いですから、植物文を重複させないため、このような器物文様が役に立つことがあるのです。
[ 2013/10/29 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の名古屋帯を使った帯合わせ

第二千五百二十一回目は、昨日紹介した千切屋治兵衛の絽の名古屋帯を使った帯合わせです。

昨日の千切屋治兵衛(実際の制作は村田さん)の「七夕」をテーマにした名古屋帯を使った帯合わせをしてみました。「七夕」ということで、季節も内容もはっきりした帯ですから、それに対する着物は個性のあるものは使えないのでしょうか。

7月7日をクライマックスと考えれば、実際の着用は6月下旬と7月初めです。旧暦で「七夕まつり」をする地域であれば、8月になっても着て良いことになります。帯の模様の短冊の中味を見ると秋草が描いてあり、作者としては8月になっても着て欲しいと思っているように思えます。

それらの条件を勘案し、安全なものも冒険的なものも含めて数種類の帯合わせを試しました。

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いちばん上の写真は、東郷織物の夏大島を合わせてみました。絣ではなく格子を元にした意匠です。色は涼しげな色ではなく茶色系です。夏に茶色の着物を涼しげに着こなすのはホンモノの大人です。格子柄ということで、着物の意匠に意味がないので、帯合わせに支障はありません。茶とミントグリーンの配色はきれいです。

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写真2番目は、絽の江戸小紋を合わせてみました。色は紫色で、意匠は波に千鳥です。配色はミントグリーンと紫という補色的な配色です。

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写真3番目は、野口の紗の着尺を合わせてみました。着尺はブルーグレー地で、金魚と水流を表す渦巻を洒脱なタッチで描いたものです。着物と帯のタッチの違いでメリハリが生じています。

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写真4番目は、野口の絽の着尺を合わせてみました。笹をテーマにしたもので、元絵は小袖にもある伝統的な意匠です。写真を見ると、着物が笹、帯が短冊で、合わせて七夕飾りに見えます。

しかしながら、これは写真のトリック、いつもは着物に合わせているのはお太鼓ですが、この写真だけは腹文を合わせているのです。お太鼓を見れば、笹の着物に笹と短冊の帯で、笹が重複しています。

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いつもの撮り方をすれば、本当はこうなります。
[ 2013/10/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯

第二千五百二十回の作品として、千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯を紹介します。

千切屋治兵衛の下職の一人で、糊糸目もできる村田さんの作品です。村田さんは、千治以外では北川の仕事もしているようです。

京友禅がわかるということは、メーカーのブランドで良し悪しを言うことではなく、その下職の悉皆屋レベルで鑑定できるようになるということでしょう。京友禅のメーカーは、昔から高級品は外注でつくっており、それを支えてきたのが悉皆屋のシステムなのですから。

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いちばん上の写真はお太鼓

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写真2番目は腹文

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写真3番目はお太鼓の近接

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写真4番目は腹文の近接です。

七夕がテーマの帯です。着る時期をしっかり意識しないといけない帯ですね。ただ、地域によっては旧暦の7月7日に七夕祭りをすることがあり、そのばあいには8月まで着用できますね。ちなみに当店の近くの福生の七夕まつりは8月です。

七夕の飾りは、短冊に願い事を書くものですが、この作品には琳派風の絵が描かれています。その内容を見れば、萩、桔梗ということで、秋草ですね。やはり7月7日以降も着られるようにと作者が配慮してくれているのです。作り手の心情としては、あまり厳密に考えないでできるだけ長く着てほしいということなのでしょう。

写真3番目で、お太鼓の短冊と笹の葉を見ると、近景の短冊と笹の葉は輪郭を金彩で括っているのに対し、遠景の笹の葉は金彩なしの糸目だけの輪郭で、遠近感を演出しています。このような表現が効果的にできるのは、遠景の糸目が糊糸目だからです。ゴムのばあい、すべて金彩で括ってしまうことが多いですから。

写真2番目で、腹文を見ると笹の葉がなく短冊だけですね。このような意匠の帯では、お太鼓に笹の葉と短冊があるときは、腹文は短冊が無くて笹の葉だけというのが多いですね。これはむしろ少数派ですね。着物の前姿は植物文が多いですから、笹より短冊の方が良いかもしれませんね。
[ 2013/10/27 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣

第二千五百十九回目の作品として、三勝の浴衣を紹介します。

先日も紹介した三勝の浴衣です。今までは「浴衣なのに浴衣っぽくない」「あまり涼しげでない」という変な条件で紹介していましたので、今日は普通に私が好きな柄を紹介します。

基本の紺地で、紺白の伝統的な配色のものと、紺に多少の色彩を加えたものです。江戸の粋も感じるのがいいですね。江戸の粋って何?と、言われると正しく説明できるか自信がないですが。

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いちばん上の写真は、コウモリと井桁をテーマにしたもの。コウモリは中国では縁起が良いのでモチーフに取り入れられています。理由は、漢字で書くと「蝙蝠」ということで「蝠」は「福」と音が同じなんだそうです。

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写真2番目は、乱菊と桔梗と霞ですね。紺地に抑えた黄色の乱菊がおしゃれです。

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写真3番目は、全身をすっきり見せる縦縞と蜻蛉です。紺というには明るい色ですね。
[ 2013/10/26 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の付下げ

第二千五百十八回目の作品として、千切屋治兵衛の絽の付下げを紹介します。実際に制作したのは藤岡さんです。

今日紹介するのは「線霞」というタイトルの作品です。「霞」という自然現象を意匠化したもので、実質は抽象柄の作品ですね。このタイプの作品が魅力的な作品になるかどうかは、配色がすべてだと思います。

地色については「利休青磁」と表記されています。「利休・・」というのは「利休茶」「利休鼠」などいろいろありますが、利休本人には関係なく、江戸後期に商売目的で生まれた色名です。江戸時代も現代並みのマーケティング的発想があったのです。

「線霞」の色は、茶系、青系、グレー系など意外に多様な色が使われていますが、いずれも地色の利休青磁によく馴染んで、完全に調和しています。なぜ馴染んでいるのか、それは藤岡さんの配色の上手さですが、それとともに糊糸目の輪郭線がないからですね。

防染により染織する友禅の技法にとって、糸目の線が輪郭線として現れるのは宿命です。しかしその白い輪郭線は、模様の色と地色が自然に馴染もうとするときに、その関係を断絶してしまうわけですから、このような色の微妙な調和が命の作品にとっては邪魔者でしかありません。

一方、藤岡さんと言えば、糊糸目の乳白色で温かみのある線が魅力です。多くの京友禅がコントロールしやすいゴム糸目で済ましているのにあえて難しい糊糸目を使っています。この作品では残念ながらその糊糸目が見られません。

大事なのは完成した作品であって、自分の技を見せることではない、ということですね。難易度の高い糊糸目は、それ自体が目的ではなく、美しい作品を創るための手段に過ぎない、という正論を貫いているんだと思います。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)

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2番目の写真は後姿

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写真3番目は近接

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写真4番目も近接です。

近接で見ると、部分的に金彩を使っているのもわかります。金色の輪郭線は、完全に霞を包むのではなく、1つの線霞の中でも部分的に使っていて、中途半端な感じです。また同じ1つの線霞でも、ある部分は金でくっきりされているかと思うと、一方でグラデーションのように消えたりしています。メリハリと調和が変幻自在に現れて、だからこそ霞なのでしょう。
[ 2013/10/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣

