藤井絞の辻が花の名古屋帯

第二千四百六十四回目の作品として、藤井絞の辻が花の名古屋帯を紹介します。

先日のコメントで、以前のブログの方が暖かみがあって好き、というのをいただいたので、この数日検討しておりました。まず「暖かみ」というのは地色だと思います。当社は初めてホームページ本体をつくって以来、ベージュの地色を使っていましたが、以前はそれが引き継げなかったのです。

もともとベージュの地色を決めたのは、かつて任天堂の研究所にいて、うちの子も買った大ヒット商品「ポケモンスナップ」のデザインも担当していたプロのデザイナーさんです。やっぱりさすがなんですね。今回、他の人のアドバイスも容れ、回りの色を変えてみました。

もう1つは全体の見通しで、fc2では写真を大きくしたので、多摩ケーブルのときのように全体をコンパクトにまとめることができなくなっていたのです。学生のレポートと同じで、詳細に報告することも大事ですが、相手にとって見やすくコンパクトにまとめることも大事ですね。というわけで今回はサムネイルを使ってみました。クリックしていただければ大きくなります。

さて今日の作品ですが、実在する辻が花裂をほぼ再現して帯の意匠としたものです。現代では、多くの作家が辻が花をテーマにした作品を創っていますが、その多くは、絞った部分を染液に浸けないで、筆で着彩していると思われます。しかし藤井絞の辻が花は、絞り専業の工房らしく、絞った後にちゃんと染液に浸けて染めています。見る立場になればどちらでも同じかもしれませんが、つくる立場になれば、両者の難易度の違いは大きいです。

たとえば、この作品の場合は、斜め取りの中に藤の花が入っていて、それぞれ別の色に染まっています。絞ってから筆で着彩するならなんでもできますが、染液に浸けて染めるとなると、斜め取りの色と藤の花の色とどちらが先なんだろう、と基本のことでも不思議なものです。(同系色の濃淡なら2度染めているんだろうと思いますよね。)
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お太鼓です

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腹文です。


斜め取りの中は、菊の花と藤の花、外の描き絵は葵です。ほぼ同じ辻が花裂があるので、再現ものということになります。ただし、斜め取り部分は、本歌は桶絞りですが、藤井絞は帽子絞ですので、ちょっと簡略化していますね。

帽子絞は生地を絞るときに芯を入れて上から竹の皮でカバーするのですが、現在ではフィルムを使います。竹の皮は竹の円周を越える幅はカバーできないので、広い面積は桶絞りを使ったのですが、フィルムなら面積は自由なので、現在はどんな広さでも帽子絞だけでできてしまうのです。

現在でも、桶絞りの職人さんはわずかにいますが、その技法は一見不合理で、竹の皮は面積に制約があったということに気付かないと、その存在の意義はよくわかりませんね。

完成した作品を見ると、室町時代と同じ桶絞りでも、フィルムを使った帽子絞でも、じつは筆で着彩していて絞りでさえないものでも、外見上は変わりません。伝統工芸という視点では、技法の継承は大事なので、なるべく本来の絞りが良いと思いますが、芸術作品という視点では、結果的に芸術性の高いものだけが良いので、途中の技法はどうでもいいように思います。
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お太鼓の近接で、描き絵がメインの部分です。

しかしその一方で、絶対にごまかしのきかないものがあります。それは描き絵の部分です。これだけは上手い下手がはっきり出ますものね。この作品は、写真3番目の葵を見ても、写真4番目の菊の花を見ても、線を気持ちよく引いていながら正確で、こういう状態を「筆に迷いがない」というのだなあと感心してしまいます。

有名な辻が花作家で、実は絞っていないという人は何人もいますが、でも彼らはみんな描き絵は上手いです。作家というものは、絞りができなくてもいいのですが、絵が下手ではだめ、ということですね。


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お太鼓の近接で、絞りと描き絵の両方がバランスよくつかわれた部分です。

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腹文の近接です
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[ 2013/08/31 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

大羊居の訪問着のつづき

第二千四百六十三回目の作品は大羊居の訪問着のつづきです。

昨日はうさぎネタになってしまったので、今日は本来お伝えしなければならない作品の細部を紹介します。

いちばん上の写真は前姿の牡丹と扇面の近接、写真2番目は袖の牡丹の近接、写真3番目は後姿の帯の上あたりの牡丹の近接、写真4番目は前姿の急流の近接です。

このブログを読んでいらっしゃる方は、能でも歌舞伎でも詳しい方が多いので、こちらが教えられることが多いのですが、能の演目である「石橋」のストーリーを正確に知りたいという方は、ウィキペディアで探してみてください。「能 石橋」で検索してみるとすぐ見つかります。

中国には仏教の四大霊山というのがあって、それぞれの山が普賢、地蔵、観音などの菩薩の聖地になっているのですが、その1つが山西省にある五台山(清涼山)で、ここは文殊菩薩の担当になっています。

仏具として見ると、普賢菩薩と文殊菩薩はセットで売っていることが多く、それぞれ象と獅子に乗っています。石橋は文殊菩薩の聖地である清涼山の物語なので文殊菩薩の象徴として獅子が出るのです。

大羊居の創始者は野口功造ですが、やはり石橋がテーマだったのでしょう、堂々と獅子と牡丹を描いた作品があります。それを思えば、今回、石橋をテーマにしながら肝心の獅子を省略しているというのは、けっこう思い切った意匠なのだと思います。

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前姿の牡丹と扇面の近接

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袖の牡丹の近接

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袖の牡丹の近接

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帯の上あたりの牡丹の近接

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前姿の牡丹の近接

それぞれのモチーフを個別に近接で見ると、扇面内部は、七宝繋ぎ、青海波、菊、蘭、そして近接には撮っていないですが後姿の扇面には竹もあります。つまり、牡丹と合わせて四君子でつながりますね。

扇面内部は、四君子・七宝繋ぎ・青海波と伝統的なモチーフでぎっしり埋められていますが、一方で主役の牡丹は琳派的な意外に洒脱な表現です。

牡丹を見ると、加工はいずれも箔や刺繍を思い切り施した重加工ですが、意匠自体は洒脱な琳派で、そのために意外と着られる着物になっていると思います。

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急流の近接を見ると、友禅染というのはまさに糊と水の芸術だとわかります。糊=防染、水=ぼかしですね。友禅染という芸術が、日本画に対してオリジナリティがあるとしたら、まさにこの部分です。私は、絵画とは別の芸術である染は、細密な友禅よりこのような表現に価値があるように思います。
[ 2013/08/30 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

大羊居の訪問着

第二千四百六十二回目の作品として、大羊居の訪問着を紹介します。

見た通り「石橋」というタイトルの作品です。能の演目である「石橋」(「しゃっきょう」では変換してくれませんね。)を意匠にした着物は昔からけっこうありますが、多くは獅子と牡丹です。この作品では獅子はいませんね。

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いちばん上の写真は全体、写真2番目は前姿、写真3番目は後姿です。

幸いなことに獅子は省略されているものの、山は険しく川は急ですから、とても勢いの強い作品になっています。絵羽を平面として広げた状態で見ると、舞台衣装のようで、実際に着るのはちょっと気後れがしますね。

こういうときは、実際に羽織ってみるといいのです。着物の意匠として優れたものであるならば、意外と普通に着られてしまうもので、大羊居や中井というのは、そのような場合が多いです。反対に、大羊居や中井を真似た着物というのは、人が着ても大胆なままで、「悪目立ちするわね」とか「舞台衣装ならいいんだけどね」と冷やかされて終わってしまいます。