第二千五百十七回目の作品として、三勝の浴衣を紹介します。

先日も紹介した三勝の浴衣です。今回は浴衣っぽくないもの、すなわちあまり涼しげでないものを集めてみました。呉服業界は、かつて若い人に浴衣を普及させ、それを着物市場拡大につなげようと画策しました。浴衣を着る経験をした人のうち何パーセントかの人は、着物に関心が生じ正絹の着物にステップアップしてくれると思ったのです。

浴衣の普及は想定以上の大代成功をしました。しかし、スーパーなど呉服業界以外の業者が浴衣市場に参入し、呉服屋ではかえって浴衣が売れなくなりました。なぜなら、呉服屋は浴衣も着物の一部だと思っているので、反物で売ろうとしましたが、他業種の業者はカジュアルファッションだと思っているので、既製品をぶら下げて売り、新しいユーザーにはそちらの方が支持されたからです。

呉服小売店も既製品をぶら下げて売るべきでしょうか、チェーン店はもちろん、一般の呉服店も今はそのようにしているでしょう。しかし私はそうは思いません。わざわざ相手が得意な土俵に出かけて行って勝負をするのは、利口なやり方ではないと思うからです。

今日紹介するのは、伝統的な浴衣専業メーカーがつくった浴衣のうち、あまり浴衣っぽくないものです。こういう雰囲気のものは絶対に既製品では売っていないし、「浴衣」というより「カジュアルな木綿の単衣の着物」として着るのもありだと思うからです。

反物の幅を写真の幅として、5点分の写真を載せてみました。いずれも浴衣であることの必然性を感じない意匠と色の作品です。

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[ 2013/10/24 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の着尺を使った帯合わせ

第二千五百十六回目は、10月19日(二千五百十二回)で紹介した千切屋治兵衛の絽の着尺を使った帯合わせです。

この絽の着尺は、写真に撮ると地味なグレーに見えてしまいますが、本当はティファニーのイメージカラー(ティファニーブルーと言われる色ですね)のようなミント色です。

着物の意匠は縞ですから、合わせる帯の模様については、縞でさえなければ何でも大丈夫でしょう。今回は絵画性の高いものということで、友禅の染め帯を使います。

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いちばん上の写真は、野口の夏の友禅の名古屋帯を合わせてみました。織物の組織としては経絽ですが、隙間率の高い、ちょっと野趣のある生地です。隙間の多い生地は、全部染めたつもりでも隙間部分が染められていないので、深い色が表現できない場合が多いです。この帯は、それを計算に入れて鮮やかすぎる色で染めて、結果としてちょうどよくなっています。

色については、同系濃淡のミント色です。模様の朝顔が紫色で補色的な関係になるので、それがメリハリになっています。

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写真2番目は、野口の絽ちりめん地に絞りの帯を合わせてみました。絞りを人為的にコントロールして、朝顔と雀を表現したもので、絞りで表現しきれない雀の細部は描き絵で補っています。辻が花の様式ですね。

地色が濃い紫で、着物のミント色とは補色的な雰囲気ですから、メリハリがきいています。

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写真3番目は、花也の絽ちりめんの友禅の名古屋帯を合わせてみました。友禅は花也らしくホンモノの糊糸目で、楕円取りの中に柳と笹が描いてあります。ここで合わせた理由は地色の黒で、薄い地色の着物に対し、黒地の帯でメリハリをつけることを狙ってみました。

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写真4番目は、野口の絽の名古屋帯を合わせてみました。塩釜をテーマにしたものです。塩釜とは、百人一首にある「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」にあるような、塩の製法を恋愛に例えたものです。

ここでは身も焦がれる恋愛ではなく、地色のクリーム色を着物のミント色と対比させることだけを目的として選んでみました。補色的ではありますが、明るい色どうしです。蔦の配色が緑・紫・辛子色という典型的な野口のイメージカラーで、それがメリハリになっています。

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写真5番目は、花也の変わり織の絽の名古屋帯を合わせてみました。花を糊糸目、流水をダンマル描きで描いたものです。花也らしく、メリハリよりも上品で勝負する作品です。

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写真6番目は、加賀友禅作家で加賀友禅技術保存会正会員(石川県無形文化財)である高平良隆さんの素描気の帯を合わせてみました。加賀友禅作家が友禅でない技法で描いたものです。加賀友禅作家になろうという人は、たいてい元は画家を目指していた人ですから、こういう作品もあり得ます。
[ 2013/10/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

女の子のお宮参りの着物

第二千五百十五回目の作品として、女の子のお宮参りの着物を紹介します。

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暈しだけのお宮参りの着物です。暈しで重なる雲の海を表現しています。このような意匠は他にないものではなく、振袖でも訪問着でも袋帯でも過去にありました。糸目のある友禅で表現したこともありましたし、西陣織で表現したこともありました。

常識で考えれば、繊細な糸目友禅の方がコストがかかり、暈しだけの方が安いという気がします。暈しというのは、本来、繊細な手描き友禅の背景として使われるものだからです。しかし、普通にお宮参りの着物として販売されている着物は、手描きするということが珍しく、型で染めるのが普通ですから、模様のない暈しの方が高いという逆転現象も起こります。

私であれば、金糸で1つ紋を入れます。その縫い紋は、繊細で上品なものでも良いですが、多少下品でもちょっと大きめのこれ見よがしのモノでも良いように思います。写真で見たときはその方が効果的かもしれないし、人の記憶は現実より写真をベースに残るものだから。

千切屋治兵衛の絽の着尺の帯合わせ

昨日から在庫処分会のダイレクトメールをお送りしています。網羅的な顧客名簿というものを作っていないため、受信トレイに残っているメールに対し返信として適当にお送りしていますから、届いていないという方もいらっしゃるかもしれません。まあ、気になさらないでください。

なお、当社からお送りしたメールの中に「お暇がありましたら(ないと思います)」という文面があるばあいがありますが、それは今年めでたく双子の赤ちゃんを出産された方に送ったメールが混入したものです。遠慮せず中身をご覧ください。

第二千五百十四回目は、昨日紹介した千切屋治兵衛の絽の着尺の帯合わせです。

昨日紹介した疋田繋ぎの縞の着尺に帯合わせをしてみます。帯はその前に連続して紹介した4種類の絽の塩瀬の名古屋帯を使います。繊細な糸目友禅の作品が2本、一見大味な単純な構図の作品が2本ですが、着物が縞ですっきりしていますから、どちらでも合いますね。

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いちばん上の写真は、「月に風鈴」を茶色の縞に合わせてみました。帯の地色が水色なので、茶色との配色はきれいです。縞や格子といった意匠はすっきりしていますがストーリー性に欠けますから、帯でストーリーを足してやると良いですね。

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写真2番目は、「萩と芒」を茶色の縞に合わせてみました。わずかにピンクがかった白茶なので、着物の焦げ茶色とははっきりした明暗のコントラストを持ちつつも、色自体はよく馴染んでおり、メリハリと調和を両立した理想的な配色と言えます。(残念ながら写真ではピンク気味の帯の地色が良く分からない。)