この着物はどちらでしょうか、大羊居らしく着れば普通になれるのか、悪目立ちなのか、この場で誰かが着て写真を撮って実証すればいいということで、いつものモデルさんに着用してもらいました。かわいいと言えばかわいいのですが、何を着ても百人一首のお姫様風になってしまうので、よくわかりません。

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[ 2013/08/29 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

藤井絞の雪花絞の浴衣の帯合わせ

第二千四百六十一回目は、藤井絞の雪花絞の浴衣の帯合わせです。

8月も末の今になって浴衣の帯合わせというのも変だと思われるかもしれませんが、当店をよくご存知の方はそれほど不自然とは思わないでしょう。かつて城南電機の社長が「季節品は季節はずれに買え」「季節品は季節はずれに売れ」と言っていたのに忠実に従っています。

「季節品を季節外れに買えば安く買えるから得」というのは誰でも思いつきます。でも「季節品を季節はずれに安く売るのもまた得」というのは、商才がないと思いつかないのではないでしょうか。

浴衣の帯合わせというのは、訪問着や作家モノの紬の帯合わせに比べて、面白みがないように思われるかもしれません。しかし実際に合わせてみると、なかなか奥が深く、本来の着物と同じぐらい着る人のセンスが試されると気が付きました。

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上下ともに単衣の博多の半幅(四寸)の帯を合わせています。浴衣に合わせる帯は本来は博多の半幅ですね。本場の博多産もそれ以外の産地のものもありますし、化繊も木綿も正絹もありますが、できれば正絹の博多、それも夏専用の単衣がいいですね。爪で掻くと独特の高い絹鳴りの音がします。

浴衣というと、紺地に赤や黄色の帯を合わせるイメージがありますが、ある程度の年齢になったら、同系色の組み合わせもするべきですし、きれいな色の浴衣にあえて茶系のような年輩色の帯を合わせることも考えるべきでしょう。

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宮岸織物(証紙番号1393)の麻の八寸の名古屋帯を合わせています。センスの良い縞のシリーズで、価格もリーズナブルですから、夏のカジュアルとしては完璧と思います。ただ業者にとってはネットで安売りが出てしまうのが欠点です。

浴衣の色が緑とオレンジなので、帯の色も合わせてみました。浴衣と言っても、配色に手を抜かないと、良い帯合わせができますね。

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、「秦荘帯」を合わせてみました。麻の八寸の帯です。「秦荘」という地名は町村合併によって今はなく滋賀県愛知郡愛荘町になっています。もともとは近江上布の産地であり、現在は「金剛苑」という施設があって、「近江ちぢみ」などカジュアルで魅力的な着物をいろいろ発表しています。

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宮岸織物(証紙番号1393)の麻の八寸の名古屋帯の模様のシリーズを合わせています。青と緑という爽やかな色に統一させるのを意識して帯合わせをしてみました。

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千切屋治兵衛の麻地に墨描きの帯を合わせてみました。九寸の名古屋帯で、実際の制作者は藤岡さんです。華やかな浴衣に滋味に味わうべき本格的な墨描きの、一見して雰囲気の違う組み合わせですがどうでしょうか。
[ 2013/08/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の雪花絞の浴衣

第二千四百六十回目は、藤井絞の雪花絞の浴衣を紹介します。

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雪花絞は板締絞の1つです。江戸時代以前の縫絞の比べれば、手間が少なく量産がきく技法として近代になって考案されました。

技法としては、まず生地を縦に長く3ツ折または四ツ折にし、その細長くなった生地を生地の端から三角形または四角形に折り重ね、折り重ねた両端に三角形または四角形の木型をあてて強く縛って、生地が崩れないように固定します。これを染槽に浸けて染めた後、ほどいて開くと幾何学模様が現れるというものです。

生地の折りたたみ方で、いろいろな幾何学模様が現れ、その1つが雪花絞です。今日紹介しているような2色のものは、さらに工程が複雑になりますが、藤井絞の場合は、2色までは単色と同じ価格とし、3色は少し高くしているそうです。

近年とても人気で、百貨店でもよく売れているようです。そのためネットショップでも安く買うのは難しいのではないでしょうか。

藤井絞は京都の絞で、有松の絞とは違うのではないか、と思われるかもしれませんね。じつは有松の業者が下請けとしてつくっています。では有松で直接買った方が安いのでは、と考える方がいらしたら、それは正しいです。

しかしながら、藤井絞ではその辺も考えていて、純粋な有松製は普通の木綿であるのに対し、藤井絞は生地がオリジナルの綿麻(綿58%麻42%)になっています。有松の絞りと小千谷縮の麻の肌触りを両方味わえるということですね。

また単色の藍ならばセンスに差が出ませんが、2色のものは配色のセンスに違いがあるので、普通の有松か京都人のチェックの入った藤井ブランドの有松かで選ぶ楽しみがあるでしょう。

写真で並べてみると、江戸切子みたいにも見えますね。また4番目の近接写真で見ると、板締絞という技法も美しいグラデーションを創れるんだなあと感心してしまいます。
[ 2013/08/27 ] カジュアル | TB(0) | CM(0)

藤井絞の訪問着の帯合わせ

第二千四百五十九回目は、藤井絞の訪問着の帯合わせです。

更紗の訪問着の最大の欠点は、更紗の帯が合せられないことです。また、松竹梅鶴亀や四君子などを合わせるのも、模様の意味や背景を理解していないように思えます。更紗もだめ、日本の古典模様もだめ、ということになれば、帯合わせは極めて難しいことになります。

更紗の帯が使えないというのは、正確に言えば、本来の更紗に限らず、唐花文のような曲線と花模様の組み合わせ模様のすべてを含みます。さらにこの分野では、帯屋捨松が圧倒的に強いのですが、センスも質も良く、ネットショップでも買える捨松が使えないというのは、とても不便です。

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太西勇の正倉院御物の臘纈(ろうけち)屏風に取材した袋帯を合わせてみたものです。更紗に合わせる帯は、更紗とイメージが一致しつつ、更紗の花模様でない帯ということで、インドにいそうな鳥獣のモチーフが使えます。このばあいは、更紗→インド→象ですが、他にはインコが使えますね。

ただし、象やインコの帯というのは、それほど一般的ではないので、探すのには苦労しそうです。またせっかく探しても、更紗の訪問着以外に使えないのでは、コスパはとても悪いかもしれません。

帯の地色は紫ですから、色の系統としても統一感があって、上手な帯合わせだと思います。

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捨松のペイズリー模様の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴのある標準的な捨松の袋帯です。ペイズリーも更紗の一部ですが、この帯の意匠は、曲線模様ではなく、縦縞のように直線的なので、許容範囲ではないかと思いました。

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洛風林の「インド七宝文」を合わせてみました。私は「インド七宝」というモノ自体を知らなかったのですが、(洛風林のモチーフ探究力に私がかなうはずがない。)、七宝文ということであれば、更紗とは違うので合わせてみました。

一方で、「インド」という共通項があり、「同じ要素を持ちながら違う」という帯合わせの極意にかなっていると思います。色は、白と淡いピンクということで同系の組み合わせですね。

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龍村の「スキタイ歌詠錦」を合わせてみました。今回、帯合わせに使った理由は、先日発売になった「美しいキモノ」の最新号の表紙の帯として当社が出しているからです。そういうどうでもいい理由ですが、どちらもやさしい色目で、けっこう合っているように思います。このばあいは、帯の方が万能なのでしょう。

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帯の地色は紫系ということで着物と同系ですが、更紗とは全く関係のない日本的な古典文様を合わせてみました。着物に合わせて新規に帯を買うのではなく、すでに手持ちの帯を使い回すばあいには、このような帯合わせもありうると思います。あまり理屈を言うと、着物を着るのが苦痛になってしまうので、このぐらいは許容範囲としたいですね。

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捨松のペルシア模様の袋帯を合わせてみました。「帯屋捨松」のロゴのある標準的な捨松の袋帯です。普通に捨松の袋帯を合わせるとこんな感じになります。更紗・曲線ということで、同質すぎてしつこいと思うか、許容範囲と思うか、ですが、自分であればなるべく避けるが、他人がしているなら批判しない、という態度が良いように思います。
[ 2013/08/26 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

藤井絞の訪問着

第二千四百五十八回目の作品として、藤井絞の訪問着を紹介します。

6月28日(二千四百三回目)に紹介した更紗の訪問着の色違いです。以前紹介した着物は、注文により制作したもので、見る人を驚愕させるような真っ黄色でした。創った私がいちばん驚愕していて、思わず黄色い救急車の話を都市伝説として書いてしまいました。

後にブログを読んだ人から聞いたところ、黄色い救急車というのは都市伝説ではなく、松沢病院に実在したということです。松沢病院とは、衣笠貞之助の「狂った一頁」の舞台で、「伊豆の踊子」を書いて有名になった直後の川端康成が泊まり込んで脚本を書いたそうです。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)、写真2番目は後姿、写真3番目は後姿~下前です。

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片袖です。反対側の袖にも同じような模様があります。

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近接です。

更紗の色は、紫~水色~ピンクという系統の色ですから、黄色い地色というのは、模様の色と補色関係になります。それに対し、今回の作品は地色がごく淡いピンクですから、模様の色とは同系色の関係になります。

他に模様の色と地色の関係としては、淡い色どうしにするか、濃い色と淡い色にするか、淡い色どうしにするか、という組み合わせがあります。今回は模様よりも地色が淡い色という関係ですね。

この作品は、模様を入れる画面の枠が絞りで表現されているとともに、更紗の花の回りも絞りで表現しているところに価値があります。絞りでなくただの暈しであれば、ずっと安くできますし、藤井絞に頼む必要もありません。

前回の黄色の地色の作品では、絞りであることが良く分かったのですが、今回は残念ながらよくわかりません。絞りというのは、色の境界が滲むのが特徴ですが、淡い色だとそれがわからないのです。絞りには淡い色は向かないのではないかと思います。今回の淡いピンクという地色は、絞りであるという価値を見せつけるよりも、全体の雰囲気を重視して選んだ色です。ファッションとはそういうもんですね。

地色と模様の色の関係は、何が正解なのか、顧客の好みはそれぞれですから正解というのはないのですが、何が売りやすいか、制作者は毎回悩んでいます。テーマが良くて、下絵が良くて、最後のこの選択で失敗して不良在庫になるということもありますから。
[ 2013/08/25 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせ

二千四百五十七回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせです。

先日から紹介している前期辻が花写しの描き絵の帯の帯合わせの続きです。多色の友禅の美しさというのは、子供でもわかるものですが、墨描きのタッチの美しさというのは、ある程度、目が慣れないとわからないものだと思います。私が初めて呉服屋になったとき、あまり好きではなかったからです。

墨の描き絵というのは、色のないストイックな世界ですよね。「墨に五彩あり」などといいますが、優れた墨絵の作品は、鑑賞者が頭の中でイメージによって色を補うことができるということですから、私が好きでなかったのは、着物の柄として描かれた程度の作品には、そこまでのものはなかったということでしょう。

人の脳はきれいな色を見ると喜ぶので、多色の友禅というのは作品としてはイマイチでも、着物の柄としてはきれいなものです。しかし、墨描きというのは、頭で分析して鑑賞するので、下手な絵では意味がありません。このように、何もかも異質な友禅と墨描きですが、帯合わせとして同居することとなったらどうでしょうか。

今回は多彩な友禅の代表として、野口の型友禅の着尺を帯合わせの相手に選んでみました。

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野口の着尺の中でも、特に多彩な大きな花模様を選んでみました。よく見ると、帯と着物のの模様の花の大きさは同じぐらいですね。一方は頭で色を補って見なければならない線描きですし、もう一方は何もしなくても色が目に飛び込んでくる多彩な友禅です。

活字がぎっしりの本とカラーの写真集を同時に見ている感じです。よほど意識して活字を読むようにしないと、カラー写真が勝手に頭に飛び込んできてしまいます。青少年が教科書を読んでいる時に、横にアイドルの写真集が置いてあるという状況でしょうか。両者の誘引力の違いを考えると、面積の小さい帯の方を多彩な友禅にした方が良いかもしれません。

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色については、同系色のペパーミントグリーンどうしの組み合わせです。それに対し、模様は、帯全体に描かれた墨描きに対し、余白の多い画面に多彩な友禅の小花だけが描いてあるという組み合わせです。両者とも正面対決を避けた感じで、楽に鑑賞することができます。

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写真3番目は、濃厚な水色の地色の着尺を合わせてみました。野口のモノづくりの上手なところは、濃厚な水色に対して、派手な色を合わせるのではなく、焦げ茶色や落ち着いた辛子色など重厚な色を合わせることで、存在感がありながらそこそこ年輩者にも対応できる着物になっていることです。

帯合わせとしては、合っているように思いますが、それは墨描きの力ではなく、野口の包容力のおかげのように思います。

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写真4番目は、オレンジ色の横段の着尺を合わせてみました。無地場が当たったときは、帯合わせとして問題がありませんが、模様部分当たったときは、同じような大きさの模様がつながってしまい、やや不自然か?

今回もfc2だけのおまけ画像があります。出来るだけ多くの方に大きな画像で見てほしいと思っていますので、fc2の方をお気に入りにしてほしいと思っています。いずれ多摩ケーブルは不定期更新にするつもりです。

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[ 2013/08/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせ

第二千四百五十六回目は、藤井絞の辻が花の名古屋帯の帯合わせです。

今回紹介している薄手の生紬の帯は、単衣の帯としても、袷の時期の普通の帯としても使用できそうです。当店では、単衣の時期の帯として購入される方が多いです。素材、模様の季節、色などを考慮して、単衣の時期にぴったりな帯というのは、他店でもあまり売っていないからでしょうね。

今回は単衣の時期を意識して帯合わせをしてみました。帯に、杜若や紫陽花、あるいは秋草など期間を限定するものが描いてないので、6月でも9月でも大丈夫だと思います。

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琉球美絣の駒上布の着尺に合わせてみました。真栄城さんの美絣には木綿のほかに正絹の駒上布が有って、それは薄手で涼しげです。藍色とペパーミントグリーンの組み合わせなので、都会っぽい雰囲気になっています。

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黒地の着物とあわせてみるということで、東郷織物の夏大島と合わせてみました。東郷織物は、大島紬の産地メーカーとして有名ですが、そこで販売している格子のシリーズです。絣ではないので、値段もリーズナブルです。

黒地の着物を選ぶと、描き絵の墨の黒い線と対応しますから、色としては、黒以外はわずかな白とペパーミントだけということになります。着物と帯とのトータルでの突き詰めた単彩主義になりますね。

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ベージュとあわせるという意味で、花絽織の着尺を合わせてみました。首里織における花倉織と同じものですが、首里以外では「花倉織」の商標を使えないので、「花絽織」と呼ぶのが普通になっています。作者は南風原の大城永光さんで、「南風原花織」のラベルです。

ペパーミントと明るいベージュで、やさしい色どうしの補色関係ですね。

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明るく華やかな帯び合わせということで、新田機業の紅花の着尺を合わせてみました。明るく、やさしく、華やかな色の世界に、墨による黒の線描きだけが存在するという状況は、道長取りの綺麗な色紙に和歌を書いたような雰囲気にならないかな、という意図で試しています。