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写真3番目は、「雲」を茶色の縞に合わせてみました。単純でストーリー性に欠ける雲の帯ですが、さらにストーリー性のない縞の着物に合わせると、「雲」に十分なストーリー性を感じるようになります。やはり相対的なものなんですね。

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写真4番目は、「波」を茶色の縞に合わせてみました。帯合わせの基本は、着物が薄い地色の場合は濃い地色の帯、着物が濃い地色の場合は薄い地色の帯でメリハリを演出することだと思いますが、この写真のように地色の濃い色どうしの帯合わせは、着物の熟練者っぽい感じがします。

ではこの帯を、水色地の着尺の方に合わせたらどうなんだ、その方がメリハリがあって基本だろうというところですが、容量に余裕があるfc2だけの特典としてお見せします。

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写真5番目は、水色地の縞と「雲」の帯の組み合わせです。帯の周囲が水色(空色)なので、空に雲が浮かんでいるような演出になります。

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写真6番目は、着物が薄い地色で帯が濃い地色いう基本のメリハリ演出の帯合わせになります。濃い色どうしに比べて、一般人っぽくなりますね。
[ 2013/10/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の着尺

第二千五百十三回の作品として、千切屋治兵衛の絽の着尺を紹介します。

縞の着物の一種ですね。型疋田を線状に繋いで縞にするという意匠です。1本(2本で1セットですね)だけ色が違いますが、仕立てると、体を上下に貫くように縦線が入るとともに、袖にも線が一周します。

また仕立ての際、衿とオクミの部分については反物を縦に裁つので、この目立つ縦線は、衿に持ってくるかオクミに持ってくるか、選ぶことができます。まあ普通の人は、オクミに持ってくるでしょう。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの

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写真2番目は色違い

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写真3番目は水色バージョンの近接です。

絽にふさわしい涼しげな水色には、補色的な茶色の縦線ですが、水色と茶色の配色はモダンな雰囲気ですが、じつは小袖にも多用されています。上手な配色というのは、いつ見てもモダンと感じるものなんですね。

もう一点は茶色は、涼しげという価値には逆らいますが、真夏に茶色を着こなすというのが大人っぽいのです。

千切屋治兵衛の絽の着尺

第二千五百十二回の作品として、千切屋治兵衛の絽の着尺を紹介します。

9月14日(二千四百七十八回)で紹介した縮緬の着尺と雰囲気がよく似た作品です(比べてみると型紙はちがう)。型(シルクスクリーン)によるものですが、手描きを思わせるような揺らぎを演出しています。それがこの作品の存在意義のすべてだと思います。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの

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写真2番目は近接です。

縞というのは、一般的に、細いのは大人しくて誰にとっても着やすい、太いのは大胆でばあいによっては粋すぎて水商売風になってしまう、とされています。今日紹介している着尺は、太さだけで言えば、時代劇に出てくる気風の良い芸者(じつは隠密同心という設定)ですね。

しかしながら、そういう着物は時代劇のコスプレでしか使えません。普通に着られるようにするには、地色との色のコントラストを小さくすると良いです。この着尺は淡い色にしていますね。

もう1つは、前述のように直線ではなく揺らぎを持たせることでしょう。これでずいぶん印象がやわらかくなります。色が淡くて線が揺らいでいれば、きりっとしないわけですから、粋な芸者でも非情な隠密同心でもなくなるわけですね。

千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせ

第二千五百十一回目も千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせです。

ここ数日の帯合わせで、かなりの数の試行錯誤をしたために画像が余ったので、今日はそれを使わせてください。余った画像は、「雲」または「波」の帯に、「あまり絵画性の高くない染の着尺」を合わせた帯合わせです。

単純な意匠の帯の使い道というテーマで、絵画性の高い着尺を合わせた場合と、絵画性の低い格子の紬を合わせた場合を試したために、中途半端な存在である「絵画性の低い染めの着尺」の帯合わせの出番がなくなってしまいました。しかし、現実の帯合わせではいちばんありがちなパターンですから、今日紹介いたします。

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いちばん上の写真は、「雲」の帯を野口の紗の着尺に合わせてみました。紗で市松模様を織り出した生地で、その市松パターンを利用して模様を付けています。その模様がキャンディーの包み紙のような色なのでポップな雰囲気があって、そこが野口らしいなあと思います。

不思議なことに、古典模様である帯の雲形が、着物の雰囲気に引きずられて、イラストのように見えてきます。これもまた、帯合わせの作用ですね。帯合わせの時に考えるべき1つのファクターと言えるかも。

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写真2番目は、「雲」の帯を千切屋治兵衛の絽の着尺に合わせてみました。各種の疋田や細かい萩を四角い切りばめにした意匠です。江戸小紋の一歩手前のような絵画的な要素の低い染めの着尺ですね。絵画性が低いだけでなく、模様も細かいですが、細かい模様の着物のに大雑把な模様の帯という組み合わせとしても良いですね。また色については、失敗の少ない無彩色どうしの組み合わせになります。

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写真3番目は、「波」の帯を広瀬雄望の絽の江戸小紋に合わせてみました。江戸小紋というのは、模様が見えないほど細かいのですから、それに合わない帯というのはないでしょう。この帯合わせでは、「波に千鳥」に「波」になりますが、組み合わせとしては、帯は「雲」にして、「空・海・その間の生き物」ということで大自然全部をあらわす方が良いでしょうね。あえて「波」にしたのは、色合わせ。紫と墨色で、ちょっと冒険してみました。

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写真4番目は、「波」の帯を千切屋治兵衛の絽の着尺に合わせてみました。市松取りで、稲垣稔次郎を思わせるような型染の模様が配してあります。市松模様のために絵画的要素は半分だけですし、色も単色で無彩色ですから、抑制された絵画性といえるでしょう。
[ 2013/10/18 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせ

第二千五百十回目は千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせです。

昨日の帯合わせは、一見大味に見える千切屋治兵衛(藤岡さん)の単純な構図の作品の存在意義を証明しようという趣旨でしたが、今日は、その作風が万能であることを証明してみたいと思います。

昨日は、[着物が友禅で絵画的]×[帯は単純な構図で絵画性が低い]という帯合わせを試し、着物と帯が絵画性の高いものどうしであると、模様が連続しているように見えてしまうので、着物の意匠が絵画性が高い時は、単純な意匠の帯が有用であるという結論にしました。

今日は、昨日使った2本の帯を、縞や格子の紬の着物と合わせてみます。絵画性の低いものどうしの組み合わせとなるわけですが、絵画性の高いものどうしがダメならば、低いものどうしはどうでしょうか。

気の強い人どうしが一緒にいると喧嘩になることがありますが、気の弱い人どうしが一緒にいても事件は起きないでしょう。しかし、生み出すものもまた少ないかもしれません。絵画性の低いものどうしの帯合わせも同じで、失敗することはないでしょうが、発展性のない平凡な帯合わせに終わる危険が有ります。正確に言えば、危険ではなく、危険でないのが問題ですね。

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いちばん上の写真は、「雲」の帯を夏結城の着尺に合わせてみました。夏結城は本物の結城にありそうな意匠で、全面亀甲で輪の形の飛び柄です。絵画性が低いというテーマで取り上げている雲形の帯ですが、本当に絵画性のない紬と合わせると、けっこう絵画的に見えてきます。絵画性というのもしょせん相対的なものなんですね。