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fc2ブログだけのおまけ画像として、緑色の塩沢紬を合わせてみました。ペパーミントグリーンとの間で、同系濃淡を狙っています。
[ 2013/08/23 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の辻が花の名古屋帯

第二千四百五十五回目の作品として、藤井絞の辻が花の名古屋帯を紹介します。

室町時代の辻が花の裂をほぼ写して、帯のお太鼓と腹文にした作品です。生地は薄手の生紬で、地色も爽やかなペパーミントですから、単衣用の帯としてちょうど良いと思います。

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上の写真はお太鼓、下の写真は腹文です。


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この3枚は各近接です。

中世末期に創始された辻が花とは、絞りで具象的な形を表現し、表現しきれない細部は墨描きで補足したものです。有松など近世に創始された絞と違うところは、近世以後の絞が、最初はおそらく偶発的に生まれた絞り独自の表現を作品として鑑賞するのに対し、辻が花は、最初から表現したいモチーフが決まっており、それを目標に人為的に絞り方を工夫していくものです。

初期の辻が花は、絞り方が稚拙だったので、大雑把な形しか表現できませんでした。そのため墨描きによる補足が多かったのです。後期になると、かなり複雑な形でも絞りで表現できるようになたので、墨描きの出番は減っていきました。

しかしながら、初期の辻が花の墨描きは、補足という消極的な意味ではなく、墨描き独自の芸術的価値があり、当時の人もそれを理解して、積極的に描き絵の面積を増やしていったと思われる作品もあります。

染織史では、慶長縫箔の登場によって辻が花が滅んだということになりますが、そういう言いかたをするなら、絞り技術が進歩した後期辻が花の登場によって、描き絵主体の前期辻が花が滅んだとも言えます。

今日紹介する作品は、描き絵主体の前期の辻が花を写したものです。絞りで表現しているのは、描き絵を入れる画面の枠だけで、主要な模様はすべて描き絵です。

制作者の立場になると、描き絵というのはとても難しい技法です。なぜ難しいのか、他の技法と比較してみましょう。

絞りというのは、難易度が高い絞り方も低い絞り方もありますが、作品として鑑賞する場合、大事なのはセンスであって、難易度が低い絞だけを組み合わせた作品であっても、センスが良ければすぐれた作品になりえます。

友禅というのは、糊置きしてから内部を彩色するのですが、輪郭線はまず糊で置くので、失敗したら溶かしてやり直すことができます。絵画で失敗するとしたら輪郭線ですから、何度も描き直すことができるなら楽です。

それに比べて墨による描き絵は、失敗しても消すことができない一発勝負の技法です。水で消すことができてしまったら、辻が花の着物は洗濯できないことになってしまいますから。また、墨の筆使いというのは、誰でも學校で書道を経験していますから、絞りと違って、下手なのや簡単なのしかしていないのはすぐわかってしまいます。

じっさいに、墨描きの帯などを見ると、主に浴衣用のカジュアルな作品に、よく他人からお金をもらえるなあというような下手なのがありますよね。普通の意味で「絵が上手い」という程度の人の絵では、全くさまにならないものです。

この作品の描き絵をしている人は、作家として落款など残していませんが、藤井絞の下職の1人で、元は美大を出たプロの下絵師だそうです。とても上手いので、制作の過程で痕跡が消えてしまう下絵よりも、最後に作品に残る辻が花の描き絵を担当しているとか。
[ 2013/08/22 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

秋山真和の浮織の袋帯

第二千四百五十四回目の作品として、秋山真和の浮織の袋帯を紹介します。

今日は昨日の関連で、秋山真和の浮織を取り上げてみました。こちらは袋帯として織られています。昨日までの記事をまじめに読まれた方は、今日のタイトルを見ておかしいと思われたかもしれません。

写真を見れば、グラデーションを主役にした作品で、しかもかなり成功した美しい作品だからです。グラデーションは、浮織の特長ではなく花織の特長ですものね。

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いちばん上の写真はお太鼓、写真2番目はその近接、写真3番目は拡大、写真4番目は裏側をめくってみたところです。

まずいちばん上の写真と2番目の写真を見ると、美しいグラデーションの作品です。おそらく経糸はすべて白で、緯糸は、白と黄色とオレンジと赤が、グラデーションを形成するように並べられて横段になっているのだろうと思われます。

写真3番目の拡大写真を見ると、経糸は白で、緯糸は黄色、その部分の横段全体としては白と黄色の平均値の色ということで、明るいレモン色です。

それに対し、紋織部分は黄色の緯糸だけが浮いて見えていますから、経糸の白に干渉されず本来の鮮やかな黄色です。典型的な花織で、花織の特長であるグラデーションを追求した作品です。

しかしながら、問題は4番目の写真です。
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この作品は袋帯なので裏は見えないのですが、あえて裏を覗いてみると、花織のはずの紋織の裏に渡り糸があり、なんと浮織だったことがわかりました。

グラデーションに見えるように緯糸と同色の糸を織り込んで、浮織なのに花織に見せかけていたんですね。じつは、私も仕入れてから1,2年間はだまされていました。作家はうそをつきますね。作家のうそは「創作」というのでしょう。

でもなぜそんな嘘をつくのでしょうか。その答えは下です。よく見ると、すべての部分が経緯の糸の関係で計算通りにはなっていないのです。地色の薄いところに、通常の紋織ではありえない濃い色が出ているところがありますし、地色の濃いところに薄い色の紋織が出ているところがあります。グラデーションの美しさの中に、スパイスのようにコントラストの美しさも混ぜているんですね。それができるのは、作者の裁量で色が決められる浮織だけなのです。
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[ 2013/08/21 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

秋山真和の浮織の八寸名古屋帯

第二千四百五十三回目の作品として、秋山真和の浮織の八寸名古屋帯を紹介します。

かつての首里工房で織られたものです。浮織の八寸の名古屋帯は、読谷や首里で織られており、本来はとても珍しいものでしたが、沖縄モノブーム以来、作家も増え、ネットショップで気軽に買えるようになりました。

浮織や花織は、立体的な織物なので、初めて見る方は「これこそ沖縄の珍しい織物だ!」と感激するのですが、ネットショップで普通に売られているとありがたみも減じてしまいます。そういう方は、配色に着目して下さい。浮織や花織は、織物組織の特殊性よりも、作家のセンスによる配色の方が重要です。

花織やロートン織は、地の糸が変化して紋織になるので、紋織部分の色は必ず地色と関係があります。作家は、その特性を利用してグラデーションをつくります。すなわち、経糸と緯糸の色が違う場合、地の部分の色はその平均値になりますが、経糸または緯糸だけを浮かせて紋織とすれば、その部分だけは単独の色が見えることになります。その単独の色と平均値の色との間にグラデーションが生じるというわけです。

その配色をうまく設計してきれいなグラデーションをつくることができるのが、上手い作家というわけです。

一方、浮織は、地の糸とは別の糸を織り込んで紋織をつくります。そのため、紋織部分には裏に渡り糸があります。このばあい、地の色と織り込む糸の色との関係は、作家が自由に決定できます。グラデーションの美しさを追求しても良いですが、補色のくっきりした美しさを表現することの方が多いですね。

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いちばん上の写真はお太鼓、写真2番目はその近接、写真3番目は裏です。3番目の写真を見ると、裏に渡り糸があるので、浮織だとわかります。さらにいちばん上の写真と2番目の写真を見ると、作家が自由に色を選択できるという浮織の特性を十二分に生かして、補色をメインにしつつ、グラデーションに見える色の糸も配して、両方の良いところを取ろうとしていることがわかります。

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写真4番目は、紋織部分を拡大したものです。この部分はグラデーションを意識した演出をしています。写真5番目は、浮織の一部(白い糸)と地の糸を撮ったものですが、浮織は地色の黄色とはくっきりの関係ですね。また、地の経糸が多色の糸で構成されていることがわかります。写真6番目は、全く模様のない地の部分ですが、この部分も経糸が多色です。普通の沖縄の花織、浮織あるいはロートンは、地の糸と紋織の糸との関係で演出するものですが、ここでは直接関係ないはずの地の経糸に仕掛けをしているのです。

それが、作品全体にどういう演出効果をもたらしているかは、見る人が決めることですが、そういう仕掛けをすることが、いかにも作家モノですね。
[ 2013/08/20 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)の帯合わせ


第二千四百五十二回目は、一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)の帯合わせです。

今回は龍村を使ってみます。高い訪問着には高い袋帯が合うだろう、というのが一般の人の常識ですよね。「高い袋帯」と言われて、とりあえず思いつくブランドは龍村ですが、龍村と中井の組み合わせは合うのでしょうか。

龍村のパートナーと言えば、大彦と大羊居です。高島屋で展示会をする時は必ず「大彦龍村展」あるいは「大羊居龍村展」でやってきたのですし、そうでなくてもお互いの初代どうしから交流がありますから。

何十年もいっしょに展示会をして、互いに影響し合ってきたためか、色の系統も合っている気がします(実物をみれば同じ色を使っているわけではないですが)。一方、中井の色と龍村の色は水と油ぐらい違います。

お互いが高級品で、高品質で、目指す方向がちがっても芸術性が高ければ、色の系統や雰囲気が違っても合うものでしょうか。今回はそんな課題を検証してみる帯合わせです。

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「鏡花春秋文」というタイトルの帯を合わせてみました。昔の鏡は、姿を映すという機能だけではなく裏が工芸品になっているものですが、その工芸部分を模様にした鏡裏文ですね。

帯と着物を合わせてみますと、色の系統が全く違うことがわかります。それを「合わない」と見るか、「合う」と見るか、実際にお客さまが選ぶのを見ていると、色合わせなどについて厳密に考える方が多く、そういう方は「合わない」と判断するでしょうね。

私は、帯合わせのコツは、どれが合うかという知識だけでなく、どの程度合わなくてもいいか、という許容範囲を知ることだと思います。

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「経巻彩花錦」というタイトルの帯を合わせてみました。お経の表装の装飾に使われている唐花文ですね。振袖用にも使えそうな華やかな帯ですが、銀糸を主体として色は抑えていますので、万能に使える帯だと思います。

これも、ぴったり合っているとは言えませんね。しかし許容範囲を狭くした厳密な帯合わせは、つまらないとも言えます。ぴったり合う帯がたいした帯ではなく、まあかろうじて許容範囲という程度の帯が作品として良い帯だったらどちらを選ぶべきでしょうか。その着物のために、あえてつまらない帯を買いますか。

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「錦秀遺芳錦」というタイトルの帯を合わせてみました。龍村らしく暗示的なタイトルが付けられていますが、平家納経に取材したものですね。

私は上の3本はすべて許容範囲です。中井さんが帯の周りに無地場を作っておいてくれたかもしれません。その着物に80%しか合わない帯は、他の着物にも80%合う使い勝手の良い帯になるかもしれません。その着物に100%合う帯は他の着物には全く合わない、使い勝手の悪い帯かもしれませんしね。


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「海老殻間道手」というタイトルの帯を合わせてみました。まさに万能ですね。重厚な中井の作品が、おしゃれな着物に変容してしまいました。

多摩ケーブルはここで終わりですが、fc2は制限なく写真が貼れるので、さらに2パターン紹介します。上は「陶楽騎馬文」、下は「西域舞踊錦」です。
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[ 2013/08/19 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷という織屋さんの八寸の名古屋帯

第二千四百五十一回目は、金谷という織屋さんの八寸の名古屋帯を紹介します。

金谷という織屋さんは、「まことのすくい」「まことのよろけ」で知られる「まこと織物」の分家とのことです。おしゃれな帯を見つけて、それが名前を聞いたことのない織屋さんであるばあい、有名な老舗織屋の分家であるばあいが多いです。

「献上市松絣」というタイトルが付けられており、絣のもっとも基本形である経絣だけで表現された帯です。絣は、インドで経絣として生まれ世界に伝搬しました。マニア気質の日本人は精緻な絣をつくりましたが、世界標準は歴史上ずっと経絣です。緯焦げ茶色の地にトリコロールのような赤白青ですから、織物としての組織だけでなく、色もまた基本形と言えます。

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いちばん上の写真は帯の幅を写真の幅として撮ったものです

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写真2番目は近接です

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写真3番目は拡大です。

西陣の織物といえば、明治の初めにフランスに留学して先端技術を導入し、戦後は金銀糸だけでなくポリエステルフィルムも使い、複雑な組織で自由自在な表現をするという方向に進化してきました。彼らのマインドは、伝統を守るのではなく、つねに新技術を導入する先進企業なのです。

その先にコンピュータ付の織機があり、海外生産があるわけで、それで生産しすぎて、ネットで安売りされるという危機もまた、進化の結果だと思います。

今日紹介する帯は、西陣の帯というよりも素朴な地方の織物のような作り方をしています。西陣とは全く逆の進化の方向ですね。作品の魅力というのは、「配色の上手さ」のようなソフトな技術からも生じるので、難しいことはしなくても良いのではないかと思えてきます。この作品の配色は、赤と青が直接接しないところが上手いです。
[ 2013/08/18 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)の帯合わせ

第二千四百五十回目は、一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)の帯合わせです。

絵羽を平面として広げた写真を見ると、たいてい中央部分が余白となっていますが、それは着た時におはしょりになってしまうからで、着てしまえば全身柄になるものが多いです。

しかし、今回の写真で見ると、この着物は、中央の余白部分が普通より大きいようです。背中心あたりの裾柄の高さを見ると、せいぜい膝の裏ぐらいですから、帯のお太鼓の周囲は無地になるでしょう。帯合わせが楽になるように、という中井さんの配慮ですね。

着物の帯と直接接する部分が、無地か柄があるか、というのは帯合わせに大きな影響を与えます。この着物の場合、柄は込み入っているものの帯の周囲が無地なので、どんな帯でも合いそうですが、今回は念のため、ごちゃごちゃ柄の着物に対応する、1つの大きなモチーフからなるすっきりした意匠の帯を選びました。

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捨松の牡丹唐草の袋帯を合わせてみました。名物裂の牡丹唐草の意匠をそのまま拡大しただけのすっきりしたものです。

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じゅらくの「帝王紫」の帯を合わせてみました。「帝王紫」というのは、ローマの皇帝がこの紫のマントを着ていたということにちなんでつけられた商標で、一般名は「貝紫」です。貝紫で有名になった吉岡常雄が、じゅらくと契約していたために、このような帯があります。。「帝王紫」という商標は今も使われていますが、これは吉岡常雄の生前のころのものです。


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紫紘の紫地の松の意匠の袋帯です。質感が高く、シンプルで大きな意匠ということで選んでみました

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加納幸の「天と地」というタイトルが付けられた袋帯です。強風で雲が吹き飛ばされるような勢いのよい意匠で、着物の迫力に負けないように、ということで選んでみました。

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今回のfc2だけのおまけ画像は、太西勇の「銀平脱」をテーマにした袋帯です。
[ 2013/08/17 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)のつづきで

第二千四百四十九回目の作品は、一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)のつづきです。

昨日の続きです。内容の深い作品で、1日で書こうとすると疲れるので2日に分けました。昨日は近接写真を載せましたが、(FC2の大きな写真見ていただけましたでしょうか。この画面からリンクを付けましたので、まだの方はぜひご覧ください。そのままFC2をメインにしてくださっても良いです。)