帯合わせのテーマとして、帯と着物の色の関係が、白×白、白×黒、黒×黒というのがありますが、この場合はコントラストの強い白×黒で、基本の色合わせですね。

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写真2番目は、「雲」の帯を「秦荘花織」というラベルの付いた格子と一部糸の浮いた着尺に合わせてみました。「秦荘」という地名は町村合併により現在の地名にはありませんが、伝統的に近江上布の産地です。

絵画性の全くない格子の着物と、絵画性の少ない雲形の帯との帯合わせですが、やはり上の写真と同じように、単純な雲形が、とても絵画的に見えて、良い組み合わせとしか言いようがありません。色の関係については、着物が白と黒とわずかな赤の格子ですから、白×白とも白×黒ともいえ、白黒の格子が万能だとわかります。

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写真3番目は、「波」の帯を東郷織物の夏大島と合わせてみました。東郷織物は大島紬の代表的な織元で、これも本場モノですが、格子なので価格はリーズナブルです。

帯合わせは、色については黒×黒で、とても個性的です。今日の実験の予想は、「絵画性のないものどうしは失敗しない、その代わり退屈なものになる危険がある」ということでした。しかしこの状態を見ると、その予想は間違いですね。模様が単純でも色で個性が生まれます。色だけで十分に自己表現ができるということですね。

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写真4番目は、「波」の帯を「秦荘花織」というラベルの付いた格子と一部糸の浮いた着尺に合わせてみました。ここに至るまで、写真は載せないですが、多くの帯合わせをしていて、2番目の写真で一度使った着尺をまた使う必要はなかったのですが、撮り終わった写真を眺めてみると、これがいちばんよかったので、やむなく使いました。「秦荘花織」の「白と黒とわずかな赤の格子」というパターンが万能なんですね。

写真3番目の帯合わせは個性的でかっこいいですが、「粋すぎる」「強すぎる」という気もします。しかし、この帯合わせは個性がありながら「・・・すぎる」ということはな居です。今日のいちばんですね。
[ 2013/10/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせ

第二千五百九回目は千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせです。

昨日と一昨日に紹介した2点の千切屋治兵衛(藤岡さん)の絽の名古屋帯の帯合わせです。藤岡さんには、先日の「萩と芒」のように、繊細な糊糸目で描かれ、絵画として単体で鑑賞できるものと、その後に紹介した「波」や「雲」のように、単純な構図を持ち、単体ではあまり鑑賞のし甲斐がない作品があります。

しかし、あえて鑑賞のし甲斐がない作品がつくられているのにも理由があるわけで、それはおそらく帯合わせをしてみたり、実際の着装をしてみれば明らかになることと思います。

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いちばん上の写真は、「波」の帯を野口の絽の着尺に合わせてみました。野口の着尺は、いつもの縮緬の着尺に付ける模様をそのまま絽の着尺に付けたものです。絽のような夏の着物は「涼しげ」であることが大事と思いますが、この作品はあえて「涼しげ」を求めず、いつもの野口の雅な小袖写しのイメージでつくったものです。

絵画性の高い着尺ですから、繊細な糸目の絵画的な帯を合わせると、模様どうしがごちゃごちゃして、チェッカーズがデビューした時に全身チェックに衣装を着ていたときのようになってしまうでしょう。このような状況では、絵画的な鑑賞のしにくい単純な意匠の帯が必須です。

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写真2番目は、「雲」の帯を野口の絽の着尺に合わせてみました。野口の着尺は、笹を描いたものですが、これも小袖の意匠の一部をアレンジしたものです。笹も芒も萩も、着物の意匠にすれば同じ画面に描きうるもので、帯が「萩と芒」で着物が「笹」では、やはりチェッカーズの初期の衣装になってしまうでしょう。ここでも単純な意匠の帯の出番がありますね。

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写真3番目は、「波」の帯を野口の紗の着尺に合わせてみました。野口の紗の着尺は、草間彌生を思わせるドットで表現した薔薇をモチーフにした飛び柄の着尺です。具象であっても飛び柄なので、それほど絵画性は高くなく、繊細な絵画的な友禅の帯でも合いそうですね。

しかしながら、「草間彌生を思わせるドット」というだけでかなり個性的ですから、京友禅の伝統美を感じさせる繊細な糸目友禅では、チグハグな気がしないでもありません。その点、「青海波」や「波頭」のような古典模様にもグラフィックデザインにも見える「波」は、全く問題なく合いますね。

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写真4番目は、「雲」の帯を野口の絽の着尺に合わせてみました。野口の紗の着尺は、洒脱なタッチで水をあらわす渦巻と金魚を描いたもので、写生的ではないのでそれほど絵画性が高くなく、繊細な絵画的な友禅の帯でも合いそうですね。

しかしながら、「タッチ」というのは、全く同じ物の組み合わせも変ですが、全く違っても違和感があります。洒脱なタッチに精緻な糸目の描写はどうでしょうか。その点、「雲」は、全く問題なく合いますね。
[ 2013/10/16 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯

第二千五百八回の作品として、千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯を紹介します。

昨日紹介したのと同じ系統の藤岡さんの作品です。藤岡さんには、細い糊糸目による繊細な作風と、遠目で美しく見える単純な構図を持った作風の2系統あると考えるとわかりやすいですね。

単体で絵画として鑑賞するのであれば、当然、繊細な糸目の作品の方が良いですね。この作品のばあい、昨日以上に、眺めて楽しいところは少ないです。安くて大きい海老を食べたら、水っぽくて味がなかった、という感じでしょうか。

しかしながら、それはあくまで単体で鑑賞して、しかも数日前のような繊細系の出来の良い藤岡作品と比べてしまったばあいです。

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いちばん上の写真はお太鼓です

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写真2番目は腹文です

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写真3番目はお太鼓の近接です。

3番目の近接写真を見ると、雲形部分はいつもの糊糸目友禅です。地色は生成りの白茶色で、地染めをしているわけではなので、地色と模様の雲の間の糸目の線は見えません。一方、濃淡2色の雲の間にはいつもの藤岡さんの糊糸目の線が見えますから、雲と地の間にもじつは同じ糸目の線があるということです。

一方、雲の中の模様は、友禅ではなく銀描きと胡粉描きです。模様のパターンは、友禅模様の一部に箔で装飾としてよく登場するものです。しかしそれらのものよりも、太く大味な感じですね。これが帯合わせをした時、または着装した時、どういう効果があるのか、次回以降試してみます。
[ 2013/10/15 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯

第二千五百七回の作品として、千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯を紹介します。

先日から紹介しているのと同じ藤岡さんの作品です。以前の細い糸目による繊細な作風とは反対の、遠目で美しく見える単純な構図を持った作風です。

藤岡さんにはこのような作風もあって、単体で絵画として見るだけであれば、当然、繊細な作風の方が鑑賞のし甲斐がありますが、帯として着物と合わせた場合にはどうか、また、着装した状態で、パーティー会場やホテルのロビーで、離れたところから見た場合はどうか、次回以降は帯としての機能も考慮して紹介したいと思います。

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いちばん上の写真はお太鼓です

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写真2番目は腹文です

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写真3番目はお太鼓の近接です

タイトルは「波」ですが、ほとんど抽象画のようです。グラフィックデザインと言って良いかもしれませんね。しかし、波とされる曲線のラインに、古典模様の「青海波」や「波頭」が見えるような気がします。モダンなグラフィックデザインに見えて、微妙なラインで「和様」や「伝統」を感じさせるという趣旨の作品です。

波をあらわす太い曲線は、両側に糸目があり内部がベージュで彩色されているのですが、写真で見ると、取り方の輪郭は糸目が見えるのですが、波の両側の糸目は目立ちません。波の両側に波の色とは違う白い輪郭線が見えたら、すっきりしませんね。

どうして見えないかとよく観察してみると、まず波の両側の糸目は糊糸目のため、色が乳白色でベージュの彩色に対して色差が少なく目立たないのです。その一方、取り方の輪郭は乳白色糸目の上から銀彩されており、光ってよく目立ちます。人の目は、銀彩の目立つ線に引き寄せられてしまうので、乳白色の波の両側の線がよけい目立たないというわけです。

美術史では、輪郭線の有無は、そのために論争しなくてはならないほど大きな問題ですが、手描き友禅では、糸目糊置きという技法から白い輪郭線が宿命のように付属します。凡庸な作家であれば、当たり前のようにそれを受け入れるわけですが、それ以上の作家であれば、糸目をコントロールして輪郭線の有る作品も無い作品も創ります。

呉服屋さんが顧客に商品説明をするときは、「糸目があるのが手描き友禅の証拠」などというレベルの低い内容になってしまいますが、友禅の作家は、求める作風に応じて技法も変えていきます。
[ 2013/10/14 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせ

第二千五百六回目は千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせです。

先日紹介した2点の千切屋治兵衛(藤岡さん)の絽の名古屋帯の帯合わせです。

友禅の名古屋帯は、染めの小紋にも紬にも使えます。昨日は失敗のない紬の方を試してみましたが、今日は染どうしを合わせてみます。絵画性の高い染物は模様どうしが干渉し合うことがありますから、失敗例も含めて試してみます。

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いちばん上の写真は、「萩と芒」の染め帯を野口の紗の着尺に合わせてみました。この野口の着尺は、紗で市松模様が織り出されていて、その市松パターンを利用して、四角い形の飛び柄が染められています。

キャンディーの包み紙のようなポップな雰囲気の模様で、「萩と芒」とは全く異質ですから干渉し合うこともないですね。

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写真2番目は、「萩と芒」の染め帯を野口の紗の着尺に合わせてみました。薔薇をテーマにした着尺で、草間彌生をイメージしたようなドットが個性的です。最初に紹介した時は、私は薔薇と分らないで、コメントで解明してくれたんですよね。これも絵の雰囲気が全く違うことで、干渉し合うことなく済んでいます。

着物と帯の合わせでは、雰囲気が違いすぎてダメなことも、同じすぎてダメなこともありますが、同じすぎて失敗することの方が多いように思います。

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写真3番目は、「月と風鈴」の染め帯を千切屋治兵衛の絽の着尺に合わせてみました。型疋田や細かい萩の模様を四角い裂取りにしたもので、色も無彩色ですから絵画性が低く、絵画的な帯に対しては鑑賞することなく、すんなり合います。

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写真4番目は、「月と風鈴」の染め帯を野口の絽の着尺に合わせてみました。夏の着物は、涼しげということが大事とされていますが、この着尺は、野口が得意な重厚な小袖模様を、そのまま絽の生地に染めたもので、涼しげという要素は無視されています。

たまにはこんな、世間と違う方向性を持った着物があっても良いですね。問題は着物も帯も、絵画性の高いものどうしの組み合わせになってしまったことです。

帯がすっきり柄で余白が多いのがせめてもの救いでしょうか。でもまあ、普通は西陣の夏の織帯を合わせた方が良いでしょうね。

以下はfc2だけの特典です。

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写真5番目は、「月と風鈴」の染め帯を絽の江戸小紋に合わせてみました。広瀬雄望さんのもので、波の千鳥というみんなに好かれるモチーフです。江戸小紋は帯合わせがいちばん楽な着物ですね。

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写真6番目は、「月と風鈴」の染め帯を野口の紗の着尺に合わせてみました。水をあらわす渦巻と金魚を洒脱なタッチで描いたもので、帯と同じ絵画的な着物とはいえ、まじめな帯の作風とはその雰囲気は正反対です。このような組み合わせは、雰囲気が違って良いといわれるのか、チグハグな感じでダメと言われるのか、悩むところですね。

このような着物であれば、幾何学模様か、西陣の織帯にすれば問題はないのですが。
[ 2013/10/13 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせ

第二千五百六回目は千切屋治兵衛の絽の染め帯の帯合わせです。

昨日と一昨日に紹介した千切屋治兵衛(藤岡さん)の絽の名古屋帯の帯合わせです。どちらの帯も作者が同じ、生地も同じ、技法も同じですから、いっしょに試してみます。

友禅の名古屋帯は、染めの小紋にも紬にも使えます。着物が染の場合は模様どうしが干渉し合うことがあるので、多少考慮が必要ですが、紬の場合はたいていすんなり合うので、失敗はないですね。今日は失敗のない紬の方です。

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いちばん上の写真は、「萩と芒」を「秦荘花織」というラベルの付いた織物に合わせてみました。「秦荘花織」は6月12日(二千三百八十六回)で紹介したもので、ラベルに「手織」とありますが、本当はどうだかわかりません。秦荘は、昔から近江上布の産地で、「秦」の地が付くことから古代に帰化人が織物を伝えたのではないか」などと期待させますが、昭和になって町村合併を繰り返した地域でもあり、今の正式な町名には「秦」の字がありません。

白と黒にわずかな赤を使った格子で、一部糸を浮かせた織物で、ポップな雰囲気もある、正体不明ながら魅力的な織物です。格子ですから、それとは対照的に絵画性の高い友禅の帯が合いますね。

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写真2番目は、「萩と芒」を「夏結城」に合わせてみました。「夏結城」は、結城の名を騙った織物ではなく、昔から新潟で織られる夏の織物です。最近まで結城には、紗や絽の織物はなかったので、ずっと昔にその隙をついてこのようなネーミングがされ、それが定着しているでしょう。

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写真3番目は、「月に風鈴」を東郷織物の夏大島に合わせてみました。東郷織物は本場大島紬の有名メーカーで、この夏大島は本場ものです。しかし、絣ではなく格子ですから、そんなに高いものではありません。でもしゃりっとした手触りはとても良いです。

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写真4番目も、「月に風鈴」を東郷織物の夏大島に合わせています。こちらは茶色系の格子ですね。茶色というのは、一見、涼しげとは逆の色ですが、夏に茶色を暑苦しくなく着こなすすのは大人です。
[ 2013/10/12 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯

第二千五百五回の作品として、千切屋治兵衛の絽塩瀬の名古屋帯を紹介します。

昨日と同じ藤岡さんの作品です。昨日は月から風鈴がぶら下っているというメルヘンタッチのものでしたが、今日の作品はいつも通りに萩と芒を描いたものです。

帯の模様として「いつも通り」とは何か、と言われてしまいそうですが、帯のお太鼓に収まるように植物を適度に丸めたものが多いですね。丸めなければ帯のお太鼓という画面に収まらないですが、丸めすぎると絵として縮こまってしまいます。藤岡さんは、適度に丸め、適度に崩すのが上手く、「藤岡様式」とも言うべきものを確立しています。

この作品も、まさに「藤岡様式」で、絶妙な丸め方ですね。ただの植物の写生ではなく、きちんと意匠にしています。きちんと飼いならされて上品ですが、決して縮こまってはいません。この丸め方こそ、いちばん重要なこの作品の価値だと思います。

絵の様式としては、お寺の格天井の天井画に似ていますね。天井画として花鳥画を描くときも四角い枠に収めなくてはなりませんから。実際に、藤岡さんは千治の社員であった池田源次郎さんとともに、永平寺の天井画に想を得たシリーズも制作しており、そういうところからこの様式の名人になっていったのでしょう。

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いちばん上の写真はお太鼓です

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写真2番目は腹文です

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写真3番目はお太鼓の近接です

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写真4番目は腹文の近接です

この作品でも、芒の穂は銀ですね。また萩の花は意外にも青が使われています。クリームとピンクの中間のような地色に対し、淡い色だけで描かれた萩と芒ですが、青と銀がこの作品の効き色で、そのおかげで作品が生きています。

[ 2013/10/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の塩瀬の名古屋帯

第二千五百四回目の作品として、千切屋治兵衛の絽の塩瀬の名古屋帯を紹介します。

実際に制作したのは藤岡さんです。タイトルは「月に風鈴」です。夏物ということで、涼しげに見えるということを重視したのか、すっきりした図案です。風鈴は、なんと三日月に結び付けてあり、意外にメルヘンチックな作品でもあります。

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いちばん上の写真はお太鼓です

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写真2番目は腹文です

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写真3番目はお太鼓の効き色部分を含む近接です

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写真4番目は腹文の芒の穂を含む近接です

お太鼓を見ると、芒の色が、現実の芒よりもはるかに濃い焦げ茶色であるのが目立ちます。いわゆる効き色(効果的な色彩)で、この色が無ければ、全体がぼーっとした作品になってしまいます。「すっきりした図案」=「寂しい図案」にならないで済んでいるのも、この効き色のおかげです。

しかしながら、この帯は腹文の芒の方が上手く描けている気がします。芒自体は白揚げですが、穂は銀描きされています。お太鼓の月の光が反射して穂先が輝いているのです。
[ 2013/10/10 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

三勝の浴衣

第二千五百三回目の作品として、三勝の浴衣を紹介します。

東京の浴衣のブランドは、昔はいくつもあったのですが、今は竺仙、堀井の「源氏物語」そして今日紹介する三勝ぐらいしかないのではないかと思います。また、それらのブランドの下職として実際につくっている職人や工房も少ないですから、相当重複しているのではないでしょうか。

当社はかつては「古渡」というブランドをメインに扱っていたので、それが廃業してしまった後はしばらく消極的だったのですが、今年は三勝を仕入れてみました。この20年、浴衣を着る人は増えているのに、本来の浴衣ブランドの廃業が多いのは、スーパーなどが既製品の浴衣を安く売りはじめ、そちらに客を奪われているからです。

浴衣ブランドもスーパーで売ればいいだろうと思われるかもしれませんが、スーパーの浴衣はインクジェットで染められ、海外で縫製されるので、本来の浴衣の職人さんや流通とは無関係なのです。着物のような形をしていても、着物の文化としてのつながりを持っていないんですね。

もともと近年の浴衣市場の隆盛は、呉服業界が着物ユーザーのすそ野を広げようと、一生懸命キャンペーンして、それが実現したものです。呉服業界としては、まず浴衣を着てもらい、それがきっかけで正絹の着物を着てくれると良い、という趣旨だったのですが、現実には、その美味しい果実をスーパーのような他業者に奪われてしまいました。

結局、呉服業界というのは、砂漠や極地や深海の生物のようなもので、他の業種が参入したいと思わないような、条件の悪い環境でしか生息できないのです。少し市場環境が良くなると、他の業種に参入されてその市場を奪われてしまうのですから。

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菊唐草

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紫陽花

三勝さんは、長板染、注染、インクジェット、あるいは注染とインクジェットの併用など、いろんなものがあります。今日紹介するのは、浴衣というよりも素朴な1枚型の型染を連想させる意匠です。地色も浴衣らしくない赤茶色で、涼しげとも思いませんが、これも江戸の粋や女っぽい色気を感じさせ、なんとなくかっこいいですよね。そして何より、スーパーの既製品にはないテイストということで仕入れてみました。
[ 2013/10/09 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

女の子のお宮参りの着物

第二千五百二回目の作品として、女の子のお宮参りの着物を紹介します。

モダンな訪問着のような、大胆に蘭花を描いたお宮参りの着物です。私は、いろんな着物を見ているので、多少の珍品では驚きませんが、これはさすがに驚きました。銀座でクラブが開店した時に、ご贔屓のお客様が蘭を送って、店の前に飾ってあるみたいですよね。

着物と思えば、お嬢さまと若奥様は着ない艶やかな訪問着です。世間の裏も表も知って、なおかつ女王のように振舞うことができる、そんな大人すぎる女性にふさわしい蘭が咲き誇るの訪問着だと思います。

でも赤ちゃんですよね、誰がどんなつもりでこんなの作ったのかっていうのも気になりますが、だれが着るかも気になりますね。でもキラキラネームを付ける親ならありかも。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目から4番目は、それぞれの近接です。

さて、私には3人の子供がいますが、それぞれの赤ちゃん時代には、私の生活は大きく振り回され、人生観も変わりました。3人目に男の子が生まれる時は、私は今日から3人目の主人を持つのか・・・と嘆いたものです。家の中で男の赤ちゃんが皇帝なら、女の赤ちゃんはファムファタルのような威力がありますね。と考えれば、わが家でもこの蘭の花がふさわしかったかもしれません。

たいていのお宮参りの着物というのは、型またはインクジェットで量産するものですが、これは量産しても売れないでしょう。というわけで、手描きしているかもしれませんね。

千切屋治兵衛の付下げの帯合わせ

第二千五百一回目は千切屋治兵衛の付下げの帯合わせです。

昨日、千切屋治兵衛(中井亮)の付下げの帯合わせを試してみましたが、今日はその続きで、龍村の光波帯で試してみます。

龍村の光波帯あるいは玄妙帯と呼ばれるシリーズは、仕立て上がりの名古屋帯で、龍村の帯としてはいちばん安いものです。意匠としては、上代裂(法隆寺裂と正倉院裂)と名物裂と「干支の経錦」があります。干支の経錦は、干支に合わせて制作されるオリジナルの生地で、染織にかぎらず世界各地のあらゆるモチーフに取材したものです。

組織は、多くは古代の基本的な錦である経錦(経糸が浮沈して模様を表現する)ですが、それ以外に現代の西陣の織物らしく絵緯糸で模様を表現したものもあります。絵緯糸タイプは、経錦タイプに比べて少し高い価格設定です。