今日は、ただの近接でなく、わかりやすいように、1つの裂取りごと、モチーフごとに撮ってみました。それで気が付いたのですが、昨日の「琳派の草花文、流水文、波文などのモチーフを、すべて裂取り形に入れて並べた意匠」という解説は間違いですね。

裂取り1つ1つを個別に鑑賞してみると、中井さんは、ただ単に裂取りの中に琳派モチーフを入れて並べたのではなく、裂取り1つ1つを完成した絵画の画面としてつくっていることに気が付くのです。

だから、裂取りの中に余白があります。ばあいによっては余白の方が大きい場合もあります。モチーフと余白に比率は、日本画の掛け軸の空間表現に準じていると言ってよいでしょう。

アンチョコと考えれば、花や流水の描き方のアンチョコにとどまらず、そのまま着物の意匠として模倣できる完全なアンチョコです。模倣していいのか、と言われれば、むしろ本人はそれを望んでいたのではないか、ご子息を含めて京友禅の未来の作家たちに遺産として残したかったのではないか、という気がしてきます。

なぜなら、他にもこのような博物誌のような意匠の作品があり、特にその決定版ともいうべきものをご子息が継承しており、「これは売るな」という遺言をされていると聞いたからです。「売るな」というのは、保存しろというのではなく、利用して制作活動の糧としろ、という意味でしょう。

というわけで、今回は特に、余白が多く日本画として成り立っているような部分を集めてみました。

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いちばん上の写真は紅葉と流水と遠山(伊勢物語の東下りから人物を除いた感じ)

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写真2番目は槇と霞と遠山

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写真3番目は藤と流水と霞

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写真4番目は蔦と霞

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写真5番目は竹

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写真6番目は松と波と霞ですね。

もしこれが、それぞれの画面が1枚の付下げとして展開されたらどんな着物になるか、そんな想像をしながら見ていただきたいと思います。余白の多い、おしゃれな付下げが思い浮かんだら、あなたは京友禅をマスターしたと言ってよいです。
[ 2013/08/16 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)

第二千四百四十八回目の作品として、一の橋の訪問着(制作は中井敦夫)を紹介します。

久しぶりに中井敦夫さんの本格的な訪問着を紹介します。中井さんが亡くなってもう数年になりますが、私が入手するまで一の橋に秘蔵されていたものです。私が見たときは、他にも安田の逸品など驚くようなものがありました。さすが一の橋で、その時代の京友禅の最高のものを創り、その価値を理解して保管していたのです。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は後姿です。

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写真4番目以後は近接です。

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琳派の草花文、流水文、波文などのモチーフを、すべて裂取り形に入れて並べた意匠です。すべて琳派写しですから1つ1つを見ると、たいていどこかで見覚えのある意匠です。

その気になれば、それぞれの取り方の中の意匠を取り出して真似れば、中井風の付下げが何パターンも作れそうです。この訪問着をそのまま真似たら、ただの中井のニセモノになってしまいますが、区分けされたモチーフを一個ずつ使って、複数の付下げや染め帯をつくれば、優れた琳派写しの作品になるでしょう。この訪問着は売らないで、将来の付下げのアンチョコとして使った方が得かもしれません。

そう考えれば、中井さんの遺言のようにも見えてきます。ただの下絵帳と違って、実際の出来上がりまでわかるのですから、もし私がこれを京都の悉皆屋に貸し出せば、中井風の琳派の付下げが何パターンもできてくるでしょう。

この作品を実際に着てみると、余白がなく柄がごちゃごちゃしているのではないか、と思われるかもしれませんが、意外と大丈夫な感じですね。全体の模様のうちちょうど良い割合で、茶色い地の取り方が混じっていますが、それが紺系グレーの地色との配色が美しいのです。
[ 2013/08/15 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

仲井間香代子のロートン織の着尺

第二千四百四十七回目の作品として、仲井間香代子のロートン織の着尺を紹介します。

沖縄の織物で、経産省の伝統的工芸品(伝マーク)に指定されているものは多くありますが、首里に由来する花織、ロートン織あるいは花倉織などは、「首里の織物」というカテゴリーとして一括して指定されています。
http://kougeihin.jp/crafts/introduction/prefectures
を見ると、組合員数などの情報がわかります。

仲井間香代子さんは、首里に工房を持つ代表的な首里織作家の人ですが、今日紹介するロートン織のほかにも、花織など「首里織」に分類される別の織物も織っています。

首里の織物には、花織や浮織のように、他の地域でも同じ組織の織物が伝来しているものもありますが、ロートンや花倉織のように首里独自のものもあります。しかし、近年では、首里独自に伝来したものも他の地域で織られています。その場合には、表示で区別することができますが、特に花倉織については首里以外で織られる場合には「花絽織」と表示することが多いです。織物の組織を理論的に表せば「紋絽織」と書くべきでしょうね。

ロートン織は、表裏とも経糸が緯糸と組み合わずに浮いています。花織の場合、表で緯糸が浮けばその部分の裏は経糸が浮いていますが、ロートンのばあい表裏とも経糸が浮いて全く同じに見えるのです。不思議な感じがしますが、その部分は経糸が2つに分かれ、その間を緯糸が通っているという仕掛けになっているのです。

ロートン織に漢字をあてるばあい、「道屯織」と表示することが多いですが、田中さんの「沖縄織物の研究」では「両緞織」の文字をあてています。感じのイメージから「両面同じに見える」という特徴を感じ取れるので、上手い表記だと思います。

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いちばん上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、写真2番目と写真3番目は近接です。

たいていの人にとって、沖縄織物の魅力というのは、組織の多様性や複雑さという織物の理論ではなく、グラデーションという感覚的な美しさではないでしょうか。しかし、グラデーションの美しさというのは、組織の構造という織物の理論から生じているのであって、それは糸が浮く部分の拡大写真を見るとよくわかります。


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織物というのは、経糸と緯糸が交わってできているものですから、私たちは織物を見るとき、経糸と緯糸が混ざった状態、すなわち中間色を見ています。上の写真の中央あたりの黄色と紫ですね。しかし、その上下の経糸だけが浮いた部分では、色は混じらず経糸の紫色だけが見えます。つまり、拡大写真の中だけでも、地の黄色と、黄色と紫の中間色、紫色の3段階の色が見えていることになり、そこにグラデーションが生じるのです。

それは、地を構成する糸が変化して紋織を形成する花織とロートンでは必然的に生じることです。ただしそれは、経糸と緯糸の色の組み合わせが上手くいった場合に限ります。下手な配色であれば、濁った中間色ができるだけです。その部分が作者のセンスで、それに失敗した作品は、技法的に難しいことをしていても芸術的ではない、ということになります。(ネットショップで安く売っている花織の帯に色が濁ったものがありますよね。)
[ 2013/08/14 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

龍工房の「御岳」

第二千四百四十六回目の作品として、龍工房の「御岳」を紹介します。

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いちばん上の写真は、「御岳」の全体、写真2番目は特徴のある部分、写真3番目は龍工房の冠(ゆるぎ)です。

龍工房の帯締です。ベース部分は冠(ゆるぎ)です。冠は、今回紹介する龍工房だけでなく五島紐でも道明でも野澤組紐舗でもたいていの組紐メーカーが発売してる組み方です。

龍工房の「御岳」は、その冠をべーすにしつつ、写真2番目のような装飾部分が付きます。「御岳」というネーミングは、当店の地元でもある武蔵御岳神社にある国宝「赤糸威大鎧(あかいとおどしのおおよろい」に使用されている紐を再現したものだからです。