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いちばん上の写真は、「遠州七宝」を合わせてみました。名物裂の「遠州緞子」に取材したもので、龍村としての商品名は「遠州七宝」です。名物裂としての一般名と商品名を分けているのは、一般名では商標登録できないからかもしれません。石畳模様の中の七宝文は絵緯糸で表現されているので、基本の経錦より若干高い価格設定になっています。

ここで選んだ理由は色で、付下げの青と茶の暈しに呼応するような配色です。

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写真2番目は、「花鳥梅花文錦」を合わせてみました。正倉院裂の1つですが、遺品が多く有名なので、正倉院裂をテーマにした本にはたいてい載っています。組織は古代の錦として基本の経錦で、日本製だろうといわれています。

ここで紹介している地味な色以外に、龍村では赤と緑がありますが、本歌は緑です。ここで選んだ理由はやはり色で、地味ながら存在感のある色で、付下げの青と茶の暈しにも調和しているように思います。

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写真3番目は、「朱子地五葉草花文様金モール(五葉華文)」を合わせてみました。本歌はおそらくインド渡来の名物裂ですが、本金糸を織り込んだ金モール地は当時は現地でも高級品として織られたもので、「モール」という言葉は「ムガール」に由来しています。

龍村裂としては、黒地にオレンジで、かなりアクの強い表現になっていて、好き嫌いのある裂だと思いますが、帯合わせに使うと結構使えてしまいますね。金糸は絵緯糸により表現されていて、基本の経錦より若干高いです。

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写真4番目は、「獅噛太子」を合わせてみました。本歌は法隆寺に由来し、太子所用と伝えられる「太子間道」です。本歌はなんと絣ですが、龍村裂としては経錦として織られています。絣に「なんと」という修飾語を付けたのは、聖徳太子所用が本当ならば、それはインドで絣が発明されたという時代より古くなってしまう、謎の裂だからです。

「獅噛太子」というネーミングは、ごちゃごちゃした絣模様を獅子の顔を思わせるようなパターンに再構成したためです。なぜ、龍村は獅子の顔にしたのかわかりませんが、法隆寺にある玉虫厨子に描いてある「捨身飼虎」(前世の釈迦が飢えた虎を救うために自分が餌になるというテーマを、漫画のコマ送りのように描いた絵)を連想しますね。

ここでは、帯がきれいな水色であることに着目して合わせてみました。水色の「獅噛太子」は、光波帯のシリーズの中でいちばん使い勝手が良いのではないかと思います。

ここからはfc2だけの特典です。

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写真5番目は、「獅噛鳥獣文錦」を合わせてみました。本歌は秀吉所用として高台寺に伝わる陣羽織で、本来はペルシアの絨毯です。龍村では黄色地と紺地があり、これは紺の方です。本歌の組織は綴の一種でしょうが、経錦として織られています。

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写真6番目は、「サンシャペルの犬」を合わせてみました。本歌はルイ9世が建立したサンシャペル教会のタイル模様ということですが、いずれかの戌年に「干支の経錦」として制作されたものが今も織られているのでしょう。
[ 2013/10/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げの帯合わせ

第二千五百回目は千切屋治兵衛の付下げの帯合わせです。

昨日紹介した千切屋治兵衛(中井亮)の付下げの帯合わせを試してみます。霞がテーマということで、遠山の帯を合わせて成仏させることもできますが、今日はまだ無理に悟りに至ろうとはせず、少し迷ってみたいです。

このような暈しだけの着物は、どんな帯でも合う万能な着物であるべきです。この中井さんの付下げは、個性があって芸術的な鑑賞の仕方もできますが、やはりいろんな帯と合わせて、いろんな場で着られる着物でもあるんですね。

なぜこの着物が、強い個性があるとともに、便利な着物でもありうるのか、それは、暈しの色が青と茶色という特殊なものだからだと思います。意匠についてはなんにでも使える暈しで、色についてはが個性がある配色という、すんなりいかない組み合わせになっているからなんですね。

そのような着物の特殊な性質を考慮して、他で使いにくい帯を集めて帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、洛風林の袋帯「昇魚」を合わせてみました。「昇魚」とは、鯉が滝を登って龍になるという意味ですが、すでに周りは霞ということで、龍になる直前みたいですね。あるいは実力不足のうちに上りすぎちゃったんでしょうか。

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写真2番目は、龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。着物の個性に負けない個性という趣旨で合わせてみました。帯の個性を着物がしっかり受け止められていると思います。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「アンデスの神」を合わせてみました。アンデス文明と言われるものは、インカ文明に限らず、それ以前にシカンだのモチェだのチャビンだの続いてきて、包括してプレインカ文明でといわれますが、そのうちのどれかに由来するものです。

この帯合わせは、上の帯合わせと同じパターンです。龍村というのは品が良いだけのものではないし、古典を再現するだけのものではない、ということがわかりますね。

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写真4番目は、捨松の袋帯を合わせてみました。桃は、中国の西王母の信仰の結び付くもので、長寿の象徴です。黒地ですが、緯糸が引き箔になっているため、真っ黒ではなく、着物が合わせやすい穏やかな色になっています。

以下は、fc2だけの特典です。

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写真5番目は、太西勇の正倉院蝋染屏風に取材した袋帯を合わせてみました。絵の具で茶と青を混ぜれば紫になりそうですが、それを意識して紫の帯を合わせてみました。色の関連の作り方で、こういう方法ももありますね。
[ 2013/10/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ

第二千四百九十九回目の作品として、千切屋治兵衛の付下げを紹介します。実際に制作したのは中井亮さんです。

中井亮さんは、中井敦夫さんの甥で、中井恭三さんの息子さんです。敦夫さんの生前から独立して千切屋治兵衛などのために作品を制作しています。千切屋治兵衛の下職グループの中でも、人気があって、よく売れているようです。

今日紹介するのは、暈しだけの付下げです。作品のタイトルの「霞尽し」で、暈しが霞のように横に長くたなびいて、写真のように縫い目を越えてつながっています。正倉院模様など格の高いモチーフを配した訪問着に比べれば、気軽に着られる付下げという位置づけですが、作品の本質は、気軽どころか雄大な自然現象のようにも見えてきます。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。

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2番目の写真は前姿~後姿です。

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写真3番目は後姿です。

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写真4番目は近接です。

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写真5番目は、もっと近接です。

暈しは、茶色と青の組み合わせで、地味とも派手ともわかりません。年齢幅も関係ない使い勝手の良い着物ともいえるでしょう。ただ、使い勝手が良い=便利な道具なんて考えたら作品に失礼と思えるほど、存在感のある着物ですね。

フォーマルの中でもカジュアルに近い着物として、茶事、コンサートあるいはパーティーで活躍し、結婚式に着て行っても重い訪問着に負けない存在感がある、そんな素晴らしいパートナーになれる着物のように思えます。
[ 2013/10/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺をコートとして使ってみる

第二千四百九十八回目は千切屋治兵衛の着尺をコートとして使ってみます。

先日、光悦垣の着尺を羽織またはコートとして使ってみましたが、今日は付下げの上に羽織るコートという想定で試してみます。現代の付下げの多くは、柄の量も多く訪問着と実質的に変わりませんから、フォーマルの上に着るコートとして使えるかということですね。