「赤糸威大鎧」は、平氏の血筋ながら鎌倉の御家人となった畠山重忠が武蔵御岳神社に奉納した鎧です。畠山重忠は怪力で知られ、平家物語や源平盛衰記には、瀬田川の合戦で先陣争いをしていたライバルが馬を流され溺れそうになったので、助けるために片手で掴んで対岸に投げつけたら、そのライバルが先陣になってしまったとか、義経に従って一の谷の逆落としに参加した時は、馬がかわいそうだからと馬を背負って降りたというエピソードが載っています。

名前は忘れても、そんなエピソードを覚えている方は多いのではないでしょうか。怪力を生かして手柄を立てるというよりも、つい人や動物を助けてしまい、それで先陣を逃すという良い人キャラです。

当店では、帯締めも普通に売っておりますが、このブログで取り上げることはありません。その理由は、私が「組」について全く素人なので、解説が書けないのです。染織についていくら本を読んでも「組」は全く別のものですからわかりません。以前、細見華岳の帯締を取り上げたことがありましたが、それは「織による紐」という特殊なものでした。

歴史的に言えば、「組」は染や織に先行します。なぜなら子供に紐を与えたら、その子はまずその紐を捩じるからで、それが組紐の始まりだからです。まさか織ったり染めたりはしないでしょう。人類も同じようにしてきたはずです。

龍工房には、「平泉」という紐があります。中尊寺のどこか、あるいは藤原氏の副葬品として使われている紐を再現したものだそうです。私たちは、美術館や寺社を見学している時は、絵画や仏像あるいは建築物を見ているものです。私は掛け軸の表装も見ますが、それはすでに少数派でしょう。しかし、組紐を専門にやっている作家や職人さんは、どんな時も紐を見ているんですね。

武蔵御岳神社は、青梅線の御嶽駅からバスで10分ほどでケーブルの駅まで行き、そこでケーブルに乗っていきます。ケーブルはとても景色が良いです。






[ 2013/08/13 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

龍村のバッグ

第二千四百四十四回目の作品として、龍村のバッグを紹介します。革と裂を組み合わせた小型のバッグです。

バッグの大きさは、タテ×ヨコ×高さが18×9×15cmです。

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ポプちゃんが持っているプチバッグは、黒い部分が革で、裂の部分が龍村裂の「赤地鴛鴦唐草文錦」をつかったものです。本歌は正倉院裂です。

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チャツポンが持っているプチバッグは、クリーム色の部分が革で、裂の部分が龍村裂の「獅噛太子」をつかったものです。「獅噛太子」は商品名で、一般名は「太子間道」です。太子間道の複雑なパターンを獅子の顔を思わせるパターンに整理して意匠化したものです。「太子」の名前の通り、法隆寺に伝来しました。

今回は、ポプちゃんとチャツポンが、実際にバッグに手を入れて使い勝手を確かめてくれています。
[ 2013/08/12 ] 小物と小物合わせ | TB(0) | CM(0)

真栄城興茂の琉球美絣

第二千四百四十四回目の作品として、真栄城興茂の琉球美絣を紹介します。

昨日は、琉球美絣の藍のグラデーションの美しさを紹介しました。人間の目(脳というべきか)というのは、グラデーションを美しいと感じて喜ぶもののようで、染織の分野でもいろいろなところでグラデーションが利用されています。

友禅のおける暈しもそうですが、さらに考えれば、絞りというのは、手で描く絵画に比べて輪郭線がくっきりしないものですから、それ自体がグラデーションの芸術なのかもしれません。

今日は、とりあえず昨日の続きとして、真栄城興茂さんの作品で、さらにグラデーションの美しさが良く分かる作品を2点選んでみました。

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上の写真は反物の幅を写真の幅として撮ったもの、下はその近接です。

上の作品は「川明かり」というタイトルが付けられた作品です。反物を画面に見立てたときに、その画面を分割するように藍色に濃淡が付けられています。反物の幅で見ただけでも、色のグラデーション的変化の美しさを感じますが、もし仕立てて広い画面として見たら、あるいは、人間の体に着つけて、その人が歩き回る、すなわち動く作品として見たら、作品のインパクトはもっと強いかもしれません。

というわけで、仮絵羽にされた別の作品を、写真3番目、4番目で紹介しました。なぜ仮絵羽にされたかよくわかりません。琉球美絣の意義が、藍のグラデーションにあるということをわかりやすくするため、本人か問屋の意思での展示用に仮絵羽にされたのかもしれません。

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上の写真は仮絵羽になっている作品の全景、下はその近接です。
仮絵羽の写真を見ると、作品の主役はグラデーションだなあと感じます。近接の写真では、絣の上手さはわかりますが、作品の意義はじつは全然わからない、ということがわかります。

でもまだ、これでもわからないのかもしれませんね。本当に作品の意義がわかるためには、仕立てて誰かが着て歩き回ってくれないといけないのかもしれません。それでグラデーションが動いて、それを鑑賞する芸術になりますものね。
[ 2013/08/11 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

真栄城興茂の琉球美絣

第二千四百四十三回目の作品として、真栄城興茂の琉球美絣を紹介します。

琉球美絣は、真栄城興茂さんのお父さんの真栄城興盛さんにより創始された織物ですから、「琉球美絣」という名も、興盛さんによりネーミングされたものです。工房の場所は本部半島の伊豆味あたりかと思います。

本部半島の伊豆味というのは、ちゅら海水族館の近くの内陸の方ですよね。私が以前、美ら海水族館に行ったとき、途中の道で「→伊豆味」という標識を何度も見ました。かつては琉球藍の生産の中心地だったそうですが、今は伊良波盛正さんしかいないということです。真栄城さんの工房は、自分の作品に使うものは自製しているそうです。

現在「琉球絣」といわれるものは、沖縄県内で産するすべての平織の絣を言います。「琉球美絣」はこれに「美」を加えたネーミングですから、相当美しいものでないと期待外れになってしまいます。しかし、実物を見ると、十分に美しく、「美絣」の名前に負けていないと思います。

美しさの源泉の1つは、琉球藍の青色でしょう。もう1つは絣のグラデーションです。藍は、黒に近い深い藍も美しいですし、水色のような淡い藍も美しいです。グラデーション表現では、この両方が味わえるのです。つまり創始者である真栄城興盛さんは、藍の美しさはグラデーションの美しさとセットになって力を発揮するということに気がついて、「美絣」を名乗ったのだと思います。

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上の写真で全体の構成を見ると、まず全体がタテ縞で沖縄織物独特の模様単位である幾何絣が配されていますから「綾の中」ですね。普通の「綾の中」と違うのは、縞と幾何絣のうち縦方向の模様がグラデーションだということです。

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この模様単位は「マユビチー」というものですが、この2番目を見ると、すべてをグラデーション表現にしないで、横方向の模様をくっきりした線にしています。くっきり線が混じることで、グラデーションの美しさが引き立っています。とても上手いと思います、作家というのは、意匠力が大事ですね。

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上の写真は、グラデーション部分のの拡大、下はくっきりしている部分の拡大です。
[ 2013/08/10 ] 各地の絣・紬 | TB(0) | CM(0)

赤い帯の帯合わせというテーマ

第二千四百四十二回目は、赤い帯の帯合わせというテーマです。

FC2でもブログを書き始めて3日になります。今日はFC2で記念すべき最初のコメントをいただいたので、その方のコメントにあった祇園風の水色の着物に赤い帯を試してみます。

昨日の「赤い着物に赤い帯」というのは、あくまでエア帯合わせですから、真似しないでくださいね。私が知るかぎり、実際にこのような帯合わせをしたのは、ロッテのチョコレートのコマーシャルに出演した女優さんだけです。

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花也の付下げ「白川女」に、龍村の名古屋帯「清釉文」を合わせたものです。京都の「白川女」「大原女」というのは、私はテレビでしか見たことがありませんが、たとえ観光用のコスプレでも京都に行ってすれ違ったらうれしいですよね。この「白川女」というタイトルをつけられた付下げは、白川女を頭に載せた花だけで、すなわち人間を除いて表現したものです。

付下げの模様は白揚げが主体ですが、朱色が限定されて使ってありますので、それが多少は調和の助けとなっているように思います。関東系の方には、異世界の組み合わせと感じるでしょうが、コスプレで異星人の役をやったと思って、割り切って楽しむのが良いと思います。

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花也の付下げ「小花散しに流水(写真で見えない裾の方に流水がある)」に、龍村の名古屋帯「清釉文」を合わせたものです。関東系なら白っぽい帯で、すんなり合わせるところでしょうね。祇園系だったら、赤でなければ黒?

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花也の付下げ「和本」に、織悦の袋帯「雪輪」を合わせたものです。これは素直にかわいい帯合わせですね。若い時に、このような帯合わせを楽しむことができたなら、今度は帯を変えて、できるだけ長くこの付下げを着る工夫をするといいと思います。黒地の帯にすれば、祇園風のちょっとお姉さん、さらに工夫して50代まで着たいですね。

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花也の付下げ「白川女」に、織悦の袋帯「雪輪」を合わせたものです。祇園をイメージした帯合わせには、ふさわしいテーマということで2度使ってみました。

いちばん上の写真の、龍村と合わせた例と比較すると、こちらの方が若い人にふさわしい健康的なコーディネートとして素直に見ることができますね。朱色でもいろいろあり、全く違う雰囲気になるものだと実感しました。
[ 2013/08/08 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

一の橋の付下げの帯合わせ

第二千四百四十一回目も、一の橋の付下げの帯合わせです。

今日も昨日来の「濃朱地露芝紅葉」の帯合わせです。まだ試してみたいことがあるのです。今日着目するのは、この着物が意外にも単彩主義であることです。

地色が個性的で、濃厚であると言えば、沖縄の紅型か、岡本太郎のような色彩が爆発した作品をイメージしてしまいますが、描かれている紅葉は地色と同系統の赤で、結局使われているのは赤系と、糊防染による白だけなのです。つまり、個性的で濃厚な色彩を使っているというだけで、中身は単彩主義による着物なのです。

さて今日は、帯まで同系色で合わせてみました。そういうことに意味があるか、実際にそういう帯合わせをする人がいるか、ということであれば疑問です。ですが、黒留袖に合わせる帯に黒地の帯があるように、境界がはっきりしない帯合わせを好む人も結構いるのです。実際には、帯の存在がはっきりせず、柄だけが浮かび上がるようになりますね。

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龍村の名古屋帯を合わせています。タイトルは「清釉文(丹地)」です。いつもながら意味がわからないタイトルです。明代の官窯の文様にありそうな気もしますので、「清釉」とは、本来は磁器の白地に染付だったということかもしれません。

なんで仕入れてしまったのか、よく覚えていませんが、色も模様も濃厚で、関東では売りにくいように思います。(関西ではOKなのか、西日本の人に聞いてみたい)地色がほぼ同じようなので、柄だけが浮き出る状態ですね。

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織悦の雪輪の袋帯を合わせてみました。同系色と思って合わせましたが、実際に合わせてみると、着物の重厚な赤(まさに濃朱ですね)に対し、帯は若い人向けの明るい朱色で、かなり異質な感じです。やはりこの帯は、振袖や若い女の子向きなんですね。

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山鹿清華の袋帯を合わせてみました。山鹿清華は、皆川月華とともに、日展(当時は帝展)に初めて工芸部ができたときのただ2人の入選者ですから、後の「作家モノ」の公式な元祖ということになります。

本人の作品は「手織錦」とネーミングされ、タピスリーが主ですが、この帯は本人監修によるライセンスものです。

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洛風林風の袋帯を合わせてみました。洛風林は、西陣で最も個性的な帯を織る会社ですが、意外にも織屋ではなく、あくまで問屋という認識です。実際には織屋を名乗りつつもすべて出機で他人に織らせている会社もあるのですから、織屋と問屋の境界はあいまいです。

定義するとすれば、自分で織っているかどうかよりも、西陣の組合に所属し証紙番号を持つものが織屋、そうでないものが問屋ということでしょう。洛風林の作品とは、実際に織る同人の作品に「洛風林」のロゴを織り込んだものが本物の洛風林ということになります。

すると当然、「いつもは洛風林の帯を織っているが、これはたまたま別ルートで販売しているもの。ロゴはないが品質は同じ」なんていう「実質洛風林」が現れます。これもそのような1本で、手織りで品質的には「洛風林でもおかしくない」ものです。小売屋がユーザーに販売するときに、説明を短縮して「洛風林」と言ってしまうとニセモノになってしまうんですよね。

地色は赤紫で、濃厚多彩な配色です。着物とは地色以外雰囲気もこたなりますが、ありうる帯合わせですね。でもまあ、今日の帯合わせは全然参考になりませんでしたね。

さて、多摩ケーブルはここで終わりですが、このfc2版は蒙昧写真が付きます。

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紫紘の袋帯を合わせてみました。地色は白ですが、模様の松の1つに朱があるものを選んでみました。
[ 2013/08/07 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(2)

一の橋の付下げの帯合わせ

第二千四百四十回目は、一の橋の付下げの帯合わせです。

昨日来の「濃朱地露芝紅葉」の帯合わせです。今日は龍村の袋帯を使って帯合わせをしてみます。この付下げは、なんといっても濃厚な色彩が特長ですから、帯も濃厚な色彩の代表である龍村を試してみました。

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龍村の袋帯「錦秀遺芳文」を合わせてみました。龍村らしいわかりにくいタイトルが付けられていますが、平家納経をテーマにした作品で、特徴のあるそっくり返ったような鹿は、近世の修復の際、俵屋宗達が付け加えたという表紙です。

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龍村の袋帯「鳥獣戯画」を合わせてみました。地色の辛子色が綺麗でもあり、濃厚でもありますね。この色のおかげで、鳥獣戯画というありふれた古典をテーマにしながら存在感のある作品になっています。

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龍村の袋帯「西域舞踊錦」を合わせてみました。着物とは背景も情緒も全く異なるエキゾチックな作品を合わせてみました。私はこの例のような着物と帯が断絶した帯合わせも好きです。このような帯合わせがなければ、着物のコーディネートの文化は浅くて狭いものになってしまうでしょう。

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龍村の袋帯「海老殻間道」を合わせてみました。「縞」の模様は、粋やカジュアルを連想させるものでもありますが、「間道」は大名や有名な茶人によって大事に保管された格の高い名物裂でもあります。

実際にこの「海老殻間道」を見ると、粋でおしゃれな感じもしますし、龍村が制作するのにふさわしい格の高さも感じます。結果として、どんな着物にも使えて、たいていの着物をおしゃれに見せてしまいます。

今日の4通りから1点を選ぶとすれば、私も「海老殻間道」を選ぶでしょう、でもこの帯は1本買うと永久に使えてしまいますから、商売人としては残念なところもあります。

多摩ケーブルのブログでは、ここで終わりですが、この新しいブログでは写真が4枚に限定されないので、もう1枚貼ってみました。

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龍村の袋帯「陶楽騎馬文」です。着物と関係のないエキゾチックなテーマを持ち込むという点で、「西域舞踊錦」と同じ合わせ方ですね。
[ 2013/08/06 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)