今回は「羽織またはコート」でなくコートだけなのか、と言われそうですね。訪問着の上に羽織を着てはいけないというルールはありませんが、パーティー会場の中の羽織で入ってしまうと、帯が見えないですから、フォーマルの高い袋帯を買おうという意欲がなくなってしまいます。それでは西陣の織屋が泣いちゃいますものね。

さて、付下げとコートの組み合わせですが、コート役が淡い地色に大きい飛び柄ですから、付下げについては、地色について、淡い地色と濃い地色、模様について、余白のある大きい柄と余白のない小付けの柄をそれぞれ試してみます。

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いちばん上の写真は、花也の付下げで、黒地に安田様式の模様を付けたものを合わせています。地色についてはコントラストの強い組み合わせ、模様について大きい模様と小さい模様の対照的な組み合わせですね。

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写真2番目は、大羊居の付下げを合わせています。楓の色が綺麗なので、多彩の付下げを合わせる例いうつもりでしたが、こうして見ると垣根のモチーフが重なってしまっています。失敗というべきか、気にするべきではない、というべきか。植物文には、垣根のモチーフが付属している場合が多いので、失敗としてしまうと不便ですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは倉部さんで、刺繍と箔で梅を中心に松竹梅を描いたものです。

地色はコントラストが強い組み合わせ、模様は平面的なコートに対し、刺繍の着物は立体感があり、それもまたコントラストになっています。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の付下げを合わせてみました。実際に制作したのは中井亮さんで、一種類のモチーフだけを大きく描いた作品です。地色は淡い色どうし、模様は大きいものどうしという組合わせですね。

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写真5番目は、花也の墨色地に白揚げで波を描いた付下げを合わせてみました。「墨色に白揚げ」という無彩色の付下げということで、色に個性がないわけですから、いろいろなコートに対して合わせやすいのではないでしょうか。

千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の帯合わせ

第二千四百九十七回目は、千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の帯合わせです。

昨日の妙な感じの訪問着に対する帯合わせです。帯合わせが難しそうでいて、実はそうでもないのが中井の作品です。絵として上手いだけでなく、着物のことや着物を着るということが良く分かっていたのでしょう。今回のこの妖しい着物も例外ではないでしょうね。

今回は織悦を使っています。この作品は独特の妖しい雰囲気を持っているとともに、中井らしい洗練された着物でもあるので、特に洗練された、都会的な帯という条件で、織悦を選んでみました。

そういえば、いちばん最近の「きものsalon」には織悦特集がありますね。私は、一生に1本しか帯を買ってはいけないといわれたら、龍村の間道(予算があれば高島屋の平蔵ブランドの日野か青木間道、なければたつむらブランドの「海老殻間道」」)を買いますが、一生に2本と言われた織悦を加えます。

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いちばん上の写真は、先日も使った「能衣秋草花繍唐織」というタイトルの袋帯を合わせてみました。織悦としては高い方の手ですね。織悦の組織は、模様を絵緯糸で盛り上げて表現することはないので、立体感がありません。また色どうしが完璧に調和しすぎておとなしく見えてしまいます。そのため押し出しが足りない感じもするのですが、それこそが洗練です。ほんとうは手間もコストもかかる織なんですよね。

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写真2番目は、「光琳水」というタイトルの袋帯を合わせてみました。光琳の「紅白梅図」の紅白の梅を隔てる流水のパターンという意味でしょう。織悦としては安い方の手ですね。霞と遠山に水を加えれば。空と地と水で世界の全部という意味のスケールの大きな帯合わせです。

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写真3番目は、「遠山桜楓」というタイトルの袋帯を合わせてみました。桜と気でを分ける曲線が遠山の稜線ということでしょうか。言われなければ「遠山」はわかりません。楓が黒地に対して黒く光る漆箔のようなちょっと屈折した美を感じるので、着物の妖しさに合うように思ったのです。

なお黒地に対して黒く光っている部分は、漆箔ではなく、経糸が黒の絹糸、緯糸が平銀糸という単純な関係から生まれる光の効果です。

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写真4番目は、「インド華文更紗」(桜色)というタイトルの帯を合わせています。桜色というよりサーモンピンクという感じです。色は補色、模様の意味は無関係という関係です。

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写真5番目は、「栗枝繍文」というタイトルの帯を合わせています。タイトルに「繍文」とあるのは本歌が刺繍作品である、という意味でしょう。宿命的に規則性が生まれる織物と違って、自由な表現ができる刺繍を原画につかうことで、柔らかい構図の作品になります。栗自体は権威を感じないモチーフですが、背景はくすんだ金(経糸が黄緑、緯糸が金で表現)で屏風のような雰囲気もあり、訪問着に合わせる程度の多少の権威を生んでいるかもしれません。

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写真6番目は、「楓桜大紋桃山」というタイトルの帯を合わせています。のびのびした大きな模様の帯で、もしこの帯が、この着物に合うといって売りつけたなら、その人は呉服屋としての適性がないと思いますが、地味な着物にいきなり華やかな帯という組合わせは、意外に面白いのでする価値がありますね。
[ 2013/10/03 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の続き

第二千四百九十六回目の作品は、千切屋治兵衛(中井敦夫)の訪問着の続きです。

「遠山」というタイトルですが、ここに描かれた遠山は、稜線を描く伝統的な様式ではなく、樹木を描いた写生的な表現で、霞が無ければ遠山というより、うちの近所の小学校の裏山の風景によく似ています。

このような写生的な表現は、糊筒を使って糸目という輪郭線を描かなければならない友禅よりも、絵画のようにかけるダンマル描きの方が向いています。

ダンマル描きは、蝋染と同じように、厚く置くと完全に防染効果を発揮しますが、薄く置くと防染効果が不十分で、中途半端に染料が浸透してしまうという性質があります。そのような性質を半防染効果といいますが、それを積極的に利用して、絵画に濃淡をつけ、明暗や遠近を表現し、写生的な絵画のようにするのです。

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いちばん上の写真は前姿~後姿の途中、横辺りです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目はもっと近接です。

この作品の遠山部分は、さらに適度な彩色を加えることで、染ではなく紙に描いた絵のようにしていますね。、中井さんの下職のダンマル描き担当の職人さんは画家としてもとても上手いのですが、この作品にもそれが発揮されていると思います。

もっとも、そのような表現は、着物の柄としては好き嫌いがあって、糸目のある基本の友禅の方が好きという人も多いでしょう。もともと好き嫌いがあるのが中井さんですね。

ただの写生で収まらないのが、土佐派や狩野派にあったような装飾的な霞です。ただ土佐派も狩野派もやらなかったことは、赤の色ですね。昨日、「犬夜叉」と書いたら、「結界」と言った人がいましたが、なるほど、着物の柄に不似合いな写生表現を封じ込めるための結界かもしれません。

この赤い霞の線は、くっきりした強い表現ですが、じつはこれもダンマル描きによるものです。技法は使いようで、写生表現だけではなく伝統的な表現もできるのです。

伝統的な霞なら伝統的な友禅の方が適しているように思いますが、糸目の白い輪郭線があると邪魔なので、ダンマル描きにしたのでしょう。墨のような濃い地色と強い赤が隣接して独特な情緒を演出しているのですから、その間に白い線が介入しては台無しですね。




[ 2013/10/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)